無電解パラジウムめっき液及び使用法
無電解パラジウムめっき液は、極性溶媒、少なくとも1つのパラジウム塩、少なくとも1つの非窒素化錯化剤、めっき液を少なくとも8.0のpHに調整するアルカリ性調整剤、及び還元剤を含む。めっき液は、基板の表面にパラジウムの層を形成するのに使用され、基板上にほぼ純粋なパラジウム皮膜をもたらす。還元されたパラジウムのめっき液中での析出は実質的に防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解めっき液及びその使用法に関する。より具体的には、本発明は無電解パラジウムめっき液及びその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
卑金属は、耐腐食性の金属膜によって腐食性気体又は液体の攻撃から保護することができ、金属膜の種類は本質的に物品の使用目的によって決定される。例えば溶接ワイヤでは、鉄/鋼鉄はそれに被着した銅薄膜によってさびつきから保護される。電子工業において、金は接着若しくははんだ付けしようとする表面又は電気接点のための表面を被覆するのに一般に使用される。銀はそのマイグレーションする傾向のために、一般に腐食保護には使用されない。ニッケル薄膜も、例えば銅及び銅合金の腐食保護のために使用してもよい。
【0003】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、本明細書に参照により組み込まれる2008年12月5日出願の米国仮出願第61/120,127号の優先権及び利益を主張する。
【0004】
パラジウム薄膜は、電気接点などの基材中の他の金属が、他の金属の酸化が起こり得る接点の表面にマイグレーションするのを防ぐ、すぐれたバリア層として働く。最初に表面を表層で活性化させる。次いで被覆しようとする表面を有する物品を酸性パラジウム溶液中に浸して、極めて微細なパラジウム粒子が形成されるようにする。この粒子上でニッケルの被着が開始する。パラジウムコーティングはシールされないが、非常に細かく分布している。パラジウムで被覆した表面は、灰色の外観を有することがある。表面を完全にシールするのは、その後に続くニッケルコーティングである。
【0005】
表面上にパラジウムの層を生成させる方法は本質的に3つある。これらの方法は、電気めっき法又は電着法、蒸着法、及び無電解めっき法である。電着法は、正確な速度及び適切な電位での被着を確実にするために、精巧で高価な装置を必要とする。電着法のさらなる欠点は、めっきされる表面に電気接点を作らなければならないことである。高度に複雑な回路パターンにおいて、特に特徴密度が高い集積回路において、そのような電気接点は時間がかかり、実現が困難である。さらに、めっきされる表面は、導電性であり外部の電源及び電流源に接続されなければならない。蒸着もまた、いくつかの固有の欠点を有する。多くの用途において、精巧な高真空装置が必要とされ、蒸発の手順において多量のパラジウム金属が無駄に使われる。蒸発したパラジウムがめっきしようとする表面の選択された領域のみに付着するように強制する都合のよい方法は存在しない。言い換えれば、蒸着の手順を用いたパラジウムによるパターン描写は容易には実施されない。
【発明の概要】
【0006】
特に望まれるのは、パラジウムが特定の表面、一般には触媒表面又は感光性表面にめっきされる、パラジウムの無電解めっきの手法である。さらに、そのような手法を適度に安定なめっき液を用いて行うことが望まれる。また、無電解パラジウムめっきの手法によって、実用上重要なめっき厚、特にパラジウムが集積回路などの電気回路において導電性素子として使用されるめっき厚が得られることが望まれる。
【0007】
本明細書に記載される当技術分野の状況にかかわらず、還元されたパラジウムの析出が実質的に防止される、より安定なパラジウムめっき浴を提供することを含み、物品の表面上で実質的に純粋なパラジウム皮膜をもたらす、パラジウムめっき液の調製及び使用におけるさらなる改善が必要とされている。
【0008】
一般に、本発明の一態様は無電解めっき液を提供することである。無電解めっき液は、極性溶媒;少なくとも1つのパラジウム塩;少なくとも1つの非窒素化錯化剤;めっき液を少なくとも8.0のpHに調整するアルカリ性調整剤;及び還元剤を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、物品の表面にパラジウムの層を形成する方法を提供することである。この方法は、金属表面を有する物品を提供するステップと、pHが8.0を超えるパラジウム塩を含む浴を提供するステップと、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供することにより、浴からパラジウムが析出するのを実質的に防止するステップと、還元剤を提供することにより浴からパラジウムを還元させるステップと、パラジウムの層が金属表面の少なくとも一部に形成されるように、金属表面を浴に接触させるステップとを含んでいてもよい。
【0010】
本発明のさらなる態様は、無電解めっき液を提供することである。無電解めっき液は、水、硫酸パラジウム、クエン酸アンモニウム、めっき液を少なくとも8.0のpHに調整する水酸化アンモニウム、フェノール硫酸ナトリウム、及びギ酸ナトリウムを含んでいてもよい。
【0011】
本発明のさらに別の態様において、物品の表面にパラジウムの層を形成する方法が提供される。この方法は、回路基板、微小電極、及び電子部品からなる群から選択される、金属表面を有する物品を提供するステップと、pHが8.0を超えるパラジウム塩を含む作業浴を提供するステップと、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供することにより、浴からパラジウムが析出するのを防止するステップと、還元剤を提供することにより浴からパラジウムを還元させるステップと;パラジウムの層が金属表面の少なくとも一部に形成されるように、金属表面を浴に接触させるステップとを含む。
【0012】
本発明のなおさらに別の実施形態において、無電解めっき液が提供される。無電解めっき液は、水、硫酸パラジウム、クエン酸アンモニウム、めっき液を少なくとも8.0のpHに調整する水酸化アンモニウム、フェノール硫酸ナトリウム、及びギ酸ナトリウムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による、時間及び温度の関数としてパラジウム皮膜の厚みを表すグラフである。
【図2】はんだ付け中の、材料の固相、液相、及び気相の間の表面張力に注目した、濡れバランス解析の概略図である。
【図3】濡れバランス試験中に実施されるステップの概略図である。
【図4】図3に示すように実施される濡れバランス試験中の、時間に対する力の代表的なプロットである。
【図5】濡れバランス試験から得られる代表的プロットの一連の解説である。
【図6】本発明の実施形態による、銅基板上にめっきされたパラジウムにおける濡れバランス試験の結果を示すプロットである。
【図7】銅基板上にめっきされたパラジウムの、72℃及び相対湿度85%にて8時間後の加速劣化における濡れバランス試験の結果を示すプロットである。
【図8】銅基板上にめっきされたパラジウムの、72℃及び相対湿度85%にて24時間後の加速劣化における濡れバランス試験の結果を示すプロットである。
【図9】本発明の実施形態による、はんだボールの広がりを測定する方法を例示する説明図である。
【図10】新たに沈着させた無電解パラジウム(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットされた、はんだボールの広がりのグラフである。
【図11】沈着させた無電解パラジウムの3回パスリフロー(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットされた、はんだボールの広がりのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
無電解パラジウムめっき液は、回路基板などの物品の製造、ハイブリッド回路及び集積回路用基板などの電子部品の生産、及び微小電極アレイの生産において利用することができる。典型的には、パラジウムを物品の表面上に沈着させる。物品の表面は、銅、銀、ニッケル、及びコバルトなどの金属を含んでいてもよい。同様に、物品の表面は銅、銀、ニッケル、及びコバルトなどの金属の合金を含んでいてもよい。パラジウムはまた、腐食防止及びはんだ保護のために物品の表面に沈着させてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、無電解パラジウムめっき液は、少なくとも1つのパラジウム塩、少なくとも1つの非窒素化錯化剤、アルカリ性調整剤、及び還元剤を、水などの極性溶媒中に含む。非窒素化錯化剤の使用により、めっき液中の還元されたパラジウムが使用前に自然に沈殿するのを防ぐことができる。さらに、本発明の還元剤の使用は、実質的に純粋なパラジウム皮膜の形成を促進する。
【0016】
無電解めっき液の少なくとも1つのパラジウム塩としては、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのパラジウム塩は約10.0g/L〜約70.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのパラジウム塩は約30.0g/L〜約50.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。
【0017】
少なくとも1つの非窒素化錯化剤としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明の一実施形態において、少なくとも1つの非窒素化錯化剤は約1.0g/L〜約30.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの非窒素化錯化剤は約5.0g/L〜約20.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。
【0018】
アルカリ性のpHを確立し維持させるために、アルカリ性調整剤を使用してもよい。アルカリ性調整剤としては、アンモニア及び水酸化アンモニウムを挙げることができる。本発明の一実施形態において、アルカリ性調整剤は無電解めっき液のpHを少なくとも8.0のpHに調整する。本発明の別の実施形態において、アルカリ性調整剤は無電解めっき液のpHを少なくとも9.0のpHに調整する。
【0019】
還元剤としては、ギ酸並びにギ酸の塩、すなわち、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、及びギ酸アルミニウムなどの金属ギ酸塩を挙げることができる。本発明の一実施形態において、ギ酸アンモニウムを還元剤として使用するのが望ましい場合もある。本発明の一実施形態において、還元剤は約10.0g/L〜約200.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのパラジウム塩は約50.0g/L〜約150.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。
【0020】
金属の表面にパラジウムの層を形成する方法では、金属表面を有する物品を提供し、pHが8.0を超えるパラジウム塩を含む作業浴と接触させる。浴中のパラジウムの析出は、少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供することにより実質的に防止することができる。適切な錯化剤としては、限定はされないが、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムが挙げられる。物品の金属表面を浴と接触させる前に、還元剤を浴中に提供することによりパラジウムを還元させる。パラジウムを還元させるとすぐ、パラジウムの層が表面の少なくとも一部に形成されるように、物品の金属表面を浴と接触させる。
【0021】
本発明の一実施形態において、物品の金属表面にマイクロエッチングを施し、作業浴と接触させる前に活性化させる。この目的において、マイクロエッチングは典型的には酸化性の酸性浴中で行われる。一実施形態において、マイクロエッチング浴としては、硫酸、硫酸過酸化物、及び水の溶液を挙げることができる。マイクロエッチングの完了後、物品の金属表面を活性化浴にさらすことによって活性化させる。一実施形態において、活性化浴としては、リン酸、硫酸、塩酸、酢酸、及びそれらの混合物と、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、及びそれらの混合物を含めたパラジウム塩との溶液を挙げることができる。活性化浴は、ニトロフェノールスルホン酸ナトリウム、o−ニトロ安息香酸、フェノールスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びそれらの混合物を含めたパラジウム皮膜密度調整剤;硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、及びそれらの混合物を含めたパラジウム皮膜厚調整剤;並びに、Tergitol(登録商標)15−S−9などのエトキシ化第2級直鎖アルコール、及びCarbowax(登録商標)8000などの高分子量グリコールエーテルを含めたパラジウム皮膜均一性調整剤などの、他の成分を含んでいてもよい。浸漬、ガルバニック法によって活性化浴にさらされると、典型的には厚さがオングストロームであるパラジウムの薄層が物品の金属表面上にめっきされる。
【0022】
一実施形態において、物品の金属表面をマイクロエッチング及び活性化浴のそれぞれにさらした後に洗浄し、次いで作業浴と接触させ、その後続いて洗浄及び乾燥を行ってもよい。別の実施形態において、物品の金属表面をマイクロエッチング及び活性化浴にさらさずに作業浴にさらし、その後続いて洗浄及び乾燥を行ってもよい。
【0023】
一般に、作業浴のpHは典型的には4.0を超える。試験結果は、4.0未満のpH値において作業浴が自然に分解する傾向を示すことを示している。特に、パラジウムが不安定になると作業浴が回復する可能性はほとんどなく、典型的にはパラジウム皮膜の黒ずんだ層を生じさせ、このような低いpHでは溶液から析出する場合さえもある。
【0024】
本発明の一実施形態において、作業浴のpHは少なくとも8.0である。本発明のさらに別の実施形態において、作業浴のpHは少なくとも9.0である。pH値が7.0を超える先行技術のパラジウム作業浴は典型的には、物品の金属表面に光沢の少ない仕上がりをもたらすパラジウム皮膜を生じさせ、アルカリ性の環境は被覆された物品上の有機膜を攻撃する傾向を有している。対照的に、少なくとも8.0のpHを有する本発明の作業浴は、色が白味がかった金属のようであり許容可能な均一性及び外観を有するパラジウム皮膜の層をもたらす。
【0025】
本発明の実施形態において、物品の金属の表面上にパラジウムの層を形成する方法は、パラジウムの層を金属表面上に約0.025μm/分〜約0.075μm/分(約1マイクロインチ(μ”)/分〜約3マイクロインチ
(μ”)/分)の速度で沈着させることを含む。本発明の別の実施形態において、パラジウムの層を金属表面上へ被着させるのは、約40℃〜約70℃の範囲の温度で行われる。本発明のさらに別の実施形態において、金属表面上に沈着するパラジウムの層は、厚さが約0.1μm〜約1.0μm(約4マイクロインチ〜約40マイクロインチ)の範囲である。時間及び温度に対するパラジウムの層の厚みを示す代表的なグラフは、図1で見られる。
【0026】
沈着は、処理しようとする物品の金属表面が作業浴中で実質的に垂直方向に浸漬される、従来型の浸漬ユニットで行ってもよい。しかし、物品を処理ユニット全体にわたって水平方向に動かすことができ、例えば物品上の接触領域を選択的に金属化するための金属化ユニット中で、基板の少なくとも一部がめっき浴の溶液と接触することもまた考えられる。
【0027】
下記の実施例は、無電解パラジウムめっき液の成分並びに量を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものとは見なされない。
【実施例1】
【0028】
【表1】
【実施例2】
【0029】
以下の組成の酸洗浄浴を、物品の金属表面の洗浄に使用した:
酸洗浄浴組成
成分 量
脱イオン水 約88.9体積%
グリコール酸 約5.0体積%
硫酸 約1.0体積%
リン酸 約5.0体積%
湿潤剤 約0.05体積%
キレート剤 約0.05体積%
【0030】
パラジウム沈着のための、物品(例えば銅試験片、プリント配線板、又は電子部品)の金属表面の準備において、金属表面から汚染物質を除去するために物品を酸洗浄に供してもよい。酸洗浄浴は、洗浄プロセスを促進するために機械的に又は超音波により撹拌してもよい。
【実施例3】
【0031】
以下の組成のマイクロエッチング浴を、物品の金属表面のエッチングに使用した:
マイクロエッチング浴組成
成分 量
脱イオン水 約50体積%
硫酸過酸化物 約25体積%
硫酸 約25体積%
【0032】
酸洗浄浴中での硫酸過酸化物の使用は、めっきされる物品の金属表面の外観を改善することが示された。
【実施例4】
【0033】
活性化浴
以下の組成の活性化浴を、物品の金属表面の活性化に使用した:
【0034】
【表2】
【実施例5】
【0035】
無電解パラジウム浴
以下の組成の無電解パラジウム浴を、物品の金属表面のめっきに使用した:
成分 量(g/L)
水 1Lまで
クエン酸アンモニウム 15.0g/l,
水酸化アンモニウム(58%) 24mL
フェノールスルホン酸ナトリウム 0.25g/L
硫酸パラジウム溶液(40g/L) 20mL
pH 9.1
【0036】
金属皮膜の量を評価する1つの方法は、はんだ濡れ性試験を行うことである。具体的には、はんだ濡れ性試験は、末端(すなわち、部品リード、取っ手、端子、ワイヤなど)のはんだ濡れ性を評価する方法に関連する。はんだ濡れ性試験を行うための工業規格としては、以下が挙げられる:
1)Mil−Std−883 Method 2003−「Solderability(はんだ濡れ性)」;
2)IPC JSTD−002−「Solderability Tests for Component Leads,Terminations,Lugs,Terminals and Wires(部品リード、末端、取っ手、端子、及びワイヤのはんだ濡れ性試験)」;
3)IPC JSTD−003−「Solderability Tests for Printed Boards(プリント基板のはんだ濡れ性試験)」;及び
4)JESD22−B102;及び5)IEC 60749のPart 21。
【0037】
表面のはんだ濡れ性は、そのはんだの濡れ特性によって定義される。はんだの濡れは、はんだ付けされる面においてすぐれた付着力を示す、比較的均一、滑らかで、連続したはんだの膜の形成に関連する。一方で濡れ不良(Non−wetting)は、はんだコーティングが表面に接しているがそこに完全に付着しなかった状態であり、表面又はその一部に露出を生じさせる。はんだはじき(Dewetting)は、表面の被覆後にはんだが弱まり、不規則なはんだの小山を作り出すが、露出した領域は残さない。
【0038】
2つの最も一般的なはんだ濡れ性試験法としては、浸漬・目視法及び濡れバランス解析が挙げられる。これらの試験の両方において、基板実装前の保存による自然な劣化を考慮に入れるために、試料ははんだ濡れ性について試験される前に加速「劣化」プロセスを受ける。
【0039】
プロセスのQA及び信頼性モニタリングにおいて広く用いられている浸漬・目視法は、定性的な試験法である。すなわち、試料が試験に合格か不合格かの判断は、試料が示す物理的及び視覚的な特性に基づく。
【0040】
一方で、濡れバランス解析は定量的な試験である。すなわちこれは、試験表面がはんだ浴中に浸漬及び保持されたときに、試験表面上で溶融したはんだによってかけられる濡れ力を、時間の関数として測定し、プロットする。プロットは、濡れ力が負である(濡れ不良の状態)状態でスタートし、濡れ力のゼロ軸を横切るまで上昇し、濡れが生じたことを示す。濡れが生じるのにかかる時間は、はんだ濡れ性を評価するのに使用される1つのパラメータである。しかし、濡れバランス解析における確立された工業規格の合格/不合格の判断基準はなく、このことが、製造のモニタリングとしてではなく主にエンジニアリングの道具として濡れバランス解析が使用される理由である。濡れ力は、はんだの密度及び表面張力によって決まる。
【0041】
濡れバランスの測定に用いられる科学原理は、2人の物理学者Thomas Young及びPierre−Simon LaPlaceが、液相、固相、及び気相を互いに接触させるときに生じる表面張力現象を証明した、19世紀にさかのぼる物理法則である。
【0042】
はんだ付けの現象に適用される基本的な濡れの法則は、表面張力に関連する。例えば、金属板の表面上に置かれ、あらかじめフラックス添加され少なくとも合金被着物の溶融温度に等しい温度まで加熱されたはんだ付けの合金ペレットは、液体となりとりわけ固体が濡れ性である場合は広がる。フラックスは不可欠な要素であるが、なぜならこれは金属板が熱の影響下で酸化するのを防ぎ、金属板中に存在し得る酸化物を還元するからである。
【0043】
図2で見られるように、点Oは固体、液体、及びフラックス表面の間の接点を表す。液相は溶融した合金によって表される。固相は部品に相当する。気相はフラックス蒸気に相当する。2つずつが接触したこれらの3つの相は、表面張力と呼ばれる力を生じる。これらの表面張力を支配する方程式としては以下が挙げられる:
γSV+γSL+γLV=0,
γSV=γSL+γLV・cosθ(ヤングの関係)
F=γLV・cosθ・P−ρ・v(ラプラスの法則)
式中、様々なパラメータは以下によって定義される:
F=毛管力;
ρ=溶融合金の比重;
v=部品が溶融合金中に浸漬された部分の体積;
ρ・v=部品が溶融合金中に浸漬された部分によって生じるアルキメデスの原理による浮力;
γSV=固体部品/フラックス蒸気の表面張力;
γSL=固体部品/溶融合金の表面張力;
γLV=溶融合金/フラックス蒸気の表面張力;及び
P=部品の濡れ可能な周囲長
【0044】
上記の方程式は、物理学上及び数学上の両方において、角度θの値が濡れの質(すなわちはんだ濡れ性)を完全に表すものであることの根拠を提供する。一般に、角度θの測定は、以下のように濡れバランスの度合いを与えることができる:
0°<θ<30° 非常に良好な濡れ
30°<θ<40° 良好な濡れ
40°<θ<55° 許容可能な濡れ
55°<θ<70° 濡れが悪い
θ>70° 非常に濡れが悪い
【0045】
これらの関係は、ワイヤ(又は試料)が合金の表面に垂直に浸漬され、寸法が一定である場合に成立する。試料がコイルワイヤである場合、ワイヤを真っすぐにする必要がある。合金中に浸漬しているワイヤは、可能な限り真っすぐであるべきである。
【0046】
濡れバランス試験の実施において、図3で概略的に示されるように、以下のステップがとられ得る:
a.試料がはんだ浴の表面に達する;
b.試料が浸漬深さの端にある;
c.力が平衡である;
d.最大の濡れ力が測定される;
e.試料がはんだ浴から持ち上げられる;及び
f.試料がはんだ浴から取り出される。
【0047】
濡れバランス試験によって得ることができるいくつかの典型的な結果を、図5に概略的に示す。
【0048】
本発明の実施形態によるめっきプロセス後に得られるパラジウム膜の有効性を試験するために、濡れバランス試験を行った。具体的には、試験の実施においてIPC JSTD−003の手順を用いた。この手順に基づき、部品をSAC305はんだにより約255℃の温度で試験した。標準試験フラックス#2をSAC305はんだと共に使用した。はんだ中の滞留時間は約10秒であり、浸漬深さは約0.4mmであった。
【0049】
異なる濡れバランス試験の結果を図6〜8に示す。具体的には、図6は銅基板上にめっきされたパラジウムについての濡れバランス試験の結果を示す。図5に見られるような代表的な濡れバランスの結果と比較すると、このめっきされた材料の濡れバランス試験結果は許容可能な濡れを示す。次に図7は、72℃及び相対湿度85%にて8時間後の、銅基板上にめっきされたパラジウムの加速劣化について、濡れバランス試験の結果を示す。図5に見られるような代表的な濡れバランスの結果と比較すると、このめっきされた材料の濡れバランス試験結果は許容可能な濡れを示す。これらの結果は、劣化させためっき表面が堅固であることを示す。最後に図8は、72℃及び相対湿度85%にて24時間後の、銅基板上にめっきされたパラジウムの加速劣化について、濡れバランス試験の結果を示す。図5に見られるような代表的な濡れバランスの結果と比較すると、このめっきされた材料の濡れバランス試験結果は許容可能な濡れを示す。これらの結果は、めっき表面が堅固な保存期間を有することを示す。
【0050】
はんだボールの広がりを、図9a〜9dに示すような測定方法に従って測定した。すなわち、直径dを有するはんだボール10を、パラジウムで被覆した導体11(図9a及び9b)上に置き、大気中でピーク温度にてリフローさせる(図9c及び9d)。はんだボールの広がり率を、式(L−d)/dを用いて計算した。
【0051】
この評価で用いられるはんだボールは、Senju Metal Industry Companyにより製造されたもので、スズ、銀、及び銅を含有する。はんだボールの広がりの評価を、600μm/760μmのはんだボールを用いて250℃のピーク温度で行った。はんだボールの広がりの結果を図10及び11に示す。図10に示すように、はんだボールの広がりを、新たに沈着させた無電解パラジウム(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットする。得られるプロットは、沈着させたパラジウムの範囲の全体にわたってかなり一致した広がりを示す。図11に示すように、はんだボールの広がりを、沈着させた無電解パラジウムの3回パスリフロー(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットする。得られるプロットは、沈着させたパラジウム層が4マイクロインチを超えるときに一致した広がりを示す。
【0052】
前述の開示に基づけば、無電解めっき液及びその本明細書に記載される使用法は、先に明記した目的を遂行するであろうことが、今や明らかなはずである。したがって、任意の明らかな変形物が、権利主張される本発明の範囲内に含まれ、そのため特定の構成要素の選択は、本明細書に開示及び記載される本発明の精神から逸脱せずに決定できることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解めっき液及びその使用法に関する。より具体的には、本発明は無電解パラジウムめっき液及びその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
卑金属は、耐腐食性の金属膜によって腐食性気体又は液体の攻撃から保護することができ、金属膜の種類は本質的に物品の使用目的によって決定される。例えば溶接ワイヤでは、鉄/鋼鉄はそれに被着した銅薄膜によってさびつきから保護される。電子工業において、金は接着若しくははんだ付けしようとする表面又は電気接点のための表面を被覆するのに一般に使用される。銀はそのマイグレーションする傾向のために、一般に腐食保護には使用されない。ニッケル薄膜も、例えば銅及び銅合金の腐食保護のために使用してもよい。
【0003】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、本明細書に参照により組み込まれる2008年12月5日出願の米国仮出願第61/120,127号の優先権及び利益を主張する。
【0004】
パラジウム薄膜は、電気接点などの基材中の他の金属が、他の金属の酸化が起こり得る接点の表面にマイグレーションするのを防ぐ、すぐれたバリア層として働く。最初に表面を表層で活性化させる。次いで被覆しようとする表面を有する物品を酸性パラジウム溶液中に浸して、極めて微細なパラジウム粒子が形成されるようにする。この粒子上でニッケルの被着が開始する。パラジウムコーティングはシールされないが、非常に細かく分布している。パラジウムで被覆した表面は、灰色の外観を有することがある。表面を完全にシールするのは、その後に続くニッケルコーティングである。
【0005】
表面上にパラジウムの層を生成させる方法は本質的に3つある。これらの方法は、電気めっき法又は電着法、蒸着法、及び無電解めっき法である。電着法は、正確な速度及び適切な電位での被着を確実にするために、精巧で高価な装置を必要とする。電着法のさらなる欠点は、めっきされる表面に電気接点を作らなければならないことである。高度に複雑な回路パターンにおいて、特に特徴密度が高い集積回路において、そのような電気接点は時間がかかり、実現が困難である。さらに、めっきされる表面は、導電性であり外部の電源及び電流源に接続されなければならない。蒸着もまた、いくつかの固有の欠点を有する。多くの用途において、精巧な高真空装置が必要とされ、蒸発の手順において多量のパラジウム金属が無駄に使われる。蒸発したパラジウムがめっきしようとする表面の選択された領域のみに付着するように強制する都合のよい方法は存在しない。言い換えれば、蒸着の手順を用いたパラジウムによるパターン描写は容易には実施されない。
【発明の概要】
【0006】
特に望まれるのは、パラジウムが特定の表面、一般には触媒表面又は感光性表面にめっきされる、パラジウムの無電解めっきの手法である。さらに、そのような手法を適度に安定なめっき液を用いて行うことが望まれる。また、無電解パラジウムめっきの手法によって、実用上重要なめっき厚、特にパラジウムが集積回路などの電気回路において導電性素子として使用されるめっき厚が得られることが望まれる。
【0007】
本明細書に記載される当技術分野の状況にかかわらず、還元されたパラジウムの析出が実質的に防止される、より安定なパラジウムめっき浴を提供することを含み、物品の表面上で実質的に純粋なパラジウム皮膜をもたらす、パラジウムめっき液の調製及び使用におけるさらなる改善が必要とされている。
【0008】
一般に、本発明の一態様は無電解めっき液を提供することである。無電解めっき液は、極性溶媒;少なくとも1つのパラジウム塩;少なくとも1つの非窒素化錯化剤;めっき液を少なくとも8.0のpHに調整するアルカリ性調整剤;及び還元剤を含んでいてもよい。
【0009】
本発明の別の態様は、物品の表面にパラジウムの層を形成する方法を提供することである。この方法は、金属表面を有する物品を提供するステップと、pHが8.0を超えるパラジウム塩を含む浴を提供するステップと、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供することにより、浴からパラジウムが析出するのを実質的に防止するステップと、還元剤を提供することにより浴からパラジウムを還元させるステップと、パラジウムの層が金属表面の少なくとも一部に形成されるように、金属表面を浴に接触させるステップとを含んでいてもよい。
【0010】
本発明のさらなる態様は、無電解めっき液を提供することである。無電解めっき液は、水、硫酸パラジウム、クエン酸アンモニウム、めっき液を少なくとも8.0のpHに調整する水酸化アンモニウム、フェノール硫酸ナトリウム、及びギ酸ナトリウムを含んでいてもよい。
【0011】
本発明のさらに別の態様において、物品の表面にパラジウムの層を形成する方法が提供される。この方法は、回路基板、微小電極、及び電子部品からなる群から選択される、金属表面を有する物品を提供するステップと、pHが8.0を超えるパラジウム塩を含む作業浴を提供するステップと、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供することにより、浴からパラジウムが析出するのを防止するステップと、還元剤を提供することにより浴からパラジウムを還元させるステップと;パラジウムの層が金属表面の少なくとも一部に形成されるように、金属表面を浴に接触させるステップとを含む。
【0012】
本発明のなおさらに別の実施形態において、無電解めっき液が提供される。無電解めっき液は、水、硫酸パラジウム、クエン酸アンモニウム、めっき液を少なくとも8.0のpHに調整する水酸化アンモニウム、フェノール硫酸ナトリウム、及びギ酸ナトリウムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態による、時間及び温度の関数としてパラジウム皮膜の厚みを表すグラフである。
【図2】はんだ付け中の、材料の固相、液相、及び気相の間の表面張力に注目した、濡れバランス解析の概略図である。
【図3】濡れバランス試験中に実施されるステップの概略図である。
【図4】図3に示すように実施される濡れバランス試験中の、時間に対する力の代表的なプロットである。
【図5】濡れバランス試験から得られる代表的プロットの一連の解説である。
【図6】本発明の実施形態による、銅基板上にめっきされたパラジウムにおける濡れバランス試験の結果を示すプロットである。
【図7】銅基板上にめっきされたパラジウムの、72℃及び相対湿度85%にて8時間後の加速劣化における濡れバランス試験の結果を示すプロットである。
【図8】銅基板上にめっきされたパラジウムの、72℃及び相対湿度85%にて24時間後の加速劣化における濡れバランス試験の結果を示すプロットである。
【図9】本発明の実施形態による、はんだボールの広がりを測定する方法を例示する説明図である。
【図10】新たに沈着させた無電解パラジウム(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットされた、はんだボールの広がりのグラフである。
【図11】沈着させた無電解パラジウムの3回パスリフロー(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットされた、はんだボールの広がりのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
無電解パラジウムめっき液は、回路基板などの物品の製造、ハイブリッド回路及び集積回路用基板などの電子部品の生産、及び微小電極アレイの生産において利用することができる。典型的には、パラジウムを物品の表面上に沈着させる。物品の表面は、銅、銀、ニッケル、及びコバルトなどの金属を含んでいてもよい。同様に、物品の表面は銅、銀、ニッケル、及びコバルトなどの金属の合金を含んでいてもよい。パラジウムはまた、腐食防止及びはんだ保護のために物品の表面に沈着させてもよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、無電解パラジウムめっき液は、少なくとも1つのパラジウム塩、少なくとも1つの非窒素化錯化剤、アルカリ性調整剤、及び還元剤を、水などの極性溶媒中に含む。非窒素化錯化剤の使用により、めっき液中の還元されたパラジウムが使用前に自然に沈殿するのを防ぐことができる。さらに、本発明の還元剤の使用は、実質的に純粋なパラジウム皮膜の形成を促進する。
【0016】
無電解めっき液の少なくとも1つのパラジウム塩としては、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明の一実施形態において、少なくとも1つのパラジウム塩は約10.0g/L〜約70.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのパラジウム塩は約30.0g/L〜約50.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。
【0017】
少なくとも1つの非窒素化錯化剤としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及びそれらの混合物を挙げることができる。本発明の一実施形態において、少なくとも1つの非窒素化錯化剤は約1.0g/L〜約30.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの非窒素化錯化剤は約5.0g/L〜約20.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。
【0018】
アルカリ性のpHを確立し維持させるために、アルカリ性調整剤を使用してもよい。アルカリ性調整剤としては、アンモニア及び水酸化アンモニウムを挙げることができる。本発明の一実施形態において、アルカリ性調整剤は無電解めっき液のpHを少なくとも8.0のpHに調整する。本発明の別の実施形態において、アルカリ性調整剤は無電解めっき液のpHを少なくとも9.0のpHに調整する。
【0019】
還元剤としては、ギ酸並びにギ酸の塩、すなわち、ギ酸リチウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸カリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カルシウム、及びギ酸アルミニウムなどの金属ギ酸塩を挙げることができる。本発明の一実施形態において、ギ酸アンモニウムを還元剤として使用するのが望ましい場合もある。本発明の一実施形態において、還元剤は約10.0g/L〜約200.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。本発明の別の実施形態において、少なくとも1つのパラジウム塩は約50.0g/L〜約150.0g/Lの範囲の濃度を有していてもよい。
【0020】
金属の表面にパラジウムの層を形成する方法では、金属表面を有する物品を提供し、pHが8.0を超えるパラジウム塩を含む作業浴と接触させる。浴中のパラジウムの析出は、少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供することにより実質的に防止することができる。適切な錯化剤としては、限定はされないが、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムが挙げられる。物品の金属表面を浴と接触させる前に、還元剤を浴中に提供することによりパラジウムを還元させる。パラジウムを還元させるとすぐ、パラジウムの層が表面の少なくとも一部に形成されるように、物品の金属表面を浴と接触させる。
【0021】
本発明の一実施形態において、物品の金属表面にマイクロエッチングを施し、作業浴と接触させる前に活性化させる。この目的において、マイクロエッチングは典型的には酸化性の酸性浴中で行われる。一実施形態において、マイクロエッチング浴としては、硫酸、硫酸過酸化物、及び水の溶液を挙げることができる。マイクロエッチングの完了後、物品の金属表面を活性化浴にさらすことによって活性化させる。一実施形態において、活性化浴としては、リン酸、硫酸、塩酸、酢酸、及びそれらの混合物と、塩化パラジウム、硫酸パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、及びそれらの混合物を含めたパラジウム塩との溶液を挙げることができる。活性化浴は、ニトロフェノールスルホン酸ナトリウム、o−ニトロ安息香酸、フェノールスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、及びそれらの混合物を含めたパラジウム皮膜密度調整剤;硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、及びそれらの混合物を含めたパラジウム皮膜厚調整剤;並びに、Tergitol(登録商標)15−S−9などのエトキシ化第2級直鎖アルコール、及びCarbowax(登録商標)8000などの高分子量グリコールエーテルを含めたパラジウム皮膜均一性調整剤などの、他の成分を含んでいてもよい。浸漬、ガルバニック法によって活性化浴にさらされると、典型的には厚さがオングストロームであるパラジウムの薄層が物品の金属表面上にめっきされる。
【0022】
一実施形態において、物品の金属表面をマイクロエッチング及び活性化浴のそれぞれにさらした後に洗浄し、次いで作業浴と接触させ、その後続いて洗浄及び乾燥を行ってもよい。別の実施形態において、物品の金属表面をマイクロエッチング及び活性化浴にさらさずに作業浴にさらし、その後続いて洗浄及び乾燥を行ってもよい。
【0023】
一般に、作業浴のpHは典型的には4.0を超える。試験結果は、4.0未満のpH値において作業浴が自然に分解する傾向を示すことを示している。特に、パラジウムが不安定になると作業浴が回復する可能性はほとんどなく、典型的にはパラジウム皮膜の黒ずんだ層を生じさせ、このような低いpHでは溶液から析出する場合さえもある。
【0024】
本発明の一実施形態において、作業浴のpHは少なくとも8.0である。本発明のさらに別の実施形態において、作業浴のpHは少なくとも9.0である。pH値が7.0を超える先行技術のパラジウム作業浴は典型的には、物品の金属表面に光沢の少ない仕上がりをもたらすパラジウム皮膜を生じさせ、アルカリ性の環境は被覆された物品上の有機膜を攻撃する傾向を有している。対照的に、少なくとも8.0のpHを有する本発明の作業浴は、色が白味がかった金属のようであり許容可能な均一性及び外観を有するパラジウム皮膜の層をもたらす。
【0025】
本発明の実施形態において、物品の金属の表面上にパラジウムの層を形成する方法は、パラジウムの層を金属表面上に約0.025μm/分〜約0.075μm/分(約1マイクロインチ(μ”)/分〜約3マイクロインチ
(μ”)/分)の速度で沈着させることを含む。本発明の別の実施形態において、パラジウムの層を金属表面上へ被着させるのは、約40℃〜約70℃の範囲の温度で行われる。本発明のさらに別の実施形態において、金属表面上に沈着するパラジウムの層は、厚さが約0.1μm〜約1.0μm(約4マイクロインチ〜約40マイクロインチ)の範囲である。時間及び温度に対するパラジウムの層の厚みを示す代表的なグラフは、図1で見られる。
【0026】
沈着は、処理しようとする物品の金属表面が作業浴中で実質的に垂直方向に浸漬される、従来型の浸漬ユニットで行ってもよい。しかし、物品を処理ユニット全体にわたって水平方向に動かすことができ、例えば物品上の接触領域を選択的に金属化するための金属化ユニット中で、基板の少なくとも一部がめっき浴の溶液と接触することもまた考えられる。
【0027】
下記の実施例は、無電解パラジウムめっき液の成分並びに量を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものとは見なされない。
【実施例1】
【0028】
【表1】
【実施例2】
【0029】
以下の組成の酸洗浄浴を、物品の金属表面の洗浄に使用した:
酸洗浄浴組成
成分 量
脱イオン水 約88.9体積%
グリコール酸 約5.0体積%
硫酸 約1.0体積%
リン酸 約5.0体積%
湿潤剤 約0.05体積%
キレート剤 約0.05体積%
【0030】
パラジウム沈着のための、物品(例えば銅試験片、プリント配線板、又は電子部品)の金属表面の準備において、金属表面から汚染物質を除去するために物品を酸洗浄に供してもよい。酸洗浄浴は、洗浄プロセスを促進するために機械的に又は超音波により撹拌してもよい。
【実施例3】
【0031】
以下の組成のマイクロエッチング浴を、物品の金属表面のエッチングに使用した:
マイクロエッチング浴組成
成分 量
脱イオン水 約50体積%
硫酸過酸化物 約25体積%
硫酸 約25体積%
【0032】
酸洗浄浴中での硫酸過酸化物の使用は、めっきされる物品の金属表面の外観を改善することが示された。
【実施例4】
【0033】
活性化浴
以下の組成の活性化浴を、物品の金属表面の活性化に使用した:
【0034】
【表2】
【実施例5】
【0035】
無電解パラジウム浴
以下の組成の無電解パラジウム浴を、物品の金属表面のめっきに使用した:
成分 量(g/L)
水 1Lまで
クエン酸アンモニウム 15.0g/l,
水酸化アンモニウム(58%) 24mL
フェノールスルホン酸ナトリウム 0.25g/L
硫酸パラジウム溶液(40g/L) 20mL
pH 9.1
【0036】
金属皮膜の量を評価する1つの方法は、はんだ濡れ性試験を行うことである。具体的には、はんだ濡れ性試験は、末端(すなわち、部品リード、取っ手、端子、ワイヤなど)のはんだ濡れ性を評価する方法に関連する。はんだ濡れ性試験を行うための工業規格としては、以下が挙げられる:
1)Mil−Std−883 Method 2003−「Solderability(はんだ濡れ性)」;
2)IPC JSTD−002−「Solderability Tests for Component Leads,Terminations,Lugs,Terminals and Wires(部品リード、末端、取っ手、端子、及びワイヤのはんだ濡れ性試験)」;
3)IPC JSTD−003−「Solderability Tests for Printed Boards(プリント基板のはんだ濡れ性試験)」;及び
4)JESD22−B102;及び5)IEC 60749のPart 21。
【0037】
表面のはんだ濡れ性は、そのはんだの濡れ特性によって定義される。はんだの濡れは、はんだ付けされる面においてすぐれた付着力を示す、比較的均一、滑らかで、連続したはんだの膜の形成に関連する。一方で濡れ不良(Non−wetting)は、はんだコーティングが表面に接しているがそこに完全に付着しなかった状態であり、表面又はその一部に露出を生じさせる。はんだはじき(Dewetting)は、表面の被覆後にはんだが弱まり、不規則なはんだの小山を作り出すが、露出した領域は残さない。
【0038】
2つの最も一般的なはんだ濡れ性試験法としては、浸漬・目視法及び濡れバランス解析が挙げられる。これらの試験の両方において、基板実装前の保存による自然な劣化を考慮に入れるために、試料ははんだ濡れ性について試験される前に加速「劣化」プロセスを受ける。
【0039】
プロセスのQA及び信頼性モニタリングにおいて広く用いられている浸漬・目視法は、定性的な試験法である。すなわち、試料が試験に合格か不合格かの判断は、試料が示す物理的及び視覚的な特性に基づく。
【0040】
一方で、濡れバランス解析は定量的な試験である。すなわちこれは、試験表面がはんだ浴中に浸漬及び保持されたときに、試験表面上で溶融したはんだによってかけられる濡れ力を、時間の関数として測定し、プロットする。プロットは、濡れ力が負である(濡れ不良の状態)状態でスタートし、濡れ力のゼロ軸を横切るまで上昇し、濡れが生じたことを示す。濡れが生じるのにかかる時間は、はんだ濡れ性を評価するのに使用される1つのパラメータである。しかし、濡れバランス解析における確立された工業規格の合格/不合格の判断基準はなく、このことが、製造のモニタリングとしてではなく主にエンジニアリングの道具として濡れバランス解析が使用される理由である。濡れ力は、はんだの密度及び表面張力によって決まる。
【0041】
濡れバランスの測定に用いられる科学原理は、2人の物理学者Thomas Young及びPierre−Simon LaPlaceが、液相、固相、及び気相を互いに接触させるときに生じる表面張力現象を証明した、19世紀にさかのぼる物理法則である。
【0042】
はんだ付けの現象に適用される基本的な濡れの法則は、表面張力に関連する。例えば、金属板の表面上に置かれ、あらかじめフラックス添加され少なくとも合金被着物の溶融温度に等しい温度まで加熱されたはんだ付けの合金ペレットは、液体となりとりわけ固体が濡れ性である場合は広がる。フラックスは不可欠な要素であるが、なぜならこれは金属板が熱の影響下で酸化するのを防ぎ、金属板中に存在し得る酸化物を還元するからである。
【0043】
図2で見られるように、点Oは固体、液体、及びフラックス表面の間の接点を表す。液相は溶融した合金によって表される。固相は部品に相当する。気相はフラックス蒸気に相当する。2つずつが接触したこれらの3つの相は、表面張力と呼ばれる力を生じる。これらの表面張力を支配する方程式としては以下が挙げられる:
γSV+γSL+γLV=0,
γSV=γSL+γLV・cosθ(ヤングの関係)
F=γLV・cosθ・P−ρ・v(ラプラスの法則)
式中、様々なパラメータは以下によって定義される:
F=毛管力;
ρ=溶融合金の比重;
v=部品が溶融合金中に浸漬された部分の体積;
ρ・v=部品が溶融合金中に浸漬された部分によって生じるアルキメデスの原理による浮力;
γSV=固体部品/フラックス蒸気の表面張力;
γSL=固体部品/溶融合金の表面張力;
γLV=溶融合金/フラックス蒸気の表面張力;及び
P=部品の濡れ可能な周囲長
【0044】
上記の方程式は、物理学上及び数学上の両方において、角度θの値が濡れの質(すなわちはんだ濡れ性)を完全に表すものであることの根拠を提供する。一般に、角度θの測定は、以下のように濡れバランスの度合いを与えることができる:
0°<θ<30° 非常に良好な濡れ
30°<θ<40° 良好な濡れ
40°<θ<55° 許容可能な濡れ
55°<θ<70° 濡れが悪い
θ>70° 非常に濡れが悪い
【0045】
これらの関係は、ワイヤ(又は試料)が合金の表面に垂直に浸漬され、寸法が一定である場合に成立する。試料がコイルワイヤである場合、ワイヤを真っすぐにする必要がある。合金中に浸漬しているワイヤは、可能な限り真っすぐであるべきである。
【0046】
濡れバランス試験の実施において、図3で概略的に示されるように、以下のステップがとられ得る:
a.試料がはんだ浴の表面に達する;
b.試料が浸漬深さの端にある;
c.力が平衡である;
d.最大の濡れ力が測定される;
e.試料がはんだ浴から持ち上げられる;及び
f.試料がはんだ浴から取り出される。
【0047】
濡れバランス試験によって得ることができるいくつかの典型的な結果を、図5に概略的に示す。
【0048】
本発明の実施形態によるめっきプロセス後に得られるパラジウム膜の有効性を試験するために、濡れバランス試験を行った。具体的には、試験の実施においてIPC JSTD−003の手順を用いた。この手順に基づき、部品をSAC305はんだにより約255℃の温度で試験した。標準試験フラックス#2をSAC305はんだと共に使用した。はんだ中の滞留時間は約10秒であり、浸漬深さは約0.4mmであった。
【0049】
異なる濡れバランス試験の結果を図6〜8に示す。具体的には、図6は銅基板上にめっきされたパラジウムについての濡れバランス試験の結果を示す。図5に見られるような代表的な濡れバランスの結果と比較すると、このめっきされた材料の濡れバランス試験結果は許容可能な濡れを示す。次に図7は、72℃及び相対湿度85%にて8時間後の、銅基板上にめっきされたパラジウムの加速劣化について、濡れバランス試験の結果を示す。図5に見られるような代表的な濡れバランスの結果と比較すると、このめっきされた材料の濡れバランス試験結果は許容可能な濡れを示す。これらの結果は、劣化させためっき表面が堅固であることを示す。最後に図8は、72℃及び相対湿度85%にて24時間後の、銅基板上にめっきされたパラジウムの加速劣化について、濡れバランス試験の結果を示す。図5に見られるような代表的な濡れバランスの結果と比較すると、このめっきされた材料の濡れバランス試験結果は許容可能な濡れを示す。これらの結果は、めっき表面が堅固な保存期間を有することを示す。
【0050】
はんだボールの広がりを、図9a〜9dに示すような測定方法に従って測定した。すなわち、直径dを有するはんだボール10を、パラジウムで被覆した導体11(図9a及び9b)上に置き、大気中でピーク温度にてリフローさせる(図9c及び9d)。はんだボールの広がり率を、式(L−d)/dを用いて計算した。
【0051】
この評価で用いられるはんだボールは、Senju Metal Industry Companyにより製造されたもので、スズ、銀、及び銅を含有する。はんだボールの広がりの評価を、600μm/760μmのはんだボールを用いて250℃のピーク温度で行った。はんだボールの広がりの結果を図10及び11に示す。図10に示すように、はんだボールの広がりを、新たに沈着させた無電解パラジウム(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットする。得られるプロットは、沈着させたパラジウムの範囲の全体にわたってかなり一致した広がりを示す。図11に示すように、はんだボールの広がりを、沈着させた無電解パラジウムの3回パスリフロー(マイクロインチ)に対する広がり率(%)の関数としてプロットする。得られるプロットは、沈着させたパラジウム層が4マイクロインチを超えるときに一致した広がりを示す。
【0052】
前述の開示に基づけば、無電解めっき液及びその本明細書に記載される使用法は、先に明記した目的を遂行するであろうことが、今や明らかなはずである。したがって、任意の明らかな変形物が、権利主張される本発明の範囲内に含まれ、そのため特定の構成要素の選択は、本明細書に開示及び記載される本発明の精神から逸脱せずに決定できることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒と;
少なくとも1つのパラジウム塩と;
少なくとも1つの非窒素化錯化剤と;
めっき液を少なくとも8.0のpHに調整するアルカリ性調整剤と;
還元剤と
を含む、無電解めっき液。
【請求項2】
少なくとも1つのパラジウム塩が、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のめっき液。
【請求項3】
非窒素化錯化剤が、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のめっき液。
【請求項4】
アルカリ性調整剤が水酸化アンモニウムである、請求項1に記載のめっき液。
【請求項5】
還元剤がギ酸の塩である、請求項1に記載のめっき液。
【請求項6】
ギ酸の塩がギ酸ナトリウムである、請求項5に記載のめっき液。
【請求項7】
極性溶媒が水である、請求項1に記載のめっき液。
【請求項8】
めっき液のpHが少なくとも9.0である、請求項1に記載のめっき液。
【請求項9】
物品の表面にパラジウムの層を形成する方法であって、
回路基板、微小電極、及び電子部品からなる群から選択される、金属表面を有する物品を提供するステップと;
8.0を超えるpHのパラジウム塩を含む作業浴を提供するステップと;
クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムからなる群から選択される、少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供するステップと;
還元剤を提供することにより浴からパラジウムを還元させるステップと;
パラジウムの層が金属表面の少なくとも一部に形成されるように、金属表面を浴に接触させるステップと
を含む方法。
【請求項10】
硫酸過酸化物の浴中で金属表面にマイクロエッチングを施すステップと;
パラジウム塩を含む酸性浴に金属表面を接触させることにより、金属表面を活性化させるステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
金属表面を活性化させるための酸性浴が、酸化剤、エトキシ化アルコール及びポリオールをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
pHが少なくとも9.0である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
還元剤がギ酸の塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ギ酸の塩がギ酸ナトリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
パラジウムの層を金属表面上に約0.025μm/分〜約0.075μm/分(約1マイクロインチ/分〜約3マイクロインチ/分)の速度で沈着させる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
パラジウムの層を金属表面上に約40℃〜約70℃の範囲の温度で沈着させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金属表面上に沈着するパラジウムの層が、約0.1μm〜約1.0μm(約4マイクロインチ〜約40マイクロインチ)の範囲の厚みを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
金属表面が、銅、銀、ニッケル、及びコバルトのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
金属表面が、銅、銀、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される元素の合金を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
水と;
硫酸パラジウムと;
クエン酸アンモニウムと;
めっき液を少なくとも8.0のpHに調整する水酸化アンモニウムと;
フェノールスルホン酸ナトリウムと;
ギ酸ナトリウムと
を含む無電解めっき液。
【請求項1】
極性溶媒と;
少なくとも1つのパラジウム塩と;
少なくとも1つの非窒素化錯化剤と;
めっき液を少なくとも8.0のpHに調整するアルカリ性調整剤と;
還元剤と
を含む、無電解めっき液。
【請求項2】
少なくとも1つのパラジウム塩が、硫酸パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のめっき液。
【請求項3】
非窒素化錯化剤が、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムナトリウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のめっき液。
【請求項4】
アルカリ性調整剤が水酸化アンモニウムである、請求項1に記載のめっき液。
【請求項5】
還元剤がギ酸の塩である、請求項1に記載のめっき液。
【請求項6】
ギ酸の塩がギ酸ナトリウムである、請求項5に記載のめっき液。
【請求項7】
極性溶媒が水である、請求項1に記載のめっき液。
【請求項8】
めっき液のpHが少なくとも9.0である、請求項1に記載のめっき液。
【請求項9】
物品の表面にパラジウムの層を形成する方法であって、
回路基板、微小電極、及び電子部品からなる群から選択される、金属表面を有する物品を提供するステップと;
8.0を超えるpHのパラジウム塩を含む作業浴を提供するステップと;
クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、リンゴ酸ナトリウム、フェノールスルホン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、及び酒石酸カリウムナトリウムからなる群から選択される、少なくとも1つの非窒素化錯化剤を提供するステップと;
還元剤を提供することにより浴からパラジウムを還元させるステップと;
パラジウムの層が金属表面の少なくとも一部に形成されるように、金属表面を浴に接触させるステップと
を含む方法。
【請求項10】
硫酸過酸化物の浴中で金属表面にマイクロエッチングを施すステップと;
パラジウム塩を含む酸性浴に金属表面を接触させることにより、金属表面を活性化させるステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
金属表面を活性化させるための酸性浴が、酸化剤、エトキシ化アルコール及びポリオールをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
pHが少なくとも9.0である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
還元剤がギ酸の塩である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ギ酸の塩がギ酸ナトリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
パラジウムの層を金属表面上に約0.025μm/分〜約0.075μm/分(約1マイクロインチ/分〜約3マイクロインチ/分)の速度で沈着させる、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
パラジウムの層を金属表面上に約40℃〜約70℃の範囲の温度で沈着させる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金属表面上に沈着するパラジウムの層が、約0.1μm〜約1.0μm(約4マイクロインチ〜約40マイクロインチ)の範囲の厚みを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
金属表面が、銅、銀、ニッケル、及びコバルトのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
金属表面が、銅、銀、ニッケル、及びコバルトからなる群から選択される元素の合金を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
水と;
硫酸パラジウムと;
クエン酸アンモニウムと;
めっき液を少なくとも8.0のpHに調整する水酸化アンモニウムと;
フェノールスルホン酸ナトリウムと;
ギ酸ナトリウムと
を含む無電解めっき液。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−511105(P2012−511105A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539735(P2011−539735)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066767
【国際公開番号】WO2010/065851
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510267878)オーエムジー、アメリカズ、インク (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2009/066767
【国際公開番号】WO2010/065851
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(510267878)オーエムジー、アメリカズ、インク (3)
【Fターム(参考)】
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