説明

照合システム及びその方法並びにそれを用いたデータ処理端末及びプログラム

【課題】 パスワードの機密性を損なうことなく、使用者によるパスワードの失念の恐れもな、安価に正当使用者の照合を可能とした照合システムを得る。
【解決手段】 データ処理端末における正当使用者の照合をなすに際して、画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録部に登録しておく。そして、使用者により入力された回答データと登録部に登録されている正解データとを比較して、一致した場合にのみこの使用者が正当使用者であると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照合システム及びその方法並びにそれを用いたデータ処理端末及びプログラムに関し、特にデータ処理端末における使用者の正当性を照合するための照合方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータや携帯通信端末などのデータ処理端末において、正当使用者以外による使用を禁止するための機密保持機能としては、パスワードによる照合方法が一般に広く利用されている。この照合方法においては、パスワードの文字や数字が、予め登録されているパスワードと同一であれば正当と判定し、不一致であれば不正であると判定するようになっている。
【0003】
このために、一般的に用いられているパスワードは、使用者が記憶しやすいように、その桁数を少なくせざるを得ないし、また、使用者は、自分の電話番号や誕生日のように、比較的見破られやすい数字の組合せを用いることが多くなる。従って、第三者にパスワードが見破られて不正使用される危険性が高くなっている。
【0004】
そのための対策としては、パスワードの桁数を増やすなどの方法により、パスワードを構成する数字の組合せを複雑化する方法が考えられるが、桁数が増大すると、使用者がパスワードを記憶できないという使用上の問題が生ずることになる。また、パスワードの桁数が少ない場合であっても、その文字や数字がランダムなパスワードの場合、他の機器で用いているパスワードと混同したり、場合によっては失念してしまうなどの問題がある。
【0005】
この様な問題を解消するために、生体認証方式が提案されており、例えば、特許文献1では、使用者の目の虹彩パターン情報を用いて正当使用者の認証を行う方式が開示されており、また、特許文献2では、使用者の指紋パターン情報を用いて正当使用者の認証を行う方式が開示されている。更にはまた、特許文献3では、使用者の静脈パターン情報を用いた技術も開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−030246号公報
【特許文献2】特開2004−334904号公報
【特許文献3】特開2006−093934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1〜3の正当使用者照合方式では、人間の生体情報を用いるものであるから、高度の技術が必要であり、またコスト的にも高価になり、携帯電話機などの携帯通信端末には不適であるという欠点がある。
【0008】
本発明の目的は、パスワードの機密性を損うことなく、使用者によるパスワードの失念の恐れもなく、安価に正当使用者の照合を可能とした正当使用者照合システム及びその方法並びにそれを用いたデータ処理端末及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による照合システムは、データ処理端末における正当使用者の照合をなす照合システムであって、画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録する登録手段と、使用者により入力された回答データと前記登録手段に登録されている正解データとを比較して、前記使用者の正当性を照合する照合手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明による照合方法は、データ処理端末における正当使用者の照合をなす照合方法であって、画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録する登録ステップと、使用者により入力された回答データと前記登録ステップにて登録された正解データとを比較して、前記使用者の正当性を照合する照合ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明によるデータ処理端末は、上記の照合システムを用いたことを特徴とし、当該データ処理端末は携帯通信端末であることを特徴とする。
【0012】
本発明によるプログラムは、データ処理端末における正当使用者の照合をなす照合方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録する登録処理と、使用者により入力された回答データと前記登録ステップにて登録された正解データとを比較して、前記使用者の正当性を照合する照合処理とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、使用者はパスワードを特別に意識することなしに、パスワードによる照合が容易にかつ確実にできるので、使用者の便宜性の大幅な向上を図ることが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。本発明では、使用者のみが容易に推測できるカメラなどによる画像を表示部に表示させ、その画像に関係する文字コードをパスワードとして使用することにより、正当使用者の照合(認証)を行うものである。例えば、家族、親戚、友人、知人などの集合写真の中の特定人物の名前や、使用者しか知らない愛称(ニックネーム)などを登録しておいて、その文字コードによる照合を行うようにしたものである。
【0015】
ここで、例えば、家族にしかわからない写真画像のみを用いて照合を行うと、家族同士でのパスワードの機密性が失われることがある。そこで、家族が知らない仕事仲間や職場、趣味などの風景画像などをも組合わせ用いることにより、パスワードの機密性の更なる確保を行うものである。
【0016】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態の機能ブロック図であり、本例では携帯電話機の場合を例にとって説明する。なお、図2はその外観図であり、図1と同等部分は同一符号により示している。本実施の形態による携帯電話機は、制御部1と、ボタン部2と、表示部3と、登録部4と、メモリカードインタフェース部5と、メモリカード6と、カメラ7と、アンテナ10と、無線部11と、ベースバンド処理部12と、音声信号部13と、受話器14と、送話器15とを含んでいる。
【0017】
本発明に関連する機能部分についてのみ説明する。表示部3は数字や文字、画像などを表示するものであり、カメラ7は写真画像を撮影する機能を有している。メモリカード6は一般的に広く用いられているデータの書換えや保存が行える挿抜可能な電子媒体のカードである。ボタン部2は各種操作ボタンを有し、使用者の操作に応じて各種指令や数字、文字データを入力するためのものである。登録部4は、使用者がボタン部2を介して入力した数字、文字データ、カメラ7による画像データ、メモリカードインタフェース部5を介してメモリカード6から取込んだ画像データなどを保存するものである。制御部1はこれら各部を制御するものであり、予め図示せぬROMなどの記録媒体に格納されているプログラムに従って動作するCPU(コンピュータ)である。
【0018】
図3は本発明の実施の形態によるパスワード登録時の動作フローチャートである。使用者は、カメラ7により撮影し登録部4に保存されている画像データ、またはメモリカード6から読出した画像データを表示部3に表示させ、その中から、使用する画像の選択を実行する(ステップS1,S2)。この場合の操作方法としては、例えば、表示部3に表示させた画像を、ボタン部2の十字型ボタン21の押下による操作によって、表示画像をスクロールさせて、選択したい画像を、決定ボタン押下げにより決定して選択を行うことになる。
【0019】
いま、使用する画像が表示部3の画像部31に表示されたものであって、図4に示した人物の集合写真のように、特定の位置設定を指定する必要がある場合には(ステップS3)、使用者はボタン部2の十字型ボタン21を用いて、画面上において、その位置情報の指定を行う(ステップS4)。この位置情報の指定について説明すると、画像の画面は、図5に示す如く、格子状に横軸1〜5、縦軸A〜Dにそれぞれ区分されており、その指定位置にポインタなどのマーキング33を移動させることにより、図4の中の特定人物の該当する位置情報として、「横4、縦A」のデータが決定される。この位置情報は、画像データの中に組込まれて画像データと共に、登録部4に保存されることになる。
【0020】
特定の位置情報が不要な画像、例えば、図6の(A)に示す風景の画像や、(B)のペットの画像や、(C)の食べ物店の画像などについては、位置情報がないために、画像データのみが登録部4に保存される(ステップS3のNo)。
【0021】
そして、図4に示す如く、画像部31の下部にはメッセージ部があり、このメッセージ部32には、当該画像部31に表示されている画像(使用者がステップS2などで選択した画像データに相当)に関連するメッセージが、使用者により入力される必要がある。このメッセージは、選択した画像データから使用者本人が容易に導き出せるような質問形式とし、前述した特定の人物の画像の場合には、例えば、その人物の氏名、愛称(ニックネーム)、その人のクセなど、使用者やごく親しい人物以外には分らない質問のメッセージとする。図4の例では、「愛称は?」が入力されたことを示している。
【0022】
なお、図6(A)の風景画像の例では、「ここの場所は?」という質問のメッセージが入力され、図6(B)のペットの画像の例では、「特技は?」という質問のメッセージが入力され、図6(C)の食べ物店の画像の例では、「ここの自慢料理は?」という質問のメッセージが入力されている。この質問のメッセージの入力が完了すると(ステップS5)、使用者が決定ボタンを押下することにより、表示部3のメッセージ部32に、図4や図6のように、質問メッセージが表示される(ステップS6)。
【0023】
更に、この画像データの分類について説明する。この分類とは、画像が例えば、仕事仲間や趣味仲間など、知人に関する場合には、分類#1とし、家族関係の画像の場合には、分類#2とし、個人的に撮影した画像(図6(A)〜(C)の例)の場合には、分類#3の如く区分することをいう。この様に画像データの分類を、ボタン操作によって選択して決定の操作を実行する(ステップS7)。この分類は、登録する画像に関して知り得る人間関係の範囲や親密度により行われることになる。
【0024】
この決定操作により、表示部3に分類内容が表示されて(ステップS8)、更に画面が切替わって、質問のメッセージに対する回答入力待ちとなる(ステップS9)。使用者は、ボタン部2のボタン操作によって登録画像データに対応した質問のメッセージに対する回答(正解)を入力する。この正解を示す回答がパスワードとなるものである。例えば、図6(B)のペットの画像の例では、質問メッセージが「特技は?」であるので、それに対する回答の例として、「お手」や「ジャンプ」などが考えられる。この回答内容の入力後、決定ボタンの操作に応答して、表示部3にその内容が表示される(ステップS9,S10)。以上の処理により、パスワードの登録の基本操作は完了するが、画像登録の可否の最終選択を実行することにより(ステップS11〜S15)、終了となる。
【0025】
登録部4では、登録された画像データ、質問のメッセージ、その正解となる回答(パスワード)を一組のデータとして、分類毎に登録処理が行われる。この場合のイメージ図を図7に示す。図7によると、分類#1〜#3までの分類別に、各々に画像データ、メッセージ、回答のデータが組となっており、この分類毎に、複数の画像データ、メッセージ、回答のデータが保存されていることになる。
【0026】
なお、図8は上述した手順に従って実行された画像データ格納時における動作概念図である。表示部3には、画像31と、使用者が入力したメッセージ32及び分類34とが表示されている状態で、登録部4には、分類#1のエリア内に、これら画像31とメッセージ32が格納される。そして、次画面表示(矢印a)では、画像31と、メッセージ32に対する回答(使用者が入力したパスワード)35とが、表示部3に表示され、この回答35が登録部4の分類#1のエリア内における画像とメッセージとの組に対応して登録され、画像、メッセージ、回答が1セットとして格納されることになる。分類#2や#3についても同様である。
【0027】
次に、正当使用者の照合(認証)方法について、図9のフローチャートを用いて説明する。発信機能禁止やメモリダイヤルの呼出禁止などの機能制限を行う必要がある機密保護に関わる操作を、使用者が実行したとする。すると、制御部1の制御により、登録部4に登録されているデータのうち、図10に示すように、先ず分類#1のなかからランダムに選択された画像データの組(画像、メッセージ、回答のデータ組)が選択され、表示部3に画像31及びメッセージ32が表示される(ステップS20)。
【0028】
使用者はこの画像とメッセージとから導き出される回答(パスワード)を、ボタン部2の操作によって入力し、決定操作を行う(ステップS21)。これにより、図7の矢印bに示すように、回答入力完了となるので、表示部3には、この入力された回答35も表示される(ステップS22)。
【0029】
しかる後に、制御部1は、入力された回答と登録部4に予め登録されている回答とのデータ比較を行い(ステップS23、図10の照合100)、両者が一致した場合には、次の分類に登録されている画像データの選択を繰返し行い(ステップS24)、全ての分類について一致した場合に、表示部3に照合一致のメッセージを表示し(ステップS25)、機密保持機能を解除して以降のボタン操作を有効とする(ステップS26)。ステップS23において、一回でも一致しない場合には、表示部3に一致しなかった旨の表示を行い(ステップS27)、以降のボタン操作を無効とする(ステップS28)。
【0030】
なお、画像データ登録方法において説明したように、画像データに位置情報が含まれている場合には、その位置を示す矢印などの記号(ポインタ33)をも、画像と共に表示させるようにしておくことは勿論である。
【0031】
このように、本発明の実施の形態によれば、使用者はパスワードを特に意識することなく(よって失念の恐れもなく)、パスワードによる照合が実現でき、生体認証などの高度な技術も必要がないので、ローコストが要求される携帯電話機などに適用することが可能になる。
【0032】
なお、上記の実施の形態においては、画像を用いたメッセージ(質問)に対する回答(パスワード)を入力する方法について説明したが、画像を用いることなく、例えば「ペットの犬の名前は?」などの文字形式のみによる質問表示でも良いものである。
【0033】
図3及び図9の動作フローは、この動作手順を予めプログラムとしてROMなどの記録媒体に格納しておき、これをCPU(コンピュータ)により読み取らせて実行させるように構成できることは勿論である。本発明は、携帯電話機のみならず、携帯通信端末やPDA(Personal Digital Assistant)、パーソナルコンピュータなどを含むデータ処理端末に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態の外観図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるパスワード登録時のフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における画像表示の一例を示す図である。
【図5】図4の画像表示例における画像位置指定について説明するための図である。
【図6】本発明の実施の形態における画像表示の他の例をそれぞれ示す図である。
【図7】本発明の実施の形態における登録部に格納されたデータのイメージ図である。
【図8】本発明の実施の形態における画像データ登録時における概念図である。
【図9】本発明の実施の形態におけるパスワード照合時のフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態におけるパスワード照合時における概念図である。
【符号の説明】
【0035】
1 制御部
2 ボタン部
3 表示部
4 登録部
5 メモリカードインタフェース
6 メモリカード
7 カメラ
10 アンテナ
11 無線部
12 ベースバンド処理部
13 音声信号処理部
14 受話器
15 送話器
21 十字型ボタン
31 画像
32 メッセージ
33 ポインタ
34 分類
35 回答
100 照合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ処理端末における正当使用者の照合をなす照合システムであって、
画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録する登録手段と、
使用者により入力された回答データと前記登録手段に登録されている正解データとを比較して、前記使用者の正当性を照合する照合手段とを含むことを特徴とする照合システム。
【請求項2】
前記登録手段には前記組が複数登録されており、前記照合手段は、前記組の各々に対応して前記使用者により入力された回答デーの各々と、前記組の各々の正解データとを比較して照合することを特徴とする請求項1記載の照合システム。
【請求項3】
前記照合手段は、前記正解データの各々と前記回答データの各々との照合に際して、全てが一致したときのみ前記使用者を正当使用者と判定することを特徴とする請求項2記載の照合システム。
【請求項4】
データ処理端末における正当使用者の照合をなす照合方法であって、
画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録する登録ステップと、
使用者により入力された回答データと前記登録ステップにて登録された正解データとを比較して、前記使用者の正当性を照合する照合ステップとを含むことを特徴とする照合方法。
【請求項5】
前記登録ステップは、前記組を複数登録するステップを有し、
前記照合ステップは、前記組の各々に対して前記使用者により入力された回答デーの各々と、前記組の各々の正解データとを比較して照合するステップを有することを特徴とする請求項4記載の照合方法。
【請求項6】
前記照合ステップは、前記正解データの各々と前記回答データの各々との照合に際して、全てが一致したときのみ前記使用者を正当使用者と判定するステップを有することを特徴とする請求項5記載の照合方法。
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載の照合システムを含むことを特徴とするデータ処理端末。
【請求項8】
携帯通信端末であることを特徴とする請求項7記載のデータ処理端末。
【請求項9】
データ処理端末における正当使用者の照合をなす照合方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
画像データと、この画像に関する質問データと、この質問に対する正解データとの組を予め登録する登録処理と、
使用者により入力された回答データと前記登録ステップにて登録された正解データとを比較して、前記使用者の正当性を照合する照合処理とを含むことを特徴とするプログラム。
【請求項10】
前記登録処理は、前記組を複数登録する処理を有し、
前記照合処理、前記組の各々に対して前記使用者により入力された回答デーの各々と、前記組の各々の正解データとを比較して照合する処理を有することを特徴とする請求項9記載のプログラム。
【請求項11】
前記照合処理は、前記正解データの各々と前記回答データの各々との照合に際して、全てが一致したときのみ前記使用者を正当使用者と判定する処理を有することを特徴とする請求項10記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−117324(P2008−117324A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−302195(P2006−302195)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】