説明

焼結鉱の製造方法

【課題】適切に擬似粒子を作製でき、生産性が良好な焼結鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】焼結原料に水分およびバインダーを添加し混合造粒して擬似粒子を作製し、得られた擬似粒子を焼結して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、バインダーとして、リグニンを含む有機系バインダーを用いる。また、混合造粒の際に添加する水分の量である造粒水分量は、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量とバインダー量とに基づいて計算し、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量より少なく設定する。特に、Wbを造粒水分量とし、Wをバインダーを添加しない場合の適正な造粒水分量とし、Mbをバインダーの添加量×バインダー中の固形分比率とすると、W−1.3・Mb<Wb<W−0.7・Mbの範囲内にすると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉に用いる焼結鉱の製造方法に関し、より具体的には、造粒助剤であるバインダーを用いて混合造粒した擬似粒子を焼結して作製する焼結鉱の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、焼結鉱を製造する際には、まず、複数銘柄の鉄鉱石にて構成される主原料と、石灰石および珪石などの副原料と、粉コークスなどの固体燃料とを所定の割合で配合して焼結原料とする。
【0003】
また、ドラムミキサーやディスクペレタイザーなどを用い、焼結原料に水分を添加して混合造粒し、図4に示すような擬似粒子1と呼ばれる造粒物を作成する。
【0004】
この擬似粒子1は、核粒子2と、この核粒子2の周囲に付着した付着粒子3とを備えており、付着粒子3は、水による架橋4にて水の表面張力により核粒子2に付着した状態が保持されている。
【0005】
そして、擬似粒子1をドワイトロイド(DL)型焼結機のパレットに充填して擬似粒子1の充填層とし、この充填層の表層に着火する。その後、パレット下方に設置された排風機によって空気を吸引することにより、充填層の表層の固体燃料から下層の固体燃料へ順次点火され、この燃焼熱で擬似粒子1が焼成されて焼結が進行し、焼結ケーキが形成され、この焼結ケーキを所定の大きさに粉砕して焼結鉱が得られる。
【0006】
このように製造される焼結鉱は、混合造粒における擬似粒子化の状況が焼結の際の充填層の通気性に影響し、焼結鉱の歩留などの生産性が変化する。
【0007】
すなわち、擬似粒子化が不十分であると、微粉化した粒子が焼成中に剥離し、この剥離した粒子が充填層の通気を阻害し、通気性が悪化してしまう。また、擬似粒子化が不十分で擬似粒子の粒径が小さいと、充填層の通気性が悪化してしまう。そして、充填層の通気性が悪化すると、焼結が進行しにくく生産性が低下してしまう。
【0008】
そこで、焼結時の充填層の通気性を向上させる手段としては様々な方法が提案されており、そのうちの一つとして、造粒助剤としてバインダーを添加して、擬似粒子の強度を向上させる方法が知られている。
【0009】
また、このような造粒用のバインダーとして、ベントナイト、リグニン(パルプ廃液)、澱粉およびセルロース系増粘剤などを用いて、焼結鉱を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
一方、造粒の際に加える水分量である造粒水分量によっても擬似粒子化の状況が大きく変化することが知られている。
【0011】
具体的には、造粒水分量が少ない場合は、核粒子2に付着粒子3が付着しにくく、微粉化した粒子が焼成中に剥離しやすくなってしまう。造粒水分量が多い場合は、混合造粒の際に焼結原料が造粒機内で転動しにくく、擬似粒子を作製できずにスラリー状態となる場合があるとともに、焼成の際に擬似粒子の水分により温度が低下して焼結が進行しにくくなってしまい生産性が低下してしまう。
【0012】
ここで、適正な造粒水分量を設定するための因子は多数あるが、適正な造粒水分量を設定する方法の一つとして、焼結原料の吸水指数、焼結原料の粒度分布および焼結原料の化学組成などに基づき造粒水分量を設定する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−25556号公報(第2−4頁)
【特許文献2】特開2010−106301号公報(第3−8頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上述の特許文献1のようにバインダーを用いた場合においても、造粒水分量によって擬似粒子化の状況が変化することは明らかであり、造粒水分量によっては、バインダーを用いても擬似粒子を適切に作製できず、生産性が向上しない可能性が考えられる。
【0015】
また、特許文献2ではバインダーを用いる場合が考慮されていないため、特許文献1の方法に特許文献2の条件を適用しても、擬似粒子を適切に作製できず、生産性を向上できない可能性も考えられる。
【0016】
本発明はこのような点に鑑みなされたもので、擬似粒子を適切に作製でき、生産性が良好な焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載された焼結鉱の製造方法は、焼結原料にリグニンを含む有機系バインダーおよび水分を添加して混合造粒して擬似粒子を作製し、この擬似粒子を焼結して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、混合造粒の際に添加する水分の量である造粒水分量は、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量とバインダー量とに基づいて計算し、この計算された造粒水分量がバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量より少ないものである。
【0018】
請求項2に記載された焼結鉱の製造方法は、請求項1記載の焼結鉱の製造方法において、造粒水分量は、(1)式にて示される範囲内であるものである。
(1)式:(W−1.3・Mb)<Wb<(W−0.7・Mb)
Wb:造粒水分量(質量%)
W:バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量(質量%)
Mb:バインダーの添加量(質量%)×バインダー中の固形分比率
ただし、Mb<W/1.3とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、造粒水分量をバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量とバインダー量とに基づいて計算し、リグニンを含む有機系バインダーを用いる際の適正な造粒水分量を設定できるため、擬似粒子を適切に作製でき、生産性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明における擬似粒子の構成を示す断面模式図である。
【図2】造粒水分量と−0.5mm粉率との関係を示すグラフである。
【図3】焼結鍋試験にて使用する焼結鍋を示す構成図である。
【図4】従来のバインダーを用いない場合の擬似粒子の構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
焼結鉱を製造する際には、まず、複数銘柄の鉄鉱石を配合した主原料と、石灰石および珪石などの副原料と、粉コークスなどの固体燃料とを所定の割合で配合して焼結原料を構成する。なお、主原料の鉄鉱石は、採掘される地域などによって成分が異なるため、主原料としての特性やコストなどを考慮して複数銘柄のものを配合する。
【0023】
次に、ドラムミキサーやディスクペレタイザーなどの造粒機を用い、焼結原料に造粒助剤であるバインダーおよび水分を添加して混合造粒して、図1に模式的に示す擬似粒子11という造粒物を作製する。
【0024】
また、このように作製した擬似粒子11をドワイトロイド(DL)型焼結機などの焼結手段にて焼結し、焼結鉱が得られる。
【0025】
ここで、擬似粒子11は、図1に示すように、核粒子12と、この核粒子12に付着した付着粒子13とを備えており、粒径が大きいほど、焼結する際の通気性を確保しやすいので好ましい。
【0026】
付着粒子13は、核粒子12として造粒されなかった主原料、副原料および固体燃料にて構成され、添加された水分による架橋14およびバインダーによる架橋15により核粒子12に付着した状態が保持されている。
【0027】
バインダーは、パルプ廃液から作成されたリグニンを含む有機系バインダーであり、粉状のものおよび液体のもののいずれでもよい。
【0028】
なお、リグニンを含む有機系バインダーには、炭素(C)が10〜40質量%程度含まれているため、固形燃料の使用量を低減できる。
【0029】
[バインダー添加の有無が造粒水分量に及ぼす影響]
本発明において、混合造粒の際に添加する水分の量、すなわち造粒水分量Wbは、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wと、バインダー量とに基づいて計算する。また、この計算された造粒水分量Wbは、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wより少なくなる。
【0030】
[バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量W]
バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wは、焼結原料の吸水性、組成および粒度分布などの特性によって変化するものである。そこで、あらかじめ造粒しようとする焼結原料において、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wを把握した。
【0031】
バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wは、例えば、表1に示す配合の焼結原料に、バインダーを添加せずに水の添加量を種々に変化させて造粒を行い、造粒後の擬似粒子を105℃で2時間完全乾燥させた後に測定する−0.5mm粉率に基づいて確認した。
【0032】
【表1】

【0033】
造粒にはタイヤ型ペレタイザーを用いた。このタイヤ型ペレタイザーは、直径500mmのタイヤを利用した造粒機であり、タイヤのゴム部分の内側に焼結原料を収容した状態でタイヤを回転させることにより造粒するものである。
【0034】
また、−0.5mm粉率とは、目の間隔が0.5mmの篩いを用いて、造粒後の擬似粒子における粒径0.5mm未満の微粉粒子量(質量%)を測定したものである。
【0035】
−0.5mm粉率が高くなるほど、微粉粒子が多いということになり、この微粉粒子が焼結の際の通気性を阻害する原因になりやすいと考えられているため、擬似粒子としては好ましくない。
【0036】
一方、−0.5mm粉率が低いほど、造粒により作製された擬似粒子が大きいサイズの塊としてまとまっていることになるため、焼結の際の通気性を確保しやすく、擬似粒子として好ましい状態である。
【0037】
図2に造粒水分量と乾燥後の−0.5mm粉率との関係を示す。バインダー無添加の場合(図中のA)は、造粒水分量が約7質量%の場合に−0.5mm粉率が最小になることから、約7質量%がバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wである。
【0038】
また、図2には、リグニンを含む有機系バインダーを0.5質量%用いた場合(図中のB)、1.0質量%用いた場合(図中のC)、および、1.5質量%用いた場合(図中のD)における造粒水分量と−0.5mm粉率との関係も示す。
【0039】
リグニンを含む有機系バインダーを用いた場合(B、C、D)、造粒水分量Wbをバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量である約7質量%とすると水分過多であり、造粒できなかった。
【0040】
また、バインダー無添加の場合(A)の−0.5mm粉率の最小値が約7.5%であるのに対し、リグニンを含む有機系バインダーを用いた場合(B、C、D)の−0.5mm粉率の最小値は、いずれも約3%以下となっている。すなわち、微粉粒子の割合が大きく低下しており、リグニンを含む有機系バインダーを用いると造粒性が向上することを確認できた。
【0041】
さらに、リグニンを含む有機系バインダーを用いた場合の−0.5mm粉率の値が最小となる造粒水分量は、B、C、Dの順に、すなわち、リグニンを含む有機系バインダーの添加量の増加にともない低水分量側へ移行している。
【0042】
したがって、リグニンを含む有機系バインダーを添加して混合造粒する際の造粒水分量は、バインダー無添加の場合の造粒水分量とバインダー量とに基づいて、バインダー無添加の場合の造粒水分量より少なくすることができる。
【0043】
特に、Wbをリグニンを含む有機系バインダーを添加する場合の造粒水分量(質量%)とし、Wをバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量(質量%)とし、Mbをバインダーの添加量(質量%)×バインダー中の固形分比率とすると、造粒水分量Wbは(1)式にて示される範囲内とすると好ましい。ただし、Mb<W/1.3とする。
【0044】
(1)式:(W−1.3・Mb)<Wb<(W−0.7・Mb)
【0045】
造粒水分量を示すWbの値が、W−1.3・Mbの値以下であると、水分による核粒子12に対する付着粒子13の保持力すなわち擬似粒子11の強度向上効果が十分に得られず、W−0.7・Mbの値以上であると、水分過多となり造粒が進行しにくくなってしまう。
【0046】
バインダー量Mbは、バインダーの添加量(質量%)×バインダー中の固形分比率で表される。すなわち、バインダー量Mbは造粒に関わるバインダーの固形分量であり、粉体のバインダーを添加する場合にはバインダーの添加量そのものがバインダー量Mbとなる。また、液体のバインダーを添加する場合は、添加したバインダー量に固形分比率を掛けた固形分量がバインダー量Mbとなる。
【0047】
また、粉状のバインダーを用いる場合は、バインダー添加量が、0.1質量%未満であると、バインダーによる核粒子12に対する付着粒子13の保持力、すなわち擬似粒子11の強度向上効果が十分に得られない。一方、バインダーの添加量が3.0%より多いと、擬似粒子11の強度向上効果が飽和するだけでなく、バインダーに含まれるナトリウム(Na)やカリウム(K)などの有害成分が増加するとともに、製造コストの増加を招いてしまう。したがって、バインダーの添加量は、0.1質量%以上3.0質量%以下が好ましい。
【0048】
そして、上記焼結鉱の製造方法によれば、造粒水分量Wbをバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量とバインダー量とに基づいて計算することにより、バインダーとしてリグニンを含む有機系バインダーを用いる際の適正な造粒水分量Wbを設定できるため、擬似粒子を適切に作製できる。
【0049】
したがって、擬似粒子11の強度を向上でき、剥離した微粉粒子による焼成の際の充填層の通気性の低下を抑制できるとともに、擬似粒子11に含まれる水分による焼成の際の温度の低下を抑制できるため、焼結鉱の生産性を向上できる。
【0050】
特に、造粒水分量Wbを(1)式の範囲にすることにより、擬似粒子を適切に作製しやすく、焼結鉱の生産性をより向上できる。
【0051】
なお、上記一実施の形態では、主原料として複数銘柄の鉄鉱石を配合したが、このような構成には限定されず、1種類の鉄鉱石のみを用いる構成にしてもよい。
【0052】
また、−0.5mm粉率を測定する際には、タイヤ型ペレタイザーを用いて擬似粒子を造粒した構成としたが、混合造粒手段は、タイヤ型ペレタイザーに限定されず、従来の造粒機から適宜選択可能である。
【実施例】
【0053】
以下、本実施例および比較例について説明する。
【0054】
まず、上記表1に示す割合にて、各鉄鉱石と、返鉱と、石灰石と、蛇紋岩と、珪石と、粉コークスとを配合して、焼結原料を作製した。なお、返鉱とは、焼結原料の作製過程にて排出された通常粒径が5mm以下のものである。
【0055】
この焼結原料を用い、リグニンを含む粉末の有機系バインダー(商品名:サンエキスP321(「サンエキス」は登録商標。)、日本製紙ケミカル株式会社製)、リグニンを含む液体の有機系バインダー(商品名:サンエキスM100(「サンエキス」は登録商標。)、または、比較として澱粉(商品名:モルデックスαK、宝澱粉化学株式会社製)と、水分とを添加した。
【0056】
そして、ドラムミキサーにて造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、各種試料の−0.5mm粉率を測定するとともに、0.5mm篩いで残った塊状の擬似粒子の焼結性を評価するための焼結鍋試験を行った。
【0057】
[焼結鍋試験の試験方法]
焼結鍋試験では、図3に示す焼結鍋21を用いた。この焼結鍋21は、点火炉22と、この点火炉22の下側に設けられた筒状の焼結鍋本体23と、この焼結鍋本体23の下側に設けられたウインドボックス24とを有している。
【0058】
焼結鍋本体23は、点火炉22およびウインドボックス24に連通し、点火炉22側からウインドボックス24側へ100mm間隔で離間した熱電対26が設けられている。
【0059】
ウインドボックス24は、鍋下温度を測定する熱電対26および鍋下圧力を測定する圧力計27が設けられている。
【0060】
また、ウインドボックス24には、熱電対26および圧力計27の下流側に空気を吸引するブロワ28が設けられている。このブロワ28は、鍋下圧力が6.0KPaで一定になるように風量が制御されている。
【0061】
そして、焼結鍋試験では、焼結鍋本体23に擬似粒子を充填して充填層29とし、点火炉22から充填層29の上層部の固体燃料に着火した後、ブロワ28により空気を吸引することにより、充填層29の上層部から下層部に順次燃焼させ、焼結を進行させ焼結時間を測定した。なお、焼結時間は、点火から鍋下温度が最大になるまでの時間とした。
【0062】
[歩留および生産性の評価方法]
焼結後の焼結ケーキを2mの高さから2回落下させて、粒径5mm以上の焼結鉱の割合を歩留として評価した。
【0063】
さらに、生産率(t/hr/m)=歩留評価後の粒径5mm以上の焼結鉱の質量/焼結時間/焼結鍋の面積の式により、生産率を求めて生産性を評価した。
【0064】
[試験に用いた各試料について]
試料No.1は、各種試験で用いた各試料の基準(ベース例)である。バインダーを無添加とし、造粒水分量は、表1に示した配合の焼結原料においてバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wである7.1質量%とした。
【0065】
そして、ドラムミキサーにて、造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率を測定するとともに、焼結鍋試験を行った。
【0066】
−0.5mm粉率、焼結時間、歩留および生産性は、表2に示したとおりであり、これらを以下に示す本実施例または比較例の基準とした。
【0067】
試料No.2は、発明例1(本実施例)として、リグニンを含む粉状の有機系バインダーを用いたものであり、このリグニンを含む有機系バインダーの添加量Mbを1.5質量%とした。また、この条件を(1)式に適用すると、造粒水分量Wbの範囲は、5.15<造粒水分量(Wb)<6.05となるため、造粒水分量Wbを5.8質量%とした。
【0068】
そして、ドラムミキサーで焼結原料とバインダーと水分とを混合造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率の測定をするとともに、焼結鍋試験を行った。
【0069】
試料No.3は、発明例2(本実施例)として、リグニンを含む粉状の有機系バインダーを用いたものであり、このリグニンを含む有機系バインダーの添加量Mbを0.5質量%とした。また、この条件を(1)式に適用すると、造粒水分量Wbは、6.45<Wb<6.75となるため、造粒水分量Wbを6.5質量%とした。
【0070】
そして、ドラムミキサーで焼結原料とバインダーと水分とを混合造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率の測定をするとともに、焼結鍋試験を行った。
【0071】
試料No.4は、発明例3(本実施例)として、リグニンを含む液体の有機系バインダーを用いたものであり、このリグニンを含む有機系バインダーの添加量を2.0質量%とした。また、リグニンを含む液体の有機系バインダーの固形分比率は50%である。この条件を(1)式に適用すると5.8<Wb<6.4となるため、造粒水分量Wbを6.2質量%とした。
【0072】
そして、ドラムミキサーにて、造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率を測定するとともに、焼結鍋試験を行った。
【0073】
試料No.5は、発明例4(本実施例)として、試料No.4(発明例3)と同じリグニンを含む液体の有機系バインダーを用い、このリグニンを含む有機系バインダーの添加量を2.0質量%とした。この条件を(1)式に適用すると5.8<Wb<6.4となるが、造粒水分量Wbは、この(1)式にて示される範囲より少ない5.6質量%とした。
【0074】
そして、ドラムミキサーにて、造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率を測定するとともに、焼結鍋試験を行った。
【0075】
試料No.6は、発明例5(本実施例)として、リグニンを含む液体の有機系バインダーを用いたものであり、このリグニンを含む有機系バインダーの添加量を2.0質量%とした。また、リグニンを含む液体の有機系バインダーの固形分比率は50%である。この条件を(1)式に適用すると5.8<Wb<6.4となるが、造粒水分量Wbは、この(1)式にて示される範囲より多い6.8質量%とした。
【0076】
そして、ドラムミキサーにて、造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率を測定するとともに、焼結鍋試験を行った。
【0077】
試料No.7は、比較例1として、試料No.2(発明例1)と同様にリグニンを含む粉状の有機系バインダーを用いたものであり、このリグニンを含む有機系バインダーの添加量Mbを1.5質量%とした。また、この条件を(1)式に適用すると、造粒水分量Wbの範囲は、5.15<造粒水分量(Wb)<6.05となるが、この試料No.7では、造粒水分量Wbをこの範囲より多い7.3質量%とした。この造粒水分量は、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量である7.1質量%より多いものである。
【0078】
そして、ドラムミキサーで焼結原料とバインダーと水分とを混合造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率の測定をするとともに、焼結鍋試験を行った。
【0079】
試料No.8は、比較例2としてバインダーに澱粉を用いたもので、この澱粉の添加量Mbを1.5質量%とした。また、この条件を(1)式に適用すると、造粒水分量(Wb)は、5.15<造粒水分量(Wb)<6.05となるため、造粒水分量Wbを5.9質量%とした。
【0080】
そして、ドラムミキサーで焼結原料とバインダーと水分とを混合造粒して擬似粒子を作製し、105℃で2時間乾燥させた後、−0.5mm粉率の測定をするとともに、焼結鍋試験を行った。
【0081】
[評価結果]
上記各発明例および比較例における−0.5mm粉率の測定結果および焼結鍋試験の結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2に示すように、バインダーを用いないベース例(試料No.1)に比べ、発明例1(試料No.2)ないし発明例5(試料No.6)は、−0.5mm粉率が低下しているだけでなく、焼結時間が短くなり、歩留が向上しているため、生産率が増加している。
【0084】
これら発明例1(試料No.2)ないし発明例5(試料No.6)の結果により、造粒水分量Wbを、バインダー無添加の場合の適正水分量Wと、バインダー量とに基づいて設定し、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wより少なくすることにより、擬似粒子の強度を向上でき、生産性を向上できることが分かる。
【0085】
また、リグニンを含む液体の有機系バインダーを用いた発明例3(試料No.4)は、−0.5mm粉率、焼結時間、歩留および生産率のいずれも、リグニンを含む粉末の有機系バインダーを用いた発明例1(試料No.2)および発明例2(試料No.3)と同等だった。
【0086】
この発明例3(試料No.4)の結果により、リグニンを含む有機系バインダーが粉末の場合および液体の場合のいずれも、造粒水分量Wbを、バインダー無添加の場合の適正水分量Wと、バインダー量とに基づいて設定し、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wより少なくすることによって、擬似粒子の強度を向上でき、生産性を向上できることが分かる。
【0087】
ここで、発明例4(試料No.5)は、ベース例(試料No.1)に比べると−0.5mm粉率が低下しているだけでなく、焼結時間が短くなり、歩留が向上しているため、生産率が増加している。しかし、造粒水分量Wbが(1)式にて示す範囲外のものであり、発明例1(試料No.2)、発明例2(試料No.3)および発明例3(試料No.4)に比べると、−0.5mm粉率が高く、焼結時間が若干長くなり、歩留が若干低下しているため、生産率が若干低下している。
【0088】
また、発明例5(試料No.6)は、ベース例(試料No.1)に比べると−0.5mm粉率が低下しているだけでなく、焼結時間が短くなり、歩留が向上しているため、生産率が増加している。しかし、造粒水分量Wbが(1)式にて示す範囲外のものであり、発明例1(試料No.2)、発明例2(試料No.3)および発明例3(試料No.4)に比べると、−0.5mm粉率が高く、特に、バインダー量が同じである発明例3(試料No.4)より、焼結時間が若干長くなり、歩留が若干低下しているため、生産率が若干低下している。
【0089】
すなわち、発明例1(試料No.2)、発明例2(試料No.3)および発明例3(試料No.4)と、発明例4(試料No.5)および発明例5(試料No.6)との対比により、造粒水分量Wbを(1)式にて示される範囲内にすることによって、擬似粒子の強度をより向上でき、生産性をより向上できることが分かる。
【0090】
これに対して、リグニンを含む有機系バインダーを用い、このバインダーを発明例1(試料No.2)と同量添加した比較例1(試料No.7)は、造粒水分量Wbがバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量Wより多く、水分過多のため、ドラムミキサー内での転動が不十分で擬似粒子が作製できなかった。
【0091】
なお、図2に示されるように、最も−0.5mm粉率が低くなる水分量より少し水分量が増えただけで、−0.5mm粉率が急上昇しており、このことからも水分過多の場合は造粒しにくいことが分かる。
【0092】
また、バインダーとして澱粉を用いた比較例2(試料No.8)は、造粒水分量Wbを(1)式の範囲内としたが、−0.5mm粉率がバインダーを用いていないベース例よりも高かった。また、発明例1(試料No.2)ないし発明例5(試料No.6)に比べて、焼結時間が長くなり、歩留が低下しているため、生産率が低下し、生産性が悪化している。
【0093】
この比較例2(試料No.8)の結果により、バインダーとして澱粉を用いた場合には、造粒水分量Wbを(1)式の範囲内にしても、擬似粒子を適切に作製できず、生産性を向上できないことが分かる。
【符号の説明】
【0094】
11 擬似粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結原料にリグニンを含む有機系バインダーおよび水分を添加して混合造粒して擬似粒子を作製し、この擬似粒子を焼結して焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、
混合造粒の際に添加する水分の量である造粒水分量は、バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量とバインダー量とに基づいて計算し、この計算された造粒水分量がバインダー無添加の場合の適正な造粒水分量より少ない
ことを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
造粒水分量は、(1)式にて示される範囲内である
ことを特徴とする請求項1記載の焼結鉱の製造方法。
(1)式:(W−1.3・Mb)<Wb<(W−0.7・Mb)
Wb:造粒水分量(質量%)
W:バインダー無添加の場合の適正な造粒水分量(質量%)
Mb:バインダーの添加量(質量%)×バインダー中の固形分比率
ただし、Mb<W/1.3とする。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−76140(P2013−76140A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217659(P2011−217659)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】