説明

焼結型導電性ペースト用銀粉

【課題】500℃における熱収縮率が8.7〜13.0%となる新たな銀粉を提供する。
【解決手段】BET法により測定される比表面積から算出される粒子径(「BET径」と称する)が1.10μm〜2.60μmであり、炭素含有量が0.11〜0.22質量%である銀粉であれば、500℃における熱収縮率を8.7〜13.0%とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結型導電性ペーストに好適に用いることができる銀粉、中でも太陽電池電極用の焼結型導電性ペーストとして好適に用いることができる銀粉に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ペーストは、樹脂系バインダーと溶媒からなるビヒクル中に導電フィラーを分散させた流動性組成物であり、電気回路の形成や、セラミックコンデンサの外部電極の形成などに広く用いられている。
この種の導電性ペーストには、樹脂の硬化によって導電性フィラーが圧着され導通を確保する樹脂硬化型と、高温焼結によって有機成分が揮発し導電性フィラーが焼結して導通を確保する焼結型とがある。
【0003】
このうちの焼結型導電性ペーストは、一般に導電フィラー(金属粉末)とガラスフリットとを有機ビヒクル中に分散させてなるペースト状組成物であり、400〜800℃にて焼結することにより、有機ビヒクルが揮発し、さらに導電フィラーが焼結することによって導通を確保するものである。この際、ガラスフリットは、この導電膜を基板に接着させる作用を有し、有機ビヒクルは、金属粉末およびガラスフリットを印刷可能にするための有機液体媒体として作用する。
【0004】
このような焼結型導電性ペーストに用いる銀粉として、従来、例えば特許文献1には、銀イオンを含有する水性反応系に還元剤含有水溶液を添加して銀粒子を還元析出させることにより、500℃における熱収縮率が5〜15%、600℃における熱収縮率が10〜20%、平均粒径D50が5μm以下、タップ密度が2g/cm以上、BET比表面積が5m/g以下の球状銀粉が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、410℃での熱収縮率が5〜15%であり、好ましくは、さらに500℃での熱収縮率が10〜20%である銀粉、具体的には平均粒径D50が2μm以下である銀粉が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−2228号公報
【特許文献2】特開2007−270334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電性ペーストは、塗布する素地や用いる用途によって様々な温度で焼成されるが、焼成温度での銀の熱収縮率と素地との相性が悪いと、素地と銀膜との間に剥離が生じたり、反りや変形、クラックなどが生じたりするなどの不具合が生じることになる。
【0008】
結晶シリコン型太陽電池は、一般的にシリコン基板(p型)にn型拡散層を形成してpn接合を形成し、シリコン基板(p型)の裏面側に酸化膜を介して裏面電極を積層する一方、n型拡散層の受光面側(表面側)には、反射防止膜を積層すると共に、銀ペーストを印刷及び焼成して銀電極を形成する構成のものが一般的であり、シリコン基板の熱ダメージを考慮して500℃付近で銀ペーストを焼成して電極を形成するのが一般的である。
【0009】
このような太陽電池の電極作製に使用する導電性ペースト用銀粉としては、銀の熱収縮率とシリコン基板との相性を考慮すると、太陽電池作製時の焼成温度すなわち500℃における銀粉の熱収縮率が8.7〜13.0%であるのが好ましいことが分かってきた。
【0010】
そこで本発明は、500℃における熱収縮率が8.7〜13.0%となる新たな銀粉を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、BET法により測定される比表面積から算出される粒子径(「BET径」と称する)が1.10μm〜2.60μmであり、炭素含有量が0.11〜0.22質量%であることを特徴とする焼結型導電性ペースト用銀粉を提案するものである。
【0012】
BET径及び炭素含有量が所定の範囲である焼結型導電性ペースト用銀粉であれば、500℃における銀粉の熱収縮率が8.7〜13.0%となるため、太陽電池の電極を作製する場合の焼成の際、シリコン基板と銀膜との接着性を高めることができ、太陽電池の電極作製に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態例に基づいて本発明を説明するが、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0014】
<本銀粉>
本実施形態に係る焼結型導電性ペースト用銀粉(以下、「本銀粉」と称する)は、BET径が1.10μm〜2.60μmであり、炭素含有量が0.11〜0.22質量%であることを特徴とする銀粉である。
以下、本銀粉の特徴についてさらに説明する。
【0015】
(炭素含有量)
本銀粉は、炭素含有量が0.11〜0.22質量%であることが重要である。
炭素含有量が0.11質量%未満では、炭素が焼結助剤として有効に作用しなくなるため、熱収縮率に寄与しなくなる可能性がある一方、0.22質量%を超えると、焼結が進み過ぎるだけでなく、焼結時のガス発生が多くなり、導体の膨張などを引き起こすことになるから好ましくない。
このような観点から、本銀粉の炭素含有量は0.12質量%以上、或いは0.21質量%以下であるのが好ましく、中でも0.13質量%以上、或いは0.20質量%以下であるのがより一層好ましい。
炭素含有量を調整するには、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩や、ゼラチンなどの凝集抑制剤の種類と量を調整する方法を挙げることができる。但し、凝集抑制剤の種類又は量を変化させると、粒子の比表面積や凝集度、反応液中の親和性などの物性も変化し、その結果、銀粉粒子に含まれる炭素量も変化するため、凝集抑制剤の添加量を増やせばそれだけ炭素含有量が増加するというものではない。
【0016】
なお、本発明が規定する銀粉の炭素含有量は、銀粉粒子の内部に含有されるか、或いは、粒子の表面に物理的或いは化学的に吸着されている炭素の含有量である。より具体的には、銀粉を純水で洗浄したろ液の伝導率が40μS/cm以下になるまで十分に洗浄した際に残存する炭素の量である。このような洗浄によって除去される炭素は、例えば銀粉粒子を還元析出した後に有機物を後混合した場合に、銀粉粒子の表面に付着している炭素である。このような炭素は、焼結助剤として機能せず、銀粉の熱収縮率に寄与しないため、本発明が規定する銀粉の炭素含有量からは除外する必要がある。
したがって、本発明が規定する銀粉の炭素含有量は、銀粉を純水で洗浄したろ液の伝導率が40μS/cm以下になるまで十分に洗浄した後に炭素測定装置で測定される炭素含有量である。
【0017】
(BET径)
本銀粉のBET径、すなわち、BET法により測定される比表面積から算出される粒子径が1.10μm〜2.60μmであることが重要である。BET径が1.10μm〜2.60μmの範囲において、炭素含有量を上記範囲に調整することで、500℃における銀粉の熱収縮率を8.7〜13.0%に調整することができる。
さらに、ペーストにしたときの粘性など、ペーストのハンドリングを加味すると、本銀粉のBET径は1.15μm以上或いは2.60μm以下であるのが好ましく、中でも1.30μm以上或いは2.16μm以下であるのがより一層好ましい。
BET径を調整するには、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩やゼラチンなどの凝集抑制剤の量を調整したり、アンモニア水の添加量を調整したりする方法を挙げることができる。
【0018】
(D50)
本銀粉のD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50は、1.50μm〜3.40μmであるのが好ましい。
本銀粉のD50が3.40μm以下であれば、ペーストを印刷する際に細線を容易に形成することが可能であり、1.50μm以上であれば、高アスペクト印刷を容易に行うことが可能である。よって、かかる観点から、本銀粉のD50は、特に1.51μm以上、或いは3.36μm以下、中でも2.00μm以上、或いは、3.01μm以下であるのがより一層好ましい。
D50を調整するには、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩やゼラチンなどの凝集抑制剤の量を調整したり、硝酸銀水溶液の濃度や液量を調整したり、還元剤溶液の濃度や液量を調整したりする方法を挙げることができる。
【0019】
(粒子形状)
本銀粉は、粒子形状を特に限定するものではないが、球形状或いは略球形状であるのが好ましい。また、導電性ペースト用としては、当該球形状粒子或いは略球形状の粒子を加工してなるフレーク状粒子であるのも好ましいし、また、前記球形状或いは略球形状の粒子と該フレーク状粒子の混合品も好ましい。
【0020】
(比表面積)
本銀粉のBET比表面積(SSA)は、0.60m2/g未満であるのが好ましい。
本銀粉のBET比表面積が0.60m2/g未満であれば、銀粉粒子同士の凝集が比較的弱い傾向にある。他方、ある程度の比表面積を有することで、銀粉粒子同士の接点が多くなるから、焼結後の結合を強くすることができる。よって、かかる観点から、より好ましくは0.22m/g以上或いは0.52m/g以下、その中でも特に0.26m/g以上、或いは、0.50m/g以下である。
【0021】
(D50/BET径)
現実の銀粉の粉粒は、個々の粒子が完全に分離した、いわゆる単分散粉ではなく、複数個の粉粒が凝集した状態になっているのが通常である。粉粒の凝集状態が少なく、単分散に近いほど、D50が小さくなり、D50/BET径は1に近づいてくる。
本銀粉は、D50/BET径で表される凝集度が3.00未満であれば、凝集が強くなくて均質なペーストを作製することができるため、3.00未満であるのが好ましく、中でも2.93以下、その中でも1.56以下であるのがさらに好ましい。
【0022】
(熱収縮率)
本銀粉は、前述したように、太陽電池に使用するシリコン基板との接着性、より具体的に言えば、500℃で焼成した際に生じる銀粉の収縮によるシリコン基板の剥離などを生じない接着性の観点から、本銀粉の500℃における熱収縮率は8.7〜13.0%であることが重要であり、特に8.90以上、或いは12.42以下、中でも特に10.37以上、或いは11.93以下であるのが好ましい。
BET径及び炭素含有量を所定の範囲に調整することにより、500℃における銀粉の熱収縮率が8.7〜13.0%とすることができる。
【0023】
<製法>
次に、本銀粉の好ましい製造方法について説明する。
【0024】
本銀粉の製造方法の一例として、硝酸銀などの銀溶液に還元剤を加える前に、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩を適当な量に加えて還元する方法を挙げることができる。すなわち、還元剤を加える前に、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩やゼラチンなどの凝集抑制剤を加えてその量を調整することにより、銀粉のBET径を調整することができ、しかも、ステアリン酸やゼラチンなどに起因する炭素量を調整することができる。
【0025】
より具体的に言えば、硝酸銀などの銀水溶液に錯化剤を加えた後、還元剤を添加すると共に、ステアリン酸ナトリウムなどのステアリン酸塩や、ゼラチン水溶液などの凝集抑制剤を適当な量加えて撹拌し、次いで必要に応じて分散剤を添加して撹拌させながら反応させて銀粒子を還元析出させ、その後、ろ過、洗浄、乾燥させて本銀粉を製造することができる。
【0026】
この際、ステアリン酸塩やゼラチン水溶液の量が少ないと、炭素含有量を所定範囲に調整することができないばかりか、BET径を所定の範囲に調整することができないため、ステアリン酸塩を加える量は、銀1molに対してステアリン酸塩を1.00×10-3〜4.00×10-3molであるのが好ましい。また、ゼラチン水溶液を加える量は、銀1molに対してゼラチンを0.30g〜0.50gであるのが好ましい。
【0027】
なお、硝酸銀などの銀水溶液は、硝酸銀、銀塩錯体、及び銀中間体のいずれかを含有する水溶液、又はスラリーを使用することができる。
また、錯化剤としては、例えばアンモニア水、アンモニウム塩、キレート化合物等を挙げることができる。
還元剤としては、例えばアスコルビン酸、亜硫酸塩、アルカノールアミン、過酸化水素水、ギ酸、ギ酸アンモニウム、ギ酸ナトリウム、グリオキサール、酒石酸、次亜燐酸ナトリウム、水素化ホウ素金属塩、ジメチルアミンボラン、ヒドラジン、ヒドラジン化合物、ヒドロキノン、ピロガロール、ぶどう糖、没食子酸、ホルマリン、無水亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどを含む水溶液を挙げることができる。
分散剤としては、例えば脂肪酸、脂肪酸塩、界面活性剤、有機金属、キレート剤、保護コロイド等を挙げることができる。
【0028】
<用途>
本銀粉は、導電ペースト用、特に焼結型導電性ペースト用の銀粉として好適である。
【0029】
焼結型導電性ペーストは、例えば有機ビヒクル中に、本銀粉をガラスフリットと共に混合することで調製することができる。
この際、ガラスフリットとしては、例えば、鉛ボロシリケートガラスや、ジンクボロシリケート等の無鉛ガラスも挙げることができる。
また、樹脂バインダーとしては、例えば任意の樹脂バインダーを使用することができる。例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ケイ素樹脂、ユリア樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂から選ばれる1種以上を含む組成を採用するのが望ましい。
【0030】
本銀粉は、500℃における銀粉の熱収縮率が8.7〜13.0%であり、太陽電池におけるシリコン基板との相性が極めてよいから、本銀粉を用いた導電ペーストは、太陽電池の電極に用いるのが特に好ましい。
【0031】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
実施例および比較例で得られた銀粉に関して、以下に示す方法で諸特性を評価した。
【0033】
(1)炭素含有量
伝導率40μS/cm以下になるまで純水を用いて洗浄して得られた銀粉(サンプル)を、炭素測定装置(HORIBA社製 EMIA「221V2」)で炭素含有量を測定した。
【0034】
(2)BET比表面積(SSA)及びBET径
QUANTACHROME社製のモノソーブ(商品名「MS−18」)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉体の気体吸着BET 法による比表面積の測定方法)の「6.2流動法の(3.5)一点法」に準拠して、BET比表面積(SSA)の測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスである窒素の混合ガスを使用した。
【0035】
BET径は、上記BET比表面積を用いて下記式で算出した。なお、真比重は銀粉であれば10.49である。
BET径=6÷BET比表面積÷真比重
【0036】
(3)D50
銀粉(サンプル)0.2gをIPA50mL中に入れて超音波を照射して(3分間)分散させた後、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラック(商品名)MT−3000EXII(型番)」)により、体積基準粒度分布によるD50を測定した。
【0037】
(4)熱収縮率
銀粉(サンプル)0.2gを用い、493kgの加重をかけてφ3.8mmの円柱状に成形した。この成形体の縦方向の線収縮率(%)を、熱機械分析装置TMA(セイコーインスツルメンツ社製「EXSTAR6000−TMA/SS6200」)を用い、98mNの加重をかけながらAir雰囲気中5℃/分の昇温速度で測定し、500℃における熱収縮率(%)を求めた。
【0038】
<実施例1>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。
次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度2.9g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液35mL(銀1molに対して1.76×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0039】
<実施例2>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度2.9g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液30mL(銀1molに対して1.50×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0040】
<実施例3>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1.4Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度19.6g/Lのヒドラジン水溶液0.6Lと、濃度2.9g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液30mL(銀1molに対して1.50×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0041】
<実施例4>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度2.9g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液45mL(銀1molに対して2.30×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0042】
<実施例5>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度5g/Lのゼラチン水溶液16mL(銀1molに対して0.43gに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0043】
<実施例6>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水50mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度5g/Lのゼラチン水溶液16mL(銀1molに対して0.43gに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0044】
<比較例1>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水50mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度100g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液4mL(銀1molに対して7.04×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀スラリーに濃度98質量%の硫酸20mLを添加して攪拌した。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0045】
<比較例2>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度100g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液3mL(銀1molに対して5.28×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀スラリーに濃度98質量%の硫酸20mLを添加して攪拌した。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0046】
<比較例3>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度37質量%のホルマリン6mLおよび、濃度5g/Lのゼラチン水溶液16mL(銀1molに対して0.43gに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0047】
<比較例4>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液75mLを純水1Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水90mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。
次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液1Lと、濃度2.9g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液35mL(銀1molに対して1.76×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0048】
<比較例5>
銀濃度400g/Lの硝酸銀水溶液50mLを純水0.8Lに溶解させて硝酸銀水溶液を調製し、濃度25質量%のアンモニア水60mLを添加して攪拌することにより、銀アンミン錯体水溶液を得た。
次いで、20℃の銀アンミン錯体水溶液に、濃度11.9g/Lのヒドラジン水溶液0.8Lと、濃度2.9g/Lのステアリン酸ナトリウム水溶液35mL(銀1molに対して1.76×10-3molに相当)を混合することにより銀粒子を還元析出させた。
次いで、この銀粒子をろ過し、ろ液の伝導率が40μS/cm以下となるまで水洗後、乾燥させることにより銀粉(サンプル)を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例及び比較例で得た銀粉(サンプル)は、いずれも球形状であった。
実施例及びこれまで行った試験結果から、銀に対するステアリン酸塩やゼラチンの添加比率などを調整することにより、BET径を1.10μm〜2.60μmとし、且つ炭素含有量を0.11〜0.22質量%に調整すれば、500℃における銀粉の熱収縮率が8.7〜13.0%とすることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法により測定される比表面積から算出される粒子径(「BET径」と称する)が1.10μm〜2.60μmであり、炭素含有量が0.11〜0.22質量%であることを特徴とする焼結型導電性ペースト用銀粉。
【請求項2】
BET径に対する、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50の比率(D50/BET径)が3.00未満であることを特徴とする請求項1記載の焼結型導電性ペースト用銀粉。
【請求項3】
500℃における熱収縮率が8.7〜13.0%であることを特徴とする請求項1又は2記載の焼結型導電性ペースト用銀粉。
【請求項4】
比表面積が0.60m2/g未満であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の焼結型導電性ペースト用銀粉。
【請求項5】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50が1.50μm〜3.40μmであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の焼結型導電性ペースト用銀粉。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の銀粉を用いてなる焼結型導電性ペースト。
【請求項7】
請求項1〜5の何れかに記載の銀粉を用いてなる太陽電池電極用焼結型導電性ペースト。

【公開番号】特開2013−14790(P2013−14790A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146386(P2011−146386)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】