説明

焼き菓子類用の焙焼小麦粉の製造法および当該焙焼小麦粉を含有する焼き菓子類用組成物

【課題】均一に微細分割された粒子サイズ、大きな表面積および低塩素含量を有する金属粉末を生成する白金または白金合金の粉末を調製するためのプロセス、ならびにこのプロセスによって調製される白金または白金合金の粉末の提供。
【解決手段】アルカリ金属硝酸塩、塩素を含まない白金化合物および塩素を含まない合金化元素の化合物の低融点混合物を含む溶融物を形成する工程;この溶融物を、この白金化合物および合金化元素の化合物が熱分解して酸化物を与える反応温度まで加熱する工程;溶融物を冷却する工程;溶融物を水に溶解する工程であって、形成される酸化物または混合酸化物が、引き続く還元によって白金または白金合金の粉末に転換される工程、を包含するプロセス。40m/gより大きなBET比表面積を有し、100ppm未満の塩素含有量を有する粉末を含む、白金または白金合金の粉末。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の属する技術分野)
本発明は、白金粉末または白金合金粉末、好ましくは、白金/ルテニウム合金粉末、およびこれらを調製するためのプロセスを提供する。金属粉末は、ほとんど塩素を含まず、大きな表面積を有し、そして好ましくは、化学反応(例えば、水素化)および燃料電池における触媒として使用される。
【背景技術】
【0002】
(従来の技術)
白金/ルテニウム触媒は、硫酸燃料電池のアノード触媒として有用であることが当該分野で知られている。これらの触媒は、一酸化炭素により害される傾向が小さい。これらはまた、メタノールの酸化に有用であることが証明されており、従って、直接メタノール燃料電池(DMFC=Direct Methanol Fuel Cell)に適切である。これらは、しばしば、いわゆるAdams−Shrinerプロセスによって調製される。
【0003】
AdamsおよびShrinerは、酸化白金(IV)の調製を記載する(非特許文献1:J.Am.Chem.Soc.45,2171(1923))。二元酸化物(例えば、Pt/Ru酸化物)の調製および触媒効果は、P.N.Rylanderら(非特許文献2:Engelhard Industries,Tech.Bull 8,93(1967))により記載される。このプロセスによって調製される酸化物は、還元剤(例えば、水素、ホルムアルデヒドまたはヒドラジン)によって、対応する貴金属ブラックに還元され得る。金属ブラックは、大きな比表面積を有する細かく粉砕された金属粉末であることが理解される。
【0004】
Adams−Shrinerプロセスに従って、ヘキサクロロ白金(IV)酸および過剰の硝酸ナトリウムからなる塩混合物を、石英るつぼ中で融解し、そして500℃まで加熱する。この溶融物を、所定の時間、この温度に維持し、次いで冷却する。固化した溶融物を、水に溶解し、そして酸化白金の残渣が残る。これを濾去し、そして洗浄する。次いで、残渣を懸濁し、そして適切な還元剤(例えば、ヒドラジン)を用いる還元により、白金ブラックに還元する。
【0005】
白金族金属(PGM)の異なる塩化物(例えば、ヘキサクロロ白金(IV)酸および塩化ルテニウム(III))を使用することによって、所望の比のPGM酸化物の混合物を調製し、次いで金属に還元し得る。
【0006】
Adams−Shrinerの調製法は、多数の特有の処理の欠点を有する:このプロセスは、初めに、塩素含有貴金属化合物と硝酸ナトリウムとを反応させて、対応する貴金属硝酸塩を得、これを次いで、高温で分解して貴金属酸化物を得る工程に基づく。この分解プロセスの間に、多量の窒素酸化物が生成する。従って、このプロセスは環境を汚染し、そして人の健康に害がある。融解プロセスの間の気体の激しい発生に起因して、この溶融物は発泡する傾向があり、そして絶え間なく制御下で維持する必要がある。まだ反応していないヘキサクロロ白金(IV)酸は、排気中に放出される。これは、ヘキサクロロ白金(IV)酸のアレルギー作用に起因して、プロセス全体にわたるかなりの安全措置の使用を必要とする。
【0007】
バッチサイズは、この方法を用いて、制限された程度のみまで増加され得る。AdamsおよびShrinerは、4.2gのヘキサクロロ白金(IV)酸および40gの硝酸ナトリウムの混合物(これは、例えば、500℃の所望の最終温度まで、数分以内に加熱され得る)を用いる試行を記載する。バッチが大きくなるにつれて、均一な融解を達成するために実質的により長い時間が必要となる。この場合では、塩混合物のいくつかの領域はすでに、長時間、設定点温度にあり、一方、他の領域は、まだ融解していない。この温度およびこの温度における滞留時間の両方は、形成される酸化物の粒子サイズおよび表面積に対して影響を有するため、時折、酸化物粒子のかなりの成長がすでに起こっている。従って、これらの酸化物を金属に還元した後、粒子サイズの広い分布および対応して小さい表面積を有する不均質な粗粒度の粉末が得られる。
【0008】
溶融物が固化した後、これを、るつぼの外へたたき出すかまたは溶解する必要があり、これはかなりの労力を必要とする。
【0009】
塩素含有出発物質の使用に起因して、最終生成物は、かなりの濃度の塩素を有したままであり、このことは、産業的適用のために、特に燃料電池触媒として望ましくない。この場合、高い塩素含有量は、腐食の問題を生じ、そして燃料電池系の可使時間を短縮する。
【0010】
上記に基づいて、バッチが大きくても、均一な微細に分割された粒子サイズ、大きな表面積および低い塩素含量を有する金属粉末を生成する、白金または白金合金の粉末を調製するためのプロセスの必要性が、当該分野に存在する。さらに、このプロセスは、酸化窒素の放出を減少することによってより環境に優しく、そして塩素含有白金化合物に関するアレルギーを誘発する危険性を最小化することを意図する。このプロセスによって調製される、低い塩素含量を有する白金または白金合金の粉末の必要性もまた、当該分野に存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.45,2171(1923)
【非特許文献2】Engelhard Industries,Tech.Bull 8,93(1967)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明は、バッチが大きくても、均一な微細に分割された粒子サイズ、大きな表面積および低い塩素含量を有する金属粉末を生成する、白金または白金合金の粉末を調製するためのプロセス、ならびにこのプロセスによって調製される、低い塩素含量を有する白金または白金合金の粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの局面において、本発明は、燃料電池または化学反応における触媒として使用するための、白金または白金合金の粉末を提供し、この粉末は、40m/gより大きなBET比表面積を有し、100ppm未満の塩素含有量を有する粉末を含む。
【0014】
1つの実施形態において、本発明の白金合金粉末は、白金族由来の貴金属および/または合金化元素としての卑金属を含み得る。
【0015】
別の局面において、本発明は、本発明の白金または白金合金の粉末を調製するためのプロセスを提供し、このプロセスは、以下の工程を包含する:
出発物質として、アルカリ金属硝酸塩、塩素を含まない白金化合物および塩素を含まない合金化元素の化合物の低融点混合物を含む溶融物を形成する工程;
該溶融物を、該白金化合物および該合金化元素の化合物が熱分解して酸化物を与える反応温度まで加熱する工程;
該溶融物を冷却する工程;
該溶融物を水に溶解する工程であって、ここで、形成される該酸化物または混合酸化物が、引き続く還元によって白金または白金合金の粉末に転換される、工程。
【0016】
1つの実施形態において、上記融点混合物は、LiNO−KNO−NaNO系からの二成分または三成分の共融混合物を含み得る。
【0017】
別の実施形態において、本発明のプロセスにおいて、白金粉末を形成するために、塩素を含まない白金化合物としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸が使用され得る。
【0018】
さらなる実施形態において、本発明のプロセスにおいて、白金/ルテニウム合金の粉末を形成するために、塩素を含まない白金化合物としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸が使用され、そしてルテニウム化合物として酸化ルテニウム(IV)水和物が使用され得る。
【0019】
さらに別の実施形態において、本発明のプロセスにおいて、白金/ルテニウム合金粉末を形成するために、塩素を含まない白金化合物としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸が使用され、そしてルテニウム化合物としてトリニトラトニトロシル−ルテニウム(II)が使用され得る。
【0020】
なお別の実施形態において、上記溶融物は、全ての上記出発物質の均質混合物を、その融点より高くまで加熱することによって形成され得る。
【0021】
さらなる実施形態において、1〜5重量%の水が、上記溶融プロセスの前に前記出発物質の均質混合物に添加され得る。
【0022】
さらなる実施形態において、本発明のプロセスにおいて、上記溶融物は、最初にアルカリ金属硝酸塩の混合物のみをその融点より高くまで加熱し、次いで上記塩素を含まない白金化合物および上記塩素を含まない合金化元素の化合物をこの溶融物に導入することによって形成され得る。
【0023】
さらなる実施形態において、本発明のプロセスにおいて、上記白金化合物および必要に応じて上記合金化元素の化合物は、150℃と170℃との間の温度で上記溶融物に添加され得る。
【0024】
さらなる実施形態において、本発明のプロセスにおいて、上記反応温度は、400℃と600℃との間の値に設定され、そして上記溶融物はこの温度で10分〜2時間の期間にわたって維持され得る。
【0025】
さらなる実施形態において、上記溶融物を溶解するための上記水は、この溶融物に、この溶融物が冷却する間に200℃と150℃との間の温度間隔で添加され得る。
【0026】
さらなる実施形態において、1〜5重量%の水が、上記溶融プロセスの前に上記アルカリ金属硝酸塩の混合物に添加され得る。
【0027】
さらに別の局面において、本発明は、上記白金または白金合金の粉末をアノードおよび/またはカソード触媒として含む、燃料電池のための膜電極ユニットを提供する。
【0028】
なお別の局面において、本発明は、上記白金または白金合金の粉末を、燃料電池のための触媒として使用する方法を提供する。
【0029】
なおさらなる局面において、本発明は、上記白金または白金合金の粉末を、化学反応のための触媒として使用する方法を提供する。
【0030】
本発明は、白金粉末または白金合金粉末、およびこれらを調製するためのプロセスを提供する。従って、本発明は、燃料電池または化学反応における触媒として使用するための、白金粉末または白金合金粉末を提供し、これらの粉末は、40m/gを越えるBET比表面積を有し、そして100ppm未満の塩素含量を有する粉末を含む。
【0031】
より特定すれば、本発明は以下の項目に関し得る。
(項目1) 燃料電池または化学反応における触媒として使用するための、白金または白金合金の粉末であって、40m/gより大きなBET比表面積を有し、100ppm未満の塩素含有量を有する粉末を含む、白金または白金合金の粉末。
(項目2) 項目1に記載の白金合金粉末であって、ここで、上記白金合金粉末は、白金族由来の貴金属および/または合金化元素としての卑金属を含む、白金合金粉末。
(項目3) 項目1に記載の白金または白金合金の粉末を調製するためのプロセスであって、上記プロセスは、
出発物質として、アルカリ金属硝酸塩、塩素を含まない白金化合物および塩素を含まない合金化元素の化合物の低融点混合物を含む溶融物を形成する工程;
上記溶融物を、上記白金化合物および上記合金化元素の化合物が熱分解して酸化物を与える反応温度まで加熱する工程;
上記溶融物を冷却する工程;
上記溶融物を水に溶解する工程であって、ここで、形成される上記酸化物または混合酸化物が、引き続く還元によって白金または白金合金の粉末に転換される、工程、
を包含する、プロセス。
(項目4) 項目3に記載のプロセスであって、ここで、上記低融点混合物が、LiNO−KNO−NaNO系からの二成分または三成分の共融混合物を含む、プロセス。
(項目5) 項目4に記載のプロセスであって、ここで、白金粉末を形成するために、塩素を含まない白金化合物としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸が使用される、プロセス。
(項目6) 項目4に記載のプロセスであって、ここで、白金/ルテニウム合金の粉末を形成するために、塩素を含まない白金化合物としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸が使用され、そしてルテニウム化合物として酸化ルテニウム(IV)水和物が使用される、プロセス。
(項目7) 項目4に記載のプロセスであって、白金/ルテニウム合金粉末を形成するために、塩素を含まない白金化合物としてヘキサヒドロキソ白金(IV)酸が使用され、そしてルテニウム化合物としてトリニトラトニトロシル−ルテニウム(II)が使用される、プロセス。
(項目8) 上記溶融物が、全ての上記出発物質の均質混合物を、その融点より高くまで加熱することによって形成される、項目3に記載のプロセス。
(項目9) 1〜5重量%の水が、上記溶融プロセスの前に上記出発物質の均質混合物に添加される、項目8に記載のプロセス。
(項目10) 項目3に記載のプロセスであって、ここで、上記溶融物が、最初にアルカリ金属硝酸塩の混合物のみをその融点より高くまで加熱し、次いで上記塩素を含まない白金化合物および上記塩素を含まない合金化元素の化合物を上記溶融物に導入することによって形成される、プロセス。
(項目11) 項目10に記載のプロセスであって、ここで、上記白金化合物および必要に応じて上記合金化元素の化合物が、150℃と170℃との間の温度で上記溶融物に添加される、プロセス。
(項目12) 項目11に記載のプロセスであって、ここで、上記反応温度が、400℃と600℃との間の値に設定され、そして上記溶融物がこの温度で10分〜2時間の期間にわたって維持される、プロセス。
(項目13) 上記溶融物を溶解するための上記水が、上記溶融物に、上記溶融物が冷却する間に200℃と150℃との間の温度間隔で添加される、項目12に記載のプロセス。
(項目14) 1〜5重量%の水が、上記溶融プロセスの前に上記アルカリ金属硝酸塩の混合物に添加される、項目10に記載のプロセス。
(項目15) 項目1に記載の白金または白金合金の粉末をアノードおよび/またはカソード触媒として含む、燃料電池のための膜電極ユニット。
(項目16) 項目1に記載の白金または白金合金の粉末を、燃料電池のための触媒として使用する方法。
(項目17) 項目1に記載の白金または白金合金の粉末を、化学反応のための触媒として使用する方法。
混合物の融点は、132℃である。硝酸リチウム、硝酸カリウムおよび硝酸ナトリウムの三成分系は、120℃の融点を有する。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、バッチが大きくても、均一な微細に分割された粒子サイズ、大きな表面積および低い塩素含量を有する金属粉末を生成する、白金または白金合金の粉末を調製するためのプロセス、ならびにこのプロセスによって調製される、低い塩素含量を有する白金または白金合金の粉末が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を、他のおよびさらなる利点および実施形態と共により良く理解するために、実施例と共に以下の記載が参照され、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0034】
本発明は、ここで、好ましい実施形態と共に記載される。これらの実施形態は、本発明の理解を助けるために示され、そしていずれの様式でも本発明を制限するようには意図されず、制限するとみなされるべきではない。この開示を読むと当業者に明らかになり得る全ての代替、変更および等価物は、本発明の精神および範囲内に含まれる。
【0035】
本開示は、白金粉末または白金合金粉末を調製するためのプロセスの説明書ではなく、当業者に公知の基礎的な概念は、詳細に記載されていない。
【0036】
本発明に従うプロセスは、出発物質として、アルカリ金属硝酸塩、塩素を含まない白金化合物および必要に応じて合金化元素の塩素を含まない化合物の低融点混合物を含む、溶融物を形成し、次いで、この金属を、この白金化合物および合金化元素の化合物が熱分解する反応温度まで加熱して、酸化物を得、次いで、この溶融物を冷却し、そして水に溶解し、そして形成された酸化物または混合酸化物を、引き続く還元によって白金粉末または白金合金粉末に変換することによって、達成される。
【0037】
本発明の範囲内において、「塩素を含まない化合物」または「低い塩素含量化合物」とは、実質的に塩素を含まないか、ほんの微量の塩素(すなわち、約500ppm未満の塩素濃度である)を含む化合物を意味する。
【0038】
本発明に従うプロセスは、公知のAdams−Shrinerプロセスと実質的に異なる。Adams−Shrinerプロセスの間、塩素含有貴金属化合物は、初めに、硝酸ナトリウムとの反応によってそれらの硝酸塩に変換されるが、本発明に従うアルカリ金属硝酸塩の低融点混合物は、反応媒体としてのみ使用され、そして実質的に変化しないままである。白金の塩素を含まない化合物および合金化元素の化合物は、溶融物の温度の上昇の結果として、熱分解する。この溶融物は、形成されている酸化物粒子を安定化し、そしてそれらが小さい表面積を有する大きな粒子に凝集するのを防止する。対照的に、白金化合物および合金化元素の化合物の直接熱分解は、成功しない。十分に大きな表面積を有さない粗く分割された酸化物粉末が形成される。代表的には、わずか40m/gまでのBET表面積を有する生成物は、従来のAdams−Shrinerプロセスを使用して得られ得る。
【0039】
しかし、この粉末中に塩素が存在しないこととは別に、本発明の本質的な特徴は、本発明を用いて、非常に大きな表面積(代表的に、40〜100m/gの範囲のBET値)を有する、微細に分割された白金粉末および白金合金粉末が調製され得るという事実である。これらの生成物は、化学反応または燃料電池における触媒として使用した場合の非常に高い活性および性能により特徴付けられる。
【0040】
硝酸リチウム、硝酸カリウムおよび硝酸ナトリウムの二成分または三成分混合物は、アルカリ硝酸塩の低融点混合物として使用される。好ましくは、特に低い融点を有するLiNO−KNO−NaNO系の二成分および三成分共融混合物が使用される。硝酸ナトリウムは、306℃より上でしか融解しないが、硝酸リチウムおよび硝酸カリウムの共融混合物の融点は、132℃である。硝酸リチウム、硝酸カリウムおよび硝酸ナトリウムの三成分系は、120℃の融点を有する。
【0041】
本発明によると、塩素を含まない白金化合物および合金化元素の塩素を含有しない化合物は、本発明のプロセスにおいて使用され、ここで、この合金化元素は、好ましくは、白金族金属のルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウムおよびイリジウムのメンバーである。しかし、卑金属(例えば、バナジウム、タングステン、モリブデンなど)もまた使用され得る。
【0042】
貴金属の硝酸塩はまた、本発明に従うプロセスに使用され得る。しかし、この場合、窒素酸化物がこれらの化合物の熱分解の間に放出されることを考慮しなければならない。これは、上記のように溶融物の発泡を導き、この窒素酸化物は、排気精製ユニットにおいて無害にされなければならない。それにもかかわらず、硝酸塩の使用は、Adams−Shrinerプロセスと比較して、本発明に従うプロセスにかなりの利点を提供する。なぜなら、貴金属化合物およびアルカリ金属硝酸塩の物質混合物は、この混合物の低い融点に起因して均一に非常に迅速に加熱されるからである。この事実は、均一な粒子サイズ分布および高い比表面領域を有する貴金属粉末の調製のために必須な条件として本発明者らによって認識された。このプロセスのアレルギーの可能性はまた、ヘキサクロロ白金酸の使用を避けることによって最小化される。
【0043】
しかし、好ましくは、塩素を含まずそして硝酸塩を含まない貴金属化合物が使用される。このとき、全く酸化窒素の放出がないプロセスを操作することが可能になる。なぜなら、使用されるアルカリ金属硝酸塩が、このプロセスに使用される高くて600℃までの温度での熱分解に供されないからである。
【0044】
出発化合物および最終生成物の塩素含有量は、Wickboldt分解(disintegration)プロセスによって検出され、次いで、イオンクロマトグラフィー(IC)によって水溶液中で決定される。化合物の総塩素含有量は、この方法で決定され、これは、遊離塩素および結合塩素の合計からなる。適切な出発化合物の総塩素含有量は、500ppm未満であるべきである。
【0045】
最終生成物(白金および白金合金ブラック)の総塩素含有量は、代表的には、100ppm未満、好ましくは、50ppm未満である。より高い塩素含有量は、腐食現象を導き、燃料電池の作動寿命の減少を導き得る。
【0046】
ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸は、好ましくは、塩素を含まず硝酸塩を含まない白金化合物として使用される。塩溶融物中のヘキサヒドロキソ白金(IV)酸の熱分解は、非常に広い表面積を有する酸化白金を導き、これは、還元後、対応する広い表面積を有する白金ブラックを生成する。合金化元素の適切な化合物が添加される場合、酸化物を混合し、これらの酸化物の引き続く還元の後に、広い表面積(40〜100m/gの範囲のBET表面積)を有する白金合金粉末がまた調製され得る。酸化ルテニウム(IV)水和物は、好ましくは、白金/ルテニウムブラックを生成するために塩素を含まないルテニウム化合物として使用される。
【0047】
本発明に従うプロセスは、溶融物を調製するための2つのプロセスの変形を提供する。第1の変形に従って、出発物質(アルカリ金属硝酸塩、白金化合物および合金化元素の任意の化合物である)は、一緒に混合され、そして均一にされ、次いで、これらが融解するまで一緒に加熱される。しかし、アルカリ金属硝酸塩の混合物のみが最初にその融点より上に加熱される場合、塩素を含まない白金化合物および塩素を含まない合金化元素の任意の化合物が溶融物に導入されることがより有利である。これは、貴金属化合物を添加するときに、溶融物全体が既に均一な温度とみなされ、その結果、異なる時間の間、高温に供される結果として互いに大きく異なる粒子サイズが生成され得ないという利点を有する。しかし、第1のプロセスの変形でさえ、Adams−Shrinerプロセスよりもかなり良い結果を提供する。なぜなら、アルカリ金属硝酸塩の共融混合物が、わずか132℃で融解し、その結果、迅速な温度平衡が、関連する比較的低い温度で出発物質の均一な混合物を生じるからである。
【0048】
第2のプロセスの変形が使用される場合、白金化合物および必要に応じて合金化元素の化合物が溶融物の融点よりわずか20〜40℃高い温度(150℃と170℃との間の温度である)で加えられることが推奨される。
【0049】
上記貴金属化合物は、400℃と600℃との間の反応温度で、分解して対応する酸化物を与える。従って、これらの化合物の溶融物への導入の後に、これは、上記範囲内の温度に加熱され、次いで、分解が完了するまでこの温度で保持される。分解は、選択された温度に依存して、約10分〜2時間の期間の後に通常完了する。
【0050】
次いで、溶融物を冷却する。しかし、Adams−Shrinerプロセスとは対照的に、溶融物の完全な凝固を待つ必要がない。むしろ、水が安全に200℃と150℃との間の範囲の温度の依然として液体の溶融物に、これがかなりの量の水蒸気の生成を導くことなく、加えられ得る。なぜなら、吸熱プロセスが関係するからである。水の添加の間、溶融物は、連続的に、アルカリ金属硝酸塩の水溶液に変換され、ここに、細かく分割された酸化物が懸濁され、それらから濾過により分離され得る。Adams−Shrinerプロセスにおけるような、坩堝から凝固した溶融物の時間のかかる分離は、必要でない。
【0051】
原則的に、アルカリ金属硝酸塩の溶液は、濃縮されてそして酸化物粒子を濾別したのちに再び使用され得る。
【0052】
濾過ケークを水中に(好ましくは、カセイソーダ溶液の添加とともに)懸濁させ、次いで、還元剤を添加することによって、金属性白金または白金合金粉末に広範囲に還元する。適切な還元剤は、ヒドラジン、ホルムアルデヒドまたは水素化ホウ素ナトリウムであり、これらは、水溶液として懸濁液に添加される。貴金属粉末を濾過によって懸濁液から分離し、次いで好ましくは、100℃までの高温下で減圧下で乾燥し、そして最後に篩分ける。
【0053】
本発明に従うプロセスによって酸化物を調製する場合、それらの比表面積に対する温度の効果は全く検出されないかまたは非常に小さい効果のみが検出される。従って、調製のスケールを変更することは容易である。数%(例えば、1〜5重量%)の量で水を加えることによって、共融混合物の融点は、100℃より下の温度に下げられ得る。融点を下げることは、両方のプロセス変形において可能である。これは、固体形態で調製され得ないかまたは調製が非常に困難な化合物の使用を可能にする。従って、例えば、ルテニウムは、15重量%のルテニウム含有量を有するトリニトラトニトロシルルテニウム(II)の水溶液の形態で使用され得る。溶融物を加熱するとき、水は、幅広い温度範囲にわたって安全に放出される。トリニトラトニトロシルルテニウム(II)は、最初に、溶融物中に溶解され、そしてさらなる加熱の間に、酸化物の形成を伴う所望の様式で分解する。
【0054】
しかし、窒素酸化物は、再び、トリニトラトニトロシルルテニウム(II)の熱分解の間に放出される。この場合、2つの合金化成分の1つのみが関係するので、窒素酸化物放出は、Adams−Shrinerプロセスにおけるよりもなおずっと低い。
【0055】
ここで、本発明を一般的に記載したが、以下の実施例を参照して本発明がより容易に理解され得る。この実施例は、例示の目的であり、明白に述べない限り、本発明を限定することを意図しない。
【0056】
本発明は、燃料電池における使用および化学反応のための、白金または白金合金の粉末を提供する。この粉末は、高表面積であり、同時に低い塩素含有量であることによって特徴付けられる。これらの粉末は、出発物質として、アルカリ金属硝酸塩、塩素を含まない白金化合物および必要に応じて塩素を含まない合金化元素の化合物の低融点混合物を含む溶融物を形成し、次いでこの溶融物を、この白金化合物および合金化元素の化合物が熱分解して酸化物を与える反応温度まで加熱し、次いでこの溶融物を冷却し、水に溶解し、そして形成されるこの酸化物または混合酸化物を、引き続く還元によって白金または白金合金の粉末へと転換することによって調製される。LiNO−KNO−NaNO系からの二成分または三成分共融混合物は、アルカリ金属の硝酸塩の低融点混合物として適切である。ヘキサヒドロキソ白金(IV)酸は、塩素を含まない白金化合物として好ましく使用される。
【実施例】
【0057】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に説明される。
【0058】
粉末の粒子サイズは、回折最大値の広がりからX線回折によって決定される。
【0059】
比表面積を、DIN66131に従って、Brunauer、EmmettおよびTeller(BET)方法を使用して窒素吸着によって決定する。
【0060】
(実施例1)
65%の硝酸カリウムおよび35%の硝酸リチウムの混合物1kgを、適切な坩堝で融解し、そして150℃に加熱する。100gのヘキサヒドロキソ白金(IV)酸をこの溶融物に導入し、温度を450℃の反応温度に上げる。この温度で90分の期間の後に、酸化白金の形成が完了する。次いで、溶融物を冷却し、150℃と170℃との間の温度で水で希釈し、次いで、さらに室温に冷却する。この溶液を濾過し、残渣を洗浄する。濾過ケークを、1500mlの3%強度のカセイソーダ溶液に懸濁し、そして800mlの6%強度のヒドラジン溶液で還元する。次いで、固体を濾別し、減圧下65℃で乾燥し、そして篩分ける。
【0061】
白金粉末を、桂皮酸の水素化のための触媒として使用し、非常に高い水素化活性を実証する。
【0062】
粒子サイズ(XRD): 4.2nm
BET表面積: 52m/g(DIN66131に従って
測定される)
総塩素含有量: <30ppm。
【0063】
(実施例2)
65%の硝酸カリウムおよび35%の硝酸リチウムの混合物1kgを、適切な坩堝で融解し、そして150℃に加熱する。100gのヘキサヒドロキソ白金(IV)酸をこの溶融物に導入し、温度を500℃の反応温度に上げる。この温度で30分の期間の後に、酸化白金の形成が完了する。次いで、溶融物を冷却し、150℃と170℃との間の温度で水で希釈し、次いで、さらに室温に冷却する。この溶液を濾過し、残渣を洗浄する。濾過ケークを、1500mlの3%強度のカセイソーダ溶液に懸濁し、そして800mlの6%強度のヒドラジン溶液で還元する。次いで、固体を濾別し、減圧下65℃で乾燥し、そして篩分ける。
【0064】
粒子サイズ(XRD): 4.4nm
BET表面積: 47m/g
総塩素含有量: <30ppm。
【0065】
白金粉末を、水素/空気で作動するPEM燃料電池における触媒(アノードおよびカソードのため)として使用し、長期にわたって安定な非常に良好な性能値を作り出す。さらに、この材料はまた、DMFC燃料電池におけるカソード触媒として使用される場合、非常に良好な性能値を示す。
【0066】
これら2つの実施例は、粒子サイズが、貴金属化合物の分解の反応温度によって少しの程度のみ影響することを示す。
【0067】
(実施例3)
65%の硝酸カリウムおよび35%の硝酸リチウムの混合物1kgを、適切な坩堝中で融解し、そして150℃まで加熱する。51.5gのヘキサヒドロキソ白金(IV)酸および28.5gの酸化ルテニウム(IV)水和物をこの溶融物に導入し、そして温度を500℃まで上げる。この温度で30分後、この溶融物を冷却し、150℃と170℃との間の温度で水で希釈し、次いで室温までさらに冷却する。この溶液を濾過し、そしてこの残渣を洗浄する。この濾過ケークを、3%強度のカセイソーダ溶液1500mlに懸濁し、そして6%強度のヒドラジン溶液800mlで還元する。次いで、固体を濾別し、減圧下で65℃で乾燥し、そして篩分ける。
【0068】
この材料を、直接メタノール燃料電池(DMFC)のためのアノード触媒として使用し、そしてこれはメタノール/空気で作動する場合に非常に優れた性能値を示す。低い塩素含有量に起因して、このDMFCは高い長期安定性を示す。
【0069】
Pt/Ru比: 50:50(原子%)
粒子サイズ(XRD): 5.2nm
BET表面積: 84m/g
総塩素含有量: <40ppm。
【0070】
(比較例1(CE1))
1.2kgの硝酸ナトリウムを、80gのヘキサクロロ白金(IV)酸(40重量%のPt)および43gの塩化ルテニウム(III)(39重量%のRu)を均質に混合し、適切な坩堝中に入れ、そして融解する。温度をゆっくりと500℃まで上げる。この温度で30分後、この溶融物を室温まで冷却する。固化した溶融物を、脱塩水で溶解して坩堝の外へ取り出し、この溶液を濾過し、そして残渣を洗浄する。この濾過ケークを3%強度のカセイソーダ溶液1500mlに懸濁し、そして6%強度のヒドラジン溶液800mlで還元する。次いで、この固体を濾別し、減圧下で65℃で乾燥させ、そして篩分ける。
【0071】
Pt/Ru比: 50:50(原子%)
粒子サイズ(XRD): 5.2nm
BET表面積: 37m/g
総塩素含有量: 836ppm。
【0072】
(実施例4)
65%の硝酸カリウムおよび35%の硝酸リチウムの混合物1kgに50mlの水を添加し、そしてこの混合物を120℃まで加熱する。51.5gのヘキサヒドロキソ白金(IV)酸、および15%のルテニウム含有量のトリニトラトニトロシルルテニウム(II)の水溶液114gを導入し、そして温度を500℃まで上げる。この温度で30分後、この溶融物を冷却し、150℃と170℃との間の温度で水で希釈し、次いで室温までさらに冷却する。この溶液を濾過し、そして残渣を洗浄する。この濾過ケークを、3%強度のカセイソーダ溶液1500mlに懸濁し、そして6%強度のヒドラジン溶液800mlで還元する。次いで、この固体を濾別し、減圧下で65℃で乾燥させ、そして篩分ける。この材料を、DMFC燃料電池におけるアノード触媒として使用し、これは良好な長期安定性を示す。
【0073】
Pt/Ru比: 50:50(原子%)
粒子サイズ(XRD): 4.6nm
BET表面積: 87m/g
総塩素含有量: <40ppm。
【0074】
本発明は、その特定の実施形態と関連して記載されてきたが、さらなる改変が可能であり、そして本発明は、一般に本発明の原理に従う本発明の任意の変化、使用または適用を網羅するように意図され、そして本発明が属する分野で公知であるかまたは慣習的に実施され、本明細書中上記に記載の本質的な特性に適用され得、そして添付の特許請求の範囲に従うような、本開示からの逸脱を含むことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池または化学反応における触媒として使用するための、白金または白金合金の粉末であって、40m/gより大きなBET比表面積を有し、100ppm未満の塩素含有量を有する粉末を含む、白金または白金合金の粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の白金合金粉末であって、ここで、前記白金合金粉末は、白金族由来の貴金属および/または合金化元素としての卑金属を含む、白金合金粉末。

【公開番号】特開2009−114545(P2009−114545A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1123(P2009−1123)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【分割の表示】特願2002−226367(P2002−226367)の分割
【原出願日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】