説明

焼付け塗料組成物及び塗装仕上げ方法

【課題】外観が良好で、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性に優れる焼付け塗料組成物と、この焼付け塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法を提供すること。
【解決手段】1級水酸基と燐酸基を有するガラス転移温度(Tg)82〜110℃のビニル系共重合体(A)、好ましくは1級水酸基含有ビニル系単量体と燐酸基含有ビニル系単量体とその他のビニル系単量体を含有してなり、かつ、燐酸基含有ビニル系単量体の含有率が0.1〜2重量%のビニル系単量体混合物を共重合させて得られるビニル系共重合体と、アミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする焼付け塗料組成物、及び、基材上にベースコートを形成せしめた後、このベースコート上に、前記焼付け塗料組成物からなるトップコートを形成せしめることを特徴とする、塗装仕上げ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規にして有用なる焼付け塗料組成物に関し、特に、積層塗装仕上げに用いるトップコートとして好適なる焼付け塗料組成物と、この焼付け塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法に関する。
【0002】
さらに詳細には、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体と、水酸基と反応する官能基を含有する硬化剤を必須の成分とする焼付け塗料組成物に関し、従来の焼付け塗料よりも、とりわけ、表面硬度、耐溶剤性に優れた、極めて実用性の高い焼付け塗料組成物と、この焼付け塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法に関する。
【背景技術】
【0003】
パーソナルコンピューター、携帯電話に代表されるIT家電製品や自動車部品等の金属塗装などの塗料分野を中心に、高塗膜表面硬度で、耐久性に優れ、かつ仕上がり外観良好な上塗り塗膜が要求されている。
【0004】
通常、IT機器等の素材に用いられるマグネシウム合金等の金属の塗装のクリヤーコートにはアクリル樹脂/メラミン樹脂系の焼付け塗料が用いられており、この分野における塗膜は、塗膜の表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性、光沢等に優れることが求められている。
【0005】
従来の水酸基含有アクリル樹脂/メラミン樹脂系焼付け塗料としては、例えば、アクリル樹脂として、特定の親水性基含有重合性不飽和モノマー(a)、水酸基含有重合性不飽和モノマー(b)、リン酸基含有重合性不飽和モノマー(c)及びその他の重合性不飽和モノマー(d)からなるモノマー混合物を共重合してなる水酸基価が30〜200mgKOH/gの樹脂〔A〕を用いる塗料組成物(例えば、特許文献1参照。)が知られており、塗膜性能に優れると共に、仕上り外観に優れる塗膜を形成できることが記載されているが、前記マグネシウム合金等の金属の塗装のクリヤーコートに用いる焼付け塗料用としては、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性が十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開2001−279164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的とする処は、外観が良好で、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性に優れる焼付け塗料組成物と、この焼付け塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決しようとして鋭意検討した結果、1級水酸基と燐酸基を有するガラス転移温度(Tg)82〜110℃のビニル系共重合体(A)と、アミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする焼付け塗料組成物は、塗膜外観が良好で、しかも、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性に優れること、及び、この焼付け塗料組成物は積層塗膜形成の際のクリヤーコート用塗料として好適であること等を見い出すに及んで、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、1級水酸基と燐酸基を有するガラス転移温度(Tg)82〜110℃のビニル系共重合体(A)と、アミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする焼付け塗料組成物を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、基材上にベースコートを形成せしめた後、このベースコート上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載の焼付け塗料組成物からなるトップコートを形成せしめることを特徴とする、塗装仕上げ方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上塗り塗料組成物は、塗膜外観が良好で、しかも、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性に優れる塗膜を形成することが可能であり、積層塗膜の形成に際してクリヤーコート用塗料として特に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いるビニル系共重合体(A)としては、1級水酸基と、燐酸基を有し、かつ、ガラス転移温度(Tg)が82〜110℃のビニル系共重合体(A)あれば良く、特に限定されないが、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性により優れる塗膜を形成することができることから、85〜100℃であることが好ましい。
【0013】
前記ビニル系共重合体(A)の調製方法としては、例えば、1級水酸基含有ビニル系単量体と燐酸基含有ビニル系単量体とその他のビニル系単量体を含有してなるビニル系単量体混合物を、ラジカル開始剤存在下で共重合させる方法、1級水酸基含有ビニル系共重合体に燐酸を反応させて燐酸エステル化せしめる方法等が挙げられるが、なかでもビニル系単量体混合物を、ラジカル開始剤存在下で共重合させる前者の方法が簡便であり、好ましい。
【0014】
前記1級水酸基含有ビニル系単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類;ポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオールと(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸とから得られるポリオキシアルキレングリコールのモノエステル類;
【0015】
「プラクセル FA−1」〔ダイセル化学工業(株)製の、2−ヒドロキシエチルアクリレート1モルにε−カプロラクトン1モルを付加した単量体〕、「プラクセル FM−1」、「プラクセル FM−3」、「プラクセル FM−5」〔ダイセル化学工業(株)製の、2−ヒドロキシエチルメタアクリレート1モルにε−カプロラクトンをそれぞれ1モル、3モル、5モルを付加した単量体〕、「TONE M−100」〔米国ユニオンカーバイド社製の、2−ヒドロキシエチルアクリレート1モルにε−カプロラクトン2モルを付加した単量体〕等が挙げられる。
【0016】
なお、これら1級水酸基含有ビニル系単量体に、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有不飽和単量体と、酢酸などの酸類との付加物;(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸類と、「カージュラー E」(オランダ国シェル社製のフェニルグリシジルエーテル)などのような、α−オレフィンのエポキサイド以外の、各種のモノエポキシ化合物との付加物等の1級水酸基以外の水酸基を含有するビニル系単量体を併用することは可能であるが、水酸基含有ビニル系単量体の全量100モル%に対して、1級水酸基以外の水酸基を含有するビニル系単量体が50モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
【0017】
次に、前記燐酸基含有ビニル系単量体としては、燐酸基の一部がエステル化されているものでもよく、例えば、アシッドホスホキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホキシプロピルメタクリレート、アシッドホスホキシポリオキシエチレングリコールモノメタクリレート、メタクロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエタノールアミンのハーフ塩等が挙げられる。
【0018】
さらに、前記その他のビニル系単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜22のアルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのアルキルエステル類;ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート類;
【0019】
(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸類;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノ−n−ブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノ−n−ブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノ−n−ブチル等の不飽和ジカルボン酸のモノエステル類(ハーフ・エステル類);アジピン酸モノビニル、コハク酸モノビニル等の飽和ジカルボン酸のモノビニルエステル類;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ポリカルボン酸の無水物類;無水アクリル酸、無水メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸の無水物類;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸と、酢酸、プロピオン酸、安息香酸等の飽和カルボン酸との混合酸無水物などのようなカルボン酸無水基を有するビニル系単量体類;トリメチルシリル(メタ)アクリレート、ジメチル−t−ブチルシリル(メタ)アクリレート、1−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン等のブロックされたカルボキシル基を含有するビニル系単量体類;
【0020】
マイレン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸と、一価アルコール類とのジエステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル、安息香酸ビニル、「ベオバ」(オランダ国シエル社製のビニルエステル類)等のカルボン酸ビニルエステル類;クロトン酸メチル、クロトン酸エチルの如き、各種のクロトン酸のアルキルエステル類;(メタ)アクリロニトル、クロトノニトリル等のシアノ基含有ビニル系単量体類;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルモルホリン、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、N−(2−ジエチルアミノ)エチルクロトン酸アミド、2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、2−ジエチルアミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有ビニル系単量体類;
【0021】
グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキセンオキシド、グリシジルビニルエーテル、メチルグリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有ビニル系単量体類;2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、2−メチル−2,3−カーボネートプロピル(メタ)アクリレート、3,4−カーボネートブチル(メタ)アクリレート等の5員環シクロカーボネート基含有ビニル系単量体類;5−〔N−(メタ)アクリロイルカルバモイルオキシメチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン、5−〔N−{2−(メタ)アクリロイルオキシ}エチルカルバモイルオキシメチル〕−5−エチル−1,3−ジオキサン−2−オン等の6員環シクロカーボネート基含有ビニル系単量体類;
【0022】
N−(メタ)アクリロイルカルバミン酸メチル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルカルバミン酸エチル等のカーバーメート基含有ビニル系単量体類;「ビスコート 8F、8FM、3Fもしくは3FM」〔大阪有機化学(株)製含フッ素(メタ)アクリル系単量体〕、パープルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ−パーフルオロシクロヘキシルフマレート、N−iso−プロピルパーフルオロオクタンスルホンアミドエチル(メタ)アクリレート等の(パー)フルオロアルキル基含有ビニル系単量体類;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフルオロオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のクロル化オレフィン類;エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ヘキセン等のα−オレフイン類;スチレン、α−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体類;
【0023】
p−スチレンスルホンアミド、N−メチル−p−スチレンスルホンアミド等のスルホン酸アミド基含有ビニル系単量体;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチル−プロパンスルホン酸等のスルホン酸基含有ビニル系単量体またはそれらの有機アミン塩類;ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジクロロシラン等の加水分解シリル基含有ビニル系単量体類;
【0024】
エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メチルシクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;アクロレイン、メチルビニルケトン等のカルボニル基含有ビニル系単量体類;「ブレンマー PME」〔日本油脂(株)製〕等の含ポリエーテル含有ビニル系単量体類;メタクリル酸メトキシ−メトキシカルボニル−メチルエステル、アクリル酸アセチルアミノ−メトキシカルボニル−メチルエステルなどが挙げられる。
【0025】
これら各種のビニル系単量体を用いてガラス転移温度(Tg)82〜110℃のビニル系共重合体(A)を合成するには、スチレン、メチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート等のホモポリマーのガラス転移温度が100℃を超えるビニル系単量体をその他のビニル系単量体として含有させることが有効であり、中でも、アミノ樹脂との相溶性が良好で、表面硬度の高い共重合体とするためには、スチレンとメチルメタクリレート及び/又はターシャリーブチルメタクリレートを、ビニル系共重合体(A)を合成に用いるビニル系単量体混合物の全量に対して、合計の含有率が50〜90重量%であることが好ましく、70〜90重量%であることがより好ましい。この際、ビニル系単量体混合物の全量に対して、スチレンの含有率が2〜40重量%で、メチルメタクリレート及び/又はターシャリブチルメタクリレートの含有率が10〜90重量%あることが好ましく、なかでもスチレンの含有率が5〜20重量%で、メチルメタクリレート及び/又はターシャリブチルメタクリレートの含有率が50〜80重量%であることがより好ましい。
【0026】
以上に掲げられたような種々のビニル系単量体を用いて、ビニル系共重合体(A)を調製するには、溶液重合法、非水分散重合法、光重合法、塊状重合法などのような種々の重合法を適用することができる。これらのうちでも、有機溶剤類の存在下に、重合開始剤や分子量調整剤などを用いるという形式の溶液重合法が、最も簡便であるし、得られるビニル系共重合体(A)の溶液は、重合体を分離することなく、溶液のままアミノ樹脂(B)と混合して本発明の焼付け塗料用組成物とすることができることから、好ましい。
【0027】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2′−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物類;tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物類などが挙げられる。
【0028】
また、溶液重合法を適用する際に使用する有機溶剤としては、種々の有機溶剤のうちのいずれをも使用することが出来るし、しかもそれらは、単独使用でも2種類以上の併用でもよいことは勿論である。
【0029】
前記有機溶剤としては、例えば、ホワイト・スピリット、ミネラル・スピリット等のそれ自体が種々の炭化水素からなる混合物;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロオクタン等の脂肪族系ないしは脂環式系の炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、「ハウス(HAWS)」(オランダ国シェル社製の高芳香族炭化水素系混合溶剤)等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、i−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;
【0030】
ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、メチレンクロライド、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素類;N−メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0031】
かくして得られる、当該ビニル系共重合体(A)は、重量平均分子量が500〜30,000の範囲にあることが好ましく、なかでも塗膜外観、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性のより優れる塗膜を形成できることから、3,000〜15,000の範囲であることが特に好ましい。
【0032】
当該ビニル系共重合体(A)の水酸基価については特に限定されないが、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性のより優れる塗膜を形成できることから、1級水酸基に基づく水酸基価が20〜200mgKOH/gであることが好ましく、50〜150mgKOH/gであることがより好ましい。
【0033】
本発明におけるビニル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、一般的に良く知られている下記に示すフォックスの式で計算される値である。その計算に用いるホモポリマーのガラス転移温度(Tg)を下記に示す。ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)の記載のないものは、一般的に文献に記載されている値を用いることができる。また、ホモポリマーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査式熱量測定法や動的粘弾性測定法により求めることもできる。
【0034】
〔フォックスの式〕
1/Tg=Σ(Wn/Tgn)
Tg:重合体のガラス転移温度(絶対温度)
Wn:単量体nの重量分率
Tgn:単量体nのホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
【0035】
〔ホモポリマーのTg〕
スチレン(St)のホモポリマー:100℃
メチルメタクリレート(MMA)のホモポリマー:105℃
メタクリル酸(MAA)のホモポリマー:130℃
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)のホモポリマー:55℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)のホモポリマー:−80℃
ラウリルメタクリレート(LMA)のホモポリマー:−65℃
ステアリルアクリレート(STA)のホモポリマー:30℃
nブチルメタクリレート(nBMA)のホモポリマー:20℃
ターシャリーブチルメタクリレート(tBMA)のホモポリマー:107℃
nブチルアクリレート(nBA)のホモポリマー:−54℃
アシッドホスホキシエチルメタクリレートのホモポリマー:50℃
ジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)のホモポリマー:18℃
【0036】
硬化剤として用いる前記アミノ樹脂(B)としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のアミノ基含有化合物と、ホルマリン、アセトアルデヒド、グリオキザール等のアルデヒド系化合物とを反応せしめることによって得られる縮合物;あるいはこれらの縮合物を、アルコール類、特に炭素原子数1〜4の低級アルコールで、部分的に、あるいは完全にエーテル化せしめて得られる化合物などが挙げられる。
【0037】
本発明の焼付け塗料組成物は、例えば、前記ビニル系共重合体(A)又はその有機溶剤溶液と、アミノ樹脂(B)と、必要により、ビニル系共重合体(A)とアミノ樹脂(B)の硬化を促進する硬化触媒、希釈用有機溶剤、各種の添加剤等を混合することで得られる。
【0038】
前記ビニル系共重合体(A)とアミノ樹脂(B)の固形分重量比(A/B)としては、表面硬度、耐磨耗性、耐溶剤性のより優れる塗膜を形成できることから、90/10〜50/50となる範囲であることが好ましく、なかでも85/15〜60/40となる範囲であることがより好ましい。
【0039】
前記硬化触媒としては、強酸性触媒、弱酸性触媒等の酸性触媒が使用される。強酸性触媒としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、スルホン酸等の有機酸、さらにそれらのエステルや、アンモニウム塩、オニウム塩等が挙げられ、特に、スルホン酸やそのエステル、アミン塩、安息香酸、トリクロル酢酸等が好ましい。
【0040】
スルホン酸としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタリンジスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、その塩類あるいはエステルが好ましい。
【0041】
弱酸性触媒としては、例えば、燐酸類、燐酸モノエステル類、亜燐酸エステル類等の燐酸類、あるいはそのエステルが好ましい。
【0042】
燐酸類およびそのエステルとしては、例えば、燐酸、ピロリン酸、燐酸モノオクチル、燐酸モノプロピル、燐酸モノラウリル、燐酸ジオクチル、燐酸ジプロピル、燐酸ジラウリル、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート等が挙げられる。
【0043】
硬化触媒の添加量としては、本発明の上塗り塗料組成物中における含有率が、0〜10重量%となる範囲内が通常であり、なかでも0.01〜5重量%となる範囲内にあることが好ましい。
【0044】
前記希釈用有機溶剤としては、例えば、「ソルベッソ100」、「ソルベッソ150」(いずれも、エクソン社製)、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素;エタノール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸アミル、セロソルブアセテート等のエステル類などのような各種の有機溶剤類を、溶解度ならびに沸点などを考慮して、適宜、選択することができる。
【0045】
本発明に係る上塗り塗料組成物には、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を必要に応じ添加することができる。その他に、一分子中に2個以上のエポキシ基を含有する化合物、ポリイソシアネート化合物、エポキシシラン、アミノシラン等のシランカップリング剤、メチルシリケート、エチルシリケート等の加水分解性シリル基含有化合物等の各種硬化系を性能を低下させない範囲で併用することが可能である。
【0046】
本発明の焼付け塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法としては、基材上にベースコートを形成させた後、このベースコート上に、本発明の焼付け塗料組成物からなるトップコートを形成する塗装仕上げ方法、例えば、ベースコート用塗料を各種のシンナーで所望の粘度にまで希釈してから、基材上にエアスプレーガン、静電塗装ガン、ミニベル塗装ガンなどを用いて10〜30μm程度の膜厚にて塗装し、所定の温度で、所定の時間の焼き付けを行った後、又は、室温に2〜5分間のあいだフラッシュ・タイムをおいた後、本発明の焼付け塗料組成物からなるクリヤー塗料を、所望の粘度にまで希釈してから、20〜50μm程度の膜厚に塗布し、次いで、5〜10分間のあいだセッティングさせた後、電気オーブン、ガスオーブンなどで20分間程度の焼き付けを行う塗装方法等が挙げられる。
【0047】
なお、前記ベースコート用塗料として、水性ベースコート塗料に代表されるような揮発速度の遅いシンナーを使用した系においては、フラッシュ・タイム中において、所定の温度において強制乾燥(プレヒート)させることも可能である。
【0048】
さらに、本発明の塗装仕上げ方法としては、例えば、2コート1ベイク方式で塗装せしめた後に、オーバー・トップ・クリヤーを塗装する形の3コート2ベイク方式で塗膜を形成する際のオーバー・トップ・クリヤーとして本発明の焼付け塗料組成物を用いる方法を挙げることもできるし、中塗り、ベース、クリヤーの3層をウエット・オン・ウエットにて塗装後、所定の温度で焼き付ける3コート1ベイク方式で塗膜を形成する際のクリヤーとして本発明の焼付け塗料組成物を用いる方法を挙げることもできる。
【0049】
本発明の焼付け塗料組成物を用いた塗装仕上げ方法で利用できるベースコート用塗料としては、特に限定されるものではないが、好ましくは、水酸基含有アクリル系樹脂とメラミン樹脂の組成物、水酸基含有アルキド系樹脂とメラミン樹脂の組成物、水酸基含有ポリエステル系樹脂とメラミン樹脂の組成物;水酸基含有樹脂類とブロックイソシアネートの組成物;カルボルキシル基含有樹脂とエポキシ基含有樹脂の組成物;加水分解シリル基含有樹脂類などや、これらの2種以上を併用した形のものに、有機顔料、無機顔料、金属顔料類の少なくとも1種を配合せしめた形のものが挙げられる。
【0050】
前記ベースコート用塗料としては、従来の有機溶剤溶液型に加え、有機溶剤の排出量削減を目的として溶液型ハイソリッド系、非水分散型樹脂系、水性ベースコートも使用可能であるが、排出有機溶剤量の削減としては、水性ベースコートの使用が最も効果的である。
【0051】
この際に用いられる水性ベースコート用樹脂としては、決して、これらの例示例のみに限定されるものではなく、水溶性ないしは水分散性樹脂を使用するベースコート用塗料であれば、いずれの形のものも本発明において使用することができる。
【0052】
前記水溶性ないしは水分散性樹脂としては、種々の水溶性樹脂あるいは水分散型樹脂を使用することができ、例えば、樹脂中に含有しているカルボキシル基、スルホン酸基などの酸基を、有機塩基または無機塩基で中和して得られる、水溶性ないしは水分散性ポリエステル樹脂、水溶性ないしは水分散性ビニル系樹脂、水溶性ないしは水分散性ポリウレタン樹脂、水溶性ないしは水分散性ポリエステルポリウレタン樹脂;樹脂中に含まれるアミノ基などの塩基性基を、有機酸または無機酸で中和して得られる水溶性ないしは水分散性ビニル系樹脂;
【0053】
陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤又は非イオン性界面活性剤を乳化剤として用い、ビニル系単量体を、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイドなどのラジカル開始剤の存在下で、乳化重合せしめるということによって得られるエマルジョン;
【0054】
前記乳化重合に際して、界面活性剤を使用せずに、それ自体のうちに界面活性剤部位を有するという特定のビニル系単量体を、ビニル系単量体の一部として使用して行われる乳化重合でもって得られる、ソープフリーエマルジョン:
【0055】
有機溶剤中で重合反応を行って得られる、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂に、前記したような各種の界面活性剤を添加せしめ、溶媒を有機溶剤から水に転相せしめると共に、水中に分散せしめる乳化法(後乳化)でもって得られる、水分散性ポリエステル樹脂、水分散性ビニル系樹脂、水分散性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂または水分散性ポリエステルポリウレタン樹脂;
【0056】
前記したような後乳化法で、前記したポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂の側鎖や末端に、予め、陰イオン性部位、陽イオン性部位又は非イオン性部位などの界面活性部位を、各樹脂を合成する際に導入せしめるか、あるいは合成後に導入せしめるということによって、自己乳化性を付与させた後に、各種の乳化剤類を添加しないで、後乳化のみを行うということによって得られる、それぞれ、水分散性ポリエステル樹脂、水分散性ビニル系樹脂、水分散性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂または水分散性ポリエステルポリウレタン樹脂;
【0057】
前記した後乳化法でもって得られる、それぞれの水分散性樹脂の分散安定性を高めるために、それぞれの樹脂に各種の乳化剤類を添加せしめた後に、後乳化を行うということによって得られる、それぞれ、水分散性ポリエステル樹脂、水分散性ビニル系樹脂、水分散性エポキシ樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂または水分散性ポリエステルポリウレタン樹脂;
【0058】
脂肪族炭化水素中で得られた非水分散性ビニル系樹脂を、中和などのような手段でもって、水性媒質へ移行せしめるということによって得られる形の水分散性ビニル系樹脂;水分散安定用重合体の存在下に、ビニル系単量体類を分散重合せしめるということによって得られる形の水分散性ビニル系樹脂;
【0059】
特開平6−212049号公報に開示されているような、付加反応性の官能基を有する樹脂と、この付加反応性官能基と反応し得る他の官能基を有する樹脂とを反応せしめて得られる形の酸基含有グラフト型樹脂を、水性媒体は転相乳化せしめることによって得られる水分散性樹脂の存在下に、疎水性ビニル系単量体類を重合せしめることによって得られる形の水分散性樹脂などが挙げられる。
【0060】
さらに、前記した水分散性樹脂の分散質が架橋した形の、いわゆる架橋粒子になっている水分散性樹脂も、エマルジョンも、共に、本発明の塗装仕上げ方法を実施するに際して使用することが出来るが、これらの各樹脂は、2種以上を併用しても差し支えないことは勿論である。
【0061】
これらのうちでも特に望ましい形のものとしては、調製方法の簡便さからも、エマルジョン樹脂、内部架橋型エマルジョン樹脂、水分散性ポリウレタン樹脂、水分散性ポリエステルポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0062】
本発明の塗装仕上げ方法において使用できるベースコート用塗料は、そのまま、ラッカー型としても、あるいは各樹脂が有する官能基と反応性を有する架橋剤や硬化触媒を配合せしめるということによって、硬化型としても、いずれの形によっても使用することができる。
【0063】
例えば、前記したような各樹脂が水酸基を有する場合、架橋剤としては、アミノ樹脂又はブロックイソシアネートを含む形のポリイソシアネート類などの使用が望ましく、各樹脂がエポキシ基を有する場合には、架橋剤としてカルボキシル基含有樹脂、ポリカルボン酸類などの使用が望ましいし、各樹脂がカルボキシル基を有する場合には、架橋剤としては、ポリエポキシ化合物、エポキシ基含有樹脂の使用が望ましい。
【0064】
その中でも、水性ベースコート用塗料としては、水酸基を有する水溶性樹脂あるいは水分散性樹脂とアミノ樹脂との組み合わせが好ましく、この場合のアミノ樹脂として代表的なものを例示すると、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327〔いずれも三井化学(株)製〕、ニカラックMW−3、ニカラックMX43〔いずれも三和ケミカル(株)製〕、ユーバン120〔三井化学(株)製〕、ウォーターゾールS−695〔大日本インキ化学工業(株)製〕、BEETLE BE3020、BEETLE BE3021、BEETLE BE3751〔いずれも英国 BIPリミテッド社製〕などが挙げられる。
【0065】
さらに、前記した水溶性ないしは水分散性樹脂を含むベースコート用塗料は、塗装仕上げ外観を向上せしめる目的で、偽塑性を付与し得る架橋型樹脂微粒子あるいはレオロジーコントロール剤を添加することもできる。
【0066】
これらのレオロジーコントロール剤としては、無機系あるいは有機系のものが使用可能であるが、代表的なものを例示すると、水溶性セルロースエーテル、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシルセルロース、ボリビニルアルコール、ビニルピロリドン(共)重合体、(メタ)アクリル酸(共)重合体、(メタ)アクリルアミド(共)重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体などが挙げられる。
【0067】
本発明の塗装仕上げ方法において使用できるベースコート用塗料は、顔料として、各種のメタリック粉末、あるいは各種の有機ないしは無機の着色顔料を含むものであり、例えば、アルミニウム粉末、銅粉末、雲母粉末、二酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、トルイジンレッド、ペリレン、キナクリドン、ベンジジンイエローなどが挙げられる。
【0068】
さらに、前記したベースコート用塗料は、塗装粘度を調整するための種々の有機溶剤を、あるいは塗料としての長期の貯蔵安定性を確保するための添加剤や有機溶剤などを始めとし、さらには、流動調製剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、可塑剤などの種々の添加剤類などをも配合させることができる。
【0069】
前記したベースコート用塗料とトップクリヤー用塗料との両塗料の塗装方法としては、エアースプレー塗装や、静電吹きつけ塗装や、回転霧化式静電塗装などのような種々の塗装方法を採用することができる。
【0070】
かくして得られる、本発明の焼付け塗料組成物および塗装仕上げ方法は、主として、鉄製品、ステンレススチール、マグネシウム合金、アルミニウム、真鍮、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポイカーボネート樹脂、ABS樹脂等に適用することができる。
【0071】
以上に記述してきたような、本発明の焼付け塗料組成物及び塗装仕上げ方法は、表面硬度、耐摩耗性、耐溶剤性に優れる塗膜が得られることから、パーソナルコンピューター、携帯電話等のIT基材用あるいは自動車部品用として好ましく、とりわけ、マグネシウム合金、アルミニウム等の金属部材用として好適である。
【実施例】
【0072】
次に、本発明を、参考例、実施例及び比較例により、一層具体的に説明することにする。以下において、部および%は、断りの無い限り、すべて重量基準である。
【0073】
参考例1〔ビニル系共重合体(A)の調製〕
撹拌機、温度計、冷却器及び窒素導入管を備えた反応容器に、キシレン550部とn−ブタノール300部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、スチレン128部、メチルメタクリレート726部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート130部、メタクリル酸10部、アシッドホスホキシエチルメタクリレート6部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート25部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3部およびキシレン150部を、4時間に亘って滴下した。
【0074】
滴下終了後も5時間反応を続行して、不揮発分50%のビニル系共重合体(A−1)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(A−1)は、重量平均分子量が12,000で、ガラス転移温度(Tg)が97℃の、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(A−1)の1級水酸基に基づく水酸基価は、56mgKOH/gであった。
【0075】
参考例2(同上)
メタクリル酸の添加量を10部から6部、アシッドホスホキシエチルメタクリレートの添加量を6部から10部に変更した以外は参考例1と同様にして、不揮発分50%のビニル系共重合体(A−2)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(A−2)は、重量平均分子量が12,000で、ガラス転移温度(Tg)が97℃の、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(A−2)の1級水酸基に基づく水酸基価は、56mgKOH/gであった。
【0076】
参考例3(同上)
参考例1と同様な反応容器に、キシレン550部、n−ブタノール300部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、スチレン100部、t−ブチルメタクリレート700部、ブチルアクリレート24部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート160部、メタクリル酸10部、アシッドホスホキシエチルメタクリレート6部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート25部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3部及びキシレン150部を、4時間に亘って滴下した。
【0077】
滴下終了後も5時間反応を続行して、不揮発分50%のビニル系共重合体(A−3)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(A−3)は、重量平均分子量が12,000で、ガラス転移温度(Tg)が90℃の、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(A−3)の1級水酸基に基づく水酸基価は、69mgKOH/gであった。
【0078】
参考例4(同上)
参考例1と同様な反応容器に、キシレン550部、n−ブタノール300部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、スチレン100部、メチルメタクリレート680部、ラウリルメタクリレート44部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート160部、メタクリル酸10部、アシッドホスホキシエチルメタクリレート6部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート25部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3部及びキシレン150部を、4時間に亘って滴下した。
【0079】
滴下終了後も5時間反応を続行して、不揮発分50%のビニル系共重合体(A−4)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(A−4)は、重量平均分子量が13,000で、ガラス転移温度(Tg)が83℃の、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(A−4)の1級水酸基に基づく水酸基価は、69mgKOH/gであった。
【0080】
参考例5(同上)
参考例1と同様な反応容器に、キシレン550部、n−ブタノール300部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、メチルメタクリレート830部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート160部、メタクリル酸10部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート25部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3部及びキシレン150部を、4時間に亘って滴下した。
【0081】
滴下終了後も5時間反応を続行して、不揮発分50%のビニル系共重合体(a−1)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(a−1)は、重量平均分子量が12,000で、ガラス転移温度(Tg)が95℃の、1級水酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(a−1)の1級水酸基に基づく水酸基価は、69mgKOH/gであった。
【0082】
参考例6(同上)
参考例1と同様な反応容器に、キシレン550部、n−ブタノール300部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、スチレン100部、t−ブチルメタクリレート700部、ブチルアクリレート30部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート160部、メタクリル酸10部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート25部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3部及びキシレン150部を、4時間に亘って滴下した。
【0083】
滴下終了後も5時間反応を続行して、不揮発分50%のビニル系共重合体(a−2)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(a−2)は、重量平均分子量が13,000で、ガラス転移温度(Tg)が89℃の、1級水酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(a−2)の1級水酸基に基づく水酸基価は、69mgKOH/gであった。
【0084】
参考例7(同上)
参考例1と同様な反応容器に、キシレン550部、n−ブタノール300部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、メチルメタクリレート741部、ラウリルメタクリレート83部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート160部、メタクリル酸10部、アシッドホスホキシエチルメタクリレート6部、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート25部、ジ−tert−ブチルパーオキサイド3部及びキシレン150部を、4時間に亘って滴下した。
【0085】
滴下終了後も5時間反応を続行して、不揮発分50%のビニル系共重合体(a−3)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(a−3)は、重量平均分子量が13,000で、ガラス転移温度(Tg)が73℃の、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(a−3)の1級水酸基に基づく水酸基価は、69mgKOH/gであった。
【0086】
参考例8(同上)
参考例1と同様な反応容器に、スワゾール1000〔コスモ石油(株)製芳香族系溶剤〕600部、n−ブタノール200部を加え、115℃にまで昇温して、この温度に保持した。次いで、ここへ、メチルメタクリレート435部、n−ブチルメタクリレート100部、ステアリルアクリレート〔大阪有機化学工業(株)製長鎖分岐アルキルアクリレート〕180部、4−ヒドロキシブチルアクリレート200部、ジメチルアミノエチルメタクリレート30部、アシッドホスホキシエチルメタクリレート5部及び2,2′−アゾビスイソブチロニトリル50部を、3時間に亘って滴下した。
【0087】
滴下終了後30分間反応を続行した後、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル5部とスワゾール1000 100部を1時間に亘って滴下し、さらに115℃で1時間撹拌を続けて、不揮発分50.1%のビニル系共重合体(a−4)の溶液を得た。得られたビニル系共重合体(a−4)は、重量平均分子量が13,000で、ガラス転移温度(Tg)が20℃の、1級水酸基と燐酸基を有するビニル系共重合体であった。なお、ビニル系共重合体(a−4)の1級水酸基に基づく水酸基価は、82mgKOH/gであった。
【0088】
参考例9(水性ベースコート塗料用エマルジョンの調製)
温度計、還流冷却器、攪拌機、窒素導入管及び滴下ロートを備えたフラスコに、イオン交換水117部を添加した後、イオン交換水5部とノニルフェノールのエチレンオキサイド5モル付加物のサルフェートのアンモニウム塩0.11部とメタクリル酸メチル0.11部の混合物を添加し、80℃に昇温した。同温度で、イオン交換水20部とノニルフェノールのエチレンオキサイド5モル付加物のサルフェートのアンモニウム塩0.4部とメチルメタクリレート41部とスチレン11部とブチルアクリレート42部とメタクリル酸メチル3部とアリルメタクリレート3部の混合物(I)120.4部のうちの6部をまず添加して15分間撹拌した後、過硫酸アンモニウム0.075部とイオン交換水2.5部からなる混合物を添加して同温度で15分間撹拌し、次に、前記混合物(I)の残り114.4部に更にヒドロキシプロピルメタクレレート5部を加えた混合物、及び、過硫酸アンモニウム0.25部とイオン交換水10部の混合物を同温度で4時間かけて同時滴下した。更に同温度で1時間保持して、不揮発分40%のエマルジョン(Em−1)と略記する。
【0089】
参考例10(有機溶剤系ベースコート用塗料の調製)
下記第1表に示す配合組成で各成分を配合した後、下記の希釈用溶剤を用いてフォードカップNo.4による粘度が13秒となるように調整して、有機溶剤系ベースコート用塗料(ベース1)を得た。
【0090】
【表1】

【0091】
第1表の脚注
・「A−322」 :大日本インキ化学工業(株)製アクリル樹脂(溶液型)
「アクリディック A−322」、不揮発分50%
・「L−117−60」:大日本インキ化学工業(株)製n−ブチル化メラミン樹脂
「スーパーベッカミン L−117−60」、不揮発分60%
・「7160N」 :東洋アルミニウム工業(株)製アルミニウムペースト
「アルペースト 7160N」、不揮発分65%
【0092】
参考例11(水性ベースコート用塗料の調製)
第2表に示す配合組成で各成分を配合して、水性ベースコート用塗料(ベース2)を得た。
【0093】
【表2】

【0094】
第2表の脚注
・「S−695」 :大日本インキ化学工業(株)製水溶性メラミン樹脂
「ウォーターゾール S−695」、不揮発分65%
・「WXM−760b」:東洋アルミニウム工業(株)製水性アルミニウムペースト
「アルペースト WXM−760b」、不揮発分58%
・「TT−935」 :ローム&ハースジャパン社製の増粘剤
「プライマル TT−935」、不揮発分30%
【0095】
実施例1〜5及び比較例1〜4
第3表〜第4表に示す配合組成で各成分を配合して、焼付け塗料組成物を得、次いで、キシレン/ジエチレングリコールブチルエーテル=90/10(重量比)の混合溶剤で粘度を30秒(フォードカップ#4/20℃)に調整し、本発明で用いるクリヤーコート用塗料(クリヤー1〜4)と比較用クリヤーコート用塗料(クリヤー5〜7)を得た。
【0096】
次いで、実施例1〜4及び比較例1〜3では、日本ルート・サービス(株)製の電着中塗り水研ぎ板(ポリエステル/メラミン系塗料が塗装された塗装鋼板を水研ぎして得られた塗板)上に、参考例7で得たベースコート用塗料(ベース1)を、エアスプレーにより乾燥塗膜が20μmとなるように塗装した後、3分間セッティングし、その上にクリヤーコート用塗料(クリヤ1〜7)を、それぞれ乾燥塗膜が35μmとなるように塗装し、室温に10分間放置した後、140℃の雰囲気の電気熱風乾燥機中で20分間硬化させた。
【0097】
また、実施例5及び比較例4では、日本ルート・サービス(株)製の電着中塗り水研ぎ板(ポリエステル/メラミン系塗料が塗装された塗装鋼板を水研ぎして得られた塗板)上に、参考例8で得たベースコート用塗料(ベース2)を、エアスプレーにより乾燥塗膜が20μmとなるように塗装した後、3分間セッティングし、次いで、80℃にて10分間強制乾燥し、室温まで冷却した後、その上に実施例3で得たクリヤーコート用塗料(クリヤー3)及び比較例1で得たクリヤーコート用塗料(クリヤー5)を乾燥塗膜が35μmとなるように、それぞれ塗装し、室温に10分間放置した後、140℃の雰囲気の電気熱風乾燥機中で20分間硬化させた。
【0098】
【表3】

【0099】
【表4】

【0100】
得られた塗装板上の塗膜について、20°光沢と鉛筆高度を測定すると共に、キシレンラビング試験とアルミニウム配向試験を行った。それらの結果は、まとめて第5表〜第6表に示す。なお、キシレン・ラビング試験とアルミニウム配向試験は以下のようにして評価した。
【0101】
・キシレン・ラビング試験:キシレンを浸み込ませたフェルトで、塗膜上を往復10回ラビングした後の塗膜の状態を、下記評価基準で目視により判定した。
評価基準
○:変化なし。
△:やや変化あり。
×:変化あり。
【0102】
・アルミニウム配向試験:塗膜のメタリック色の戻りむら有無を、下記基準で目視により評価した。
評価基準
○:戻りむらなし。
△:やや戻りむらあり。
×:艶引けあり。
【0103】
【表5】

【0104】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級水酸基と燐酸基を有するガラス転移温度(Tg)82〜110℃のビニル系共重合体(A)と、アミノ樹脂(B)を含有することを特徴とする焼付け塗料組成物。
【請求項2】
前記ビニル系共重合体(A)が、1級水酸基含有ビニル系単量体と燐酸基含有ビニル系単量体とその他のビニル系単量体を含有してなり、かつ、燐酸基含有ビニル系単量体の含有率が0.1〜2重量%のビニル系単量体混合物を共重合させて得られるビニル系共重合体である請求項1に記載の焼付け塗料組成物。
【請求項3】
前記ビニル系共重合体(A)が、ガラス転移温度(Tg)85〜100℃のビニル系共重合体である請求項1に記載の焼付け塗料組成物。
【請求項4】
前記ビニル系共重合体(A)が、1級水酸基に基づく水酸基価が20〜200mgKOH/gのビニル系共重合体である請求項1に記載の焼付け塗料組成物。
【請求項5】
前記ビニル系共重合体(A)が、1級水酸基含有ビニル系単量体と燐酸基含有ビニル系単量体とその他のビニル系単量体を含有してなり、かつ、燐酸基含有ビニル系単量体の含有率が0.1〜2重量%のビニル系単量体混合物であって、かつ、その他のビニル系単量体としてスチレンとメチルメタクリレート及び/又はターシャリーブチルメタクリレートを、前記ビニル系単量体混合物に対して合計で、50〜90重量%含有するビニル系単量体混合物から得られるビニル系共重合体である請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼付け塗料組成物。
【請求項6】
前記ビニル系単量体混合物に対するスチレンの含有率が2〜40重量%で、かつ、メチルメタクリレート及び/又はターシャリーブチルメタクリレートの含有率が10〜90重量%である請求項5に記載の焼付け塗料組成物。
【請求項7】
基材上にベースコートを形成させた後、このベースコート上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の焼付け塗料組成物からなるトップコートを形成することを特徴とする塗装仕上げ方法。

【公開番号】特開2008−156492(P2008−156492A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347504(P2006−347504)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】