説明

焼酎蒸留粕の処理方法及び焼酎蒸留粕の処理装置

【課題】焼酎蒸留粕は、水分が多く、BODが高く、固液分離がやや困難で腐敗し易い特徴があり、生産規模も様々であって、多額な設備投資が困難な中小企業が多いことから、多額の投資を必要とせず、しかも効率的な処理方法と処理装置を開発する。
【解決手段】焼酎蒸留粕を、固液分離機で固体分と液体分に分離し、固体分は発酵槽に送って麹菌を加え、減量化と液化をはかるとともに、液体分は貯留槽に送り乳酸菌を加えて腐敗と悪臭の発生を抑え、マイクロバブルを送気して有機物を分解又は浮上分離させ、さらに炭酸カルシウム,木炭,石炭灰及び珪石などの濾過材を通して浄化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼酎蒸留粕の処理方法及び焼酎蒸留粕の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼酎蒸留粕の発生量は熊本国税局管内(鹿児島県,宮崎県,熊本県,大分県)において平成15酒造年度約60万トンと発表され、焼酎生産量約40万klに対し、およそ1.5倍となっている。
【0003】
【表1】

【0004】
表1に、鹿児島県における焼酎蒸留粕の処理状況を示したが平成16酒造年度において、海洋投入が37%となっている。
また、その他プラント処理(不明も含む)41%があるが、この中に農地還元も含まれていて、畑地等に焼酎蒸留粕を散布あるいは埋設する場合、不適切に行うと悪臭の発生や地下水の汚染をもたらすおそれがあり、今後規制が強化されることが予想される。
ところが、廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染防止に関するロンドン条約に基いて海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律の一部が改正され、海洋投入が厳しく規制されることになり、海洋投入にかわる新しい処理方法の開発が期待されている。
【0005】
【表2】

【0006】
【表3】

【0007】
表2及び表3に焼酎蒸留粕の成分の1例を示した。原料や製造工程の差異で数値も異なるが、その主な特徴として水分が多く(88〜95%)、BODが高く(122,000〜30,000mg/L)、固液分離がやや困難で腐敗しやすいという問題がある。
また、焼酎の製造量や原料の種類に季節変動があり、生産規模も様々であって1律に対策が立て難いという問題がある。
【0008】
現在実施されている焼酎蒸留粕の処理方法で主なものをあげると麦焼酎蒸留粕をスクリュープレスにより固液分離し、固体分および液部をそれぞれ乾燥機により濃縮乾燥し、乾燥物は飼料として利用する方法が行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
また、焼酎蒸留粕をスクリューデカンター等で固液分離し、液部はメタン発酵装置でメタンガスを生成させ、消化液はさらに生物処理をして河川に放流する方法があり、固形部は飼料として利用する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
また、マイクロバブルが水質浄化と汚泥の減量に効果があることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−56784号公報
【特許文献2】特開2002−45120号公報
【非特許文献1】マイクロバブルを利用した水処理技術、環境浄化技術VOL4 No6、高橋正好著、日本工業出版株式会社発行、6p 2005年6月1日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
焼酎蒸留粕を処理するにあたって、まず問題は、固液分離であるが、スクリュープレスあるいはスクリューデカンター等で行う方法が実施されているが、設備投資が大となり、中小零細規模の企業には適用し難い。
また、メタン発酵と活性汚泥法による高濃度有機廃水の処理法も適用可能であるが、これも多額の設備投資を必要とする。
【0011】
そこで本発明は、多額の設備投資を必要とせず、しかも効果的な焼酎蒸留粕の処理方法及び処理装置を提供するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明の第一は、焼酎蒸留粕を処理するにあたり、
(1)焼酎蒸留粕を、固液分離機で固体分と液体分に分離する工程と、
(2)分離した固体分を発酵槽に送り麹菌を加えて発酵させ、固体分の減量化と液化をはかる工程と、
(3)固液分離機で分離した液体分を貯留槽に送り、乳酸菌を加えた後、マイクロバブルを送気して液体分中の有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させる工程と、
(4)発酵槽に残留した固体分を取り出し、肥料として出荷するか、または木質材料を加えて乾燥し、燃料として利用し、液体分は原料槽に返送する工程と、
(5)貯留槽で分離した浮上固体は、発酵槽に返送し、残った液体分は第1濾過槽に送る工程と、
(6)第1濾過槽で濾過した液体分を第1マイクロバブル破砕層に送り、マイクロバブルを送気して有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させ、分離した浮上固体は発酵槽に返送し、残った液体分は第2濾過槽に送る工程と、
(7)第2濾過槽で濾過した液体分を調整槽に入れ、空気を送って有機物を分解あるいは浮上分離及び沈降分離させ、分離した浮上固体は発酵槽に返送し、残った液体分は、第3濾過槽に送る工程と、
(8)第3濾過槽を通過した液体分を第2マイクロバブル破砕槽に送り、マイクロバブルを送気して有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させ、分離した浮上固体は発酵槽に返送し、残った液体分は、第4濾過槽、最終調整槽及び最終濾過槽を経て法流する工程、
以上各工程からなることを特徴とする焼酎蒸留粕の処理方法である。
また、貯留槽,第1マイクロバブル破砕槽,調整槽,及び第2マイクロバブル破砕槽で沈降分離した沈降汚泥は発酵槽に返送し、発酵させて分解または減量化を図る。
【0013】
前記(2)に記載された麹菌は特に限定するものではないが、通常その焼酎を製造する際使用された麹菌を用いることが望ましい。例えば、河内菌(Aspergillus awamori var.Kawachi)などの焼酎製造に広く用いられているものがあげられる。
【0014】
前記(3)に記載された乳酸菌は、ラクトバシルス,ビフィドバクテリウム,ストレプトコッカス,ラクトコッカス,ロイコノストック,ぺディコッカス等いずれの使用も可能である。
【0015】
前記(3)、(6)及び(8)記載のマイクロバブルは、通常直径が20〜60μmの微細気泡を言い、水と気体を種々な方法で攪拌することで作成することができる。
マイクロバブルは、有機廃水の浄化及び汚泥の減量化に効果があるとされ、本発明ではマイクロバブルの効果を積極的に利用しようとした。
【0016】
本発明の第2は、前記発酵槽において、固液分離機で分離した固体分を処理するにあたり、複数の発酵槽を設置し、第1段の発酵槽には、固液分離機で分離した固体分を投入するとともに、麹菌と、エタノール液,廃糖蜜液及び酢酸液を添加し発酵が行われるのが、第2段以下の発酵槽では前段の発酵槽で生じたもろみを種麹として利用することを特徴とする前記第1の発明の焼酎蒸留粕の処理方法である。
【0017】
本発明の第3は、前記第1乃至第4及び最終濾過槽において、濾過材として、炭酸カルシウム,木炭,石炭灰及び珪石の中から選ばれた1又は2以上を用いることを特徴とする本発明の第1又は第2記載の焼酎蒸留粕の処理方法である。
【0018】
通常、第1の濾過槽には、石炭灰,木炭,炭酸カルシウム及び珪石が濾材として使用され、第2の濾過槽には、珪石と石炭灰が用いられ、第3及び第4と最終濾過槽には珪石が使用される。
【0019】
本発明の第4は、前記濾過材として炭酸カルシウム,木炭,石炭灰及び珪石の中から選ばれた1又は2以上が用いられていることを特徴とする本発明第4又は第5記載の焼酎粕の処理方法である。
【0020】
1例として、第1濾過槽には、石炭灰,木炭,炭酸カルシウム及び珪石が濾材として用いられ、第2の濾過槽には珪石と石炭灰が使用され、第3及び第4と最終濾過槽には珪石が使用される。ただし、この組合せは状況により変動するので必ずしも限定するものではない。
【0021】
本発明の第5は、炭酸カルシウムはアラゴナイト質炭酸カルシウムであることを特徴とする本発明第1乃至第4のいずれか1項に記載の焼酎蒸留粕の処理方法である。カルサイト質の炭酸カルシウムは結晶質で表面が微密であるが、アラゴナイト質炭酸カルシウムは表面が多孔質で、その表面に微生物が繁殖し易く、有機質廃液処理に効果が期待できるからである。
【0022】
本発明の第6は、石炭灰がクリンカーアッシュであることを特徴とする本発明第4乃至7のいずれか1項記載の焼酎蒸留粕の処理方法である。
クリンカーアッシュは、フライアッシュと異なり、表面が多孔質であるため、その表面に微生物が繁殖し易く、有機質廃液の処理に効果が期待できるからである。
【0023】
本発明の第7は、珪石が多孔質の軟珪石であることを特徴とする本発明第1乃至第6のいずれか1項記載の焼酎蒸留粕の処理方法である。
表面が多孔質であるため、微生物がその表面に繁殖し易く有機質廃水のBOD成分の除去に効果が期待できるからである。
【0024】
本発明の第8は、固液分離機,発酵槽,貯留槽,マイクロバブル破砕槽及び調整槽のそれぞれが1又は2以上からなることを特徴とする焼酎粕の処理装置である。
【0025】
例えば、固液分離機1台に対し発酵槽10基,貯留槽3基,濾過槽5基,マイクロバブル破砕槽2基,及び調整槽2基の組合せがあげられる。しかし、この数に必ずしも限定するものではなく、状況によって増減することがある。
【0026】
本発明の第9は、前記固液分離機は、振動篩及びスクリュー圧搾筒を有することを特徴とする前項本発明第8に記載する焼酎蒸留粕の処理装置である。
【0027】
固体分と液体分を金網を用いた振動篩で分離し、金網上に残った固体分をスクリュー圧搾筒でさらに脱水しようとするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、比較的少ない設備投資と、少ない運転経費で効果的に多量のBOD成分を含む焼酎蒸留粕を処理することができる。
また、固液分離機で分離された固体分も発酵槽で麹菌を加えて発酵させることにより、著しく減量化され、その処分も容易となる。
【0029】
貯留槽で乳酸菌を添加することにより、腐敗が防止され、悪臭の発生がなくなる。また、マイクロバブルの作用及び炭酸カルシウム,木炭,石炭灰と珪石などの濾材の作用により十分に浄化された水を放流することが可能となる。
固液分離機101と、マイクロバブル104による破砕、浮上分離の組合せで液体中のBOD,SSを大幅に減少させ、沈降汚泥の量を従来方式の10〜20%にすることで処理を容易にしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図1のフローチャートに基いて説明する。
固液分離機101に原料槽100から焼酎蒸留粕が供給される。同時に貯留槽103で分離された沈殿固体も同様に固液分離機101に供給される。
固液分離機101で分離された固体と、貯留槽103及び第1マイクロバブル破砕槽106及び第2マイクロバブル破砕槽110及び調整槽108で浮上分離した浮上固体が発酵槽102に供給される。
なお、図1では省略したが、貯留槽103,第1マイクロバブル破砕槽106,調整槽108及び第2マイクロバブル破砕槽110で沈降分離された沈降汚泥は発酵槽102に返送される。
【0031】
発酵槽102では、麹菌及びエタノール液,廃糖蜜液及び酢酸液が添加され発酵が行われ、固体分の液化及び減量化が行われる。
残った固体分は取り出して肥料として利用するほか、木質材料を加えて乾燥し、燃料として利用し、液体分は原料槽100に返送される。
【0032】
貯留槽103では乳酸菌を添加して液体の腐敗を防止しつつ、マイクロバブルを送気して有機物を分解又は浮上分離させ、沈殿固体は固液分離機101に返送し、浮上固体は発酵槽102に返送する。
貯留槽103は、同形・同大の槽が少なくとも3槽設けられ、第1段の貯留槽103で1日間、固液分離機101から流出した液体を処理し、第1段の貯留槽103から流出した液体を第2段の貯留槽103でまた1日間処理し、第2段の貯留槽103から流出した液体を第3段の貯留槽103で1日間処理することで、3段の貯留槽103,103,103で計3日間の処理を行う。
【0033】
貯留槽103から流出した液体は第1濾過槽105を通過して第1マイクロバブル破砕槽106に入る。第1マイクロバブル破砕槽106ではマイクロバブルを送気して有機物を分解又は浮上分離及び沈降分離させ、浮上した固体は発酵槽102に返送し、残った液体は第2濾過槽107を経て調整槽108に送られる。
【0034】
調整槽108では、空気が送られ、好気性菌の増殖を促進して有機物の分解と浮上分離及び沈降分離をはかり、浮上した固体は発酵槽102に返送され、残った液体は、第3濾過槽109を経て第2マイクロバブル破砕槽110に送られる。第2マイクロバブル破砕槽110では、マイクロバブルを送気して有機物を分解又は浮上分離及び沈降分離させ、浮上した固体は発酵槽102に返送され、残った液体は、第4濾過槽111、最終調整槽112及び最終濾過槽113を経て放流される。
【0035】
図2(A)に固液分離機の側断面図を、また図2(B)に固液分離機のスクリュー圧搾部要部断面図を示した。
焼酎蒸留粕は、水分を多く含んだ状態で給入パイプ201から供給タンク200に給入され、金網204(40〜100メッシュ)の上に供給される。過剰に供給された分はオーバーフローパイプ202で流出する。金網204は振動モーター205で振動され、金網204上に残った粕は粕回収ホッパー209を経てスクリュー圧搾筒210に入り、スクリューコンベアー211により圧搾・脱水されつつ排出口219に送られ、圧搾済み粕固体220は発酵槽102に送られる。
【0036】
スクリューコンベアー211は、駆動モーター213の回転が、駆動スプロケット217、駆動チェーン212、従動スプロケット215を経て伝えられ、搾り粕は排出口219から排出され、発酵槽102に送られる。
【0037】
金網204を通過した液体分は、液回収ホッパー208に落下し、回収液出口218から貯留槽103に送られる。スクリューコンベアー211で搾り出された圧搾液は圧搾液回収皿221に溜り、圧搾液回収タンク222に送られる。
【0038】
圧搾液回収タンク222に溜った液体は液体ポンプ207により、回収液返送パイプ206から供給タンク200に返送される。
【0039】
図3は、発酵槽102の側断面図である。図3では4個の発酵槽タンク300が図示されているが、実際はこの数に限定されるものではない。
圧搾済み粕固体220が分岐管301を経て各発酵槽タンク300に供給され、第1段の発酵槽タンク300には種麹が添加されるが第2段以下の発酵槽タンク300には、前段の発酵槽タンク300のもろみが種麹として添加される。攪拌は攪拌棒302を用いて手動で行っているが、勿論、動力による攪拌棒を設置しても良い。
【0040】
図4に貯留槽103,第1マイクロバブル破砕槽106及び第2マイクロバブル破砕槽110の斜視図を示した。
固液分離機101,第1濾過槽105及び第3濾過槽から流出した液体分は配管401から槽内に流入が、空気配管402,402の先端に設けられたマイクロバブル発生器104,104で発生したマイクロバブルが液中に送気される。処理液は槽壁をオーバーフローして回収路403に流れ込むが、回収路403には多孔板404が設けられており、浮上固体406は回収されて発酵槽102に返送される。多孔板404通過した液体405は隣接する貯留槽103,第1濾過槽105,第2濾過槽107又は第4濾過槽111に送られる。
マイクロバブル発生器104,104は液面からの距離が異なるようにし、1個は液面から槽底迄の距離の1/3の深さとし、他は2/3の深さとするとよい。
回収路403は水平面に対し30℃の傾斜Aをつけて浮上固体及び液体が流出し易くしている。
【0041】
図5に各濾過槽の側断面図を示した。
図5(a)は、第1濾過槽の側断面図である。貯留槽103から流出した液体分は、ポンプ501により、循環パイプ502を通って濾過槽本体500の底部に供給される。槽内には、貝化石(炭酸カルシウム)508,層仕切506,木炭507,層仕切506,石炭灰505が積み重ねられており、液体分はこれらの層を通ってオーバーフロー部503からオーバーフロー循環パイプ504を通って槽外に自然流下で流出する。
槽底に設けられた返送用パイプ510は、槽底に沈殿した固体を固液分離機101に返送するためのパイプである。
図5(a)では省略されているが石炭灰層505の上に珪石511の層を設けることで効果がより向上する。
【0042】
図5(b)は、第2濾過槽の側断面図である。第1マイクロバブル破砕層106から流出した液体分は、循環パイプ502を経て槽底に供給される。濾過槽には石炭灰505と、珪石511が用いられている。流出部は第1濾過槽と同じ構造となっている。
【0043】
図5(c)は、第3濾過槽109と第4濾過槽111及び最終濾過槽113の側断面図である。濾過槽には珪石511のみが使用されている点が他の濾過槽と異なっているが、他の構造はほとんど同じである。
【0044】
調整槽108は、図4におけるマイクロバブル発生器104に替えて、活性汚泥法などで用いられる散気管が設けられている。
【0045】
本発明を実施するにあたって使用した石炭灰は、九州電力株式会社苓北発電所で発生したクリンカーアッシュを使用した。クリンカーアッシュは表面が多孔質で、汚染物質を吸着したり、あるいは微生物が表面に繁殖して汚染有機物質を分解又は除去できる可能性が大であると考えられたからである。
なお、表4にクリンカーアッシュの溶出試験の結果を示したが、水質汚染の心配は、ほとんどないものと考えられる。
【0046】
【表4】

【0047】
本発明において使用したアラゴナイト質炭酸カルシウムは、鹿児島県鹿児島市西佐多町に産出する吉田貝層(第4紀更新世中期ウルム期)として知られているもの(10万年〜40万年前の堆積鉱床)で、主に二枚貝等の貝が集まったものである。この貝化石は難溶性のカルシウムとは異なり、アラゴナイト系のカルシウムで非常に溶出し易く、かつ表面が多孔質であることが特徴である。
吉田貝化石の化学成分は表5に示すとおりである。
【0048】
【表5】

【0049】
本発明で使用した多孔質の軟珪石は、鹿児島県硫黄島産のものである。
多孔質であることは以下に示す電子顕微鏡写真で明らかである。
測定は、鹿児島県工業技術センターである。
分析装置は、走査電子顕微鏡(JSM−840)/日本電子株式会社製
観察条件/加速電圧=15KV,倍率3種類(300倍,1000倍,3000倍)
結果は、図6,図7A,図7B及び図8に示した。
【0050】
硫黄島珪石の化学分析の結果は、表6のとおりである。分析は、鹿児島県工業技術センターにおいて、蛍光X線分析法により行った。
【0051】
【表6】

【実施例1】
【0052】
発酵槽102における作業は以下のとおりである。
(1)種麹について、市販の麹菌を硬めに炊いた米(35〜40℃になった時点)にまぶし、約24時間経過したもろ味状態で使用する。米500gに麹菌約1〜3g添加する。
(2)初回種麹投入量について、固体分に対し1/500を目安にして投入する。種麹は、発酵槽に供給された固体分の表面に全面散布する。
(3)次に、エタノール液,廃糖蜜液及び酢酸液を添加して発酵を促進させる。
廃糖蜜液は、10倍希釈液を全体量の1/100
エタノール液(60度)は、全体量の1/100
酢酸液(0.1%)は、全体の1/100を目安とする。
(4)朝・夕2回攪拌(5分間)し、室温30〜35℃で4〜5日発酵させる。
(5)分離した液体部分は、固液分離機101に返送する。沈降した固体(もろみ)は次の発酵槽102に送り、種麹として再利用する。このとき固体:液体の比率は、およそ20:80となる。
なお、過剰となった固体は取り出して肥料として利用する。
【0053】
貯留槽103における液体分の滞留日数は、およそ3日間とする。乳酸菌を加えて、腐敗・悪臭の発生を抑制しつつ、マイクロバブルを送気して有機物の分解または浮上分離及び沈降分離を促進させる。
第1乃至第4(105,107,109,111)及び最終濾過槽113を含む各濾過槽における液体分の滞留日数はおよそ0.5日を目安とする。第1マイクロバブル破砕槽106及び調整槽108の液体分滞留日数はおよそ1日〜1.5日とする。第2マイクロバブル破砕槽は滞留日数2〜4日とする。最終調整槽112における液体分の滞留日数はおよそ1〜1.5日とする。
【0054】
表7に、BOD等の値について計画作製時の目論見値と実測値を記載した。
表7において、文献値とあるのは前記表2に記載した数値である。
【0055】
【表7】

【0056】
表7において、最終調整槽112,及び最終濾過槽113における水質分析結果は計画を上まわる良好の値となっており、本発明の焼酎蒸留粕の処理方法が優れた結果をもたらしたものと言える。
ただし、第1マイクロバブル破砕槽106,調整槽108,第2マイクロバブル破砕槽110における分析値は計画より不良となっており、また、日時により変動が大きいことがわかる。しかし、最終的には十分浄化された水が放流できていることから、最後に用いた濾過材である珪石の効果が大であったものと考えられる。
貯留槽103のBOD値が6月20日採取が32,000ppm、8月3日採取が78,000ppmとなっているのは、6月20日採取時では、浮上固体と沈降汚泥を除いた中層の透明部分を採取したのに対し、8月3日採取では全層を攪拌・混合したものを試料として採取したことが影響していると考えられる。
また、第2マイクロバブル破砕槽が、7月24日と8月3日でいずれもBOD15,000ppmとなっているのは、浮上固体,沈降汚泥の両者がマイクロバブルで攪拌・混合されている状態であるためと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の、焼酎蒸留粕の処理方法を示すフローチャートである。
【図2】(A)固液分離機の側断面図である。(B)スクリュー圧搾部要部断面図である。
【図3】発酵槽の側断面図である。
【図4】貯留槽,第1マイクロバブル破砕槽,第2マイクロバブル破砕槽の側断面図である。
【図5】(a),(b),(c)それぞれ濾過槽の側断面図である。
【図6】硫黄島珪石の電子顕微鏡写真である。(300倍)
【図7】(A)硫黄島珪石の電子顕微鏡写真である。(1000倍),(B)硫黄島珪石の電子顕微鏡写真である。(1000倍)
【図8】硫黄島珪石の電子顕微鏡写真である。(3000倍)
【符号の説明】
【0058】
100 原料槽
101 固液分離機
102 発酵槽
103 貯留槽
104 マイクロバブル発生器
105 第1濾過槽
106 第1マイクロバブル破砕槽
107 第2濾過槽
108 調整槽
109 第3濾過槽
110 第2マイクロバブル破砕槽
111 第4濾過槽
112 最終調整槽
113 最終濾過槽
200 供給タンク
201 給入パイプ
202 オーバーフローパイプ
203 架台
204 金網(40メッシュ)
205 振動モーター
206 回収液返送パイプ
207 液体ポンプ
208 液回収ホッパー
209 粕回収ホッパー
210 スクリュー圧搾筒
211 スクリューコンベアー
212 駆動チェーン
213 駆動モーター
214 金網枠
215 従動スプロケット
216 軸受
217 駆動スプロケット
218 回収液出口
219 排出口
220 圧搾済み粕固体
221 圧搾液回収皿
222 圧搾液回収タンク
300 発酵槽タンク
301 分岐管
302 攪拌棒
400 貯留槽タンク
401 配管
402 空気配管
403 回収路
404 多孔板
405 液体
406 浮上固体
500 濾過槽本体
501 ポンプ
502 循環パイプ
503 オーバーフロー部
504 オーバーフロー循環パイプ
505 石炭灰
506 層仕切
507 木炭
508 貝化石
509 バルブ
510 返送用パイプ
511 珪石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼酎蒸留粕を処理する方法であって、
(1)焼酎蒸留粕を、固液分離機で固体分と液体分とに分離する工程と、
(2)分離した固体分を発酵槽に送り、麹菌を加えて発酵させ、固体分の減量化と、液化をはかる工程と、
(3)固液分離機で分離した液体分を貯留槽に送り、乳酸菌を加えた後、マイクロバブルを送気して液体分中の有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させる工程と、
(4)発酵槽に残留した固体分を取り出し、肥料として出荷するほか、木質材料を加えて乾燥し燃料として利用し、液体分は原料槽に返送する工程と、
(5)貯留槽で分離した浮上固体は、発酵槽に返送し、残った液体分は第1濾過槽に送る工程と、
(6)第1濾過槽でろ過した液体分を第1マイクロバブル破砕槽に送り、マイクロバブルを送気して、有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させ、分離した浮上固体は発酵槽に返送し、残った液体分は第2濾過槽に送る工程と、
(7)第2濾過槽で濾過した液体分は調整槽に入れ、空気を送って有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させ、分離した浮上固体は発酵槽に返送し、残った液体分は第3濾過槽に送る工程と、
(8)第3濾過槽を通過した液体分を第2マイクロバブル破砕槽に送り、マイクロバブルを送気して有機物を分解または浮上分離及び沈降分離させ、分離した浮上固体は発酵槽に返送し、残った液体分は、第4濾過槽,最終調整槽及び最終濾過槽を経て放流する工程、
とからなることを特徴とする焼酎蒸留粕の処理方法。
【請求項2】
前記発酵槽において、固液分離機で分離した固体分を処理するにあたり、複数の発酵槽を設置し、第1段の発酵槽には、固液分離機で分離した固体分を投入するとともに、麹菌と、エタノール液、廃糖蜜液及び酢酸液を添加し発酵が行われるのが、第2段以下の発酵槽では前段の発酵槽で生じたもろみを種麹として利用することを特徴とする請求項1記載の焼酎蒸留粕の処理方法。
【請求項3】
前記第1乃至第4及び最終濾過槽において、濾過材として炭酸カルシウム,木炭,石炭灰及び珪石の中から選ばれた1又は2以上を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の焼酎蒸留粕の処理方法。
【請求項4】
前記濾過槽は、濾過材として炭酸カルシウム,木炭,石炭灰及び珪石の中から選ばれた1又は2以上が用いられることを特徴とする請求項1又は3記載の焼酎蒸留粕の処理方法。
【請求項5】
炭酸カルシウムはアラゴナイト質炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の焼酎粕の処理方法。
【請求項6】
石炭灰はクリンカーアッシュであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の焼酎蒸留粕の処理方法。
【請求項7】
珪石が多孔質の軟珪石であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の焼酎蒸留粕の処理方法。
【請求項8】
固液分離機,発酵槽,貯留槽,濾過槽,マイクロバブル破砕槽及び調整槽のそれぞれが1又は2以上からなることを特徴とする焼酎蒸留粕の処理装置。
【請求項9】
前記固液分離機は、振動篩及びスクリュー圧搾筒を有することを特徴とする請求項8記載の焼酎蒸留粕の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−126187(P2008−126187A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316526(P2006−316526)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(306027666)株式会社さい (1)
【Fターム(参考)】