説明

照明装置

【課題】エレクトロルミネセンス材料を用いた照明装置の軽量化を図る。また、エレクトロルミネセンス材料を用いた照明装置の高信頼性化を図る。
【解決手段】エレクトロルミネセンス(EL)層を含む発光素子を有する照明装置において、発光素子の光放射面及び上面を覆って、EL層の屈折率以上の屈折率を有する有機樹脂を用いた筐体を設ける。また発光素子が設けられる筐体の内部の内壁及び発光素子の上面を覆う無機絶縁膜を設けることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一形態は、エレクトロルミネセンスを発現する発光部材を含む照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
白熱電球や蛍光灯よりも発光効率が高いという試算から、次世代の照明器具としてエレクトロルミネセンス材料を用いた照明装置が注目されている。エレクトロルミネセンス材料は蒸着法や塗布法などの製法により厚さ1μm以下の薄膜で形成可能であり、照明装置として形態にも工夫が施されている。例えば、エレクトロルミネセンス材料を用いた照明装置を大面積化しても輝度を均一に保つことができる照明装置が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−332773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一形態はエレクトロルミネセンス材料を用いた照明装置の軽量化を図ることを目的の一とする。また、本発明の一形態はエレクトロルミネセンス材料を用いた照明装置の高信頼性化を図ることを目的の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
エレクトロルミネセンス(EL)層を含む発光素子を有する照明装置において、発光素子の光放射面及び上面を覆って、EL層の屈折率以上の屈折率を有する有機樹脂を用いた筐体を設ける。
【0006】
本発明の一形態は、第1電極及び第2電極に挟持されたEL層を含む発光素子と、発光素子の光放射面及び上面を覆って、EL層の屈折率以上の屈折率を有する透光性の有機樹脂を用いた筐体とが設けられ、第1電極と第2電極において発光素子の光放射面に設けられる少なくとも一方が透光性を有する。なお、本明細書において透光性とは、少なくとも可視光の波長領域の光に対して光を透過する性質を指す。
【0007】
本発明の他の一形態は、第1電極及び第2電極に挟持されたEL層を含む発光素子と、発光素子の光放射面を覆う第1筐体と、発光素子の上面を覆う第2筐体とを有し、第1電極と第2電極において発光素子の光放射面に設けられる少なくとも一方が透光性を有し、第1筐体及び第2筐体はEL層の屈折率以上の屈折率を有し、第1筐体及び第2筐体は発光素子を封止するように接着される。
【0008】
発光素子を覆ってが設けられる筐体に用いられる有機樹脂の屈折率は、1.7以上1.8以下が好ましい。EL層を覆う筐体にEL層と同じ、又はそれ以上の屈折率の有機樹脂を用いると、発光素子と筐体との界面におけるEL層から放射される光の反射を軽減することができる。
【0009】
また発光素子を覆ってが設けられる筐体の内部の内壁及び発光素子の上面を覆う無機絶縁膜を設けることが好ましい。また、発光素子の光放射面と筐体との間にも無機絶縁膜を設ける構成としてもよい。無機絶縁膜は、外部からの水等の汚染物質から保護する保護層、封止膜として機能する。無機絶縁膜としては窒化膜、及び窒化酸化膜の単層又は積層を用いることができる。無機絶縁膜を設けることで、発光素子の劣化を軽減し、照明装置の耐久性や寿命を向上させることができる。
【0010】
発光素子の放射面の形状は、四角形のような多角形のほか、円形であってもよく、該放射面を覆う筐体(第1筐体)の形状も該放射面の形状に対応させればよい。
【0011】
また、EL層は中間層を介して2層以上設けられる構成としてもよい。発光色の異なるEL層を複数積層することで放射される光の色を調節することができる。また、同色であっても複数層設けることで電力効率を向上させる効果を奏する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様である照明装置は、EL層を覆う筐体に有機樹脂を用いるため軽量化を実現することができる。また、筐体にEL層と同じ、又はそれ以上の屈折率の有機樹脂を用いるため、発光素子と筐体との界面におけるEL層から放射される光の反射を軽減することができる。また、本発明の一態様である照明装置は、素子劣化しにくい構造を有するので長寿命な照明装置を提供することができる。よって、本発明の一態様である照明装置は、高信頼性化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】照明装置を説明する断面図。
【図2】照明装置を説明する断面図。
【図3】照明装置を説明する断面図。
【図4】照明装置を説明する断面図。
【図5】照明装置を説明する断面図。
【図6】照明装置を説明する断面図。
【図7】照明装置に適用できる発光素子の例を説明する図。
【図8】照明装置の使用形態の一例を説明する図。
【図9】照明装置の使用形態の一例を説明する図。
【図10】照明装置を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下の説明に限定されず、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の照明装置の一形態について図1乃至図6を用いて説明する。
【0016】
図1乃至図6は照明装置の断面図であり、図4及び図5は照明装置の作製方法を示す。
【0017】
図1に示す照明装置は、EL層106を含む発光素子132の光放射面及び上面を覆って、EL層106の屈折率以上の屈折率を有する有機樹脂を用いた筐体(第1筐体100及び第2筐体134)を設ける構成である。
【0018】
発光素子132は、第1電極104、EL層106、及び第2電極108を含み、EL層106からの光は第1電極104及び第1筐体100を通過して外部へ放射されるため、第1電極104側が光放射面となる。よって第1電極104及び第1筐体100は少なくともEL層106からの光を透過する透光性を有する。
【0019】
発光素子132を覆って設けられる第1筐体100及び第2筐体134に用いられる有機樹脂の屈折率は、1.7以上1.8以下が好ましい。EL層を覆う筐体にEL層106と同じ、又はそれ以上の屈折率の有機樹脂を用いると、発光素子132と第1筐体100との界面における光の反射を軽減することができる。
【0020】
また、図2のように発光素子132の光放射面を覆って設けられる筐体(第1筐体)において発光素子132と反対側(の表面)にマイクロレンズアレイのような複数の凹凸を有する形状としてもよい。複数の凹凸を有する形状とすることで、筐体の外部への取り出し効率を向上させることができる。
【0021】
LED(Light Emitting Diode)を用いた発光素子と比較し、発熱が小さい有機EL層を用いた発光素子は、筐体として有機樹脂を用いることができるため、照明装置として軽量化が可能となる。
【0022】
また、図1のように発光素子の光放射面及び上面を覆う筐体として2つの筐体を接着して用いる場合、第1筐体100及び第2筐体134には、同じ有機樹脂を用いる。第1筐体100及び第2筐体134に同じ有機樹脂を用い、第1筐体100及び第2筐体134を接着して筐体を形成すると、熱歪みや物理的衝撃による形状不良を生じにくい。よって、作製時及び使用時における照明装置の破損を軽減することができる。
【0023】
第1筐体100及び第2筐体134に熱可塑性の有機樹脂を用いる場合、熱圧着処理によって接着することができる。また、第1筐体100及び第2筐体134の間に接着層を設けて接着してもよい。接着層としては、可視光硬化性、紫外線硬化性または熱硬化性の樹脂を用いることができる。接着層を用いる場合、接着層も第1筐体100及び第2筐体134と同じ有機樹脂材料を用いると前述のように破損耐性が高まるため好ましい。
【0024】
また発光素子132を覆って設けられる筐体(特に第2筐体134)の内部の内壁及び発光素子132の上面を覆う無機絶縁膜110を設けることが好ましい。また、図3に示すように発光素子132の光放射面と第1筐体100との間にも無機絶縁膜102を設ける構成としてもよい。無機絶縁膜102、110は、外部からの水等の汚染物質から保護する保護層、封止膜として機能する。無機絶縁膜を設けることで、発光素子の劣化を軽減し、照明装置の耐久性や寿命を向上させることができる。
【0025】
無機絶縁膜102、110としては窒化膜、及び窒化酸化膜の単層又は積層を用いることができる。具体的には、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウムなどを用いて、材料に合わせて化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法、スパッタリング法等により形成することができる。好ましくは、窒化珪素を用いてCVD法により形成するとよい。無機絶縁膜102、110の膜厚は100nm以上1μm以下程度とすればよい。
【0026】
また、無機絶縁膜102、110として、ダイアモンドライクカーボン(DLC)膜、窒素含有炭素膜、硫化亜鉛及び酸化珪素を含む膜(ZnS・SiO膜)を用いてもよい。
【0027】
発光素子132の放射面の形状は、四角形のような多角形のほか、円形であってもよく、該放射面を覆う筐体(第1筐体100)の形状も該放射面の形状に対応させればよい。
【0028】
第1筐体100に用いる材料の具体例としては、有機樹脂(プラスチック)を用いることができる。プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルフォン等からなる材料が挙げられる。
【0029】
また、第1筐体100の大きさとしては、照明装置の用途によって適宜設定することが可能である。例えば、直径10cm乃至14cm、好ましくは直径12cmの円盤形状、5インチ角の正方形などとすればよい。
【0030】
また、照明装置には、外部電源と接続する接続部材150(口金ともいう)が設けられている。
【0031】
接続部材150は、発光素子132上方、第2筐体134に設けられた開口に配置されている。よって、接続部材150が配置される第2筐体134の開口付近は密着性及び密閉性を高めるために無機絶縁膜110が除去されている。
【0032】
接続部材150は、制御回路152、第1接続配線156、第2接続配線154、第1取り出し配線160、第2取り出し配線158を有しており、接続部材150は直径10mm〜40mm、代表的には25mm程度のものを用いればよい。
【0033】
接続部材150は第2筐体134の開口にはめ込むように配置する。接続部材150は第2筐体134へねじ込むように取り付けてもよく、第2筐体134と接続部材150の接する部位を固定する器具を設け、固定強度を高めてもよい。封止及び密閉効果を高めるために、図6(A)のように第2筐体134の開口付近を粗面化する処理を行い、凹凸形状139を設ける構成としてもよい。また、図6(B)のように、接続部材150の絶縁部材138を、第2筐体134の開口を蓋するように覆う構成とし、密閉及び密着度を向上させてもよい。
【0034】
発光素子132の第1電極104は、導電層120a、第1接続配線156、制御回路152を介して第1取り出し配線160と電気的に接続し、発光素子132の第2電極108は、導電層120b、第2接続配線154、制御回路152を介して第2取り出し配線158が電気的に接続する。接続部材150を外部電源に接続することで、外部電源より電力の供給を受けることができ、照明装置を点灯させることができる。なお、導電層120a、120bは無機絶縁膜110に設けられた第1電極104、又は第2電極108に達する開口に形成される。
【0035】
制御回路152は、一例として、外部電源から供給される電源電圧を元に、発光素子132を一定の輝度で点灯させるための機能を有する回路である。例えば、外部電源から供給される交流電圧100V(110V)を、制御回路152のコンバータによって直流電圧(DC)5〜10Vに変換する。
【0036】
制御回路152は、一例として、整流平滑回路、定電圧回路、定電流回路を有する。整流平滑回路は、外部の交流電源より供給される交流電圧を直流電圧にするための回路である。整流平滑回路は、一例として、ダイオードブリッジ回路、平滑容量等を組み合わせて構成すればよい。定電圧回路は、整流平滑回路から出力されるリップルを含んだ直流電圧を、安定化した定電圧の信号として出力する回路である。定電圧回路は、スイッチングレギュレータ、またはシリーズレギュレータ等を用いて構成すればよい。定電流回路は、定電圧回路の電圧に応じて定電流を発光素子132に出力する回路である。定電流回路は、トランジスタ等を用いて構成すればよい。なお、ここでは外部の電源として商用交流電源を想定し、整流平滑回路を設ける構成を示したが、外部の電源が直流電源の場合、整流平滑回路を設けなくてもよい。また、制御回路152には、必要に応じて、輝度を調整するための回路、サージ対策として保護回路等を設けてもよい。
【0037】
図1では接続部材150と発光素子132との接続部に、導電層120a、120bによるバンプ接続を用いる例を示すが、接続部材150と発光素子132の接続部との電気的接続ができる方法及び構成ならばこれに限定されない。例えば、接続部材150と発光素子132の接続部に、異方性導電膜を用いてもよいし、用いる導電膜をはんだ接続が可能な材料で形成し、はんだを用いて接続してもよい。導電層120aと第1接続配線156、導電層120bと第2接続配線154とは異方性導電膜やはんだにより接続及び固定することができる。また、固定のための樹脂を接続部の周りに設けてもよい。
【0038】
また、接続部材150は、発光素子132と電気的接続ができる接続配線及び外部電源より電力を供給できる取り出し配線を有していれば様々な形状を用いることができる。
【0039】
図4及び図5を用いて照明装置の作製方法を説明する。
【0040】
図4(A)に示すように筐体となる有機樹脂122を用意する。次に図4(B)に示すように有機樹脂122を形状の型となる支持体123を用いて凹凸形状を有する第1筐体121を形成する。有機樹脂122の形状は、有機樹脂122の特性に応じて加熱処理や光照射処理を行って加工することができる。例えば、有機樹脂122に熱可塑性の有機樹脂を用い、加熱処理を行いながら支持体123に押圧して支持体123の形状を反映するように変形し、その後冷却して硬化を行う。
【0041】
第1筐体121上に第1電極104、補助配線124、絶縁層135、EL層106、第2電極108、端子136を含む発光素子132を形成する。
【0042】
図4(C)に示すように、補助配線を用いて発光素子の電極と外部の電極とを電気的に接続させてもよい。照明装置において外部電源との接続部を設ける構成は、種々選択することができ、本実施の形態に限定されない。図4及び図5に示す照明装置では、第1電極104と電気的に接続する補助配線124を設ける例である。補助配線124は絶縁層135によって覆われている。第1電極104と補助配線124は、補助配線124と電気的に接続する端子136によって導電層120aを介して外部電源の第1接続配線156と電気的に接続する。
【0043】
補助配線124は、導電性材料を用いればよく例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ネオジム(Nd)、スカンジウム(Sc)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)から選ばれた材料又はこれらを主成分とする合金材料を用いて、単層で又は積層して形成することができる。また、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を用いてもよい。
【0044】
図4(D)に示すように、発光素子132を覆うように、第1筐体121と第2筐体134を接着する。
【0045】
次に、第2筐体134の開口より内部へ、電源129と接続する電極126を差し込んで配置し、成膜ガスをガス供給源128よりバルブ127を開放して筐体内部へ供給し、第2筐体134の内壁及び発光素子132上面を覆う無機絶縁膜110を形成する(図5(A)参照。)。この時、接続部材150が配置される第2筐体134の開口付近はマスク137を設け、無機絶縁膜110が形成されないようにする。このように無機絶縁膜110を形成すると、無機絶縁膜110は第2筐体134及び発光素子132上面を連続的に覆う膜とすることができ、発光素子132への汚染物質を遮断する保護膜として効果的である。
【0046】
図5(B)に示すように、第2筐体134の開口に接続部材150を配置し、発光素子132の第1電極104と第1接続配線156とを導電層120aを介して電気的に接続し、第2電極108と第2接続配線154とを導電層120bを介して電気的に接続する。以上の工程で照明装置を作製することができる。
【0047】
発光素子132を覆って設けられている第1筐体100及び第2筐体134の間の空間に乾燥剤となる吸水物質を設けてもよい。吸水物質は粉状など固体の状態で配置してもよいし、スパッタ法などの成膜法によって吸水物質を含む膜の状態で無機絶縁膜110及び発光素子132上に設けられてもよい。
【0048】
本実施の形態の照明装置は、EL層を覆う筐体に有機樹脂を用いるため軽量化を実現することができる。また、筐体にEL層と同じ、又はそれ以上の屈折率の有機樹脂を用いるため、発光素子と筐体との界面におけるEL層から放射される光の反射を軽減することができる。また、素子劣化しにくい構造を有するので長寿命な照明装置を提供することができる。よって、本発明の一態様である照明装置は、高信頼性化を実現することができる。
【0049】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0050】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1において、補助配線の構成が異なる照明装置の例を図10に示す。従って、他は実施の形態1と同様に行うことができ、実施の形態1と同一部分又は同様な機能を有する部分、及び工程の繰り返しの説明は省略する。
【0051】
本実施の形態では、図10に示すように、補助配線124を第1筐体170に設けられた凹部(溝部)に配置する。
【0052】
第1筐体170の凹部は、型となる支持体を用いて凹凸を有する形状になるように有機樹脂を加工する際、同時に形成することができる。勿論、別工程においてエッチングにより第1筐体170に凹部を形成してもよい。
【0053】
凹部を有する第1筐体170上に無機絶縁膜102を形成し、第1筐体170の凹部を埋めるように無機絶縁膜102上に補助配線124及び端子136を形成する。
【0054】
補助配線124としては実施の形態1で示したような導電材料を用いることができる。補助配線124及び端子136はスパッタ法、蒸着法、塗布法などを用いて導電膜を形成し、該導電膜を選択的に除去することによって形成することができる。
【0055】
また、インクジェット法、印刷法などを用いて補助配線124及び端子136を選択的に形成してもよい。例えば、印刷法を用いて補助配線124及び端子136を形成する場合には、粒径が数nmから数十μmの導電体粒子を有機樹脂に溶解または分散させた導電性のペーストを選択的に印刷することによって設けることができる。導電体粒子としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等のいずれか一つ以上の金属粒子やハロゲン化銀の微粒子を用いることができる。また、導電性ペーストに含まれる有機樹脂は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤および被覆材として機能する有機樹脂から選ばれた一つまたは複数を用いることができる。代表的には、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の有機樹脂が挙げられる。また、導電層の形成の際は、導電性のペーストを押し出した後に焼成することが好ましい。また、はんだや鉛フリーのはんだを主成分とする微粒子を用いてもよい。なお、上記導電性のペーストは発光素子132と接続部材150とを電気的に接続する導電層120a、120bにも用いることができる。
【0056】
補助配線124及び端子136と接するように第1電極104を形成し、第1電極104上にEL層106、第2電極108を積層して発光素子132を形成する。なお、本実施の形態では、端子136は第1電極104を介して導電層120aと電気的に接続する例を示すが、端子136上の第1電極104を選択的に除去して端子136を露出させ、導電層120aと直接接する構成として電気的に接続させてもよい。
【0057】
補助配線124を第1筐体170に設けられた凹部に作ることによって、補助配線124の膜厚を厚くすることができるため、補助配線124の抵抗を低く保ちながら、補助配線124の幅をより狭くできる。また反射性の補助配線124を設けることで、発光素子132より放射された光を散乱することができるので、光取り出し効率を向上する効果が得られる。よって、本実施の形態の照明装置は、低消費電力化で、かつ光取り出し効率が高い照明装置とすることができる。
【0058】
本実施の形態の照明装置は、EL層を覆う筐体に有機樹脂を用いるため軽量化を実現することができる。また、筐体にEL層と同じ、又はそれ以上の屈折率の有機樹脂を用いるため、発光素子と筐体との界面におけるEL層から放射される光の反射を軽減することができる。また、素子劣化しにくい構造を有するので長寿命な照明装置を提供することができる。よって、本発明の一態様である照明装置は、高信頼性化を実現することができる。
【0059】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0060】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である照明装置に用いる発光素子の構造の一例について説明する。
【0061】
図7(A)に示す発光素子は、第1電極104と、第1電極104上にEL層106と、EL層106上に、第2電極108を有する。
【0062】
EL層106は、少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層が含まれていれば良い。そのほか、電子輸送性の高い物質を含む層、正孔輸送性の高い物質を含む層、電子注入性の高い物質を含む層、正孔注入性の高い物質を含む層、バイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)を含む層等を適宜組み合わせた積層構造を構成することができる。本実施の形態において、EL層106は、第1電極104側から、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、及び電子注入層705の順で積層されている。また、本実施の形態において、EL層106の屈折率は、1.7以上である。
【0063】
図7(A)に示す発光素子の作製方法について説明する。
【0064】
まず、第1電極104を形成する。第1電極104は、EL層から見て、光の取り出し方向に設けられるため、透光性を有する材料を用いて形成する。
【0065】
透光性を有する材料としては、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物(ITOともいう)、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、グラフェンなどを用いることができる。
【0066】
また、第1電極104として、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、又はチタン等の金属材料を用いることができる。または、それら金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等を用いてもよい。なお、金属材料(又はその窒化物)を用いる場合、透光性を有する程度に薄くすればよい。
【0067】
次に、第1電極104上に、EL層106を形成する。本実施の形態において、EL層106は、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705を有する。
【0068】
正孔注入層701は、正孔注入性の高い物質を含む層である。正孔注入性の高い物質としては、例えば、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等の金属酸化物を用いることができる。また、フタロシアニン(略称:HPc)、銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の化合物を用いることができる。
【0069】
また、低分子の有機化合物である4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)等の芳香族アミン化合物等を用いることができる。
【0070】
さらに、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)を用いることもできる。例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)などの高分子化合物が挙げられる。また、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)等の酸を添加した高分子化合物を用いることができる。
【0071】
特に、正孔注入層701として、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることが好ましい。正孔輸送性の高い物質にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることにより、第1電極104からの正孔注入性を良好にし、発光素子の駆動電圧を低減することができる。これらの複合材料は、正孔輸送性の高い物質とアクセプター物質とを共蒸着することにより形成することができる。該複合材料を用いて正孔注入層701を形成することにより、第1電極104からEL層106への正孔注入が容易となる。
【0072】
複合材料に用いる有機化合物としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる有機化合物としては、正孔輸送性の高い有機化合物であることが好ましい。具体的には、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。以下では、複合材料に用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0073】
複合材料に用いることのできる有機化合物としては、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB又はα−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)等の芳香族アミン化合物や、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼン等のカルバゾール誘導体を用いることができる。
【0074】
また、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0075】
さらに、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等の芳香族炭化水素化合物を用いることができる。
【0076】
また、電子受容体としては、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニル等の有機化合物や、遷移金属酸化物を挙げることができる。また、元素周期表における第4族乃至第8族に属する金属の酸化物を挙げることができる。具体的には、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化レニウムは電子受容性が高いため好ましい。中でも特に、酸化モリブデンは大気中でも安定であり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0077】
なお、上述したPVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPD等の高分子化合物と、上述した電子受容体を用いて複合材料を形成し、正孔注入層701に用いてもよい。
【0078】
正孔輸送層702は、正孔輸送性の高い物質を含む層である。正孔輸送性の高い物質としては、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)等の芳香族アミン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いてもよい。なお、正孔輸送性の高い物質を含む層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0079】
また、正孔輸送層702には、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体や、t−BuDNA、DNA、DPAnthのようなアントラセン誘導体を用いても良い。
【0080】
また、正孔輸送層702には、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0081】
発光層703は、発光性の有機化合物を含む層である。発光性の有機化合物としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物や燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。
【0082】
発光層703に用いることができる蛍光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、N,N’−ビス[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N,N’−ジフェニルスチルベン−4,4’−ジアミン(略称:YGA2S)、4−(9H−カルバゾール−9−イル)−4’−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)−4’−(9−フェニル−9H−カルバゾール−3−イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などが挙げられる。
【0083】
また、発光層703に用いることができる燐光性化合物としては、例えば、青色系の発光材料として、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1−ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2−[3’,5’−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト−N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:Ir(CFppy)(pic))、ビス[2−(4’,6’−ジフルオロフェニル)ピリジナト−N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))などが挙げられる。また、黄色系の発光材料として、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)(acac))などが挙げられる。また、橙色系の発光材料として、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)(acac))などが挙げられる。また、赤色系の発光材料として、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、(ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)等の有機金属錯体が挙げられる。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))等の希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0084】
なお、発光層703としては、上述した発光性の有機化合物(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させた構成としてもよい。ホスト材料としては、各種のものを用いることができ、発光性の物質よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。
【0085】
ホスト材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などの複素環化合物や、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンなどの縮合芳香族化合物、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、BSPBなどの芳香族アミン化合物などを用いることができる。
【0086】
また、ホスト材料は複数種用いることができる。例えば、結晶化を抑制するためにルブレン等の結晶化を抑制する物質をさらに添加してもよい。また、ゲスト材料へのエネルギー移動をより効率良く行うためにNPB、あるいはAlq等をさらに添加してもよい。
【0087】
ゲスト材料をホスト材料に分散させた構成とすることにより、発光層703の結晶化を抑制することができる。また、ゲスト材料の濃度が高いことによる濃度消光を抑制することができる。
【0088】
また、発光層703として高分子化合物を用いることができる。具体的には、青色系の発光材料として、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)(略称:PFO)、ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−(2,5−ジメトキシベンゼン−1,4−ジイル)](略称:PF−DMOP)、ポリ{(9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジイル)−co−[N,N’−ジ−(p−ブチルフェニル)−1,4−ジアミノベンゼン]}(略称:TAB−PFH)などが挙げられる。また、緑色系の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]などが挙げられる。また、橙色〜赤色系の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)などが挙げられる。
【0089】
なお、発光層を2層以上の積層構造としても良い。発光層を2層以上の積層構造とし、各々の発光層に用いる発光物質の種類を変えることにより様々な発光色を得ることができる。また、発光物質として発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、ブロードなスペクトルの発光や白色発光を得ることもできる。特に、高輝度が必要とされる照明用途には、発光層を積層させた構造が好適である。
【0090】
電子輸送層704は、電子輸送性の高い物質を含む層である。電子輸送性の高い物質としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)など、キノリン骨格又はベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)なども用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。また、電子輸送層は、単層のものだけでなく、上記物質からなる層が二層以上積層したものとしてもよい。
【0091】
電子注入層705は、電子注入性の高い物質を含む層である。電子注入層705には、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、リチウム酸化物等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、又はそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウムのような希土類金属化合物を用いることができる。また、上述した電子輸送層704を構成する物質を用いることもできる。
【0092】
なお、上述した正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入層705は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0093】
EL層は、図7(B)に示すように、第1電極104と第2電極108との間に複数積層されていても良い。この場合、積層された第1EL層800と第2EL層801との間には、電荷発生層803を設けることが好ましい。電荷発生層803は上述の複合材料で形成することができる。また、電荷発生層803は複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層構造でもよい。この場合、他の材料からなる層としては、電子供与性物質と電子輸送性の高い物質とを含む層や、透明導電膜からなる層などを用いることができる。このような構成を有する発光素子は、エネルギーの移動や消光などの問題が起こり難く、材料の選択の幅が広がることで高い発光効率と長い寿命とを併せ持つ発光素子とすることが容易である。また、一方のEL層で燐光発光、他方で蛍光発光を得ることも容易である。この構造は上述のEL層の構造と組み合わせて用いることができる。
【0094】
図7(B)に示すように積層されるEL層の間に電荷発生層803を配置すると、電流密度を低く保ったまま、高輝度でありながら長寿命な素子とできる。また、電極材料の抵抗による電圧降下を小さくできるので、大面積での均一発光が可能となる。
【0095】
また、EL層が2層積層された構成を有する積層型素子の場合において、第1EL層から得られる発光の発光色と第2EL層から得られる発光の発光色を補色の関係にすることによって、白色発光を外部に取り出すことができる。なお、第1EL層および第2EL層のそれぞれが補色の関係にある複数の発光層を有する構成としても、白色発光が得られる。補色の関係としては、青色と黄色、あるいは青緑色と赤色などが挙げられる。青色、黄色、青緑色、赤色に発光する物質としては、例えば、先に列挙した発光物質の中から適宜選択すればよい。
【0096】
以下に、複数のEL層が積層する構成を有する発光素子の一例を示す。まず第1EL層および第2EL層のそれぞれが補色の関係にある複数の発光層を有し、白色発光が得られる構成の一例を示す。
【0097】
例えば、第1EL層は、青色〜青緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第1発光層と、黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第2発光層とを有し、第2EL層は、青緑色〜緑色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第3発光層と、橙色〜赤色の波長領域にピークを有する発光スペクトルを示す第4発光層とを有するものとする。
【0098】
この場合、第1EL層からの発光は、第1発光層および第2発光層の両方からの発光を合わせたものであるので、青色〜青緑色の波長領域および黄色〜橙色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第1EL層は2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈する。
【0099】
また、第2EL層からの発光は、第3発光層および第4発光層の両方からの発光を合わせたものであるので、青緑色〜緑色の波長領域および橙色〜赤色の波長領域の両方にピークを有する発光スペクトルを示す。すなわち、第2EL層は、第1EL層とは異なる2波長型の白色または白色に近い色の発光を呈する。
【0100】
したがって、第1EL層からの発光および第2EL層からの発光を重ね合わせることにより、青色〜青緑色の波長領域、青緑色〜緑色の波長領域、黄色〜橙色の波長領域、橙色〜赤色の波長領域をカバーする白色発光を得ることができる。
【0101】
また、黄色〜橙色の波長領域(560nm以上580nm未満)は、視感度の高い波長領域であるため、発光スペクトルのピークが黄色〜橙色の波長領域にある発光層を有するEL層を発光層に適用することは有用である。例えば、発光スペクトルのピークが青色の波長領域にある発光層を有する第1EL層と、発光スペクトルのピークが黄色の波長領域にある発光層を有する第2EL層と、発光スペクトルのピークが赤色の波長領域にある発光層を有する第3EL層と、を積層させた構成を適用することができる。
【0102】
また、黄色〜橙色を呈するEL層を2層以上積層する構成としてもよい。黄色〜橙色を呈するEL層を2層以上積層することによって発光素子の電力効率をより向上させることができる。
【0103】
例えば、EL層を3層積層させた発光素子を構成する場合において、発光スペクトルのピークが青色の波長領域(400nm以上480nm未満)にある発光層を有する第1EL層に、発光スペクトルのピークが黄色〜橙色の波長領域にある発光層をそれぞれ有する第2、第3EL層を積層する構成を適用することができる。なお、第2EL層及び第3EL層からの発光スペクトルのピークの波長は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0104】
発光スペクトルのピークが黄色〜橙色の波長領域にあるEL層を用いることにより、視感度の高い波長領域を利用することができ、電力効率を高めることができる。これによって、発光素子全体の電力効率を高めることができる。このような構成は、例えば緑色の発光色を呈するEL層と赤色の発光色を呈するEL層とを積層して黄色〜橙色の発光を呈する発光素子を得る場合と比較して視感度の観点で有利であり、電力効率を高められる。また、黄色〜橙色の波長領域にある視感度の高い波長領域を利用したEL層が1層のみの場合と比較して、視感度の低い青色の波長領域の発光強度が相対的に小さくなるため、発光色は電球色(あるいは温白色)に近づき、かつ電力効率が向上する。
【0105】
つまり、上記において、黄色〜橙色の波長領域にピークを有し、かつ、ピークの波長が560nm以上580nm未満にある光と、青色の波長領域にピークを有する光と、を合成した光の色(つまり、発光素子から発光される光の色)とすることで、温白色や電球色のような自然な光の色を実現することができる。特に電球色を実現が容易である。
【0106】
黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、例えばピラジン誘導体を配位子とする有機金属錯体を用いることができる。また、発光性の物質(ゲスト材料)を他の物質(ホスト材料)に分散させることにより、発光層を構成することもできる。上記黄色〜橙色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、燐光性化合物を用いることができる。燐光性化合物を用いることにより、蛍光性化合物を用いた場合と比べて電力効率を3〜4倍高めることができる。上述したピラジン誘導体を配位子とする有機金属錯体は燐光性化合物であり、発光効率が高い上に、黄色〜橙色の波長領域の発光を得やすく、好適である。
【0107】
また、青色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、例えばピレンジアミン誘導体を用いることができる。上記青色の波長領域にピークを有する発光性の物質として、蛍光性化合物を用いることができる。蛍光性化合物を用いることにより、燐光性化合物を用いた場合と比べて長寿命の発光素子を得ることができる。上述したピレンジアミン誘導体は蛍光性化合物であり、極めて高い量子収率が得られる上に、長寿命であるため、好適である。
【0108】
EL層は、図7(C)に示すように、第1電極104と第2電極108との間に、正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、電子輸送層704、電子注入バッファー層706、電子リレー層707、及び第2電極108と接する複合材料層708を有していても良い。
【0109】
第2電極108と接する複合材料層708を設けることで、特にスパッタリング法を用いて第2電極108を形成する際に、EL層106が受けるダメージを低減することができるため、好ましい。複合材料層708は、前述の、正孔輸送性の高い有機化合物にアクセプター性物質を含有させた複合材料を用いることができる。
【0110】
さらに、電子注入バッファー層706を設けることで、複合材料層708と電子輸送層704との間の注入障壁を緩和することができるため、複合材料層708で生じた電子を電子輸送層704に容易に注入することができる。
【0111】
電子注入バッファー層706には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))等の電子注入性の高い物質を用いることが可能である。
【0112】
また、電子注入バッファー層706が、電子輸送性の高い物質とドナー性物質を含んで形成される場合には、電子輸送性の高い物質に対して質量比で、0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。なお、ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、およびこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウム等の酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウム等の炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、または希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセン等の有機化合物を用いることもできる。なお、電子輸送性の高い物質としては、先に説明した電子輸送層704の材料と同様の材料を用いて形成することができる。
【0113】
さらに、電子注入バッファー層706と複合材料層708との間に、電子リレー層707を形成することが好ましい。電子リレー層707は、必ずしも設ける必要は無いが、電子輸送性の高い電子リレー層707を設けることで、電子注入バッファー層706へ電子を速やかに送ることが可能となる。
【0114】
複合材料層708と電子注入バッファー層706との間に電子リレー層707が挟まれた構造は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質と、電子注入バッファー層706に含まれるドナー性物質とが相互作用を受けにくく、互いの機能を阻害しにくい構造である。したがって、駆動電圧の上昇を防ぐことができる。
【0115】
電子リレー層707は、電子輸送性の高い物質を含み、該電子輸送性の高い物質のLUMO準位は、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるように形成する。また、電子リレー層707がドナー性物質を含む場合には、当該ドナー性物質のドナー準位も複合材料層708におけるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層704に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位との間となるようにする。具体的なエネルギー準位の数値としては、電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質のLUMO準位は−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下とするとよい。
【0116】
電子リレー層707に含まれる電子輸送性の高い物質としてはフタロシアニン系の材料又は金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体を用いることが好ましい。
【0117】
電子リレー層707に含まれるフタロシアニン系材料としては、CuPc、SnPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobalt(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthalocyanine Iron)及びPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocyanine)のいずれかを用いることが好ましい。
【0118】
電子リレー層707に含まれる金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としては、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることが好ましい。金属−酸素の二重結合はアクセプター性(電子を受容しやすい性質)を有するため、電子の移動(授受)がより容易になる。また、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体は安定であると考えられる。したがって、金属−酸素の二重結合を有する金属錯体を用いることにより発光素子を低電圧でより安定に駆動することが可能になる。
【0119】
金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体としてはフタロシアニン系材料が好ましい。具体的には、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnOPc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)及びTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide complex)のいずれかは、分子構造的に金属−酸素の二重結合が他の分子に対して作用しやすく、アクセプター性が高いため好ましい。
【0120】
なお、上述したフタロシアニン系材料としては、フェノキシ基を有するものが好ましい。具体的にはPhO−VOPcのような、フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体が好ましい。フェノキシ基を有するフタロシアニン誘導体は、溶媒に可溶である。そのため、発光素子を形成する上で扱いやすいという利点を有する。また、溶媒に可溶であるため、成膜に用いる装置のメンテナンスが容易になるという利点を有する。
【0121】
電子リレー層707はさらにドナー性物質を含んでいても良い。ドナー性物質としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属及びこれらの化合物(アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩を含む)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む)、又は希土類金属の化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩を含む))の他、テトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物を用いることができる。電子リレー層707にこれらドナー性物質を含ませることによって、電子の移動が容易となり、発光素子をより低電圧で駆動することが可能になる。
【0122】
電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質としては上記した材料の他、複合材料層708に含まれるアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的なエネルギー準位としては、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質を用いることが好ましい。このような物質としては例えば、ペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などが挙げられる。なお、含窒素縮合芳香族化合物は、安定であるため、電子リレー層707を形成する為に用いる材料として、好ましい材料である。
【0123】
ペリレン誘導体の具体例としては、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)等が挙げられる。
【0124】
また、含窒素縮合芳香族化合物の具体例としては、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)等が挙げられる。
【0125】
その他にも、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル)−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステル等を用いることができる。
【0126】
なお、電子リレー層707にドナー性物質を含ませる場合、電子輸送性の高い物質とドナー性物質との共蒸着などの方法によって電子リレー層707を形成すれば良い。
【0127】
正孔注入層701、正孔輸送層702、発光層703、及び電子輸送層704は前述の材料を用いてそれぞれ形成すれば良い。
【0128】
そして、EL層106上に、第2電極108を形成する。
【0129】
第2電極108は、光の取り出し方向と反対側に設けられ、反射性を有する材料を用いて形成される。反射性を有する材料としては、アルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、又はパラジウム等の金属材料を用いることができる。そのほか、アルミニウムとチタンの合金、アルミニウムとニッケルの合金、アルミニウムとネオジムの合金などのアルミニウムを含む合金(アルミニウム合金)や銀と銅の合金などの銀を含む合金を用いることもできる。銀と銅の合金は、耐熱性が高いため好ましい。さらに、アルミニウム合金膜に接する金属膜、又は金属酸化物膜を積層することでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。該金属膜、金属酸化物膜の材料としては、チタン、酸化チタンなどが挙げられる。上述の材料は、地殻における存在量が多く安価であるため、発光素子の作製コストを低減することができ、好ましい。
【0130】
なお、本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0131】
(実施の形態4)
本実施の形態では、照明装置の応用例を示す。
【0132】
図8は、本発明の一態様である照明装置を室内の照明装置として用いた一例を示している。本発明の一態様である照明装置は、天井用照明装置8202としてのみならず、壁用照明装置8204としても用いることが可能である。また、当該照明装置は、卓上照明装置8206としても用いることが可能である。また本発明の一態様である照明装置は、面光源の光源を有するため、点光源の光源を用いた場合に比べ、光反射板等の部材を削減することができ、または熱の発生が白熱電球に比べて小さい点等、室内の照明装置として好ましい。
【0133】
次に、本発明の一態様である照明装置を、誘導灯等の照明装置として適用した例について図9に示す。
【0134】
本発明の一態様である照明装置を避難口誘導灯に適用した例について図9(A)に示す。
【0135】
図9(A)は、一例として、避難口誘導灯の外観について示した図である。避難口誘導灯8232は、照明装置と、蛍光部が設けられた蛍光板とを組み合わせて構成することができる。また、特定の色を発光する照明装置と、図面のような形状の透過部が設けられた遮光板とを組み合わせて構成することもできる。本発明の一態様である照明装置は、一定の輝度で点灯することができるため、常時点灯が求められる避難口誘導灯として好ましい。
【0136】
本発明の一態様である照明装置を屋外用照明に適用した例について図9(B)に示す。
【0137】
屋外用照明の一つとして例えば街灯が挙げられる。街灯は、例えば図9(B)に示すように、筐体8242と、照明部8244と、を有する構成とすることができる。本発明の一態様である照明装置は、照明部8244に複数配置して用いることができる。図9(B)に示すように、街灯は、例えば道路沿いに設置して照明部8244により周囲を照らすことができるため、道路を含め周囲の視認性を向上させることができる。
【0138】
なお、街灯に電源電圧を供給する場合には、例えば図9(B)に示すように、電柱8246の送電線8248を介して電源電圧を供給することができる。ただしこれに限定されず、例えば光電変換装置を筐体8242に設け、光電変換装置により得られた電圧を電源電圧として利用することもできる。
【0139】
また、本発明の一態様である照明装置を携帯用照明に適用した例について図9(C)及び図9(D)に示す。図9(C)は、装着型ライトの構成を示す図であり、図9(D)は手持ち型ライトの構成を示す図である。
【0140】
図9(C)に示す装着型ライトは、装着部8252と、照明部8254を有し、照明部8254は装着部8252に固定されている。本発明の一態様である照明装置は、照明部8254に用いることができる。図9(C)に示す装着型ライトは、装着部8252を頭部に装着し、照明部8254を発光させることができる。また、照明部8254として面光源の光源を用いることにより、周囲の視認性を向上させることができる。また、照明部8254は軽量であるため、頭部に装着して使用する際の負担を軽減することができる。
【0141】
なお、図9(C)に示す装着型ライトの構成に限定されず、例えば装着部8252をリング状にした平紐やゴム紐のベルトにし、該ベルトに照明部8254を固定し、該ベルトを頭部に直接巻きつける構成とすることもできる。
【0142】
図9(D)に示す手持ち型ライトは、筐体8262と、照明部8266と、スイッチ8264と、を有する。本発明の一態様である照明装置は、照明部8266に用いることができる。本発明の一態様である照明装置を照明部8266に用いることにより、照明部8266の厚さを薄くすることができ、小型にすることができるため、携帯しやすくすることができる。
【0143】
スイッチ8264は、照明部8266の発光または非発光を制御する機能を有する。また、スイッチ8264は、例えば発光時の照明部8266の輝度を調節する機能を有することもできる。
【0144】
図9(D)に示す手持ち型ライトは、スイッチ8264により照明部8266を発光させることにより、周囲を照らすことができるため、周囲の視認性を向上させることができる。また本発明の一態様である照明装置は、面光源の光源を有するため、点光源の光源を用いた場合に比べ、光反射板等の部材を削減することも可能である。
【0145】
なお、本実施の形態において、各々の図で述べた内容は、別の実施の形態で述べた内容に対して、適宜、組み合わせ、又は置き換えなどを自由に行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極に挟持されたEL層を含む発光素子と、
前記発光素子の光放射面及び上面を覆って、EL層の屈折率以上の屈折率を有する透光性の有機樹脂を用いた筐体とが設けられ、
前記第1電極と第2電極において前記発光素子の光放射面に設けられる少なくとも一方が透光性を有することを特徴とする照明装置。
【請求項2】
請求項1において、前記筐体の内壁及び前記発光素子の上面を覆う無機絶縁膜を有することを特徴とする照明装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、前記発光素子の光放射面を覆う前記筐体において、前記発光素子と反対側の表面には凹凸を有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
第1電極及び第2電極に挟持されたEL層を含む発光素子と、
前記発光素子の光放射面を覆う第1筐体と、
前記発光素子の上面を覆う第2筐体とを有し、
前記第1電極と第2電極において前記発光素子の光放射面に設けられる少なくとも一方が透光性を有し、
前記第1筐体及び前記第2筐体は前記EL層の屈折率以上の屈折率を有し、前記第1筐体及び前記第2筐体は前記発光素子を封止するように接着されることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項4において、前記第2筐体の内壁及び前記発光素子の上面を覆う無機絶縁膜を有することを特徴とする照明装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5において、前記第1筐体において、前記発光素子と反対側の表面には凹凸を有することを特徴とする照明装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記有機樹脂の屈折率は1.7以上1.8以下であることを特徴とする照明装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記EL層は中間層を介して複数以上設けられていることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−99466(P2012−99466A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218838(P2011−218838)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】