照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法
【課題】照光が必要とされる領域と、照光するための領域との位置あわせが容易な照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】導光板4の片面に、1以上の樹脂製のキートップ3を配置した照光式押釦スイッチ用部材1において、導光板4に入射した光をキートップ3の方向に導きキートップ3を照光するための拡散層5が設けられると共に、キートップ3に設けられる拡散層5の領域は、導光板4とキートップ3との接着領域よりも小さい照光式押釦スイッチ用部材1としている。
【解決手段】導光板4の片面に、1以上の樹脂製のキートップ3を配置した照光式押釦スイッチ用部材1において、導光板4に入射した光をキートップ3の方向に導きキートップ3を照光するための拡散層5が設けられると共に、キートップ3に設けられる拡散層5の領域は、導光板4とキートップ3との接着領域よりも小さい照光式押釦スイッチ用部材1としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯端末等に用いられる押釦スイッチ用部材として、携帯電話の内部に配置される光源からキートップを照らすタイプの照光式押釦スイッチ用部材が広く知られている。照光式押釦スイッチ用部材は、キートップの部分が照光されるため、暗所でもキー操作が容易であり、かつ意匠性にも優れている。
【0003】
照光式押釦スイッチ用部材は、たとえば、キーパッドと、キーパッドの裏面側に配置される導光板と、導光板の側方に配置される光源とを備えている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載されている従来の照光式押釦スイッチ用部材においては、光源から発せられた光が導光板に入射されて、導光板と空気層との界面で全反射を繰り返しながら導光板の内部へ広がる。また、光は、導光板の裏面側に設けられた凹凸形状のパターンで反射し、キーパッド側の文字が数字部分を照らすこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−080824(たとえば、請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明には、次のような問題がある。すなわち、凹凸形状のパターンは、導光板に設けられているが、照光が必要とされる領域は、キーパッドに設けられているため、凹凸形状のパターンと照光が必要とされる領域との位置合わせが必要となることである。しかし、その位置合わせは、精度が求められ、その作業は極めて難しい。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決すること、すなわち、キートップ等の照光が必要とされる領域と、拡散層等で形成される照光するための領域と、の位置あわせが容易な照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る照光式押釦スイッチ用部材は、透明な導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材において、導光板に入射した光をキートップの方向に導きキートップを照光するための拡散層がキートップに設けられると共に、キートップに設けられる拡散層の領域は、導光板とキートップとの接着領域よりも小さいものとしている。
【0008】
さらに、キートップと導光板との間にキートップに加飾を施すための加飾層が設けられると共に、加飾層は、拡散層として機能するようにするのが好ましい場合もある。
【0009】
さらに、キートップの押し込み方向の下側に押圧子を有するフィルムを、導光板の下方に備えるようにしてもよい。
【0010】
また、別の本発明は、導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材の製造方法であって、導光板に入射した光をキートップの方向に導くことでキートップを照光する拡散層を、キートップ側に設ける拡散層形成ステップと、キートップの拡散層が形成された側の面に、拡散層よりも大きい面積を有する接着層を形成する接着層形成ステップと、導光板を、キートップの拡散層が形成された面とあわせて、少なくとも接着層にて接着する接着ステップとを有することを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材の製造方法としている。
【0011】
さらに接着層と拡散層とは、一部あるいは全部が押圧方向で重ならないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キートップ等の照光が必要とされる領域と、拡散層等で形成される照光するための領域と、の位置あわせが容易な照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を有する電子機器の操作面を示す平面図である。
【図2】図1の電子機器を、図1のA−A線にて切断した断面図である。
【図3】図2に示す導光板に入射した光が、拡散層を介してキートップ側へ出射する様子を説明する拡大断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造方法を説明するフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートの第1ステップの途中段階における状態を示す図で、加飾層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図6】図4に示すフローチャートの第1ステップの終了後における状態を示す図で、加飾層に加え、さらに、透光性加飾層と隠蔽層とをさらに形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図7】図4に示すフローチャートの第2ステップの終了後における状態を示す図で、拡散層と接着層とをさらに形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図8】図4に示すフローチャートの第3ステップにおける状態を示す図で、上治具および下治具に配置された照光式押釦スイッチ用部材と両治具を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図9】図8の照光式押釦スイッチ用部材のキートップを表面から見た場合の、接着領域、拡散層が形成された領域および照光領域を説明する平面図である。
【図10】第2の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図11】第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図12】第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図13】第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造方法を説明するフローチャートである。
【図14】図13のフローチャートの第1ステップの終了後における状態を示す図で、加飾層の一部となる装飾層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図15】図13のフローチャートの第2ステップの終了後における状態を示す図で、加飾層の一部となる拡散層と隠蔽層8を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図16】図13のフローチャートの第3ステップの終了後における状態を示す図で、接着層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図17】図13のフローチャートの第4ステップにおける状態を示す図で、上治具および下治具に配置された照光式押釦スイッチ用部材と両治具を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図18】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、加飾層の一部となる隠蔽層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図19】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、加飾層の一部となる装飾層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図20】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、拡散層および接着層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図21】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、上治具および下治具に配置された照光式押釦スイッチ用部材と両治具を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図22】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材を表面から見た場合の、接着領域、拡散層が形成された領域および照光領域を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材について、図面を参照しながら説明する。なお、断面図では、図を見やすくする目的で、各部材の厚さ方向の縮尺は、一定ではない。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1を有する電子機器1Aの操作面の平面図である。図2は、電子機器1Aを図1に示すA−A線にて切断した場合の、照光式押釦スイッチ用部材1およびパネル2を示す断面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、電子機器1Aの操作面側(図2の上側、以後、表側という。)には、パネル2および照光式押釦スイッチ用部材1のキートップ3が露出している。パネル2は、操作面のキートップ3以外の部分を覆う部材で、最終的に、電子機器1Aの筐体の一部となることができる。パネル2には、照光式押釦スイッチ用部材1が有するキートップ3を突出させるための穴部2aが設けられ、その穴部2aからキートップ3が電子機器1Aの表側の面に露出している。また、パネル2の操作面と逆側(図2の下側、以後、裏側という。)には、照光式押釦スイッチ用部材1が有する平面状の導光板4が配置されている。導光板4は、キートップ3を照光する際に、光を案内する。
【0017】
照光式押釦スイッチ用部材1の裏側の面には、平面状のフィルム21(詳細は後述)が配置されている。フィルム21の裏面であってキートップ3の中央付近に重なる位置には、スイッチ操作用の押圧子22が配置されている。押圧子22と対向するように、スイッチ回路が設けられた基板24が配置され、基板24の表側の面には、スイッチ部材を構成する部材として、ドーム状部材25、固定接点(不図示)、および導電部(不図示)が配置されている。導電部材からなるドーム状部材25は、逆碗状に配置され、基板24の固定接点(不図示)と接している。押釦部となるキートップ3が押し込まれると、押圧子22がドーム状部材25を押し込み、ドーム状部材25を座屈させる。すると、基板24の表側の面であって、ドーム状部材25の内側に配置されている導電部(不図示)と、ドーム状部材25とが導通状態になる。すなわち、スイッチがONになる。一方、キートップ3の押し下げを解除すると、ドーム状部材25の復元力により、導電部(不図示)と、ドーム状部材25とが非導通状態になる。すなわち、スイッチがOFFになる。
【0018】
図1に示すように、パネル2には、裏面から照光式押釦スイッチ用部材1が有するキートップ3を突出させるための穴部2aがキートップ3の数だけ設けられている。パネル2としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリマー、またはステンレス、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム等の金属もしくは各種金属から成る合金の板材を用いることができる。パネル2の裏側の面と導光板4とは、接着剤層(不図示)を介して、接着されていてもよい。なお、接着ではなく、融着等されることで、パネル2と導光板4とが固着されていても良い。あるいは、パネル2と導光板4とが固着されていなくてもよい。
【0019】
図2に示すように、本実施の形態に係る押釦スイッチ部材1は、押釦部となるキートップ3と、内部光源26の光を導く導光板4、キートップ3と導光板4との間に介在し導光板4からの光をキートップ3側に導く拡散層5、および、キートップ3と導光板4とを固着させるための接着層6を主に有する。キートップ3は、導光板4の表側に配置され、接着層6を介して導光板4に固定されている。また、キートップ3の裏側の面であって、接着層6と重ならない位置には、拡散層5が配置されている。接着層6は、拡散層5の周りを囲むように配置されている。また、キートップ3と拡散層5、および、キートップ3と接着層6との間には、キートップ3に加飾を施すための層が設けられている。たとえば、接着層6と押圧方向に重なる領域には、キートップ3側から、加飾層の一部となる装飾層7および光を遮光すると共に加飾層の一部となる隠蔽層8が設けられている。そして、拡散層5と重なる位置には、加飾層の一部となる透光性加飾層9が設けられている。なお、キートップ3に加飾を施さない場合には、装飾層7、隠蔽層8および透光性加飾層9を設けなくても良い。
【0020】
キートップ3は、人の指などで押されることにより上下動し、スイッチ部材をオンオフさせる機能を有する部材である。キートップ3は、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂あるいはPC樹脂のように、透明性と硬度が高い材料で構成される。ただし、キートップ3の材料は、上記材料に限定されるものではなく、たとえば、キートップ3の表面をより高硬度の材料でコートするような場合には、キートップ3の材料として、より硬度の低い樹脂を採用しても良い。キートップ3は、導光板4からの光をその内部に入れるため、透明であるのが望ましいが、透光性を確保できる限り、キートップ3の内部、表面または裏面に、印刷等によって加飾を施しても良い。たとえば、キートップ3に、抜き文字にて文字、記号もしくは模様等の加飾を施すことで、内部光源26にて照光した場合に、その抜き文字の内部部分のみを光らせることができる。
【0021】
導光板4は、1つあるいは複数の内部光源26からの光を導光し、キートップ3側に導くもので、1つの平板状の部材とされている。しかし、1つではなく、複数に分割された導光板を用いるようにしてもよい。導光板4は、PC樹脂、PU樹脂、PET樹脂またはアクリル樹脂のように、透明性が高く、かつ可撓性に優れた材料で構成されるのが好ましい。導光板4の厚さは、0.025〜0.5mmの範囲にあるのが好ましく、より好ましくは、0.2〜0.4mmの範囲である。導光板4の厚さを0.025mm以上とすることによって、導光板4を加工しやすくなる。また、導光板4の厚さを0.5mm以下とすることによって、導光板4は、キートップ3の押し込みに追従して下方に撓みやすくなると共に、照光式押釦スイッチ用部材1をより薄くできる。また、折り曲げられた導光板4の端部は、内部光源26に接している。導光板4は、その側方に配置される内部光源26からの光が通るため、透明であるのが望ましいが、透光性を確保できる限り、導光板4の内部、表面または裏面に、印刷等によって加飾を施しても良い。
【0022】
拡散層5は、導光板4の内部を全反射してきた光を拡散させ、拡散光をキートップ3側へ出射させる役割を有する。キートップ3に設けられる拡散層5は、一定の面積を有する領域全体に設けてもよいし、文字、記号、線もしくは点等のパターンとして形成してもよい。光を拡散させるための拡散剤としては、有機顔料および/または無機顔料を含むインク等の固形成分を使用できる。特に、拡散剤としては、白色顔料あるいは銀色顔料等の無機顔料を使用するのが好ましい。これは、拡散層5に入射した光の反射率を高め、かつ、キートップ3の内部に入射した光が再び拡散層5側に入っても、キートップ3側に効率良く反射させるようにするためである。さらに、拡散剤としては、たとえば、二酸化珪素(SiO2)、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、架橋ポリスチレン、シリコンビーズ、あるいは酸化チタニウムのいずれか1つまたは複数の組み合せであることが好ましい。また、その粒径が0.1〜10μm程度の粉末を用いた場合には、拡散層5を印刷で形成しやすいため好ましい。銀色顔料としては、たとえば、アルミニウム粉末を使用できる。また、拡散層5は、接着層6のように導光板4と固着されなくてもよいが、拡散層5と導光板4とは、少なくとも一部で接していることが好ましい。特に、拡散層5と導光板4とは、拡散層5の大部分が導光板4に密接に接するあるいは密着している状態であるのが好ましい。
【0023】
また、拡散層5は、有機顔料および/または無機顔料から成る固形成分を含みつつ、導光板4からキートップ3に光を入射させることができるように、透光性をも有する必要がある。遮光性の拡散層5では、導光板4からの光をキートップ3へ入射できなくなるからである。このため、拡散層5中の固形成分の濃度を、次の範囲にするのが好ましい。たとえば、二酸化珪素を顔料に用いた場合には、顔料と樹脂の総量に対する顔料の割合を1〜50重量%とし、酸化チタンを顔料に用いた場合には、顔料と樹脂の総量に対する顔料の割合を1〜50重量%とするのが好ましい。なぜなら、上述の顔料の割合が下限値以上の場合には、粘度が1Pa・s以上となるため、印刷機を用いて拡散層5を形成できるからである。さらに、拡散層5の厚さは、2〜25μmとするのが好ましい。ただし、上述した拡散層5の中の固形成分の濃度および拡散層5の厚さは、一例に過ぎず、その濃度およびその厚さは、使用する顔料あるいは要求される輝度に応じて、適宜変えることができる。
【0024】
接着層6は、キートップ3と導光板4とを固着するための層である。接着層6は、透光性とされているが、非透光性としてもよい。たとえば、接着層6は、有機溶剤に固形成分を混ぜた接着インクによって構成される。なお、接着後に接着層6の全部が揮発するような有機溶剤のみからなる接着層6を用いてもよい。有機溶剤としては、ケトン系、エーテル系あるいはエステル系等の溶剤を使用できる。また、照光を接着層6のうち、導光板4と固着される領域(以下、接着領域という。)は、拡散層5を設ける領域よりも広い領域とすることが好ましい。なぜなら、キートップ3と導光板4とを厚さ方向に圧着した際に、接着領域の外周部は、接着剤が偏在したり厚みの変化が生じたりする。このため、接着領域より拡散層5が大きいと、輝度ムラが生じやすくなる。接着領域が拡散層5と同じ大きさか、あるいは拡散層5が設けられる領域が接着領域よりも小さい場合には、輝度ムラが視認されにくくなり好ましい。また、拡散層5が小さい領域である場合には、キートップ3および導光板4の材質自体に由来する輝度ムラが見えにくいという利点も有する。
【0025】
加飾層の一部となる装飾層7は、キートップ3の裏面側に形成され、キートップ3に装飾を施すための層である。本実施の形態では、装飾層7は、非透光性のインクから形成され、装飾層7が形成されていない領域が文字や数字等の形を呈する、いわゆる抜き文字が形成されている部分となる。また、その抜き文字部7a(図5参照)は、電子機器1Aの内部から照光された際に、光を表面へ出射する照光領域となる。
【0026】
加飾層の一部となる隠蔽層8は、非透光性のインク、例えば黒色のインクにて約1〜30μmの厚さで形成される。ここで、隠蔽層8を非透光性とするためには、全光線透過率が1%以下であることが好ましい。また、隠蔽層8は、内部光源26の点灯時に、操作面に向かって照射された光が、透光性加飾層9以外の領域から漏れないように遮光する層である。また、隠蔽層8は、抜き文字部7a部分に形成されていない。なお、印刷のわずかなずれを許容する公差として、遮蔽層8の縁部は、図2に示すように、抜き文字部7aの最外周よりもわずかに外側に位置するのが好ましい。
【0027】
また、透光性加飾層9は、装飾層7および隠蔽層8が形成されていない抜き文字となっている部分に形成された透光性の層である。ここで、透光性加飾層9は、実質的に透光であればどのようなものでもよいが、特に、透光性加飾層9は、全光線透過率が20%以上であることが好ましい。
【0028】
図3は、照光式押釦スイッチ用部材1の導光板4の側面から光を入射された場合の光の経路を説明する断面図である。たとえば、LED等の内部光源26を導光板4の側部に配置する。すると、内部光源26から導光板4の内部に入射された光は、導光板4と空気層との界面、または、導光板4と導光板4の外側に設けられた後述の反射層との界面で、全反射を繰り返しながら導光板4の内部へ広がる。そして、図3に示すように、導光板4の内部からの光P1が拡散層5に入射すると、光P1は、拡散層5の内部に分散している固形成分(白色または光沢性の着色材)にて乱反射して、光P1は透光性加飾層9を介してキートップ3の内部へと入射する。キートップ3の内部に入った光P1は、再び拡散層5に入射する可能性もあるが、固形成分で反射して再びキートップ3に戻ることもできる。このため、固形成分が拡散層5中に均一に分散している限り、キートップ3の拡散層5が設けられた領域、すなわち、照光が必要とされる領域Wにおいて照光ムラが少ないものとなる。したがって、キートップ3の拡散層5が設けられた領域Wは、均一に照光されるものとなる。
【0029】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1の製造方法の一例について図4から図8を参照しながら説明する。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1の製造方法の主な工程の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図5は、加飾層の一部となる装飾層7を形成したキートップ3を、図1のA−A線と同一な線で切断した場合の断面図である。まずはじめに、印刷にてキートップ3の裏面側に装飾層7を形成する(ステップS101;加飾層形成ステップ)。印刷としては、インクジェット方式の他、スクリーン印刷、グラビア印刷、パッド印刷、凸版印刷等を採用できる。キートップ3に設ける装飾層7としては、たとえば、キートップ3の表面に表示させるための数字や文字を抜き文字として印刷したものがある。その後、装飾層7が軽く指で触ってもベタベタしないくらいまで、いわゆる、指触乾燥させる。なお、この装飾層7の形成工程は、加飾層の形成ステップの一部となり、加飾層の一部が照光を所望する照光エリアとなる。この実施の形態では、抜き文字部7aが照光エリアとなる。
【0032】
図6は、加飾層の一部となる透光性加飾層9および加飾層の一部となる隠蔽層8をキートップ3に形成した状態を示す断面図である。第1ステップとなるステップS101において、装飾層7を形成した後、抜き文字部7aの最外周よりわずかに外側で囲まれる領域を除き、キートップ3の装飾層7を形成した側の面に遮光性の隠蔽層8を形成する。そして、透光性加飾層9を、その抜き文字部7aの最外周よりわずかに外側で囲まれる領域に印刷し、指触乾燥させる。なお、透光性加飾層9を形成した後、隠蔽層8を形成してもよい。この第1ステップであるステップS101によって、加飾層とその一部に設けられる照光領域とが形成される。
【0033】
次に、キートップ3に、拡散層5および接着層6を印刷にて形成する(ステップS102;拡散層形成ステップおよび接着層形成ステップ)。図7は、第2ステップであるステップS102の終了後におけるキートップ3を図1のA−A線と同一の線に沿って切断した場合の断面図である。このステップS102では、キートップ3の抜き文字部7aに対応する領域に、拡散層5を形成し、指触乾燥させる。そして、キートップ3の裏側面の拡散層5を形成していない部分に、接着層6を印刷にて形成する。なお、拡散層5の形成と接着層6の形成とを逆順にしても良いし、同時としてもよい。また、透光性加飾層9と拡散層5を設けた後に、隠蔽層8と接着層6とを設けるようにしてもよい。
【0034】
次に、第3ステップとなる図4のステップS103において、キートップ3と導光板4とを固着させる。図8は、図4のステップS103の工程において、上治具13および下治具12内に配置し加熱圧着させている状態の照光式押釦スイッチ用部材1を、図1のA−A線と同一の線に沿って切断した場合の断面図である。ステップS103では、まず、下治具12に1または2以上のキートップ3を、接着層6が上側になるように配置する。次に、導光板4を、キートップ3を配置した下治具12の上、すなわち、接着層6と対向するように配置する。そして、キートップ3と導光板4とを、加熱した上治具13により、導光板4側からその厚さ方向に加圧する。たとえば、表面温度を100〜170℃に加熱した上治具13を用いて、圧力2MPaにて20秒間加圧することで、導光板4とキートップ3とを固着させる(ステップS103;キートップ−導光板固着ステップ)。
【0035】
なお、キートップ3が配置された導光板4を加熱および加圧するための治具は、下治具12のキートップ3に接する面、あるいは上治具13の導光板4に接する面のいずれか一方の材質が、キートップ3の材質よりも低硬度であることが好ましい。そのような治具を用いることにより、均一な圧力でキートップ3と導光板4とを加圧できるため、キートップ3と導光板4とが、均一に接着される。また、加熱および加圧により、接着層6と導光板4との間に相溶部が形成される。加熱および加圧を停止し室温まで冷却すると、加熱により形成された相溶部が硬化し、融着部分が形成される。このため、接着層6を介してキートップ3と導光板4とが強力に接着される。
【0036】
なお、加熱治具となる上治具13が、接着層6の全面ではなく一部に相当する領域に対応するような形状の場合には、接着層6の全面ではなく、接着層6の一部でのみキートップ3と導光板4とを接着させることができる。図9は、キートップ3と導光板4との接着領域、拡散層5が設けられている領域、および、照光を所望する領域(本実施の形態の場合、抜き文字部7aの内部)を説明するため、キートップ3を表面から見た場合の平面図である。
【0037】
キートップ3が導光板4と接着している領域は、キートップ3の最外縁よりも内側に位置する点線Bと、光を所望する領域の外周よりもわずかに外側を囲む点線Cとの間の領域である。たとえば、キートップ3の外縁0.3mm幅を除く領域にて、キートップ3が、導光板4に固着されている。接着層6をキートップ3の最外縁から離間して設けることで、キートップ3と導光板4とを接着するためにキートップ3と導光板4の厚さ方向に加えた圧力で、接着層6がキートップ3の外周よりも外側にはみ出すことがない。
【0038】
また、キートップ3の裏面全面を接着領域とせずに、キートップ3の外縁を非接着領域とすることで、よりよいクリック感が得られる照光式押釦スイッチ用部材1となる。なぜなら、非接着領域が広いので、隣接するキートップ3の接着領域までの間隔が広がり、キートップ3を押圧した場合に、隣接する接着領域の弾性変形を阻むことがないため、小さい力で導光板4を下方に撓ませることができるからである。
【0039】
また、照光式押釦スイッチ用部材1では、図9の実線Dで囲まれた照光を所望する領域(本実施の形態では、抜き文字部7a)の外周よりも、わずかに外側を囲む領域(すなわち、点線Cで囲まれる領域)に拡散層5が形成されている。したがって、拡散層5で拡散した光が、照光を所望する領域(すなわち、点線Dで囲まれた領域)のすべてを照光するものとなる。
【0040】
さらに、照光式押釦スイッチ用部材1の製造において、照光を所望する領域と、拡散層5を設ける領域との位置あわせが容易なものとなる。なぜなら、照光領域となる実線Dで囲まれた領域に光を導く拡散層5を導光板4に設けるのではなく、キートップ3側に拡散層5を形成しているため、拡散領域と照光が所望される領域との位置あわせが不要となるためである。すなわち、この実施の形態では、キートップ3に形成された照光を所望する領域にあわせて拡散層5をキートップ3に形成しているからである。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材20について説明する。以後、各実施の形態を説明するにあたって、第1の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を用いて示し、また当該共通する部分についての説明を省略する。
【0042】
図10は、第2の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材20を、図1に示すA−A線にて切断した断面図である。
【0043】
第2の実施の形態の照光式押釦スイッチ用部材20は、電子機器1Aが有するフィルム21および押圧子22を、押釦スイッチ用部材20の一部として含む。すなわち、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1に加えて、導光板4の裏面側にフィルム21が固着されている。また、フィルム21の裏面であって、キートップ3の中央付近と重なる領域には、フィルム21から裏面方向に突出する押圧子22が設けられている。
【0044】
フィルム21は、導光板4と同一面積を有する平板状に形成されているが、導光板4と比較して、狭い面積のものとしたり、逆に、大きな面積を有するものとしてもよい。フィルム21は、キートップ3の押し込みを押圧子22に伝達できるように、シリコーンゴムのような可撓性に富み、比較的柔らかい材料で構成される。ただし、フィルム21の材料は、上記材料に限定されるものではなく、導光板4と同等の硬度を有する材料でも良い。また、フィルム21は、たとえば、導光板4に接着しても良い。フィルム21は、導光板4の側面から入った光を押圧子22の方向に透過させないように、不透明の材料で構成し、あるいは印刷等により遮光性の加飾を施しても良い。逆に、フィルム21の裏面側から導光板4の内部に光を透過させる場合には、フィルム21を透明度の高い材料で構成するのが好ましい。フィルム21の厚さは、照光式押釦スイッチ用部材20をより薄くする必要から、できるだけ薄いのが好ましい。しかし、フィルム21の材料にシリコーンゴムを採用する場合には、フィルム21は、容易に破れないように、0.1〜0.5mmの厚さとするのが好ましい。
【0045】
フィルム21がシリコーンゴム等の樹脂から構成される場合には、押圧子22は、フィルム21と一体で形成されるのが好ましい。押圧子22を別個に用意してフィルム21に接着するよりも、押圧子22とフィルム21とが一体化した成形体を作製する方が、製造効率が上がると共に、製造コストが低くなるからである。しかし、押圧子22をPC樹脂で作製し、フィルム21に接着する方法を採用することもできる。また、フィルム21を、PET樹脂製あるいはPU樹脂製のシートとしても良い。シリコーンゴムあるいはPU樹脂に比べて可撓性に劣るPET樹脂を用いた場合には、押圧子22の外周部でキートップ3の形状に対応した形状でPET樹脂製のシートにスリットを設けると、押圧の感触がより良好になる。
【0046】
上述のように、電子機器1Aが有する押圧子22が設けられたフィルム21を、照光式押釦スイッチ用部材1と別部材とするのではなく、照光式押釦スイッチ用部材20の一部とすることで、照光式押釦スイッチ用部材20の強度が向上する。また、非常に薄い導光板4を用いた場合にも、キートップ3を押し込んだ際の、導光板4を元の状態に復元させるための復元力を大きくすることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材30について説明する。
【0048】
図11は、第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材30を図1に示すA−A線と同一の線にて切断した断面図である。
【0049】
第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材30では、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1と異なり、接着層6がキートップ3の最外縁から内方に離間して設けられている。
【0050】
図11に示すように、接着層6をキートップ3の最外縁から内方に離間して設けることで、加熱治具となる上治具13が接着層6の全面に対応するような形状や導光板4の全面を押圧するような形態であっても、キートップ3の最外縁を導光板4に接着しないようにすることができる。したがって、キートップ3と導光板4とを接着する際に、接着層6が圧力でキートップ3の外周よりも外側にはみ出すことがより少ないものとなる。また、キートップ3の裏面全面を接着領域とせずに、キートップ3の外縁を非接着領域とすることで、よいクリック感が得られる押釦スイッチ用部材30となる。
【0051】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40について図12から図17を参照しながら説明する。
【0052】
図12は、第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40を図1に示すA−A線と同一の線にて切断した断面図である。また、図13は、本発明の第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40の製造方法の主な工程の流れを示すフローチャートである。
【0053】
第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40では、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1と異なり、拡散層5の代わりに、透光性の加飾可能な拡散層41が設けられている。照光式押釦スイッチ用部材40は、たとえば、次のような工程で製造される。
【0054】
図14は、図13に示す第1ステップであるステップS401を実施した後におけるキートップ3を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。まず、印刷にてキートップ3に装飾層7を形成する(ステップS401)。その後、装飾層7を指触乾燥させる。
【0055】
そして、図15に示すように、第2ステップとして、拡散層41を設けない部分に、遮光性の隠蔽層8を形成する。そして、拡散剤が分散された透光性の加飾可能な拡散層41を、その抜き文字部7aに印刷し(ステップS402;加飾層兼拡散層形成ステップ)、指触乾燥させる。
【0056】
図16は、接着層6を形成した後のキートップ3を図1のA−A線と同一な線に沿って切断した場合の断面図である。図16のように、第3のステップとしては、キートップ3の照光を所望する領域以外、すなわち、この例では、拡散層41を設けた以外(実際には図16に示すように、拡散層41よりわずかに小さくなる領域以外)の部分に、接着層6を印刷にて形成する(ステップS403;接着層形成ステップ)。
【0057】
最後に、ステップS404を行う。ステップS404では、下治具12に1または2以上のキートップ3を、接着層6が上側になるように配置する。次に、導光板4を、キートップ3を配置した下治具12の上、すなわち、接着層6と対向するように配置する。そして、キートップ3と導光板4とを、導光板4側から加熱した上治具13によりその厚さ方向に加圧する(ステップS404;キートップと導光板との固着ステップ)。図17は、上治具13および下治具12に配置されたキートップ3および導光板4を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。ここで、キートップ3および導光板4は、加熱しながら加圧されるため、接着層6が展開されると共に、接着層6に含まれる溶剤等が揮発するため、接着層6の厚みはほとんど生じない。したがって、導光板4と拡散層41とは密着し、両部材間に空気等の空間は生じない。そして、拡散層41は、導光板4内部の光を拡散させることができるものとなる。
【0058】
上述のような照光式押釦スイッチ用部材40とすることで、第1の実施の形態における透光性加飾層8を形成する工程と拡散層5を形成する工程を1つの工程とすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40の各実施の形態について説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることなく、種々の変形を施して実施可能である。
【0060】
たとえば、上述の各実施の形態においては、照光を所望する領域、たとえば、照光を所望する領域としての文字や数字の領域よりも、わずかに大きい領域を有する拡散層5が、その照光を所望する領域を囲んでいるが、このような形態に限らない。拡散層5は、照光を所望する領域と同一あるいは、照光を所望する領域よりも、かなり大きく外側を囲むように覆っていてもよい。しかし、拡散層5を設ける領域をより小さくした場合には、導光板4に入射した光の光量が、内部光源26からの距離に応じて変化しにくいものとなる。なぜなら、拡散層5の領域が小さい場合には、導光板4の内部を全反射して進む光のうち、拡散層5部分からキートップ3側へ出射する光量が小さくなるので、内部光源26からの距離が遠い部分へも、十分な光量の光が伝達されるからである。
【0061】
また、上述の各実施の形態において、キートップ3に表示させる文字を装飾層7の中に形成される抜き文字とすることで、表示させる文字等を照光するものとしたが、このようなものに限らない。たとえば、キートップ3に表示させる文字等を遮光またはそれに準じる印刷とし、文字以外の領域を透光性の加飾層を印刷することで、当該文字等の周りを照光し、文字は、暗部として視認されるものとしてもよい。しかし、照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40のように、文字等の限られた部分のみが光を透過するキートップ3を用いた場合には、キートップ3や導光板4の材料自体の品質などによりキートップ3や導光板4の光透過率が不均一な場合にも、その光量の不均一さが、表面から視認されにくいものとなるためより好ましい。さらに、文字等の限られた部分のみが光を透過するキートップ3では、キートップ3と導光板4とを厚さ方向に圧着した際に接着剤が偏在することにより生じる接着跡等が、表面から視認されにくいものとなるためより好ましい。
【0062】
図18〜図21は、本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材50の製造工程を説明する図で、隠蔽層8を形成したキートップ3を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。図18〜図21に示す変形例では、ユーザに視認させる文字等を暗部として表示し、その文字等の周りを照光する場合には、キートップ3全体もしくは、文字等の周囲のみが照光されるものである。
【0063】
文字等を暗部として表示し、その文字等の周りを照光するような照光式押釦スイッチ用部材50は、たとえば、以下のように形成される。まず、キートップ3の文字等に対応する領域に、加飾層の一部となる隠蔽層8を形成する(図18参照)。次に、隠蔽層8を形成していない部分に、加飾層の一部となる透光性の装飾層7を形成する(図19参照)。そして、透光性の装飾層7の一部または全部に重なるように拡散層5を形成し、拡散層5と重ならないあるいは一部で重なるように接着層6を形成する(図20参照)。そして、下治具12と上治具13とを用いて、キートップ3と導光板4とを、接着層6を介して加熱圧着する(図21参照)。図22は、照光式押釦スイッチ用部材50を表面から見た場合の、接着領域、拡散層5が形成された領域および照光領域を説明する平面図である。照光式押釦スイッチ用部材50では、図22のEで示される実線で囲まれた領域が、隠蔽層8から形成されるため、暗部としてユーザに視認される。また、図22のCで示される点線とEで示される実線との間で囲まれた領域が、拡散層5からの光により照光される照光領域となる。また、図22のCで示される領域の外側かつBで示される破線で囲まれた領域は、キートップ3と導光板4とが接着された接着領域である。
【0064】
また、上述の各実施の形態あるいは変形例においては、拡散層5と接着層6とはその厚さ方向において重ならないものとしたが、一部において重なるようにしてもよい。拡散層5と接着層6とが、端部で重なっていても、加熱および加圧した際に、接着層6が溶解することで拡散層5と導光板4との密着性を保つことができる。また、上述の各実施の形態では、接着層6は、拡散層5あるいは拡散層41を囲むように形成されたものとしているが、そのような形態に限らない。しかし、種々の環境におけるクリック動作を行った後でも、十分な強度でキートップ3と導光板4との固着状態を維持できれば、接着層6をどの領域に設けてもよい。さらに、上治具12あるいは下治具13による加熱および加圧により、拡散層5あるいは拡散層41が、導光板4に接着あるいは融着できるものとしてもよい。
【0065】
また、上述の各実施の形態において、複数のキートップ3が一枚のシート状で連接した状態のまま、各キートップ3に印刷を施すことで、印刷が容易となる。また、キートップ3と導光板4とを固着させる際に、各キートップ3をキートップ3が一枚のシート状で連接した状態のまま下治具12に配置した後、キートップ3の連接部分をレーザ等により切断するようにしてもよい。キートップ3が一枚のシート状で連接した状態で下治具12に複数のキートップ3を配置する場合には、各キートップ3の位置あわせが容易なものとなる。しかし、各キートップ3をキートップ3が一枚のシート状で連接した状態から切断し、それぞれ個別に治具へ配置するような形態としてもよい。
【0066】
また、第2の実施の形態では、キートップ3の下方位置に押圧子22を有するものとしたが、上述の他の実施例あるいは変形例においても押圧子22を設けるものとしてもよい。また、押圧子22を設けるものとした場合、フィルム21を、導光板4の下方に備えなくても良い。たとえば、導光板4に可撓性がある場合には、導光板4の裏面に押圧子22を固定してもよい。
【0067】
また、上述の各実施の形態において、拡散層5の屈折率を導光板4の屈折率よりも大きくすることによって、拡散層5に入射する光が増加する。したがって、拡散層5の屈折率を導光板4の屈折率より大きくするのが好ましい。また、導光板4の拡散層5が設けられる領域以外に、光反射層あるいは、プリズム面を設けてもよい。光反射層は、たとえば、フィルム21に蒸着で形成することができる。フィルム21に蒸着膜を設ける場合には、導光板4の裏面で光を反射させやすくするように、蒸着膜を、たとえば、アルミニウム等の高反射性の金属膜とすることができる。また、光反射層あるいはプリズム面を、導光板4の裏面側に設けて、導光板4の裏面側にくる光を効率よく拡散層5の側に導くようにしてもよい。光反射層あるいはプリズム面により、導光板4の内部を進行する光P1がほとんど全反射しながら、導光板4の内部を進行できるからである。なお、その光反射層は、導光板4の一部だけ、あるいは1面だけで設けられてもよい。
【0068】
また、各キートップ3と内部光源26との距離に応じて固形成分の濃度を変化させ、各キートップ3の照光の均一化を図ることができる。たとえば、内部光源26からの距離が最も長いキートップ3の直下の拡散層5には、固形成分の濃度をその拡散層5の樹脂と固形成分の総量に対して50重量%とし、各キートップ3と内部光源26との距離が近くなるにつれて、固形成分の濃度を49〜40重量%の範囲で低くしていくようにすると、光源26から各キートップ3までの距離に差があっても、その距離が長いキートップ3ほどキートップ3の表面側に向かう光量が多くなるので、各キートップ3の照光ムラを低減できる。なお、上述の固形成分の濃度は、一例に過ぎず、光量、各キートップ3と内部光源26との距離等の条件に応じて適宜変更できる。
【0069】
また、上述の各実施の形態および変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40,50は、導光板4を有するものとされるが、照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40,50は、導光板4を有さないものとしてもよい。
【0070】
また、上述の各実施の形態では、内部光源26としてLED等の可視光を発する内部光源26を用いるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、内部光源26として紫外線を発する内部光源を用いてもよい。その場合には、拡散層5に紫外線を拡散させる微小径(たとえば、粒径数μm以下の粒径)の拡散剤と、紫外線で励起され可視光を発光可能な蛍光体をさらに添加することで、照光を所望する領域が可視光で発光する。この場合、内部光源26がオフのときは、文字色が透光性加飾層9の色彩で視認されるが、一方、内部光源26がオンのときは、その色彩とは異なる色の発色が、ユーザに視認される。さらに、透光性加飾層9や装飾層7に、紫外線吸収剤を添加すると、外部からの紫外光には反応しないが、電子機器1Aの内部に設けられた内部光源26からの紫外光では、照光を所望する領域が発光するものとなる。すなわち、拡散層5に添加する長波長変換蛍光体により、内部光源26が消灯の場合と、内部光源26が点灯している場合とで、照光を所望する領域の発光の有無だけではなく、発光の色を変えることができる。
【実施例1】
【0071】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0072】
本実施例では、PC製の透明樹脂からなるキートップ3の裏面に、文字部を抜き文字とする加飾印刷を形成したキートップ3を用意した。その後、SiO2を拡散剤として使用すると共に、アクリル系の蒸発乾燥型である透明色のCAV(セイコーアドバンス社製)をバインダーに用いた拡散層5を印刷した。また、文字部以外の箇所では、接着性の熱硬化性インクであるVIC(セイコーアドバンス社製)を接着層6として印刷した。
【0073】
導光板4としては、厚さ0.2mmのウレタンシートを使用した。キートップ3と導光板4とを、下治具13と、表面を150度に加熱した上治具12とからなる加熱圧着治具を用いて、20秒間、圧力2MPaで加圧した。その結果、接着層6が溶融し、ウレタンシートからなる導光板4とPCからなるキートップ3とが固着した。
【0074】
キートップ3と導光板4との間において、図9や図22に示す点線Bで図示される固着された領域(以後、接着面積という。)が、図9や図22に示すキートップ3の外周で囲まれる領域、すなわち、固着されずに対向する領域(以後、非接着面積という。)と同じ場合よりも、図9や図22に示すように、接着面積が、非接着面積よりも小さい場合には、キートップ3を押圧した際のクリック感がより良好だった。
【0075】
また、接着面積よりも拡散層5の面積が小さい場合には、より均一に発光するものとなった。なぜなら、加熱圧着治具となる上治具13にて加圧する際に、拡散層5が変形したり、延伸の力が働くことで拡散層5が偏在したり、あるいは、拡散層5の厚みが部位により変化したりしにくいものになったためである。
【符号の説明】
【0076】
1、20、30、40、50 照光式押釦スイッチ用部材
3 キートップ
4 導光板
5 拡散層
6 接着層
7 装飾層(加飾層)
8 隠蔽層(加飾層)
9 透光性加飾層(加飾層)
11 フィルム
12 押圧子
41 拡散層(拡散層、加飾層)
S102、S402 拡散層形成ステップ、接着層形成ステップ
S103、S404 接着ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、携帯端末等に用いられる押釦スイッチ用部材として、携帯電話の内部に配置される光源からキートップを照らすタイプの照光式押釦スイッチ用部材が広く知られている。照光式押釦スイッチ用部材は、キートップの部分が照光されるため、暗所でもキー操作が容易であり、かつ意匠性にも優れている。
【0003】
照光式押釦スイッチ用部材は、たとえば、キーパッドと、キーパッドの裏面側に配置される導光板と、導光板の側方に配置される光源とを備えている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載されている従来の照光式押釦スイッチ用部材においては、光源から発せられた光が導光板に入射されて、導光板と空気層との界面で全反射を繰り返しながら導光板の内部へ広がる。また、光は、導光板の裏面側に設けられた凹凸形状のパターンで反射し、キーパッド側の文字が数字部分を照らすこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−080824(たとえば、請求項1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明には、次のような問題がある。すなわち、凹凸形状のパターンは、導光板に設けられているが、照光が必要とされる領域は、キーパッドに設けられているため、凹凸形状のパターンと照光が必要とされる領域との位置合わせが必要となることである。しかし、その位置合わせは、精度が求められ、その作業は極めて難しい。
【0006】
本発明は、上述の問題を解決すること、すなわち、キートップ等の照光が必要とされる領域と、拡散層等で形成される照光するための領域と、の位置あわせが容易な照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る照光式押釦スイッチ用部材は、透明な導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材において、導光板に入射した光をキートップの方向に導きキートップを照光するための拡散層がキートップに設けられると共に、キートップに設けられる拡散層の領域は、導光板とキートップとの接着領域よりも小さいものとしている。
【0008】
さらに、キートップと導光板との間にキートップに加飾を施すための加飾層が設けられると共に、加飾層は、拡散層として機能するようにするのが好ましい場合もある。
【0009】
さらに、キートップの押し込み方向の下側に押圧子を有するフィルムを、導光板の下方に備えるようにしてもよい。
【0010】
また、別の本発明は、導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材の製造方法であって、導光板に入射した光をキートップの方向に導くことでキートップを照光する拡散層を、キートップ側に設ける拡散層形成ステップと、キートップの拡散層が形成された側の面に、拡散層よりも大きい面積を有する接着層を形成する接着層形成ステップと、導光板を、キートップの拡散層が形成された面とあわせて、少なくとも接着層にて接着する接着ステップとを有することを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材の製造方法としている。
【0011】
さらに接着層と拡散層とは、一部あるいは全部が押圧方向で重ならないようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、キートップ等の照光が必要とされる領域と、拡散層等で形成される照光するための領域と、の位置あわせが容易な照光式押釦スイッチ用部材およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を有する電子機器の操作面を示す平面図である。
【図2】図1の電子機器を、図1のA−A線にて切断した断面図である。
【図3】図2に示す導光板に入射した光が、拡散層を介してキートップ側へ出射する様子を説明する拡大断面図である。
【図4】第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造方法を説明するフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートの第1ステップの途中段階における状態を示す図で、加飾層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図6】図4に示すフローチャートの第1ステップの終了後における状態を示す図で、加飾層に加え、さらに、透光性加飾層と隠蔽層とをさらに形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図7】図4に示すフローチャートの第2ステップの終了後における状態を示す図で、拡散層と接着層とをさらに形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図8】図4に示すフローチャートの第3ステップにおける状態を示す図で、上治具および下治具に配置された照光式押釦スイッチ用部材と両治具を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図9】図8の照光式押釦スイッチ用部材のキートップを表面から見た場合の、接着領域、拡散層が形成された領域および照光領域を説明する平面図である。
【図10】第2の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図11】第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図12】第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図13】第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造方法を説明するフローチャートである。
【図14】図13のフローチャートの第1ステップの終了後における状態を示す図で、加飾層の一部となる装飾層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図15】図13のフローチャートの第2ステップの終了後における状態を示す図で、加飾層の一部となる拡散層と隠蔽層8を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図16】図13のフローチャートの第3ステップの終了後における状態を示す図で、接着層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図17】図13のフローチャートの第4ステップにおける状態を示す図で、上治具および下治具に配置された照光式押釦スイッチ用部材と両治具を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図18】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、加飾層の一部となる隠蔽層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図19】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、加飾層の一部となる装飾層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図20】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、拡散層および接着層を形成したキートップを図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図21】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材の製造工程を説明する図で、上治具および下治具に配置された照光式押釦スイッチ用部材と両治具を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。
【図22】本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材を表面から見た場合の、接着領域、拡散層が形成された領域および照光領域を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材について、図面を参照しながら説明する。なお、断面図では、図を見やすくする目的で、各部材の厚さ方向の縮尺は、一定ではない。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1を有する電子機器1Aの操作面の平面図である。図2は、電子機器1Aを図1に示すA−A線にて切断した場合の、照光式押釦スイッチ用部材1およびパネル2を示す断面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、電子機器1Aの操作面側(図2の上側、以後、表側という。)には、パネル2および照光式押釦スイッチ用部材1のキートップ3が露出している。パネル2は、操作面のキートップ3以外の部分を覆う部材で、最終的に、電子機器1Aの筐体の一部となることができる。パネル2には、照光式押釦スイッチ用部材1が有するキートップ3を突出させるための穴部2aが設けられ、その穴部2aからキートップ3が電子機器1Aの表側の面に露出している。また、パネル2の操作面と逆側(図2の下側、以後、裏側という。)には、照光式押釦スイッチ用部材1が有する平面状の導光板4が配置されている。導光板4は、キートップ3を照光する際に、光を案内する。
【0017】
照光式押釦スイッチ用部材1の裏側の面には、平面状のフィルム21(詳細は後述)が配置されている。フィルム21の裏面であってキートップ3の中央付近に重なる位置には、スイッチ操作用の押圧子22が配置されている。押圧子22と対向するように、スイッチ回路が設けられた基板24が配置され、基板24の表側の面には、スイッチ部材を構成する部材として、ドーム状部材25、固定接点(不図示)、および導電部(不図示)が配置されている。導電部材からなるドーム状部材25は、逆碗状に配置され、基板24の固定接点(不図示)と接している。押釦部となるキートップ3が押し込まれると、押圧子22がドーム状部材25を押し込み、ドーム状部材25を座屈させる。すると、基板24の表側の面であって、ドーム状部材25の内側に配置されている導電部(不図示)と、ドーム状部材25とが導通状態になる。すなわち、スイッチがONになる。一方、キートップ3の押し下げを解除すると、ドーム状部材25の復元力により、導電部(不図示)と、ドーム状部材25とが非導通状態になる。すなわち、スイッチがOFFになる。
【0018】
図1に示すように、パネル2には、裏面から照光式押釦スイッチ用部材1が有するキートップ3を突出させるための穴部2aがキートップ3の数だけ設けられている。パネル2としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)あるいはポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリマー、またはステンレス、アルミニウム、銅、チタン、マグネシウム等の金属もしくは各種金属から成る合金の板材を用いることができる。パネル2の裏側の面と導光板4とは、接着剤層(不図示)を介して、接着されていてもよい。なお、接着ではなく、融着等されることで、パネル2と導光板4とが固着されていても良い。あるいは、パネル2と導光板4とが固着されていなくてもよい。
【0019】
図2に示すように、本実施の形態に係る押釦スイッチ部材1は、押釦部となるキートップ3と、内部光源26の光を導く導光板4、キートップ3と導光板4との間に介在し導光板4からの光をキートップ3側に導く拡散層5、および、キートップ3と導光板4とを固着させるための接着層6を主に有する。キートップ3は、導光板4の表側に配置され、接着層6を介して導光板4に固定されている。また、キートップ3の裏側の面であって、接着層6と重ならない位置には、拡散層5が配置されている。接着層6は、拡散層5の周りを囲むように配置されている。また、キートップ3と拡散層5、および、キートップ3と接着層6との間には、キートップ3に加飾を施すための層が設けられている。たとえば、接着層6と押圧方向に重なる領域には、キートップ3側から、加飾層の一部となる装飾層7および光を遮光すると共に加飾層の一部となる隠蔽層8が設けられている。そして、拡散層5と重なる位置には、加飾層の一部となる透光性加飾層9が設けられている。なお、キートップ3に加飾を施さない場合には、装飾層7、隠蔽層8および透光性加飾層9を設けなくても良い。
【0020】
キートップ3は、人の指などで押されることにより上下動し、スイッチ部材をオンオフさせる機能を有する部材である。キートップ3は、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂あるいはPC樹脂のように、透明性と硬度が高い材料で構成される。ただし、キートップ3の材料は、上記材料に限定されるものではなく、たとえば、キートップ3の表面をより高硬度の材料でコートするような場合には、キートップ3の材料として、より硬度の低い樹脂を採用しても良い。キートップ3は、導光板4からの光をその内部に入れるため、透明であるのが望ましいが、透光性を確保できる限り、キートップ3の内部、表面または裏面に、印刷等によって加飾を施しても良い。たとえば、キートップ3に、抜き文字にて文字、記号もしくは模様等の加飾を施すことで、内部光源26にて照光した場合に、その抜き文字の内部部分のみを光らせることができる。
【0021】
導光板4は、1つあるいは複数の内部光源26からの光を導光し、キートップ3側に導くもので、1つの平板状の部材とされている。しかし、1つではなく、複数に分割された導光板を用いるようにしてもよい。導光板4は、PC樹脂、PU樹脂、PET樹脂またはアクリル樹脂のように、透明性が高く、かつ可撓性に優れた材料で構成されるのが好ましい。導光板4の厚さは、0.025〜0.5mmの範囲にあるのが好ましく、より好ましくは、0.2〜0.4mmの範囲である。導光板4の厚さを0.025mm以上とすることによって、導光板4を加工しやすくなる。また、導光板4の厚さを0.5mm以下とすることによって、導光板4は、キートップ3の押し込みに追従して下方に撓みやすくなると共に、照光式押釦スイッチ用部材1をより薄くできる。また、折り曲げられた導光板4の端部は、内部光源26に接している。導光板4は、その側方に配置される内部光源26からの光が通るため、透明であるのが望ましいが、透光性を確保できる限り、導光板4の内部、表面または裏面に、印刷等によって加飾を施しても良い。
【0022】
拡散層5は、導光板4の内部を全反射してきた光を拡散させ、拡散光をキートップ3側へ出射させる役割を有する。キートップ3に設けられる拡散層5は、一定の面積を有する領域全体に設けてもよいし、文字、記号、線もしくは点等のパターンとして形成してもよい。光を拡散させるための拡散剤としては、有機顔料および/または無機顔料を含むインク等の固形成分を使用できる。特に、拡散剤としては、白色顔料あるいは銀色顔料等の無機顔料を使用するのが好ましい。これは、拡散層5に入射した光の反射率を高め、かつ、キートップ3の内部に入射した光が再び拡散層5側に入っても、キートップ3側に効率良く反射させるようにするためである。さらに、拡散剤としては、たとえば、二酸化珪素(SiO2)、炭酸カルシウム、ガラスビーズ、架橋ポリスチレン、シリコンビーズ、あるいは酸化チタニウムのいずれか1つまたは複数の組み合せであることが好ましい。また、その粒径が0.1〜10μm程度の粉末を用いた場合には、拡散層5を印刷で形成しやすいため好ましい。銀色顔料としては、たとえば、アルミニウム粉末を使用できる。また、拡散層5は、接着層6のように導光板4と固着されなくてもよいが、拡散層5と導光板4とは、少なくとも一部で接していることが好ましい。特に、拡散層5と導光板4とは、拡散層5の大部分が導光板4に密接に接するあるいは密着している状態であるのが好ましい。
【0023】
また、拡散層5は、有機顔料および/または無機顔料から成る固形成分を含みつつ、導光板4からキートップ3に光を入射させることができるように、透光性をも有する必要がある。遮光性の拡散層5では、導光板4からの光をキートップ3へ入射できなくなるからである。このため、拡散層5中の固形成分の濃度を、次の範囲にするのが好ましい。たとえば、二酸化珪素を顔料に用いた場合には、顔料と樹脂の総量に対する顔料の割合を1〜50重量%とし、酸化チタンを顔料に用いた場合には、顔料と樹脂の総量に対する顔料の割合を1〜50重量%とするのが好ましい。なぜなら、上述の顔料の割合が下限値以上の場合には、粘度が1Pa・s以上となるため、印刷機を用いて拡散層5を形成できるからである。さらに、拡散層5の厚さは、2〜25μmとするのが好ましい。ただし、上述した拡散層5の中の固形成分の濃度および拡散層5の厚さは、一例に過ぎず、その濃度およびその厚さは、使用する顔料あるいは要求される輝度に応じて、適宜変えることができる。
【0024】
接着層6は、キートップ3と導光板4とを固着するための層である。接着層6は、透光性とされているが、非透光性としてもよい。たとえば、接着層6は、有機溶剤に固形成分を混ぜた接着インクによって構成される。なお、接着後に接着層6の全部が揮発するような有機溶剤のみからなる接着層6を用いてもよい。有機溶剤としては、ケトン系、エーテル系あるいはエステル系等の溶剤を使用できる。また、照光を接着層6のうち、導光板4と固着される領域(以下、接着領域という。)は、拡散層5を設ける領域よりも広い領域とすることが好ましい。なぜなら、キートップ3と導光板4とを厚さ方向に圧着した際に、接着領域の外周部は、接着剤が偏在したり厚みの変化が生じたりする。このため、接着領域より拡散層5が大きいと、輝度ムラが生じやすくなる。接着領域が拡散層5と同じ大きさか、あるいは拡散層5が設けられる領域が接着領域よりも小さい場合には、輝度ムラが視認されにくくなり好ましい。また、拡散層5が小さい領域である場合には、キートップ3および導光板4の材質自体に由来する輝度ムラが見えにくいという利点も有する。
【0025】
加飾層の一部となる装飾層7は、キートップ3の裏面側に形成され、キートップ3に装飾を施すための層である。本実施の形態では、装飾層7は、非透光性のインクから形成され、装飾層7が形成されていない領域が文字や数字等の形を呈する、いわゆる抜き文字が形成されている部分となる。また、その抜き文字部7a(図5参照)は、電子機器1Aの内部から照光された際に、光を表面へ出射する照光領域となる。
【0026】
加飾層の一部となる隠蔽層8は、非透光性のインク、例えば黒色のインクにて約1〜30μmの厚さで形成される。ここで、隠蔽層8を非透光性とするためには、全光線透過率が1%以下であることが好ましい。また、隠蔽層8は、内部光源26の点灯時に、操作面に向かって照射された光が、透光性加飾層9以外の領域から漏れないように遮光する層である。また、隠蔽層8は、抜き文字部7a部分に形成されていない。なお、印刷のわずかなずれを許容する公差として、遮蔽層8の縁部は、図2に示すように、抜き文字部7aの最外周よりもわずかに外側に位置するのが好ましい。
【0027】
また、透光性加飾層9は、装飾層7および隠蔽層8が形成されていない抜き文字となっている部分に形成された透光性の層である。ここで、透光性加飾層9は、実質的に透光であればどのようなものでもよいが、特に、透光性加飾層9は、全光線透過率が20%以上であることが好ましい。
【0028】
図3は、照光式押釦スイッチ用部材1の導光板4の側面から光を入射された場合の光の経路を説明する断面図である。たとえば、LED等の内部光源26を導光板4の側部に配置する。すると、内部光源26から導光板4の内部に入射された光は、導光板4と空気層との界面、または、導光板4と導光板4の外側に設けられた後述の反射層との界面で、全反射を繰り返しながら導光板4の内部へ広がる。そして、図3に示すように、導光板4の内部からの光P1が拡散層5に入射すると、光P1は、拡散層5の内部に分散している固形成分(白色または光沢性の着色材)にて乱反射して、光P1は透光性加飾層9を介してキートップ3の内部へと入射する。キートップ3の内部に入った光P1は、再び拡散層5に入射する可能性もあるが、固形成分で反射して再びキートップ3に戻ることもできる。このため、固形成分が拡散層5中に均一に分散している限り、キートップ3の拡散層5が設けられた領域、すなわち、照光が必要とされる領域Wにおいて照光ムラが少ないものとなる。したがって、キートップ3の拡散層5が設けられた領域Wは、均一に照光されるものとなる。
【0029】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1の製造方法の一例について図4から図8を参照しながら説明する。
【0030】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1の製造方法の主な工程の流れを示すフローチャートである。
【0031】
図5は、加飾層の一部となる装飾層7を形成したキートップ3を、図1のA−A線と同一な線で切断した場合の断面図である。まずはじめに、印刷にてキートップ3の裏面側に装飾層7を形成する(ステップS101;加飾層形成ステップ)。印刷としては、インクジェット方式の他、スクリーン印刷、グラビア印刷、パッド印刷、凸版印刷等を採用できる。キートップ3に設ける装飾層7としては、たとえば、キートップ3の表面に表示させるための数字や文字を抜き文字として印刷したものがある。その後、装飾層7が軽く指で触ってもベタベタしないくらいまで、いわゆる、指触乾燥させる。なお、この装飾層7の形成工程は、加飾層の形成ステップの一部となり、加飾層の一部が照光を所望する照光エリアとなる。この実施の形態では、抜き文字部7aが照光エリアとなる。
【0032】
図6は、加飾層の一部となる透光性加飾層9および加飾層の一部となる隠蔽層8をキートップ3に形成した状態を示す断面図である。第1ステップとなるステップS101において、装飾層7を形成した後、抜き文字部7aの最外周よりわずかに外側で囲まれる領域を除き、キートップ3の装飾層7を形成した側の面に遮光性の隠蔽層8を形成する。そして、透光性加飾層9を、その抜き文字部7aの最外周よりわずかに外側で囲まれる領域に印刷し、指触乾燥させる。なお、透光性加飾層9を形成した後、隠蔽層8を形成してもよい。この第1ステップであるステップS101によって、加飾層とその一部に設けられる照光領域とが形成される。
【0033】
次に、キートップ3に、拡散層5および接着層6を印刷にて形成する(ステップS102;拡散層形成ステップおよび接着層形成ステップ)。図7は、第2ステップであるステップS102の終了後におけるキートップ3を図1のA−A線と同一の線に沿って切断した場合の断面図である。このステップS102では、キートップ3の抜き文字部7aに対応する領域に、拡散層5を形成し、指触乾燥させる。そして、キートップ3の裏側面の拡散層5を形成していない部分に、接着層6を印刷にて形成する。なお、拡散層5の形成と接着層6の形成とを逆順にしても良いし、同時としてもよい。また、透光性加飾層9と拡散層5を設けた後に、隠蔽層8と接着層6とを設けるようにしてもよい。
【0034】
次に、第3ステップとなる図4のステップS103において、キートップ3と導光板4とを固着させる。図8は、図4のステップS103の工程において、上治具13および下治具12内に配置し加熱圧着させている状態の照光式押釦スイッチ用部材1を、図1のA−A線と同一の線に沿って切断した場合の断面図である。ステップS103では、まず、下治具12に1または2以上のキートップ3を、接着層6が上側になるように配置する。次に、導光板4を、キートップ3を配置した下治具12の上、すなわち、接着層6と対向するように配置する。そして、キートップ3と導光板4とを、加熱した上治具13により、導光板4側からその厚さ方向に加圧する。たとえば、表面温度を100〜170℃に加熱した上治具13を用いて、圧力2MPaにて20秒間加圧することで、導光板4とキートップ3とを固着させる(ステップS103;キートップ−導光板固着ステップ)。
【0035】
なお、キートップ3が配置された導光板4を加熱および加圧するための治具は、下治具12のキートップ3に接する面、あるいは上治具13の導光板4に接する面のいずれか一方の材質が、キートップ3の材質よりも低硬度であることが好ましい。そのような治具を用いることにより、均一な圧力でキートップ3と導光板4とを加圧できるため、キートップ3と導光板4とが、均一に接着される。また、加熱および加圧により、接着層6と導光板4との間に相溶部が形成される。加熱および加圧を停止し室温まで冷却すると、加熱により形成された相溶部が硬化し、融着部分が形成される。このため、接着層6を介してキートップ3と導光板4とが強力に接着される。
【0036】
なお、加熱治具となる上治具13が、接着層6の全面ではなく一部に相当する領域に対応するような形状の場合には、接着層6の全面ではなく、接着層6の一部でのみキートップ3と導光板4とを接着させることができる。図9は、キートップ3と導光板4との接着領域、拡散層5が設けられている領域、および、照光を所望する領域(本実施の形態の場合、抜き文字部7aの内部)を説明するため、キートップ3を表面から見た場合の平面図である。
【0037】
キートップ3が導光板4と接着している領域は、キートップ3の最外縁よりも内側に位置する点線Bと、光を所望する領域の外周よりもわずかに外側を囲む点線Cとの間の領域である。たとえば、キートップ3の外縁0.3mm幅を除く領域にて、キートップ3が、導光板4に固着されている。接着層6をキートップ3の最外縁から離間して設けることで、キートップ3と導光板4とを接着するためにキートップ3と導光板4の厚さ方向に加えた圧力で、接着層6がキートップ3の外周よりも外側にはみ出すことがない。
【0038】
また、キートップ3の裏面全面を接着領域とせずに、キートップ3の外縁を非接着領域とすることで、よりよいクリック感が得られる照光式押釦スイッチ用部材1となる。なぜなら、非接着領域が広いので、隣接するキートップ3の接着領域までの間隔が広がり、キートップ3を押圧した場合に、隣接する接着領域の弾性変形を阻むことがないため、小さい力で導光板4を下方に撓ませることができるからである。
【0039】
また、照光式押釦スイッチ用部材1では、図9の実線Dで囲まれた照光を所望する領域(本実施の形態では、抜き文字部7a)の外周よりも、わずかに外側を囲む領域(すなわち、点線Cで囲まれる領域)に拡散層5が形成されている。したがって、拡散層5で拡散した光が、照光を所望する領域(すなわち、点線Dで囲まれた領域)のすべてを照光するものとなる。
【0040】
さらに、照光式押釦スイッチ用部材1の製造において、照光を所望する領域と、拡散層5を設ける領域との位置あわせが容易なものとなる。なぜなら、照光領域となる実線Dで囲まれた領域に光を導く拡散層5を導光板4に設けるのではなく、キートップ3側に拡散層5を形成しているため、拡散領域と照光が所望される領域との位置あわせが不要となるためである。すなわち、この実施の形態では、キートップ3に形成された照光を所望する領域にあわせて拡散層5をキートップ3に形成しているからである。
【0041】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材20について説明する。以後、各実施の形態を説明するにあたって、第1の実施の形態と共通する部分については、同じ符号を用いて示し、また当該共通する部分についての説明を省略する。
【0042】
図10は、第2の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材20を、図1に示すA−A線にて切断した断面図である。
【0043】
第2の実施の形態の照光式押釦スイッチ用部材20は、電子機器1Aが有するフィルム21および押圧子22を、押釦スイッチ用部材20の一部として含む。すなわち、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1に加えて、導光板4の裏面側にフィルム21が固着されている。また、フィルム21の裏面であって、キートップ3の中央付近と重なる領域には、フィルム21から裏面方向に突出する押圧子22が設けられている。
【0044】
フィルム21は、導光板4と同一面積を有する平板状に形成されているが、導光板4と比較して、狭い面積のものとしたり、逆に、大きな面積を有するものとしてもよい。フィルム21は、キートップ3の押し込みを押圧子22に伝達できるように、シリコーンゴムのような可撓性に富み、比較的柔らかい材料で構成される。ただし、フィルム21の材料は、上記材料に限定されるものではなく、導光板4と同等の硬度を有する材料でも良い。また、フィルム21は、たとえば、導光板4に接着しても良い。フィルム21は、導光板4の側面から入った光を押圧子22の方向に透過させないように、不透明の材料で構成し、あるいは印刷等により遮光性の加飾を施しても良い。逆に、フィルム21の裏面側から導光板4の内部に光を透過させる場合には、フィルム21を透明度の高い材料で構成するのが好ましい。フィルム21の厚さは、照光式押釦スイッチ用部材20をより薄くする必要から、できるだけ薄いのが好ましい。しかし、フィルム21の材料にシリコーンゴムを採用する場合には、フィルム21は、容易に破れないように、0.1〜0.5mmの厚さとするのが好ましい。
【0045】
フィルム21がシリコーンゴム等の樹脂から構成される場合には、押圧子22は、フィルム21と一体で形成されるのが好ましい。押圧子22を別個に用意してフィルム21に接着するよりも、押圧子22とフィルム21とが一体化した成形体を作製する方が、製造効率が上がると共に、製造コストが低くなるからである。しかし、押圧子22をPC樹脂で作製し、フィルム21に接着する方法を採用することもできる。また、フィルム21を、PET樹脂製あるいはPU樹脂製のシートとしても良い。シリコーンゴムあるいはPU樹脂に比べて可撓性に劣るPET樹脂を用いた場合には、押圧子22の外周部でキートップ3の形状に対応した形状でPET樹脂製のシートにスリットを設けると、押圧の感触がより良好になる。
【0046】
上述のように、電子機器1Aが有する押圧子22が設けられたフィルム21を、照光式押釦スイッチ用部材1と別部材とするのではなく、照光式押釦スイッチ用部材20の一部とすることで、照光式押釦スイッチ用部材20の強度が向上する。また、非常に薄い導光板4を用いた場合にも、キートップ3を押し込んだ際の、導光板4を元の状態に復元させるための復元力を大きくすることができる。
【0047】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材30について説明する。
【0048】
図11は、第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材30を図1に示すA−A線と同一の線にて切断した断面図である。
【0049】
第3の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材30では、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1と異なり、接着層6がキートップ3の最外縁から内方に離間して設けられている。
【0050】
図11に示すように、接着層6をキートップ3の最外縁から内方に離間して設けることで、加熱治具となる上治具13が接着層6の全面に対応するような形状や導光板4の全面を押圧するような形態であっても、キートップ3の最外縁を導光板4に接着しないようにすることができる。したがって、キートップ3と導光板4とを接着する際に、接着層6が圧力でキートップ3の外周よりも外側にはみ出すことがより少ないものとなる。また、キートップ3の裏面全面を接着領域とせずに、キートップ3の外縁を非接着領域とすることで、よいクリック感が得られる押釦スイッチ用部材30となる。
【0051】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40について図12から図17を参照しながら説明する。
【0052】
図12は、第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40を図1に示すA−A線と同一の線にて切断した断面図である。また、図13は、本発明の第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40の製造方法の主な工程の流れを示すフローチャートである。
【0053】
第4の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材40では、第1の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1と異なり、拡散層5の代わりに、透光性の加飾可能な拡散層41が設けられている。照光式押釦スイッチ用部材40は、たとえば、次のような工程で製造される。
【0054】
図14は、図13に示す第1ステップであるステップS401を実施した後におけるキートップ3を、図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。まず、印刷にてキートップ3に装飾層7を形成する(ステップS401)。その後、装飾層7を指触乾燥させる。
【0055】
そして、図15に示すように、第2ステップとして、拡散層41を設けない部分に、遮光性の隠蔽層8を形成する。そして、拡散剤が分散された透光性の加飾可能な拡散層41を、その抜き文字部7aに印刷し(ステップS402;加飾層兼拡散層形成ステップ)、指触乾燥させる。
【0056】
図16は、接着層6を形成した後のキートップ3を図1のA−A線と同一な線に沿って切断した場合の断面図である。図16のように、第3のステップとしては、キートップ3の照光を所望する領域以外、すなわち、この例では、拡散層41を設けた以外(実際には図16に示すように、拡散層41よりわずかに小さくなる領域以外)の部分に、接着層6を印刷にて形成する(ステップS403;接着層形成ステップ)。
【0057】
最後に、ステップS404を行う。ステップS404では、下治具12に1または2以上のキートップ3を、接着層6が上側になるように配置する。次に、導光板4を、キートップ3を配置した下治具12の上、すなわち、接着層6と対向するように配置する。そして、キートップ3と導光板4とを、導光板4側から加熱した上治具13によりその厚さ方向に加圧する(ステップS404;キートップと導光板との固着ステップ)。図17は、上治具13および下治具12に配置されたキートップ3および導光板4を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。ここで、キートップ3および導光板4は、加熱しながら加圧されるため、接着層6が展開されると共に、接着層6に含まれる溶剤等が揮発するため、接着層6の厚みはほとんど生じない。したがって、導光板4と拡散層41とは密着し、両部材間に空気等の空間は生じない。そして、拡散層41は、導光板4内部の光を拡散させることができるものとなる。
【0058】
上述のような照光式押釦スイッチ用部材40とすることで、第1の実施の形態における透光性加飾層8を形成する工程と拡散層5を形成する工程を1つの工程とすることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態に係る照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40の各実施の形態について説明したが、本発明は、上述の各実施の形態に限定されることなく、種々の変形を施して実施可能である。
【0060】
たとえば、上述の各実施の形態においては、照光を所望する領域、たとえば、照光を所望する領域としての文字や数字の領域よりも、わずかに大きい領域を有する拡散層5が、その照光を所望する領域を囲んでいるが、このような形態に限らない。拡散層5は、照光を所望する領域と同一あるいは、照光を所望する領域よりも、かなり大きく外側を囲むように覆っていてもよい。しかし、拡散層5を設ける領域をより小さくした場合には、導光板4に入射した光の光量が、内部光源26からの距離に応じて変化しにくいものとなる。なぜなら、拡散層5の領域が小さい場合には、導光板4の内部を全反射して進む光のうち、拡散層5部分からキートップ3側へ出射する光量が小さくなるので、内部光源26からの距離が遠い部分へも、十分な光量の光が伝達されるからである。
【0061】
また、上述の各実施の形態において、キートップ3に表示させる文字を装飾層7の中に形成される抜き文字とすることで、表示させる文字等を照光するものとしたが、このようなものに限らない。たとえば、キートップ3に表示させる文字等を遮光またはそれに準じる印刷とし、文字以外の領域を透光性の加飾層を印刷することで、当該文字等の周りを照光し、文字は、暗部として視認されるものとしてもよい。しかし、照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40のように、文字等の限られた部分のみが光を透過するキートップ3を用いた場合には、キートップ3や導光板4の材料自体の品質などによりキートップ3や導光板4の光透過率が不均一な場合にも、その光量の不均一さが、表面から視認されにくいものとなるためより好ましい。さらに、文字等の限られた部分のみが光を透過するキートップ3では、キートップ3と導光板4とを厚さ方向に圧着した際に接着剤が偏在することにより生じる接着跡等が、表面から視認されにくいものとなるためより好ましい。
【0062】
図18〜図21は、本実施の形態の変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材50の製造工程を説明する図で、隠蔽層8を形成したキートップ3を図1のA−A線と同一の線で切断した場合の断面図である。図18〜図21に示す変形例では、ユーザに視認させる文字等を暗部として表示し、その文字等の周りを照光する場合には、キートップ3全体もしくは、文字等の周囲のみが照光されるものである。
【0063】
文字等を暗部として表示し、その文字等の周りを照光するような照光式押釦スイッチ用部材50は、たとえば、以下のように形成される。まず、キートップ3の文字等に対応する領域に、加飾層の一部となる隠蔽層8を形成する(図18参照)。次に、隠蔽層8を形成していない部分に、加飾層の一部となる透光性の装飾層7を形成する(図19参照)。そして、透光性の装飾層7の一部または全部に重なるように拡散層5を形成し、拡散層5と重ならないあるいは一部で重なるように接着層6を形成する(図20参照)。そして、下治具12と上治具13とを用いて、キートップ3と導光板4とを、接着層6を介して加熱圧着する(図21参照)。図22は、照光式押釦スイッチ用部材50を表面から見た場合の、接着領域、拡散層5が形成された領域および照光領域を説明する平面図である。照光式押釦スイッチ用部材50では、図22のEで示される実線で囲まれた領域が、隠蔽層8から形成されるため、暗部としてユーザに視認される。また、図22のCで示される点線とEで示される実線との間で囲まれた領域が、拡散層5からの光により照光される照光領域となる。また、図22のCで示される領域の外側かつBで示される破線で囲まれた領域は、キートップ3と導光板4とが接着された接着領域である。
【0064】
また、上述の各実施の形態あるいは変形例においては、拡散層5と接着層6とはその厚さ方向において重ならないものとしたが、一部において重なるようにしてもよい。拡散層5と接着層6とが、端部で重なっていても、加熱および加圧した際に、接着層6が溶解することで拡散層5と導光板4との密着性を保つことができる。また、上述の各実施の形態では、接着層6は、拡散層5あるいは拡散層41を囲むように形成されたものとしているが、そのような形態に限らない。しかし、種々の環境におけるクリック動作を行った後でも、十分な強度でキートップ3と導光板4との固着状態を維持できれば、接着層6をどの領域に設けてもよい。さらに、上治具12あるいは下治具13による加熱および加圧により、拡散層5あるいは拡散層41が、導光板4に接着あるいは融着できるものとしてもよい。
【0065】
また、上述の各実施の形態において、複数のキートップ3が一枚のシート状で連接した状態のまま、各キートップ3に印刷を施すことで、印刷が容易となる。また、キートップ3と導光板4とを固着させる際に、各キートップ3をキートップ3が一枚のシート状で連接した状態のまま下治具12に配置した後、キートップ3の連接部分をレーザ等により切断するようにしてもよい。キートップ3が一枚のシート状で連接した状態で下治具12に複数のキートップ3を配置する場合には、各キートップ3の位置あわせが容易なものとなる。しかし、各キートップ3をキートップ3が一枚のシート状で連接した状態から切断し、それぞれ個別に治具へ配置するような形態としてもよい。
【0066】
また、第2の実施の形態では、キートップ3の下方位置に押圧子22を有するものとしたが、上述の他の実施例あるいは変形例においても押圧子22を設けるものとしてもよい。また、押圧子22を設けるものとした場合、フィルム21を、導光板4の下方に備えなくても良い。たとえば、導光板4に可撓性がある場合には、導光板4の裏面に押圧子22を固定してもよい。
【0067】
また、上述の各実施の形態において、拡散層5の屈折率を導光板4の屈折率よりも大きくすることによって、拡散層5に入射する光が増加する。したがって、拡散層5の屈折率を導光板4の屈折率より大きくするのが好ましい。また、導光板4の拡散層5が設けられる領域以外に、光反射層あるいは、プリズム面を設けてもよい。光反射層は、たとえば、フィルム21に蒸着で形成することができる。フィルム21に蒸着膜を設ける場合には、導光板4の裏面で光を反射させやすくするように、蒸着膜を、たとえば、アルミニウム等の高反射性の金属膜とすることができる。また、光反射層あるいはプリズム面を、導光板4の裏面側に設けて、導光板4の裏面側にくる光を効率よく拡散層5の側に導くようにしてもよい。光反射層あるいはプリズム面により、導光板4の内部を進行する光P1がほとんど全反射しながら、導光板4の内部を進行できるからである。なお、その光反射層は、導光板4の一部だけ、あるいは1面だけで設けられてもよい。
【0068】
また、各キートップ3と内部光源26との距離に応じて固形成分の濃度を変化させ、各キートップ3の照光の均一化を図ることができる。たとえば、内部光源26からの距離が最も長いキートップ3の直下の拡散層5には、固形成分の濃度をその拡散層5の樹脂と固形成分の総量に対して50重量%とし、各キートップ3と内部光源26との距離が近くなるにつれて、固形成分の濃度を49〜40重量%の範囲で低くしていくようにすると、光源26から各キートップ3までの距離に差があっても、その距離が長いキートップ3ほどキートップ3の表面側に向かう光量が多くなるので、各キートップ3の照光ムラを低減できる。なお、上述の固形成分の濃度は、一例に過ぎず、光量、各キートップ3と内部光源26との距離等の条件に応じて適宜変更できる。
【0069】
また、上述の各実施の形態および変形例に係る照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40,50は、導光板4を有するものとされるが、照光式押釦スイッチ用部材1,20,30,40,50は、導光板4を有さないものとしてもよい。
【0070】
また、上述の各実施の形態では、内部光源26としてLED等の可視光を発する内部光源26を用いるものとしたが、このような形態に限らない。たとえば、内部光源26として紫外線を発する内部光源を用いてもよい。その場合には、拡散層5に紫外線を拡散させる微小径(たとえば、粒径数μm以下の粒径)の拡散剤と、紫外線で励起され可視光を発光可能な蛍光体をさらに添加することで、照光を所望する領域が可視光で発光する。この場合、内部光源26がオフのときは、文字色が透光性加飾層9の色彩で視認されるが、一方、内部光源26がオンのときは、その色彩とは異なる色の発色が、ユーザに視認される。さらに、透光性加飾層9や装飾層7に、紫外線吸収剤を添加すると、外部からの紫外光には反応しないが、電子機器1Aの内部に設けられた内部光源26からの紫外光では、照光を所望する領域が発光するものとなる。すなわち、拡散層5に添加する長波長変換蛍光体により、内部光源26が消灯の場合と、内部光源26が点灯している場合とで、照光を所望する領域の発光の有無だけではなく、発光の色を変えることができる。
【実施例1】
【0071】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0072】
本実施例では、PC製の透明樹脂からなるキートップ3の裏面に、文字部を抜き文字とする加飾印刷を形成したキートップ3を用意した。その後、SiO2を拡散剤として使用すると共に、アクリル系の蒸発乾燥型である透明色のCAV(セイコーアドバンス社製)をバインダーに用いた拡散層5を印刷した。また、文字部以外の箇所では、接着性の熱硬化性インクであるVIC(セイコーアドバンス社製)を接着層6として印刷した。
【0073】
導光板4としては、厚さ0.2mmのウレタンシートを使用した。キートップ3と導光板4とを、下治具13と、表面を150度に加熱した上治具12とからなる加熱圧着治具を用いて、20秒間、圧力2MPaで加圧した。その結果、接着層6が溶融し、ウレタンシートからなる導光板4とPCからなるキートップ3とが固着した。
【0074】
キートップ3と導光板4との間において、図9や図22に示す点線Bで図示される固着された領域(以後、接着面積という。)が、図9や図22に示すキートップ3の外周で囲まれる領域、すなわち、固着されずに対向する領域(以後、非接着面積という。)と同じ場合よりも、図9や図22に示すように、接着面積が、非接着面積よりも小さい場合には、キートップ3を押圧した際のクリック感がより良好だった。
【0075】
また、接着面積よりも拡散層5の面積が小さい場合には、より均一に発光するものとなった。なぜなら、加熱圧着治具となる上治具13にて加圧する際に、拡散層5が変形したり、延伸の力が働くことで拡散層5が偏在したり、あるいは、拡散層5の厚みが部位により変化したりしにくいものになったためである。
【符号の説明】
【0076】
1、20、30、40、50 照光式押釦スイッチ用部材
3 キートップ
4 導光板
5 拡散層
6 接着層
7 装飾層(加飾層)
8 隠蔽層(加飾層)
9 透光性加飾層(加飾層)
11 フィルム
12 押圧子
41 拡散層(拡散層、加飾層)
S102、S402 拡散層形成ステップ、接着層形成ステップ
S103、S404 接着ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材において、
上記導光板に入射した光を上記キートップの方向に導き上記キートップを照光するための拡散層が上記キートップに設けられると共に、
上記キートップに設けられる上記拡散層の領域は、上記導光板と上記キートップとの接着領域よりも小さいことを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の照光式押釦スイッチ用部材において、
前記キートップと前記導光板との間に加飾を施すための加飾層が設けられると共に、
当該加飾層は、前記拡散層として機能することを特徴とすることを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照光式押釦スイッチ用部材において、
前記キートップの押し込み方向の下側に押圧子を有するフィルムを、前記導光板の下方に備えたことを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材の製造方法において、
上記導光板に入射した光を上記キートップの方向に導くことで上記キートップを照光する拡散層を、上記キートップ側に設ける拡散層形成ステップと、
上記キートップの上記拡散層が形成された側の面に、上記拡散層よりも大きい面積を有する接着層を形成する接着層形成ステップと、
上記導光板を、上記キートップの上記拡散層が形成された面とあわせて、少なくとも接着層にて接着する接着ステップと、
を有することを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の照光式押釦スイッチ用部材の製造方法において、
上記接着層と上記拡散層とは、一部あるいは全部が押圧方向に重ならないことを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項1】
透明な導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材において、
上記導光板に入射した光を上記キートップの方向に導き上記キートップを照光するための拡散層が上記キートップに設けられると共に、
上記キートップに設けられる上記拡散層の領域は、上記導光板と上記キートップとの接着領域よりも小さいことを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材。
【請求項2】
請求項1に記載の照光式押釦スイッチ用部材において、
前記キートップと前記導光板との間に加飾を施すための加飾層が設けられると共に、
当該加飾層は、前記拡散層として機能することを特徴とすることを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の照光式押釦スイッチ用部材において、
前記キートップの押し込み方向の下側に押圧子を有するフィルムを、前記導光板の下方に備えたことを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材。
【請求項4】
導光板の片面に、1以上の樹脂製のキートップを配置した照光式押釦スイッチ用部材の製造方法において、
上記導光板に入射した光を上記キートップの方向に導くことで上記キートップを照光する拡散層を、上記キートップ側に設ける拡散層形成ステップと、
上記キートップの上記拡散層が形成された側の面に、上記拡散層よりも大きい面積を有する接着層を形成する接着層形成ステップと、
上記導光板を、上記キートップの上記拡散層が形成された面とあわせて、少なくとも接着層にて接着する接着ステップと、
を有することを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の照光式押釦スイッチ用部材の製造方法において、
上記接着層と上記拡散層とは、一部あるいは全部が押圧方向に重ならないことを特徴とする照光式押釦スイッチ用部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2010−287528(P2010−287528A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−142196(P2009−142196)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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