説明

無線LAN用のアンテナ設備

【課題】
無線LANにおける、電波が漏洩し、情報の安全性が損なわれるという問題をなくする
【解決手段】
無線端末PCの設置場所に個別アンテナを配置し、該個別アンテナのごく、近傍に配置したPCのみが無線通信できるようにする。無線端末PCはアンテナ出力を高、低切り替え可能とし出力を低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無線LANの安全な接続技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PC端末とローカルエリアネットワークの接続には有線接続LANと無線接続LANがある。無線接続LANはアクセスポイントのアンテナ電波が届くところであれば、無線LAN機能つきのPCを自由に設置して交信出来るモビィティの自由度が大きなメリットである。しかし無線LANは、コンクリートの壁や金属棚などで電波が遮られた場所では通信が出来ないし、金属シャッタなどの開閉の影響を受けたりすることもあるため、障害物の多い場所では、アクセスポイントを増やして対応しなければならない。そういうことのため、例えば非特許文献1にはアクセスポイント本体から漏洩同軸ケーブルを障害物の多い室内に数十mも張り巡らした「漏洩同軸ケーブル方式無線LAN」が報告されている。この報告書には、漏洩同軸ケーブルが床上3mの天井に全長30m配置され、1台のアクセスポイント本体から接続された漏洩同軸ケーブルのアンテナで室内の隅々まで通信を可能にする情況が報告されている。
【非特許文献1】東芝レビューVol.58NO.11(2003)
【0003】
ところで、現在、無線LANで問題視されていることは、セキュリティである。アンテナから放射される電波は数mから数十mに及ぶので、第三者に情報が漏れて問題を生じることがある。このような問題に対しては、認証技術や暗号技術を高度化する対策が講じられているが、セキュリティとして万全のものは無い。一方有線接続は、セキュリティの面では無線接続よりは安全性が高いが、常に、PCと配線との物理的な接続作業をしなければならないわずらわしさと、設備面では各所PC接続点とハブの間を、それぞれに1対1のスター配線を敷設しておかなければならないという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、無線LAN接続のセキュリティを向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為、本発明では無線LAN本体機器に接続されたアンテナ設備において、同軸ケーブルが幹線配線として複数個所の無線端末PCの設置利用箇所に迂回して配線されており、該幹線同軸ケーブルから各無線端末PCの設置利用箇所に個別アンテナが枝出しされ、該個別アンテナから5cm以内に設置された無線LAN機能付きPCには接続可能な電波が届くが、2mを超えるところのPCには接続できない程度の弱い電波を放射することを特徴とする無線LAN用のアンテナ設備を提供する。
【0006】
更に好ましくは個別アンテナから30cm以内に設置された無線LAN機能付きPCには接続可能な電波が届くが、2mを超えるところのPCには接続できない程度の弱い電波を放射することを特徴とする無線LAN用のアンテナ設備を提供する。そしてこのような個別アンテナとして好適なものは同軸ケーブルの先端部の外部導体を剥離して、電波を放射できるようにし、末端部は幹線同軸ケーブルと同軸T型コネクタで接続したものであり、其の構造をより詳しく述べれば同軸ケーブルの先端部の外部導体の剥離長さが、無線LAN電波の波長の1/4より小さくして、電波の強度を抑制したり、あるいは先端部の外部導体を剥離した同軸ケーブルを電波遮蔽壁で囲い、その電波遮蔽壁の一部には開口部を設けPC設置箇所に向けて電波の放出の程度を調節できるようにした構造を提供する。そして無線端末PCの設置利用箇所が、個別アンテナを備え、かつ天板上にPCの配置場所が明示された机またはテーブルを提供する。そしてさらに好ましくは、無線端末PCがそのアンテナ出力を高、低2段階以上に切り替えることのできるスイッチを有することを特徴とする無線LAN用のアンテナ設備を提供する
【0007】
本発明は、複数の無線端末PCの設置利用箇所に、個別アンテナが設置されており、その個別アンテナは、個別アンテナのごく近辺に設置された1台程度の無線LAN機能付きPCとの通信を可能にする微弱な電波を出すようにしたものであるところに特徴がある。ノート型PCと、LANケーブルをコネクターで物理的に差込み接続することなく、個別アンテナの近くの無線端末PCの設置利用箇所にPCを置くだけで通信が可能となる。従来の無線LANとは異なり、個別アンテナの近くの無線端末PCの設置利用箇所に設置したPCだけが、無線LAN接続が可能になるので、従来の無線LANのように不特定多数に情報が漏洩する危険性がない。
しかも、漏洩同軸ケーブルを張り巡らした通信の場合は受信点に時間差を持った複数の同一変調波の到来によるマルチパス干渉の弊害があるが、本発明では其の問題は生じないというメリットがある。このように本発明はいわば、有線LANと無線LANの特徴を程よく取り入れた、有線式無線LAN方式と言うべきものである。
【0008】
このような通信方式を実現するにはアンテナ設備を簡単に、経済的に実現する必要がある。すなわち、本発明では無線LAN本体機器に接続するアンテナとして、同軸ケーブルからなる幹線配線を室内の複数の無線端末PCの設置箇所に迂回して配線し、該幹線同軸ケーブルから各無線端末PCの設置箇所には個別アンテナが枝出し接続されたものを設置する。個別アンテナは同軸ケーブルの先端部の外部導体を剥離して、電波を放射できるようにし、末端部は幹線同軸ケーブルと同軸T型コネクタで接続するのが簡単で好ましい。
【0009】
ここで、個別アンテナの電波の出力は、個別アンテナと無線LAN機能付きPCの通信可能距離は2mを越えるようでは、第三者に情報漏えいの危険性が増すのでそれを超えては通信できない程度に抑制する必要があり、かつ個別アンテナとPCの距離が5cm以内であれば確実に通信できることが必要である。より好ましくは30cm以内
で、確実に通信できることが望ましい。
【0010】
このようなアンテナ能力を抑制した個別アンテナの構造としては、同軸ケーブルの先端部の外部導体の剥離長さを、無線LAN電波の波長の1/4程度の長さから十分短かくして、電波を抑制することも可能である。別の方法では先端部の外部導体を剥離した同軸ケーブルを電波遮蔽壁で囲い、その電波遮蔽壁の一部にはPC設置箇所に向けて電波の放出の程度を調節するための開口部を設け、アンテナの能力を調整するようにしたものを用いることが出来る。例えば、図3のようにアンテナの先端部に金属製のねじ込みキャップで開口部を調節できる構造の棒状の個別アンテナであったり、図4のようにアンテナ先端部が電波遮蔽材のアルミ箔などで二つ折りにカバーされ其の上を保護材で平板にして、其の上にPCを乗せるようにし、かつ移動も出来る構造の、アンテナパッドも好ましい。
【0011】
無線端末PCの設置利用箇所としては、通常は単独人で使用する机や、商談、会議など複数で使用するテーブルなどがあげられる、そして個別アンテナはその机やテーブルに設置される。例えば、個別アンテナを板状のアンテナパッドとして、机やテーブルの天板の上で使用したり、個別アンテナを棒状のものとして天板に突起させたり、天板の中に埋め込んだり、天板の裏に配置したりするなど、スペースやデザイン性を配慮していろいろな置き方で配置することができる。そしてこの個別アンテナの配置具合に適合するように、机やテーブルの天板には無線端末PCの設置位置を明示する必要がある。
【0012】
本発明の有線式無線LAN方式の通信システムの効果をさらに向上させるために、本発明では、無線LAN機能付きPCのアンテナ出力についても、通常の出力を大幅に下げて無線端末PCと個別アンテナの1対1の通信をより確実にする方法が非常に好ましい。そのために、無線端末PCがそのアンテナ出力を高、低2段階以上に切り替えることのできるスイッチを有することが非常に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
有線LANにおけるLANケーブルの物理的結合を行うことなく、無線端末PCの設置利用箇所に無線LAN機能付きPCを置くだけで個別アンテナと1対1の無線LAN通信が出来セキュリティの向上を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の無線LAN用アンテナ設備の配置図
【図2】幹線同軸ケーブルから枝出しした個別アンテナ
【図3】アンテナから出る電波の強度を抑えた棒状の個別アンテナの一例
【図4】アンテナから出る電波の強度を抑えた板状個別アンテナ:アンテナパッド
【符号の説明】
【0015】
1 無線LAN本体機器
2 幹線同軸ケーブル
3 個別アンテナ
4 無線端末PCの設置利用箇所
5 無線端末PC
6 同軸T型コネクタ
7 外部導体
8 絶縁体
9 内部導体
10 開口部
11 開口度調節キャップ
12 同軸ケーブル
13 アンテナパッド




【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LAN本体機器に接続されたアンテナ設備において、同軸ケーブルが幹線配線として複数個所の無線端末PCの設置利用箇所に迂回して配線されており、該幹線同軸ケーブルから各無線端末PCの設置利用箇所に個別アンテナが枝出しされ、該個別アンテナから5cm以内に設置された無線LAN機能付きPCには接続可能な電波が届くが、2mを超えるところのPCには接続できない程度の弱い電波を放射することを特徴とする無線LAN用のアンテナ設備
【請求項2】
個別アンテナから30cm以内に設置された無線LAN機能付きPCには接続可能な電波が届くが、2mを超えるところのPCには接続できない程度の弱い電波を放射することを特徴とする特許請求項1の無線LAN用のアンテナ設備
【請求項3】
個別アンテナは同軸ケーブルの先端部の外部導体を剥離して、電波を放射できるようにし、末端部は幹線同軸ケーブルと同軸T型コネクタで接続した特許請求項1及び2の無線LAN用のアンテナ設備
【請求項4】
同軸ケーブルの先端部の外部導体の剥離長さが、無線LAN電波の波長の1/4より小さくした特許請求項1及び2及び3の無線LAN用のアンテナ設備
【請求項5】
個別アンテナが、先端部の外部導体を剥離した同軸ケーブルを電波遮蔽壁で囲い、その電波遮蔽壁の一部にはPC設置箇所に向けて電波の放出の程度を調節するための開口部を有する構造からなる特許請求項1及び2及び3及び、4の無線LAN用のアンテナ設備
【請求項6】
無線端末PCの設置利用箇所が、個別アンテナを備え、かつ天板上にPCの配置場所が明示された机またはテーブルである特許請求項1及び2及び3及び4及び5の無線LAN用のアンテナ設備
【請求項7】
無線端末PCがそのアンテナ出力を高、低2段階以上に切り替えることのできるスイッチを有することを特徴とする特許請求項1及び2及び3及び、4及び5、及び6の無線LAN用のアンテナ設備




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−35081(P2010−35081A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197300(P2008−197300)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(508233032)
【Fターム(参考)】