説明

焦点板、測光装置、およびカメラ

【課題】 測光用のセンサ上での明るさの不均一を低減できる焦点板、測光装置、および、カメラを提供する。
【解決手段】 本発明の焦点板10は、光を拡散する拡散面12と、光を第1の方向(光L1の方向)に収斂する第1レンズ部13と、光を第1の方向とは異なる第2の方向(光L2の方向)に収斂する第2レンズ部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体像のピント調節などに用いられる焦点板、測光装置、およびカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
拡散面とフレネルレンズとを備えた焦点板が知られている。焦点板には被写体像が投影され、焦点板からの拡散光はフレネルレンズの作用によって接眼レンズの方向に収斂される。フレネルレンズによって収斂された拡散光(円形断面)の一部は接眼レンズに入射するため、この一部の拡散光に基づいて、焦点板上の被写体像を観察することができる。そして、焦点板上の被写体像を観察しながら、被写体像のピント調節が行われる。
【0003】
また、拡散面による拡散光の一部(接眼レンズに入射しない光)を利用して測光することも提案されている(例えば特許文献1を参照)。測光用のレンズやセンサはフレネルレンズの光軸から外れた斜めの方向に配置され、センサ上には上記の拡散光の一部に基づく被写体像が形成される。このため、センサの出力に基づいて、被写体像の明るさを測定することができる。
【特許文献1】特開2002−90817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の構成では、接眼レンズ方向へ指向性を有する拡散光を接眼レンズと異なる位置で測光するため、測光用レンズの焦点板に対する見込み角と拡散光の指向方向とのズレによって測光用のセンサ上での被写体像の明るさが不均一になってしまう。
本発明の目的は、測光用のセンサ上での明るさの不均一を低減できる焦点板、測光装置、および、カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の焦点板は、光を拡散する拡散面と、前記光を第1の方向に収斂する第1レンズ部と、前記光を前記第1の方向とは異なる第2の方向に収斂する第2レンズ部とを備えたものである。
また、前記第1レンズ部と前記第2レンズ部とは、光学部材の同一面に配置されることが好ましい。
【0006】
また、前記第1レンズ部と前記第2レンズ部とは、焦点距離が異なることが好ましい。
また、前記第1レンズ部と前記第2レンズ部は、フレネルレンズからなることが好ましい。
また、前記第1レンズ部と前記第2レンズ部は、各々の前記フレネルレンズの輪帯が所定面において同心円状に配置されることが好ましい。
【0007】
また、前記フレネルレンズの輪帯の面積に関わる前記第1レンズ部と前記第2レンズ部との比は、前記所定面の各部ごとに略一定であることが好ましい。
また、前記フレネルレンズの輪帯の数は、前記第1レンズ部の方が前記第2レンズ部より多いことが好ましい。
また、前記フレネルレンズの輪帯のピッチは、前記第1レンズ部の方が前記第2レンズ部より細かいことが好ましい。
【0008】
本発明の焦点板は、光を拡散する拡散面と、前記光を第1の方向に収斂する第1レンズ部と、前記光の断面を前記第1の方向とは異なる第2の方向に引き延ばす第2レンズ部とを備えたものである。
また、前記第2レンズ部は、前記拡散面および前記第1レンズ部より像側に配置されることが好ましい。
【0009】
また、前記第1レンズ部は、フレネルレンズからなることが好ましい。
また、前記第2レンズ部は、レンチキュラレンズからなることが好ましい。
また、前記レンチキュラレンズのピッチは、前記フレネルレンズのピッチ以下であることが好ましい。
本発明の測光装置は、上記の焦点板を備え、前記第2の方向に向かう光を測光するものである。
【0010】
本発明のカメラは、上記の焦点板または測光装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、測光用のセンサ上での明るさの不均一を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
ここでは、図1〜図4に示す通り、本実施形態の焦点板10をカメラ20に組み込んだ例で説明する。カメラ20は、一眼レフレックスカメラであり、撮影レンズ2Aとカメラ本体2Bとで構成される。図1には、撮影レンズ2Aがカメラ本体2Bに装着された状態を示す。図2〜図4には、本実施形態の焦点板10の構成などを示す。
【0013】
被写体からの光は、撮影レンズ2Aの内部の光学系21を通過した後、カメラ本体2Bの内部に導かれる。カメラ本体2Bの内部では、撮影の際に、メインミラー22が点線の状態に跳ね上げられ、所定の露光タイミングでシャッタ28が開かれる。このため、カメラ本体2Bの内部に導かれた光は、そのまま直進して撮像素子29に入射する。このとき、撮像素子29には、撮影レンズ2Aの光学系21によって被写体像が形成される。
【0014】
そして、撮像素子29の出力がカメラ本体2Bの制御回路(不図示)にて処理され、撮影画像として不図示の画像メモリや表示装置などに出力される。撮像素子29は、例えばCCD撮像素子やCMOS撮像素子などである。撮像素子29の代わりにフィルムを配置しても構わない。
さらに、このような撮影動作に先立って、カメラ20では、次のようにして被写体像のピント調節や測光などが行われる。
【0015】
撮影の前、メインミラー22は実線の状態に保持される。このため、カメラ本体2Bの内部に導かれた光は、メインミラー22で反射した後、本実施形態の焦点板10に入射する(光L0)。焦点板10の位置は上記した撮像素子29と略共役であり、焦点板10には撮影レンズ2Aの光学系21によって被写体像が投影される。そして、この被写体像に基づいてピント調節や測光などの処理が行われる。
【0016】
本実施形態の焦点板10は、図2(a)に示す通り、透明な板状の光学部材11からなり、その片面に拡散面12が形成され、もう一方の片面に2種類のフレネルレンズ13,14が形成されたものである。2種類のフレネルレンズ13,14は光学部材11の同一面に配置され、その面においてフレネルレンズ13の輪帯(1)〜(4)とフレネルレンズ14の輪帯(1),(2)は図2(b)のような同心円状に配置されている。
【0017】
さらに、本実施形態の焦点板10は、フレネルレンズ13,14の中心を通ってフレネルレンズ13,14の形成面に垂直な軸AXが、撮影レンズ2Aの光学系21の光軸(メインミラー22で折り曲げられた後の光軸)と重なるように配置される。
この焦点板10において、メインミラー22からの光L0は、拡散面12を透過する際に拡散され、その後、フレネルレンズ13,14に入射する。フレネルレンズ13,14は、拡散面12からの拡散光を2つの異なる方向に分けて収斂し、各方向の光L1,L2を後段のペンタプリズム23(図1)に導く。フレネルレンズ13,14の各構成と収斂の方向は次のようになっている。
【0018】
フレネルレンズ13の輪帯(1)〜(4)の各々は、図3(a),(b)に示す通り、軸AXを 中心とする周方向に沿って、フレネル斜面の角度θ13が一定である。ただし、角度θ13をフレネルレンズ13の異なる輪帯どうし(例えば輪帯(1)と輪帯(2))で比べると、互いに異なるのが一般的である。
フレネルレンズ13の輪帯(1)〜(4)の形状は、上記の角度θ13の他、径R13によっても特徴づけられ、フレネルレンズ13の光学特性に応じて定められる。フレネルレンズ13は、各輪帯の角度θ13が軸AXを中心とする周方向に沿って一定のため、拡散面12からの拡散光を軸AXに平行な方向に収斂することができる(光L1)。
【0019】
これに対し、フレネルレンズ14の輪帯(1),(2)の各々は、図3(c),(d)に示す通り、上記の軸AXを中心とする周方向に沿って、フレネル斜面の角度θ14が連続的に変化する構成となっている。この角度θ14も、フレネルレンズ14の異なる輪帯どうし(例えば輪帯(1)と輪帯(2))で比べると、互いに異なるのが一般的である。
フレネルレンズ14の輪帯(1),(2)の形状は、上記の角度θ14の他、径R14によっても特徴づけられ、フレネルレンズ14の光学特性に応じて定められる。フレネルレンズ14は、各輪帯の角度θ14が軸A14を中心とする周方向に沿って連続的に変化するため、拡散面12からの拡散光を軸AXに対して斜めの方向に収斂することができる(光L2)。
【0020】
このようなフレネルレンズ14は、上記のフレネルレンズ13にプリズム成分を加えたものと考えることができる。プリズム成分とは、フレネルレンズ13による収斂の方向と異なる方向に光を屈折させる成分であり、フレネルレンズ14の輪帯(1),(2)の各々の 角度θ14の変化として加えることができる。
本実施形態の焦点板10(図2)は、上記したように、拡散面12からの拡散光を、軸AXに平行な方向に収斂するフレネルレンズ13と、これとは僅かに異なる方向(つまり軸AXに対して斜めの方向)に収斂するフレネルレンズ14とを備え、各方向に収斂された光L1,L2を、ペンタプリズム23(図1)に導く。
【0021】
フレネルレンズ13によって収斂された光L1は、ペンタプリズム23の内部で反射された後、接眼レンズ24を介して撮影者の眼に導かれる。このため、焦点板10からの光L1に基づいて、焦点板10上の被写体像を観察することができる。そして、焦点板10上の被写体像を観察しながら、被写体像のピント調節が行われる。また、光学ファインダによる構図の確認を行うこともできる。
【0022】
一方、フレネルレンズ14によって収斂された光L2は、上記の光L1とは僅かに異なる方向に進行し、ペンタプリズム23の内部で反射された後、測光系(25〜27)に導かれ、レンズ25とプリズム26とを介して、センサ27に入射する。センサ27は、例えばCCD撮像素子やCMOS撮像素子などである。
このとき、センサ27には、焦点板10からの光L2に基づく被写体像が形成される。また、センサ27の各画素における光電変換の結果は、カメラ本体2Bの制御回路(不図示)に出力される。このため、センサ27の出力に基づいて、被写体像の明るさを測定することができる。さらに、得られた測光値に基づいて露出制御が行われる。
【0023】
ここで、本実施形態の焦点板10から接眼レンズ24に向かう光L1と、焦点板10から測光系(25〜27)のレンズ25に向かう光L2について、各光路の様子を図4に示す。図4では、ペンタプリズム23での光路を展開し、ペンタプリズム23を柱状の光学部材として示した。
焦点板10から接眼レンズ24に向かう光L1は、上記の軸AXに沿って進行する光であり、換言すると、焦点板10のフレネルレンズ13(図2(a),図3(a))によって収斂された光である。このため、フレネルレンズ13による収斂の方向は、接眼レンズ24の方向と言うことができる。
【0024】
また、焦点板10から測光系(25〜27)のレンズ25に向かう光L2は、軸AXとは僅かに異なる斜めの方向に進行する光であり、換言すると、焦点板10のフレネルレンズ14(図2(a),図3(b))によって収斂された光である。このため、フレネルレンズ14による収斂の方向は、測光系(25〜27)のレンズ25の方向と言うことができる。
測光系(25〜27)は軸AXから外れた斜めの方向に配置されているが、焦点板10のフレネルレンズ14によって測光系(25〜27)のレンズ25の方向に光L2を収斂するため、この光L2を測光系(25〜27)に直接入射させることができる。
【0025】
したがって、本実施形態の焦点板10を用いれば、フレネルレンズ13によって接眼レンズ24の方向に収斂された光L1の漏れ光(接眼レンズ24に入射しない光)が測光系(25〜27)に入射しても、その影響を小さくすることができ、センサ27上での明るさの不均一を低減することができる。
さらに、焦点板10の拡散面12の拡散性を低くして、光L1の漏れ光が測光系(25〜27)に入射しないようにすれば、測光系(25〜27)に入射する光はフレネルレンズ14によって収斂された光L2のみとなる。このため、センサ27上での明るさを略均一にすることができる。
【0026】
また、本実施形態の焦点板10によれば、2種類のフレネルレンズ13,14を光学部材11の同一面に配置し、フレネルレンズ13の輪帯(1)〜(4)とフレネルレンズ14の輪帯(1),(2)を同心円状に配置したので、良好な光学特性を得ることができる。
さらに、本実施形態では、接眼レンズ24と測光系(25〜27)のレンズ25が軸AXの方向に関して異なる位置に配置されている。この場合、各配置に合わせて、焦点板10のフレネルレンズ13,14の焦点距離を異ならせることが好ましく、接眼レンズ24より後段のアイポイントでも測光系(25〜27)のセンサ27上でも、鮮明な被写体像を得ることが好ましい。ただし、アイポイントでは鮮明な被写体像を得るように、測光系(25〜27)のセンサ27上では少しピントの外れた被写体像を得るように、フレネルレンズ13,14の焦点距離を決めてもよい。
【0027】
また、本実施形態の焦点板10では、観察用のフレネルレンズ13の輪帯数(例えば4本)の方が、測光用のフレネルレンズ14の輪帯数(例えば2本)より多い。したがって、測光系(25〜27)のレンズ25の方向より接眼レンズ24の方向に多くの光を振り向けることができ、接眼レンズ24を介して明るい被写体像を観察することができる。ちなみに、上記の輪帯数(4本や2本)は説明を分かりやすくするための例示である。実際の輪帯数は4本や2本より遙かに多くなる。
【0028】
さらに、本実施形態の焦点板10では、フレネルレンズ13,14の輪帯のピッチに関して、観察用のフレネルレンズ13の方を測光用のフレネルレンズ14より細かくすることが好ましい。観察用のフレネルレンズ13の輪帯(1)〜(4)のピッチを細かくすれば、接眼レンズ24を介して観察される被写体像の解像度を高めることができ、被写体像の観察を良好に行える。
【0029】
この場合、フレネルレンズ13の輪帯のピッチを細かくした分だけ、フレネルレンズ13の輪帯数を増やし、フレネルレンズ13の輪帯の総面積をフレネルレンズ14の輪帯の総面積より大きくすることが好ましい。フレネルレンズ13の輪帯の総面積を大きく確保できれば、接眼レンズ24を介して明るい被写体像を観察することができる。フレネルレンズ13,14の輪帯のピッチは、その形成面の各部において変えても構わない。
【0030】
また、本実施形態の焦点板10では、フレネルレンズ13,14の形成面の各部において、フレネルレンズ13,14の輪帯の面積比を略一定にすることが好ましい。この場合、焦点板10の各部において、接眼レンズ24の方向に導かれる光L1と測光系(25〜27)のレンズ25の方向に導かれる光L2との強度比を略一定にすることができる。したがって、アイポイントや測光系(25〜27)のセンサ27上での明るさの不均一を確実に低減することができる。
【0031】
(第1実施形態の変形例)
なお、上記した第1実施形態では、フレネルレンズ13,14を光学部材11の同一面に配置したが、本発明はこれに限定されない。フレネルレンズ13,14を複数の光学部材の異なる面に配置する場合にも本発明を適用できる。ただし、フレネルレンズ13の形成面とフレネルレンズ14の形成面とは出来るだけ近づけておくことが好ましい。
【0032】
(第2実施形態)
ここでは、図5,図6に示す焦点板30の例を説明する。図5,図6には、本実施形態の焦点板30に加えて、カメラ20(図1)のペンタプリズム23,接眼レンズ24,測光系(25〜27)を図示した。図5,図6では、ペンタプリズム23の光路を展開し、ペンタプリズム23を四角柱として示した。
【0033】
図5は斜視図、図6(a)は図5の矢印Xの方向から見た側面図、図6(b)は矢印Yの方向から見た側面図である。また、図6(a)では、接眼レンズ24と測光系(25〜27)との双方の光軸が紙面内に含まれる。接眼レンズ24の光軸と測光系(25〜27)の光軸とを含む面について以下「基準面」という。この基準面は図6(b)の紙面に垂直である。
本実施形態の焦点板30は、透明な板状の光学部材31,32からなり、これら光学部材31,32が所定の間隔をあけて配置される。
【0034】
物体側(メインミラー22側)の光学部材31には、その片面にフレネルレンズ33が形成され、もう一方の片面に拡散面34が形成される。メインミラー22からの光L0は、フレネルレンズ33を介して接眼レンズ24の方向に収斂され、拡散面34を介して拡散される。光学部材31を透過した後の光は、等方的で接眼レンズ24の方向に収斂される拡散光であり、その断面は円形状である。
【0035】
像側(ペンタプリズム23側)の光学部材32には、その片面に屈折力のない平面35が形成され、もう一方の片面にレンチキュラレンズ36が形成される。レンチキュラレンズ36は、板かまぼこ状の屈折面を複数有する。板かまぼこ状の面とは、概略、円柱状の側面の一部に相当する。レンチキュラレンズ36の複数の屈折面は、各屈折面の長手方向が上記の基準面(図6(a)の紙面)と垂直に交わるように配列されている。
【0036】
この光学部材32には、上記の光学部材31を透過した光が平面35から入射し、平面35を通過した後、レンチキュラレンズ36に入射する。レンチキュラレンズ36に入射する光は、等方的で接眼レンズ24の方向に収斂される拡散光であり、その断面は円形状である。そして、このような光がレンチキュラレンズ36に入射すると、そこで光の断面が引き延ばされ(図7参照)、図1に示すような楕円形状の断面37となる。断面37の長軸方向は、レンチキュラレンズ36による光の断面の引き延ばし方向と一致し、上記の基準面(図6(a)の紙面)と平行である。
【0037】
このように、本実施形態の焦点板30では、レンチキュラレンズ36によって光の断面を基準面と平行な方向(すなわち測光系(25〜27)の方向)に引き延ばし、楕円形状の断面37を有しながら接眼レンズ24の方向に収斂する光L3を得ることができる。この光L3は、ペンタプリズム23の内部で反射された後、接眼レンズ24と測光系(25〜27)との双方に導かれる。図6(a)には、接眼レンズ24に到達する光を実線で示し、測光系(25〜27)に到達する光を点線で示し、その他の光を図示省略した。
【0038】
焦点板30からの光L3の断面(楕円形状)における強度分布を図8(a)に示す。また、比較のため、図8(b)に、従来構成の焦点板からの光の断面(円形状)における強度分布を示す。図8(a),(b)の比較から分かるように、何れの場合でも、接眼レンズ24の光軸付近の強度が最大であり、接眼レンズ24の光軸から離れるほど強度が低下する。
しかし、測光系(25〜27)の光軸付近における強度の変化の様子は両者で異なっている。つまり、比較例の光(図8(b))では強度が急激に変化するのに対し、本実施形態の焦点板30の光L3では強度の変化が緩やかになっている。これは、上記の基準面(図6(a)の紙面)内で、光L3の断面を引き延ばして楕円形状にしたことによる。
【0039】
したがって、本実施形態の焦点板30を用いれば、フレネルレンズ33によって接眼レンズ24の方向に収斂された光L3のうち、強度の変化が緩やかな部分の光を測光系(25〜27)のセンサ27に導くことができ、センサ27上での明るさの不均一を低減することができる。
また、光L3の楕円の長軸方向が上記の基準面と一致するので、接眼レンズ24と測光系(25〜27)との双方に焦点板30からの光L3を十分に導くことができ、被写体像の観察と測光との両立が可能となる。
【0040】
さらに、本実施形態の焦点板30では、レンチキュラレンズ36によって光L3の断面を引き延ばすため、拡散面34の拡散性を上げたり拡散面34に指向性を持たせたりすることなく、センサ27上での明るさの不均一を低減することができる。なお、単純に拡散性を上げると、接眼レンズ24にも測光系(25〜27)にも入射しない光が多くなり、スクリーン像が暗くなると共に測光出力も低下し、好ましくない。また、拡散面34に指向性を持たせると、像のボケ方に癖が出て見苦しくなり、一眼レフカメラの焦点板としては好ましくない。
【0041】
したがって、本実施形態の焦点板30のように、測光系(25〜27)の方向に光L3の断面を引き延ばして収斂させることで、観察にも測光にも利用されない無駄な光を減らすことができ、光L3の利用効率が向上する。
また、接眼レンズ24と測光系(25〜27)との距離に応じてレンチキュラレンズ36の焦点距離および径を適切に調整し、無駄な光を確実に減らすと共に、測光系(25〜27)に入射する光量を増加させることで、より良好な測光が実現する。
【0042】
さらに、本実施形態の焦点板30によれば、レンチキュラレンズ35を拡散面34およびフレネルレンズ33より像側に配置するので、良好な光学特性を得ることができる。
また、本実施形態の焦点板30では、レンチキュラレンズ35のピッチをフレネルレンズ33のピッチ以下とすることが好ましい。接眼レンズ24から焦点板30を観察したときの被写体像の解像度はフレネルレンズ33のピッチに等しいため、フレネルレンズ33のピッチより大きい光学的な構造があると、それによって被写体像の解像度が低下してしまう。したがって、レンチキュラレンズ35のピッチをフレネルレンズ33のピッチ以下とすれば、被写体像の解像度を低下させることなく、センサ27上での明るさの不均一を低減することができる。
【0043】
(第2実施形態の変形例)
なお、上記した第2実施形態では、焦点板30からの光L3の断面を測光系(25〜27)の方向に引き延ばすためにレンチキュラレンズ36を用いたが、本発明はこれに限らない。光L3の断面を引き延ばす作用のレンズ部できれば、レンチキュラレンズ36に代えて用いることができる。
【0044】
また、上記した第2実施形態では、物体側(メインミラー22側)からフレネルレンズ33と拡散面34とを順に配置したが、本発明はこれに限定されない。フレネルレンズ33と拡散面34の配置を逆にしても同様の効果を得ることができる。
(全体の変形例)
なお、上記した実施形態では、焦点板10(図2)にフレネルレンズ13,14を設け、焦点板30(図6)にフレネルレンズ33を設けたが、本発明はこれに限定されない。各フレネルレンズに代えて、各種の回折光学素子を用いても構わない。ただし、フレネルレンズを用いれば、既に確立された方法で本発明の焦点板を製造できるため、好ましい。
【0045】
さらに、上記した実施形態では、一眼レフレックスカメラであるカメラ20(図1)を例に説明したが、本発明はこれに限定されない。その他、二眼レフレックスカメラや組立カメラやビューカメラなどにも本発明の焦点板を装着可能であり、上記と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】カメラ20の全体構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態の焦点板10の構成を示す概略図である。
【図3】フレネルレンズ13,14の各輪帯を説明する図である。
【図4】カメラ20のファインダー光学系の展開図である。
【図5】第2実施形態の焦点板30の構成を示す斜視図である。
【図6】図5のX方向から見た図(a)、Y方向から見た図(b)である。
【図7】レンチキュラレンズ36による引き延ばし作用を説明する図である。
【図8】焦点板30からの光L3の断面における強度分布を説明する図である。
【符号の説明】
【0047】
10,30焦点板 ; 11,31,32光学部材 ; 12,34拡散面 ; 13,14,33フレネルレンズ ; 36レンチキュラレンズ ; 20カメラ ; 23ペンタプリズム ; 24接眼レンズ ; 25〜27測光系 ; 27センサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を拡散する拡散面と、
前記光を第1の方向に収斂する第1レンズ部と、
前記光を前記第1の方向とは異なる第2の方向に収斂する第2レンズ部とを備えた
ことを特徴とする焦点板。
【請求項2】
請求項1に記載の焦点板において、
前記第1レンズ部と前記第2レンズ部とは、光学部材の同一面に配置される
ことを特徴とする焦点板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の焦点板において、
前記第1レンズ部と前記第2レンズ部とは、焦点距離が異なる
ことを特徴とする焦点板。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の焦点板において、
前記第1レンズ部と前記第2レンズ部は、フレネルレンズからなる
ことを特徴とする焦点板。
【請求項5】
請求項4に記載の焦点板において、
前記第1レンズ部と前記第2レンズ部は、各々の前記フレネルレンズの輪帯が所定面において同心円状に配置される
ことを特徴とする焦点板。
【請求項6】
請求項5に記載の焦点板において、
前記フレネルレンズの輪帯の面積に関わる前記第1レンズ部と前記第2レンズ部との比は、前記所定面の各部ごとに略一定である
ことを特徴とする焦点板。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の焦点板において、
前記フレネルレンズの輪帯の数は、前記第1レンズ部の方が前記第2レンズ部より多い
ことを特徴とする焦点板。
【請求項8】
請求項4から請求項7の何れか1項に記載の焦点板において、
前記フレネルレンズの輪帯のピッチは、前記第1レンズ部の方が前記第2レンズ部より細かい
ことを特徴とする焦点板。
【請求項9】
光を拡散する拡散面と、
前記光を第1の方向に収斂する第1レンズ部と、
前記光の断面を前記第1の方向とは異なる第2の方向に引き延ばす第2レンズ部とを備えた
ことを特徴とする焦点板。
【請求項10】
請求項9に記載の焦点板において、
前記第2レンズ部は、前記拡散面および前記第1レンズ部より像側に配置される
ことを特徴とする焦点板。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の焦点板において、
前記第1レンズ部は、フレネルレンズからなる
ことを特徴とする焦点板。
【請求項12】
請求項9から請求項11の何れか1項に記載の焦点板において、
前記第2レンズ部は、レンチキュラレンズからなる
ことを特徴とする焦点板。
【請求項13】
請求項12に記載の焦点板において、
前記レンチキュラレンズのピッチは、前記フレネルレンズのピッチ以下である
ことを特徴とする焦点板。
【請求項14】
請求項1から請求項13の何れか1項に記載の焦点板を備えた
ことを特徴とするカメラ。
【請求項15】
請求項1から請求項14の何れか1項に記載の焦点板を備え、前記第2の方向に向かう光を測光する
ことを特徴とする測光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の測光装置を備えた
ことを特徴とするカメラ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−206169(P2007−206169A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22442(P2006−22442)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】