説明

無電解めっき液の再生方法

【解決手段】主金属イオン、次亜りん酸イオン、上記主金属イオンの錯化剤、及び亜りん酸イオンを含む無電解めっき液を陽イオン交換樹脂に通液し、金属イオンを分離した次亜りん酸イオン及び亜りん酸イオンを含む脱金属めっき液を通過させる処理と、上記陽イオン交換樹脂に吸着した金属イオンを溶離液にて溶離させ、主金属イオンを分離、回収する処理と、脱金属めっき液を電界透析処理して次亜りん酸イオン及び1価錯化剤イオンを含む1価アニオン溶液と、亜りん酸及び2価以上の錯化剤イオンを含む多価アニオン溶液とに分離する処理とを有する無電解めっき液の再生方法。
【効果】本発明によれば、金属イオン、次亜りん酸イオン及び1価の錯化剤イオンを効率よく回収し得ると共に、亜りん酸やめっき液中に存在する不純物金属イオンを効率よく分離することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次亜りん酸塩を還元剤として含有し、次亜りん酸塩の酸化によって亜りん酸が生成、蓄積した無電解ニッケルめっき液等の無電解めっき液から亜りん酸を効果的に除去して無電解めっき液を効率よく再生することができる無電解めっき液の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次亜りん酸塩を還元剤とする無電解ニッケルめっき液等の無電解めっき液は、めっきの進行につれて次亜りん酸塩が亜りん酸に酸化され、亜りん酸が蓄積されていく。この場合、亜りん酸が0.8〜1.5モル/L程度又はそれ以上蓄積すると、無電解めっき液の析出速度が低下したり、得られる無電解めっき皮膜の物性が低下するなどして使用に供し得ない状態になる。ここでの目安は通常5〜7ターンとされている。なお、1ターンとは、当初のめっき液中の金属イオン濃度に相当する金属量が無電解析出した時期をさす。即ち、無電解ニッケルめっき液の場合、当初のめっき液中のNi2+は通常例えば6g/Lであるが、めっき進行と共にNi2+は低下していく。このため、次亜りん酸塩の補給と共にNi2+を補給により当初濃度6g/Lに維持するようにして連続的にめっきを行うものであるが、このように補給しながらめっきを行って、6g/Lに相当する量の無電解ニッケル膜が得られた時点を1ターンとするものである。
【0003】
このように、無電解めっき液は、亜りん酸の蓄積によりめっき液が老化していくものであるが、亜りん酸を分離除去したり、ニッケル等の金属を無電解老化めっき液から回収するなど、無電解めっき液を再生し、処理する方法が従来から種々提案されている。
【0004】
例えば、特許第3420570号公報(特許文献1)には、
「還元剤として次亜リン酸イオンを含む無電解金属析出浴を電気透析により再生する方法において、それぞれカソード(Ka)及びアノード(An)を有する第一電気透析ユニット(E1)及び第二電気透析ユニット(E2)にて電気透析が実施され、上記第一及び第二電気透析ユニットの両方(E1、E2)で、それぞれ稀釈室と濃縮室とが交互に配置されていて、第一電気透析ユニットの稀釈室(Dila、Di1b、・・・、Di1x)は、その濃縮室(Ko1a、Ko1b、・・・、Ko1x)と、カソード側でモノセレクティブな陽イオン交換膜(KS)によって、アノード側で陰イオン交換膜(A)によって仕切られ、第二電気透析ユニットの濃縮室(Ko2a、Ko2b、・・・、Ko2x)は、その稀釈室(Di2a、Di2b、・・・、Di2x)と、カソード側で陰イオン交換膜(A)によって、アノード側でモノセレクティブな陰イオン交換膜(AS)によって仕切られ、上記無電解金属析出浴の浴液が第一及び第二電気透析ユニット両方(E1;E2)の稀釈室(Dila、Di1b、・・・、Di1x;Di2a、Di2b、・・・、Di2x)を同時に通って送られることを特徴とする無電解金属析出浴を電気透析により再生するための方法。」
が開示されているが、この方法は、Ni2+等の金属イオンを含むめっき液を電界透析しているため、イオン交換膜にNi2+等の金属イオンが電析し、イオン交換膜の寿命を低下させる問題がある。
【0005】
また、上記方法において、上記電界透析後の濃縮流体からNi2+等の金属イオンを回収するため、特表2005−536644号公報(特許文献2)には、
「無電解金属めっき浴を再生するための方法であって、金属めっき浴を電気透析構造(E1、E2)のそれぞれの希釈区画(Di1y、Di2y)に導入し、前記金属めっき浴から除去されるべき妨害物質を吸収するように働く濃縮流体を前記電気透析構造(E1、E2)のそれぞれの濃縮区画(Ko1y、Ko2y)に導入し、当該濃縮区画は、イオン交換膜によって、前記希釈区画(Di1y、Di2y)から分離されている方法において、
前記濃縮流体は、さらに主陽イオン交換体(Ix)内を通され、前記濃縮区画(Ko1y、Ko2y)内に再循環して戻されることを特徴とする方法。」
が開示されているが、特許文献1と同様に、Ni2+等の金属イオンを含有するめっき液を電界透析するため、上記と同様の問題がある。
【0006】
更に、上記方法は、いずれも亜りん酸を次亜りん酸と分離するものであるが、亜りん酸はめっき液のpHが8.5より低いと主にH2PO3-の1価イオンの形態で存在し、pHが8.5以上でHPO32-の2価イオンの形態で存在する。従って、上記特許文献1,2の方法で電界透析を行う場合は、1価イオンの形態で存在する次亜りん酸イオンH2PO2-と分離するため、亜りん酸は2価イオンの形態で存在することが必要で、このため、電界透析すべきめっき液はpHを8.5以上にする必要があり、これは高ければ高いほうがよいが、めっき液のpHを高くしすぎると、Ni2+等の金属イオンが水酸化物となってめっき液中に懸濁することになる上、上記方法で処理すべきめっき液からNa+が移行するとめっき液が酸性状態になり、亜りん酸が1価になるおそれがある。
【0007】
また、特開2007−254805号公報(特許文献3)には、
「無電解ニッケルめっき液中に被めっき物を浸漬させて、前記被めっき物表面にニッケルめっき皮膜を施す無電解ニッケルめっき方法において、亜リン酸イオンが蓄積された前記無電解ニッケルめっき液をニッケルめっき槽から抜き出し、抜き出された前記無電解ニッケルめっき液を、アミン含有有機溶媒と次亜リン酸含有水溶液とを接触させて有機相中に次亜リン酸アミン錯体を形成させ相分離して得られる次亜リン酸アミン錯体含有有機相に接触させ、有機相中に亜リン酸イオンを亜リン酸アミン錯体として抽出するとともに水相中に次亜リン酸イオンを移行させた後、これを相分離して得られる水相を前記ニッケルめっき槽に戻すことを特徴とする無電解ニッケルめっき方法。」
が開示されているが、大量の抽出溶媒を使用するもので、コスト的な問題もあり、処理効率もなお十分ではない。
【0008】
なお、特開2004−307983号公報(特許文献4)には、
「β−ヒドロキシオキシム系抽出剤及び酸性有機リン化合物を含有する有機溶媒を、ニッケル含有水溶液と接触させ、ニッケルを有機溶媒相中に抽出することを特徴とするニッケル含有水溶液からのニッケルの回収方法。」
が開示されているが、次亜りん酸と亜りん酸との分離処理は示されていない。
【0009】
更に、特開2005−42183号公報(特許文献5)には、
「次亜リン酸塩を還元剤とする無電解めっき液の廃液のpHを調整した後、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させ、その後有機相と水相に分離し、再度、無電解めっき液の廃液からなる水相のpH値を調整し、長鎖アルキルアミン系抽出剤を含む有機溶媒と接触させる工程を繰り返すことを特徴とする無電解めっき廃液の処理方法。」
が開示され、特開2007−326023号公報(特許文献6)には、
「無電解ニッケルめっき浴廃液および/または水洗水を、ニッケルイオン濃度が1000mg/L以下となるように調整し、次いでpH1〜6での条件下でキレート樹脂に通してニッケルイオンを吸着させることを特徴とする無電解ニッケルめっき浴廃液および/または水洗水の処理方法。」
が開示されているが、コスト的な問題、処理効率上の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3420570号公報
【特許文献2】特表2005−536644号公報
【特許文献3】特開2007−254805号公報
【特許文献4】特開2004−307983号公報
【特許文献5】特開2005−42183号公報
【特許文献6】特開2007−326023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、亜りん酸が蓄積された無電解めっき液からニッケル等の金属イオン、次亜りん酸イオン及び1価の錯化剤イオンを効率よく回収得ると共に、亜りん酸やめっき液中に存在する不純物金属イオンを効率よく分離することができ、長期に亘り効率のよい無電解めっき液の再生処理をコスト的に安価に実施することができる無電解めっき液の再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、例えば無電解ニッケルめっき液の場合は主金属イオンとしてNi2+と、還元剤として次亜りん酸イオンと、上記主金属イオンを錯化する錯化剤、例えば酢酸、乳酸等の1価の錯化剤アニオン、クエン酸、コハク酸等の2価又は3価の錯化剤アニオンを含む錯化剤を含有する無電解ニッケルめっき液等の無電解めっき液を用いてめっきを行った場合、めっきの進行により亜りん酸が蓄積してくるが、このような亜りん酸が蓄積した無電解めっき液を陽イオン交換樹脂で処理して主金属イオン及びめっき液中の不純物金属イオンを吸着して、次亜りん酸イオン、亜りん酸イオン等を含む脱金属めっき液を分離し、上記陽イオン交換樹脂に吸着した金属イオンは、適宜溶離液で溶離させた後、溶離液から不純物金属イオンを分離除去して主金属イオン(Ni2+等)を回収する一方、上記脱金属めっき液に対し電界透析処理を施すこと、この場合、イオン交換膜としてモノセレクティブなイオン交換膜を用いることで1価アニオンと2価アニオンとを効率よく分離することができ、しかも電界透析処理が施されるめっき液は、Ni2+等の主金属イオンが予め除去されているので、これがイオン交換膜に電析するようなこともなく、また電界透析処理を施すめっき液に主金属イオンが含有されていないため、そのpHを8.5以上よりかなり高く上げても金属水酸化物生成のおそれもなく、長期に亘り安定した効率のよい電界透析処理を行うことができ、コスト的にも安価な処理が可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は下記の無電解めっき液の再生方法を提供する。
請求項1:
主金属イオン、次亜りん酸イオン、上記主金属イオンの錯化剤、及び亜りん酸イオンを含む無電解めっき液を陽イオン交換樹脂に通液し、この陽イオン交換樹脂に上記めっき液中に含まれる主金属イオン及び不純物金属イオンを吸着させると共に、これら金属イオンを分離した、次亜りん酸イオン及び亜りん酸イオンを含む脱金属めっき液を通過させる処理と、上記陽イオン交換樹脂に吸着した金属イオンを溶離液にて溶離させ、この溶離液中の金属イオンから不純物金属イオンを除去して主金属イオンを分離、回収する処理と、上記脱金属めっき液を電界透析処理して次亜りん酸イオン及び1価錯化剤イオンを含む1価アニオン溶液と、亜りん酸及び2価以上の錯化剤イオンを含む多価アニオン溶液とに分離し、上記1価アニオン溶液を回収し、上記2価アニオン溶液を廃棄する処理とを有することを特徴とする無電解めっき液の再生方法。
請求項2:
不純物金属イオンを主金属イオンから分離する処理が有機溶媒抽出法によるものである請求項1記載の再生方法。
請求項3:
不純物金属イオンが分離除去された主金属イオンに有機溶媒抽出処理を施して、主金属イオンの濃縮処理を行うようにした請求項1又は2記載の再生方法。
請求項4:
電界透析処理が、脱金属めっき液中の次亜りん酸イオン及び1価錯化剤イオンを選択的に透過させ、2価以上のアニオンを透過させないモノセレクティブな陰イオン交換膜と、H+を選択的に透過させるモノセレクティブな陽イオン交換膜を備えた電界透析槽を用い、上記モノセレクティブな陰イオン交換膜とモノセレクティブな陽イオン交換膜との間に処理すべき脱金属めっき液を供給して電界透析する処理である請求項1乃至3のいずれか1項記載の再生方法。
請求項5:
無電解めっき液が無電解ニッケルめっき液である請求項1乃至4のいずれか1項記載の再生方法。
請求項6:
処理すべき無電解めっき液が、亜りん酸が増加蓄積して廃棄処理するべき無電解めっき液である請求項1乃至5のいずれか1項記載の再生方法。
請求項7:
処理すべき無電解めっき液がめっき使用中の無電解めっき液であり、該めっき液からその一部又は全てを抜き出して再生処理を行い、回収された主金属イオン並びに次亜りん酸イオン及び1価の錯化剤イオンを上記めっき液に供給、循環するようにした請求項1乃至5のいずれか1項記載の再生方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ニッケル等の金属イオン、次亜りん酸イオン及び1価の錯化剤イオンを効率よく回収し得ると共に、亜りん酸やめっき液中に存在する不純物金属イオンを効率よく分離することができ、長期に亘り係る効率のよい無電解めっき液の再生処理をコスト的に安価に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の無電解めっき液の再生方法に用いる装置の概略説明図である。
【図2】実施例で用いた電界透析装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
被処理めっき液
本発明の再生方法が適用される無電解めっき液は、次亜りん酸ナトリウム等の次亜りん酸塩を還元剤とする無電解めっき液であればいずれのものも使用し得、例えば無電解ニッケルめっき液、無電解コバルトめっき液、無電解鉄めっき液、無電解Ni−Co、Ni−Fe、Ni−Fe−W、Ni−Fe−Moめっき液等の無電解ニッケル合金めっき液、無電解金めっき液などが挙げられ、特に無電解ニッケルめっき液、無電解ニッケル合金めっき液が好適に用いられる。
【0017】
この場合、次亜りん酸塩を還元剤とする無電解めっき液では、めっきの進行と共に次亜りん酸が酸化されて亜りん酸が生成、蓄積され、亜りん酸が0.8〜1.5モル/L程又はそれ以上になるとめっき速度、めっき皮膜等に悪影響を及ぼすおそれがあるため、これを廃棄処理することがあり、本発明はこの廃棄処理されるべき無電解老化めっき液の再生処理に使用することができる。あるいは、亜りん酸が上記ほど蓄積する前に、めっき液の一部を取り出し、これを再生して再度元のめっき液に戻すという、めっきを行いながら再生処理を施す循環処理法にも本発明の再生方法を採用し得る。
【0018】
ここで、再生処理すべきめっき液の典型的な組成としては、金属イオンが5〜7g/L、錯化剤が10〜50g/L、次亜りん酸塩が15〜35g/Lであり、亜りん酸が0.8〜1.5モル/L蓄積しためっき液が挙げられる。
なお、めっき液のpHは酸性でもアルカリ性でもよい。
【0019】
錯化剤としては、1価アニオンのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、2価及び/又は3価アニオンのアルカリ金属塩やアンモニウム塩等が挙げられ、例えば酢酸、りんご酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、マロン酸等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩が挙げられ、これらの1種を単独に又は2種以上を併用して使用することができる。なお、その他に安定剤等として鉛塩やビスマス塩等を添加することもできる。更に、被処理めっき液には、多くの場合、被めっき物や使用成分等に由来、混入された鉄、亜鉛、銅等の金属不純物を含有している。
【0020】
陽イオン交換樹脂処理
本発明においては、上記再生処理すべき無電解めっき液をまず陽イオン交換樹脂を用いて処理する。図1は、これを示すもので、無電解めっき槽又はこのめっき槽と連通してめっき槽に付設された無電解めっき貯槽といった無電解めっき収容槽1に収容された無電解めっき液2をポンプ3により陽イオン交換樹脂塔4に通液し、上記無電解めっき液2中の主金属イオン(例えば、ニッケルめっきの場合であればNi2+)及びめっき液2中に混入されたFe3+、Zn2+、Cu2+等の不純物金属イオン(以下、これらを総称して単に金属イオンという)を陽イオン交換樹脂に吸着させる。これによって金属イオンが吸着分離された脱金属めっき液が陽イオン交換樹脂塔4を通過し、脱金属めっき液貯槽5に導入される。
【0021】
この場合、陽イオン交換樹脂としては、キレート樹脂タイプの陽イオン交換樹脂等が使用され、特に末端イオンがH型のものが好ましい。
【0022】
陽イオン交換樹脂による処理条件としては、公知方法が採用されるが、通液されるめっき液のpHは、3〜6程度に調整することが処理効率の点から好ましい。また、通液速度はSV=0.5〜2で、特にはSV=1が好ましい。なお、処理温度は雰囲気温度でよい。
【0023】
溶離処理
上記のように、陽イオン交換樹脂により処理された後、溶離液を用いて陽イオン交換樹脂に吸着された金属イオンを脱着、溶離させる。溶離液としては強酸が好ましく、塩酸、硝酸等も使用し得るが、回収金属を上記めっき液として再利用する点からは、主金属イオンが通常硫酸塩として使用される点から硫酸を溶離液として使用することが好ましく、図1に示したように、溶離液槽6からポンプ7にて陽イオン交換樹脂塔4に該溶離液を導入し、脱着、溶離処理を行い、塔4を通過した溶離液8を不純物金属分離槽9に導入する。
【0024】
なお、溶離処理条件としては、公知の方法を採用し得、例えば、溶離液の通液速度としては、SV=0.5〜2とすることができる。処理温度は雰囲気温度とすることができる。
この場合、老化めっき液中のNi濃度、キレート樹脂通液条件(通液速度、キレート樹脂量、通液量)、溶離条件(硫酸濃度、通液速度、通液量)によって、溶離液中に含まれるNi濃度(その他金属不純物)を調整することができる。
【0025】
不純物金属イオン除去処理
上記陽イオン交換樹脂に吸着した金属イオンを脱着した後の溶離液中には、主金属イオン及び不純物金属イオンが含まれており、この溶離液8を分離槽10に移し、この溶離液から不純物金属イオンを分離除去する。
【0026】
分離除去方法としては、例えば上記溶離液中に含まれている金属イオンがNi2+とFe3+であれば、この溶離液のpHを5〜6に調整することにより、Fe3+を水酸化鉄として沈殿させることにより分離することができるが、Zn2+やCu2+が混入されていると、水酸化物沈降分離法ではNi2+と良好に分離し難く、この場合は抽出法により不純物金属イオンを抽出し、Ni2+と分離することが好ましい。
【0027】
ここで、使用する抽出液としては、酸性有機りん化合物を含有する抽出有機溶媒が使用し得る。この場合、この有機溶媒は、被処理液のpHが3〜4.5であると、Fe3+、Zn2+、Cu2+等が選択的に抽出され、Ni2+は抽出されないので、上記溶離液のpHを3〜4.5に調整し、上記有機溶媒にて抽出処理を行う。
【0028】
上記酸性有機りん化合物としては、具体的に、ビス(2−エチルヘキシル)リン酸、2−エチルヘキシルリン酸、モノ−2−エチルヘキシルエステル、ビス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン酸等が挙げられる。また、有機溶媒としては、ケロシン、キシレン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、ノルマルパラフィン等の脂肪族炭化水素、1−ナフテン酸、2−ナフテン酸等のナフテン系炭化水素が使用し得る。
【0029】
抽出方法としては公知の方法が採用し得、上記溶離液に対し、その1〜3倍容積の上記有機溶媒を使用し、十分に振とう撹拌する方法を採用し得る。
【0030】
このようにして、抽出処理を行うことにより、上記溶離液中の不純物金属イオンは抽出液(上記有機溶媒)の有機相に移行し、Ni2+等の主金属イオンは溶離液(水相)に滞まり、主金属イオンと不純物金属イオンとに分離される。
なお、抽出液としては、上記抽出溶媒に限られず、主金属イオンと不純物金属イオンとを分離し得るものであればいずれのものも使用し得る。
【0031】
上記水相と分離した有機相は逆抽出槽11に導入し、ここで有機相中の不純物金属イオンはこの有機相を濃度5〜15質量%の硫酸水溶液等からなる逆抽出液と混合して逆抽出を行い、不純物金属イオンをこの水相の逆抽出液に移行させ、次いで中和処理を施すなどの方法で不純物金属イオンを沈降分離処理して廃棄処理することができる。なお、上記逆抽出処理方法としても公知の方法、条件を採用することができる。
【0032】
一方、上記抽出処理で得られた水相には、Ni2+等の主金属イオンが分離されているため、これを回収し、pHを調整したり、濃度を調整し、これを無電解めっき液に再度使用することができ、例えば直接めっき槽に供給したり、主金属イオン補給液槽に供給し、補給に使用したり、新めっき液の調製に使用したりなどすることができる。
この場合、図1に示したように、水相を濃度調整槽12に導入し、水相中のNi2+等の主金属イオン濃度を調整することができる。
【0033】
この不純物金属イオン除去工程(抽出法)では、金属不純物を除去し、硫酸Ni溶液の純度を上げるもので、純度を上げたい場合は不純物金属イオン除去工程を繰り返し行うことができる。従って、硫酸Ni溶液中のNi2+濃度は溶離液中のNi2+イオン濃度のままである。得られた硫酸Niを建浴液として使用する場合は、必要量の硫酸Ni溶液をめっき槽に入れて使用することができ、補給液として使用する場合は、Ni2+が50g/L以上の硫酸Ni溶液が最終的にできあがるように、上記溶離処理の条件を調整(溶離液の濃度と量等)し、その後、所定の補給液濃度(例えばNi2+ 50g/L)に希釈することができる。
なお、安定剤としてPb等の重金属が入っている場合、不純物金属イオン除去工程で若干除去されてしまうので、建浴、補給の際には別途分析補給が必要となる。
【0034】
電界透析処理
一方、上記陽イオン交換樹脂塔4を通過して、金属イオンが吸着分離し、脱金属めっき液貯槽5に導入された脱金属めっき液13は次いでpH調整剤貯槽14からpH調整剤を供給し、脱金属めっき液13のpHを8.5以上に調整する。
【0035】
即ち、上記脱金属めっき液中には、次亜りん酸イオンH2PO2-、亜りん酸イオン、硫酸イオン、1価の錯化剤イオン、2価及び/又は3価の錯化剤イオンが含まれ、更にはカチオンとしてH+、Na+等が含まれているが、このめっき液中のpHが8.5を下回ると、亜りん酸イオンは主としてH2PO3-の1価アニオンとして存在し、pHが8.5以上ではHPO32-の2価アニオンの形態で存在する。後述する電界透析処理では、1価アニオンはイオン交換膜を透過させて回収されるべき液中に移行させる一方、2価以上のアニオンはイオン交換膜を透過させないという1価アニオン選択性のイオン交換膜を用いる必要があるので、除去、廃棄すべき亜りん酸イオンは2価アニオンの形態で存在させる必要がある。従って、上記脱金属めっき液はpHを8.5以上、好ましくは9以上、更に好ましくは9〜10に調整するもので、pHは高いほうがよい。
以上のようにpH処理された脱金属めっき液は、これを電界透析処理する。
【0036】
ここで、図1中、20は電界透析槽、21は陽極、22は陰極で、陽極及び陰極側にそれぞれ陽イオン交換膜23,24を配設し、陽極室21a及び陰極室22aを形成し、これら陽極室21a、陰極室22aにそれぞれ陽極21、陰極22が配設されている。
また、上記陽極側にはモノセレクティブな陰イオン交換膜25、陰極側にはモノセレクティブな陽イオン交換膜26がそれぞれ配設され、中央のモノセレクティブな陰イオン交換膜25とモノセレクティブな陽イオン交換膜26との間に脱金属めっき液供給室27が形成され、陽極側の陽イオン交換膜23とモノセレクティブな陰イオン交換膜25との間に1価アニオン室28が形成され、陰極側の陽イオン交換膜24とモノセレクティブな陽イオン交換膜26との間に1価カチオン室29が形成されている。
【0037】
この場合、上記1価アニオン室28及び1価カチオン室29とはパイプ30a、30bにより互いに連通しており、これら1価アニオン室28及び1価カチオン室29内の液がパイプ30aを通って1価イオン貯槽31に排出されると共に、この貯槽31内の液がパイプ30bを通って上記1価アニオン室28及び1価カチオン室29に供給循環されるようになっている。また、上記脱金属めっき液供給室27は、2価アニオン貯槽32と連通し、脱金属めっき液供給室27内の液が2価アニオン貯槽32に排出されると共に、該貯槽32の液が脱金属めっき液供給室27に供給、循環されるようになっている。
【0038】
上記のような電界透析槽20の構成において、電界透析を行う場合、上記pH調整された脱金属めっき液貯槽5内の脱金属めっき液13は、上記2価アニオン貯槽32に供給し、ここから電界透析槽20の脱金属めっき液供給室27に導入する。この場合、脱金属めっき液13は、2価アニオン貯槽32を介することなく、直接脱金属めっき液供給室27に導入してもよい。なお、陽極室21a、陰極室22a内には濃度1〜20質量%の硫酸水溶液等の電気導電性液が供給され、また1価アニオン室28、1価カチオン室29には予め次亜りん酸ナトリウム0.1〜5g/L水溶液等の導電性液が供給されている。
【0039】
また、上記陽イオン交換膜23,24としては、(株)アストム製ネオセプタCMX等が使用し得る。上記モノセレクティブな陰イオン交換膜25としては、(株)アストム製ネオセプタACS等が好適に用いられる。更に、モノセレクティブな陽イオン交換膜26としては、(株)アストム製ネオセプタCIMSが使用し得る。この場合、モノセレクティブな陽イオン交換膜26は、H+はよく透過させ、Na+は透過を抑制し得、電界透析処理すべき脱金属めっき液のpHを処理中に8.5未満に低下するのを防止することができる。
【0040】
以上のような処理により、脱金属めっき液中の次亜りん酸イオンH2PO2-及び1価の錯化剤アニオンはモノセレクティブな陰イオン交換膜25を通って1価アニオン室28内に移行するが、亜りん酸イオンHPO32-並びに2価及び3価の錯化剤アニオン、更にSO42-等の2価以上のアニオンはモノセレクティブな陰イオン交換膜25を透過せず、脱金属めっき液供給室27に滞まる。また、脱金属めっき液中のカチオンであるH+はモノセレクティブな陽イオン交換膜26を通って1価カチオン室29内に移行する。Na+等のアルカリ金属イオンもモノセレクティブな陽イオン交換膜26を通って1価カチオン室29内に移行させることもできるが、モノセレクティブな陽イオン交換膜26として孔径が小さいNa+、K+を通過させない乃至は通過を抑制し得るものを用いることにより、Na+、K+を1価カチオン室29に移行するのを抑制することができ、これにより脱金属めっき液供給室27内の処理液のpHが8.5未満に低下し、亜りん酸イオンがH2PO3-の1価アニオンとして存在することを確実に抑制することができる。
本発明によれば、電界透析処理を施すめっき液が予めNi2+等の主金属イオンが除去されており、脱金属めっき液中に主金属イオンを含まないので、電界透析中にモノセレクティブな陽イオン膜26にNi等の主金属が電析するおそれがなく、長期間安定して透析処理を行うことができる。
【0041】
以上の電界透析処理により得られ、1価イオン貯槽31に貯えられた処理溶液には、次亜りん酸イオンと1価錯化剤イオンが含まれているので、適宜pHや濃度を調整後、無電解めっき液に供給し、あるいは次亜りん酸塩補給液として使用し、更には新めっき液の調製などに用いることができる。
【0042】
なお、回収アニオン(次亜リン酸、1価錯化剤)の濃度は透析を繰り返すと高くなる。また、次亜リン酸と1価錯化剤のバランスを調整するため、分析及び不足分の補給を行うことが好ましく、補給液として用いる場合、次亜リン酸濃度は100〜600g/Lが好適である。
【0043】
一方、2価アニオン貯槽32に貯えられた液は、亜りん酸イオン、2価錯化剤イオン、更にはSO42-等の多価アニオンが含まれ、主として亜りん酸濃度が高いものであるので、これは直接又は適宜な処理を行った後、酸廃等として廃棄することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0045】
[実施例]
無電解ニッケル老化めっき液として、約6ターンの使用に相当する下記組成をものを処理に供した。
組成
硫酸ニッケル(Ni2+として) 5.5g/L
次亜りん酸ナトリウム 30g/L
亜りん酸 100g/L
酢酸 15g/L
コハク酸 15g/L
Fe3+ 100ppm
Zn2+ 50ppm
Cu2+ 10ppm
pH 4.4
【0046】
脱金属処理
陽イオン交換樹脂として、三菱化学社製のキレート樹脂を用い、上記組成のめっき液を上記陽イオン交換樹脂に通液した。
(通液条件)
陽イオン交換樹脂量:200L
めっき液量:100L(全Ni量550g)
通液速度:SV=1
処理温度:25℃
処理時間:180分
【0047】
溶離処理
溶離液として濃度10質量%の硫酸水溶液を用い、上記陽イオン交換樹脂に吸着した金属イオンを溶離、脱着した。
(溶離条件)
溶離液量:27L
通液速度:SV=1
処理温度:25℃
処理時間:180分
【0048】
得られた溶離液中の金属イオン濃度を原子吸光光度法により測定したところ、下記の結果を得た。
Ni2+ 20g/L(全Ni量540g)
Fe3+ 370mg/L
Zn2+ 185mg/L
Cu2+ 37mg/L
pH <1
【0049】
不純物金属イオン除去処理
上記溶離液中の不純物金属イオン(Fe3+、Zn2+、Cu2+)を抽出法により除去した。
この場合、抽出液としては、LIX84−I(Cognis社製)を用いた。
上記溶離液をカセイソーダ溶液によりpH3.5に調整し、この溶離液100mLを上記抽出液100mLに入れ、下記振とう条件で不純物金属イオンの抽出を行った。
【0050】
(振とう条件)
振とう幅:2cm
振とう速度:0.5秒/回
振とう温度:25℃
振とう時間:15分
pH3.5に調整した溶離液においては、上記振とう処理により不純物金属イオンは抽出有機溶媒(有機相)に移行し、Ni2+は水相に滞まった。上記有機相と水相とを分離し、逆抽出液として10質量%硫酸を有機相100mLに対して100mL用い、下記振とう条件で逆抽出した。
【0051】
(逆抽出振とう条件)
振とう幅:2cm
振とう速度:0.5秒/回
振とう温度:25℃
振とう時間:15分
【0052】
上記逆振とう処理により、有機相中の不純物金属イオン(Fe3+、Zn2+、Cu2+)は硫酸溶液に移行した。これをpH7.0に調整し(中和処理)、不純物金属イオンを沈降分離し、溶液は排水処理した。
一方、水相中のNi2+は、EDTA滴定法による分析で20g/Lであることを確認した。この水相中のNi2+は、水相のpHを調整し、更に濃縮又は希釈又は硫酸ニッケル等を用いてNi2+の不足分の補給によりNi2+濃度を調整したものを無電解ニッケルめっき槽に直接又はニッケルイオン補給槽に供給し、使用に供することができる。
【0053】
脱金属めっき液の電界透析処理
一方、上記陽イオン交換樹脂を通過し、金属イオンが陽イオン交換樹脂に吸着された脱金属めっき液の電界透析を以下のように行った。
図2に示した装置を使用した。図2中、20は電界透析槽であり、21は陽極、22は陰極であり、陽極21、陰極22はそれぞれ陽イオン交換膜23,24により仕切られた陽極室21a、陰極室22aに配置されている。
更に、上記電界透析槽20内は陽極室21a側にモノセレクティブな陰イオン交換膜25、陰極室22a側にモノセレクティブな陽イオン交換膜26が配設されて、中央部に脱金属めっき液供給室27、陽極室21a側に1価アニオン室28、陰極室22a側に1価カチオン室29の3室に仕切られている。なお、1価アニオン室28と1価カチオン室29とはパイプ30により連通している。
【0054】
この場合、上記交換膜としては以下のものを使用した。
(陽イオン交換膜)
(株)アストム製ネオセプタCMX
(モノセレクティブな陰イオン交換膜)
(株)アストム製ネオセプタACS
(モノセレクティブな陽イオン交換膜)
(株)アストム製ネオセプタCIMS
【0055】
上記陽極室21a、陰極室22aには、それぞれ濃度10質量%の硫酸水溶液が収容されており、28には濃度1g/Lの次亜りん酸ナトリウムが収容されており、まず上記陽イオン交換樹脂を通過した脱金属めっき液のpHをNaOHを用いて9.0に調整した後、これを脱金属めっき液室27に供給し、下記条件で電界透析を行った。
【0056】
(電界透析条件)
電圧:15V
電流:1A
温度:30℃
脱金属めっき供給量:1L
処理時間:30分
【0057】
この場合、1価アニオン室28、1価カチオン室29の液はそれぞれ連続的に1価イオン貯槽31に排出すると共に、この1価イオン貯槽31から再度1価アニオン室28、1価カチオン室29に供給、循環させ、一方、脱金属めっき液供給室27の液は2価アニオン貯槽32に排出すると共に、この2価アニオン貯槽32から脱金属めっき液供給室27に供給、循環させた。なお、上記脱金属めっき液もpH調整後、一旦この2価アニオン貯槽32に供給した後、この2価アニオン貯槽32から脱金属めっき液供給室27に供給することができる。
【0058】
以上のようにして、電界透析を行うことにより、図2に示したように、脱金属めっき液中の次亜りん酸イオン(H2PO2-)はモノセレクティブな陰イオン交換膜25を通過して1価イオン貯槽31に入り、亜りん酸イオン(HPO32-)及び硫酸イオン(SO42-)はモノセレクティブな陰イオン交換膜25を通過し得ず、脱金属めっき液供給室27に滞まる。また、錯化剤のうち、1価の酢酸イオンはモノセレクティブな陰イオン交換膜25を通過し、1価イオン貯槽31に入るが、2価のコハク酸イオンはモノセレクティブな陰イオン交換膜25を通過し得ないので、脱金属めっき液供給室27に滞まる。
【0059】
一方、H+はモノセレクティブな陽イオン交換膜26を通過し、1価カチオン室29に入る。この場合、モノセレクティブな陽イオン交換膜26としては、ネオセプタCIMSを使用し、この膜は透過孔が比較的小さいので、H+はNa+より優先的に通過しやすいので、Na+の大半以上が脱金属めっき液供給室27に滞まるため、この室27内のpHが8.5以上に保持された。
【0060】
上記の電界透析条件で行うと、この処理時間(30分)において、1価イオン貯槽中のイオン濃度は以下のようになった。
透析前(老化液より)
次亜リン酸Na 30g/L
亜リン酸 100g/L
酢酸 15g/L
コハク酸 15g/L
透析後
・1価イオン貯槽
次亜リン酸Na 60g/L
酢酸 30g/L
・2価アニオン貯槽
亜リン酸 2g/L
コハク酸 1g/L
(硫酸) 3g/L
【0061】
上記のようにして脱金属めっき液中の1価アニオンと2価アニオンとを分離し、1価イオン貯槽31内の処理済液は、亜りん酸イオン及び1価錯化剤を含有し、そのそれぞれの濃度調整及びpH調整を行った後、無電解ニッケルめっき槽に直接又は次亜りん酸塩補給槽に供給して使用に供することができる。なお、2価アニオン貯槽32内の処理済室は、亜りん酸、硫酸、2価錯化剤が含まれ、これは適宜な処理を施して廃棄処理することができる。
【0062】
また、上記の不純物金属イオン除去処理後の硫酸ニッケルをNi2+ 20g/L濃度で含有する水相を27.5容量%、上記1価イオン貯槽液を50容量%、イオン交換水22.5容量%を混合し、これにめっき組成不足分であるコハク酸を加えて、下記組成
硫酸ニッケル(Ni2+として) 5.5g/L
次亜りん酸ナトリウム 30g/L
酢酸 15g/L
コハク酸 15g/L
pH調整 4.4
の無電解ニッケルめっき液を新たに建浴した。
このめっき液を用いて通常の方法でめっき処理を行ったが、通常のめっきと変わらない析出速度、皮膜外観が得られた。
【符号の説明】
【0063】
1 無電解めっき収容槽
2 無電解めっき液
3、7 ポンプ
4 陽イオン交換樹脂塔
5 脱金属めっき液貯槽
6 溶離液槽
8 溶離液
9 不純物金属分離槽
10 分離槽
11 逆抽出槽
12 濃度調整槽
13 脱金属めっき液
14 pH調整剤貯槽
20 電界透析槽
21 陽極
22 陰極
21a 陽極室
22a 陰極室
23、24 陽イオン交換膜
25 モノセレクティブな陰イオン交換膜
26 モノセレクティブな陽イオン交換膜
27 脱金属めっき液供給室
28 1価アニオン室
29 1価カチオン室
30a、30b パイプ
31 1価イオン貯槽
32 2価アニオン貯槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主金属イオン、次亜りん酸イオン、上記主金属イオンの錯化剤、及び亜りん酸イオンを含む無電解めっき液を陽イオン交換樹脂に通液し、この陽イオン交換樹脂に上記めっき液中に含まれる主金属イオン及び不純物金属イオンを吸着させると共に、これら金属イオンを分離した、次亜りん酸イオン及び亜りん酸イオンを含む脱金属めっき液を通過させる処理と、上記陽イオン交換樹脂に吸着した金属イオンを溶離液にて溶離させ、この溶離液中の金属イオンから不純物金属イオンを除去して主金属イオンを分離、回収する処理と、上記脱金属めっき液を電界透析処理して次亜りん酸イオン及び1価錯化剤イオンを含む1価アニオン溶液と、亜りん酸及び2価以上の錯化剤イオンを含む多価アニオン溶液とに分離し、上記1価アニオン溶液を回収し、上記2価アニオン溶液を廃棄する処理とを有することを特徴とする無電解めっき液の再生方法。
【請求項2】
不純物金属イオンを主金属イオンから分離する処理が有機溶媒抽出法によるものである請求項1記載の再生方法。
【請求項3】
不純物金属イオンが分離除去された主金属イオンに有機溶媒抽出処理を施して、主金属イオンの濃縮処理を行うようにした請求項1又は2記載の再生方法。
【請求項4】
電界透析処理が、脱金属めっき液中の次亜りん酸イオン及び1価錯化剤イオンを選択的に透過させ、2価以上のアニオンを透過させないモノセレクティブな陰イオン交換膜と、H+を選択的に透過させるモノセレクティブな陽イオン交換膜を備えた電界透析槽を用い、上記モノセレクティブな陰イオン交換膜とモノセレクティブな陽イオン交換膜との間に処理すべき脱金属めっき液を供給して電界透析する処理である請求項1乃至3のいずれか1項記載の再生方法。
【請求項5】
無電解めっき液が無電解ニッケルめっき液である請求項1乃至4のいずれか1項記載の再生方法。
【請求項6】
処理すべき無電解めっき液が、亜りん酸が増加蓄積して廃棄処理するべき無電解めっき液である請求項1乃至5のいずれか1項記載の再生方法。
【請求項7】
処理すべき無電解めっき液がめっき使用中の無電解めっき液であり、該めっき液からその一部又は全てを抜き出して再生処理を行い、回収された主金属イオン並びに次亜りん酸イオン及び1価の錯化剤イオンを上記めっき液に供給、循環するようにした請求項1乃至5のいずれか1項記載の再生方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−229449(P2010−229449A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−76131(P2009−76131)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000189327)上村工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】