説明

照明装置、照明ユニット及びディスプレイ

【課題】点灯データの通信速度によらず照明を点灯可能とし、また異なるデータ転送速度のコントローラ部に対してもデータ通信可能な照明ユニット等を提供する。
【解決手段】複数の照明ユニット2と、照明ユニット2同士をデイジーチェーン状に連結した状態で、各点灯部5を点灯して照明するための照明信号を順次送出するため、通信制御部8とデータ通信可能な状態に接続されたコントローラ部1とを備える。点灯制御部6は、コントローラ部1と通信制御部8との間のデータ通信に使用されるコントローラ側タイミング信号と、各照明ユニット2内で点灯制御部6と点灯部5との間のデータ通信で使用されるユニット側タイミング信号とを非同期で動作させる。これにより、データ通信に際して、各照明ユニット2内部での同期をとる必要が無いので、照明データの送出、更新タイミングによらず照明ユニット2側を高速に動作させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LEDやLD等の発光素子を用いた照明装置、及び照明装置を構成する照明ユニットや、文字情報や絵等の静止画や簡易動画を表示するディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の照明の光源としては白熱電球やハロゲンランプ等が使用されてきた。近年、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)やレーザダイオード(Laser Diode:LD)等の高輝度の発光素子が、光の三原色である赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)のRGBそれぞれにつき開発されたため、大型の自発光型フルカラーディスプレイが作製されるようになった。中でも、LEDディスプレイは軽量、薄型化が可能で、且つ高輝度・消費電力が低い等の特徴を有するので、屋外でも使用可能な大型ディスプレイから、プラットホームなど半屋内の中・小画面サイズのものまで、用途・場所に応じて様々な画面サイズのLEDディスプレイが求められている。このような画面サイズや縦・横の画面比率(アスペクト比)、形状等の要求に対応するためにLEDを多数マトリクス状あるいはライン状に配置したLEDユニットを複数組み合わせて、表示システムを構成することも行われている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
さらにこのようなディスプレイ用途以外に、照明用途においても多数のLEDを面状に配列した照明装置が利用されている。従来、各種の照明の光源としては白熱電球やハロゲンランプ等が使用されてきたが、これらに比べLEDなどの半導体発光素子は低消費電力、耐衝撃性に強い等の利点がある上、長寿命で球交換の手間が不要なこともあり、LEDを使用した照明装置への置き換えが望まれている。
【0004】
図7に、照明色や光量等を制御可能な照明装置700の一例を示す。この図に示す照明装置700は、複数の照明ユニット72同士を通信ケーブル73でコントローラ71と接続し、さらにコントローラ71には照明信号のソースを接続している(図示せず)。コントローラ71からは、照明ユニット72毎に、表示部75に配置されたLEDの点灯色や点灯時間等のデータを含む照明データが通信ケーブル73を介して送出される。各照明ユニット72は通信回路78を備え、照明ユニット72間でデータ通信する。また各照明ユニット72に識別IDを割り当てておき、照明データをパケットデータとして送出先の識別IDを含めることで、各照明ユニット72の表示部75に配置された発光素子の点灯を、表示制御部77を介して個別に制御できる。
【特許文献1】特開平11−126047号公報
【特許文献2】特開2007−35639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなデータ通信システムは、従来LEDディスプレイにおいて行われていたデータ通信システムと同様の手法で行われていた。すなわち、従来の電球等を利用した照明においては、電流量を調整して点灯量を制御するのに対し、LED照明においてはPWM等によって通電時間を調整して点灯量を制御している。また、動画像などの画像ソースを表示するよう、フレーム毎にLEDの点灯データをコントローラ71から各照明ユニット72にパケット状に送出し、各照明ユニット72で自身宛のパケットデータを受信して、表示部75を点灯させる。この場合、コントローラ71から送出される点灯データのタイミングと、照明ユニット72での表示部75の点灯タイミングの同期をとる必要がある。このため、通信回路78あるいは表示制御部77間のデータ転送の同期をとる同期維持手段79を設ける必要があった。
【0006】
しかしながら、照明ユニット72で点灯されるLEDは、ちらつき防止等の観点から高速に点灯されるのに対し、コントローラ71から送出されるLED点灯データの転送速度は一般にこれよりも遅くなる。したがって、高速な点灯周期でLEDを点灯させるにはコントローラ71の通信速度を上げる必要があり、コントローラ71とのデータ通信に高価なシステムが要求される。特に多数の照明ユニット72を接続して高速なデータ通信を行う場合は、同期の維持が一層困難になる。一方でコントローラ71とのデータ通信速度を落とすと、照明ユニット72での点灯周期が遅くなり、照明にちらつきが生じる弊害が生じる。
【0007】
本発明は、従来のこのような問題点を解決するためになされたものである。本発明の一の目的は、点灯データの通信速度によらず照明を点灯可能な照明装置、照明ユニット及びディスプレイを提供することにある。
【0008】
一方で、ディスプレイの分野においては、動画像を表示する観点から1秒間60フレーム等、規定の周期で画像データが表示されるため、コントローラとLEDユニット間の通信速度もこれに応じて規定の転送タイミングでデータ通信が行われている。これに対し、照明分野においては動画像のような激しい変化が求められず、点灯データの更新速度も特に定められていない。このため、コントローラと照明ユニット間の通信速度も一義的に決められておらず、製造メーカや機種によって異なるのが現状であった。このため、特定の機種間でしか接続ができず、製造メーカや機種の異なるコントローラや照明ユニット同士を接続することができないため、汎用性に欠けるという問題があった。
【0009】
本発明は、さらにこのような問題を解決するためになされたものである。本発明の他の目的は、異なるデータ転送速度のコントローラに対してもデータ通信可能な照明ユニットを構成した照明装置、照明ユニット及びディスプレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0010】
以上の目的を達成するために、本発明の照明装置によれば、複数の発光素子が配置された点灯部と、前記発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、外部とのデータ通信で得たデータを前記点灯制御部に送出する通信制御部と、を備える複数の照明ユニットと、互いに連結された照明ユニットにおける各点灯部を照明として制御する照明信号を前記通信制御部に送出可能な状態に接続されたコントローラ部と、を備える照明装置であって、前記点灯制御部は、前記コントローラ部と前記通信制御部との間のデータ通信に使用される第一のタイミング信号と、各照明ユニット内において前記点灯制御部と前記点灯部との間のデータ通信に使用される第二のタイミング信号とを非同期で動作させることができる。これにより、照明信号を送出するコントローラ部とのデータ通信に際して、各照明ユニット内部での同期をとる必要が無いので、照明データの送出、更新タイミングによらず照明ユニット側を高速に動作させることができる。また、従来、機種毎に固有の動作タイミングを有していたコントローラ部に対して、接続可能な照明ユニットの仕様が限定されていたが、本照明装置ではコントローラ部の動作タイミングによらず照明ユニットを接続可能とでき、メーカや機種に制限されることなく一の照明ユニットを様々な仕様のコントローラ部に対して汎用的に使用できる利点も得られる。
【0011】
また、第2の照明装置によれば、前記コントローラ部が、前記第一のタイミング信号として外部フレーム同期信号を生成し、該外部フレーム同期信号に従って照明信号を照明ユニット側に送出すると共に、前記点灯制御部が、前記外部フレーム同期信号と独立して、これよりもリフレッシュレートが高速な、内部フレーム同期を行うための第二のタイミング信号として内部フレーム同期信号を生成するタイミング生成回路を備えることができる。これにより、内部フレーム同期信号のリフレッシュレートを外部フレーム同期信号よりも高速にすることで、各照明ユニットでの更新のタイミングの変化を目立たなくできる。
【0012】
さらに第3の照明装置によれば、前記内部フレーム同期信号のリフレッシュレートが所定値に固定されており、前記外部フレーム同期信号のリフレッシュレートは可変に構成できる。これにより、コントローラ部の動作周期によらず照明ユニットと接続可能で、仕様がどのような動作周波数のコントローラ部であっても照明ユニットと接続でき、製造メーカや機種に依らず照明システムを構築できる利点が得られる。
【0013】
さらにまた、第4の照明装置によれば、前記内部フレーム同期信号のリフレッシュレートを、前記外部フレーム同期信号のリフレッシュレートの4倍以上に設定できる。これにより、ちらつきを少なくして高品質な照明光が得られる。
【0014】
さらにまた、第5の照明装置によれば、前記コントローラ部は、所望の照明パターンが更新される毎に、該当する照明ユニットの通信制御部に対して前記コントローラ部から前記照明信号を送出するよう構成できる。これにより、随時必要な照明信号のみを、該当する照明ユニットに送出できるので、データ通信量を必要最小限に低減でき、システムの負荷を軽減できる。
【0015】
一方、第6の照明ユニットによれば、コントローラ部と通信可能に接続され、さらに複数の照明ユニット同士を接続可能であり、コントローラ部から発光素子を点灯して照明するための照明信号を受信して照明を行う照明ユニットであって、発光色がそれぞれ異なる複数の発光素子がライン状又はマトリクス状に配置された点灯部と、前記発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、前記コントローラ部と照明信号のデータ通信を行い、データ通信結果を前記点灯制御部に送出する通信制御部と、を備え、前記点灯制御部は、前記コントローラ部と通信制御部との間のデータ通信に使用されるコントローラ側タイミング信号と、各照明ユニット内で前記点灯制御部と前記点灯部との間のデータ通信で使用されるユニット側タイミング信号とを非同期で動作させることができる。これにより、照明信号を送出するコントローラ部とのデータ通信に際して、各照明ユニット内部での同期をとる必要が無いので、照明データの送出、更新タイミングによらず照明ユニット側を高速に動作させることができる。また、従来、機種毎に固有の動作タイミングを有していたコントローラ部に対して、接続可能な照明ユニットの仕様が限定されていたが、本照明ユニットではコントローラ部の動作タイミングによらずコントローラ部と接続可能であり、メーカや機種に制限されることなく一の照明ユニットを様々な仕様のコントローラ部に対して汎用的に使用できる利点も得られる。
【0016】
また第7のディスプレイによれば、発光色がそれぞれ異なる複数の発光素子がライン状又はマトリクス状に配置された点灯部と、前記発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、外部とデータ通信を行い、データ通信結果を前記点灯制御部に送出する通信制御部と、を備える複数の照明ユニットと、前記照明ユニット同士を連結した状態で、各点灯部を点灯して照明するための照明信号を順次送出するため、前記通信制御部とデータ通信可能な状態に接続されたコントローラ部と、を備えるディスプレイであって、前記点灯制御部は、前記コントローラ部と通信制御部との間のデータ通信に使用されるコントローラ側タイミング信号と、各照明ユニット内で前記点灯制御部と前記点灯部との間のデータ通信で使用されるユニット側タイミング信号とを非同期で動作させることができる。これにより、照明信号を送出するコントローラ部とのデータ通信に際して、各照明ユニット内部での同期をとる必要が無いので、照明データの送出、更新タイミングによらず照明ユニット側を高速に動作させることができる。また、従来、機種毎に固有の動作タイミングを有していたコントローラ部に対して、接続可能な照明ユニットの仕様が限定されていたが、本ディスプレイではコントローラ部の動作タイミングによらず照明ユニットを接続可能とでき、メーカや機種に制限されることなく一の照明ユニットを様々な仕様のコントローラ部に対して汎用的に使用できる利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための照明装置、照明ユニット及びディスプレイを例示するものであって、本発明は照明装置、照明ユニット及びディスプレイを以下のものに特定しない。また、特許請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0018】
図1に、実施の形態に係る照明装置のブロック図を示す。この図に示す照明装置100は、コントローラ部1と、複数の照明ユニット2とを備える。これらコントローラ部1と照明ユニット2とは、通信信号線を介してデータ通信可能な状態に接続される。なお、図1の例では通信信号線3で照明ユニット2を数珠繋ぎのデイジーチェーン状に連結している。ただ、ループ状に接続してもよい。この場合は、照明ユニット側からコントローラ部に情報を送出することが可能となり、例えば各照明ユニットのステータス情報や障害情報をコントローラ部に通知することができる。具体的には、各照明ユニットに含まれる点灯部のLEDの断線情報を、コントローラ部に通知することができる。また、スター型の接続も適宜利用できる。さらに、接続はケーブル等の物理的媒体を介した有線接続に限られず、赤外線や電波、電磁波、光、音波などを利用した無線接続とすることもできる。
(照明ユニット2)
【0019】
照明ユニット2は、複数台を連結して接続できる。すなわち、複数の発光素子4が配設された照明ユニット2を照明装置の大きさや形状に応じて複数接続させることで、照明装置のサイズや形状を任意に構成できる利点が得られる。一例として照明ユニット2の単体の外観を、図2及び図3に示す。例えば図2に示す照明ユニット2Aは、16ドット×16ドットのLED(発光素子4)をマトリクス状に配列させている。これを一つの照明ユニット2Aとしてモジュール化し、複数の照明ユニット2Aを縦及び/又は横に連結する。画面サイズや縦・横のアスペクト比などに応じて、照明ユニット2Aをマトリクス状に繋ぎ合わせて、所望の照明装置を構成できる。あるいは、図3に示すような棒状の照明ユニット2Bを、ライン状に複数接続して線状の光源とすることもできる。各照明ユニット2は、通信制御部8と、点灯制御部6と、点灯部5とを備える。
(点灯部5)
【0020】
点灯部5には、発光色がそれぞれ異なる複数の発光素子4が基板上にライン状又はマトリクス状に配置される。マトリクス状の点灯部5の場合は、導電性パターンが形成された基板上に、複数の発光素子で1画素を構成するクラスタをm行×n列のマトリクス状に配列する。発光素子4には、LED、LD等の半導体発光素子やEL、PDP等が利用される。半導体発光素子は、入力に対する出力のリニアリティが良く、効率に優れ、長寿命で安定して使用できる利点がある。本実施の形態においてはLEDを使用した。LEDは、電球等に比較して球切れの心配が無く耐久性やコストの面から好ましい。例えば赤、緑、青(R、G、B)がそれぞれ発光可能な各LEDを3個単位で隣接して配設したLEDクラスタで、一画素(ピクセル)分を構成する。各画素毎にRGBを隣接させたLEDは、フルカラー表示を実現できる。なお光の3原色とは一般には上記R、G、Bを指すが、CMY系又はCMYK系、あるいはこれらの補色を利用することもできる。
【0021】
LED等の半導体発光素子は、液相成長法、HDVPE法やMOCVD法により基板上にZnS、SiC、GaN、GaP、InN、AlN、ZnSe、GaAsP、GaAlAs、InGaN、GaAlN、AlInGaP、AlInGaN等の半導体を発光層として形成させたものが好適に用いられる。半導体層の材料やその混晶度の選択により、半導体発光素子の発光波長を紫外光から赤外光まで種々選択することができる。特に、野外でも好適に利用することができる表示装置とするときには、高輝度発光可能な発光素子が求められる。そこで、緑色系及び青色系の高輝度な発光する発光素子の材料として、窒化物半導体を選択することが好ましい。例えば、発光層の材料として、InXAlYGa1-X-YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y≦1)等が利用できる。また、このような発光素子と、その発光により励起され、発光素子の発光波長と異なる波長を有する光を発する種々の蛍光体とを組み合わせた発光素子とすることもできる。赤色系の発光する発光素子の材料として、ガリウム・アルミニウム・砒素系の半導体やアルミニウム・インジウム・ガリウム・燐系の半導体を選択することが好ましい。なお、カラー表示装置とするためには、赤色系の発光波長が610nmから700nm、緑色が495nmから565nm、青色の発光波長が430nmから490nmのLEDチップを組み合わせることが好ましい。
【0022】
発光素子は、その発光素子に電力を供給するリード電極と電気的に接続され、発光素子を外部から保護する封止部材にて被覆することによりLEDとされる。発光素子は、成長基板上に半導体層をエピタキシャル成長させた半導体発光素子が好適に利用できる。成長基板は、例えば、サファイア、スピネル、SiC、GaN、GaAs等、公知の材料を用いることができる。また、サファイアのような絶縁性基板でなく、SiC、GaN、GaAs等の導電性基板を用いることにより、p電極及びn電極を対向して配置させることもできる。
【0023】
また必要に応じて、発光素子の周囲に波長変換部材を配置し、発光素子の光の波長を変換して、異なる波長の光に変換して出力することもできる。波長変換部材は、例えば透光性樹脂に、発光素子の光で励起されて蛍光を発する蛍光体を混入することにより形成させたものである。これにより、発光素子の光をより長波長の光に変換し、発光素子の光と波長変換部材で変換された長波長の光との混色光を外部に取り出すことが可能となる。
【0024】
さらにLEDは、種々の形状のものを用いることができる。例えば、発光素子であるLEDチップをリード端子と電気的に接続させると共に、モールド樹脂等で被覆した砲弾型や、チップタイプLED、発光素子そのものを利用する形態等が挙げられる。
(点灯制御部6)
【0025】
点灯部5の各発光素子4は、点灯制御部6により駆動、制御される。点灯制御部6は、LEDなどの発光素子4に電力を供給して、所望の発光素子4のみを駆動できる。ドットマトリックス状に配置したLEDをダイナミック駆動させる場合、コモンドライバにより各セグメント配置されたLED群を一定周期で選択制御すると共に、セグメントドライバにより電流を流す時間を調節することによって、所望の光量の発光色を得ることができる。なお、この例では点灯制御部6が発光素子4の駆動、及び通信制御部8からの点灯信号に基づいて点灯制御を行っているが、この構成に限られず、通信制御部との通信を行う点灯制御部と別に、各発光素子を駆動する駆動回路を設けることもできることはいうまでもない。さらに必要に応じて、伝送されたデータを一時的に保存する記憶手段や、予め各照明ユニットごとに設けられた識別情報などを記憶する記憶手段、伝送されたデータを各照明ユニットの識別情報と比較し自らの照明ユニットデータであることを判定する比較手段、比較判定後に受信処理されたデータに基づき各々のLEDに供給する電力を演算する演算手段などを設けることもできる。これらの各種手段は半導体メモリ、論理回路や中央演算処理装置を利用することにより構成できる。
(タイミング生成回路7)
【0026】
点灯制御部6は、コントローラ部1と通信制御部8との間のデータ通信に使用されるコントローラ側タイミング信号と、各照明ユニット2内で点灯制御部6と点灯部5との間のデータ通信で使用されるユニット側タイミング信号とを非同期で動作させる。このため、点灯制御部6はタイミング生成回路7を有しており、タイミング生成回路7で内部フレーム同期を行うためのユニット側タイミング信号として、内部フレーム同期信号を生成する。内部フレーム同期信号は、外部フレーム同期信号と独立して、これよりも周期(リフレッシュレート)を高速に設定する。特に発光素子としてLEDを使用する場合は、照明データの更新(リフレッシュ)を高速にすることで、残像効果の少ないLEDのちらつきを目立たなくする効果が得られる。タイミング生成回路7には、フリーラン(自律式)のカウンタ内蔵した発振器が利用できる。またこのクロック信号に基づき、内部フレーム同期信号やブランキング信号(BLANK)、データラッチ信号(LATCH)、シフトクロック信号(SCLK)や階調基準クロック信号(GDCK)などの各種信号をタイミング生成回路で生成できる。なお内部フレーム同期信号は、照明信号の切り替わりを示す内部VSYNC(vertical synchronizing signal :垂直同期信号)、外部フレーム同期信号は外部VSYNCとも呼ばれる。
(タイミングチャート)
【0027】
このように、各照明ユニット2で外部フレーム同信号に依らず自律式に内部フレーム同期信号を生成できるので、コントローラ側の仕様に依存しない柔軟な接続が可能となる。加えて、各照明ユニット2間でも同期をとる必要がない。図4に、外部VSYNCと、各照明ユニット2の内部VSYNCのタイミングチャートの一例を示す。この図に示すように、各照明ユニット2が各々タイミング生成回路7を備えており、それぞれが独立して内部VSYNCを生成しているため、各照明ユニット2は独自のタイミングで自律的に動作でき、データ通信の制約が少なく極めてシンプルな回路構成が実現できる。これにより、従来であれば照明ユニットの接続段数を増やすと各ユニット間の同期を維持することが困難となっていたが、本構成によればこのような制約を受けることなく、照明ユニットの接続段数を増やすことができる。加えて、内部フレーム同期信号を照明ユニット内部で発生できるため、これらを外部のコントローラ部等から送出する場合に比べ、信号劣化や放射ノイズの問題を回避することもできる。
(更新タイミングのずれ緩和)
【0028】
一方で、各照明ユニットが自律的に内部フレーム同期信号を生成する結果、照明ユニット間でのリフレッシュのタイミングが異なる結果、点灯パターンの変化が照明ユニット毎に異なり、このような変化のタイミングのずれが人の目で認識されることが生じる。図4に示すように、照明ユニット同士の間での画像更新の時間差は、内部VSYNCの一周期を最大として生じる。特に照明ユニット数が少ないと、このようなずれ、あるいは更新の遅れが目立つことになる。逆に照明ユニットの接続数が多い場合は、各照明ユニット間にタイミングのばらつきが生じても、ずれが平均化される結果、タイミングのばらつきを抑制できる。このため、照明ユニットの接続数が多いほどタイミングのばらつきを吸収できるので、好ましい。
【0029】
また、内部VSYNCの周波数が高い程、一周期が短くなるのでずれが少なくなる。このため、点灯部の点灯タイミングは、高速であることが好ましい。あるいは内部VSYNCと外部VSYNCとの差が大きい場合にも同様の効果が得られる。特にLEDは、残像効果が少ないため、リフレッシュレートすなわち内部VSYNCの周波数が低いとちらつきが生じる。仮にコントローラ部との通信速度に合わせようとすれば、例えば照明信号が30Hzで送出されたとして、この周期に同期させると、30Hzでの点灯となってちらつきが生じる。このため照明ユニット側の点灯部での点灯速度は、コントローラ部との通信速度によらず、一定品質の照明光が得られるよう、所定の周期で点灯される。このことから、内部フレーム同期信号は、外部フレーム同期信号よりも高速とし、また整数倍として外部フレーム同期信号と同期させる。図4の例では、例えば外部フレーム同期信号が30Hzの場合、内部フレーム同期信号を60Hz、120Hz、240Hzなどに設定する。好ましくは、内部フレーム同期信号のリフレッシュレートを、外部フレーム同期信号のリフレッシュレートの4倍(図4の例では120Hz)以上に設定する。これにより、点灯部のちらつきを抑制できる。
(通信制御部8)
【0030】
通信制御部8は、コントローラ部1と照明信号のデータ通信を行い、データ通信結果を点灯制御部6に送出する。図1の例では、通信制御部8は通信信号線3と接続され、コントローラ部1とデータ通信を行う。
(コントローラ部1)
【0031】
コントローラ部1は、外部ソース等から受けた照明信号、あるいは予め記録された照明信号を、各照明ユニット2に分配する。このためコントローラ部1は、照明ユニット2同士をデイジーチェーン状に連結した状態で、各点灯部5を点灯して照明するための照明信号を順次送出するよう、通信制御部8とデータ通信可能な状態に接続されている。このコントローラ部1は、コントローラ側タイミング信号として外部フレーム同期信号を生成し、この外部フレーム同期信号に従って照明信号を照明ユニット2側に送出する。図1に示すように、コントローラ部1の制御/表示信号出力が、通信信号線3に接続され、通信制御部8とデータ通信を行う。
【0032】
またコントローラ部も一台に限られず、複数台を接続することも可能である。さらに図示しないが、コントローラ部と照明ユニットとの間に一以上の分配器を配置してもよい。例えば照明ユニットを2次元的に配置する場合は、各行毎に分配器を配設して、照明データ及び各種制御信号を各照明ユニットに対し供給する。制御信号は、例えば照明データのクロック、同期信号、ブランキング信号、階調基準信号、及び照明データのラッチ信号等があり、コントローラ内で信号の生成を行い、分配器を介して各照明ユニットに供給する。分配器から各照明ユニットへ送信する照明データは、カラー照明を行う場合、RGB(赤色、緑色、青色)の各色の照明データを必要とし、階調分解能に応じて照明データのビット幅が決まる。例えば1色当たり256階調で表示する場合には、8ビット幅の照明データバスが3色分必要となる。これら照明データは照明ユニットの数×表示ドットの数を時分割して、照明ユニットに供給される。各照明ユニット内のシフトレジスタ回路で照明データをビットシフトして、ある所定のデータ数を供給した時点でデータをラッチし、照明データとして取り込み照明データを表示することができる。また照明データは、照明ユニットのドット数、点灯周期、表示色の数、単位点灯周期あたりのLEDの数等の条件でデータ量は異なるが、仕様に応じてシステム設計側で自由に設定できる。さらに照明データは、各照明ユニットのLED点灯指示及び消灯指示、階調クロックの分周設定、LEDのドライバ制御及び照明ユニット内部回路の制御などを行うこともできる。
【0033】
照明機器は、動画などを表示する映像機器と異なり、外部フレーム同期と内部フレーム同期とが完全に同期している必要がないという特殊な事情を有する。また低リフレッシュレートも許容されている。本実施の形態では、このような照明分野独自の事情を勘案して、通信信号線を流れるデータ量を低減し、データ通信に要するハードウェア要求を軽負荷にしてコストを低減できる。また信号線の削減やコネクタ等インターフェースの簡素化等にも寄与できる。なおこの際、すべての照明ユニットに対して同一の照明信号を送出して同様に点灯させる他、接続先の照明ユニット毎に異なる点灯をさせるように制御することもできる。この場合は、接続先の照明ユニット毎に個別の識別情報を予め付与しておき、照明データに識別情報を付加して送出できる。これにより更新時に必要な照明信号のみを該当する照明ユニットに送出できるので、データ通信量を必要最小限に低減でき、システムの負荷を軽減した安定、高速、軽量、安価な照明システムを構築できる。データは、好適にはパケット形式で送出する。
(照明とディスプレイの相違)
【0034】
従来の電球などのランプ型の発光素子を使った照明システムでは、抵抗値を変化させることで電流量を制御して光量を調整していた。これに対し、LEDなどの半導体発光素子を使用する照明システムでは、PWM制御など、点灯時間幅を制御して光量を調整している。このため、点灯を制御する信号を発光素子に送出する必要がある。RGBフルカラーのLEDユニットを組み合わせたディスプレイの場合は、LEDユニットに対して表示データを通信信号線3を介して伝達する。そのデータの更新周期をTdchg、またLEDユニットの表示更新のための基本周期をTr、そのうち、LEDの点灯時間をTronとする。図5に、これらデータの更新周期と基本周期、点灯時間の関係を示す。Tronのパルス時間幅を制御することで、点灯制御を行うPWMが一般的である。ここで、TrとTdchgを等しくすることはできない。Tdchgはテレビの場合、1/60秒に規定されるが、LEDの場合は残像効果が少ないので、この周期ではちらついてしまう。そこで、LEDの場合は倍速表示が採用され、Trは通常Tdchgの整数分の一に設定される。図5の例では、1/4に設定され、4倍速表示となっている。
【0035】
このような方法は、LEDディスプレイの表示には適しており、ディスプレイやテレビはTdchgが厳密に定義されている。一般にディスプレイの動作周波数は60Hz、75Hzなど、所定の周波数で固定されている。ただし、LEDユニットの表示性能を最大限発揮するためには、Trの期間内でPWMがフルカウント(例えば8bitの場合256回)させる必要がある。このため、PWMの周波数などは自ずと決定される。テレビ規格にはTdchgが何通りかあり、これに対応させるには複数のPWN周波数などに対応させておく必要があった。
【0036】
一方、照明の場合はTdchgの規格がなく、制御信号に関するDMX規格においても最大1秒と曖昧である。このため、照明機器の更新タイミングが統一されておらず、メーカ毎、機種毎に種々の仕様が採用されている結果、異なる機種同士の接続が困難であり、また各機種の仕様に対応させた照明装置を設計、製造するには複雑でコストがかかるといった問題があった。
【0037】
これに対し、本実施の形態に係る照明装置では、TrをTdchgと独立させているため、接続先の機器で採用されるTdchgに依存せず、種々のTdchg期間に対応でき、接続の柔軟性を高めている。特に照明の場合は、照明信号を一方的に送出するだけで足り、送出側と受信側との間で同期をとる必要がなく、さらに照明ユニット間の同期も不要とできる。このため、動画表示用のディスプレイ等とは異なる思想での設計が可能となった。
【0038】
その一方で、照明用のLED点灯データは動画像データ等に比べて、データ量が少ない上、更新の頻度も少ない場合が多い。また、規格上も最低限の更新周期が求められていない。このため、動画像では許容され得ないような低リフレッシュレートでも許容される。加えて、コントローラ部と照明ユニット間での同期が不要であるため、必要時にのみ任意のタイミングでコントローラ部が照明データを送信する更新方式とすることもできる。
【0039】
図6に、データ更新のタイミングと基本周期Trの関係を示す。この図に示すように、Trは外部接続されるコントローラ部の動作周波数と無関係に一定に設定される一方、Tdchgは一定でも可変でも対応できる。またTronの期間はTr期間の最初の期間にある必要はなく、Trの区間内であればどこでもよい。さらに、各Tron中で一定位置にある必要もない。
【0040】
照明ユニット2は、タイミング生成回路7に含まれる発振器の基準で一定のTrを生成している。一方、外部接続されたコントローラからTdchg毎に表示データを受け取り、照明の点灯部に反映させるのはPWMがカウントアップして次のTrに移るタイミングとなる。この方法であれば、Tdchgの範囲を広くすることができ、照明の制御に適する。また照明ユニット2間でのずれも許容される。
【0041】
以上の照明装置によれば、コントローラ部と照明ユニット間のデータ伝送速度を照明データに応じて遅くして、データ通信を低減する一方で、照明ユニットでの点灯周期は、これと無関係に高速化して、高品質の照明を行うことができる。特に、照明ユニット側とコントローラ部との同期を維持するための回路等が不要となるため、回路構成を簡素化でき、照明ユニットを安価に構成できる利点が得られる。また照明ユニット間のデータ伝送速度を、接続先のコントローラ部の仕様に応じて変化させることができるため、接続先のコントローラ部の製造メーカや機種名、仕様を選ばない照明システムの構築が可能となり、照明ユニットを汎用的に使用でき、照明システム構成上の柔軟性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の照明装置、照明ユニット及びディスプレイは、LEDを用いたカラー照明として、複数の発光素子を線状に並べたライン光源としたり、インテリジェント照明、間接照明、道路情報表示ディスプレイのような文字情報や静止画像、簡易動画を表示可能なディスプレイとして好適に利用できる。簡易動画には、例えばリフレッシュレートが遅い動画や模様(シースルーディスプレイに映し出す演出等)が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態に係る照明装置を示すブロック図である。
【図2】照明ユニットの一例を示す平面図である。
【図3】照明ユニットの他の例を示す分解斜視図である。
【図4】外部VSYNCと内部VSYNCのタイミングを示すタイミングチャートである。
【図5】データの更新周期と基本周期、点灯時間の関係を示すタイミングチャートである。
【図6】データが更新されるタイミングを示すタイミングチャートである。
【図7】従来の照明装置の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
100…照明装置
1…コントローラ部
2、2A、2B…照明ユニット
3…通信信号線
4…発光素子
5…点灯部
6…点灯制御部
7…タイミング生成回路
8…通信制御部
700…従来の照明装置;71…コントローラ;72…照明ユニット;73…通信ケーブル;75…表示部;77…表示制御部;78…通信回路;79…同期維持手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子が配置された点灯部と、
前記発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、
外部とのデータ通信で得たデータを前記点灯制御部に送出する通信制御部と、
を備える複数の照明ユニットと、
互いに連結された照明ユニットにおける各点灯部を照明として制御する照明信号を前記通信制御部に送出可能な状態に接続されたコントローラ部と、
を備える照明装置であって、
前記点灯制御部は、前記コントローラ部と前記通信制御部との間のデータ通信に使用される第一のタイミング信号と、各照明ユニット内において前記点灯制御部と前記点灯部との間のデータ通信に使用される第二のタイミング信号とを非同期で動作させることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の照明装置であって、
前記コントローラ部が、前記第一のタイミング信号として外部フレーム同期信号を生成し、該外部フレーム同期信号に従って照明信号を照明ユニット側に送出すると共に、
前記点灯制御部が、前記外部フレーム同期信号と独立して、これよりもリフレッシュレートが高速な、内部フレーム同期を行うための第二のタイミング信号として内部フレーム同期信号を生成するタイミング生成回路を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の照明装置であって、
前記内部フレーム同期信号のリフレッシュレートが所定値に固定されており、
前記外部フレーム同期信号のリフレッシュレートは可変に構成してなることを特徴とする照明装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の照明装置であって、
前記内部フレーム同期信号のリフレッシュレートが、前記外部フレーム同期信号のリフレッシュレートの4倍以上に設定されてなることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の照明装置であって、
前記コントローラ部は、所望の照明パターンが更新される毎に、該当する照明ユニットの通信制御部に対して前記コントローラ部から前記照明信号を送出することを特徴とする照明装置。
【請求項6】
コントローラ部と通信可能に接続され、さらに複数の照明ユニット同士を接続可能であり、コントローラ部から発光素子を点灯して照明するための照明信号を受信して照明を行う照明ユニットであって、
発光色がそれぞれ異なる複数の発光素子がライン状又はマトリクス状に配置された点灯部と、
前記発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、
前記コントローラ部と照明信号のデータ通信を行い、データ通信結果を前記点灯制御部に送出する通信制御部と、
を備え、
前記点灯制御部は、前記コントローラ部と通信制御部との間のデータ通信に使用されるコントローラ側タイミング信号と、各照明ユニット内で前記点灯制御部と前記点灯部との間のデータ通信で使用されるユニット側タイミング信号とを非同期で動作させることを特徴とする照明ユニット。
【請求項7】
発光色がそれぞれ異なる複数の発光素子がライン状又はマトリクス状に配置された点灯部と、
前記発光素子の点灯を制御する点灯制御部と、
外部とデータ通信を行い、データ通信結果を前記点灯制御部に送出する通信制御部と、
を備える複数の照明ユニットと、
前記照明ユニット同士を連結した状態で、各点灯部を点灯して照明するための照明信号を順次送出するため、前記通信制御部とデータ通信可能な状態に接続されたコントローラ部と、
を備えるディスプレイであって、
前記点灯制御部は、前記コントローラ部と通信制御部との間のデータ通信に使用されるコントローラ側タイミング信号と、各照明ユニット内で前記点灯制御部と前記点灯部との間のデータ通信で使用されるユニット側タイミング信号とを非同期で動作させることを特徴とするディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−129685(P2009−129685A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303207(P2007−303207)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000226057)日亜化学工業株式会社 (993)
【Fターム(参考)】