説明

焦電型赤外線センサ装置及びプログラム

【課題】焦電素子の数を増やさなくても、移動体の移動状況を検知できるようにする。
【解決手段】焦電型赤外線センサ装置は、焦電素子1の前方に、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズ2を設け、この複眼レンズ2を透過した赤外線の強度により複眼レンズ2のうちどの眼を透過したかを判別すると共に、時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する。複眼レンズ2の左側領域内の各眼R1〜R6には、透過減衰シート5が貼り付けられている。この場合、複眼レンズ2の右側領域内における各眼R7〜R12の赤外線透過率を略100%とすると、左側領域内における各眼R1〜R6の赤外線透過率は略80%となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を検知する焦電素子とその前方に設けられている複眼レンズを備えた焦電型赤外線センサ装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微弱な赤外線を検知する焦電素子の前方に複眼レンズを配置することにより、赤外線センサの検知角(検知可能領域)を広げるようにした技術が開示されており、例えば、特許文献1の技術は、それをより改良したものである。また、従来では、焦電素子を複数配置することにより生体(移動体)の移動状況を検知するようにした技術が開示されており、特許文献2の技術は、それをより改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−272274号公報
【特許文献2】特開2007−292461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術(特許文献2の技術)にあっては、焦電素子の数を増やさなければ、移動状況を検知することができなかった。そこで、赤外線センサの検知角(検知可能領域)が広く、かつコスト的にも有利な技術が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、焦電素子の数を増やさなくても、移動体の移動状況を検知できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明の一つの態様は、
赤外線を検知する焦電素子と、
前記焦電素子の前方に設けられていて、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズと、
前記複眼レンズを透過した赤外線を前記焦電素子で受光してその赤外線の強度により前記複眼レンズのうちどの眼を透過したかを逐次判別する判別手段と、
前記判別手段により逐次判別された時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする焦電型赤外線センサである。
【0007】
上述した課題を解決するために本発明の他の態様は、
コンピュータに対して、
赤外線を検知する焦電素子の前方に設けられていて、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズを透過した赤外線を前記焦電素子が受光してその赤外線の強度により前記複眼レンズのうちどの眼を透過したかを逐次判別する機能と、
前記逐次判別した時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動体の移動状況を焦電素子の数を増やさなくても検知することができ、コスト面や耐久性の点で有利なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】焦電型赤外線センサ装置を示した外観図で、(1)は、焦電型赤外線センサ装置の正面図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】、 焦電型赤外線センサ装置による検知可能領域を示した図。
【図4】焦電型赤外線センサ装置の回路構成を示したブロック図。
【図5】(1)は、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8への入力波形と、その閾電圧との関係を示した図、(2)は、(1)の場合でのコンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力結果を示した図。
【図6】(1)、(2)は、移動体の移動方向に応じたコンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力結果を示した図。
【図7】電源投入に応じて実行開始される移動状況判別処理を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図7を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、焦電型赤外線センサ装置の正面図であり、図2は、図1のA−A線断面図である。
焦電型赤外線センサ装置は、測定対象の移動体(人体や動物など)の移動に応じて発生される微弱な赤外線を検知する焦電素子1と、この焦電素子1の前方に設けられている複眼レンズ2及び光学フィルタ3と、焦電素子1に電気的に接続されているワンチップIC4とを有する構成となっている。
【0011】
焦電素子1は、焦電効果により赤外線の受光量に応じて電気信号を発生する単一の素子(シングル素子)で、複眼レンズ2及び光学フィルタ3を通して赤外線を受光する。なお、光学フィルタ3は、特定波長の赤外線(例えば、人体の動きに応じた赤外線)を通過させるためのフィルタである。複眼レンズ2は、全体がドーム型を成し、焦電素子1の検知角(検知可能領域)を広げて広角化させるもので、複眼を構成する複数(本実施形態では、12個)の円形の眼R1〜R12を有している。この各眼R1〜R12は、複眼レンズ2の中心部分を境に2つの領域(図示の例では左側の領域と右側の領域)に分けて6個ずつ配列されたもので、図中、左半分の領域には眼R1〜R6が配列され、右半分の領域には眼R7〜R12が配列されている。
【0012】
複眼レンズ2の中心部分を境に分けた2つの領域のうち、その一方の領域、すなわち、複眼レンズ2の左領域に配列された各眼R1〜R6の表面には、赤外線の透過量を減衰させる透過減衰シート5が貼り付けられている。なお、図示の例において、眼の部分を塗りつぶした領域は、透過減衰シート5が貼り付けられている領域を示している。透過減衰シート5は、透明な基材(例えば、PC、PETシート)の片面を接着面として、他方の面にIR(赤外線)インクを印刷して成るもので、複眼レンズ2の左側領域内の各眼のみに貼り付けられている。なお、透過減衰シート5は、眼の個々に貼り付けるようにしたが、複眼レンズ2の左側領域全体を覆うように貼り付けるようにしてもよい。
【0013】
ここで、複眼レンズ2の左右両側において透過減衰シート5が配設されていない右側領域内の各眼R7〜R12の赤外線透過率を略100%とすると、左側領域内の各眼R1〜R6の赤外線透過率は略80%となっている。図3は、焦電型赤外線センサ装置による検知可能領域を示した図である。この場合、複眼レンズ2の左右両側領域のうち、その片方の領域のみに透過減衰シート5を配設することにより、複眼レンズ2により広角化された焦電素子1の検知角(検知可能領域)のうち、図3に示す左半分の検知領域が赤外線透過率(略80%)に対応する低透過検知領域Lとなり、右半分の検知領域が赤外線透過率(略100%)に対応する高透過検知領域Rとなる。なお、図3の例では、検知可能領域として検知角が水平及び垂直方向が共に略90°で、検知距離が略5mの場合を示しているが、それに限らないことは勿論である。
【0014】
図4は、焦電型赤外線センサ装置の回路構成を示したブロック図である。
ワンチップIC4には2段アンプ6、コンパレータA回路7、コンパレータB回路8、安定化電源回路9、制御部10などが搭載されている。焦電素子1からの赤外線検出信号は、2段アンプ6により例えば、40倍×40倍に増幅されて二つのコンパレータ回路、つまり、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8にそれぞれ入力される。
【0015】
コンパレータA回路7は、図3に示した高透過検知領域Rに対応して設けられ、また、コンパレータB回路8は、図3に示した低透過検知領域Lに対応して設けられたもので、コンパレータA回路7の閾電圧とコンパレータB回路8の閾電圧とは、それぞれ異なるように設定されている。すなわち、コンパレータA回路7、コンパレータB回路8は、複眼レンズ2を透過した赤外線の強度(透過量)に基づいて複眼レンズ2のうちどの眼を透過したかを判別するために設けられたもので、赤外線透過率が略100%であるか、略80%であるかに応じて、コンパレータA回路7とコンパレータB回路8の閾電圧とがそれぞれ異なっている。なお、コンパレータA回路7、コンパレータB回路8の閾電圧については、後述するものとする。
【0016】
制御部10は、各種のプログラムに応じてこの焦電型赤外線センサ装置の全体動作を制御するもので、CPU(中央演算処理装置)やメモリなどを有し、電源起動の指示に応じて安定化電源回路9を介して焦電素子1を駆動させたり、図7に示した動作手順のプログラムに応じた処理を実行したりする。この場合、制御部10は、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力信号に基づいて、複眼レンズ2のうちどの眼を透過したかを判別すると共に、順次判別した時系列の判別結果に基づいて移動体の移動状況(本実施形態では移動方向)を判別するようにしている。そして、制御部10は、その移動状況の判別結果(移動方向)に基づいて駆動対象(例えば、防犯照明用の発光ダイオード)に対して駆動制御信号を出力する。なお、駆動対象は、防犯照明用の発光ダイオードに限らず、防犯用の監視カメラやブザーなどであってもよい。
【0017】
図5は、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8を説明するための図である。
図5(1)は、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8に入力される入力波形と、コンパレータA回路7の閾電圧vau、vad及びコンパレータB回路8の閾電圧vbu、vbdとの関係を示した図である。また、図5(2)は、図5(1)の場合におけるコンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力波形(2値レベルの信号波形)を示した図である。
【0018】
ここで、焦電素子1の赤外線検出信号の極性は、移動体の移動による赤外線の変化でプラス・マイナスの両方に変化するようになるため、コンパレータA回路7の閾電圧として、上限の閾電圧vauと下限の閾電圧vadが設定されている。同様に、コンパレータB回路8の閾電圧として、上限の閾電圧vbuと下限の閾電圧vbdが設定されている。この場合、vau>vbuの関係、また、vad>vbdの関係となっている。そして、コンパレータA回路7の出力波形は、その入力電圧が上限の閾電圧vau以上となったときにH(ハイ)レベルの信号となり、又は下限の閾電圧vad以下となったときにL(ロー)レベルの信号となる。また、コンパレータB回路8の出力波形も同様に、その入力電圧が上限の閾電圧vbu以上となったときにHレベルの信号となり、下限の閾電圧vbd以下となったときにLレベルの信号となる。
【0019】
なお、本実施形態において移動状況を判別する際には、焦電素子1の赤外線検出信号の極性として、プラス信号、マイナス信号のいずれかを使用し、それに応じて上限の閾電圧、下限の閾電圧のいずれかを使用するようにしているが、以下、焦電素子1の赤外線検出信号としてプラス極性の信号を使用し、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の閾電圧として上限の閾電圧を使用して移動状況を判別する場合について説明するものとする。したがって、コンパレータA回路7の出力信号がHレベルとなる場合とは、その入力電圧が上限の閾電圧vau以上となったときであり、また、コンパレータB回路8の出力信号がHレベルとなる場合とは、その入力電圧が上限の閾電圧vbu以上となったときである。
【0020】
図6は、移動体の移動方向に応じたコンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力結果を示した図で、図6(1)は、移動体(例えば、人間)が低透過検知領域Lから高透過検知領域Rに移動した場合のコンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力結果を説明するための図で、図中、矢印は、移動体の移動方向を示している。この場合、低透過検知領域L内に移動体が入ると、コンパレータA回路7の出力信号はL(ロー)レベルの信号となり、コンパレータB回路8の出力信号はHレベルの信号となる。その後、高透過検知領域R内に移動体が入ると、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力信号は、それぞれHレベルの信号となる。
【0021】
図6(2)は、図6(1)の場合とは逆方向の移動、つまり、移動体が高透過検知領域Rから低透過検知領域Lに移動した場合のコンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力結果を説明するための図で、図中、矢印は、移動体の移動方向を示している。この場合、高透過検知領域R内に移動体が入ると、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力信号は、それぞれHレベルの信号となる。その後、低透過検知領域L内に移動体が入ると、コンパレータA回路7の出力信号はLレベルの信号となり、コンパレータB回路8の出力信号はHレベルの信号となる。
【0022】
次に、焦電型赤外線センサ装置において移動体の移動状況を判別する処理を図7に示すフローチャートを参照して説明する。ここで、このフローチャートに記述されている各機能は、読み取り可能なプログラムコードの形態で格納されており、このプログラムコードにしたがった動作が逐次実行される。また、ネットワークなどの伝送媒体を介して伝送されてきた上述のプログラムコードに従った動作を逐次実行することもできる。すなわち、記録媒体のほかに、伝送媒体を介して外部供給されたプログラム/データを利用して本実施形態特有の動作を実行することもできる。
【0023】
図7は、電源投入に応じて実行開始される移動状況判別処理を示したフローチャートである。
先ず、制御部10は、コンパレータA回路7の出力信号を取得してHレベルの信号であるかを調べたり(ステップS1)、コンパレータB回路8の出力信号を取得してHレベルの信号であるかを調べたりしながら(ステップS2)、いずれかの出力がHレベルになるまで上述のステップS1、S2を繰り返しながら移動体の検出待ち状態となる。いま、コンパレータA回路7の出力信号がHレベル信号であることが検出されると(ステップS1でYES)、コンパレータB回路8の出力信号に関わらず、移動体は高透過検知領域R内に居ると判定する(ステップS3)。
【0024】
また、コンパレータA回路7の出力信号がHレベルの信号ではなく、Lレベルの信号であれば(ステップS1でNO)、コンパレータB回路8の出力信号を取得してHレベルの信号であるかを調べ(ステップS2)、コンパレータB回路8の出力がHレベル信号であれば(ステップS2でYES)、つまり、コンパレータA回路7の出力がLレベルの信号で、かつコンパレータB回路8の出力がHレベルの信号であれば、移動体は低透過検知領域L内に居ると判定する(ステップS4)。
【0025】
このようにして低透過検知領域L、高透過検知領域Rのいずれに移動体が居ることが判別されると、タイマ(図示省略)をリセットスタートさせた後(ステップS5)、コンパレータA回路7の出力信号を取得してHレベルの信号であるかを調べたり(ステップS6)、コンパレータB回路8の出力信号を取得してHレベルの信号であるかを調べたり(ステップS7)、上述のタイマがタイムアウトとなったかを調べたりする(ステップS8)。この場合、タイマは、低透過検知領域L、高透過検知領域Rのうち、そのいずれかの領域から他の領域に移動するまでに要する所要時間を考慮して直線的な移動であるか、右左折や逆戻りなどの特殊な移動又は停止中であるかを判定するもので、低透過検知領域L、高透過検知領域Rのいずれに移動体が居ることが判別されてから所定時間(例えば、5秒)以上経過しても他の領域に移動していなければ、タイムアウトとなる。
【0026】
いま、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8の出力信号がLレベル信号のままの状態で(ステップS6及びS7でNO)、上述のタイマがタイムアップしたときには(ステップS8でYES)、移動体が直線的に移動せずに右左折や逆戻りなどの特殊な移動又は停止中であると判断して、今回の判定処理を無効とするために最初のステップS1に戻る。また、コンパレータA回路7の出力信号がHレベル信号であることが検出されたときには(ステップS6でYES)、コンパレータB回路8の出力信号に関わらず、移動体は高透過検知領域R内に居ると判定する(ステップS9)。
【0027】
また、コンパレータA回路7の出力信号がHレベルの信号ではなく、Lレベルの信号であれば(ステップS6でNO)、コンパレータB回路8の出力信号を取得してHレベルの信号であるかを調べ(ステップS7)、コンパレータB回路8の出力がHレベル信号であれば(ステップS7でYES)、つまり、コンパレータA回路7の出力がLレベルの信号で、かつコンパレータB回路8の出力がHレベルの信号であれば、移動体は低透過検知領域L内に居ると判定する(ステップS10)。
【0028】
このように低透過検知領域L、高透過検知領域Rのうち、そのいずれかの領域から他の領域に移動したことが判別されると、高透過検知領域Rから低透過検知領域Lへの移動であるかを調べる(ステップS11)。ここで、高透過検知領域Rから低透過検知領域Lへの移動であれば(ステップS11でYES)、移動体の移動方向は順方向(図5では左方向)であると判定するが(ステップS12)、低透過検知領域Lから高透過検知領域Rへの移動であれば(ステップS11でNO)、移動体の移動方向は逆方向(図5では右方向)であると判定する(ステップS13)。そして、その判定結果に応じて駆動対象(例えば、防犯照明用の発光ダイオード)に対して駆動制御信号を出力して(ステップS13)、防犯照明用の発光ダイオードの点灯など、駆動対象を制御する。その後、最初のステップS1に戻り、以下、上述の動作を繰り返す。
【0029】
以上のように、本実施形態の焦電型赤外線センサ装置においては、焦電素子1の前方に、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズ2を設け、この複眼レンズ2を透過した赤外線の強度により複眼レンズ2のうちどの眼を透過したかを逐次判別すると共に、その時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出するようにしたので、移動体の移動状況を焦電素子の数を増やさなくても検知することができ、コスト面や耐久性の点で有利なものとなる。
【0030】
移動体の移動状況としてその移動方向を判別するようにしたので、例えば、駆動対象としての防犯照明用の発光ダイオードを移動体(例えば、侵入者)の移動方向に応じてその点灯させることができる。
【0031】
複眼レンズ2に透過減衰シート5を貼り付けることにより眼毎の赤外線の透過量を異ならせるようにしたので、簡単かつ確実な方法で赤外線の透過量を調整することができる。
【0032】
複眼レンズ2は、複眼を構成する複数の眼を二分割し、一方の分割領域内に含まれる各眼と他方の分割領域内に含まれる各眼の赤外線の透過量が異なるようにしたので、移動体の移動状況としてその移動方向を判別するのに適した複眼レンズ2を提供することが可能となる。
【0033】
なお、上述した実施形態においては、複眼レンズ2に透過減衰シート5を貼り付けるようにしたが、例えば、複眼レンズ2の素材に応じて眼毎の赤外線の透過量を異ならせるようにしてもよく、更には複眼レンズ2のコーティングに応じて眼毎の赤外線の透過量を異ならせるようにしてもよい。これによって赤外線の透過量の調整が更に確実なものとなる。
【0034】
上述した実施形態においては、焦電素子1の赤外線検出信号がプラス極性の信号で上限の閾電圧を使用して移動状況を判別する場合について説明したが、マイナス極性の信号で下限の閾電圧を使用して移動状況を判別する場合には、信号の極性が異なるだけで基本的に同様である。
【0035】
上述した実施形態においては、移動体の移動状況として移動方向を判別するようにしたが、単位時間当たりの移動距離に基づいて移動速度を判別するようにしてもよい。
【0036】
上述した実施形態においては、制御部10によるプログラム制御により、移動体の移動方向を判別するようにしたが、例えば、論理ゲートの組み合わせ回路などにより移動体の移動方向を検出するようにしてもよく、更には、コンパレータA回路7及びコンパレータB回路8にも限らない。
【0037】
上述した実施形態においては、複眼レンズ2における左右両側の領域のうち、透過減衰シート5が配設されていない右側領域内の眼の赤外線透過率を略100%とすると、左側領域内の眼の赤外線透過率は略80%としたが、赤外線透過率は、これに限らず、略100%と略70%、略80%と略60%などであってもよく、両者を検知可能な差があればよい。
【0038】
また、上述した実施形態においては、複眼レンズ2を左右両側に二等分したが、二等分する場合に限らず、例えば、左右方向を三等分、四等分するようにしてもよく、また、分割した各領域の大きさに差を設けてもよい。同様に、複眼レンズ2を上下方向に二等分、三等分、四等分するようにしてもよく、また、分割した各領域の大きさに差を設けてもよい。更に、複眼レンズ2を左右上下の方向に分割する場合に限らず、例えば、同心円状に複数の領域に分割するようにしてもよい。
【0039】
また、上述した実施形態においては、各領域内の眼の数を6個としたが、それに限らず、
検知角(検知可能領域)の広さや移動状況との関係で任意であり、各領域内の眼の数は、7個以上あるいは5個以下であってもよい。
【0040】
また、上述した実施形態においては、移動体の移動状況として移動方向を右から左方向又は左から右方向を検知可能としたが、これに限らず、Uターンなどを検知可能としてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態においては、防犯用の焦電型赤外線センサ装置に適用した場合を示したが、これに限らず、入出管理用の装置を駆動対象としてもよい。この場合、入場者、退場者を一台の焦電型赤外線センサ装置で検知することができるので、入場者数や退場者数を計数するカウンタ機能や集計機能を備えるようにしてもよい。
【0042】
また、焦電型赤外線センサ装置をパーソナルコンピュータ、PDA、携帯電話機、デジタルカメラ、音楽プレイヤなどに組み込んだり、パーソナルコンピュータ、PDAなどに無線あるいは有線を介して接続したりするようにしてもよい。
【0043】
また、上述した実施形態において示した“装置”や“部”とは、機能別に複数の筐体に分離されていてもよく、単一の筐体に限らない。また、上述したフローチャートに記述した各ステップは、時系列的な処理に限らず、複数のステップを並列的に処理したり、別個独立して処理したりするようにしてもよい。
【0044】
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下、本願出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
(付記)
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、
赤外線を検知する焦電素子と、
前記焦電素子の前方に設けられていて、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズと、
前記複眼レンズを透過した赤外線を前記焦電素子で受光してその赤外線の強度により前記複眼レンズのうちどの眼を透過したかを逐次判別する判別手段と、
前記判別手段により逐次判別された時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする焦電型赤外線センサである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の焦電型赤外線センサにおいて、
前記検出手段により検出される前記移動状況は、前記移動体の移動する方向或いは速度である、
ことを特徴とする焦電型赤外線センサである。
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1あるいは請求項2に記載の焦電型赤外線センサにおいて、
前記複眼レンズは、レンズに貼り付けるシートにより眼毎の赤外線の透過量を異ならせる、
ようにしたことを特徴とする焦電型赤外線センサである。
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の焦電型赤外線センサにおいて、
前記複眼レンズは、レンズの素材により眼毎の赤外線の透過量を異ならせる、
ようにしたことを特徴とする焦電型赤外線センサである。
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の焦電型赤外線センサにおいて、
前記複眼レンズは、レンズのコーティングにより眼毎の赤外線の透過量を異ならせる、
ようにしたことを特徴とする焦電型赤外線センサである。
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の焦電型赤外線センサにおいて、
前記複眼レンズは、複眼を構成する複数の眼を二分割し、一方の分割領域内に含まれる眼と他方の分割領域内に含まれる眼の赤外線の透過量が異なる、
ようにしたことを特徴とする焦電型赤外線センサである。
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、
コンピュータに対して、
赤外線を検知する焦電素子の前方に設けられていて、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズを透過した赤外線を前記焦電素子が受光してその赤外線の強度により前記複眼レンズのうちどの眼を透過したかを逐次判別する機能と、
前記逐次判別した時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する機能と、
を実現させるためのプログラムである。
【符号の説明】
【0045】
1 焦電素子
2 複眼レンズ
3 光学フィルタ
5 透過量減衰シート
6 2段アンプ
7 コンパレータA回路
8 コンパレータB回路
10 制御部
R1〜R6 左半分領域内の眼
R7〜R12 右半分領域内の眼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検知する焦電素子と、
前記焦電素子の前方に設けられていて、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズと、
前記複眼レンズを透過した赤外線を前記焦電素子で受光してその赤外線の強度により前記複眼レンズのうちどの眼を透過したかを逐次判別する判別手段と、
前記判別手段により逐次判別された時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする焦電型赤外線センサ。
【請求項2】
前記検出手段により検出される前記移動状況は、前記移動体の移動する方向或いは速度である、
ことを特徴とする請求項1記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項3】
前記複眼レンズは、レンズに貼り付けるシートにより眼毎の赤外線の透過量を異ならせる、
ようにしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項4】
前記複眼レンズは、レンズの素材により眼毎の赤外線の透過量を異ならせる、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項5】
前記複眼レンズは、レンズのコーティングにより眼毎の赤外線の透過量を異ならせる、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項6】
前記複眼レンズは、複眼を構成する複数の眼を二分割し、一方の分割領域内に含まれる眼と他方の分割領域内に含まれる眼の赤外線の透過量が異なる、
ようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の焦電型赤外線センサ。
【請求項7】
コンピュータに対して、
赤外線を検知する焦電素子の前方に設けられていて、複眼の眼毎に赤外線の透過量が異なる複眼レンズを透過した赤外線を前記焦電素子が受光してその赤外線の強度により前記複眼レンズのうちどの眼を透過したかを逐次判別する機能と、
前記逐次判別した時系列の判別結果に応じて移動体の移動状況を検出する機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−202683(P2012−202683A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64262(P2011−64262)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】