説明

焼結される銀ペーストにおける溶媒としての、脂肪族炭化水素およびパラフィンの使用

【課題】プロセス温度が250℃未満である、電子部品が基板と安定的に結合されるようにする焼結プロセスを提供すること。
【解決手段】本発明は、基板に電子部品を固定するためのプロセスであって、(i)電子部品および基板を準備する工程と、(ii)この電子部品と、基板と、それらの間に配置される層であって、(a)脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するコーティングを有する金属粒子、ならびに(b)少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物を含むペーストを含む層とを有するサンドイッチ構成物を作成する工程と、(iii)このサンドイッチ構成物を焼結する工程と、を含むプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に電子部品を固定するための方法、およびこの方法で使用することができるペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー・エレクトロニクスの分野では、基板と、非常に高い圧力および温度の感度を有するLEDまたは非常に薄いシリコンチップなどの部品との接続は、特別の課題を提示する。
【0003】
この理由のため、基板は、接着剤により結合することで、このような圧力および温度に敏感な部品と結合されることが多い。適切な伝導性接着剤は、通常、銀粒子、熱硬化性ポリマーおよび反応性希釈剤を含有する。しかしながら、接着剤による結合技術は、これが、不十分な熱伝導率および電気伝導率しか有しない、基板と部品との間の接触点を作り出すという短所を有する。
【0004】
この問題を解決するために、基板と電子部品とを焼結によって互いに結合することが提案された。
【0005】
しかしながら、従来の焼結プロセスは高いプロセス圧力または高いプロセス温度のいずれかを必要とする。これらの前提条件は、結合対象の部品の損傷につながることが多く、従来の焼結プロセスは、多くの応用例については排除されている。
【0006】
特許文献1は、パワー・エレクトロニクス用の非常に良好な導電性のおよび熱伝導性の化合物層を作ることを可能にする焼結技術を提案する。この焼結プロセスは、アルコール溶媒に加えて、300℃未満で元素状の銀へと崩壊する銀化合物を含有する金属ペーストを使用する。これらの金属ペーストによって、プロセス圧力を3bar未満まで下げ、かつプロセス温度を250℃未満まで下げることが可能になる。この焼結技術は、基板と圧力および温度に敏感な部品との結合において、非常に大きい品質の向上をもたらす。
【0007】
とはいうものの、作製される接触点の耐せん断性(shearing resistance)に関しての品質低下をまったく考慮する必要なく、このプロセス温度をなおさらに下げることができれば、多くの応用例にとって望ましいであろう。これは、パワー・エレクトロニクスの分野において、結合対象の部品のストレスをより少なくし、これにより構成部品のさらなる品質改善をもたらすであろう。さらには、プロセス温度をなおさらに下げることができれば、エネルギーコストをかなり節約することが可能になろう。
【0008】
基板上に電子部品を固定するための先行技術のプロセスは、別の観点で改善の余地がある。例えば、特定の場面では、電子部品と基板との間に、高い耐せん断性を有する接触層を生成することが可能である。とはいえ、大量生産においては、概して、この耐せん断性が接触層ごとに大きくばらつくという問題が起こっている。それゆえ、接触点の耐せん断性に関して均一な品質で、電子部品と基板との間に接触層を生成することは、これまで不可能であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2007 046 901(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それゆえ、本発明は、電子部品が基板と安定的に結合されるようにする焼結プロセスであって、プロセス温度が250℃未満であるプロセスを提供するという目的に基づいている。これにより、高い耐せん断性、低い多孔性ならびに高い導電率および熱伝導率を有する接触点が、均一な品質で基板と結合対象の部品との間に作成されるべきである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、本発明に係る焼結プロセスで使用することができるペーストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、独立請求項の主題によって成し遂げられる。
【0013】
かくして、本発明は、基板に電子部品を固定するためのプロセスであって、
(i)電子部品および基板を準備する工程と、
(ii)この電子部品と、基板と、それらの間に配置される層であって、(a)脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するコーティングを有する金属粒子、ならびに(b)少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物を含有するペーストを含む層と、を有するサンドイッチ構成物を作成する工程と、
(iii)このサンドイッチ構成物を焼結する工程と
を含むプロセスを提供する。
【0014】
さらには、本発明は、(a)脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するコーティングを有する金属粒子と、(b)少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物とを含有するペーストを利用できるようにする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
先行技術のペーストは、通常、ペーストの中の金属粒子のアグロメレーションを回避するためにコーティングされている金属粒子を含有する。例えば、二酸化ケイ素、金属酸化物、金属合金、ポリマーまたは脂肪酸が、コーティング化合物として使用される。これらのコーティング化合物により、アグロメレーションを効果的に回避することが可能になる。しかしながら、焼結プロセスは、これらのコーティング化合物は拡散速度をかなり遅くし、その結果として、高いプロセス温度が必要になるという短所を有する。従って、焼結工程は、当該コーティング化合物が加熱除去され金属粒子の表面が露出された後に初めて起こることができる。
【0016】
本発明は、ペーストの中に含有される金属粒子が脂肪酸(または脂肪酸誘導体)から構成されるコーティングを有し、かつそのペーストがさらに脂肪族炭化水素を含有するとき、焼結温度がかなり低下されうるという驚くべき認識に基づく。
【0017】
1つの理論に結び付けられることは望まないが、この脂肪族炭化水素化合物は、250℃未満の温度で、脂肪酸を金属粒子から加熱除去することを促進することができるようである。250℃未満の温度で、この脂肪族炭化水素化合物が金属粒子の表面とその上の脂肪酸層との間に導入され、その結果、この脂肪酸はこの脂肪族炭化水素によって取り囲まれてこの脂肪族炭化水素によって部分的に溶解されると想定される。このプロセスは金属粒子のアグロメレーションの妨害に関して不利な効果をまったく示さないが、これは、明らかに250℃未満の温度でのこの脂肪酸の加熱除去につながり、その結果、この金属粒子の表面は、焼結プロセスのために、これらの温度ですでに利用できる。さらには、高い耐せん断性および耐せん断性に関しての均一かつ再現性のある品質を有する接触層が、この焼結プロセスで、電子部品と基板との間に作り出される。さらには、この脂肪族炭化水素化合物の使用によって、従来の溶媒を含有するペーストの場合よりも、ペーストの成分のより均一な分布を成し遂げることが可能になる。これは、とりわけ、先行技術のペーストよりも本発明に係るペーストのより良好な加工性をもたらす。
【0018】
本発明に従って使用されるペーストは、金属粒子を含有する。
【0019】
本発明に関しては、用語「金属」は、元素の周期表の中で、ホウ素と同じ周期でホウ素の左に、ケイ素と同じ周期でケイ素の左に、ゲルマニウムと同じ周期でゲルマニウムの左に、およびアンチモンと同じ周期でアンチモンの左に見出すことができる元素、ならびに55よりも大きい原子番号を有するすべての元素を指す。本発明によれば、用語「金属」は、合金および金属間化合物も包含する。
【0020】
当該金属は、少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%、さらにより好ましくは少なくとも99.9重量%の純度を有することが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態によれば、当該金属は、銅、銀、ニッケル、およびアルミニウムからなる群から選択される。非常に好ましい実施形態によれば、この金属は銀である。
【0022】
当該ペーストの中に含有される金属粒子は、その組成に関しては均一であってもよいしまたは不均一であってもよい。特に、ペーストの中の粒子は異なる金属を含有することができる。
【0023】
当該金属粒子は、様々な形態のものであってもよい。この金属粒子は、例えば、薄片の形態または球形の(ボールの形状の)形態のものであってもよい。特に好ましい実施形態によれば、この金属粒子は薄片の形態を有する。しかしながら、これは、使用される金属粒子のうちの微量が異なる形態をも有することができるということを排除しない。しかしながら、この粒子の少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%または100重量%が薄片の形態にあることが好ましい。
【0024】
本発明によれば、金属粒子は、コーティングされている。
【0025】
本発明によれば、粒子のコーティングは、粒子の表面上の接着層であると理解される。本発明によれば、接着層は、その層が金属粒子から重力作用により分離しないということを意味する。
【0026】
本発明によれば、金属粒子のコーティングは、少なくとも1つのコーティング化合物を含有する。
【0027】
この少なくとも1つのコーティング化合物としては、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される化合物が挙げられる。これらのコーティング化合物は、当該ペーストの中に含有される金属粒子のアグロメレーションを回避して、このペーストの安定化に寄与するべきである。
【0028】
当該コーティング化合物は、飽和化合物、単不飽和化合物、多価不飽和化合物、およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
さらには、このコーティング化合物は、分枝状の化合物、非分枝状の化合物およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0030】
このコーティング化合物は、8〜28個、さらにより好ましくは12〜24個、特に好ましくは12〜18個の炭素原子を有することが好ましい。
【0031】
好ましい実施形態によれば、このコーティング化合物としては、モノ脂肪酸、モノ脂肪酸由来の塩またはモノ脂肪酸エステルが挙げられる。
【0032】
脂肪酸の塩として、アニオン性成分が脱プロトン化された脂肪酸を構成し、カチオン性成分がアンモニウムイオン、モノアルキルアンモニウムイオン、ジアルキルアンモニウムイオン、トリアルキルアンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、銅イオン、およびアルミニウムイオンからなる群から選択される塩が好ましいと考えられる。
【0033】
好ましい脂肪酸エステルは、上記の対応する脂肪酸から誘導され、酸単位のヒドロキシル基がアルキル基、特にメチル基、エチル基、プロピル基、またはブチル基で置き換えられているものである。
【0034】
好ましい実施形態によれば、当該少なくとも1つのコーティング化合物は、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、これらの混合物、ならびに対応するエステルおよび塩ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
特に好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つのコーティング化合物は、ラウリン酸(ドデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、パルミチン酸ナトリウム、およびパルミチン酸カリウムからなる群から選択される。
【0036】
本発明に従って使用される金属粒子は、市販品から入手することができる。対応するコーティング化合物は、従来のプロセスおよび公知の先行技術のプロセスによって、金属粒子の表面上に付与される。
【0037】
例えば、当該コーティング化合物、特に上述のステアリン酸塩またはパルミチン酸塩を溶媒に懸濁させ、懸濁されたコーティング化合物を金属粒子とともにボールミルの中で粉砕することが可能である。当該金属粒子を粉砕した後に、このときには当該コーティング化合物でコーティングされている金属粒子は乾燥され、その後ちりが除かれる。
【0038】
脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される当該少なくとも1つのコーティング化合物の割合は、当該コーティングの総重量に対して好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、最も特に好ましくは少なくとも99重量%、特に100重量%である。
【0039】
好ましい実施形態によれば、当該コーティング化合物の割合は、コーティングされた金属粒子の重量に対して、0.05〜3重量%、より好ましくは0.07〜2.5重量%、さらにより好ましくは0.1〜2.2重量%である。
【0040】
コーティングの程度は、金属粒子の表面に対するコーティング化合物の質量の関係として規定され、このコーティングの程度は、金属粒子の表面1平方メートル(m)あたり好ましくは0.00005〜0.03g、より好ましくは0.0001〜0.02g、さらにより好ましくは0.0005〜0.02gのコーティング化合物である。
【0041】
本発明によれば、当該ペーストは、少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物を含有する。
【0042】
本発明によれば、脂肪族炭化水素化合物は、炭素原子および水素原子から構成されかつ芳香族ではない化合物であると理解される。従って、本発明に係る脂肪族炭化水素化合物はヘテロ原子を含有しない。
【0043】
この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、当該金属粒子上にコーティング化合物として含まれる脂肪酸または脂肪酸誘導体が250℃未満の温度で加熱除去されることを促進することができるようであり、そのため、金属粒子の反応性表面がより低い温度での焼結プロセスのためにすでに利用できる。結果として、焼結温度の明らかな低下を成し遂げることができる。
【0044】
さらには、この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は溶媒の代用物としての役割を果たすことができ、その非極性に基づいて効果的に水分保持量を減らすことができる。
【0045】
この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、飽和化合物、単不飽和化合物、多価不飽和化合物およびこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。特に好ましい実施形態によれば、この脂肪族炭化水素化合物は、飽和脂肪族炭化水素化合物からなる群から選択される。
【0046】
さらには、この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、環状または非環状化合物であってもよい。
【0047】
好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、n−アルカン、イソアルカン、シクロアルカン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
本発明に従って使用される少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、5〜32個の炭素原子、より好ましくは10〜25個の炭素原子、さらにより好ましくは16〜20個の炭素原子を有することが好ましい。
【0049】
好ましい実施形態によれば、この脂肪族炭化水素化合物は、式C2n+2、C2nおよびC2n−2(式中、nは5〜32の間、好ましくは10〜25の間、より好ましくは16〜20の間の整数を表す)によって表される飽和炭化水素からなる群から選択される。
【0050】
最も好ましい実施形態によれば、この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、ヘキサデカン、オクタデカン、イソヘキサデカン、イソオクタデカン、シクロヘキサデカン、およびシクロオクタデカンからなる群から選択される。例えば、この少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、例えばExxsol(商標) D140の商標名でまたはIsopar M(商標)の商標名でExxon Mobilによって流通されている脂肪族炭化水素化合物の混合物であってもよい。
【0051】
本発明に係るペーストは、好ましくは、当該ペーストの総重量に対して75〜90重量%、より好ましくは77〜89重量%、さらにより好ましくは80〜88重量%の金属粒子を含有する。
【0052】
好ましい実施形態によれば、このペーストは、当該ペーストの総重量に対して、0.05〜2.5重量%、より好ましくは0.07〜2.2重量%、さらにより好ましくは0.1〜2重量%の、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つのコーティング化合物を含有する。
【0053】
当該ペーストの中でのこの少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の割合は特に限定されない。当該ペーストの良好な加工性を成し遂げるために、当該ペーストが、ペーストの総重量に対して3〜25重量%、より好ましくは4〜20重量%、さらにより好ましくは5〜18重量%の当該少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物を含有することが有利である可能性がある。
【0054】
250℃未満の温度での当該コーティング化合物の簡単な加熱除去を可能にするのに十分大きい量の当該少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物を当該ペーストの中に与えることが特に有利であるということも判明している。従って、当該少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の重量割合に対する当該コーティング化合物の重量割合の比は最大で0.1%である。
【0055】
他方、本発明に係る効果を得ることができるように、脂肪族炭化水素の量もまた、コーティング化合物の量に対して特に高く選択されるべきではない。特に好ましい実施形態によれば、当該少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の重量割合に対するコーティング化合物の重量割合の比は、従って0.001〜1.0の範囲、より好ましくは0.005〜0.85の範囲、さらにより好ましくは0.01〜0.7の範囲にある。
【0056】
さらなる好ましい実施形態によれば、当該少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の主成分に対する脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される当該コーティングの主成分のモル比は、0.001〜1.0の範囲、より好ましくは0.005〜0.85の範囲、さらにより好ましくは0.01〜0.7の範囲にある。本発明に関しては、モル比は、当該ペーストの中のそれぞれの要素の物質量の比を指す。本発明によれば、当該コーティングの主成分は、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される当該コーティング化合物から形成され、この主成分は、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される成分のほかの他の任意の含有されるコーティング化合物よりも大量に存在する。本発明によれば、当該少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の主成分は、上記脂肪族炭化水素化合物から形成され、これは、任意に他の含有される脂肪族炭化水素化合物よりも大量に存在する。
【0057】
驚くべきことに、本発明によって対処される対象である焼結温度の低下は、一方で、脂肪酸または脂肪酸誘導体(これは金属粒子のコーティングの中に主に含有される)の主鎖の長さに関連し、他方で当該脂肪族炭化水素化合物(これは、上記少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物または上記脂肪族炭化水素化合物からの混合物の主な成分を表す)の主鎖に関連するということが明らかにされた。従って、焼結温度の特に大きな低下は、この脂肪酸またはこの脂肪酸誘導体の主鎖およびこの脂肪族炭化水素化合物の主鎖が同じまたは同等の数の炭素原子を有する場合に成し遂げることができるということが見出された。
【0058】
最も特に好ましい実施形態によれば、少なくとも当該脂肪族炭化水素化合物の主成分の主鎖に含有される炭素原子に対する当該コーティングの主成分の主鎖に含有される炭素原子の比は、従って、0.5〜2.0の範囲、より好ましくは0.6〜1.4の範囲、さらにより好ましくは0.8〜1.2の範囲、最も特に好ましくは0.85〜1.15の範囲にある。
【0059】
当該金属粒子が、例えば、20重量% ラウリン酸(12個の炭素原子の主鎖を有する脂肪酸)、35重量% ミリスチン酸(14個の炭素原子の主鎖を有する脂肪酸)および45重量% ステアリン酸カリウム(18個の炭素原子の主鎖を有する脂肪酸の塩)の混合物を含有するコーティングを有する場合、従ってステアリン酸カリウムが当該コーティングの主成分である。この場合、単一の脂肪族炭化水素化合物または脂肪族炭化水素化合物の混合物の主成分が同様または同一の数の炭素原子を有する主鎖を有する場合には、焼結温度の著しい低下が達成されうる。従って、単一の脂肪族炭化水素化合物または脂肪族炭化水素化合物の混合物の主成分が16〜20個の炭素原子、特に18個の炭素原子を有する主鎖であれば、好ましいであろう。
【0060】
本発明に係るペーストは、上述の成分に加えて他の物質を含有することができる。
【0061】
好ましい実施形態によれば、当該ペーストは、少なくとも1つの金属前駆体を含有する。
【0062】
本発明に関しては、金属前駆体は、当該ペーストの中に含有される金属粒子の存在下で、250℃未満の温度でその金属前駆体の金属へと分解される化合物を指す。従って、焼結プロセスの間に金属前駆体を使用するとき、金属は、イン・サイチュで形成されることが好ましい。当該化合物がこの好ましい実施形態に係る金属前駆体に関連するかどうかは簡単に判定することができる。試験対象の化合物を含有するペーストは、例えば銀表面を有する基板上に堆積し、250℃に加熱しこの温度で20分間放置することができる。その後、これらの条件下で試験対象の化合物が金属へと分解したかどうかが検討される。この目的のために、試験前に金属含有ペースト成分の含有量を秤量することができ、それから金属の理論質量を算出することができる。試験後、基板上に堆積された物質の質量を、重量測定によって決定することができる。通常の測定のばらつきは考慮に入れて、基板上に堆積された物質の質量がその金属の理論質量に対応するならば、試験された化合物は、この好ましい実施形態に係る金属前駆体である。
【0063】
さらに好ましい実施形態では、この金属前駆体は当該金属粒子の中にも含有される金属を有する。特に好ましい実施形態によれば、このための金属前駆体は金属として銀または銅を有する。
【0064】
金属前駆体として金属炭酸塩、金属乳酸塩、金属ギ酸塩、金属クエン酸塩、金属酸化物、または金属脂肪酸塩、好ましくは6〜24個の炭素原子を有する脂肪酸の塩を使用することが好ましい。
【0065】
炭酸銀、乳酸銀、ギ酸銀、クエン酸銀、酸化銀(例えばAgOまたはAgO)、乳酸銅、ステアリン酸銅、酸化銅(例えばCuOまたはCuO)、酸化金(例えばAuOまたはAuO)、またはこれらの混合物が、特定の実施形態で金属前駆体として使用される。
【0066】
特に好ましい実施形態によれば、この金属前駆体は、炭酸銀および酸化銀からなる群から選択される。
【0067】
存在する場合、この金属前駆体は、当該ペーストの中に、好ましくは微粒子形態で、特に好ましくは薄片の形態で存在する。
【0068】
焼結プロセスの間にイン・サイチュで金属を放出する金属前駆体の使用によって、焼結プロセスの間にイン・サイチュで形成される金属が、このペーストの中に含有される金属粒子間の孔を塞ぐということが生じる。このようにして、結合対象の2つの部品の間の接触点の多孔性を減少させることができる。
【0069】
当該ペーストは、少なくとも1つの焼結助剤をも含有することができる。この焼結助剤は、250℃未満の温度での焼結プロセスの間の250℃未満でのコーティング化合物の加熱除去を確実にし、従って250℃未満の温度で焼結することができるようにすることができることが好ましい。特に適切な焼結助剤は、直接的に、または中間的に形成される化合物を介して間接的に、250℃未満の温度での当該コーティング化合物の加熱除去を確実にする。
【0070】
好ましい実施形態によれば、この焼結助剤は酸化剤であることができる。酸化剤は、他の物質を酸化することができこれにより自身は還元される物質であると理解される。酸化剤は電子を奪うことができ、従って電子アクセプターである。またこの焼結助剤は、酸素キャリアであることが好ましい。これは、酸素を与えることができる物質を意味する。この実施形態によれば、例えば(i)有機過酸化物(クミルペルオキシドなど)、(ii)無機過酸化物および(iii)無機酸を焼結助剤として使用することができる。これらの化合物は、焼結助剤としての役割を果たすことができる。なぜなら、これらは少なくとも1つの酸素原子を含有し、当該ペーストの金属粒子上に存在するコーティング化合物の、250℃未満の温度での燃焼を可能にするからである。
【0071】
さらに好ましい実施形態によれば、またこの焼結助剤は、当該ペーストの中に含有される金属粒子の表面上に存在することができかつ焼結プロセスと干渉することができる金属酸化物が還元されるということも確実にすることができる。この理由のため、焼結プロセスの過程で還元剤を放出する化合物は、焼結助剤として使用することができる。この還元剤は、好ましくは一酸化炭素である。この実施形態によれば、この焼結助剤は、例えば、(iv)1〜4個の炭素原子を有する有機酸の塩(ギ酸アルミニウムなど)、(v)1〜4個の炭素原子を有する有機酸のエステル、および(vi)カルボニル錯体からなる群から選択することができる。これらの化合物は、これらは焼結プロセスの間に一酸化炭素を放出するか、または一酸化炭素の放出に関与し、従って当該金属ペーストの中に含有される金属粒子の表面上に含有される金属酸化物を、250℃未満の温度で、対応する金属に還元することを可能にするという点で、焼結助剤としての役割を果たすことができる。
【0072】
当該脂肪族炭化水素化合物に加えて、当該ペーストは、溶媒として働くことができるさらなる化合物を含有することができる。金属ペーストのために通常使用される溶媒が、このために考慮される。例えば、以下のものを溶媒として使用することができる:α−テルピネオール((R)−(+)−α−テルピネオール、(S)−(−)−α−テルピネオールまたはラセミ化合物)、β−テルピネオール、γ−テルピネオール、δ−テルピネオール、上述のテルピネオールの混合物、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコール、ジメチルアセトアミド、1−トリデカノール、2−トリデカノール、3−トリデカノール、4−トリデカノール、5−トリデカノール、6−トリデカノール、イソトリデカノール、二塩基酸エステル(好ましくはグルタル酸、アジピン酸またはコハク酸もしくはこれらの混合物のジメチルエステル)、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、またはこれらの混合物。しかしながら、当該脂肪族炭化水素のほかに当該金属ペーストの中には、溶媒が存在しないかまたはそうでなければ少量の溶媒しか存在しないことも好ましい場合がある。例えば、当該金属ペースト中のさらなる溶媒の割合は、最大で10重量%、より好ましくは最大5重量%、さらにより好ましくは最大3重量%、特に好ましくは最大1重量%であることが有利である場合がある。さらに好ましい実施形態では、脂肪族炭化水素およびさらなる溶媒の総重量に対する脂肪族炭化水素の割合は、30〜100重量%の範囲、より好ましくは50〜100重量%の範囲、さらにより好ましくは70〜100重量%の範囲、特に好ましくは80〜100重量%の範囲にある。
【0073】
さらには、当該ペーストは、そのペーストに所望の特徴を与えるための少なくとも1つのポリマーを含有することができる。しかしながら他方で、このペーストは、ポリマーを含有しないか、またはその割合が小さいことが有利である場合がある。なぜなら、ポリマー、とりわけ熱硬化物は、通常は250℃を超える温度で除去され尽くし、従って当該ペーストの焼結性に対して不利な効果を及ぼすからである。これは、熱硬化物またはその前駆生成物について特に当てはまる。熱硬化物の前駆生成物は、さらなるペースト成分の存在下で熱硬化物へと硬化することができる化合物を指す。これらの熱硬化物またはその前駆生成物は、通常は700未満の重量平均分子量を有する。好ましい実施形態によれば、700未満の重量平均分子量を有するポリマーの割合は、このペーストの総重量に対して6重量%以下である。
【0074】
加えて、さらなる成分、例えば一般的な分散剤、界面活性剤、消泡剤、結合剤、または粘度調整剤が、この金属ペーストの中に含有されてもよい。
【0075】
これまでに記載されたペーストは、基板上に電子部品を固定するために、本発明に従って使用することができる。
【0076】
この固定は、焼結によって実現されることが好ましい。本発明によれば、焼結は、流体相を通しながら加熱することにより、2以上の部品を結合することであると理解される。
【0077】
電子部品は、一般に、電子機器アセンブリの一部でありうる物体であると理解される。好ましい実施形態によれば、これは、さらに分解することはできず、しかも電子回路の部品としての役割を果たすことができる個々の部分であると理解される。この電子部品は、複数の構成部分のユニットを任意に含むことができる。この電子部品は、例えば、能動素子または受動素子であってもよい。特定の実施形態によれば、この電子部品は高性能電子機器の中で使用される。好ましい実施形態によれば、この電子部品は、ダイオード(例えば、LED、発光ダイオード)、トランジスタ(例えばIGBT、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、絶縁されたゲート電極を具えるバイポーラトランジスタ)、集積回路、半導体チップ、ベアチップ(ダイ)、レジスタ、センサ、コンデンサ、コイル、および冷却素子からなる群から選択される。
【0078】
基板は、一般に、電子部品に接続されうる物体として理解される。好ましい実施形態によれば、基板は、リードフレーム、DCB基板(ダイレクト・カッパー・ボンディッド基板、Direct−Copper−Bonded substrate)およびセラミック基板からなる群から選択される。
【0079】
好ましい実施形態によれば、以下の電子部品および基板の対が、互いに固定される:LED/リードフレーム、LED/セラミック基板、ダイ/リードフレーム、ダイ/セラミック基板、ダイ/DCB基板、ダイオード/リードフレーム、ダイオード/セラミック基板、ダイオード/DCB基板、IGBT/リードフレーム、IGBT/セラミック基板、IGBT/DCB基板、集積回路/リードフレーム、集積回路/セラミック基板、集積回路/DCB基板、センサ/リードフレーム、センサ/セラミック基板、冷却素子(好ましくは銅またはアルミニウム冷却素子)/DCB、冷却素子(好ましくは銅またはアルミニウム冷却素子)/セラミック基板、冷却素子/リードフレーム、コンデンサ(好ましくはタンタルコンデンサ、より好ましくは収容されていない状態のもの)/リードフレーム。
【0080】
さらに好ましい実施形態によれば、複数の電子部品を基板に接続することができる。複数の電子部品が基板の両側に位置することがさらに好ましい場合がある。
【0081】
さらには、電子部品、基板または電子部品および基板は、少なくとも1つの金属化層を含むことができる。この金属化層は、例えば純粋な金属または金属合金を有することができる。この金属化層が金属を含む場合、これが、銅、銀、金、パラジウム、および白金からなる群から選択されることが好ましい。この金属化層が金属合金を含む場合、これが、銀、金、ニッケル、パラジウム、および白金からなる群から選択される少なくとも1つの金属を含有することが好ましい。この金属化層は多層化構成を有することもできる。さらに好ましい実施形態によれば、この金属化層は、ガラスも含有する。
【0082】
本発明によれば、この電子部品は、焼結によって基板上に固定される。これに関して、「上」は、単に、電子部品の表面が基板の表面に接続されており、この接続は電子部品、基板または、構成物の相対的位置に依存しないということを意味する。
【0083】
本発明によれば、この電子部品および基板は、焼結の目的のために、互いに接触させられる。これに関して、この接触は、本発明に係るペーストを介して起こる。好ましい実施形態によれば、この電子部品および基板はともに、金属化層を有し、当該電子部品の金属化層および当該基板の金属化層は、当該ペーストを介して互いに接触している。本発明によれば、電子部品、基板およびその間に置かれる、本発明に係るペーストを含有する層を有するサンドイッチ構成物が最初に作成される。好ましくは、サンドイッチ構成物は、電子部品が基板の上に置かれ、または基板が電子部品の上に置かれ、この電子部品および基板が実質的に互いに平行に配置されている構成物であると理解される。
【0084】
電子部品、基板およびそれらの間に存在するペーストから構成されるサンドイッチ構成物は、公知の先行技術のプロセスに従って製造することができる。好ましくは、基板の少なくとも1つの表面、好ましくは金属化層を具える基板の表面には、最初に本発明に係るペーストが具えられる。このペーストは、従来のプロセスによって基板の表面に付与することができる。このペーストは、好ましくは加圧(pressing)プロセス、例えばスクリーン印刷またはステンシル印刷によって付与される。他方、このペーストは、分注技術によって、噴霧技術によって、ピン転写によって、または浸漬によって付与することができる。その後、この電子部品は、その表面のうちの1つ、好ましくは金属化層を有する表面を、基板の表面上にすでに付与されたペーストに向けて置かれる。この結果、ペースト層は、基板と電子部品との間、好ましくは基板の金属化層と電子部品の金属化層との間に置かれる。
【0085】
基板と電子部品との間の未乾燥時の層密度は、20〜200μmの範囲にあることが好ましい。好ましくは未乾燥時の層密度は、基板と電子部品との対向する表面間の距離として理解される。好ましい未乾燥時の層密度は、当該金属ペーストを付与するために選択されるプロセスに依存する。この金属ペーストが例えばスクリーン印刷によって付与される場合、好ましくは未乾燥時の層密度は20〜50μmであることができる。この金属ペーストがステンシル印刷によって付与される場合、好ましい未乾燥時の層密度は50〜200μmの範囲にあることができる。
【0086】
好ましい実施形態によれば、乾燥工程は、焼結プロセスに先立って行われる。好ましくは乾燥は、当該金属ペーストの中の溶媒の割合の減少として理解される。好ましい実施形態によれば、乾燥後の当該金属ペーストの中の溶媒の割合は、乾燥された金属ペーストの重量に対して1〜5重量%の範囲にある。
【0087】
一方で、乾燥は、上記サンドイッチ構成物の製造後に行うことができる。他方、また乾燥は、基板または電子部品の少なくとも1つの表面上へのペーストの付与の直後で、かつ接続するべき電子部品または基板と接触させる前に行うことができる。乾燥温度は、好ましくは50〜100℃の範囲にある。乾燥時間がペーストのそれぞれの組成および焼結対象のサンドイッチ構成物のサイズに依存することは明らかである。しかしながら、一般的な乾燥時間は、5〜45分間の範囲にある。
【0088】
電子部品、基板およびそれらの間に配置される、本発明に係るペーストを含有する層のサンドイッチ構成物は、最後に焼結プロセスにかけられる。この焼結プロセスは低温焼結プロセスである。本発明によれば、低温焼結プロセスは、好ましくは250℃未満の温度で、より好ましくは220℃未満の温度で、さらにより好ましくは200℃未満の温度で、特に好ましくは180℃未満の温度で稼動する焼結プロセスとして理解される。
【0089】
焼結の間のプロセス圧力は、好ましくは30MPa未満、より好ましくは5MPa未満、さらにより好ましくは1MPa未満である。本発明に係るペーストの使用に基づくと、この焼結は、プロセス圧力をなんら使用せずにでも、つまり0MPaのプロセス圧力でも良好に行われる。
【0090】
焼結時間はプロセス圧力に依存し、2〜45分の範囲にあることが好ましい。
【0091】
本発明によれば、焼結プロセスは、特に限定されない雰囲気の中で行うことができる。好ましくは、焼結は、酸素を含有する雰囲気の中で行われる。
【0092】
焼結は、焼結に適した従来の装置の中で行われ、その装置では、上記のプロセスパラメータが設定できることが好ましい。
【0093】
以降では、本発明は、以下の実施例に基づいて詳細に説明される。しかしながら、これらの実施例は、限定を意図するものと考えるべきではない。
【実施例】
【0094】
実施例1:
本発明に係る金属ペースト、ペースト1を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、および
17重量%のIsopar M(商標)、主に12〜15個の炭素原子を有するイソパラフィンからなる石油留出分、
を均一なペーストになるまで混合して、製造した。
【0095】
50μmの密度を有するペースト1の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、その後、これを100mmの底表面を有するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)チップに載せ、基板、ペースト1およびチップのサンドイッチ構成物を作成した。このサンドイッチ構成物を、再循環式空気乾燥機の中で、100℃の温度で5分間乾燥した。
【0096】
乾燥したサンドイッチ構成物を、最後に200℃の温度および10MPaの圧力で2分間焼結した。
【0097】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0098】
比較例1:
比較ペースト、比較ペースト1を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
9重量%のテルピネオール、および
8重量%のトリデカノール
を均一なペーストになるまで混合して、製造した。
【0099】
50μmの密度を有する比較ペースト1の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、その後、これを100mmの底表面を有するIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)チップに載せ、基板、比較ペースト1およびチップのサンドイッチ構成物を作成した。このサンドイッチ構成物を、再循環式空気乾燥機の中で、100℃の温度で5分間乾燥した。
【0100】
乾燥したサンドイッチ構成物を最後に200℃の温度および10MPaの圧力で2分間焼結した。
【0101】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0102】
実施例1および比較例1で含有される接触層の比較:
それぞれ実施例1および比較例1で含有される基板とチップとの間の接触層の信頼性を、剥離試験(Mertens,Christian:The Low−Temperature Bonding Technique of Power Electronics,Progress Report VDI Series 21,No.365、Duesseldorf、VDI Verlag 2004、Chapter 4.2に記載されている)によって判定した。ここで、これより、ペースト1の使用によって得た接触層は、比較ペースト1の使用によって得た接触層と比較して、著しく増加した剥離強度を有するということが明らかになった。特に、ペースト1の使用によって生成した接触層は、比較ペースト2の使用によって生成した接触層と比較して、剥離強度に関して均一な品質を与えた。
【0103】
実施例2:
本発明に係る金属ペースト、ペースト2を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
12重量%のExxsol(商標) D120、14〜18個の炭素原子を有する炭化水素(主としてn−アルカン、イソアルカンおよび環状炭化水素)の混合物、ならびに
5重量%の炭酸銀
を均一なペーストになるまで混合して、製造した。
【0104】
50μmの密度を有するペースト2の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、これを75℃の温度で5分間乾燥し、基板、ペースト2およびチップのサンドイッチ構成物を作成するために、その後、10mmの底表面およびニッケル−銀金属化を有するチップに載せた。
【0105】
このサンドイッチ構成物を、最後に220℃の温度で15分間焼結した。
【0106】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0107】
比較例2:
比較ペースト、比較ペースト2を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
12重量%のテルピネオールおよび
5重量%の炭酸銀
を均一なペーストになるまで混合して、製造した。
【0108】
50μmの密度を有する比較ペースト2の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、これを75℃の温度で5分間乾燥し、基板、比較ペースト2およびチップのサンドイッチ構成物を作成するために、その後、10mmの底表面およびニッケル−銀金属化を有するチップに載せた。
【0109】
このサンドイッチ構成物を、最後に220℃の温度で15分間焼結した。
【0110】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0111】
実施例2および比較例2に含有される接触層の比較:
基板とチップとの間でそれぞれ実施例2および比較例2で得た接触層の剥離強度を、従来の剥離試験によって判定した。ここで、これより、ペースト2の使用によって得た接点は、比較ペースト2の使用によって得た接触層と比較して約50%高い剥離強度を示すということが明らかになった。実施例2で得た構成物を用いた剥離試験は、一部はチップの破壊に終わり、すなわち、チップは、とても強く基板に結合されており、そのチップを壊さない限りそれを取り除くことはできなかった。特に、比較ペースト2の使用によって生成した接触層と比較して、剥離強度に関して均一な品質を有する接触層が、ペースト2の使用によって生成した。
【0112】
実施例3:
本発明に係る金属ペースト、ペースト3を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
7重量%のExxsol(商標) D120、14〜18個の炭素原子を有する炭化水素(主としてn−アルカン、イソアルカンおよび環状炭化水素)の混合物、
5重量%の炭酸銀、ならびに5重量%のジクミルペルオキシド
を均一なペーストになるまで混合して、製造した。
【0113】
50μmの密度を有するペースト3の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、これを75℃の温度で5分間乾燥し、基板、ペースト3およびチップのサンドイッチ構成物を作成するために、その後、10mmの底表面およびニッケル−銀金属化を有するチップに載せた。
【0114】
このサンドイッチ構成物を、最後に200℃の温度で15分間焼結した。
【0115】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0116】
比較例3:
比較ペースト、比較ペースト3を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
7重量%のテルピネオール、
5重量%の炭酸銀、および
5重量%のジクミルペルオキシド
を均一なペーストになるまで混合し、製造した。
【0117】
50μmの密度を有する比較ペースト3の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、これを75℃の温度で5分間乾燥し、基板、比較ペースト3およびチップからサンドイッチ構成物を作成するために、その後、10mmの底表面およびニッケル−銀金属化を有するチップに載せた。
【0118】
このサンドイッチ構成物を、最後に200℃の温度で15分間焼結した。
【0119】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0120】
実施例3および比較例3で得た接触層の比較:
基板とチップとの間でそれぞれ実施例3および比較例3で得た接触層の剥離強度を、従来の剥離試験によって判定した。ここで、これより、ペースト3の使用によって得た接触層は、比較ペースト3の使用によって得た接触層と比較して、約50%高い剥離強度を示すということが明らかになった。実施例3で得た構成物を用いた剥離試験は、ほとんどがチップの破壊に終わり、すなわち、チップは、とても強く基板に結合されており、そのチップを壊さない限りそれを取り除くことはできなかった。特に、比較ペースト3の使用によって生成した接触層と比較して、剥離強度に関して均一な品質を有する接触層が、ペースト3の使用によって生成した。さらには、ペースト3は、比較ペースト3と比較して、明らかに良好な作業性を有していた。
【0121】
実施例4:
本発明に係る金属ペースト、ペースト4を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
12重量%のExxsol(商標) D120、14〜18個の炭素原子を有する炭化水素(主としてn−アルカン、イソアルカンおよび環状炭化水素)の混合物、ならびに
5重量%のギ酸アルミニウム
を均一なペーストになるまで混合し、製造した。
【0122】
50μmの密度を有するペースト4の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、これを75℃の温度で5分間乾燥し、基板、ペースト4およびチップのサンドイッチ構成物を作成するために、10mmの底表面およびニッケル−銀金属化を有するチップに載せた。
【0123】
このサンドイッチ構成物を、最後に220℃の温度で15分間焼結した。
【0124】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0125】
比較例4:
比較ペースト、比較ペースト4を、
83重量%の、薄片の形態で存在しステアリン酸でコーティングされた銀粒子、
12重量%のテルピネオール、および
5重量%のギ酸アルミニウム
を均一なペーストになるまで混合し、製造した。
【0126】
50μmの密度を有する比較ペースト4の堆積層をDCB(ダイレクト・カッパー・ボンディッド)基板の上へとプレスし、これを75℃の温度で5分間乾燥し、基板、比較ペースト4およびチップのサンドイッチ構成物を作成するために、その後、10mmの底表面およびニッケル−銀金属化を有するチップに載せた。
【0127】
このサンドイッチ構成物を、最後に220℃の温度で15分間焼結した。
【0128】
この実験を同じ条件下で複数回行った。
【0129】
実施例4および比較例4で得た接触層の比較:
基板とチップとの間でそれぞれ実施例4および比較例4で得た接触層の剥離強度を、従来の剥離試験によって判定した。ここで、これより、ペースト4の使用によって得た接触層は、比較ペースト4の使用によって得た接触層と比較して、約50〜70%高い剥離強度を示すということが明らかになった。実施例4で得た構成物を用いた剥離試験は、一部がチップの破壊に終わり、すなわち、チップは、とても強く基板に結合されており、そのチップを壊さない限りそれを取り除くことはできなかった。特に、比較ペースト4の使用によって生成した接触層と比較して、剥離強度に関して均一な品質を有する接触層が、ペースト4の使用によって生成した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーストであって、(a)脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含むコーティングを有する金属粒子と、(b)少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物とを含有する、ペースト。
【請求項2】
前記金属粒子は銀粒子である、請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
前記金属粒子は薄片として存在する、請求項1または請求項2に記載のペースト。
【請求項4】
前記少なくとも1つのコーティング化合物は、8〜28個の炭素原子を有する飽和脂肪酸、8〜28個の炭素原子を有する飽和脂肪酸の塩、8〜28個の炭素原子を有する飽和脂肪酸のエステル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項5】
前記少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物は、式C2n+2、C2nおよびC2n−2(式中、nは5〜32の間の整数を表す)によって表される飽和炭化水素からなる群から選択される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項6】
前記少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の重量割合に対する、脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される前記コーティング化合物の重量割合の比は、0.001〜1.0の範囲にある、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項7】
前記少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の主成分の主鎖に含有される炭素原子に対する、前記コーティングの主成分の主鎖に含有される炭素原子の比は、0.5〜2.0の範囲にある、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項8】
前記ペーストの総重量に対する金属粒子の割合は、75〜90重量%の範囲にある、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項9】
前記ペーストの総重量に対するコーティング化合物の割合は、0.05〜2.5重量%の範囲にある、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項10】
前記ペーストの総重量に対する前記少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物の割合は、3〜25重量%の範囲にある、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項11】
700未満の重量平均分子量を有するポリマーの割合は、前記ペーストの総重量に対して、6重量%以下である、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項12】
基板上に電子部品を固定するための、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のペーストの使用。
【請求項13】
基板上に電子部品を固定するためのプロセスであって、
(i)電子部品および基板を準備する工程と、
(ii)前記電子部品と、前記基板と、それらの間に配置される層であって、(a)脂肪酸、脂肪酸塩および脂肪酸エステルからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含有するコーティングを有する金属粒子、ならびに(b)少なくとも1つの脂肪族炭化水素化合物を含むペーストを含む層とを有するサンドイッチ構成物を作成する工程と、
(iii)前記サンドイッチ構成物を焼結する工程と、
を含むプロセス。

【公開番号】特開2012−84514(P2012−84514A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−190594(P2011−190594)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(511213476)ヘレウス マテリアルズ テクノロジー ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (7)
【Fターム(参考)】