焼酎の蒸留粕を用いた漬け床及び加工食品の製造方法
【課題】焼酎の蒸留粕を食品加工用として有効に利用できる方法を提供する。
【解決手段】芋焼酎の蒸留粕58.4質量%、米麹(黄麹)8.8質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩1.5質量%、みりん19.5質量%及び砂糖11.8質量%を混合し、漬け床とした。食材としてシイラを用いた。シイラは皮付きの状態でフィレー加工後、厚さ1〜2cmにそぎ切りし、これを濃度10質量%の冷食塩水に入れ、冷暗所で1時間漬け込んで脱水した。シイラの切り身を上記食塩水から取り出し、水分を切った後、質量で4倍量の漬け床に入れ、冷暗所で1日間漬け込んだ。
【解決手段】芋焼酎の蒸留粕58.4質量%、米麹(黄麹)8.8質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩1.5質量%、みりん19.5質量%及び砂糖11.8質量%を混合し、漬け床とした。食材としてシイラを用いた。シイラは皮付きの状態でフィレー加工後、厚さ1〜2cmにそぎ切りし、これを濃度10質量%の冷食塩水に入れ、冷暗所で1時間漬け込んで脱水した。シイラの切り身を上記食塩水から取り出し、水分を切った後、質量で4倍量の漬け床に入れ、冷暗所で1日間漬け込んだ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎の蒸留粕と麹を含む食品加工用漬け床及び該漬け床を用いて得られる漬物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品加工方法の一つとして知られている粕漬けは、日本酒の搾り粕である酒粕を原料として用いたものが良く知られている(例えば特許文献1)。また、魚介類を用いた粕漬けについても、その原料として用いられるものは酒粕である(特許文献2〜3、非特許文献1等)。
【0003】
一方、焼酎の蒸留粕(焼酎粕)を利用した食品として、飲料、甘味料のほか、機能性食品が提案されている(例えば特許文献4〜6)。また、焼酎粕は、血圧降下作用、ガン細胞抑制作用を有することのほか、GABA等の高機能性物質の存在が知られている(例えば特許文献5、7、8等)。
【0004】
しかしながら、従来より、酒粕は食品として扱われていたが、焼酎粕は廃棄されていた。焼酎粕が廃棄される理由としては、1)焼酎粕の9割以上が水分であり、運搬や保管にコストがかかること、2)雑菌が増えやすく、腐敗しやすいこと等が挙げられる。
【特許文献1】特開2006−223214
【特許文献2】特開2000−245335
【特許文献3】特開平10−117738
【特許文献4】特開2006−136343
【特許文献5】特開2006−94713
【特許文献6】特開2005−304379
【特許文献7】特開2004−352681
【特許文献8】特開2004−290114
【非特許文献1】全国水産加工品総覧、光琳(株)、2005年、pp.407−409
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、焼酎の蒸留粕の利用が種々提案されているが、利用方法が限られており、さらなる利用方法の開発が切望されている。
【0006】
また、魚介類等一次生産物の更なる需要拡大のためにはこれまでにない加工食品の開発が望まれている。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、焼酎の蒸留粕を食品加工用として有効に利用した、これまでにない加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む漬け床が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の食品加工用漬け床及び漬物に係る。
1. 1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む、食品加工用漬け床。
2. 前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む、上記項1に記載の食品加工用漬け床。
3. 魚類の身及び/又は魚類の肝臓をさらに含む、上記項1又は2に記載の食品加工用漬け床。
4. 食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種をさらに含む、上記項1〜3のいずれかに記載の食品加工用漬け床。
5. 上記項1〜4のいずれかに記載の漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる漬け物。
6. 前記食材が、魚介類、肉類又は野菜類である、上記項5に記載の漬け物。
7. 加工食品を製造する方法であって、上記項1〜4のいずれかに記載の漬け床に食材の一部又は全体を接触させた後、保持する工程を含むことを特徴とする加工食品の製造方法。
8. 食材として、魚介類又はその切り身を用いる、上記項7に記載の製造方法。
9. 魚介類又はその切り身が、前記接触に先立って、予め塩水に浸漬することにより脱水処理が施されたものである、上記項8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焼酎の蒸留粕(焼酎粕)を漬け床として利用するので、これまでにない独特の風味をもつ加工食品を提供することができる。一方、焼酎粕は、産業廃棄物であることからその廃棄方法の検討、廃棄場所の確保等が必要とされているが、本発明によりその有効利用が可能となり、環境問題の改善にも寄与することができる。
【0011】
また、例えばシイラに代表される多獲性魚類は、魚価の暴落を阻止するために一般的には冷凍保管し、出荷調整することが望ましいが、冷凍保管した魚肉は解凍時の離水等により品質低下が起こるため、刺身商材はもとより加熱加工商材としても敬遠されがちである。この点、本発明によれば、冷凍しなくても比較的長期間保存することができるだけでなく、風味も良好な食材を提供することができるので、食材の安定供給にも貢献することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、コウジカビを用いて調製した麹により焼酎の蒸留粕を再発酵させることにより食材(魚肉等)の有用成分(特に旨味成分及び機能性成分)を増加させることができるので、嗜好性と栄養価の高い食材を提供することが可能となる。
【0013】
具体的に、焼酎粕は酒粕よりも、カリウム等のミネラル成分、ビタミンB、ビタミンE等のビタミン類、ポリフェノール類等が多く含まれている。特に、ビタミンEやポリフェノールには脂質酸化抑制効果があるので、焼酎粕を、脂質を多く含む畜肉、水産物等の食品の加工に用いることにより、該食品の脂質酸化を好適に抑制できる。
【0014】
また、焼酎粕には基本的にトレハロースが含まれている。トレハロースには食感改善効果があるので、漬け床に漬け込んだ食品にトレハロースを浸透させることにより、食品の食感を改善できる。
【0015】
本発明において、コウジカビを用いて調製した麹により焼酎粕を再発酵させることにより、漬け床が腐敗臭を発することなく焼酎粕単独よりも長期間維持できるので、加工食品の漬け床としてより適していると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
漬け床
本発明の漬け床は、1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む食品加工用漬け床である。前記蒸留粕及び前記麹を同時に含有するため、本発明の漬け床は、前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む。
【0017】
適用できる焼酎の種類としては限定的でなく、例えば芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、栗焼酎等のさまざまな種類の焼酎の蒸留粕を採用することができる。前記蒸留粕は、焼酎を製造する際に副生する粕である。
【0018】
前記麹を用いて前記蒸留粕を発酵させることにより、漬け床の腐敗の進行を抑制ないしは防止することができる。また、前記麹を用いて前記蒸留粕を発酵させることにより、食材の有用成分(例えば、GABA、グルタミン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等の遊離アミノ酸)の増加を促進することもできる。
【0019】
前記コウジカビとしては、アスペルギルス属及びモナスカス属の少なくとも1種が好ましい。前記麹としては、例えば米麹、麦麹等を用いることができる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。また、前記麹は、胞子の種類によって、黄麹、黒麹、白麹等に分類されるが、本発明においては、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。麹の添加量は、特に制限されないが、一般的には蒸留粕100質量部に対して3〜50質量部程度、好ましくは7〜50質量部程度、より好ましくは10〜20質量部程度である。
【0020】
前記麹として、粉砕された麹を用いてもよい。粉砕された麹を添加することにより、漬け床中のGABA等の含有量を増加させることができる。また、漬け床から取り出した食品(例えば漬け物)の外観が良好になる。すなわち、未粉砕の麹は、その大きさが、通常、米粒程度であるため、漬け床から取り出したに食品に米粒大の麹が付着し、該食品の外観が悪くなるという問題があるが、予め麹を粉砕しておくことにより、該問題を好適に回避できる。
【0021】
粉砕された麹としては、例えば、粉体状、鱗片状等の麹が挙げられる。前記麹が粉体状である場合、平均粒径は100〜1,000μm程度が好ましい。
【0022】
また、前記麹として、麹菌種毎の至適温度で活性化 させた麹を用いてもよい。活性化させた麹を添加することにより、麹菌の持つグルタミン酸脱炭酸酵素が増加又は活性化し、漬け床中のGABA等の含有量を増加させることができる。麹を活性化させる際の温度は、黄麹菌では20〜35℃程度が好ましい。活性化時間は、24〜48時間程度が好ましい。
【0023】
本発明の漬け床には、必要に応じて、魚類の身が含まれていてもよい。前記身を含有させることにより、該身に含まれるビタミンB6の一形態であるピリドキサール-5’-リン酸(以下、「PLP」と略記する)が漬け床中に溶出し、該PLPがGABA生成酵素の補酵素として働くことにより、漬け床中のGABAの含有量を向上させることができる。前記魚類としては、特に限定されず、例えば、シイラ、カンパチ、ブリ、タイ類、マグロ類等が挙げられる。これらの魚類の身は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。前記身の添加量は、前記蒸留粕100質量に対して、10〜100質量部が好ましい。
【0024】
本発明の漬け床には、必要に応じて、魚類の肝臓が含まれていてもよい。前記肝臓を含有させることにより、肝臓中に含まれるビタミンB6の一形態であるPLP溶出し、該PLPがGABA生成酵素の補酵素として働くことにより、漬け床中のGABAの含有量を向上させることができる。前記魚類としては、特に限定されず、例えば、シイラ、カンパチ、ブリ、タイ類、マグロ類等が挙げられる。これらの魚類の肝臓は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。前記肝臓の添加量は、前記蒸留粕100質量に対して、10〜20質量部が好ましい。
【0025】
本発明の漬け床には、必要に応じて各種の調味料等が含まれていても良い。例えば、食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種を用いることができる。これらの配合割合は、目的とする風味、用いる食材の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0026】
漬け床の調製
本発明の漬け床は、前記各成分を均一に混合することによって得ることができる。その混合順序は制限されないが、特に、前記焼酎粕に前記麹を配合することにより、該焼酎粕を発酵させた後、食塩、砂糖、みりん等を添加することが好ましい。これにより、麹の作用で有用成分を優先的に増加させた後、所望の味に調えることができる。前記身および前記肝臓は、前記焼酎粕を発酵させる前に配合することが好ましい。
【0027】
特に、本発明の漬け床を調製する際、前記蒸留粕に前記麹を添加した後、得られた混合物を静置させておくことが望ましい。
【0028】
静置させる際、静置温度を適宜設定することにより、漬け床に含まれる有効成分の量を調整できる。例えば、静置温度を15℃以上、好ましくは15〜35℃に設定した場合、漬け床中のGABA、グルコース等の含有量を好適に増加させることができる。また、静置温度を15℃以下、好ましくは5℃以下に設定した場合、漬け床中のトレハロースの含有量を好適に維持することができる。
【0029】
静置時間は、特に限定されないが、5時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましく、24〜30時間がさらに好ましい。静置時間を5時間以上とすることにより、漬け床中に含まれるGABA、グルコース等を好適に増加させることができる。また、静置時間を30時間以下とすることにより、腐敗の原因となるアンモニア態窒素の生成を好適に抑制又は防止できる。
【0030】
漬け物
本発明の漬け物は、前記漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる。
【0031】
前記食材は、前記漬け床から露出しないように前記漬け床に漬けてもよいし、一部が露出した状態で前記漬け床に漬けてもよい。
【0032】
本発明の漬け床の使用に際しては、公知の漬け床と同様の方法により使用すれば良い。例えば、1)漬け床に食材を浸す方法(漬け床が液体状である場合も含む。)、2)容器の底部に漬け床を敷き詰め、その上に食材を置き、さらにその上から漬け床で覆う方法、3)食材の上から漬け床を塗布する方法等のいずれの方法であっても良い。
【0033】
食材としては、特に限定されず、公知の粕漬け、味噌漬け等で適用されている材料と同様のものを使用することができる。例えば、シイラ、カンパチ、ブリ、タイ類、マグロ類等の魚介類;牛肉、豚肉、鶏肉等の肉類;ダイコン、ニンジン、キュウリ等の野菜類等が挙げられる。食材として魚介類を用いる場合には切り身を好適に用いることもできる。
【0034】
前記漬け床に前記食材を接触させた後、その漬け床を、例えば、冷暗所で所定時間保持することにより本発明の漬け物が得られる。
【0035】
本発明の漬け物は、特に、旨味成分及び機能性成分を多く含む。従って、本発明の漬け物は、嗜好性に優れ、且つ、栄養価が高い。
【0036】
また、本発明の漬け物は、通常、トレハロースを含む。トレハロースには食感改善効果があるので、本発明の漬け物は、食感がよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例及び参考例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例及び参考例に限定されない。
【0038】
なお、実施例及び参考例にて使用する米麹は、コウジカビを用いて調製した米麹である。
【0039】
実施例1
芋焼酎の蒸留粕58.4質量%、米麹(黄麹)8.8質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩1.5質量%、みりん19.5質量%及び砂糖11.8質量%を混合し、漬け床とした。食材としてシイラを用いた。シイラは皮付きの状態でフィレー加工後、厚さ1〜2cmにそぎ切りし、これを濃度10質量%の冷食塩水に入れ、冷暗所で1時間漬け込んで脱水した。シイラの切り身を上記食塩水から取り出し、水分を切った後、質量で4倍量の漬け床に入れ、冷暗所で1日間漬け込んだ。
【0040】
漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。モニター10人による試食結果では、特に魚臭さが無く、風味も新しく美味しいとの評価を得た。
【0041】
実施例2
芋焼酎の蒸留粕50質量%、米麹(黄麹)20質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩2質量%、みりん15質量%及び砂糖13質量%を混合し、漬け床とした。シイラの代わりに養殖マダイを用いたほかは、実施例1と同様の方法により前記マダイを加工し、漬け込んだ。加工食品を製造した。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0042】
実施例3
実施例1と同様の方法により漬け床を調製した。食材として大根を用い、実施例1と同様の方法で漬け込んだ。漬け床から大根をとりだした後、大根に付着した漬け床をぬぐい落とし、そのまま一口大に切って食した。漬け込んだ大根は、芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特な風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0043】
実施例4
実施例1と同様の方法により漬け床を調製した。食材として鶏肉を用い、実施例1と同様の方法により鶏肉を加工し、漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0044】
実施例5
芋焼酎粕の代わりに麦焼酎粕を用いたほかは、実施例1と同様の方法により漬け床を調製し、シイラを加工し、その切り身を漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕とは異なる麦焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0045】
実施例6
芋焼酎の蒸留粕60質量%、米麹(黒麹)10質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩2質量%、みりん15質量%及び砂糖13質量%を混合し、漬け床とした。そして、実施例1と同様の方法により、シイラを加工し、その切り身を前記漬け床に漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と黒麹のクエン酸に由来するさわやかな風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0046】
試験例1
実施例1において、漬け床に1日間漬け込んだシイラ切り身中の成分の変化を調べた。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果からも明らかなように、本発明の漬け床に漬け込むことによって、旨み成分又は機能性成分として知られているGABA、グルタミン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等の遊離アミノ酸が増加していることがわかる。
【0049】
試験例2
麹の添加効果を調べるため、実施例1よりも単純な方法で試験を行った。すなわち、芋焼酎粕88.5質量%、米麹10質量%、塩1.5質量%で作成した漬け床と、芋焼酎粕98.5質量%、塩1.5質量%で作成した漬け床の2種類を用意し、これにシイラを漬け込み、室温で1週間置いた後のシイラ切り身中の成分の変化を調べた。ここでは麹の添加効果を明らかにするため、あえてみりんと砂糖を添加しなかった。その結果を表2に示す。なお、表2には、麹を添加しない場合(中欄)及び麹を添加することにより芋焼酎粕を発酵させた場合(右欄)を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果からも明らかなように、本発明の漬け床に漬け込むことによって、旨み成分又は機能性成分として知られているグルタミン酸、アラニン、バリン等の遊離アミノ酸が増加していることがわかる。特に、麹を添加することにより芋焼酎粕を発酵させた場合は、その増加がより顕著に発現されることがわかる。
【0052】
試験例3
芋焼酎粕88.5質量%、米麹10質量%、塩1.5質量%を混合した漬け床1と、芋焼酎粕98.5質量%と塩1.5質量%を混合した漬け床2とを調製し、両者を比較した。両者を調製後、冷暗所に同じ条件で静置したところ、5日目に漬け床2では腐敗臭が感じられたが、漬け床1では腐敗臭は感じられなかった。このことから、麹を添加することにより、漬け床の腐敗を遅延させる効果があることも判明した。
【0053】
参考例1
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ0.5質量部及び10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。
【0054】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、それぞれ5℃、15℃、25℃、35℃及び45℃とした。静置直後、2時間後、5時間後、24時間後及び48時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0055】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0056】
得られた処理物中におけるGABA、グルコース、アンモニア態窒素、及びトレハロースの含有量を下記(1)〜(4)の方法により確認した。
【0057】
(1)方法1
GABAの含有量については、全自動アミノ酸分析機(日本電子(株)製、JOEL-500/v)を用いて測定した。
【0058】
結果を図1に示す。
【0059】
なお、GABAの含有量が、前記処理物100g中、15mg以上の場合、漬け床に接触させる食材に、GABAを好適に添加できる。
【0060】
(2)方法2
グルコースの含有量については、市販の測定キット(商品名「グルコースCII-テストワコー」和光純薬工業(株)製)を使用して測定した。
【0061】
結果を図2に示す。
【0062】
(3)方法3
アンモニア態窒素の含有量については、インドフェノール法により測定した。具体的には、前記処理物をフェノール-ニトロプルシッドナトリウム溶液と混和した後、アルカリ性次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加して生成したインドフェノール青の吸光度を分光光度計を用いて定量することにより測定した。
【0063】
結果を図3に示す。
【0064】
なお、アンモニア態窒素の含有量が、前記処理物100g中、1.5mg以下の場合、漬け床の腐敗を好適に回避できる。
【0065】
(4)方法4
前記処理物をアセトニトリルで希釈した後、該希釈物中のトレハロースの含有量を、示差屈折計を備えた高速液体クロマトグラフィー(カラム「NH2型カラム」、展開溶媒「アセトニトリル:水=3:1)を用いて定量した。
【0066】
結果を図4に示す。
【0067】
参考例2
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウムを、該芋焼酎粕100質量部に対し、0.2質量部添加し、さらに、米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、1質量部、5質量部、10質量部及び20質量部添加し、混合することにより5種類の混合物を得た。
【0068】
前記混合物をそれぞれインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、15℃とした。24時間静置させた後、得られた再発酵物3gを採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0069】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0070】
得られた処理物中におけるGABA及びアンモニア態窒素の含有量を上記(1)及び(3)の方法により確認した。
【0071】
結果を図5及び図6に示す。
【0072】
参考例3
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ5質量部及び10質量部添加し、さらに、PLPを500μM添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。前記PLPは、下記参考例6及び7で使用する魚類の身及び肝臓の代替物質として使用した。
【0073】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、それぞれ5℃、15℃、25℃、35℃、45℃及び55℃とした。静置直後、5時間後、24時間後、48時間後及び72時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0074】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0075】
得られた処理物中におけるGABA、アンモニア態窒素及びトレハロースの含有量を上記(1)、(3)及び(4)の方法により確認した。
【0076】
結果を図7、図8及び図9に示す。
【0077】
参考例4
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び平均粒径が500μmの粉体状の米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ0.25質量部及び10質量部添加し、さらに、PLPを500μM添加し、混合することにより混合物を得た。前記PLPは、下記参考例6及び7で使用する魚類の身及び肝臓の代替物質として使用した。
【0078】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、25℃とした。24時間静置させた後、得られた再発酵物3gを採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0079】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0080】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0081】
なお、1)粉砕した米麹の代わりに未粉砕の米麹を使用した以外は、上記と同様の方法により作製した混合物、2)PLPを添加しない以外は、上記と同様の方法により作製した混合物、及び、3)粉砕した米麹の代わりに未粉砕の米麹を使用し、さらに、PLPを添加しない以外は、上記と同様の方法により作製した混合物についても、上記と同様の方法によりGABAの含有量を確認した。
【0082】
結果を図10に示す。
【0083】
参考例5
米麹(黄麹)を、麹菌の活動の至適温度帯である35℃で39時間静置させることにより、活性化せた。
【0084】
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び活性化 させた米麹を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ0.2質量部及び10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。
【0085】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、25℃とした。24時間静置させた後、得られた再発酵物3gを採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0086】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0087】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0088】
なお、活性化させた米麹の代わりに、活性化させていない米麹を使用した以外は、上記と同様の方法により作製した混合物についても、上記と同様の方法によりGABAの含有量を確認した。
【0089】
結果を図11に示す。
【0090】
参考例6
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及びシイラの身を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ5質量部及び100質量部添加した後、米麹(黄麹)を該芋焼酎粕100質量部に対し10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。
【0091】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、45℃とした。0.5時間後、1時間後、2時間後、5時間後及び24時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0092】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0093】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0094】
結果を図12に示す。
【0095】
参考例7
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及びカンパチの肝臓を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ5質量部及び20質量部添加した後、米麹(黄麹)を該芋焼酎粕100質量部に対し10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。
【0096】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、45℃とした。静置直後、5時間後、24時間後、48時間後及び72時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0097】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0098】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0099】
結果を図13に示す。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、参考例1における静置温度別GABA含有量の経時変化を示す。
【図2】図2は、参考例1における静置温度別グルコース含有量の経時変化を示す。
【図3】図3は、参考例1における静置温度別アンモニア態窒素含有量の経時変化を示す。
【図4】図4は、参考例1における静置温度別トレハロース含有量の経時変化を示す。
【図5】図5は、参考例2における米麹添加量別のGABAの含有量を示す。
【図6】図6は、参考例2における米麹添加量別のアンモニア態窒素の含有量を示す。
【図7】図7は、参考例3における静置温度別GABA含有量の経時変化を示す。
【図8】図8は、参考例3における静置温度別アンモニア態窒素含有量の経時変化を示す。
【図9】図9は、参考例3における静置温度別トレハロース含有量の経時変化を示す。
【図10】図10は、参考例4における混合物中のGABA含有量を示す。
【図11】図11は、参考例5における混合物中のGABA含有量を示す。
【図12】図12は、参考例6における混合物中のGABA含有量を示す。
【図13】図13は、参考例7における混合物中のGABA含有量を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎の蒸留粕と麹を含む食品加工用漬け床及び該漬け床を用いて得られる漬物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品加工方法の一つとして知られている粕漬けは、日本酒の搾り粕である酒粕を原料として用いたものが良く知られている(例えば特許文献1)。また、魚介類を用いた粕漬けについても、その原料として用いられるものは酒粕である(特許文献2〜3、非特許文献1等)。
【0003】
一方、焼酎の蒸留粕(焼酎粕)を利用した食品として、飲料、甘味料のほか、機能性食品が提案されている(例えば特許文献4〜6)。また、焼酎粕は、血圧降下作用、ガン細胞抑制作用を有することのほか、GABA等の高機能性物質の存在が知られている(例えば特許文献5、7、8等)。
【0004】
しかしながら、従来より、酒粕は食品として扱われていたが、焼酎粕は廃棄されていた。焼酎粕が廃棄される理由としては、1)焼酎粕の9割以上が水分であり、運搬や保管にコストがかかること、2)雑菌が増えやすく、腐敗しやすいこと等が挙げられる。
【特許文献1】特開2006−223214
【特許文献2】特開2000−245335
【特許文献3】特開平10−117738
【特許文献4】特開2006−136343
【特許文献5】特開2006−94713
【特許文献6】特開2005−304379
【特許文献7】特開2004−352681
【特許文献8】特開2004−290114
【非特許文献1】全国水産加工品総覧、光琳(株)、2005年、pp.407−409
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、焼酎の蒸留粕の利用が種々提案されているが、利用方法が限られており、さらなる利用方法の開発が切望されている。
【0006】
また、魚介類等一次生産物の更なる需要拡大のためにはこれまでにない加工食品の開発が望まれている。
【0007】
従って、本発明の主な目的は、焼酎の蒸留粕を食品加工用として有効に利用した、これまでにない加工食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む漬け床が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、下記の食品加工用漬け床及び漬物に係る。
1. 1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む、食品加工用漬け床。
2. 前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む、上記項1に記載の食品加工用漬け床。
3. 魚類の身及び/又は魚類の肝臓をさらに含む、上記項1又は2に記載の食品加工用漬け床。
4. 食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種をさらに含む、上記項1〜3のいずれかに記載の食品加工用漬け床。
5. 上記項1〜4のいずれかに記載の漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる漬け物。
6. 前記食材が、魚介類、肉類又は野菜類である、上記項5に記載の漬け物。
7. 加工食品を製造する方法であって、上記項1〜4のいずれかに記載の漬け床に食材の一部又は全体を接触させた後、保持する工程を含むことを特徴とする加工食品の製造方法。
8. 食材として、魚介類又はその切り身を用いる、上記項7に記載の製造方法。
9. 魚介類又はその切り身が、前記接触に先立って、予め塩水に浸漬することにより脱水処理が施されたものである、上記項8に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、焼酎の蒸留粕(焼酎粕)を漬け床として利用するので、これまでにない独特の風味をもつ加工食品を提供することができる。一方、焼酎粕は、産業廃棄物であることからその廃棄方法の検討、廃棄場所の確保等が必要とされているが、本発明によりその有効利用が可能となり、環境問題の改善にも寄与することができる。
【0011】
また、例えばシイラに代表される多獲性魚類は、魚価の暴落を阻止するために一般的には冷凍保管し、出荷調整することが望ましいが、冷凍保管した魚肉は解凍時の離水等により品質低下が起こるため、刺身商材はもとより加熱加工商材としても敬遠されがちである。この点、本発明によれば、冷凍しなくても比較的長期間保存することができるだけでなく、風味も良好な食材を提供することができるので、食材の安定供給にも貢献することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、コウジカビを用いて調製した麹により焼酎の蒸留粕を再発酵させることにより食材(魚肉等)の有用成分(特に旨味成分及び機能性成分)を増加させることができるので、嗜好性と栄養価の高い食材を提供することが可能となる。
【0013】
具体的に、焼酎粕は酒粕よりも、カリウム等のミネラル成分、ビタミンB、ビタミンE等のビタミン類、ポリフェノール類等が多く含まれている。特に、ビタミンEやポリフェノールには脂質酸化抑制効果があるので、焼酎粕を、脂質を多く含む畜肉、水産物等の食品の加工に用いることにより、該食品の脂質酸化を好適に抑制できる。
【0014】
また、焼酎粕には基本的にトレハロースが含まれている。トレハロースには食感改善効果があるので、漬け床に漬け込んだ食品にトレハロースを浸透させることにより、食品の食感を改善できる。
【0015】
本発明において、コウジカビを用いて調製した麹により焼酎粕を再発酵させることにより、漬け床が腐敗臭を発することなく焼酎粕単独よりも長期間維持できるので、加工食品の漬け床としてより適していると言える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
漬け床
本発明の漬け床は、1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む食品加工用漬け床である。前記蒸留粕及び前記麹を同時に含有するため、本発明の漬け床は、前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む。
【0017】
適用できる焼酎の種類としては限定的でなく、例えば芋焼酎、麦焼酎、米焼酎、そば焼酎、栗焼酎等のさまざまな種類の焼酎の蒸留粕を採用することができる。前記蒸留粕は、焼酎を製造する際に副生する粕である。
【0018】
前記麹を用いて前記蒸留粕を発酵させることにより、漬け床の腐敗の進行を抑制ないしは防止することができる。また、前記麹を用いて前記蒸留粕を発酵させることにより、食材の有用成分(例えば、GABA、グルタミン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン等の遊離アミノ酸)の増加を促進することもできる。
【0019】
前記コウジカビとしては、アスペルギルス属及びモナスカス属の少なくとも1種が好ましい。前記麹としては、例えば米麹、麦麹等を用いることができる。これらは一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。また、前記麹は、胞子の種類によって、黄麹、黒麹、白麹等に分類されるが、本発明においては、これらを一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。麹の添加量は、特に制限されないが、一般的には蒸留粕100質量部に対して3〜50質量部程度、好ましくは7〜50質量部程度、より好ましくは10〜20質量部程度である。
【0020】
前記麹として、粉砕された麹を用いてもよい。粉砕された麹を添加することにより、漬け床中のGABA等の含有量を増加させることができる。また、漬け床から取り出した食品(例えば漬け物)の外観が良好になる。すなわち、未粉砕の麹は、その大きさが、通常、米粒程度であるため、漬け床から取り出したに食品に米粒大の麹が付着し、該食品の外観が悪くなるという問題があるが、予め麹を粉砕しておくことにより、該問題を好適に回避できる。
【0021】
粉砕された麹としては、例えば、粉体状、鱗片状等の麹が挙げられる。前記麹が粉体状である場合、平均粒径は100〜1,000μm程度が好ましい。
【0022】
また、前記麹として、麹菌種毎の至適温度で活性化 させた麹を用いてもよい。活性化させた麹を添加することにより、麹菌の持つグルタミン酸脱炭酸酵素が増加又は活性化し、漬け床中のGABA等の含有量を増加させることができる。麹を活性化させる際の温度は、黄麹菌では20〜35℃程度が好ましい。活性化時間は、24〜48時間程度が好ましい。
【0023】
本発明の漬け床には、必要に応じて、魚類の身が含まれていてもよい。前記身を含有させることにより、該身に含まれるビタミンB6の一形態であるピリドキサール-5’-リン酸(以下、「PLP」と略記する)が漬け床中に溶出し、該PLPがGABA生成酵素の補酵素として働くことにより、漬け床中のGABAの含有量を向上させることができる。前記魚類としては、特に限定されず、例えば、シイラ、カンパチ、ブリ、タイ類、マグロ類等が挙げられる。これらの魚類の身は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。前記身の添加量は、前記蒸留粕100質量に対して、10〜100質量部が好ましい。
【0024】
本発明の漬け床には、必要に応じて、魚類の肝臓が含まれていてもよい。前記肝臓を含有させることにより、肝臓中に含まれるビタミンB6の一形態であるPLP溶出し、該PLPがGABA生成酵素の補酵素として働くことにより、漬け床中のGABAの含有量を向上させることができる。前記魚類としては、特に限定されず、例えば、シイラ、カンパチ、ブリ、タイ類、マグロ類等が挙げられる。これらの魚類の肝臓は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。前記肝臓の添加量は、前記蒸留粕100質量に対して、10〜20質量部が好ましい。
【0025】
本発明の漬け床には、必要に応じて各種の調味料等が含まれていても良い。例えば、食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種を用いることができる。これらの配合割合は、目的とする風味、用いる食材の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0026】
漬け床の調製
本発明の漬け床は、前記各成分を均一に混合することによって得ることができる。その混合順序は制限されないが、特に、前記焼酎粕に前記麹を配合することにより、該焼酎粕を発酵させた後、食塩、砂糖、みりん等を添加することが好ましい。これにより、麹の作用で有用成分を優先的に増加させた後、所望の味に調えることができる。前記身および前記肝臓は、前記焼酎粕を発酵させる前に配合することが好ましい。
【0027】
特に、本発明の漬け床を調製する際、前記蒸留粕に前記麹を添加した後、得られた混合物を静置させておくことが望ましい。
【0028】
静置させる際、静置温度を適宜設定することにより、漬け床に含まれる有効成分の量を調整できる。例えば、静置温度を15℃以上、好ましくは15〜35℃に設定した場合、漬け床中のGABA、グルコース等の含有量を好適に増加させることができる。また、静置温度を15℃以下、好ましくは5℃以下に設定した場合、漬け床中のトレハロースの含有量を好適に維持することができる。
【0029】
静置時間は、特に限定されないが、5時間以上が好ましく、24時間以上がより好ましく、24〜30時間がさらに好ましい。静置時間を5時間以上とすることにより、漬け床中に含まれるGABA、グルコース等を好適に増加させることができる。また、静置時間を30時間以下とすることにより、腐敗の原因となるアンモニア態窒素の生成を好適に抑制又は防止できる。
【0030】
漬け物
本発明の漬け物は、前記漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる。
【0031】
前記食材は、前記漬け床から露出しないように前記漬け床に漬けてもよいし、一部が露出した状態で前記漬け床に漬けてもよい。
【0032】
本発明の漬け床の使用に際しては、公知の漬け床と同様の方法により使用すれば良い。例えば、1)漬け床に食材を浸す方法(漬け床が液体状である場合も含む。)、2)容器の底部に漬け床を敷き詰め、その上に食材を置き、さらにその上から漬け床で覆う方法、3)食材の上から漬け床を塗布する方法等のいずれの方法であっても良い。
【0033】
食材としては、特に限定されず、公知の粕漬け、味噌漬け等で適用されている材料と同様のものを使用することができる。例えば、シイラ、カンパチ、ブリ、タイ類、マグロ類等の魚介類;牛肉、豚肉、鶏肉等の肉類;ダイコン、ニンジン、キュウリ等の野菜類等が挙げられる。食材として魚介類を用いる場合には切り身を好適に用いることもできる。
【0034】
前記漬け床に前記食材を接触させた後、その漬け床を、例えば、冷暗所で所定時間保持することにより本発明の漬け物が得られる。
【0035】
本発明の漬け物は、特に、旨味成分及び機能性成分を多く含む。従って、本発明の漬け物は、嗜好性に優れ、且つ、栄養価が高い。
【0036】
また、本発明の漬け物は、通常、トレハロースを含む。トレハロースには食感改善効果があるので、本発明の漬け物は、食感がよい。
【実施例】
【0037】
以下に実施例及び参考例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例及び参考例に限定されない。
【0038】
なお、実施例及び参考例にて使用する米麹は、コウジカビを用いて調製した米麹である。
【0039】
実施例1
芋焼酎の蒸留粕58.4質量%、米麹(黄麹)8.8質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩1.5質量%、みりん19.5質量%及び砂糖11.8質量%を混合し、漬け床とした。食材としてシイラを用いた。シイラは皮付きの状態でフィレー加工後、厚さ1〜2cmにそぎ切りし、これを濃度10質量%の冷食塩水に入れ、冷暗所で1時間漬け込んで脱水した。シイラの切り身を上記食塩水から取り出し、水分を切った後、質量で4倍量の漬け床に入れ、冷暗所で1日間漬け込んだ。
【0040】
漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。モニター10人による試食結果では、特に魚臭さが無く、風味も新しく美味しいとの評価を得た。
【0041】
実施例2
芋焼酎の蒸留粕50質量%、米麹(黄麹)20質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩2質量%、みりん15質量%及び砂糖13質量%を混合し、漬け床とした。シイラの代わりに養殖マダイを用いたほかは、実施例1と同様の方法により前記マダイを加工し、漬け込んだ。加工食品を製造した。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0042】
実施例3
実施例1と同様の方法により漬け床を調製した。食材として大根を用い、実施例1と同様の方法で漬け込んだ。漬け床から大根をとりだした後、大根に付着した漬け床をぬぐい落とし、そのまま一口大に切って食した。漬け込んだ大根は、芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特な風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0043】
実施例4
実施例1と同様の方法により漬け床を調製した。食材として鶏肉を用い、実施例1と同様の方法により鶏肉を加工し、漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0044】
実施例5
芋焼酎粕の代わりに麦焼酎粕を用いたほかは、実施例1と同様の方法により漬け床を調製し、シイラを加工し、その切り身を漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕とは異なる麦焼酎粕と麹の風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0045】
実施例6
芋焼酎の蒸留粕60質量%、米麹(黒麹)10質量%を混合し、冷暗所に5日間放置することにより基礎漬け床を得た。この基礎漬け床に食塩2質量%、みりん15質量%及び砂糖13質量%を混合し、漬け床とした。そして、実施例1と同様の方法により、シイラを加工し、その切り身を前記漬け床に漬け込んだ。漬け床から切り身を取り出した後、オーブンで切り身を焼いた。焼き上がった切り身は芋焼酎粕と黒麹のクエン酸に由来するさわやかな風味が十分に発揮され、これまでにない独特かつ香ばしい風味を有しており、その味も良好なものであった。
【0046】
試験例1
実施例1において、漬け床に1日間漬け込んだシイラ切り身中の成分の変化を調べた。その結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
表1の結果からも明らかなように、本発明の漬け床に漬け込むことによって、旨み成分又は機能性成分として知られているGABA、グルタミン酸、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等の遊離アミノ酸が増加していることがわかる。
【0049】
試験例2
麹の添加効果を調べるため、実施例1よりも単純な方法で試験を行った。すなわち、芋焼酎粕88.5質量%、米麹10質量%、塩1.5質量%で作成した漬け床と、芋焼酎粕98.5質量%、塩1.5質量%で作成した漬け床の2種類を用意し、これにシイラを漬け込み、室温で1週間置いた後のシイラ切り身中の成分の変化を調べた。ここでは麹の添加効果を明らかにするため、あえてみりんと砂糖を添加しなかった。その結果を表2に示す。なお、表2には、麹を添加しない場合(中欄)及び麹を添加することにより芋焼酎粕を発酵させた場合(右欄)を示す。
【0050】
【表2】
【0051】
表2の結果からも明らかなように、本発明の漬け床に漬け込むことによって、旨み成分又は機能性成分として知られているグルタミン酸、アラニン、バリン等の遊離アミノ酸が増加していることがわかる。特に、麹を添加することにより芋焼酎粕を発酵させた場合は、その増加がより顕著に発現されることがわかる。
【0052】
試験例3
芋焼酎粕88.5質量%、米麹10質量%、塩1.5質量%を混合した漬け床1と、芋焼酎粕98.5質量%と塩1.5質量%を混合した漬け床2とを調製し、両者を比較した。両者を調製後、冷暗所に同じ条件で静置したところ、5日目に漬け床2では腐敗臭が感じられたが、漬け床1では腐敗臭は感じられなかった。このことから、麹を添加することにより、漬け床の腐敗を遅延させる効果があることも判明した。
【0053】
参考例1
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ0.5質量部及び10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。
【0054】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、それぞれ5℃、15℃、25℃、35℃及び45℃とした。静置直後、2時間後、5時間後、24時間後及び48時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0055】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0056】
得られた処理物中におけるGABA、グルコース、アンモニア態窒素、及びトレハロースの含有量を下記(1)〜(4)の方法により確認した。
【0057】
(1)方法1
GABAの含有量については、全自動アミノ酸分析機(日本電子(株)製、JOEL-500/v)を用いて測定した。
【0058】
結果を図1に示す。
【0059】
なお、GABAの含有量が、前記処理物100g中、15mg以上の場合、漬け床に接触させる食材に、GABAを好適に添加できる。
【0060】
(2)方法2
グルコースの含有量については、市販の測定キット(商品名「グルコースCII-テストワコー」和光純薬工業(株)製)を使用して測定した。
【0061】
結果を図2に示す。
【0062】
(3)方法3
アンモニア態窒素の含有量については、インドフェノール法により測定した。具体的には、前記処理物をフェノール-ニトロプルシッドナトリウム溶液と混和した後、アルカリ性次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加して生成したインドフェノール青の吸光度を分光光度計を用いて定量することにより測定した。
【0063】
結果を図3に示す。
【0064】
なお、アンモニア態窒素の含有量が、前記処理物100g中、1.5mg以下の場合、漬け床の腐敗を好適に回避できる。
【0065】
(4)方法4
前記処理物をアセトニトリルで希釈した後、該希釈物中のトレハロースの含有量を、示差屈折計を備えた高速液体クロマトグラフィー(カラム「NH2型カラム」、展開溶媒「アセトニトリル:水=3:1)を用いて定量した。
【0066】
結果を図4に示す。
【0067】
参考例2
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウムを、該芋焼酎粕100質量部に対し、0.2質量部添加し、さらに、米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、1質量部、5質量部、10質量部及び20質量部添加し、混合することにより5種類の混合物を得た。
【0068】
前記混合物をそれぞれインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、15℃とした。24時間静置させた後、得られた再発酵物3gを採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0069】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0070】
得られた処理物中におけるGABA及びアンモニア態窒素の含有量を上記(1)及び(3)の方法により確認した。
【0071】
結果を図5及び図6に示す。
【0072】
参考例3
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ5質量部及び10質量部添加し、さらに、PLPを500μM添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。前記PLPは、下記参考例6及び7で使用する魚類の身及び肝臓の代替物質として使用した。
【0073】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、それぞれ5℃、15℃、25℃、35℃、45℃及び55℃とした。静置直後、5時間後、24時間後、48時間後及び72時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0074】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0075】
得られた処理物中におけるGABA、アンモニア態窒素及びトレハロースの含有量を上記(1)、(3)及び(4)の方法により確認した。
【0076】
結果を図7、図8及び図9に示す。
【0077】
参考例4
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び平均粒径が500μmの粉体状の米麹(黄麹)を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ0.25質量部及び10質量部添加し、さらに、PLPを500μM添加し、混合することにより混合物を得た。前記PLPは、下記参考例6及び7で使用する魚類の身及び肝臓の代替物質として使用した。
【0078】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、25℃とした。24時間静置させた後、得られた再発酵物3gを採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0079】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0080】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0081】
なお、1)粉砕した米麹の代わりに未粉砕の米麹を使用した以外は、上記と同様の方法により作製した混合物、2)PLPを添加しない以外は、上記と同様の方法により作製した混合物、及び、3)粉砕した米麹の代わりに未粉砕の米麹を使用し、さらに、PLPを添加しない以外は、上記と同様の方法により作製した混合物についても、上記と同様の方法によりGABAの含有量を確認した。
【0082】
結果を図10に示す。
【0083】
参考例5
米麹(黄麹)を、麹菌の活動の至適温度帯である35℃で39時間静置させることにより、活性化せた。
【0084】
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及び活性化 させた米麹を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ0.2質量部及び10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。
【0085】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、25℃とした。24時間静置させた後、得られた再発酵物3gを採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0086】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0087】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0088】
なお、活性化させた米麹の代わりに、活性化させていない米麹を使用した以外は、上記と同様の方法により作製した混合物についても、上記と同様の方法によりGABAの含有量を確認した。
【0089】
結果を図11に示す。
【0090】
参考例6
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及びシイラの身を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ5質量部及び100質量部添加した後、米麹(黄麹)を該芋焼酎粕100質量部に対し10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。
【0091】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、45℃とした。0.5時間後、1時間後、2時間後、5時間後及び24時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0092】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0093】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0094】
結果を図12に示す。
【0095】
参考例7
芋焼酎粕50gに、グルタミン酸ナトリウム及びカンパチの肝臓を、該芋焼酎粕100質量部に対し、それぞれ5質量部及び20質量部添加した後、米麹(黄麹)を該芋焼酎粕100質量部に対し10質量部添加し、混合することにより混合物を得た。前記混合物は、試験区の数だけ調製した。
【0096】
前記混合物をインキュベーターに静置させることにより再発酵させた。静置温度は、45℃とした。静置直後、5時間後、24時間後、48時間後及び72時間後に、それぞれ3gずつ再発酵物を採取し、速やかに2%スルホサリチル酸3mLを該再発酵物に添加して酵素反応を停止させた。
【0097】
次いで、5000Gで15分間遠心分離処理を行った後、上澄み液を2mL採取し、該上澄み液に蒸留水2mL及び0.04N塩酸4mLを添加して混合することにより除タンパク処理を施した。
【0098】
得られた処理物中におけるGABAの含有量を上記(1)の方法により確認した。
【0099】
結果を図13に示す。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、参考例1における静置温度別GABA含有量の経時変化を示す。
【図2】図2は、参考例1における静置温度別グルコース含有量の経時変化を示す。
【図3】図3は、参考例1における静置温度別アンモニア態窒素含有量の経時変化を示す。
【図4】図4は、参考例1における静置温度別トレハロース含有量の経時変化を示す。
【図5】図5は、参考例2における米麹添加量別のGABAの含有量を示す。
【図6】図6は、参考例2における米麹添加量別のアンモニア態窒素の含有量を示す。
【図7】図7は、参考例3における静置温度別GABA含有量の経時変化を示す。
【図8】図8は、参考例3における静置温度別アンモニア態窒素含有量の経時変化を示す。
【図9】図9は、参考例3における静置温度別トレハロース含有量の経時変化を示す。
【図10】図10は、参考例4における混合物中のGABA含有量を示す。
【図11】図11は、参考例5における混合物中のGABA含有量を示す。
【図12】図12は、参考例6における混合物中のGABA含有量を示す。
【図13】図13は、参考例7における混合物中のGABA含有量を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む、食品加工用漬け床。
【請求項2】
前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む、請求項1に記載の食品加工用漬け床。
【請求項3】
魚類の身及び/又は魚類の肝臓をさらに含む、請求項1又は2に記載の食品加工用漬け床。
【請求項4】
食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の食品加工用漬け床。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる漬け物。
【請求項6】
前記食材が、魚介類、肉類又は野菜類である、請求項5に記載の漬け物。
【請求項1】
1)焼酎の蒸留粕及び2)コウジカビを用いて調製した麹を含む、食品加工用漬け床。
【請求項2】
前記麹により発酵させた焼酎の蒸留粕を含む、請求項1に記載の食品加工用漬け床。
【請求項3】
魚類の身及び/又は魚類の肝臓をさらに含む、請求項1又は2に記載の食品加工用漬け床。
【請求項4】
食塩、砂糖及びみりんの少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の食品加工用漬け床。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の漬け床に食材の少なくとも一部を接触させた後、保持することにより得られる漬け物。
【請求項6】
前記食材が、魚介類、肉類又は野菜類である、請求項5に記載の漬け物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−278882(P2008−278882A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95550(P2008−95550)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(391011700)宮崎県 (63)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(391011700)宮崎県 (63)
【Fターム(参考)】
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