説明

照明装置

【課題】LED照明装置において、発光面の大きなチップオンボード(COB)方式のLEDにおいても、狭角から広角までの任意のビーム広がり角の配光を、高い正面光度、高い光の利用効率で得たい。
【解決手段】LEDの正面に2枚の透明なレンズを備えたLED照明装置であって、レンズ3(第一のレンズ)をチップオンボード(COB)方式のLED1に近接して配置し、レンズ4(第二のレンズ)をLED1からレンズ3(第一のレンズ)より遠方に配置し、前記レンズ4(第二のレンズ)が光軸方向に移動可能で、レンズ3(第一のレンズ)との間隔を調節可能であり、レンズ3(第一のレンズ)のLED側の面の近似曲率をC1、出光側の面の近似曲率をC2、およびレンズ4(第二のレンズ)のLED側の面の近似曲率をC3、出光側の面の近似曲率をC4とした場合、C1<C2かつC3<C4の関係が満たされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED(エルイーディー:Light Emitting Diode)光源の正面に2枚の透明なレンズを備え、任意のビーム広がり角の配光を得られるようにした照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポットライトの光源は従来ハロゲン等の電球であったが、近年、消費電力や寿命に優れた発光ダイオードが用いられるようになった。他にも、発光ダイオードは光源サイズが小さく、器具の大型化を招かなかったことが、光源の置き換えが進んだ理由に挙げられる。以降、発光ダイオードをLEDと称す。
【0003】
LEDの発光効率や光束は年々向上しているものの、現時点ではLED1個あたりの光束は100[lm]程度で、1台あたり数100[lm]〜数1000[lm]を必要とするスポットライトには複数個のLEDが搭載される。光源がLEDのスポットライトでは、例えば特許文献1で示されるような、LEDを内包する凹部を有し、屈折と反射の双方を利用した複合型レンズが一般に用いられている。この複合型レンズはLED1個ずつに被せられるため、スポットライト1台あたり、搭載されるLEDと同数のレンズが必要である。
【0004】
一方、近年、低コストと大光量を狙った、プリント基板上に直接半導体発光素子を実装、配線し、蛍光体粉末を含有した透明樹脂で封止するチップオンボード(COB)方式のLEDが登場してきた。一般に、COBとはChipOnBoardの略であり、集積回路チップをパッケージに加工することなく、直接、回路基板などに集積回路チップを取り付け、集積回路チップの回路を基板の回路パターンと接続する実装技術である。
【0005】
以降、半導体発光素子をチップと称し、チップオンボード方式のLEDを単にCOBと称す。COBではチップを多数密集配置するため、発光面積は従来よりも大きいが、1個のCOBで1000[lm]を超える光束も可能である。このため、比較的低出力のスポットライトならば、1台分の光束を1個のCOBで満足できる。
【0006】
照明用途に用いられるLEDでは、COBでも従来同様、青色光を発すチップを黄色の蛍光体粉末を含有した封止樹脂で覆うことで、擬似白色光を生成している。すなわち、発光面を観察すると、チップ間や密集配置されたチップの外周部には、黄色蛍光体しか存在していない領域がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−5218号公報
【特許文献2】特開2009−205873号公報
【特許文献3】特開2008−080348号公報
【特許文献4】特開2004−145269号公報
【特許文献5】特開2003−222795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
個々のLEDに前述した複合型レンズを被せるのは、レンズがLEDの個数分必要となるので、コスト高である。COBならば、レンズは1個で済むが、COBは発光面が大きいため、本来微小な発光面を想定している本複合型レンズを適用すると、レンズを大型化しなければならず、厚肉化する。本複合型レンズは射出成形によって製造されるため、厚肉レンズでは成形時間がかかり、やはりコスト高である。
【0009】
また、スポットライトでは、10[deg]前後の狭角から40[deg]前後の広角まで、複数のビーム広がり角が求められる。前述した複合型レンズでは、ズームが効かないため、略一つのビーム広がり角に固定される。このため、異なるビーム広がり角を持った複数種のレンズラインナップが必要となり、管理が煩雑であるとか、より多くの在庫を持たなければならないといった課題がある。さらに、COBではレンズの大型化を必要最小限に抑えようとすると、狭角のレンズの設計そのものも困難である。
【0010】
またさらに、透明なレンズを用いたスポットライトでは、LEDの発光面が被照射面に投影され、チップのイメージが見えるといった課題がある。黄色蛍光体の下に青色発光のチップが存在する箇所では、擬似白色光が投影されるが、チップの存在しない黄色蛍光体のみの箇所では黄色光が投影されることになる。このため、被照射面に薄っすらと黄色の格子模様が見えるなど、色むらが出易い。
【0011】
本発明は、たとえば発光面が大きいチップオンボード方式のLED等の光源に対応した照明装置を提供することを目的としている。また、狭角から広角まで任意のビーム広がり角を選択でき、被照射面の色むらを抑えた照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の照明装置は、
第一のレンズと、
第二のレンズと、
光源を取り付け、光源からの光の出光方向に、第一のレンズを配置し、さらに、第二のレンズを配置する固定筒とを備え、
第一のレンズの光源側の面の近似曲率をC1とし、
第一のレンズの出光側の面の近似曲率をC2とし、
第二のレンズの光源側の面の近似曲率をC3とし、
第二のレンズの出光側の面の近似曲率をC4とした場合、
C1<C2、かつ、C3<C4
であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明による照明装置は、発光面の大きな光源においても配光を、高い正面光度、高い光の利用効率で得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態1に係る照明装置10の、狭角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。(b)は、本発明の実施の形態1に係る照明装置10の、広角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。
【図2】(a)は、図1(a)の時の配光を表す図である。(b)は、図1(b)の時の配光を表す図である。
【図3】(a)は、第一の比較例の、狭角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。(b)は、第一の比較例の、広角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。
【図4】(a)は、図3(a)の時の配光を表す図である。(b)は、図3(b)の時の配光を表す図である。
【図5】(a)は、第二の比較例の、狭角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。(b)は、第二の比較例の、広角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。
【図6】(a)は、図5(a)の時の配光を表す図である。(b)は、図5(b)の時の配光を表す図である。
【図7】(a)は、本発明の実施の形態2に係る照明装置10の、狭角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。(b)は、本発明の実施の形態2に係る照明装置10の、広角側のレンズ配置を表す側面視断面図である。
【図8】(a)は、本発明の実施の形態1に係る照明装置10における、被照射面の色味を表す図である。(b)は、本発明の実施の形態2に係る照明装置10において、絞り7を配置しない場合の被照射面の色味を表す図である。(c)は、本発明の実施の形態2に係る照明装置10において、絞り7を配置した場合の被照射面の色味を表す図である。
【図9】(a)は、本発明の実施の形態2に係るレンズ4のS3面に設けられた、球面レンズを正方格子状に並べたフライアイレンズを表す図である。(b)は、本発明の実施の形態2に係るレンズ4のS3面に設けられた、球面レンズを六方格子状に並べたレンズアレイを表す図である。(c)は、本発明の実施の形態2に係るレンズ4のS3面に設けられた、直径の異なるドーナツ面を同心円状に並べたレンズアレイを表す図である。
【図10】本発明の本実施の形態1の2枚のレンズからなる光学系の、パワー配置と光線の軌跡を表す模式図である。
【図11】本発明の本実施の形態1のCOB1とレンズ3の曲率半径との関係を示す図である。
【図12】本発明の本実施の形態1のレンズ3の焦点距離f1とレンズ4の焦点距離f2との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を用いて、本発明の実施の一形態を説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る照明装置10の側面視断面図である。照明装置10は、2枚のレンズ、つまりレンズ3とレンズ4を用いたズームレンズを備えている。図1(a)は狭角側のレンズ配置を表す断面図で、図1(b)は広角側のレンズ配置を表す断面図である。
【0017】
光源であるチップオンボード方式のLED(以下、COBという)1は、アルミニウム等の金属、ガラスエポキシ樹脂やセラミックなどから成る基板2上に形成されている。基板2には、複数の半導体発光素子すなわち複数のLEDチップが、円状(直径D)に配列されている。基板2は図示を省略するヒートシンクに固定され、同じく図示を省略する電源よりコネクタやケーブルを介して給電され、COB1は点灯する。
【0018】
COB1の正面には、近接してレンズ3が配置され、レンズ3より遠方にレンズ4が配置されている。レンズ3とレンズ4は、アクリルやポリカーボネート等の透明樹脂、あるいはガラスなどCOB1が放射した光を透過する透明な材料で形成されている。
【0019】
固定筒5は、中空の有底円筒形・有底筒形をしている。固定筒5の底の中央には、COB1と基板2とレンズ3が配置されている。
固定筒5は、レンズ3を保持し、可動セル6はレンズ4を保持するための部材である。可動セル6は、電動又は手動により、固定筒5に対して光軸Zの方向に移動可能であり、これによりレンズ4をレンズ3に対して、近づけたり遠ざけたりできるようになっている。固定筒5と可動セル6はアルミニウムやマグネシウム等のダイキャスト製、もしくはプラスチック成形品である。固定筒5の内筒面は、黒染め、さらには遮光旋が施され、内筒面で散乱もしくは正反射される光が、レンズ3とレンズ4により制御される本来の光とは異なる方向へ出射されることで、グレアが発生するのを防いでいる。
【0020】
以降、レンズ3とレンズ4について記す。
COB1より完全拡散型の配光(どの方向から見ても輝度が等しい配光)で放射された光は、COB1に近接配置されたレンズ3により、そのビーム広がり角が絞られ、次にレンズ4によって再度絞られ、最終的な照明装置10のビーム広がり角となって出射される。
【0021】
図1(a)のように、レンズ4がレンズ3より遠くに配置された時、狭角ビームが得られ、図1(b)のように、レンズ4がレンズ3の近くに配置された時、広角ビームが得られる。
【0022】
図2(a)に図1(a)の時の配光を示し、図2(b)に図1(b)の時の配光を示す。ビーム広がり角は、図2(a)で約10[deg]、図2(b)で40[deg]弱となっている。ここではビーム広がり角を、最大ピーク光度、通常は放射角0degの、つまり正面光度の、1/2の光度となる2箇所の角度の幅(半値全幅)で定義している。以降、ビーム広がり角は、この角度の幅を指すとする。また、この時、COB1の光束は1450[lm]で、COB1の発光面の大きさは直径φ10[mm]であった。
【0023】
図示は省略するが、図1(a)に示すレンズ4の位置と図1(b)に示すレンズ4の位置との間の適当な位置にレンズ4を配置した場合、20[deg]や30[deg]の中間的なビーム広がり角が得られる。すなわち、レンズ4を光軸Zに沿って可動することで、約10[deg]の狭角から40[deg]弱の広角までの任意のビーム広がり角を得ることができる。
【0024】
レンズ3のCOB1側の面をS1面とし、S1面の反対側、つまり出射側の面をS2面とする。同様にレンズ4のCOB1側の面をS3面とし、S3面の反対側、つまり出射側の面をS4面とする。S1面〜S4面は非球面であっても構わないが、S1面〜S4面を球面で近似した場合の曲率半径をR1〜R4とし、曲率(近似曲率)をそれぞれC1〜C4とおく。曲率Cは、近似球面の曲率半径Rの逆数である。C1〜C4はS1面〜S4面が凸面の場合、正の値を取り、凹面の場合、負の値を取るとする。これらの曲率(又は近似曲率)C1〜C4には次の関係がある。
レンズ3の光源側の面の近似曲率をC1とし、
レンズ3の出光側の面の近似曲率をC2とし、
レンズ4の光源側の面の近似曲率をC3とし、
レンズ4の出光側の面の近似曲率をC4とした場合、
C1<C2 かつ C3<C4 (式1)
【0025】
ここで、S1面は凹面でもよく、C1は負の値でもよい。
S2面は凸面でなければならず、C2は常に正の値である。
S3面は凹面でもよく、C3は負の値でもよい。
S4面は凸面でなければならず、C4は常に正の値である。
【0026】
(式1)の関係の必要性を説明するため、第一の比較例を図3に示す。第一の比較例ではCOB1に近接したレンズ3が無く、レンズ4のみによって狭角から広角までの配光が作られている。図3(a)が狭角側のレンズ配置を表す断面図で、図3(b)が広角側のレンズ配置を表す断面図である。
【0027】
さらに、第一の比較例で得られる配光を図4に示す。図4(a)に図3(a)の時の配光を示し、図4(b)に図3(b)の時の配光を示す。本実施の形態1の配光である図2では、狭角、広角の正面光度がそれぞれ19000[cd]、3200[cd]であるのに対し、図4では14000[cd]、2200[cd]と大幅に低くなっている。すなわち、COB1から放射される光束のうち照明対象物を照らす光束の割合、つまり光の利用効率が悪いことが分かる。
【0028】
一枚のレンズ4のみによって配光を作る場合、光源であるCOB1からレンズ4(第一の比較例の場合、主たるパワーを持つS4面)までの距離Lは、COB1の発光面の大きさ(直径D)と、狙いのビーム広がり角θからおよそ次式で決定される。
L≒D/2×tan(90[deg]−θ/2) (式2)
【0029】
例えば、COB1の発光面の直径D=φ10[mm]、ビーム広がり角θ=10[deg]とした場合、L≒60[mm]となり、レンズ4(S4面)はCOB1より60[mm]前後の距離に配置されなければならない。また、レンズ4の大きさは、例えば照明装置10が設置される天井面の穴の大きさなどから制限されることが多く、レンズ4の大きさを、本実施の形態1と第一の比較例の場合では、共にφ70[mm]としている。
【0030】
このように、COB1からレンズ4までの距離とレンズ4の大きさとは共に制約があるため、一枚のレンズ4のみを用いる第一の比較例では、おのずとレンズ4におけるCOB1からの光の取り込み立体角が決められ、光の利用効率も低く制限されてしまう。例えば、COB1の発光面の直径Dが、従来のLEDのように小さければ、レンズ4をもっと光源に近づけられ、光の利用効率を高めることができる。しかし、COB1のように発光面が大きい場合、レンズ4を光源に近づけると、(式2)からも分かるように、ビーム広がり角が狙いの値よりも大きく広がってしまう。
【0031】
一方、本実施の形態1では、COB1に近接配置されたレンズ3により、COB1から放射された光は一旦絞られ、効率良くレンズ4に入射する。前述したように、COB1より放射される光は完全拡散型の配光であるため、ビーム広がり角は120[deg]もある。このため、レンズ3はS1面の表面が溶融、変形や焼き付けを起こさない範囲で可能な限りCOB1に近接配置し、COB1から放射される光が広がる前に絞るのが良い。もし、これら溶融等の問題が生じないのであれば、S1面とCOB1の表面とを密着させてしまっても構わない。COB1の表面は略平坦面なので、レンズ3のS1面は平面又は凹面が望ましく、凸面であっても、少なくとも、S2面に比べ緩い曲率の方が好ましい。よって、C1<C2とするのが良い。
【0032】
このように、本実施の形態1では、C1<C2であるレンズ3をCOB1に近接配置することで、図2と図4で示したように、第一の比較例よりも高い正面光度、かつ、高い光の利用効率を実現できている。
【0033】
また、第二の比較例を図5に示す。図5(a)が狭角側のレンズ配置を表す断面図で、図5(b)が広角側のレンズ配置を表す断面図である。
第二の比較例では、レンズ4のS4面の曲率がS3面の曲率よりも緩くなるように、つまり敢えてC3>C4とした状態で、狭角側の配光を満たすように設計したものである。第二の比較例で得られる配光を図6に示す。図6(a)に図5(a)の時の配光を示し、図6(b)に図5(b)の時の配光を示す。図6(b)に示すとおり広角側の配光の正面光度が落ち込み、いわゆる中抜けが発生していることが分かる。この現象は、20[deg]や30[deg]の中間的なビームの広がり角を持つ場合においても見られ、被照射面の中央が周囲より暗くなるといった問題を引き起こす。このため、C3<C4の関係が必要である。
【0034】
すなわち、本実施の形態1に係る照明装置10によれば、光源であるCOB1に近接配置されたレンズ3と、レンズ3より遠方に配置されたレンズ4、そして、レンズ4をレンズ3に近づけたり遠ざけたりすることで、発光面の大きなチップオンボード方式のLEDにおいても、約10[deg]の狭角から約40[deg]の広角までの任意のビーム広がり角の配光を、高い正面光度、高い光の利用効率で実現することができる。
【0035】
図10に、本実施の形態1の2枚のレンズからなる光学系の、パワー配置と光線の軌跡を表す模式図を示す。図10は、狭角側の配置を示したものである。広角側の図示は省略する。
【0036】
レンズ3とレンズ4は、厚みゼロの薄肉レンズとして考え、それぞれの焦点距離をf1、f2とする。レンズ3とレンズ4の間隔はd、COB1の発光面からレンズ3までの距離はsとする。図中実線の光線は、COB1の発光中心、つまり光軸Z上の点より放射された光の軌跡を表している。一方、破線の光線は、COB1の端、つまり発光面の直径をDとした時、D/2の位置から光軸Zに平行に放射された光の軌跡を表している。
【0037】
前述したように、特に発光面の大きいチップオンボード方式のLEDでは、ビームを細く絞る狭角側の配光を得るのが困難である。狭角側の配光が得られれば、広角側は、先述した第二の比較例のようなC3>C4の場合を除き、レンズ3とレンズ4の間隔dを狭め、レンズ4をレンズ3に近づけることで、自然と得られることが多い。図10より、レンズ4をレンズ3に近づけていくと、実線の光線、破線の光線ともに、レンズ4から出射後、光軸Zに対してより広がる方向に角度を持つことになる。
【0038】
ビームを細く絞り、かつ光の利用効率を高め、高い正面光度を得るためには、実線で表したCOB1の一点より発せられた光を、レンズ3とレンズ4とにより略平行とするのが良い。すなわち、COB1の発光中心より放射された光は、レンズ4通過後に、光軸Zに略平行とするのが良い。
【0039】
そして、破線で表したCOB1の端より、光軸Zに平行に発せられた光(COB1は完全拡散型の配光なので、その正面方向、光軸Zに平行な方向が最も光度が高い)は、レンズ3通過後、レンズ4に入射するまでに光軸Zと一度交差し、レンズ4通過後は、光軸Zに対して略ビーム広がり角θの半分θ/2の方向に放射されるようにするのが良い。
【0040】
以上、図10では、f1<f2だが、もしf1≒f2等で、破線の光線がレンズ3通過後、レンズ4入射までに光軸Zと交差しないような場合、破線の光線のレンズ4通過後の放射方向は、光軸Zに対して大きな角度を有することになり、狭角の配光が得られなくなる。
【0041】
以上のような条件を満たそうとした時、以下の式が成り立つ。(式3)では、レンズ3とレンズ4の合成パワーをΦ、レンズ4のパワーをΦ2としている。パワーΦは、焦点距離fの逆数である。
θ/2=Φ×D/2
s×Φ=1−d×Φ2 (式3)
(式3)を変形することで、次の(式4)が得られる。
f1=(s×(f2−d))/(f2−s−d)
f2=d/(1−s×θ/D) (式4)
【0042】
前述したように、図10より明らかにf1<f2だが、以下、f1とf2のおよその比率について説明する。f1とf2の関係式は上の(式4)のとおりで、各パラメータの範囲について以下に記述する。
【0043】
まず、レンズ3はCOB1に近接配置するため、sはおよそ0.1〜3[mm]とする。(式4)では、s=0[mm]が計算できないため、便宜上0.1[mm]からとする。ビーム広がり角θは、配光の分布形状をトップハット(矩形)型にするか、ガウシアン(正規分布)型にするかにも依存するため、およそ0.175〜0.349[rad](10〜20[deg])とする。COB1の発光面の直径Dは、およそφ9〜13[mm]であるとする。
【0044】
残ったレンズ3とレンズ4の間隔dは未定であるため、f1の方を先に決定し、それからdとf2を求めることにする。レンズ3の主たる目的は、COB1から放射された光を絞り効率良くレンズ4に入射させ、高い正面光度、光の利用効率を得ることにある。このため、レンズ3の焦点距離f1は短ければ短いほど良いことになり、C1<C2よりレンズ3のパワーは実質S2面が支配していることから、S2面の曲率半径は小さければ小さいほど良いことになる。しかし、実際には、図11に示すように、COB1の半径D/2よりも小さい曲率半径にすると、レンズ3がCOB1より小さくなり、COB1の周辺部から放射される光を集められなくなる。また、S2面の曲率半径がちょうどD/2の場合でも、レンズ3の保持などに困難が生じる。そこで、S2面の曲率半径R2はD/2〜Dを妥当とし、レンズ3の屈折率nが約1.5であるから、f1はおよそD〜2Dの値を取るとする。
【0045】
以上述べたパラメータは以下のとおりである。
f1:レンズ3の焦点距離=Dより大きく2D以下
f2:レンズ4の焦点距離
d:レンズ3とレンズ4の間隔
s:COB1の発光面からレンズ3までの距離=0.1以上3.0以下[mm]
D:COB1の発光面の直径=φ9以上φ13以下[mm]
θ:ビーム広がり角=0.175以上0.349以下[rad](10以上20以下[deg])
Φ:レンズ3とレンズ4の合成パワー=Φ1+Φ2−d×Φ1×Φ2
Φ1:レンズ3のパワー=1/f1
Φ2:レンズ4のパワー=1/f2
R2:S2面の曲率半径=D/2以上D以下
n:レンズ3とレンズ4の屈折率=約1.5
【0046】
図12に、上記のようにパラメータを設定し、(式4)から導かれた、レンズ3の焦点距離f1とレンズ4の焦点距離f2の関係を示す。横軸がf1/D(つまり、1〜2の値を取る)で、縦軸がf2/f1である。
【0047】
図12より、f1が長くなるにつれ、f2が短くなることが分かる。
図11で示したように、f1がDと等しい場合、つまりf1/D=1の場合、レンズ3の保持に困難がある、またCOB1の周辺部から放射される光のうちレンズ3に入射できず、周辺部で光がこぼれる分が存在するので、f1/D=1は採用しにくく、f1/D>1.0が望ましい。f1/D>1.0の場合で、ビームを細く絞り、かつ光の利用効率を高め、高い正面光度を得るためのf1とf2のおよその比率は以下のようになる。
f1/D=1.25〜2.0の場合、f2/f1は、1.5〜6.8である。
f1/D=1.50〜2.0の場合、f2/f1は、1.5〜5.0である。
f1/D=2.0の場合、f2/f1は、1.5〜3.5である。
レンズ3の保持や周辺部の光のこぼれを考慮すると、f1/D=1.50以上が好ましく、f2/f1は、およそ1.5〜5.0が好適な比率であることが分かる。
【0048】
また、レンズ3のパワーは実質S2面が支配しており、レンズ4のパワーは実質S4面が支配していること、レンズ3とレンズ4の屈折率nが約1.5であることから、f1≒2/C2,f2≒2/C4となっている。よって、C2とC4の間には次の関係が成り立つ。
C2/C4=1.5〜5.0 (式5)
【0049】
さらに、図12より、以下のことが分かる。
1.COB1の発光面からレンズ3までの距離sが小さいほど、f2/f1は小さい。
2.ビーム広がり角θが大きいほど、f2/f1は小さい。
3.f1/Dが大きいほど、f2/f1は小さい。
【0050】
以上のように、本実施の形態1に係るLED照明装置は、LEDの正面に2枚の透明なレンズを備えたLED照明装置であって、レンズ3(第一のレンズ)をLEDに近接して配置し、レンズ4(第二のレンズ)をLEDからレンズ3(第一のレンズ)より遠方に配置し、前記レンズ4(第二のレンズ)が光軸方向に移動可能で、レンズ3(第一のレンズ)との間隔を調節可能であり、レンズ3(第一のレンズ)のLED側の面の近似曲率をC1、出光側の面の近似曲率をC2、およびレンズ4(第二のレンズ)のLED側の面の近似曲率をC3、出光側の面の近似曲率をC4とした場合、C1<C2かつC3<C4の関係が満たされていることを特徴とする。
【0051】
本実施の形態1によるLED照明装置は、近接配置されたレンズ3(第一のレンズ)により、高い正面光度、高い光の利用効率が得られる。凸面が出射側を向いているレンズ4(第二のレンズ)により、中抜けが発生しない。
【0052】
本実施の形態1によるLED照明装置は、発光面の大きなCOBにおいても、狭角から広角までの任意のビーム広がり角の配光を、高い正面光度、高い光の利用効率で得られる効果がある。
【0053】
実施の形態2.
図7は、本発明の実施の形態2に係る照明装置10の側面視断面図である。図7(a)が狭角側のレンズ配置を表す断面図で、図7(b)が広角側のレンズ配置を表す断面図である。
本実施の形態2は、前記実施の形態1に係る照明装置10において厚肉であったレンズ4を、フレネルレンズ化したものである。以降、前記実施の形態1と異なる点についてのみ記す。
【0054】
アクリルやポリカーボネート等の透明樹脂を射出成形してレンズ4を製作する場合、厚肉レンズではヒケが発生する、また成形時間がかかるなどの課題がある。そこで、フレネルレンズ化し薄肉かつ均肉化することで、これらの課題を解消することができる。
レンズ4をフレネルレンズ化する場合、曲率の大きいS4面の方をフレネル面とする。フレネル面を球面で近似すると曲率は緩やかになってしまうが、前記(式1)のC1〜C4は当然、フレネル面の段差を解消し、フレネル化していない状態の曲率を指すとすれば、本実施の形態2のフレネルレンズにおいても、(式1)と(式5)の関係は成立している。なお、本実施の形態2では、S3面を後述する別の目的のため、C3=0とし、略平面化している。
【0055】
また、レンズ4をフレネルレンズとした場合、フレネル面が照明装置10の最外面となるため、アルコールなどによる清掃時にフレネル面の谷の部分4Vが起点となって割れが発生することがある。この割れを防止するため、谷の部分4Vには曲率半径0.2[mm]以上の丸みをもったフィレット面を設ける必要がある。また、山の部分4Pは、金型においては谷となるため、金型を加工する刃具先端の曲率が残ることになる。これら谷の部分4Vや山の部分4Pを通過する光線は、本来のレンズ面を通過する制御された光線とは異なり、無秩序に様々な方向へ散乱される。これらの光線が多ければ多い程、正面光度および光の利用効率は低下する。このため、フレネル面の各輪帯では、谷の部分4Vや山の部分4Pの占める割合が小さくなるように、フレネルレンズ面の高さHを、これら谷の部分4Vや山の部分4Pの曲率半径より十分高くするのが望ましく、好適には2[mm]以上とするのが良い。また、たとえば、フレネルレンズ面の高さHを、谷の部分4Vや山の部分4Pの曲率半径より5倍以上高くするのが望ましく、好適には10倍以上とするのが良い。
【0056】
本実施の形態2では、図9(a)に示すように、レンズ4のフレネル面の裏面、つまりS3面を、小さな球面レンズを3[mm]以下のピッチで、互いに直交する2軸の方向に正方格子状に並べたフライアイレンズとしている。個々の球面レンズの高さは等しく、0.1〜0.2[mm]程度である。本フライアイレンズは、前述したCOB1内のチップのイメージが被照射面に投影される現象を防ぐための手段である。
【0057】
図8(a)に、前記実施の形態1に係る照明装置10における被照射面の色味を示す。照明装置10から被照射面までの距離は1[m]、ビーム広がり角は約20[deg]、被照射面のサイズは0.5[m]角とした。図中、白色で表した領域は、擬似白色からわずかに青味がかった白色で見える領域で、灰色で示した領域は、薄っすら黄色に見える領域で、濃い灰色ほど黄色が強いことを表している。図8(a)より、被照射面の中央部分にチップのイメージ(中央部分の白色部分)がはっきり見えるのが分かる。
【0058】
一方、図8(b)に、本実施の形態2に係るフライアイレンズを用いた照明装置10における被照射面の色味を示す。照明装置10から被照射面までの距離など各条件は、図8(a)と同じである。被照射面中央部分のチップのイメージが消えて、色むらが抑えられているのが分かる。
このように、S3面のフライアイレンズは、レンズ4を通過する光を弱く拡散することで、COB1内のチップのイメージが被照射面に投影されるのを防いでいる。
【0059】
なお、S3面はレンズ4を通過する光を弱く拡散できれば良いので、小さな球面レンズを、互いに直交する2軸の方向に正方格子状に並べるのではなく、図9(b)に示すように、互いの成す角が60[deg]の3軸の方向に六方格子状、つまり蜂の巣状に並べるのであっても良い。
【0060】
あるいは、小さな球面レンズではなく、図9(c)に示すように、例えば直径が3[mm]以下のピッチで順次異なるドーナツ面を、同心円状に何重にも並べたレンズアレイであっても良い。この場合、S3面のレンズ面に相当する金型の入れ子は、一般的なNC旋盤で加工できる。
【0061】
またさらには、これらのような形状を施すのではなく、S3面を単なる平面にし、サンドブラストで面肌を荒らすだけであっても良い。
【0062】
チップオンボード方式のLEDをスポットライトに用いる場合、被照射面において、明るく白い照射領域の周辺に黄色いリングが発生することがある。前述した図8(a)と図8(b)においても、発生していることが分かる。図7において、レンズ4の出射側に破線で示した絞り7は、この黄色いリングを遮光し、発生を抑止する部材である。絞り7も、固定筒5や可動セル6と同じく、アルミニウムやマグネシウム等のダイキャスト製、もしくはプラスチック成形品である。やはり、黒染めするのが好ましい。
【0063】
図8(b)では、絞り7を配置していない場合の被照射面の色味を示していた。図8(c)に、絞り7を配置した場合の、本実施の形態2に係る照明装置10における被照射面の色味を示す。絞り7によって、黄色いリングが消え、被照射面の色むらがさらに抑えられたのが分かる。
【0064】
すなわち、本実施の形態2に係る照明装置10によれば、厚肉のレンズ4をフレネルレンズ化して薄肉かつ均肉化することにより、成形時間を短く、ヒケの発生を防止し、安価かつ安定に製造することができる。
【0065】
また、レンズ4のフレネル面の裏面側にフライアイレンズを設けることにより、被照射面に投影されたCOB1内のチップのイメージが解消されて、色むらを抑えることができる。
【0066】
さらに、レンズ4の出射側に配置された絞り7により、被照射面に黄色いリングが発生することを防止し、より一層色むらを抑えることができる。
【0067】
以上のように、本実施の形態2のLED照明装置は、本実施の形態1のLED照明装置の構成に加えて、レンズ4(第二のレンズ)の出光側の面をフレネルレンズ化したことを特徴とする。このため、レンズ4(第二のレンズ)が薄肉かつ均肉化することで、レンズ4(第二のレンズ)を安価安定に射出成形できる。
【0068】
また、前記フレネルレンズの各輪帯におけるレンズ高さを2[mm]以上としたことを特徴とする。このため、フレネルレンズ化に伴う光の利用効率の低下を抑制できる。
【0069】
あるいは、本実施の形態2のLED照明装置は、前記レンズ4(第二のレンズ)のLED側の面を、小さな球面レンズを正方格子状、もしくは六方格子状に配列し、レンズアレイとしたことを特徴とする。このため、COB1内のチップのイメージが被照射面に投影されることを抑制できる。
【0070】
あるいは、また、本実施の形態2のLED照明装置は、前記レンズ4(第二のレンズ)のLED側の面を、直径が順次異なるドーナツ面を、同心円状に何重にも並べたレンズアレイとしたことを特徴とする。このため、COB1内のチップのイメージが被照射面に投影されることを抑制できる。
【0071】
またさらに、本実施の形態2のLED照明装置は、前記レンズ4(第二のレンズ)の出光側に、絞りを備えたことを特徴とする。このため、被照射面における黄色いリングの発生を抑制できる。
【0072】
上記実施の形態1と2においては、光源としてCOB1を用いたが、COB方式ではなく、アレイ状に配列されたLEDを光源として用いてもよい。また、LEDでなくてもよい。また、LEDの配置は円状でなくてもよく、多角形状でもよい。
【符号の説明】
【0073】
1 COB、2 基板、3 レンズ、4 レンズ、4P フレネル面の山の部分、4V フレネル面の谷の部分、5 固定筒、6 可動セル、7 絞り、10 照明装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のレンズと、
第二のレンズと、
光源を取り付け、光源からの光の出光方向に、第一のレンズを配置し、さらに、第二のレンズを配置する固定筒とを備え、
第一のレンズの光源側の面の近似曲率をC1とし、
第一のレンズの出光側の面の近似曲率をC2とし、
第二のレンズの光源側の面の近似曲率をC3とし、
第二のレンズの出光側の面の近似曲率をC4とした場合、
C1<C2、かつ、C3<C4
であることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記第一のレンズの出光側の面の近似曲率C2と、第二のレンズの出光側の面の近似曲率C4との関係は、C2/C4=1.5〜5.0であることを特徴とする請求項1記載の照明装置。
【請求項3】
第一のレンズの焦点距離f1と第二のレンズの焦点距離f2とは以下の関係があることを特徴とする請求項1又は2記載の照明装置。
f1=(s×(f2−d))/(f2−s−d)
f2=d/(1−s×θ/D)
f1:第一のレンズの焦点距離
f2:第二のレンズの焦点距離
d:第一のレンズと第二のレンズの間隔
s:光源の発光面から第一のレンズまでの距離
D:光源の発光面の直径
θ:ビーム広がり角
【請求項4】
上記光源はチップオンボード(COB)方式のLEDであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の照明装置。
【請求項5】
前記固定筒は、第一のレンズと第二のレンズとの間隔を変更する可動セルを備えたことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の照明装置。
【請求項6】
前記第二のレンズの出光側の面を、フレネルレンズ化したことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の照明装置。
【請求項7】
前記フレネルレンズの各輪帯におけるレンズ高さを2mm以上としたことを特徴とする請求項6記載の照明装置。
【請求項8】
前記第二のレンズの光源側の面を、小さな球面レンズを正方格子状、もしくは六方格子状に配列し、レンズアレイとしたことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の照明装置。
【請求項9】
前記第二のレンズの光源側の面を、直径が順次異なるドーナツ面を、同心円状に何重にも並べたレンズアレイとしたことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の照明装置。
【請求項10】
前記第二のレンズの出光側に、絞りを備えたことを特徴とする請求項1〜9いずれかに記載の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−174601(P2012−174601A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37384(P2011−37384)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(390014546)三菱電機照明株式会社 (585)
【Fターム(参考)】