説明

煙感知器

【課題】感知精度の低下を招くことなく、煙感知室の小型化,薄型化を達成でき、コンパクトで高感度な煙感知器を提供する。
【解決手段】この煙感知器は、発光素子8からの出射光を直接受光しない第1の受光素子13と、発光素子8からの出射光を直接受光する第2,第3の受光素子17,18を備える。第2の受光素子17は、受光面17Aが地面側とは反対側に向いているが、第3の受光素子18は、受光面18Aが地面側に向いている。受光面17Aは、受光面18Aに比べて、埃が堆積し易い。埃の堆積により受光面17Aが入射光量が減少しても、受光面18Aには埃が殆ど堆積せず入射光量が殆ど減少しない。よって、受光面17Aへの入射光量を表す第2の受光信号と受光面18Aへの入射光量を表す第3の受光信号とにより、煙による受光量の変動(信号成分)と埃による受光量の変動(雑音成分)とを判別することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、煙の濃度により変化する信号で煙の有無を感知して出力する煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、煙感知器としては、煙感知室外からの光入射を防止するために煙導入口から煙感知室内の間に設けられたラビリンス部と、上記煙感知室内に光を射出する発光素子と、この発光素子から射出されて上記煙感知室内で散乱した光を受光し受光量に応じた受光信号を出力する受光素子と、上記受光信号に基づいて煙の有無を判定する判定手段と、上記判定結果を通知する通知手段を有したものが開示されている(特許文献1(特開2009−229414号公報)参照)。
【0003】
一般的に、煙感知器において、発光素子が出射する光は指向性を有しており、受光素子は出射光の光軸上に位置していない。また、上記受光素子は、上記発光素子の光が直接に入射しないように配置されており、煙が無い、あるいは煙濃度が低い場合(すなわち、煙感知室内の光の散乱が少ない場合)には、受光素子への入射光は少なく、受光信号が表す受光量は少ない。
【0004】
一方、煙濃度が高い場合には、煙による光の散乱が発生し、受光素子への光入射が増加して受光信号が表す受光量が増加する。上記判定手段は、最新の受光信号S(now)と予め記憶した初期値S(ini)の差分、すなわち、受光信号の増加分dS={S(now)−S(ini)}を求めて、この差分(受光信号増加分dS)が予め記憶した判定レベルを超過した場合に煙有りと判定し、通知手段を通じて煙有りを通知する。
【0005】
このように、煙による散乱光が信号光となるが、煙以外の要因による散乱光の変動は雑音成分となる。例えば、使用開始からの時間の経過に応じて、煙感知室内の壁面へ埃が堆積するが、この壁面へ埃が堆積することによって上記壁面での反射光が変動する。この反射光の変動が上記雑音成分になる。
【0006】
そこで、従来、煙感知室内への埃の堆積による雑音成分を抑制するために、発光素子から射出された光が煙感知室内の鉛直方向の端面をなす壁面にできるだけ当たらない構造が取られてきた。例えば、煙感知器の煙感知室として、図5A〜図5Cに示される第1の構造や図6A〜図6Cに示される第2の構造が採用される。
【0007】
図5Aは、上記第1の構造の煙感知室101の設置時の姿勢を模式的に示す図である。また、図5Bは、上記第1の構造の煙感知室101を、この煙感知室101内の壁面P100と平行な平面で切断した様子を示す横断面図である。上記壁面P100は地面と反対側を向いている。また、図5Cは、上記第1の構造の煙感知室101を、上記壁面P100と直交すると共に煙感知室101の中心軸J100を通る平面で切断した様子を示す縦断面図である。なお、図5Cでは、図5Bに示したラビリンス部104は省略している。
【0008】
図5Bにおいて、103は発光素子、105は受光素子であり、図5B,図5Cにおいて、R100は、発光素子103が出射する光の出射領域を示している。この出射領域R100は、発光素子103の出射面の前方に設けたスリット部107によって、制限される。この第1の構造の煙感知室101では、図5Cに示すように、上記壁面P100とこの壁面P100と対向する壁面P101との間の寸法H100を大きく設定することで、発光素子103の出射光が上記壁面P100,P101に入射しないようにしている。これにより、壁面P100,P101で出射光が反射することによる雑音成分を抑制している。
【0009】
また、図6Aは、上記第2の構造の煙感知室301の設置時の姿勢を模式的に示す図である。また、図6Bは、上記第2の構造の煙感知室301を、この煙感知室301内の壁面P300と平行な平面で切断した様子を示す横断面図である。上記壁面P300は地面と反対側を向いている。また、図6Cは、上記第2の構造の煙感知室301を、上記壁面P300と直交すると共に煙感知室301の中心軸J300を通る平面で切断した様子を示す縦断面図である。なお、図6Cでは、図6Bに示したラビリンス部304は省略している。
【0010】
図6Bにおいて、303は発光素子、305は受光素子であり、図6B,図6Cにおいて、R300は、発光素子303が出射する光の出射領域を示している。この第2の構造の煙感知室301では、発光素子303の出射面の前方に設けたスリット部307によって、出射光の出射領域R300を制限して、出射光が煙感知室301の壁面P300,P301に入射しないようにしている。これにより、壁面P300,P301で出射光が反射することによる雑音成分を抑制している。
【0011】
ところで、日本では、一般住宅への火災報知器の設置が義務付けられ、火災報知器のカテゴリである煙感知器についても小型化,薄型化などのデザイン性の向上が求められており、煙感知室の小型化,薄型化も要求されている。
【0012】
これに対して、前述の第1の構造の煙感知室101では、地面方向(例えば鉛直方向)のサイズH100を大きく取る必要があるので、小型化,薄型化の障害となるという問題がある。
【0013】
一方で、図7A〜図7Cに示される第3の構造の煙感知室500のように、発光素子103の出射光の出射領域R100を前述の第1の構造と同一にしたままで、壁面P100と壁面P101との間の寸法H500を前述の第1の構造での寸法H100よりも小さくすると、両壁面P100,P101への入射光が発生し、壁面P100へ埃が堆積することに伴って堆積した埃による散乱光が増加し雑音成分が増加することとなる。
【0014】
また、図6A〜図6Cに示される第2の構造の煙感知室301では、発光素子303の出射面の前方に設けたスリット部307によって、出射光の出射領域R300を制限しているので、煙感知室301内への出射光量が減少することになり、信号成分である煙による反射光も減少する。このため、SN比=(信号成分/雑音成分)が減少し、感知精度の低下を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2009−229414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そこで、この発明の課題は、感知精度の低下を招くことなく、煙感知室の小型化,薄型化を達成でき、コンパクトで高感度な煙感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するため、この発明の煙感知器は、煙が導入される煙感知室とこの煙感知室の外から上記煙感知室内に向かう光を遮光すると共に上記煙感知室の外から上記煙感知室内への煙の流入を可能とするラビリンス部とを有する本体と、
上記煙感知室内に光を射出する発光素子と、
上記発光素子から射出された光を直接受光しないように配置されると共に上記煙感知室内で散乱もしくは反射した光を受光して受光量に応じた第1の受光信号を出力する第1の受光素子と、
上記発光素子から射出された光を直接受光すると共に上記煙感知室内で散乱もしくは反射した光を受光し、かつ、設置時に受光面が地面側とは反対側に向くように上記煙感知室に配置され、受光量に応じた第2の受光信号を出力する第2の受光素子と、
上記発光素子から出射された光を直接受光すると共に上記煙感知室内で散乱もしくは反射した光を受光し、かつ、設置時に受光面が地面側に向くように上記煙感知室に配置され、受光量に応じた第3の受光信号を出力する第3の受光素子と、
上記第1,第2,第3の受光信号に基づいて、煙の有無を判定する判定部と、
上記判定部による煙の有無の判定結果を通知する通知部とを備えることを特徴としている。
【0018】
この発明の煙感知器によれば、上記煙感知室内に煙が浸入すると上記発光素子が出射した光が上記煙によって散乱され、この散乱された光が上記第1の受光素子に入射するので、この第1の受光素子の受光量が増加する。一方で、上記第2,第3の受光素子については、上記煙による散乱光が入射する一方で上記煙が発光素子からの直接入射光を遮ることとなるので、受光量が増加する場合と減少する場合とがあるが、上記第2の受光素子の受光量と上記第3の受光素子の受光量とは同様の変化をする。よって、上記煙の浸入による上記第2の受光信号の変化と第3の受光信号の変化とは同様である。
【0019】
したがって、上記判定部は、上記第1の受光信号が表す受光量が増加していると共に上記第2の受光信号が表す受光量と第3の受光信号が表す受光量とが同様の変化をしている場合には、上記煙感知室内に煙が浸入したと判定する。これにより、上記判定部は、上記第1〜第3の受光素子による第1〜第3の受光信号に基づいて、上記煙感知室内に煙が浸入したことを高感度で検出できる。
【0020】
ここで、上記第2の受光素子の受光面は、設置時に地面側とは反対側を向いているので、設置時に地面側を向いている第3の受光素子の受光面に比べて、埃が堆積し易い。上記第2の受光素子の受光面に埃が堆積すると、第2の受光素子の受光量が減少する。また、上記第2の受光素子の受光面に堆積した埃による散乱光が第3の受光素子の受光面に入射すると、第3の受光素子の受光量が増加する。一方で、上記煙感知室内に煙が浸入した場合は、上述の如く、この煙による散乱光により上記第2の受光素子の受光量と上記第3の受光素子の受光量は、両方共、同様に変化する。
【0021】
したがって、この発明によれば、上記判定部は、上記第2の受光素子と第3の受光素子を備えたことで、上記第2の受光信号と第3の受光信号が共に同様の変化をした場合には、煙による受光信号の変動(信号成分)と判断し、上記第2の受光信号と第3の受光信号が互いに異なる変化をした場合には、埃による受光信号の変動(雑音成分)と判断することが可能になる。すなわち、上記判定部は、上記第1の受光信号が表す受光量が増加していると共に第2の受光信号が表す受光量と第3の受光信号が表す受光量とが両方共、同様に変化している場合には、煙有りと判定する一方、上記第2の受光信号が表す受光量が減少したが上記第3の受光信号が表す受光量が増加したか変化しない場合には、煙無しと判定することができる。
【0022】
したがって、この発明によれば、従来のような煙感知室の大型化や発光素子からの出射領域の制限を行わなくても、埃による受光量の変動(雑音成分)の影響で煙有りと誤感知することを回避可能になり、感知精度の低下を招くことなく、煙感知室の小型化,薄型化を達成でき、コンパクトで高感度な煙感知器を実現できる。
【0023】
また、一実施形態の煙感知器では、上記第2の受光素子の受光面と上記第3の受光素子の受光面とが対向していると共に上記受光面の法線が上記第2の受光素子と第3の受光素子と間の中点で上記発光素子の出射光軸に垂直に交わっている。
【0024】
この実施形態によれば、上記第2の受光素子と第3の受光素子は、上記発光素子の出射光軸に関して軸対称に配置されるので、埃が堆積していなくて煙が煙感知室内に浸入していない初期状態では、第2の受光信号と第3の受光信号とは同等となる。また、上記煙感知室内に埃が堆積していない場合には、上記煙感知室内に煙が浸入すると、上記第2の受光信号と第3の受光信号とは同等の変化をすることが期待されるので、上記判定部は上記第1および第2,第3の受光信号に基づいて、煙の侵入感知の高精度化を図れる。
【0025】
また、一実施形態の煙感知器では、上記判定部は、
以前に煙が無いと判定したときの上記第2の受光信号を第2の受光信号の初期値とすると共に以前に煙が無いと判定したときの上記第3の受光信号を第3の受光信号の初期値とし、
上記第2の受光信号の初期値が表す受光量に対して現在の第2の受光信号が表す受光量が減少したと共に上記第3の受光信号の初期値が表す受光量に対して現在の第3の受光信号が表す受光量が同じか増加した場合に、上記第1の受光信号に係わらず、煙が無いと判定する。
【0026】
この実施形態によれば、上記第2の受光素子の受光面に埃が堆積したと共に上記煙感知室に煙が浸入していない場合、上述の如く、上記第2の受光信号が表す受光量は第2の受光信号の初期値が表す受光量から減少すると共に、上記第3の受光信号が表す受光量は、上記第3の受光信号の初期値が表す受光量と同じか増加する。このため、上記判定部は、上記第2の受光信号が表す受光量が初期値から減少したと共に、上記第3の受光信号が表す受光量が初期値と同じか初期値から増加した場合に、煙が無いと判定する。よって、上記判定部は、上記第2,第3の受光信号を利用して、煙が無いことの判定を高精度で行なうことができる。
【0027】
また、一実施形態の煙感知器では、上記判定部は、
煙が無いと判定する毎に、上記第1,第2,第3の受光信号の初期値を、今回、煙が無いと判定したときの値に更新する。
【0028】
この実施形態によれば、上記第1,第2,第3の受光信号の初期値を更新するので、煙感知室内へ埃が堆積したことに起因する第1〜第3の受光信号の変動を各初期値に反映させることができる。よって、上記第1〜第3の受光信号の各初期値に対する各受光信号の変動量に基づいて、煙の有無を判定することで、埃の堆積の影響を少なくして、煙の有無の判定精度を向上できる。
【0029】
また、一実施形態の火災報知器では、上記煙感知器を搭載したので、コンパクトで高感度な火災報知器を実現できる。
【発明の効果】
【0030】
この発明の煙感知器によれば、発光素子から射出された光を直接受光する第2,第3の受光素子を備え、上記第2の受光素子は設置時に受光面が地面側とは反対側に向くように煙感知室に配置され、上記第3の受光素子は設置時に受光面が地面側とは反対側に向くように煙感知室に配置されている。この第2,第3の受光素子により、煙による受光量の変動(信号成分)と埃による受光量の変動(雑音成分)とを判別することが可能になって、コンパクトで高感度な煙感知器が実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の煙感知器の実施形態の側面図である。
【図2】図1のA‐A線断面図である。
【図3】図2のB‐B線断面図である。
【図4】上記実施形態のブロック図である。
【図5A】第1従来例の煙感知室の設置時の姿勢を模式的に示す図である。
【図5B】上記第1従来例の煙感知室の横断面図である。
【図5C】上記第1従来例の煙感知室の縦断面図である。
【図6A】第2従来例の煙感知室の設置時の姿勢を模式的に示す図である。
【図6B】上記第2従来例の煙感知室の横断面図である。
【図6C】上記第2従来例の煙感知室の縦断面図である。
【図7A】第3従来例の煙感知室の設置時の姿勢を模式的に示す図である。
【図7B】上記第3従来例の煙感知室の横断面図である。
【図7C】上記第3従来例の煙感知室の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0033】
図1は、この発明の煙感知器の実施形態の側面図であり、図2は、図1のA‐A線断面図である。
【0034】
この実施形態の煙感知器は、略円板形状の基板部材1と略円板形状の蓋部材2を備え、この基板部材1の周縁部1Aに沿って周方向に間隔を隔てて複数の屈曲部3が形成されている。上記蓋部材2は、上記複数の屈曲部3上に取り付けられる。この複数の屈曲部3がラビリンス部5を構成している。また、上記基板部材1と蓋部材2とラビリンス部5が、煙が導入される煙感知室6を構成している。上記ラビリンス部5は、上記複数の屈曲部3により上記煙感知室6の外から上記煙感知室6内に向かう光を遮光すると共に上記煙感知室6の外から上記煙感知室6内への煙の流入を可能とする。上記煙感知室6とラビリンス部5が本体を構成している。
【0035】
図2に示すように、上記基板部材1の周縁部1Aには、発光素子装着部7が形成され、この発光素子装着部7内に発光素子8が装着されている。この発光素子8は、発光ダイオード等で構成される。上記発光素子装着部7は、発光素子8の発光面の前方に設けられた発光素子側スリット部11を有している。この発光素子側スリット部11は、上記発光素子8からの出射光の出射領域R1を規定している。
【0036】
また、上記基板部材1の周縁部1Aには、受光素子装着部12が形成され、この受光素子装着部12には第1の受光素子13が装着されている。この第1の受光素子13は、上記発光素子8の出射光軸J1から周方向に位置ずれしていて発光素子8の出射領域R1の外に配置されている。上記受光素子装着部12は、第1の受光素子13の受光面13Aの前方に設けられた受光素子側スリット部15を有し、この受光素子側スリット部15が第1の受光素子13の受光面13Aに入射する光線を制限している。
【0037】
また、図3は、図2のB‐B線断面図である。但し、図3では、上述のラビリンス部5を省略している。図3に示すように、上記基板部材1の略中央の領域に貫通孔1Bが形成され、この貫通孔1Bに第2の受光素子17が嵌合されて固定されている。この第2の受光素子17は、この煙感知器の設置時に、受光面17Aが地面側とは反対側に向くように煙感知室6に配置されている。また、上記蓋部材2の略中央の領域に貫通孔2Aが形成され、この貫通孔2Aに第3の受光素子18が嵌合されて固定されている。この第3の受光素子18は、この煙感知器の設置時に、受光面18Aが地面側に向くように煙感知室6に配置されている。上記第2の受光素子17と第3の受光素子18は、上記発光素子8から射出された光を直接受光する。また、上記第1,第2,第3の受光素子13,17,18は、フォトダイオード等からなる。
【0038】
また、この実施形態では、図3に示すように、上記第2の受光素子17の受光面17Aと上記第3の受光素子18の受光面18Aとが対向していると共に上記受光面17A,18Aの略中央の法線Q2,Q3が上記第2の受光素子17と第3の受光素子18と間の中点P1で上記発光素子8の出射光軸J1に垂直に交わっている。すなわち、上記第2の受光素子と第3の受光素子18は、上記出射光軸J1に関して軸対称に配置されている。
【0039】
また、図4のブロック図に示すように、この実施形態では、上記第1の受光素子13が出力する第1の受光信号S1と上記第2の受光素子17が出力する第2の受光信号S2と上記第3の受光素子18が出力する第3の受光信号S3とに基づいて、煙の有無を判定する判定部21と、この判定部21による煙の有無の判定結果を外部に通知する通知部22とを備える。上記判定部21は、一例として、マイクロコンピューター等で構成される。また、上記通知部22は、上記判定部21が煙が有ると判定したことを、例えば、警報音や発光ダイオードを点滅させることによって通知する。
【0040】
上記構成の煙感知器では、先ず、煙感知室6内に煙が浸入していない場合、発光素子8が出射する出射光が散乱されないので、出射領域R1の外に位置する第1の受光素子13は、受光面13Aに入射する光量は低い値となり、第1の受光信号S1(i)を出力する。上記判定部21は、上記第1の受光信号S1(i)を初期値として記憶部23に記憶する。また、上記第2の受光素子17は、出射領域R1内に位置するので、発光素子8の出射光を直接に受光して、第2の受光信号S2(i)を出力する。上記判定部21は、上記第2の受光信号S2(i)を初期値として記憶部23に記憶する。また、上記第3の受光素子18は、出射領域R1内に位置するので、発光素子8の出射光を直接に受光して、第3の受光信号S3(i)を出力する。上記判定部21は、上記第3の受光信号S3(i)を初期値として記憶部23に記憶する。
【0041】
次に、上記煙感知室6内に煙が浸入した場合、上記煙により、発光素子8が出射する出射光が散乱されて散乱光が生じて、この散乱光が第1の受光素子13の受光面13Aに入射することで、受光面13Aへの入射光量が増加する。これにより、上記第1の受光素子13は、第1の受光信号S1(S)を出力する。この第1の受光信号S1(S)が表す受光量は、初期値としての第1の受光信号S1(i)が表す受光量よりも多い。また、上記煙の存在により、上記第2,第3の受光素子17,18の受光量が変化する。すなわち、上記煙による散乱光が第2の受光素子17に入射する量から、上記煙によって発光素子8から第2の受光素子17に直接に入射する光量が減少する量を差し引いた量だけ、第2の受光素子17に入射する光量が変化する。これにより、上記第2の受光素子17は、第2の受光信号S2(S)を出力する。また、上記煙によって第3の受光素子18に入射する散乱光の量から、上記煙によって発光素子8から第3の受光素子18に直接に入射する光量が減少する量を差し引いた量だけ、第3の受光素子18に入射する光量が変化する。これにより、上記第3の受光素子18は、第3の受光信号S3(S)を出力する。したがって、上記煙感知室6内に煙が浸入した場合、上記第2の受光信号S2(S)と第3の受光信号S3(S)は、上記第2の受光信号S2(i)と第3の受光信号S3(i)からほぼ同様に変化することとなる。
【0042】
したがって、上記判定部21は、上記第1の受光信号S1(S)が上記初期値としての第1の受光信号S1(i)から変化した変化量が、予め記憶部23に記憶されている判定レベルを超過し、かつ、第2,第3の受光信号S2(S),S3(S)が第2,第3の受光信号S2(i),S3(i)からほぼ同様に変化した場合に煙有りと判定し、通知部22に煙有りを表す警報音や警報光を発生させる。
【0043】
一方、上記判定部21は、上記第1の受光信号S1(S)が上記初期値としての第1の受光信号S1(i)から変化した変化量が、上記判定レベル以下であるときには、煙無しと判定し、通知部22に煙有りを表す警報音や警報光を発生させない。
【0044】
ところで、上記煙感知室6内に埃が浸入した場合、この浸入した埃は、地面側の方向を向いている蓋部材2の内面2Bには殆ど堆積しないが、地面とは反対の方向を向いている基板部材1の内面1Cには堆積し易い。したがって、上記煙感知室6内に埃が浸入した場合、上記第3の受光素子18の受光面18Aには埃が殆ど堆積しないが、上記第2の受光素子17の受光面17Aには上記埃が堆積する。このため、上記発光素子8から第2の受光素子17の受光面17Aに直接に入射する光量は、上記埃の堆積の影響によって減少する。したがって、上記煙感知室6内に埃が浸入した場合で、かつ上記煙感知室6内に煙が浸入していない場合には、第2の受光素子17の第2の受光信号S2(d0)が表す受光量は初期値S2(i)が表す受光量から減少することとなる。一方、上記煙感知室6内に埃が浸入し、かつ上記煙感知室6内に煙が浸入していない場合において、発光素子8が出射した光が基板部材1の内面1Cに堆積した埃に入射すると散乱光が発生し、第3の受光素子18の受光面18Aに散乱光が入射することで第3の受光信号S3(d0)が表す受光量は初期値S3(i)が表す受光量から増加する、もしくは、上記受光面18Aに入射する散乱光が微少な場合は第3の受光信号S3(d0)は初期値S3(i)から変化しない。
【0045】
したがって、上記判定部21は、上記第2の受光信号の初期値S2(i)が表す受光量に対して上記第2の受光信号S2(S)が表す受光量が減少したと共に上記第3の受光信号の初期値S3(i)が表す受光量に対して上記第3の受光信号S3(S)が表す受光量が同じか増加した場合に、上記第1の受光信号S1(S)に係わらず、煙が無いと判定する。よって、上記判定部21は、上記第2,第3の受光信号S2,S3を利用して、煙が無いことの判定を高精度で行なうことができる。
【0046】
すなわち、この実施形態によれば、上記第2の受光素子17の第2の受光信号と第3の受光素子18の第3の受光信号とが同様の変化をするか否かにより、煙による受光信号(受光量)の変動(信号成分)と埃による受光信号(受光量)の変動(雑音成分)とを判別できる。よって、従来のような煙感知室の大型化や発光素子8からの出射領域R1の制限を行なうことなく、埃による受光量の変動(雑音成分)の影響を回避可能になり、感知精度の低下を招くことなく、煙感知室6の小型化,薄型化を達成でき、コンパクトで高感度な煙感知器を実現できる。
【0047】
また、この実施形態によれば、上記第2の受光素子17と第3の受光素子18は、上記発光素子8の出射光軸J1に関して軸対称に配置されるので、埃が堆積していなくて煙が煙感知室6内に浸入していない初期状態では、第2の受光信号S2と第3の受光信号S3とは同等となる。また、上記煙感知室6内に煙が浸入すると、上記第2の受光信号S2と第3の受光信号S3とはほぼ同等に変化するので、上記判定部21は上記第1および第2,第3の受光信号S1,S2,S3に基づいて、煙の侵入をより高精度で感知できる。
【0048】
また、この実施形態では、上記判定部21は、煙が無いと判定する毎に、上記第1,第2,第3の受光信号S1,S2,S3の初期値S1(i),S2(i),S3(i)を、上記煙が無いと判定したときの値に更新する。このように、上記第1,第2,第3の受光信号S1,S2,S3の初期値を更新するので、煙感知室6内へ埃が堆積したことに起因する第1〜第3の受光信号S1〜S3の変動を各初期値に反映させることができる。よって、上記第1〜第3の受光信号S1〜S3の各初期値に対する各受光信号の変動量に基づいて、煙の有無を判定することで、埃の堆積の影響を少なくして、煙の有無の判定精度を向上できる。
【0049】
尚、上記実施形態では、蓋部材2に取り付けられた第2の受光素子17の受光面17Aの法線Q2が矢印Yで示す地面方向に延した垂線L1と略平行である場合を説明したが、上記第2の受光素子17の受光面17Aの法線Q2が受光面17Aに埃が堆積する程度の範囲内で地面方向から傾いていてもよい。また、上記第3の受光素子18の受光面18Aについても、その法線Q3は必ずしも地面方向と平行でなくてもよく、地面方向の垂線L1から傾いていてもよい。例えば、本実施形態の煙感知器を傾斜した天井面に設置して使用する場合などでは、第2,第3の受光素子17,18の受光面17A,18Aの法線Q2,Q3は垂線L1から傾斜することとなる。また、上記実施形態では、上記第2の受光素子17の受光面17Aと第3の受光素子18の受光面18Aとを、発光素子8の出射光軸J1に関して軸対称に配置したが、上記第2の受光素子17の受光面17Aと第3の受光素子18の受光面18Aとは、出射光軸J1に関して軸対称の位置からずれていてもよい。もっとも、受光面17Aと受光面18Aとを出射光軸J1に関して軸対称に配置した方が、上述の如く、第2の受光信号S2と第3の受光信号S3とが同等の変化をするか否かによって、煙による受光信号の変動と埃による受光信号の変動とをより確実に判別できる。
【0050】
また、上記実施形態の煙感知器を搭載した火災報知器によれば、コンパクトで高感度な火災報知器を実現できる。
【符号の説明】
【0051】
1 基板部材
1A 周縁部
1B 貫通孔
1C 内面
2 蓋部材
2A 貫通孔
2B 内面
3 屈曲部
5 ラビリンス部
6 煙感知室
7 発光素子装着部
8 発光素子
11 発光素子側スリット部
12 受光素子装着部
13 第1の受光素子
13A 受光面
17 第2の受光素子
17A 受光面
18 第3の受光素子
18A 受光面
21 判定部
22 通知部
23 記憶部
J1 出射光軸
P1 中点
Q2,Q3 法線
R1 出射領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙が導入される煙感知室とこの煙感知室の外から上記煙感知室内に向かう光を遮光すると共に上記煙感知室の外から上記煙感知室内への煙の流入を可能とするラビリンス部とを有する本体と、
上記煙感知室内に光を射出する発光素子と、
上記発光素子から射出された光を直接受光しないように配置されると共に上記煙感知室内で散乱もしくは反射した光を受光して受光量に応じた第1の受光信号を出力する第1の受光素子と、
上記発光素子から射出された光を直接受光すると共に上記煙感知室内で散乱もしくは反射した光を受光し、かつ、設置時に受光面が地面側とは反対側に向くように上記煙感知室に配置され、受光量に応じた第2の受光信号を出力する第2の受光素子と、
上記発光素子から出射された光を直接受光すると共に上記煙感知室内で散乱もしくは反射した光を受光し、かつ、設置時に受光面が地面側に向くように上記煙感知室に配置され、受光量に応じた第3の受光信号を出力する第3の受光素子と、
上記第1,第2,第3の受光信号に基づいて、煙の有無を判定する判定部と、
上記判定部による煙の有無の判定結果を通知する通知部とを備えることを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
請求項1に記載の煙感知器において、
上記第2の受光素子の受光面と上記第3の受光素子の受光面とが対向していると共に上記受光面の法線が上記第2の受光素子と第3の受光素子と間の中点で上記発光素子の出射光軸に垂直に交わっていることを特徴とする煙感知器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の煙感知器において、
上記判定部は、
以前に煙が無いと判定したときの上記第2の受光信号を第2の受光信号の初期値とすると共に、以前に煙が無いと判定したときの上記第3の受光信号を第3の受光信号の初期値とし、
上記第2の受光信号の初期値が表す受光量に対して現在の第2の受光信号が表す受光量が減少したと共に上記第3の受光信号の初期値が表す受光量に対して現在の第3の受光信号が表す受光量が同じか増加した場合に、上記第1の受光信号に係わらず、煙が無いと判定することを特徴とする煙感知器。
【請求項4】
請求項3に記載の煙感知器において、
上記判定部は、
煙が無いと判定する毎に、上記第1,第2,第3の受光信号の初期値を、今回、煙が無いと判定したときの値に更新することを特徴とする煙感知器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の煙感知器を搭載した火災報知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公開番号】特開2013−15954(P2013−15954A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147147(P2011−147147)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】