説明

照射装置及びプロジェクタ

【課題】光利用効率を低下させることなく、回折光学素子と対象照明領域との位置合わせを行うことが可能な回折光学素子、照射装置及びプロジェクタを提供すること。
【解決手段】所定の被照射面11における対象照明領域Sを照明する第1照明光S1と、対象照明領域S以外の領域を照明し対象照明領域Sと第1照明光S1との相対的な位置合わせを行う位置合わせ用の第2照明光S2とを生成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照射装置及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の投射型画像表示装置では、光源として超高圧水銀ランプなどの放電ランプが用いられるのが一般的である。しかし、このような放電ランプは、寿命が比較的短い、瞬時点灯が難しい、色再現範囲が狭い、ランプから放射された紫外線が液晶ライトバルブを劣化させてしまうことがある等の課題がある。そこで、この問題を解決するために、放電ランプの代わりに、単色光を照射するレーザ光源を用いた投射型画像表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この特許文献1に記載のレーザディスプレイ装置は、赤色,緑色,青色の半導体レーザと、各半導体レーザから射出されたレーザ光を平行光にする複数のコリメータレンズと、コリメータレンズにより平行化された光の強度分布を均一化する複数のマイクロレンズ(回折光学素子)と、各マイクロレンズから射出された光を変調する空間光変調器とを備えている。そして、各空間光変調器を通過した光は、ダイクロイックミラーにより合成され、プロジェクタレンズによりスクリーンに表示されるようになっている。
また、ホログラム(回折光学素子)を用いて、入射した光を液晶セルに集光させる技術も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11―64789号公報
【特許文献2】特開平9―68705号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、回折光学素子としては、回折現象を利用して入射光の波面を変換する波面変換素子である計算機合成ホログラム(CGH :Computer Generated Hologram、以下CGHと称す。)が挙げられる。特に、位相型のCGHは、入射光波のエネルギをほとんど失うことなく波面変換が可能である。このようなCGHは、均一な強度分布は単純な形状の強度分布を発生させることができるため、照明装置等に効果的に用いられている。
ここで、回折光学素子と対象照明領域Sを有する被照射面102との位置合わせとしては、例えば、図10に示すように、回折光学素子により生成された照明領域K1と、対象照明領域Sとを外形で合わせる方法がある。この方法では、回折光学素子を用いた照明装置を組み立てるときの位置ずれを考慮して、回折光学素子は、対象照明領域Sより大きい照明領域K1を照明する照明光を生成するように設計されている。具体的には、回折光学素子は、対象照明領域Sの全周の外側まではみ出す照明マージンK2が生成されるように設計されている。この照明マージンK2には、対象照明領域Sを照明する照明光と同じ強度の照明光が照射される。そして、回折光学素子より生成された照明領域K1が対象照明領域Sを覆うように、回折光学素子と被照射面102との位置合わせを行う。
しかしながら、このような回折光学素子は、組立時の位置ずれを考慮して多くの照明マージンK2が必要となる。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、光利用効率を低下させることなく、回折光学素子と対象照明領域との位置合わせを行うことが可能な回折光学素子、照射装置及びプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の回折光学素子は、所定の被照射面における対象照明領域を照明する第1照明光と、前記対象照明領域以外の領域を照明し前記対象照明領域と前記第1照明光との相対的な位置合わせを行う位置合わせ用の第2照明光とを生成することを特徴とする。
【0006】
本発明に係る回折光学素子では、対象照明領域を照明する第1照明光と、位置合わせ用の第2照明光とを生成する。ここで、位置合わせ用の第2照明光が生成されるため、第1照明光に設けられる照明マージンを低減あるいは設けなくても良い。さらに、生成される照明光のうち、対象照明領域以外の領域に生成される第2照明光は位置合わせ用であるため、位置合わせ用の第2照明光の強度は低くて良い。したがって、従来のように、対象照明領域の全周に照明マージンを設ける場合に比べて、本発明では、対象照明領域外に生成される第2照明光の強度は非常に低くて済む。これにより、光利用効率を低下させることなく、回折光学素子と対象照明領域との位置合わせを行うことが可能となる。
【0007】
また、本発明の照射装置は、光を射出する光源装置と、該光源装置から射出された光を回折させる上記の回折光学素子とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る照射装置では、光源装置から射出された光は回折光学素子に入射する。そして、回折光学素子により回折された照明光は対象照明領域を照明する。このとき、上述したように、光利用効率を低下させることなく回折光学素子と対象照明領域との位置合わせを行うことができるため、光源から射出された光の利用効率を向上させることが可能となる。したがって、回折光学素子から射出される光の利用効率が高いため、明るい光を対象照明領域に照射することができる。
【0009】
また、本発明の照射装置は、前記回折光学素子がホログラム素子であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る照射装置では、ホログラム素子としては、例えば、ホログラム原板に計算機で計算して人工的に作成した干渉縞が形成された計算機ホログラム(CGH :Computer Generated Hologram、以下CGHと称す。)を用いることができる。このCGHは回折現象を利用して入射光の波面を変換する波面変換素子である。特に位相型のCGHは入射光波のエネルギをほとんど失うことなく波面変換が可能である。このように、CGHは均一な強度分布や単純な形状の強度分布を発生させることができるので、照射装置に好適に用いることができる。さらに、CGHは、回折格子の分割領域の自由な設定が可能であり、収差の問題が生じないので好適である。
【0011】
本発明のプロジェクタは、上記の照射装置と、該照射装置から射出された光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、該光変調装置により形成された画像を投射する投射装置とを備え、前記光変調装置の画像形成領域が前記対象照明領域であることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプロジェクタでは、照射装置より射出された光は光変調装置に入射される。そして、光変調装置により形成された画像が、投射装置によって投射される。ここで、照射装置は、上述したように、光利用効率を低下させることなく、回折光学素子と対象照明領域との位置合わせを行うことが可能である。これにより、例えば回折光学素子と光変調装置の画像形成領域(対象照明領域)との位置合わせを光利用効率を低下させることなく行うことができる。したがって、明るくムラのない画像を被投射面に照射することが可能となる。
【0013】
また、本発明のプロジェクタは、前記光変調装置に設けられ、前記回折光学素子により生成された位置合わせ用の第2照明光を検出する光検出部と、該光検出部により検出された前記位置合わせ用の第2照明光の強度に基づいて前記光源から射出される光の強度を制御する制御部とを備えるが好ましい。
【0014】
本発明に係るプロジェクタでは、光検出部により検出された位置合わせ用の第2照明光の強度に基づいて、制御部により、光源から射出される光の強度を制御する。これにより、位置合わせ用の第2照明光を光検出部により検出することで、光源から射出された光の強度を所定の範囲内に保つことが可能となる。したがって、光源の経年変化により光強度が低減した場合や、光源から射出される光が所定値より大きい場合を検出することができるので、位置合わせ用の第2照明光を有効利用し、光源から射出される光の強度の正確な制御を行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明のプロジェクタは、光が照射されることにより硬化し、前記回折光学素子を所定の位置に固定する接着部を備え、前記接着部は、前記回折光学素子が所定の位置にあるときに、前記第2照明光が照射される位置に設けられていることが好ましい。
【0016】
本発明に係るプロジェクタでは、第2の照明光で接着部を照射することが可能なので、簡易な構成で、回折光学素子を所定の位置に固定することができる。
【0017】
また、本発明のプロジェクタは、前記回折光学素子により生成された位置合わせ用の第2照明光を前記回折光学素子に向かって反射させる反射部材を備え、前記接着部は、前記回折光学素子が所定の位置にあるときに、前記反射部材によって反射された第2照明光が照射される位置に設けられていることが好ましい。
【0018】
本発明に係るプロジェクタでは、回折光学素子により生成された位置合わせ用の第2照明光は、光変調装置に設けられた反射部材により回折光学素子に向かって反射させる。そして、反射部材において反射された位置合わせ用の第2照明光は、回折光学素子が所定の位置であるときに接着部に照射され、接着部が硬化する。これにより、回折光学素子が所定の位置に固定される。したがって、回折光学素子と光変調装置との位置合わせがされたと同時に接着部により回折光学素子の位置を固定するため、回折光学素子を所定の位置に効率良く固定することが可能となる。
なお、ここで言う所定の位置とは、第1照明光により対象照明領域を照明する位置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る回折光学素子、照射装置及びプロジェクタの実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
[第1実施形態]
本実施形態に係る照明装置(照射装置)1は、図1に示すように、レーザ光を射出するレーザ光源2と、このレーザ光源2から射出されたレーザ光を回折させる回折光学素子3とを備えている。また、回折光学素子3は、矩形状の照明対象物10の照射面(被照射面)11を照射する照明光を生成するものである。以下の説明においては、レーザ光源2から射出されるレーザ光Lの進行方向をZ軸方向とし、このレーザ光Lの進行方向に直交する面をXY平面とする。そして、照明対象物10は、照射面11がXY平面とほぼ平行になるように配置されている。
【0021】
回折光学素子3は、例えば石英(ガラス)、透明な合成樹脂等、レーザ光を透過可能な材料で形成されている。本実施形態の回折光学素子3は、計算機合成ホログラム(Computer Generated Hologram;CGH)である。
【0022】
回折光学素子(ホログラム素子)3は、照明領域設定機能、照度均一化機能、及び拡大照明機能を有する。照明領域設定機能を有する回折光学素子3は、入射した光を回折させ、照射面11の対象照明領域Sを照明する照明光を生成する。また、照度均一化機能を有する回折光学素子3は、所定の領域の少なくとも一部の照度を均一化する。また、拡大照明機能を有する回折光学素子3は、回折光学素子3の射出端面3bから光が射出される射出領域よりも大きい矩形状の照明領域で照射面11の対象照明領域Sを照明する。
【0023】
図2は、回折光学素子の一例を示す模式図であって、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A線断面矢視図である。図2において、回折光学素子3は、その表面に複数の矩形状の凹部(凹凸構造)3Mと、複数の凹部3Mを保持し光透過性を有する額縁状の保持部3Hとを備えている。この凹部3Mは、互いに異なる深さを有している。また、凹部3Mに光を入射させることによって、回折光学素子3から射出されたレーザ光は、照明対象物10の対象照明領域Sを照明する。ここで、この複数の凹部3Mが形成された領域を有効領域Pとする。
そして、凹部3Mどうしのピッチd及び凹部3Mの深さ(凸部の高さ)tを含む回折光学素子3の表面条件を適宜調整することにより、回折光学素子3に所定の機能(照明領域設定機能、拡散光生成機能、及び拡大照明機能)を持たせることができる。その表面条件を最適化する設計手法としては、例えば反復フーリエ法など、所定の演算手法(シミュレーション手法)が挙げられる。
【0024】
なお、回折光学素子3としては、矩形の凹部3Mを有するものに限られず、互いに異なる方向を向く平面を組み合わせた表面を有するものであってもよい。例えば、回折光学素子3としては、斜面を有する三角形状の凹部を有する、いわゆる、ブレーズ型のものであってもよい。また、回折光学素子3としては、図2に示したような矩形状の凹部3Mを有する領域と、三角形状の凹部を有する領域とのそれぞれを有するものであってもよい。そして、その表面条件を最適化することにより、所望の機能を有する回折光学素子3を形成することができる。
【0025】
次に、回折光学素子3により生成させる照明光について説明する。
回折光学素子3は、レーザ光源2から射出されたレーザ光Lが入射すると、図3に示すように、対象照明領域Sを照明する照明光(第1照明光)S1と、対象照明領域S以外の領域を照明するアライメント光(第2照明光)S2とを生成する。このアライメント光S2は、対象照明領域Sとの相対的な位置合わせを行う位置合わせ用の照明光である。
照明光S1の照射面11上の照明領域は、対象照明領域Sとほぼ同じ大きさの照明光である。また、アライメント光S2は、照明光S1の4つの角部を囲むようにして照明光S1と間隔をあけてそれぞれ生成されたアライメント光S2a,S2b,S2c,S2dを有している。このアライメント光S2a〜S2dは、対象照明領域Sの長手方向(X方向)に延びる領域と、対象照明領域Sの短手方向(Y方向)に延びる領域とを有するL字状の光である。
また、アライメント光S2は、照明光S1に比べて非常に強度の低いレーザ光である。
【0026】
また、照明対象物10の照射面11には、図4に示すように、対象照明領域Sの4つの角部を囲むようにして対象照明領域Sと間隔をあけてそれぞれアライメントマークAM1,AM2,AM3,AM4がそれぞれ形成されている。このアライメントマークAM1〜AM4は、アライメント光S2と同様に、対象照明領域Sの長手方向(X方向)に延びる領域と、対象照明領域Sの短手方向(Y方向)に延びる領域とを有するL字状のマークである。
そして、このアライメントマークAM1,AM2,AM3,AM4に、アライメント光S2a,S2b,S2c,S2dをそれぞれ合わせることにより、照明光S1により対象照明領域Sが照明される。
【0027】
次に、以上の構成からなる本実施形態の回折光学素子3を用いて、回折光学素子3と照明対象物10との位置合わせを行う方法について説明する。
レーザ光源2から回折光学素子3にレーザ光Lを照射すると、図4に示すように、照明光S1と対象照明領域Sとの位置ずれが起きる場合がある。このとき、アライメント光S2a〜S2dとアライメントマークAM1〜AM4とがそれぞれ一致するように、回折光学素子3を動かして位置合わせ行う。なお、アライメントマークAM1〜AM4とアライメント光S2a〜S2dとを合わせる位置は、全ても同じであるため、アライメントマークAM1に対するアライメント光S2aの位置合わせについてのみ説明する。
【0028】
X方向の位置合わせは、図4に示すように、対象照明領域Sの長手方向(X方向)のアライメントマークAM1の内側の辺A1aと、対象照明領域Sの長手方向のアライメント光S2aの外側の辺Sa1とを合わせる。
また、Y方向の位置合わせは、対象照明領域Sの短手方向(Y方向)のアライメントマークAM1の内側の辺A1bと、対象照明領域Sの短手方向のアライメント光S2aの外側の辺Sa2とを合わせる。
さらに、回折光学素子3をZ方向に動かしアライメント光S2aの大きさを調整する。
このようにして、図5に示すように、アライメントマークAM1,AM2,AM3,AM4に、アライメント光S2a,S2b,S2c,S2dがそれぞれ合わされる。これにより、照明光S1により対象照明領域Sが照明される。
【0029】
本実施形態に係る照明装置1では、回折光学素子3が、位置合わせ用のアライメント光S2を生成する。これにより、回折光学素子3は、生成される照明光S1に形成される照明マージンを低減あるいは設けなくても良く、さらには、従来の照明マージンの光強度に比べて非常に低い光強度のアライメント光S2を生成すれば良い。したがって、光利用効率を低下させることなく、回折光学素子3と対象照明領域Sとの位置合わせを行うことが可能となる。
【0030】
なお、照射面11のアライメントマークAM1〜AM4及びアライメント光S2をL字状としたが、これに限らず十字状等であっても良い。
また、回折光学素子3と対象照明領域Sとの位置合わせとして、X方向、Y方向、Z方向の調整を行ったが、これに限らず、θ方向(X,Y,Zをそれぞれ軸としたあおり方向)の位置合わせをすることも可能である。
また、本実施形態では、照射装置として、照明対象物10を照明する照明装置について説明したが、これに限らず、レーザ光源を用いた露光装置等であっても良い。
【0031】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、上述の各実施形態で説明した照明装置1を応用したプロジェクタの一例について説明する。
【0032】
図6は、上述の第1実施形態で説明した照明装置1(1R、1G、1B)を備えたプロジェクタを示す概略構成図である。本実施形態においては、プロジェクタとして、空間光変調装置で生成された画像情報を含む色光を投射系を介してスクリーン上に投射する投射型のプロジェクタPJ1を例にして説明する。
【0033】
図6において、投射型のプロジェクタPJ1は、スクリーン100(表示面)上に画像情報を含む光を投射する投射ユニットUを備えている。投射ユニットUからスクリーン100に対して光が投射されることにより、スクリーン100上に画像が形成される。本実施形態の投射型のプロジェクタPJ1は、スクリーン100を反射型のスクリーンとし、スクリーン100の正面側からスクリーン100上に画像情報を含む光を投射する。
【0034】
投射ユニットUは、第1の基本色光(赤色光)で照射面11を照明可能な第1照明装置1Rと、第2の基本色光(緑色光)で照射面11を照明可能な第2照明装置1Gと、第3の基本色光(青色光)で照射面11を照明可能な第3照明装置1Bと、第1照明装置1Rで照明される入射端面(被照射面)11を有し、照明された光を画像情報に応じて光変調する第1空間光変調装置(光変調装置)50Rと、第2照明装置1Gで照明される入射端面(被照射面)11を有し、照明された光を画像情報に応じて光変調する第2空間光変調装置(光変調装置)50Gと、第3照明装置1Bで照明される入射端面(被照射面)11を有し、照明された光を画像情報に応じて光変調する第3空間光変調装置(光変調装置)50Bと、空間光変調装置50R、50G、50Bにより変調された各基本色光を合成するダイクロイックプリズム(色合成手段)51と、ダイクロイックプリズム51で生成された光をスクリーン100上に投射する投射系(投射装置)52とを備えている。空間光変調装置50R、50G、50Bのそれぞれは液晶装置を含んで構成されている。以下の説明においては、空間光変調装置を適宜、ライトバルブ、と称する。
【0035】
ライトバルブは、入射側偏光板と、一対のガラス基板どうしの間に封入された液晶を有するパネルと、射出側偏光板とを備えている。ガラス基板には画素電極や配向膜が設けられている。空間光変調装置を構成するライトバルブは、定められた振動方向の光のみを透過させるようになっており、ライトバルブに入射した基本色光は、ライトバルブを通過することによって光変調される。
また、ライトバルブ50R,50G,50Bの入射端面11には、第1実施形態で示したアライメントマークAM1〜AM4が形成されている。具体的には、アライメントマークAM1〜AM4は、入射端面11の画像形成領域(対象照明領域)外に設けられている。
そして、回折光学素子3により生成されたアライメント光S2とアライメントマークAM1〜AM4とが合うように、回折光学素子3の位置が調整されている。
【0036】
第1照明装置1Rのレーザ光源(光源)2は、赤色(R)のレーザ光をそれぞれ射出する。第1照明装置1Rは、赤色のレーザ光に基づいて、第1ライトバルブ50Rの入射端面11を照明する。
【0037】
第2照明装置1Gのレーザ光源(光源)2は、緑色(G)のレーザ光をそれぞれ射出する。第2照明装置1Gは、緑色のレーザ光に基づいて、第2ライトバルブ50Gの入射端面11を照明する。
【0038】
第3照明装置1Bのレーザ光源(光源)2は、青色(B)のレーザ光をそれぞれ射出する。第3照明装置1Gは、青色のレーザ光に基づいて、第3ライトバルブ50Bの入射端面11を照明する。
【0039】
各ライトバルブ50R、50G、50Bを通過することで変調された各基本色光(変調光)は、ダイクロイックプリズム51で合成される。ダイクロイックプリズム51はダイクロイックプリズムによって構成されており、赤色光(R)、緑色光(G)、及び青色光(B)はダイクロイックプリズム51で合成されてフルカラー合成光となる。ダイクロイックプリズム51から射出されたフルカラー合成光は投射系52に供給される。投射系52はフルカラー合成光をスクリーン100上に投射する。投射系52は、入射側の画像を拡大してスクリーン100上に投射する所謂拡大系である。
【0040】
投射ユニットUは、各照明装置1R、1G、1Bのそれぞれで照明された各ライトバルブ50R、50G、50Bを介した画像情報を含むフルカラー合成光を投射系52を用いてスクリーン100上に投射することによって、スクリーン100上にフルカラーの画像を形成する。鑑賞者は、投射ユニットUによりスクリーン100に対して投射された画像を鑑賞する。
【0041】
本実施形態のプロジェクタPJ1では、光利用効率を低下させることなく、回折光学素子3とライトバルブ50R,50G,50Bの画像形成領域との位置合わせが行われている。したがって、明るくムラのない画像をスクリーン100に照射することが可能となる。
また、回折光学素子3から射出されたアライメント光S2は、ライトバルブ50R,50G,50Bの画像形成領域外に生成されるため、表示される画像に影響を及ぼすことがない。したがって、スクリーン100に鮮明な画像を表示することが可能となる。
【0042】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、上述の各実施形態で説明した照明装置1を応用したプロジェクタPJ2の一例について説明する。
なお、以下に説明する各実施形態の図面において、上述した第1実施形態に係るプロジェクタPJ1と構成を共通とする箇所には同一符号を付けて、説明を省略することにする。
本実施形態に係るプロジェクタPJ2では、位置合わせ用のアライメント光S2を利用してレーザ光源2を制御する点において第2実施形態と異なる。なお、全体構成においては図6に示す第2実施形態と同様である。
【0043】
プロジェクタPJ2には、図7に示すように、各ライトバルブ50R,50G,50Bの入射端面11上に矩形状のフォトダイオード(光検出部)61R,61G,61Bがそれぞれ設けられている。
このフォトダイオード61R,61G,61Bは、入射端面11上のアライメントマークAM3の内側の辺A3a,A3bに接触して設けられている。また、フォトダイオード61R,61G,61Bは、回折光学素子3により生成されたアライメント光S2cを検出するものである。さらに、フォトダイオード61R,61G,61Bの大きさは、回折光学素子3によって生成されたアライメント光S2cをすべて受光可能な大きさとなっている。
【0044】
また、各ライトバルブ50R,50G,50Bに設けられたフォトダイオード61R,61G,61Bは、制御部65に接続されている。
制御部65は、各フォトダイオード61R,61G,61Bによって検出されたレーザ光の強度に基づいて各レーザ光源2から射出されるレーザ光の強度を調整する。すなわち、制御部65は、レーザ光源2の正常動作時にフォトダイオード61R,61G,61Bが検出するレーザ光の光強度値を所定値として、フォトダイオード61R,61G,61Bが検出する光強度がこの所定値からずれた場合、レーザ光源2から射出されるレーザ光の強度を調整する。
【0045】
本実施形態に係るプロジェクタPJ2では、アライメント光S2cをフォトダイオード61R,61G,61Bにより検出することで、レーザ光源2の経年変化により光強度が低減した場合や、レーザ光源2から射出される光が所定値より大きい場合を検出することができる。したがって、アライメント用のアライメント光S2を有効利用し、レーザ光源2から射出されるレーザ光の強度の正確な制御を行うことが可能となる。
なお、各ライトバルブ50R,50G,50Bにはそれぞれフォトダイオード61R,60G,60Bを1つだけ設けたが、より正確な制御を行うために、2つ以上設けても良い。
【0046】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、上述の各実施形態で説明した照明装置1を応用したプロジェクタPJ3の一例について説明する。
本実施形態に係るプロジェクタPJ3では、位置合わせ用のアライメント光S2を利用して回折光学素子3の位置を固定する点において第2実施形態と異なる。なお、全体構成においては図6に示す第2実施形態と同様である。
【0047】
プロジェクタPJ3の具体的な構成について説明する。
図8(a)は、本実施形態の回折光学素子を示す模式図であって、図8(b)は図8(a)のA−A線断面矢視図であり、図9は、回折光学素子から射出されたレーザ光の光路を示す図である。
プロジェクタPJ3には、光透過性を有し、回折光学素子3を所定の位置に固定する固定部材72a,72bが設けられている。
また、図8(a)に示すように、回折光学素子3上のアライメント光S2a,S2b,S2c,S2dが照射される領域には接着材(接着部)71が設けられている。また、接着材71は、光が照射されることにより硬化する光硬化性樹脂であり、モノマー、オリゴマー、光重合開始剤や各種添加剤(安定剤、フィラー、顔料等)等から構成される組成物である。
そして、回折光学素子3は、接着材71を介して固定部材72a,72bにより所定の位置に固定されるようになっている。
【0048】
プロジェクタPJ3には、図9に示すように、各ライトバルブ50R,50G,50Bの入射端面11上の第1実施形態で示したアライメントマークAM1〜AM4の位置に楔形状の平面ミラー(反射部材)73,74,75,76が設けられている。
この平面ミラー73〜76の反射面73a〜76aは、ライトバルブ50R,50G,50Bの入射端面11に対して傾斜している。これにより、回折光学素子3により生成されライトバルブ50R,50G,50Bに射出されたアライメント光S2a〜S2d(図9に示す一点鎖線)を回折光学素子3に向かって反射させる。つまり、本実施形態では平面ミラー73〜76は、対象照明領域Sと照明光S1との位置が合ったときのみアライメント光S2を回折光学素子3に反射させる。また、平面ミラー73,74において反射されたアライメント光S2は、接着材71上で結像するようになっている。
すなわち、回折光学素子3を動かし、照明光S1とライトバルブ50R,50G,50Bの画像形成領域との位置が合わされると、平面ミラー73〜76によりアライメント光S2が回折光学素子3に向かって反射される。反射されたアライメント光S2a〜S2dは、固定部材72a,72bを透過し接着材71上で結像する。そして、結像されたアライメント光S2により、接着材71が硬化する。これにより、回折光学素子3は、接着材71を介して固定部材72a,72bによって所定の位置、すなわち、照明光S1により対象照明領域Sを照明する位置に固定される。
【0049】
本実施形態に係るプロジェクタPJ3では、回折光学素子3とライトバルブ50R,50G,50Bとの位置合わせがされたと同時に接着材71により回折光学素子3が所定の位置に固定されるため、回折光学素子3を効率良く固定することが可能となる。
なお、反射部材として平面ミラー73,74を用いたが、曲面ミラーであっても良い。また、本実施形態のPJ3が、第3実施形態のPJ2で用いたフォトダイオード61R,61G,61Bを備えていても良い。
また、回折光学素子3上に接着材71を塗布する目印となるマークが形成されていても良い。
【0050】
なお、図6を用いた説明では、スクリーン100の正面側からスクリーン100上に画像情報を含む光を投射するフロント投射型のプロジェクタを例にして説明したが、投射ユニットUと、スクリーン100と、筐体とを有し、投射ユニットUがスクリーン100の背面側に配置され、スクリーン100の背面側から透過型のスクリーン100上に画像情報を含む光を投射する所謂リアプロジェクタに、上述の各実施形態の照明装置を適用することもできる。
また、上記実施形態では、平面ミラー(反射部材)を光変調装置に設けたが、その構成に限らず、回折光学素子の光射出側に反射部材を設ければ良い。例えば、色合成手段に反射部材を設けても良い。あるいは、光学部品(照明装置、光変調装置、等)を収納する光学部品筐体(いわゆる「光学エンジン」と呼ばれる筐体)に設けても良い。
また、上述の各実施形態においては、空間光変調装置として透過型の液晶装置(ライトバルブ)を用いているが、反射型の液晶装置を用いることもできるし、例えばDMD(Digital Micromirror Device)等の反射型光変調装置(ミラー変調器)を用いてもよい。
【0051】
なお、上述の実施形態のプロジェクタPJ1,PJ2,PJ3は、各基本色光(R、G、B)を射出可能なレーザ光源2をそれぞれ有する第1、第2、第3照明装置1R、1G、1Bを有しているが、赤色光(R)を射出する赤色レーザ光源、緑色光(G)を射出する緑色レーザ光源、及び青色光(B)を射出する青色レーザ光源をアレイ状に配置した構成を有する照明装置を1つ有する構成であってもよい。この場合、各基本色光を射出可能なレーザ光源のレーザ光射出動作を時分割で行い、その各レーザ光源のレーザ光射出動作に同期して、ライトバルブの動作を制御することにより、1つの照明装置及び1つのライトバルブでスクリーン100上にフルカラー画像を表示することができる。
【0052】
また、上述の実施形態のプロジェクタにおいては、照明装置1で空間光変調装置を照明し、その空間光変調装置を介した光によりスクリーン100上に画像を表示しているが、プロジェクタとしては、空間光変調装置を有していなくても良い。例えば、画像情報を含むスライド(ポジフィルム)の面を照明装置1で照明し、スクリーン上に画像情報を含む光を投射する、所謂スライドプロジェクタに、上述の各実施形態の照明装置1を適用することも可能である。
また、上述の各実施形態で説明した照明装置を、レーザ加工機の光源として用いることもできる。
【0053】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、色光合成手段として、クロスダイクロイックプリズムを用いたが、これに限るものではない。色光合成手段としては、ダイクロイックミラーをクロス配置とし色光を合成するもの、ダイクロイックミラーを平行に配置し色光を合成するものを用いることができる。
また、回折光学素子として、ホログラム素子を例に挙げて説明したが、これに限るものではない。
また、照明対象物にアライメントマークを設けたが、アライメントマークを設けず、照明対象物の角部にアライメント光が位置するように、回折光学素子と照明対象物との位置合わせを行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る照明装置を示す斜視図である。
【図2】図1の照明装置の回折光学素子の構成を示す模式図である。
【図3】図1の回折光学素子により生成される照明光を示す図である。
【図4】図1の回折光学素子と対象照明物との位置合わせを説明する図である。
【図5】図1の回折光学素子と対象照明物との位置が合わされた状態を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るプロジェクタを示す平面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るプロジェクタの光変調装置を示す平面図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係るプロジェクタの回折光学素子を示す平面図である。
【図9】図8の回折光学素子により生成された照明光の光路を示す図である。
【図10】従来の回折光学素子から生成される照明光を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
PJ1,PJ2,PJ3…プロジェクタ、S…対象照明領域、S1…照明光(第1照明光)、S2…アライメント光(第2照明光)、1…照明装置、2…光源、3…回折光学素子、11…照射面(被照射面)、50R…第1空間光変調装置(光変調装置)、50G…第2空間光変調装置(光変調装置)、50B…第3空間光変調装置(光変調装置)、52…投射系(投射装置)、61R,61G,61B…フォトダイオード(光検出部)、65…制御部、73,74…平面ミラー(反射部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の被照射面における対象照明領域を照明する第1照明光と、
前記対象照明領域以外の領域を照明し前記対象照明領域と前記第1照明光との相対的な位置合わせを行う位置合わせ用の第2照明光とを生成することを特徴とする回折光学素子。
【請求項2】
光を射出する光源装置と、
該光源装置から射出された光を回折させる請求項1に記載の回折光学素子とを備えることを特徴とする照射装置。
【請求項3】
前記回折光学素子がホログラム素子であることを特徴とする請求項2に記載の照射装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の照射装置と、
該照射装置から射出された光を画像信号に応じて変調する光変調装置と、
該光変調装置により形成された画像を投射する投射装置とを備え、
前記光変調装置の画像形成領域が前記対象照明領域であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
前記光変調装置に設けられ、前記回折光学素子により生成された位置合わせ用の第2照明光を検出する光検出部と、
該光検出部により検出された前記位置合わせ用の第2照明光の強度に基づいて前記光源装置から射出される光の強度を制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
光が照射されることにより硬化し、前記回折光学素子を所定の位置に固定する接着部を備え、
前記接着部は、前記回折光学素子が所定の位置にあるときに、前記第2照明光が照射される位置に設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記回折光学素子により生成された位置合わせ用の第2照明光を前記回折光学素子に向かって反射させる反射部材を備え、
前記接着部は、前記回折光学素子が所定の位置にあるときに、前記反射部材によって反射された第2照明光が照射される位置に設けられていることを特徴とする請求項6に記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−262030(P2008−262030A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104670(P2007−104670)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】