説明

無線LAN電話システム

【課題】無線接続品質の状態を正確にユーザに報知することが可能な無線LAN電話システムを提供する。
【解決手段】この無線LAN電話システム100は、音声データを送受信するルータ1と、無線ローカルエリアネットワークを介してルータ1との間で音声データを送受信することにより通話可能に構成された無線IP電話機2とを備えている。また、ルータ1は、無線IP電話機2の通話品質および通信品質の両方に基づいて無線接続品質が劣化しているか否かを判断するとともに、無線接続品質が劣化していると判断した場合に、無線接続品質が劣化していると無線IP電話機2に通知を行うように制御するCPU11を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線LAN電話システムに関し、特に、ネットワーク機器と、ネットワーク機器との間で音声データを送受信する電話装置とを備える無線LAN電話システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク機器と、ネットワーク機器との間で音声データを送受信する電話装置とを備える無線LAN電話システムなどが知られている(たとえば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
上記特許文献1には、LANを経由して音声データを送受信するIP電話装置を備える電話システムが開示されている。この電話システムのIP電話装置には、受信した音声データのうち不足している音声データ量を算出可能な制御部が設けられている。そして、この電話システムのIP電話装置の制御部は、音声データ量の不足量が所定の閾値を超えた場合に、使用者に対してネットワーク通信の劣化を報知音で知らせるように構成されている。
【0004】
また、上記特許文献2には、基地局の電波圏内から電波圏外に出た場合に、ユーザにアラームまたは振動で通知するように制御する制御部を備えた無線電話装置が開示されている。上記特許文献2による無線電話装置の制御部は、基地局からの電波と予め制御部で設定されている電波レベルとを比較することにより基地局の電波圏内から電波圏外に出たか否かを判断するように構成されている。
【0005】
また、上記特許文献3には、基地局からの受信信号の電界の強度(RSSI)と、受信信号のビットの誤り率(BER)とを単独で測定可能な制御部を備えた移動電話機が開示されている。上記特許文献3による移動電話機は、これら電界の強度(RSSI)および受信信号のビットの誤り率(BER)といった回線の品質を判定するとともに、回線の品質が悪いと判定した場合には、回線の切断を行うように構成されている。
【0006】
また、上記特許文献4には、振動モータと、基地局の電波圏内から電波圏外(サービス圏外)に出た場合に、振動モータを駆動するように制御する制御部とを備えた移動局装置が開示されている。上記特許文献4による移動局装置の制御部は、基地局と同期を取ることができない場合に、サービス圏外に位置していると判断するとともに、振動によりユーザに報知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−235637号公報
【特許文献2】特開平6−13975号公報
【特許文献3】特開平7−240967号公報
【特許文献4】特開平9−307952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に開示された電話システムでは、通信品質の指標である音声データ量の不足量のみに基づいてネットワーク通信の状態を判断するため、音声データ量が一時的に不足した場合などにもネットワーク通信が劣化したと判断する場合があるという不都合がある。このため、接続の品質を正確に判断することが困難であるので、接続品質の状態を正確にユーザに報知できない場合があるという問題点がある。
【0009】
また、上記特許文献2〜4に開示された無線電話装置および移動電話機などでは、基地局からの電波レベル、電界の強度(RSSI)、受信信号のビットの誤り率(BER)および基地局と同期を取ることができない場合といった、いわゆる通信品質のみに基づいて無線接続の品質の状態を判断するため、基地局から発せられる電界(電波)などが一時的に干渉されて弱くなった場合などにも無線接続の品質が劣化したと判断する場合があるという不都合がある。このため、上記特許文献2〜4に開示された無線電話装置および移動電話機などでも、無線接続の品質の状態を正確に判断することが困難であるので、無線接続の品質の状態を正確にユーザに報知できない場合があるという問題点がある。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、無線接続品質の状態を正確にユーザに報知することが可能な無線LAN電話システムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0011】
この発明の一の局面による無線LAN電話システムは、音声データを送受信するネットワーク機器と、無線ローカルエリアネットワークを介してネットワーク機器との間で音声データを送受信することにより通話可能に構成された電話装置とを備え、ネットワーク機器は、電話装置の通話品質および通信品質の両方に基づいて無線接続品質が劣化しているか否かを判断するとともに、無線接続品質が劣化していると判断した場合に、無線接続品質が劣化していると電話装置に通知を行うように制御する第1制御部を含む。
【0012】
この発明の一の局面による無線LAN電話システムでは、上記のように、ネットワーク機器に、電話装置の通話品質および通信品質の両方に基づいて無線接続品質が劣化しているか否かを判断するとともに、無線接続品質が劣化していると判断した場合に、無線接続品質が劣化していると電話装置に通知を行うように制御する第1制御部を設けることによって、通信品質のみならず通話品質に基づいても無線接続品質の状態を判断することができるので、たとえば、通信品質が劣化していても通話品質が劣化していない場合には、無線接続品質が劣化していると判断することなく、ユーザに通常の通話を続けさせることができる。これにより、通信品質のみで無線接続品質の状態を判断する場合と比べて、より正確に無線接続品質の状態を判断することができるので、無線接続品質の状態を正確にユーザに報知することができる。
【0013】
上記一の局面による無線LAN電話システムにおいて、好ましくは、通話品質は、音声伝送品質を表わすR値と、所定の手法により算出された音声品質を表わすMOS値とに基づいて判断され、ネットワーク機器の第1制御部は、通信品質に加えて、R値およびMOS値が所定の閾値を下回った場合に、無線接続品質が劣化していると判断するように構成されている。このように構成すれば、R値およびMOS値を算出することにより通話品質の状態を数値化することができるので、通話品質の状態を正確に判断することができる。また、通話品質に音声伝送品質を表わすR値と、所定の手法により算出された音声品質を表わすMOS値との2つの指標を適用することによって、R値およびMOS値のいずれか一方のみより通話品質を判断する場合と比べて、より通話品質の状態を正確に判断することができる。
【0014】
上記一の局面による無線LAN電話システムにおいて、好ましくは、通信品質は、電話装置およびネットワーク機器が互いに通信可能に設定されているチャンネルを使用している機器の数と、単位時間あたりのデータ転送量を表わすスループットとに基づいて判断され、ネットワーク機器の第1制御部は、通話品質に加えて、チャンネルを使用している機器の数が所定の数を超えるとともに、スループットが所定の閾値を下回った場合に、無線接続品質が劣化していると判断するように構成されている。このように構成すれば、チャンネルを使用している機器の数およびスループットのいずれか一方のみで通信品質の状態を判断する場合と比べて、より正確に通信品質の状態を判断することができる。
【0015】
上記一の局面による無線LAN電話システムにおいて、好ましくは、ネットワーク機器の第1制御部は、通話品質の判断を通信品質の判断よりも優先して無線接続品質を判断するように構成されている。ここで、通信品質がある程度劣化している場合にも、通話品質が良好であれば通話を継続できる場合があり、そのような場合に、上記のような通話品質の判断を通信品質よりも優先して行うように構成すれば、無線接続品質が劣化していると判断されるのを抑制することができるので、ユーザが通話することができる上記の場合に無線接続品質が劣化していると通知されるのを抑制することができる。
【0016】
上記一の局面による無線LAN電話システムにおいて、好ましくは、電話装置は、ネットワーク機器から無線接続品質が劣化していると通知された場合に、無線接続品質が劣化していることを通話中のユーザに報知する報知部と、ネットワーク機器から無線接続品質が劣化していると通知された際に、無線接続品質が劣化していることを報知部に報知させる第2制御部とを含む。このように構成すれば、報知部により、ユーザが使用する電話装置を用いて直接的に無線接続品質が劣化していることをユーザに報知することができる。
【0017】
上記報知部が設けられた電話装置を備える無線LAN電話システムにおいて、好ましくは、報知部は、音声、振動および光の少なくともいずれかで報知する第1報知部を含み、電話装置の第2制御部は、ネットワーク機器から無線接続品質が劣化しているとの通知を受信した際に、無線接続品質が劣化していることを第1報知部に報知させるように構成されている。このように構成すれば、容易に、第1報知部により、無線接続品質が劣化していることをユーザに報知することができる。
【0018】
この場合において、好ましくは、報知部は、表示部からなる第2報知部をさらに含み、電話装置の第2制御部は、ネットワーク機器から無線接続品質が劣化しているとの通知を受信した際に、第1報知部により報知される音声、振動および光の少なくともいずれかに加えて、無線接続品質が劣化していることを表示部からなる第2報知部に表示させるように構成されている。このように構成すれば、文字情報を表示部からなる第2報知部に表示させることにより、具体的な無線接続品質の状態をユーザに視覚的に把握させることができる。
【0019】
上記一の局面による無線LAN電話システムにおいて、好ましくは、電話装置は、無線LANにより無線でネットワーク機器と通信されるとともに、ネットワーク機器を介してIPネットワークに接続して音声データの送受信を行うことにより通信可能に構成されたIP電話機能を有する電話装置を含む。このように構成すれば、無線IP電話に適用可能な無線LAN電話システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態による無線LAN電話システムの構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示した無線LAN電話システムの無線電話機の構成を示した正面図である。
【図3】図1に示した無線LAN電話システムのルータのCPUによる無線接続品質の判定フローを説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示した無線LAN電話システムの無線電話機のCPUによる無線接続品質劣化時の制御フローを説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の一実施形態の変形例による無線LAN電話システムの無線電話機の構成を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態による無線LAN電話システム100の構成について説明する。
【0023】
本発明の一実施形態による無線LAN電話システム100は、図1に示すように、インターネットなどの外部ネットワーク(IPネットワーク)と接続され、音声データを含むIPパケットを送受信するルータ1と、無線ローカルエリアネットワーク(無線LAN)を介してルータ1との間で音声データ(IPパケット)を送受信することにより通話可能に構成された無線IP電話機2とにより構成されている。なお、ルータ1は、本発明の「ネットワーク機器」の一例であり、無線IP電話機2は、本発明の「電話装置」の一例である。ここで、ルータ1は、コンピュータネットワークの機能を分類した7層からなるOSI参照モデルにおける第1層(物理層)から第3層(ネットワーク層)までの接続を担い、無線IP電話機2がローカルエリアネットワーク間でのIPパケットをやり取りできるように構成された通信機器である。
【0024】
本実施形態によるルータ1および無線IP電話機2は、それぞれ、所定のチャンネル帯域を用いて無線LANにより互いに通信可能に構成されている。本実施形態のルータ1は、後述するCPU11により、14チャンネルから1つのチャンネルを選択可能に構成されている。また、無線IP電話機2は、後述するCPU21により、ルータ1と同様に14チャンネルから1つのチャンネルを選択可能に構成されている。そして、無線IP電話機2は、ルータ1において選択されたチャンネルを選択した場合に、無線LANを介してルータ1との間で音声データを含むIPパケットを通信可能に構成されている。なお、本実施形態のルータ1は、無線IP電話機2のみならず、無線LANにより通信可能な他の通信機器とも接続可能であり、選択されたチャンネルを用いることによって、複数の通信機器と無線LANにより接続されている。
【0025】
ルータ1は、ルータ1などの制御を司るCPU11と、通信制御プログラムなどが格納されたROM12と、RAM13と、外部ネットワークと接続可能なWAN(Wide Area Network:広域ネットワーク)ポート14と、有線のLANケーブル(図示せず)を接続可能な有線LANポート15と、無線によって音声データを含むIPパケットを送受信可能な無線LAN通信部16とを含んでいる。なお、CPU11は、本発明の「第1制御部」の一例である。
【0026】
ルータ1のCPU11は、接続されている外部ネットワークから送信される音声データを含むIPパケットを、WANポート14から無線LAN通信部16に伝達可能に構成されている。そして、CPU11は、伝達された音声データを含むIPパケットを無線LAN通信部16から無線IP電話機2などの通信機器に送信させる機能を有する。なお、無線IP電話機2などの通信機器から送信される音声データを含むIPパケットは、無線LAN通信部16により受信される。そして、CPU11は、受信された音声データを含むIPパケットを、WANポート14に伝達するとともに、WANポート14から外部ネットワーク(IPネットワーク)に送信する機能を有する。
【0027】
ここで、本実施形態では、ルータ1の無線LAN通信部16は、無線LAN通信部16から送信されたIPパケットを受信可能に構成されている。そして、CPU11は、無線LAN通信部16により、送受信したIPパケット量をカウントする機能を有する。そして、CPU11は、送信されたIPパケット量から無線LAN通信部16が受信したIPパケット量を差し引くように演算可能に構成されている。これにより、CPU11は、IPパケットの損失量を算出可能に構成されている。さらに、カウントしたIPパケット量より、CPU11は、無線LAN通信部16により送受信する単位時間あたりのデータ転送量を表わすスループットを算出可能に構成されている。
【0028】
また、本実施形態では、カウントしたIPパケット量などを用いることにより、CPU11は、ユーザが無線IP電話機2を用いて通話している際の音声伝送品質(通話品質)を表わすR値と、音声品質(通話品質)を表わすMOS値とを算出可能に構成されている。
【0029】
なお、R値は、予め定められた式(Ro−Is−Id−Ie+A)により算出可能である。ここで、Roは、雑音の影響を考慮した信号の大きさを表わしているとともに、Isは、雑音や無線IP電話機2の送話口(後述するマイクロフォン26)から受話口(後述するスピーカ25)へ伝わる音による通話音の劣化を表わしている。また、Idは、遅延やエコーによる通話音の劣化を表わしているとともに、Ieは、音質の劣化を表わしている。また、Aは、プラス要因の補完値である。なお、R値の最大値は、93.2であり、R値が高い値であるほど通話品質がよいとされる。
【0030】
また、MOS値は、電話の通話品質を評価する主観的手法であるが、本実施形態では、CPU11は、PAMSなどの音声品質を評価する客観的手法を用いることによって、MOS値を算出可能に構成されている。このMOS値を用いる音声品質は、5段階で評価され、5が最も音声品質が高い評価である。
【0031】
また、CPU11は、無線IP電話機2およびルータ1が互いに通信可能に設定されているチャンネルを使用している通信機器の数を検出可能に構成されている。なお、ルータ1は、無線LANにより接続されている通信機器に送信できるIPパケット量が予め定められている。そして、接続されている通信機器が多い場合には、無線IP電話機2に送信するためのIPパケット量の割り当てが小さく制限される。
【0032】
そして、本実施形態では、CPU11は、上記R値およびMOS値からなる通話品質と、設定されているチャンネルを使用している通信機器の数およびスループットからなる通信品質との両方に基づいて無線接続品質が劣化しているか否かを判断可能に構成されている。そして、CPU11は、無線接続品質が劣化していると判断した場合に、無線LAN通信部16を介して無線接続品質が劣化していると無線IP電話機2に通知を行う機能を有する。なお、この無線接続品質が劣化しているとの通知は、無線IP電話機2の後述する無線LAN通信部24により受信されるとともに、後述するCPU21にて処理されるように構成されている。
【0033】
また、無線IP電話機2は、無線IP電話機2の制御を司るCPU21と、通信制御プログラムなどが格納されたROM22と、RAM23と、無線によって音声データを含むIPパケットを送受信可能な無線LAN通信部24とを含んでいる。また、無線IP電話機2は、さらに、受話口であるスピーカ25と、送話口であるマイクロフォン26と、ディスプレイ27と、着信時に振動する振動モータ28と、着信時などに発光される光源であるLED29と、複数の操作ボタン30とを含んでいる。なお、本実施形態における無線IP電話機2は、IPネットワークを利用するIP電話機能に加えて、IPネットワークを用いずに基地局を介して通信を行うデジタル方式の3G電話(第3世代携帯電話)機能も有している。なお、CPU21は、本発明の「第2制御部」の一例である。また、スピーカ25、振動モータ28およびLED29は、それぞれ、本発明の「報知部」および「第1報知部」の一例であり、ディスプレイ27は、本発明の「報知部」、「表示部」および「第2報知部」の一例である。
【0034】
無線IP電話機2は、ルータ1の無線LAN通信部16から送信された音声データ(IPパケット)を無線LAN通信部24により受信する。CPU21は、無線LAN通信部24により受信された音声データを音声信号に変換する機能を有する。そして、CPU21は、変換された音声信号をスピーカ25に伝達する機能を有する。また、CPU21は、マイクロフォン26により集音されたユーザの音声信号を音声データ(IPパケット)に変換する。変換された音声データ(IPパケット)は、無線LAN通信部24によりルータ1の無線LAN通信部16に送信されるように構成されている。また、CPU11は、無線IP電話機2などの通信機器から送信される音声データを含むIPパケットは、無線LAN通信部16により受信されるように構成されている。そして、ルータ1のCPU11は、受信された音声データを含むIPパケットをWANポート14から外部ネットワークに送信する機能を有する。
【0035】
また、本実施形態では、CPU21は、ルータ1のCPU11が無線接続品質が劣化していると判断し、無線接続品質が劣化しているとの通知がされた場合には、スピーカ25から警告音を報知させるとともに振動モータ28を駆動させて無線IP電話機2を振動させることにより、無線接続品質が劣化していることを報知させるように構成されている。また、CPU21は、さらに、ルータ1のCPU11が無線接続品質が劣化していると判断し、無線接続品質が劣化しているとの通知がされた場合には、LED29を点灯させるとともにディスプレイ27に無線接続品質が劣化していること(「IP電話を接続する無線LANの電波が弱くなっています。」というメッセージ(図2参照))を表示させる。これにより、無線接続品質が劣化していることを報知させるように構成されている。
【0036】
また、本実施形態では、図2に示すように、無線IP電話機2のCPU21は、ルータ1のCPU11が無線接続品質が劣化していると判断し、無線接続品質が劣化しているとの通知がされた場合には、ディスプレイ27の表示に従って無線LANによるIP電話接続を3G電話接続に切替可能に構成されている。
【0037】
操作ボタン30は、無線IP電話機2の各種設定を行うとともに、上記切替操作を行うために設けられている。具体的には、4つの選択ボタン30a〜30dは、無線IP電話機2の各種設定を行う際に選択肢を選択するために用いるとともに、3G電話接続に切り替えするか否かのYES、NOを選択するために設けられている。また、決定ボタン30eは、選択したYES、NOを決定するために設けられている。
【0038】
次に、図1および図3を参照して、本実施形態によるルータ1のCPU11による無線接続品質の判定フローについて説明する。
【0039】
まず、図3に示すように、ステップS1において、CPU11(図1参照)により、無線IP電話機2が通話中か否かが判断される。そして、ステップS1において、無線IP電話機2が通話中ではないと判断された場合には、本実施形態の判定フローが終了される。また、ステップS1において、無線IP電話機2が通話中であると判断された場合には、ステップS2に進む。
【0040】
その後、ステップS2において、ルータ1において選択された無線LANのチャンネルで接続されている通信機器の数が確認され、ステップS3に進む。そして、ステップS3において、スループットが算出される。このように本実施形態では、ステップS2およびS3において、通信品質の状態が確認される。
【0041】
その後、ステップS4において、R値が算出され、ステップS5に進む。そして、ステップS5において、MOS値が算出される。このように本実施形態では、ステップS4およびS5において、通話品質が確認される。
【0042】
その後、ステップS6において、上記ルータ1において選択された無線LANのチャンネルで接続されている通信機器の数が所定の数を超えているか否かが確認されるとともに、上記スループットが所定の閾値を下回っているか否かが確認される。さらに、ステップS6において、上記R値が所定の閾値を下回っているか否かが確認されるとともに、上記MOS値が所定の閾値を下回っているか否かが確認される。そして、ステップS6において、これら通話品質および通信品質の状態に基づいて、無線接続品質が劣化しているか否かが判断される。すなわち、選択された無線LANのチャンネルで接続されている通信機器の数が所定の数を下回り、かつ、スループット、R値およびMOS値が閾値よりも大きい場合には、無線接続品質が良好であると判断される。なお、CPU11は、上記R値およびMOS値により判断される通話品質の判断を、ルータ1において選択された無線LANのチャンネルで接続されている通信機器の数およびスループットにより判断される通信品質の判断よりも優先して無線接続品質を判断する。すなわち、CPU11は、接続されている通信機器の数が所定の数を超えているとともに、スループットが所定の閾値を下回っている場合であっても、R値およびMOS値が所定の閾値を超えていれば、無線接続品質が劣化していないと判断する。つまり、CPU11は、通話品質が良好で通話を継続できる場合には、通話を継続可能に無線接続品質を判断する。その一方で、CPU11は、接続されている通信機器の数が所定の数を超えておらず、スループットが所定の閾値を超えている場合であっても、R値およびMOS値が所定の閾値を下回っていれば、無線接続品質が劣化していると判断する場合がある。
【0043】
そして、ステップS6において、無線接続品質が劣化していないと判断された場合には、本実施形態の判定フローが終了される。また、無線接続品質が劣化していると判断された場合には、ステップS7に進む。そして、ステップS7において、無線LAN通信部16を介して、無線接続品質が劣化していると通話中の無線IP電話機2に通知され、本実施形態の判定フローが終了される。
【0044】
次に、図1、図2および図4を参照して、本実施形態による無線IP電話機2のCPU21による無線接続品質劣化時の制御フローについて説明する。
【0045】
まず、図4に示すように、ステップS10において、ルータ1から無線接続品質が劣化しているとの通知があったか否かの判断が繰り返される。そして、ルータ1から無線接続品質が劣化しているとの通知があった場合に、ステップS11に進む。そして、ステップS11において、スピーカ25に警告音を報知させるとともに、振動モータ28を駆動させる。さらに、ステップS11において、LED29を点灯させ、ステップS12に進む。その後、ステップS12において、図2に示すように、ディスプレイ27に無線接続品質が劣化していることを表示させ、ステップS13に進む。
【0046】
そして、図3に示すように、ステップS13において、ユーザによる3G電話接続に切り替える操作がされたか否かが判断される。つまり、ユーザによって選択ボタン30a〜30dのいずれかが操作されることにより、3G電話接続に切り替えるYES、NOが選択され、かつ、ユーザによって決定ボタン30eが操作されることにより、選択されたYES、NOが決定されたか否かが判断される。そして、ステップS13において、3G電話接続に切り替える操作がなかった場合には、本実施形態の制御フローが終了される。また、ステップS13において、3G電話接続に切り替える操作があった場合には、ステップS14に進み、3G電話接続に切り替えられた後、本実施形態の制御フローが終了される。
【0047】
本実施形態では、上記のように、ルータ1に、電話装置の通話品質および通信品質の両方に基づいて無線接続品質が劣化しているか否かを判断するとともに、無線接続品質が劣化していると判断した場合に、無線接続品質が劣化していると無線IP電話機2に通知を行うように制御するCPU11を設けることによって、通信品質のみならず通話品質に基づいても無線接続品質の状態を判断することができるので、たとえば、通信品質が劣化していても通話品質が劣化していない場合には、無線接続品質が劣化していると判断することなく、ユーザに通常の通話を続けさせることができる。これにより、通信品質のみで無線接続品質の状態を判断する場合と比べて、より正確に無線接続品質の状態を判断することができるので、無線接続品質の状態を正確にユーザに報知することができる。
【0048】
また、本実施形態では、上記のように、ルータ1のCPU11を、通信品質に加えて、R値およびMOS値が所定の閾値を下回った場合に、無線接続品質が劣化していると判断するように構成することによって、R値およびMOS値を算出することにより通話品質の状態を数値化することができるので、通話品質の状態を正確に判断することができる。また、通話品質に音声伝送品質を表わすR値と、所定の手法により算出された音声品質を表わすMOS値との2つの指標を適用することによって、R値およびMOS値のいずれか一方のみより通話品質を判断する場合と比べて、より通話品質の状態を正確に判断することができる。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、ルータ1のCPU11を、通話品質に加えて、チャンネルを使用している機器の数が所定の数を超えるとともに、スループットが所定の閾値を下回った場合に、無線接続品質が劣化していると判断するように構成することによって、チャンネルを使用している機器の数およびスループットのいずれか一方のみで通信品質の状態を判断する場合と比べて、より正確に通信品質の状態を判断することができる。
【0050】
また、本実施形態では、上記のように、ルータ1のCPU11は、通話品質の判断を通信品質の判断よりも優先的に取り入れて無線接続品質を判断するように構成されている。ここで、通信品質がある程度劣化している場合にも、通話品質が良好であれば通話を継続できる場合があり、そのような場合に、上記のような通話品質の判断を通信品質よりも優先して行うように構成すれば、無線接続品質が劣化していると判断されるのを抑制することができるので、ユーザが通話することができる上記の場合に無線接続品質が劣化していると通知されるのを抑制することができる。
【0051】
また、本実施形態では、上記のように、ルータ1から無線接続品質が劣化していることの通知を受信した際に、無線接続品質が劣化していることをスピーカ25、振動モータ28、LED29およびディスプレイ27に報知させるCPU21を設けることによって、スピーカ25、振動モータ28、LED29およびディスプレイ27により、ユーザが使用する無線IP電話機2を用いて直接的に無線接続品質が劣化していることをユーザに報知することができる。
【0052】
また、本実施形態では、上記のように、無線IP電話機2のCPU21を、ルータ1から無線接続品質が劣化しているとの通知を受信した際に、無線接続品質が劣化していることをディスプレイ27に表示させるように構成することによって、文字情報をディスプレイ27に表示させることにより、具体的な無線接続品質の状態をユーザに視覚的に把握させることができる。
【0053】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
たとえば、上記実施形態では、本発明のネットワーク機器の一例としてルータを適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、無線ローカルエリアネットワークを使用可能な機器であれば、ルータ以外のネットワーク機器を適用してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、本発明の電話装置の一例として無線IP電話機を適用した例について示したが、本発明はこれに限らず、無線LANを適用した電話機であれば、IP電話機以外の電話機を適用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、通話品質を、R値とMOS値との両方により判断する例について示したが、本発明はこれに限らず、R値とMOS値とのいずれか一方のみにより通話品質を判断するようにしてもよい。また、R値およびMOS値以外のパラメータにより通話品質を判断するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、通信品質を、ルータが通信可能に設定されているチャンネルを使用している通信機器の数とスループットとの両方により判断する例について示したが、本発明はこれに限らず、ルータが通信可能に設定されているチャンネルを使用している通信機器の数とスループットとのいずれか一方により通信品質を判断するようにしてもよい。また、ルータが通信可能に設定されているチャンネルを使用している通信機器の数、および、スループット以外のパラメータにより通信品質を判断するようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、MOS値を、PAMSにより客観的に算出した例について示したが、本発明はこれに限らず、MOS値を、PSQMやPESQなどのPAMS以外により客観的に算出するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、無線電話機のCPUを、無線接続品質が劣化していると通知された場合に、スピーカにより警告音を報知し、かつ、振動モータを駆動し、かつ、LEDを点灯するように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、無線電話機のCPUを、無線接続品質が劣化していると通知された場合に、スピーカにより警告音を報知し、振動モータを駆動し、および、LEDを点灯するうちの少なくともいずれか1つの動作を行うように構成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、ルータ1のCPU11を、無線接続品質が劣化していると無線IP電話機2に1回だけ通知するように構成するとともに、無線IP電話機2のCPU21を、ルータ1からの無線接続品質が劣化しているとの通知に対応して、1回だけディスプレイ27に無線接続品質が劣化していること(「IP電話を接続する無線LANの電波が弱くなっています。」というメッセージ)を表示させるように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、ルータ1のCPU11を、上記実施形態に示した無線接続品質の判定の前に、無線接続品質が少し劣化していると無線IP電話機2に通知するように構成するとともに、図5の上記本発明の一実施形態の変形例に示すように、無線IP電話機2のCPU21を、ルータ1からの無線接続品質が少し劣化しているとの通知に対応して、複数回ディスプレイ27に無線接続品質が少し劣化していること(「IP電話を接続する無線LANの電波が少し弱くなっています。」というメッセージ)を表示させるように構成してもよい。なお、この場合、たとえば、1回目の通知の際には、スピーカによる報知およびディスプレイの表示により、無線接続品質が少し劣化していると報知するとともに、2回目の通知の際には、スピーカによる報知、振動モータの駆動およびディスプレイの表示により、無線接続品質が劣化していると報知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 ルータ(ネットワーク機器)
2 無線IP電話機(電話装置)
11 CPU(第1制御部)
21 CPU(第2制御部)
25 スピーカ(報知部、第1報知部)
27 ディスプレイ(報知部、表示部、第2報知部)
28 振動モータ(報知部、第1報知部)
29 LED(報知部、第1報知部、発光部)
100 無線LAN電話システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データを送受信するネットワーク機器と、
無線ローカルエリアネットワークを介して前記ネットワーク機器との間で前記音声データを送受信することにより通話可能に構成された電話装置とを備え、
前記ネットワーク機器は、前記電話装置の通話品質および通信品質の両方に基づいて無線接続品質が劣化しているか否かを判断するとともに、前記無線接続品質が劣化していると判断した場合に、前記無線接続品質が劣化していると前記電話装置に通知を行うように制御する第1制御部を含む、無線LAN電話システム。
【請求項2】
前記通話品質は、音声伝送品質を表わすR値と、所定の手法により算出された音声品質を表わすMOS値とに基づいて判断され、
前記ネットワーク機器の第1制御部は、前記通信品質に加えて、前記R値および前記MOS値が所定の閾値を下回った場合に、前記無線接続品質が劣化していると判断するように構成されている、請求項1に記載の無線LAN電話システム。
【請求項3】
前記通信品質は、前記電話装置および前記ネットワーク機器が互いに通信可能に設定されているチャンネルを使用している機器の数と、単位時間あたりのデータ転送量を表わすスループットとに基づいて判断され、
前記ネットワーク機器の第1制御部は、前記通話品質に加えて、前記チャンネルを使用している機器の数が所定の数を超えるとともに、前記スループットが所定の閾値を下回った場合に、前記無線接続品質が劣化していると判断するように構成されている、請求項1または2に記載の無線LAN電話システム。
【請求項4】
前記ネットワーク機器の第1制御部は、前記通話品質の判断を前記通信品質の判断よりも優先して前記無線接続品質を判断するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線LAN電話システム。
【請求項5】
前記電話装置は、前記ネットワーク機器から前記無線接続品質が劣化していると通知された場合に、前記無線接続品質が劣化していることを通話中のユーザに報知する報知部と、前記ネットワーク機器から前記無線接続品質が劣化していると通知された際に、前記無線接続品質が劣化していることを前記報知部に報知させる第2制御部とを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線LAN電話システム。
【請求項6】
前記報知部は、音声、振動および光の少なくともいずれかで報知する第1報知部を含み、
前記電話装置の第2制御部は、前記ネットワーク機器から前記無線接続品質が劣化しているとの通知を受信した際に、前記無線接続品質が劣化していることを前記第1報知部に報知させるように構成されている、請求項5に記載の無線LAN電話システム。
【請求項7】
前記報知部は、表示部からなる第2報知部をさらに含み、
前記電話装置の第2制御部は、前記ネットワーク機器から前記無線接続品質が劣化しているとの通知を受信した際に、前記第1報知部により報知される音声、振動および光の少なくともいずれかに加えて、前記無線接続品質が劣化していることを前記表示部からなる前記第2報知部に表示させるように構成されている、請求項6に記載の無線LAN電話システム。
【請求項8】
前記電話装置は、無線LANにより無線で前記ネットワーク機器と通信されるとともに、前記ネットワーク機器を介してIPネットワークに接続して音声データの送受信を行うことにより通信可能に構成されたIP電話機能を有する電話装置を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の無線LAN電話システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−273234(P2010−273234A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124934(P2009−124934)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】