説明

照明装置

【課題】安価な設備投資で、植物の種類や生育状況など目的に応じて、光の波長を選択して照射することが容易にできる照明装置を提供することを目的とする。
【解決手段】照明装置10は中心軸に対して放射状に2色以上の光を放射するように光源24が配設された発光装置20と、この発光装置20を点灯させるための点灯装置を内蔵し、口金を備えた照明装置本体30と、前記発光装置20が前記中心軸を回転軸として回転するように前記照明装置本体30に設けられた回転機構32と、を具備している。回転機構32による回転動作によって被照射物Pへ照射する光の波長を選択することができ、低コストで設備を導入することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被照射物への照明目的に応じて光の波長を選択して照明することができる照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温室やビニールハウスにおいて、植物の生育を促進する方法として白熱ランプ、蛍光ランプ、高圧ナトリウムランプによる照明方法が知られている。これらのランプは、その放射光のスペクトルが太陽光のそれになるべく近くなるように、あるいは、植物の生育に必要な光成分を多く含むように工夫されている。植物栽培に有効な波長は、その光が照射される植物の種類によって異なり、また栄養価を高める場合、成長を促進させる場合、開花させる場合、光合成をさせる場合などその目的によっても異なっている。
【0003】
最近では上記の光源以外にもLEDを光源として用いた植物栽培用の照明装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−79254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、植物の種類やその生育の過程に応じてLEDの発光色の組み合わせや配分比を適宜選択しているので、目的に合わせて効率よく光を照射することができる。しかし、このような照明装置はLEDの制御装置を備えているため高価であるとともに、制御の操作が複雑であることから、植物栽培事業者や一般ユーザーに広く普及するには至っていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、被照射物への照明目的に応じて、光の波長を選択し照射することが容易にできる比較的安価な照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の照明装置は、中心軸を有し、この中心軸に対して放射状に少なくとも2色以上の光を放射するように光源が配設された発光装置と;この発光装置を保持するために設けられた保持手段を備えた照明装置本体と;前記発光装置が前記中心軸を回転軸として回転するように前記照明装置本体に設けられた回転機構と;を具備していることを特徴とする。
【0007】
また、前記発光装置は、前記光源を点灯させるための点灯装置を内蔵し、口金を備え、放電媒体が封入されたバルブの内面に、紫外光、青色、緑色、赤色、赤外光の各波長領域を放射する各蛍光体から選ばれる2種以上の蛍光体からなる蛍光体層が形成されたバルブを具備した蛍光ランプであってもよい。
【0008】
さらに、前記蛍光ランプは、2本以上のU字形屈曲バルブを具備していてもよい。
【0009】
さらにまた、前記蛍光ランプは2本以上のU字形屈曲バルブをそれぞれ連結して一本の放電路として形成してもよいし、2本以上の放電路を形成し、少なくとも一本の放電路において発光しているときに、残りの放電路は消灯しているように構成してもよい。
【0010】
また、前記光源は、紫外光、青色、緑色、赤色、赤外光の各波長領域の光を放射する各LEDのうち、2種以上のLEDが配設されていてもよい。
【0011】
回転機構は、発光装置の中心軸を回転軸として照明装置本体と相対的に回転させるために設けられた機構である。回転機構と照明装置本体との電気的な接続は、配線によって接続してもよいし、回転機構および照明装置本体の両者に設けられた電気接続部が互いに摺動するように構成し、この摺接部位を介して導通するように接続したものであってもよい。なお、この回転機構を回転させる手段は、手動方式とするのがコスト的に有利であるが、ステッピングモータ等の電動手段を利用した方式を用いたものであってもよい。
【0012】
紫外光、青色、緑色、赤色、赤外光の各波長領域とは、それぞれ300〜400nm、400〜500nm、500〜600nm、600〜700nm、700nm〜1000μmのことをいう。赤外光は700nm〜4μmの近赤外光、4〜25μmの遠赤外光、25〜1000μmの超遠赤外光に分類することができる。光源は、これら各波長領域を放射する各蛍光体および各LEDの他、色付フィルムなどであってもよい。各蛍光体から選ばれる2種以上の蛍光体とは、各波長領域を放射する各蛍光体を単純に2種以上組み合わせたものだけでなく、各蛍光体を適宜混合させて形成した蛍光体を2種以上組合わせたものを含むものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の照明装置によれば、回転機構による回転動作によって被照射物へ照射する光の波長を選択することができ、低コストで設備を導入することができる。
【0014】
また、光源に蛍光ランプを用いることでランニングコストを抑えることができる。
【0015】
また、蛍光ランプに少なくとも2本以上のU字形バルブを用いることで、バルブごとに異なる蛍光体層を形成することによって、容易に2種以上の発光特性を有するランプを製造することができる。
【0016】
また、光源にLEDを用いることで、光源の寿命が比較的長いため、ランプの交換回数が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明による実施形態の照明装置を示す全体図であり、図2は、図1の照明装置に装着されている発光装置としての電球形蛍光ランプの側面図である。図3は、図2を発光管側から口金方向をみた上面図である。図4は、図2の電球形蛍光ランプの発光管の展開図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の照明装置10は、発光装置としての電球形蛍光ランプ20と照明装置本体30からなり、照明装置本体30はソケット31および回転機構32を備えている。照明装置本体30は、被照射面Fに電球形蛍光ランプ20の放射光を照射可能な状態で電球形蛍光ランプ20を支持する基台部33を備えている。回転機構32は、照明装置本体30と相対的に回転させることでランプの中心軸を回転軸として手動で回転させることが可能なように構成されている。なお、照明装置10は回転機構32および照明装置本体30の両者に設けられた電気接続部が互いに摺動するように構成されており、この摺接部位を介して照明装置本体30から蛍光ランプに電力が供給される。
【0020】
図2に示すように、電球形蛍光ランプ20は、口金21を有するカバー22と、このカバーに収納された点灯回路23と、発光管24とを備えている。
【0021】
点灯回路23は、発光管24の長手方向に対して直交する方向に配置される略円板状の回路基板25を備え、この回路基板25の両面に複数の電気部品26が実装されて、高周波点灯を行うインバータ回路が構成されている。
【0022】
図3および図4に示すように、発光管24は、略同形状であって、赤色、遠赤外光、青色の各色に発光する蛍光体層40がそれぞれ形成された3種類のU字状屈曲形のバルブ41a、41b、41cからなる。このバルブ41a、41b、41cは、滑らかに反転する屈曲部45、およびこの屈曲部45の両端に連続する互いに平行な一対の直管部47を備えており、連通管42を介して順次接続され、1本の放電路が形成されている。発光管24が電球形蛍光ランプ20に組み込まれた状態において、各バルブ41a、41b、41cの屈曲部45は、電球形蛍光ランプ20の長手方向に沿った仮想の中心軸Cを中心とする1つの円周上に等間隔で位置され、また、各バルブ41a、41b、41c、の直管部47も、電球形蛍光ランプ20の中心軸を中心とする所定の円周上に等間隔で位置され、すなわち、各バルブ41a、41b、41cの直管部47が断面正三角形の各辺に対応して配置されている。これらバルブ41a、41b、41cは、例えば、管外径が8〜11mm、管内径が6〜9mm、肉厚が0.7〜1.0mmであり、断面ほぼ円筒状であって長さ寸法が110〜130mmの直管状ガラスが、中間部で滑らかに湾曲された頂部を有していて、ほぼU字形に形成されている。発光管24内には、封入ガスとして例えばアルゴンなどの希ガスおよび水銀が封入され、発光管24の両端に一対の電極43がステムシール44によって封装されている。バルブ41a、41b、41cは各バルブ41a、41b、41cの一端には排気管とも呼ばれる円筒状の細管45a 、45b、45cがそれぞれ連通状態で突設されている。但し、発光管24の両端部のバルブ41a、41cの細管45a、45c は電極43が封装される端部とは反対側(非電極側)の端部に突設されている。
【0023】
電極43は、タングステン(W)ワイヤを三重巻きしたトリプルコイルからなるフィラメントコイル50を有し、このフィラメントコイル50がステム51によって固定された一対のウエルズ(導入線)52に支持され、各ウエルズ52がバルブ41a 、41c の端部のガラスに封着されたジュメット線53を介して、バルブ41a 、41cの外部に導出されたワイヤ54に接続されている。このジュメット線53はバルブ端部のステムシール部44によって封止されている。そして、バルブ41が電球形蛍光ランプ20に組み込まれる際に、ワイヤ54が点灯回路23に接続される。
【0024】
次に、このランプの製造方法について説明する。
【0025】
発光管24の製造方法を図5および図6において説明すると、まず、図5(a) に示すように、110〜130mm程度の直管状のバルブ41を中間部でU字状に屈曲させる。次に、図5(b) に示すように、3つの各バルブ41の内面に赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、遠赤外発光蛍光体をそれぞれ塗布形成し、赤色発光U字状屈曲形バルブ41a、遠赤外発光U字状屈曲形バルブ41b、青色発光U字状屈曲形バルブ41cの三種類のバルブを用意する。
【0026】
次に、図5(c) に示すように、各バルブ41の端部(ネック部)の蛍光体を除去するとともに、各バルブ41a、41b、41c、の連通管42に対応する位置の蛍光体を除去する。次に、図5(d)に示すように、両端のバルブ41a、41c、に電極としてのフィラメントコイル50を有する電極ユニットおよび細管45を有する細管ユニットをそれぞれマウントし、中間のバルブ41bの一端に細管ユニットをマウントするとともに他端を封止する。次に、図6(a) に示すように、一端と中間のバルブ41a、41b同士を、吹き破りによって形成された連通管42を介してつなぎ合わせるとともに、一端のバルブ41aの細管45aを封止し、次に、図6(b) に示すように、他端と中間のバルブ41c、41b、同士を、連通管42を介してつなぎ合わせるとともに、他端のバルブ41c、の細管45cを封止する。最後に、中間のバルブ41bの細管45bを通じて排気を行なってアルゴンガスと置換し、中間のバルブ41bの細管45bを封止する。
【0027】
バルブ41a、41b、41c、 の細管45a、45b、45c のうち電極43に最も近い細管45a (または細管45c )、すなわちバルブ41の端部のバルブ41a の電極43が封装される端部とは反対側(非電極側)の端部の細管45a には、その細管45a を封着する際に図示しないアマルガムが封入されている。このアマルガムは、ビスマス、インジウムおよび水銀にて構成される合金であり、発光管24内の水銀蒸気圧を適正な範囲に制御する作用を有している。なお、アマルガム48は、ビスマス、インジウムの他に、スズ、鉛を組み合わせた合金によって形成したものを用いてもよい。
【0028】
なお、発光管24内には、消灯時に発光管内の浮遊水銀を吸着しかつ始動時を含む点灯初期に吸着した水銀を放出する補助アマルガムを必要に応じて配置してもよい。
【0029】
次に、本発明による第一の実施形態の作用効果について説明する。
【0030】
本発明の第1の実施形態の照明装置によれば、発光装置20が被照射面Fに対して平行な中心軸を持つように照明装置本体30が発光装置20を支持する基体部33を備えており、発光装置20を照明装置本体30に対して相対的に中心軸を回転中心として回転させるので、被照射面Fに載置された植物等の被照射物Pに照射する光の波長を容易に変えることができる。
【0031】
前述したように植物の成長は、照射光の影響を大きく受けることが知られているが、これは植物の種類や照射する光の波長などによって効果が異なる。生育中の植物に対し、青色光を照射すると効果的な花芽形成、開花促進ができる。また、赤色は一般に光合成に有効であり、遠赤外光は伸長成長を促すとともに、アントシアニンと言われる色素の発生を抑える働きがあり、鮮やかな緑色の植物を育成することが可能になる。例えば、本発明の実施形態による照明装置10を用いて、花を観賞する長日植物で幼若な株を育成する場合には、その育成初期に青と赤の光を照射した後、照明装置本体30の回転機構32を回転させて、遠赤外の光を照射するバルブ46を植物に向け、そして全ての光を消すというサイクルで育成し、株が充実した状態で、青および赤の光の照射量を多くするという育成方法が考えられる。この育成方法によると株が幼若な状態での花芽形成を防ぐことができる。このように、回転機構32を回転させることによってランプ直下に照射される光の照射量を波長領域毎に選択することができるので、植物の成長や種類に合わせた波長の選択ができる。
【0032】
対象植物の栽培方法としては、とくに限定されるものではなく、培土をつめたトレイやポットを用いて発芽・育苗したものを圃場に定植し栽培する方法、スポンジキューブ上で発芽させた後、そのまま水耕栽培する方法、養分を含んだ寒天上で無菌的に組織培養し育苗する方法等、植物の種類や栽培の目的に応じた栽培法を用いることができる。
【0033】
本発明の実施形態の照明装置によれば、遠赤外光のように目に見えない波長を放射する目的で使用するものであっても、可視光を放射する蛍光体を一つのバルブに塗布しておけば、ランプの不点を容易に識別することができ、迅速に交換を行うことができる。また、一本のランプで3種類の色の光を放射できるので、製品コストが安価であるとともに、被照射植物に照射していた発光色の波長領域を容易に切り替えることができる。
【0034】
本実施形態では、植物栽培に適した使用方法について説明したが、この照明装置を爬虫類や両生類などの飼育に用いてもよい。
【0035】
昼行性で草食のリクガメやイグアナなどの爬虫類は、290−320nmの紫外線が体表面に照射されることによって、ビタミンDを体内で合成する。このビタミンD3は、摂取したカルシウム(Ca)を骨として形成するときに必要であり、生体にとって重要な役割を持っている。また、320〜400nmの紫外線はカルシウム(Ca)の吸収に不可欠であるとされている。室内など太陽光を照射することが困難な環境で、昼行性の爬虫類や両性類を飼育する場合、人工的に290−400nmの紫外線を生体に照射することが必要不可欠である。ただし、極端な紫外線の照射は生体に悪影響を及ぼすため、紫外線の照射時間を調整する必要がある。また、通常は観賞用として可視光を照射すればよい。
【0036】
上記飼育方法に適した構成としては、実施形態の照明装置10の発光管24の一つのバルブに290−400nmの紫外線を放射する蛍光体を塗布し、他の2本のバルブに可視光を放射する蛍光体を塗布した。その他の構成は同一とすればよい。
【0037】
本照明装置10を用いた飼育方法としては、例えば紫外線を放射する一つのバルブを被照射面側に向けて、生体に固有の最適な時間だけ紫外線を照射した後、紫外線を放射する一つのバルブを180°回転させる。このとき残りの2本のバルブが被照射面側に可視光を放射することになり、観賞用としてそのまま使用することができる。さらに、この可視光の照射時間を設定することによって、長日、短日を再現することが可能となる。
【0038】
図7は、本発明の第2の実施形態による照明装置10を示す。第1および第2の実施形態は、発光装置を電球形蛍光ランプとして説明したが、第2の実施形態は発光装置の光源にLEDを用いたものである。
【0039】
発光装置20は、中心軸Cに対して平行にLEDを数個組合わせて一つの光源として構成されている。発光装置20には、3つのLEDとして、遠赤外、赤色、青色の波長領域の光を放射するLEDがそれぞれ異なる照射方向となるように配置されている。
【0040】
例えば電照栽培において、回転機構32を回転させることによって、ランプ直下に照射される光の色を選択できるので、光の切り替えが容易である。
【0041】
本実施形態の発光装置20に用いられているLEDは、寿命が比較的長いので、ランプの交換回数が少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明による実施形態の照明装置を示す全体図。
【図2】図1の照明装置に装着される電球形蛍光ランプの側面図。
【図3】図2の電球形蛍光ランプを発光管側から口金方向をみた上面図。
【図4】図2の電球形蛍光ランプの発光管の展開図。
【図5】図3の発光管の製造方法を(a)〜(d)の順に説明する説明図。
【図6】図5に続いて発光管の製造方法を(a)、(b)の順に説明する説明図。
【図7】本発明による第2の実施形態の照明装置を示す全体図。
【符号の説明】
【0043】
10 照明装置
20 発光装置としてのランプ
30 照明装置本体
32 回転機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸に対して放射状に少なくとも2色以上の光を放射するように光源が配設された発光装置と;
この発光装置を保持するために設けられた保持手段を備えた照明装置本体と;
前記発光装置が前記中心軸を回転軸として回転するように前記照明装置本体に設けられた回転機構と;
を具備していることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記発光装置は、放電媒体が封入されたバルブの内面に、紫外光、青色、緑色、赤色および赤外光の各波長領域の光を放射する各蛍光体から選ばれる2種以上の蛍光体を種別毎に塗り分けてなる蛍光体層が形成されたバルブを有する蛍光ランプであることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
前記蛍光ランプは、互いに異なる発光色の蛍光体層が形成された2本以上のU字形屈曲バルブを組合わせて構成されていることを特徴とする請求項2記載の照明装置。
【請求項4】
前記発光装置は、紫外光、青色、緑色、赤色および赤外光の各波長領域の光を放射する各LEDのうち2種以上のLEDが配設されていることを特徴とする請求項1記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−188799(P2007−188799A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6867(P2006−6867)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】