説明

照明光学装置及びそれを用いた投射型表示装置

【課題】 光源光中の赤外線帯域の光のエネルギーを除去し、光源及び光学素子の劣化が少ない投射型表示装置を提供する。
【解決手段】光源2から射出した光束の光路上に配設された、平行光変換手段と、赤外線透過手段23と、紫外線/赤外線反射手段24と、内部に少なくとも平行光変換手段、赤外線透過手段23及び前記紫外線/赤外線反射手段24をそれぞれ配設した光学筐体8とを備え、赤外線透過手段23は、光源2から射出した光束の光路に対し45度傾斜して光学筐体8内に配設されており、紫外線/赤外線反射手段24は、赤外線透過手段23から射出した光束の光路に対し直交して光学筐体8内に配設されており、赤外線透過手段23を透過した赤外線帯域の光の光路に対して赤外線減衰体25を傾斜して設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から射出された光束から不要な赤外線帯域の光を除去することにより、高輝度の可視光を表示素子に照射することができる照明光学装置及びそれを用いた投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置は、光源からの光を表示素子に照射し、映像信号に応じた光学像を形成して拡大投射するものであり、投映像を明るく表示するためには、光源からの光を表示素子に照射する照明光学装置を効率的に高輝度化していくことが望まれている。
特に、映画館や大規模商業施設等で投射型表示装置を用いて多くの人に対して投映像を見せる場合、映像を大画面化すると共に、単位面積当たりの照度を低下させないために、照明光学装置からの射出光の明るさを明るくする必要がある。
【0003】
投射型表示装置から投影される画像を明るくする技術としては、表示素子のサイズを大きくすること、光学系の絞り値(以下、F値と称す)を小さくすること、光源を明るくすることの3種類の方法が知られている。
このうち、表示素子のサイズを大きくすることと、光学系のF値を小さくすることとに関しては、投射型表示装置が大型化し、装置コストが向上してしまうことに加え、光学設計の大幅な変更が必要であるという問題があった。
一方、光源を明るくすることに関しては、照明光学装置の光学設計の変更点も少なく、光源を交換するだけで容易に投映像の輝度を高めることができるという利点がある。
【0004】
光源を明るくすることは、同時に光源から射出されている紫外線帯域や赤外線帯域の不要光も増加する。特に赤外線帯域の光に関しては、熱エネルギーが高いため、赤外線帯域の光が照射された部分の温度を急激に上昇してしまう問題がある。
特に、光源に戻る光に含まれる赤外線帯域の光の光量が増加すると、ランプの明るさが低下するばかりでなく、場合によっては、ランプの温度が上昇しすぎて、ランプに不具合が生じる虞がある。
また、液晶表示素子方向に進む光束に含まれる赤外線帯域の光の光量が増加すると、光路上に配設された光学部品の温度が上昇し、光学部品の光学特性を低下させる虞がある。
更に、液晶表示素子に入射する光束に含まれる赤外線帯域の光の光量が増加すると、液晶表示素子の温度が上昇し液晶表示素子の電気光学特性が変化し、場合によっては液晶表示素子の特性が劣化してしまう虞がある。
そこで、この赤外線を帯域の光を除去し、効率的に表示素子を照明することができる技術が特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1には、おおむね以下のように記載されている。
特許文献1に記載の光照射装置には、キセノンランプなど高圧のアーク放電により明るい光を発光する高輝度放電ランプなどからなる光源と、射出された光束の光路上に、射出された光束の可視光を透過し赤外線をその光路から90度横に反射させる赤外線反射フィルタと、赤外線反射フィルタにより反射した赤外線の進行方向に配設された赤外線吸収体と、赤外線吸収体を冷却する送風手段とが設けられている。
この構成にすることにより、光源から射出した光束のうち熱源(熱線)である赤外線を赤外線反射フィルタにより光路から除去し赤外線吸収体にて吸収させているため、光路上に配設されている表示素子などに可視光のみを供給するものであり、他の部品の温度を上昇させることがない。
【0006】
【特許文献1】特開2000−171900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の赤外線吸収体を有する照明装置において、映画館や大規模商業施設等でより大型のキセノンランプを用いてより明るい投映像を多くの人に見せる場合、そのキセノンランプの定格入力は1KWから大きいもので10KWとなる。そのため赤外線の絶対量が増え赤外線吸収体の温度が上昇し、従来の送風手段では十分に冷却できない虞があった。
また、熱源である赤外線吸収体が投射型表示装置の所定の箇所に固定して設置されるため、表示素子などの光学部品を固定する投射型表示装置の光学筐体内に局所的な熱分布が発生してしまう虞があった。それを解消するためには、光学筐体を大きくする必要があった。
【0008】
そこで、本発明は、ランプの出力が大きくなった場合でも赤外線帯域の光により投映型投射装置の筐体内の熱分布が悪化せず、高輝度の可視光で表示素子の照射を行うことができる照明光学装置及びそれを用いた投射型表示装置を提供することを目的とする。
また、赤外線フィルタによって除去された赤外線帯域の光を、光源及び表示素子等に影響が無いように減衰させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、次の1)乃至3)の構成を有する。
1)光源2と、光源2から射出した光束の光路上に配設された、光源2から射出した光束を、平行光の光束にする平行光変換手段と、平行光の光束から、赤外線帯域の光を透過し、それ以外の帯域の光を反射する赤外線透過手段23と、赤外線透過手段23を透過した光束から、赤外線帯域の光及び紫外線帯域の光を反射し、それ以外の帯域の光を透過する紫外線/赤外線反射手段24と、内部に少なくとも平行光変換手段、赤外線透過手段23及び前記紫外線/赤外線反射手段24をそれぞれ配設した光学筐体8とを備え、赤外線透過手段23は、光源2から射出した光束の光路に対し45度傾斜して光学筐体8内に配設されており、紫外線/赤外線反射手段24は、赤外線透過手段23から射出した光束の光路に対し直交して光学筐体8内に配設されており、赤外線透過手段23を透過した赤外線帯域の光の光路に対して赤外線減衰体25を傾斜して設置したことを特徴とする照明光学装置3。
2)1)に記載の照明光学装置3において、赤外線減衰体25は、赤外線透過手段23を透過した赤外線帯域の光の光路に対して、赤外線透過手段23と同様な方向に10度以上20度以下傾斜させて設置され、赤外線減衰体25は、赤外線帯域の光の反射率が30%以下の金属体からなり、光学筐体8は、赤外線帯域の光の反射率が10%以下の金属体からなることを特徴とする1)に記載の照明光学装置3。
3)1)に記載の照明光学装置3と、照明光学装置3から射出された光束を分光及び直線偏光変換するにする色分解光学系4と、色分解光学系4で色分解された直線偏光の各色光の光束を入力画像信号により光変調する光変調光学系5と、光変調光学系5で光変調された各色光の光束を色合成する色合成光学系6と、色合成光学系6で合成された入力画像信号に応じた光束を拡大投影する投射レンズ7とを有し、照明光学装置3を構成する、赤外線減衰体25は、赤外線透過手段23を透過した赤外線帯域の光の光路に対して、赤外線透過手段23と同様な方向に10度以上20度以下傾斜させて設置され、赤外線減衰体25は、赤外線帯域の光の反射率が30%以下の金属体からなり、光学筐体8は、赤外線帯域の光の反射率が10%以下の金属体からなる、ことを特徴とする投射型表示装置1。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高輝度のランプを用い、ランプから射出された光束から赤外線帯域の光を除去すると共に、除去した赤外線帯域の光を入射光の光路に対して傾斜して配設した赤外線減衰体によって赤外線帯域の光の吸収,反射を行うため、ランプの出力が大きくなった場合でも投映型投射装置の筐体内の熱分布が均一化し、高輝度の可視光で表示素子を照射することができる。
また、赤外線減衰体によって赤外線帯域の光の吸収,反射を行うことにより、投映型投射装置の筐体内の熱分布が均一化するため、筐体内の冷却が容易になり、形状の小さい照明光学装置及びそれを用いた投射型表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る投射型表示装置の実施例について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の投射型表示装置の光学系の構成を示す概略平面図である。図2は、本発明の投射型表示装置の光学系の構成を示す詳細平面図である。図3は、本発明の投射型表示装置の光源及び照明光学系の光路を説明する詳細平面図である。図4は、本発明の照明光学装置の減衰部の角度を変化(0度,5度)させた際の光束を示す図である。図5は、本発明の照明光学装置の減衰部の角度を変化(10度,15度,20度)させた際の光束を示す図である。図6は、本発明の照明光学装置の減衰部の角度を変化(30度,45度)させた際の光束を示す図である。
なお、全図において、共通な機能を有する部品には同一符号を付して示し、一度説明したものに関しては、繰り返した説明を省略する。
【0012】
図1に示すように、本発明の投射型表示装置1は、光源2と、照明光学系3と、色分解光学系4と、光変調光学系5と、色合成光学系(クロスダイクロイックプリズム)6と、投射レンズ7とを有してなる。
照明光学系3,色分解光学系4,光変調光学系5及び色合成光学系6は、光学筐体8に収容されている。
更に、光源2と光学筐体8とは、外装部9に収容されており、投射レンズ7は外装部からその一部が突出した状態で光学筐体8に固定されている。
【0013】
図2を併せ用いて、本発明の投射型表示装置1の各部について詳細に説明する。
光源2は、高輝度の光を照射することができるキセノンランプを用い、構造として、陽極11及び陰極12からなる電極部と、電極間の放電によって発生した光を集光する反射鏡ユニット13と、射出部に配設され反射鏡ユニット13と固着することにより内部にキセノンガスを封入したガラス部14を有する。
ガラス部14の材質としては、放熱性に優れたサファイアガラスを用いることが望ましい。
また、反射鏡ユニット13の材料として、セラミックを用いることにより光源が小型軽量になり、それにより光学系を小さくでき、なお且つ破裂の可能性も少なくすることができる。
【0014】
照明光学系3は、光源2から射出した拡散光の光束を平行光の光束にする平行光変換手段である第1コリメータレンズ21及び第2コリメータレンズ22と、入射した平行光の光束のうち赤外線帯域の光を透過しそれ以外の帯域の光を反射する赤外線透過手段である赤外線透過フィルタ23と、入射した光束のうち紫外線帯域及び赤外線帯域の光を反射しそれ以外の帯域の光を透過する紫外線/赤外線反射手段である紫外線/赤外線反射フィルタ24と、赤外線透過フィルタ23を透過した赤外線帯域の光を吸収し、その一部を反射する赤外線減衰体25とを有する。
【0015】
色分解光学系4は、入射した光束から青色(以下「B」と称す)光を反射し、赤緑色(以下「RG」と称す)光を透過することにより入射した光を分光するBダイクロイックミラー31を有する。
更に、Bダイクロイックミラー31で分光されたB光の光路上には、B光の光束を90度折り曲げる反射ミラーと32、B光の光束の形状を液晶表示素子の表示領域の形状に一致させると共に、液晶表示素子上の照度を均一するために光束を複数の部分光束に分割する第1フライアイレンズ33b及び第2フライアイレンズ34bと、ランダム偏光である複数の部分光束を1方向の直線偏光の複数の部分光束に変換する偏光変換素子35bと、偏光変換素子35bで1方向の直線偏光に変換された複数の部分光束を合成し、1方向の直線偏光の光束にまとめるコンデンサレンズ36bとを有する。
【0016】
更に、Bダイクロイックミラー31で分光されたRG光の光路上には、RG光の光束の形状を液晶表示素子の表示領域の形状に一致させると共に、液晶表示素子上の照度を均一するために光束を複数の部分光束に分割する第1フライアイレンズ33rg及び第2フライアイレンズ34rgと、ランダム偏光である複数の部分光束を1方向の直線偏光の複数の部分光束に変換する偏光変換素子35rgと、偏光変換素子35rgで1方向の直線偏光に変換された複数の部分光束を合成し、1方向の直線偏光の光束にまとめるコンデンサレンズ36rgと、1つにまとまった直線偏光の光束のうち緑色(以下「G」と称す)光を反射し、赤色(以下「R」と称す)光を透過することにより入射した光を分光するRGダイクロイックミラー37とを有する。
【0017】
光変調光学系5は、R光,G光及びB光のそれぞれの光路上に、それぞれ次の部材を有する。
1つにまとまった直線偏光の光束をテレセントリックな照明光にするフィールドレンズ41r,41g,41bと、入射する光束をその光束が有する偏光状態に応じて透過または反射する反射型偏光板42r,42g,42bと、入射した直線偏光の光束を入力画像信号に応じて変調し、変調された光束を反射し射出する反射型液晶表示素子43r,43g,43bと、反射型液晶表示素子43r,43g,43bから射出し反射型偏光板42r,42g,42bで反射された光束のうち所定の方向の偏光状態の光束を透過する透過型偏光板44r,44g、44bとをそれぞれ有する。
【0018】
色合成光学系6は、クロスダイクロイックプリズム6からなる。その形状が四角柱であるクロスダイクロイックプリズム6は、透過型偏光板44r,44g、44bを透過したR光,G光及びB光がそれぞれクロスダイクロイックプリズム6の3側面から入射し、その内部で色合成され、色合成された光束が残りの1側面から射出するようになっている。
更に、投射レンズ7は、クロスダイクロイックプリズム6から射出された光束を拡大し、図示しないスクリーンに投影するものである。
【0019】
次に、光源2及び照明光学系3の光路について図3を用いて詳細に説明する。
本実施例に用いるキセノンランプは、高価格ではあるが高輝度と色の良さにより、他のランプを使用しがたい大出力投射型表示装置に使用されている。特に、陽極及び陰極の電極間距離(アーク長)の短いショートアーク型の場合、点光源に近づくため光学系の設計がしやすい。
図3に示すように、キセノンランプ光源2は、キセノンガスが封入されている空間内で陽極11及び陰極12の電極間に高電圧を印加しキセノン中の電子を放出させキセノン原子或いは分子を励起させることにより電極間で発光する。
発光により発生した光は、電極間から射出した光線が反射鏡ユニット13の反射鏡にて図3において下方向へ反射される。反射された光線は光軸Aを中心とした収斂光としてガラス部14から射出される。
ここで、ガラス14部は、発光部に非常に近く高熱になるため放熱性の優れたサファイアガラスとすることが望ましい。
【0020】
光源2から射出された光束Haは、B部にて焦点を結び拡散光となって第1コリメータレンズ21に入射する。第1コリメータレンズ21で屈折され透過した光束は、第2コリメータレンズ22に入射する。第2コリメータレンズ22で再び屈折され透過した光束Haは平行光となって射出する。
【0021】
第2コリメータレンズ22を射出した平行光の光束Haは、光路に対して45度傾斜して配設された赤外線透過フィルタ23に入射する。赤外線透過フィルタ23に入射した光束Haは赤外線帯域に鋭い輝線を持ち強い熱エネルギーを持つため、赤外線透過フィルタ23において波長が700nm近傍以上の強い熱エネルギーを持つ赤外線帯域の光は透過させ、それ以外の帯域の光は赤外線透過フィルタ23で反射し、図3の左方向へ90度折り曲げられる。
【0022】
赤外線透過フィルタ23を反射した光束Hbは、紫外線/赤外線反射型フィルタ24に入射する。紫外線/赤外線反射型フィルタ24では、入射した光束Hbのうち赤外線透過フィルタ23で除去しきれなかった700nm近傍以上の波長の赤外線帯域の光と400nm近傍以下の波長の紫外線帯域の光とが赤外線透過フィルタ23方向に反射されると共に、赤外線及び紫外線が除去された帯域の光は、透過することにより色分解光学系に射出される。
【0023】
一方、赤外線透過フィルタ23を透過した強い熱エネルギーを持つ赤外線帯域の光束Hcは、赤外線透過フィルタ23を透過した光の光路上に所定の角度を有して配設された赤外線減衰体25に入射する。
赤外線減衰体25は、ヒートシンクとしての特性を有し、具体的には入射した赤外線帯域の光束Hcの有する強い熱エネルギーを、赤外線減衰体25の裏面側に凹凸25tを付けることにより表面積を増やし、そこからの放散によって減衰させるものである。
更に、赤外線減衰体25の凹凸部25tに対向する位置には図示しない空冷ファンが配設され、空冷ファンで赤外線減衰体25に送風することにより熱の放散量を増やしている。
【0024】
赤外線減衰体25の材料としては、高い熱伝導率を有すると共に表面積が大きくなるような形状加工性の優れた材料が望まれる。熱伝導率の高い材料としては、金属,セラミックス及び炭素繊維等があるが、安価で加工性が良く量産性に優れた材料としてはアルミニウムがあげられる。
【0025】
ここで光源2として、高輝度で大出力のキセノンランプを用いた場合、赤外線減衰体25の熱伝導率を上げ、表面積を増やし、空冷ファンで冷却した場合においても、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光の強い熱エネルギーを除去するのは容易ではない。
そこで、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光束Hcの一部を、所定の角度で赤外線透過フィルタ23方向に反射させ、反射させた光束Hdの光路上にある光学筐体8に入射させ再び赤外線帯域の光束Hdの光の熱エネルギーの除去を行う。
【0026】
ここで、赤外線減衰体25で反射した光束Hdには、赤外線減衰体25へ入射する赤外線帯域の光束Hcの光路に対する赤外線減衰体25の設置角度(θ)により、光源2方向への戻り光と反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向への漏れ光とがある。
光源2及び光学素子や反射型液晶表示素子43r,43g,43bに与える影響を評価する指標として、赤外線減衰体25で反射した光束Hdを光源2方向への戻り光と反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向への漏れ光とに分け、それぞれ明るさ及び光束量の積である光の総エネルギーを用いて評価を行う。
明るさは、赤外線透過フィルタ23を透過した赤外線帯域の光を100%として、赤外線減衰体25及び光学筐体8に入射し所定の反射率で反射し、光源2及び反射型液晶表示素子43r,43g,43bに入射したときの比率とする。この際、紫外線/赤外線反射フィルタ24以外の光学素子でのロスは無視できるものとする。
光束量は、赤外線減衰体25に入射した光束の面積を100としたときに、その面積のうち何パーセントの光束の面積が、光源2及び反射型液晶表示素子43r,43g,43bに入射したかを比率で示したものとする。
【0027】
実際に、図4乃至図6を用いて赤外線減衰体25を入射光に対して設置角度θを変更させた場合の、赤外線減衰体25で反射した赤外線帯域の光束の光路について詳細に説明する。
図4は、入射光Hcに対して赤外線減衰体25の設置角度θを0度(a)(垂直に入射),5度(b)としたときの光路である。図5は、入射光Hcに対して赤外線減衰体25の設置角度θを10度(c),15度(d),20度(e)としたときの光路である。図6は、入射光Hcに対して赤外線減衰体25の設置角度(θ)を30度(f),45度(g)(赤外線透過フィルタ23と同じ角度)と傾けたときの光路である。
【0028】
赤外線減衰体25の設置角度θが0度(a)の場合、赤外線減衰体25が入射光Hcに対して垂直であるため、赤外線減衰体25に入射した光束の面積の98.7%が光源2に戻る。しかしながら、赤外線減衰体25での反射率は30%であるため、光源2に戻る光Hdの総エネルギーは、98.7%×30%で30%となる。
【0029】
一方、赤外線減衰体25の設置角度θが45度(g)の場合、赤外線減衰体25で反射した赤外線帯域の光束Hdの光路は、赤外線透過フィルタ23とで反射した本来の光束の光路とほぼ一致するため、赤外線減衰体25に入射した光束の面積の84.7%が反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向に漏れ光として進む。
しかしながら、赤外線減衰体25での反射率は30%であり、途中で赤外線帯域の光の透過率が10%の紫外線/赤外線反射フィルタ24を通過するため、反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向に進む光の総エネルギーは、84.7%×30%×10%で2.5%となる。
【0030】
更に、赤外線減衰体25の設置角度θが0度(a)と45度(g)との間の角度について検証する。
赤外線減衰体25の角度が5度(b)の場合、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光束Hcの面積うち一部(37.8%)が直接光源2に戻る。この際、赤外線減衰体25の反射率は30%であるため、光源2に戻る光の総エネルギーは、37.8%×30%で11.3%となる。
それ以外に赤外線減衰体25で反射した赤外線帯域の光束Hdの残りの面積(62.2%)は光学筐体8のC部またはD部に入射し、反射されD部またはC部に入射し更に反射され赤外線減衰体25に入射し、更に反射して光源2に戻る。
【0031】
この光学筐体8で反射される光束Hdは、赤外線減衰体25,光学筐体8,光学筐体8,赤外線減衰体25の順に反射される。光学筐体8は、赤外線減衰体25と同じく放熱性を考慮して金属製としている。しかしながら、光学筐体8に入射する光の総エネルギーは、赤外線減衰体25での吸収があるため、最大でも赤外線減衰体25に入射する明るさの30%である。そのため、赤外線減衰体25に比べ熱伝導率が低く、反射率も低い材料を使用することができる。
本実施例では、反射率が10である鉄製の光学筐体8を使用している。
そのため、赤外線減衰体25に入射する明るさに対する光源2への戻り光の明るさの比率は、30%×10%×10%×30%で0.09%となる。
つまり、光学筐体8で反射される光束Hdが光源2に戻る際の光の総エネルギーは、62.2%×0.09%で0.06%となり、十分に無視できると言える。
【0032】
同様に、赤外線減衰体25の設置角度θが10度(c)の場合、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光束Hcのうち直接光源2に戻る光束は無い。
しかしながら、光学筐体8のC部に入射した光束Hdの面積の一部(61%)が、C部で反射された後、光源2に戻る。
それ以外の赤外線減衰体25で反射した赤外線帯域の光束Hdの残りの面積は、少なくとも光学筐体8で2回、赤外線減衰体25で2回反射する必要があるため、その光の総エネルギーは前述のように無視できる。
このため、赤外線減衰体25の角度が10度(c)の場合の光の総エネルギーは、61%×30%×10%で0.06%となる。
【0033】
次に、赤外線減衰体25の角度が15度(d)の場合、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光束Hcのうち直接光源2に戻る光束は無い。
更に、光学筐体8のC部に入射した光束Hdは、光学筐体8内で反射を繰返すことにより明るさを減衰するため光源2には戻らない。
一方、赤外線減衰体25で反射した光束Hdの面積の一部(40.7%)が反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向への漏れ光となる。
この漏れ光は、赤外線減衰体25の角度が45度(g)で説明したように、赤外線減衰体25で反射し、紫外線/赤外線反フィルタ24を通過する上に、光学筐体8のE部とF部と反射を繰返すため、反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向に進む漏れ光の総エネルギーは、無視できる。
【0034】
次に、赤外線減衰体25の設置角度θが20度(e)の場合、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光束Hcのうち光源2に戻る光束は無い。
赤外線減衰体25で反射した光束Hdの面積の一部(82%)が反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向への漏れ光となる。
この漏れ光は、赤外線減衰体25の角度が45度(g)で説明したように、赤外線減衰体25で反射し、紫外線/赤外線反フィルタ24を通過し、その後少なくとも1回以上光学筐体8のE部で反射するため、反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向に進む漏れ光の総エネルギーは最大でも、82%×30%×10%×10%で0.25%となる。
【0035】
次に、赤外線減衰体25の設置角度θが30度(f)の場合、赤外線減衰体25に入射した赤外線帯域の光束Hcのうち光源2に戻る光束は無い。
赤外線減衰体25で反射した光束Hdの面積の一部(84.7%)が反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向への漏れ光となる。
この漏れ光は、赤外線減衰体25の角度が45度(g)で説明したように、赤外線減衰体25で反射し、紫外線/赤外線反フィルタ24を通過する。その後、この漏れ光の光束Hdの1部は光学筐体8のE部で反射するが、その割合は色分解光学系4の光学設計にもよるので、の反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向に進む漏れ光の総エネルギーは最大でも、84.7%×30%×10%で1.2%となる。
以上の結果を、表1に示す。
【表1】

【0036】
光源2の方向に光の総エネルギーの1%以上の戻り光がある場合、出力の低下が発生する可能性が出てくる。戻り光がそれ以上に増加すると、光源2に不具合が発生する可能性も出てくる。そのため、赤外線減衰体25の角度が10度未満の場合は、使用に適さないといえる。
【0037】
更に、反射型液晶表示素子43r,43g,43b方向に進む漏れ光の総エネルギーも1%以上になると、途中に配設されている光学素子を構成する有機材料で吸収が発生し、有機材料に焼けやクラックが発生し光学性能の低下や信頼性の低下が引き起こされる。そのため、赤外線減衰体25の角度が20度を超えた場合は、使用に適さないといえる。
つまり、入射光に対して赤外線減衰体25の設置角度を10度から20度の範囲に設定する必要がある。
【0038】
以上、説明したように、高輝度の光源2を用い、光源2から射出された光束Haから赤外線帯域の光を除去すると共に、除去した赤外線帯域の光を入射光の光路に対して傾斜して配設した赤外線減衰体25によって赤外線帯域の光の吸収,反射を行うため、光源2の出力が大きくなった場合でも投映型投射装置1の筐体内の熱分布が良化し、高輝度の可視光で反射型液晶表示素子43r,43g,43bを照射することができる。
また、赤外線帯域の光の吸収を赤外線減衰体25だけでなく光学筐体8で行うため、投影型表示装置1の内部の熱分布が良化するため、投影型表示装置1の冷却が容易になり、照明光学装置及びそれを用いた投射型表示装置の形状を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の投射型表示装置の構成を示す概略平面図である。
【図2】本発明の投射型表示装置の光学系の構成を示す詳細平面図である。
【図3】本発明の投射型表示装置の光源及び照明光学系の光路を説明する詳細平面図である。
【図4】本発明の照明光学装置の減衰部の角度を変化(0度,5度)させた際の光束を示す図である。
【図5】本発明の照明光学装置の減衰部の角度を変化(10度,15度,20度)させた際の光束を示す図である。
【図6】図6は、本発明の照明光学装置の減衰部の角度を変化(30度,45度)させた際の光束を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1…投射型表示装置、2…光源、3…照明光学系、4…色分解光学系、5…光変調光学系、6…色合成光学系(クロスダイクロイックプリズム)、7…投射レンズ、8…光学筐体、9…外装部、11…陽極、12…陰極、13…反射鏡ユニット、14…ガラス部、21…第1コリメータレンズ、22…第2コリメータレンズ、23…赤外線透過フィルタ、24…紫外線/赤外線反射型フィルタ、25…赤外線減衰体、31…Bダイクロイックミラー、32…反射ミラー、33b,33rg…第1フライアイレンズ、34b,34rg…第2フライアイレンズ、35b,35rg…偏光変換素子、36b,36rg…コンデンサレンズ、37…RGダイクロイックミラー、41r,41g、41b…フィールドレンズ、42r,42g、42b…反射型偏光板、43r,43g、43b…反射型液晶表示素子、44r,44g、44b…透過型偏光板、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出した光束の光路上に配設された、
前記光源から射出した光束を、平行光の光束にする平行光変換手段と、
前記平行光の光束から、赤外線帯域の光を透過し、それ以外の帯域の光を反射する赤外線透過手段と、
前記赤外線透過手段を透過した光束から、赤外線帯域の光及び紫外線帯域の光を反射し、それ以外の帯域の光を透過する紫外線/赤外線反射手段と、
内部に少なくとも前記平行光変換手段、前記赤外線透過手段及び前記紫外線/赤外線反射手段をそれぞれ配設した光学筐体と、
を備え、
前記赤外線透過手段は、前記光源から射出した光束の光路に対し45度傾斜して前記光学筐体内に配設されており、
前記紫外線/赤外線反射手段は、前記赤外線透過手段から射出した光束の光路に対し直交して前記光学筐体内に配設されており、
前記赤外線透過手段を透過した赤外線帯域の光の光路に対して赤外線減衰体を傾斜して設置したことを特徴とする照明光学装置。
【請求項2】
請求項1記載の照明光学装置において、
前記赤外線減衰体は、前記赤外線透過手段を透過した赤外線帯域の光の光路に対して、前記赤外線透過手段と同じ方向に10度以上20度以下傾斜させて設置され、
前記赤外線減衰体は、赤外線帯域の光の反射率が30%以下の金属体からなり、
前記光学筐体は、赤外線帯域の光の反射率が10%以下の金属体からなる、
ことを特徴とする請求項1記載の照明光学装置。
【請求項3】
請求項1記載の照明光学装置と、
前記照明光学装置から射出された光束を分光及び直線偏光変換するにする色分解光学系と、
前記色分解光学系で色分解された直線偏光の各色光の光束を入力画像信号により光変調する光変調光学系と、
前記光変調光学系で光変調された各色光の光束を色合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系で合成された入力画像信号に応じた光束を拡大投影する投射レンズと、
を有し、
前記照明光学装置を構成する、
前記赤外線減衰体は、前記赤外線透過手段を透過した赤外線帯域の光の光路に対して、前記赤外線透過手段と同じ方向に10度以上20度以下傾斜させて設置され、
前記赤外線減衰体は、赤外線帯域の光の反射率が30%以下の金属体からなり、
前記光学筐体は、赤外線帯域の光の反射率が10%以下の金属体からなる、
ことを特徴とする投射型表示装置。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−169080(P2009−169080A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−6855(P2008−6855)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】