説明

熱アシスト磁気記録用光源ユニット及び該ユニットを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法

【課題】集積面とABSとが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッドにおいて、光源をABSから遠ざけた位置に設置し、しかも光源の不良品率及び設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる手段を提供する。
【解決手段】スライダのABSとは反対側の面に接着される接着面を有するユニット基板と、このユニット基板に設けられた光源と、このユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面上に設けられており、光源から放射されて接着面側の自身の端面に達する光の光路を含む伝播層と、この伝播層に設けられており、光源から放射された光の伝播を調整するためのレンズ部と、この伝播層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つに設けられた、スライダとの位置合わせのためのユニット用マーク部とを備えている熱アシスト磁気記録用の光源ユニットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う薄膜磁気ヘッドの構成要素である、レーザダイオード等の光源を備えた光源ユニットに関し、また、この光源ユニットを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、読み出し用の磁気抵抗(MR)効果素子と書き込み用の電磁コイル素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KV/kTで与えられる。ここで、Kは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKV/kTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKを大きくすることが考えられるが、このKの増加は、記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保持力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する第1の方法として、面内磁気記録方式から垂直磁気記録方式への移行が考えられる。垂直磁気記録媒体では記録層厚をより大きくすることが可能であり、結果として、Vを大きくして熱安定性を向上させることができる。第2の方法として、パターンドメディアの使用が考えられる。通常の磁気記録では、上述したように1つの記録ビットをN個の磁性微粒子によって構成して記録しているが、パターンドメディアを用いて、1つの記録ビットを体積NVの1つの領域とすることによって、熱安定性の指標がKNV/kTとなり、熱安定性が飛躍的に向上する。
【0006】
さらに、熱安定性の問題を解決する第3の方法として、Kの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0007】
この熱アシスト磁気記録方式における、光を記録媒体に照射するための光放射部として、特許文献1においては、基板上に形成された円錐体等の形状をした金属の散乱体と、その散乱体の周辺に形成された誘電体等の膜とを備えた近接場光プローブが開示されている。また、特許文献2においては、記録再生装置において固体イマージョン・レンズを用いたヘッドが開示されている。さらに、特許文献3には、近接場光プローブを構成する散乱体を、その照射される面が記録媒体に垂直となるように、垂直磁気記録用単磁極書き込みヘッドの主磁極に接して形成された構成が開示されている。さらに、非特許文献1には、水晶のスライダ上に形成されたU字状の近接場光プローブが開示されている。さらにまた、非特許文献2には、光がよく透過する回折格子を、光がほとんど透過しない回折格子を突き当てて結合したグレーティングが開示されている。
【0008】
以上に述べたように、実際、種々の光放射部が提案されているが、熱アシスト磁気記録を実現するにおいて非常に重要であるのが、ヘッドの浮上面(ABS)近傍に設けられたこの光放射部に、レーザ光を供給するための手段である。
【0009】
例えば、特許文献4及び5に開示された技術は、レーザ光の供給に光ファイバを用いている。ここで、特許文献4には、斜めに切断した光ファイバ等の端面に、ピンホールが形成された金属膜を設けた構成が開示されている。また、特許文献5には、光ファイバから出射したレーザ光を適切にレンズ光学系に向けるための可動ミラーを備えた光学式浮上ヘッドが開示されている。
【0010】
これに対して、特許文献6及び特許文献3に開示された技術は、レーザ光の供給にヘッド内に設けられた半導体レーザ素子を用いている。ここで、特許文献6には内蔵したレーザ素子部からの光を、媒体に対向した微小光学開口に照射して熱アシストを行う構成が開示されている。また、特許文献3には、レーザ素子をABS近傍又はヘッド素子の上方等の位置に設けて、上述した近接場光プローブを構成する散乱体にレーザ光を照射する構成が開示されている。
【0011】
ここで、レーザ光の供給手段としての、光ファイバと、ヘッド内に設けられた半導体レーザ素子とを比較する。光ファイバを用いる場合、半導体レーザのような複雑な構造をヘッド内部に形成する必要がなく、所望の強度を有する微細な近接場光を比較的容易に得られる。しかしながら、光ファイバをヘッドに固定する際には、この光ファイバを相当に曲げる必要が生じるが、特に、ガラス製ファイバにおいてはその許容曲げ半径が大きく、曲げ加工が困難となる。また、プラスティック製ファイバの場合、許容曲げ半径は有る程度小さくなるが、高損失であり伝播効率が低下してしまう。
【0012】
さらに、光ファイバを用いる場合、ヘッドから飛び出した光ファイバが揺れて、スライダの浮上特性に悪影響を及ぼしたり、磁気ディスク間にヘッドが配置されている場合、接触の危険性が生じたりする可能性がある。また、光ファイバ端と光源や導波路層等との結合部において非常に大きな損失が発生してしまう。これに対して、半導体レーザをヘッド内に設ける場合、このような問題は発生せず、浮上特性に大きな影響を与えることなく比較的低損失でレーザ光を供給することが可能となる。
【0013】
【特許文献1】特開2001−255254号公報
【特許文献2】特開平10−162444号公報
【特許文献3】特開2004−158067号公報
【特許文献4】特開2000−173093号公報
【特許文献5】特表2002−511176号公報
【特許文献6】特開2001−283404号公報
【非特許文献1】ShintaroMiyanishi他著 ”Near-field Assisted Magnetic Recording” IEEE TRANSACTIONS ONMAGNETICS、2005年、第41巻、第10号、p.2817−2821
【非特許文献2】庄野敬二、押木満雅著 「熱アシスト磁気記録の現状と課題」 日本応用磁気学会誌、2005年、第29巻、第1号、p.5−13
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、光の導入に半導体レーザ等の光源を用いる場合においても、光源の不良品率、及び設置位置の誤差によるヘッドの製造歩留まりの低下、ABSを有するスライダに光源を適切に設置することの困難性等が問題となってきた。
【0015】
一般に、半導体レーザのダイオードチップにおいては、出力、レーザ光の広がり角、寿命等の特性評価を、チップ単体で非破壊的に行うことは非常に困難である。従って、半導体レーザをヘッド内に設ける場合、半導体レーザをスライダ等に設置した後に特性評価を行い、良否を判定することになる。さらに、半導体レーザと他の光学素子、特に近接場光の発生箇所との微妙な位置関係を適切に調整すること自体が相当に困難であるにもかかわらず、一度設置された半導体レーザの位置は、変更がほとんど不可能である。従って、実際に、半導体レーザの設置位置の誤差、特に、他の光学素子との位置関係に関わる製造誤差を解消又は縮小することが非常に困難になっている。
【0016】
その結果、ヘッド全体の製造歩留まりに対して、磁気ヘッド部分の歩留まりと、半導体レーザ自体の歩留まりと、半導体レーザの設置位置に関する歩留まりの全てが積算的に影響し、ヘッド全体の歩留まりが著しく低下してしまう。
【0017】
次いで、光源のスライダへの設置の問題を考察する。例えば、特許文献3に開示されているように、散乱体に適切に光を照射するために、光源がヘッド端面近傍の記録媒体に非常に近い位置に設置されている場合、光源位置が記録媒体に接触する可能性を有しており、装置の信頼性という観点から非常に好ましくない。
【0018】
これに対して、例えば、非特許文献1に記載された技術によれば、半導体レーザ等の光源を媒体面から遠ざけた状態において光が入射可能となる。この場合、光ピックアップヘッドから収束された光が近接場光プローブに直接入射している。しかしながら、この技術は、近接場光プローブの集積された面と媒体対向面とが一致している構成を前提としており、集積面と媒体対向面(ABS)とが垂直である一般的な薄膜磁気ヘッドの構成とは全く異なり、親和性が良くない。すなわち、例えば、垂直通電型巨大磁気抵抗(CPP(Current Perpendicular to Plain)−GMR)効果素子や垂直磁気記録用の電磁コイル素子を備えた薄膜磁気ヘッドに適用することが非常に困難である。
【0019】
従って、本発明の目的は、集積面とABSとが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッドにおいて、光源をABSから遠ざけた位置に設置し、しかも光源の不良品率及び設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる手段を提供することにある。さらに、このような手段を用いた薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【0020】
また、本発明の他の目的は、記録媒体の加熱効率が高い薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明について説明する前に、明細書において使用される用語の定義を行う。基板の集積面に形成された磁気ヘッド素子の積層構造において、基準となる層よりも基板側にある構成要素を、基準となる層の「下」又は「下方」にあるとし、基準となる層よりも積層される方向側にある構成要素を、基準となる層の「上」又は「上方」にあるとする。
【0022】
本発明によれば、スライダのABSとは反対側の面に接着される接着面を有するユニット基板と、このユニット基板に設けられた光源と、このユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面上に設けられており、光源から放射されて接着面側の自身の端面に達する光の光路を含む伝播層と、この伝播層に設けられており、光源から放射された光の伝播を調整するためのレンズ部と、この伝播層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つに設けられた、スライダとの位置合わせのためのユニット用マーク部とを備えている熱アシスト磁気記録用の光源ユニットが提供される。
【0023】
この本発明による光源ユニットと、スライダとを組み合わせて薄膜磁気ヘッドを製造する場合、例えば、前もって光源ユニットの特性評価を行って、良品のみを薄膜磁気ヘッドの製造に使用すれば、ヘッド製造時のヘッド全体の歩留まりが、ほぼスライダの製造歩留まりとなり、光源ユニットの不良品率によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる。
【0024】
また、この本発明による光源ユニットは、スライダのABSとは反対側の面に接着されるので、常に、光源をABSから遠ざけた位置に設置することが可能となる。さらに、このような光源ユニットを用いることによって、スライダに適切な進行方向を有しており伝播が調整された光を入射させることが可能となる。すなわち、集積面とABSとが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッドにおいて、適切な大きさ及び方向を有する光を確実に供給することができる。その結果、磁気記録媒体の加熱効率が高い熱アシスト磁気記録を実現可能とする。
【0025】
さらに、光源ユニットとスライダとの位置合わせにおいて、トラック幅方向での位置合わせは比較的容易に行うことができるが、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせは、かなり困難となる。これに対して、本発明によるユニット用マーク部を備えた光源ユニットを用いれば、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせを確実かつ簡便に行うことができる。その結果、光源を設置する際の設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下が、回避される。
【0026】
この本発明による光源ユニットにおいて、ユニット用マーク部の位置が、伝播層の接着面側の端面において光が達する位置と、素子形成面に垂直な方向において一致することが好ましい。
【0027】
また、本発明による光源ユニットにおいて、伝播層に設けられており、光をこの伝播層の接着面側の端面に向けさせるための光路変更部をさらに備えていることが好ましい。この際、この光路変更部が、光がレンズ部を通過した後に達する光路上の位置に設けられて、ユニット基板の素子形成面に対して斜めに形成された、伝播層の層面を反射面としたプリズム部であることも好ましい。
【0028】
さらに、本発明による光源ユニットにおいて、レンズ部が、回折光学素子部であることが好ましい。
【0029】
さらにまた、本発明による光源ユニットにおいて、光源がレーザダイオードであり、このレーザダイオードが、ユニット基板の接着面とは反対側の面に形成されていて素子形成面に及んでいる堀込みに設けられており、このレーザダイオードの出光端がユニット基板に遮られずに露出しており、さらに、ユニット基板が導電性を有していて、このレーザダイオードの底面をなす電極が、ユニット基板に電気的に接続されていることも好ましい。
【0030】
さらにまた、本発明による光源ユニットにおいて、伝播層の接着面側の端面から放射される光が、接着面に垂直な方向を有しており、さらに伝播が調整された光、例えば、平行に揃えられた光、又は集束された光であることが好ましい。
【0031】
本発明によれば、また、切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、ユニット用マーク部を除いて上述した光源ユニットとなり、
スライダ加工バーのABSとなる面とは反対側の面に接着され、切断分離されることによって接着面となるバー接着面を有しており、
伝播層となる層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つに設けられた、スライダ加工バーとの位置合わせのためのユニット加工バー用マーク部を備えているユニット加工バーが提供される。
【0032】
この本発明によるユニット加工バーにおいて、ユニット加工バー用マーク部の位置が、伝播層の接着面側の端面において光が達する位置と、素子形成面に垂直な方向において一致することが好ましい。
【0033】
本発明によれば、さらにまた、接着面を有するユニット基板と、このユニット基板に設けられた光源と、このユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面上に設けられており、光源から放射されて接着面側の自身の端面に達する光の光路を含む伝播層と、レンズ部とを備えた熱アシスト磁気記録用の光源ユニットを形成し、
形成された光源ユニットにおいて、伝播層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つの面上であって、伝播層の接着面側の端面において光が達する位置と素子形成面に垂直な方向において一致する位置に、ユニット用マーク部を設け、
ABS及びABSに垂直な集積面を有するスライダ基板と、集積面に形成された磁気ヘッド素子と、光をABSとは反対側の自身の端面から受け入れてABS側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、磁気ヘッド素子及び導波路層を覆うように集積面上に形成された被覆層と、この被覆層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つの面上であって、導波路層の位置と集積面に垂直な方向において一致する位置に設けられたスライダ用マーク部とを備えたスライダを形成し、
ユニット用マーク部が設けられた光源ユニットにおける接着面と、スライダ用マーク部を備えたスライダにおけるABSとは反対側の面とを接面させ、次いで、伝播層の接着面側の端面から放射された光が導波路層を伝播してABS側のスライダ端面に達するように、このユニット用マーク部とこのスライダ用マーク部とを、集積面に垂直な方向において一致させた上で、光源ユニットとスライダとを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法が提供される。
【0034】
ここで、この本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法において、光源ユニットを形成した後であって、ユニット用マーク部を設ける前に、光源の検査を行い、その後、この検査によって良品と判定された光源ユニットのみを用いて製造工程を実施することが好ましい。
【0035】
このような本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、集積面とABSとが垂直である構成であって光源をABSから遠ざけた位置に設置した薄膜磁気ヘッドの製造において、例えば、光源ユニットの特性検査を光源ユニットとスライダとの固着前に行うことが可能となるので、光源の不良品率による歩留まりの低下を回避することができる。さらに、上述したようなユニット用マーク部及びスライダ用マーク部を位置合わせに用いるので、設置位置の誤差による歩留まりの低下を回避することができる。
【0036】
また、この本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法において、レーザ光を用いたマーキングによって、ユニット用マーク部を形成することが好ましい。さらに、光源ユニットの接着面及び/又はスライダのABSとは反対側の面に、UV硬化樹脂を予め塗布し、ユニット用マーク部とスライダ用マーク部とを一致させた上で、紫外線を照射して光源ユニットとスライダとを固着することが好ましい。
【0037】
本発明によれば、さらにまた、切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、接着面を有するユニット基板と、光を放射するレーザダイオードと、接着面に垂直な素子形成面に形成された光を伝播する伝播層と、レンズ部とを備えた熱アシスト磁気記録用の光源ユニットとなり、切断分離されることによって接着面となるバー接着面を有するユニット加工バーを形成し、
ユニット加工バーにおいて、伝播層となる層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つの面上であって、伝播層の接着面側の端面において光が達する位置と素子形成面に垂直な方向において一致する位置に、ユニット加工バー用マーク部を設け、
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、ABS及びABSに垂直な集積面を有するスライダ基板と、集積面に形成された磁気ヘッド素子と、光をABSとは反対側の自身の端面から受け入れてABS側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、磁気ヘッド素子及び導波路層を覆う被覆層と、被覆層内であって導波路層の位置と集積面に垂直な方向において一致する位置に設けられたスライダ加工バー用マーク部とを備えた熱アシスト磁気記録用のスライダとなるスライダ加工バーを形成し、
ユニット加工バー用マーク部が設けられたユニット加工バーのバー接着面と、スライダ加工バーのABSとなる面とは反対側の面とを接面させ、次いで、伝播層の接着面側の端面から放射された光が導波路層を伝播してABS側のスライダ端面に達するように、ユニット加工バー用マーク部とスライダ加工バー用マーク部とを、集積面に垂直な方向において一致させた上で、ユニット加工バーとスライダ加工バーとを固着し、その後、固着されたユニット加工バー及びスライダ加工バーを切断分離する薄膜磁気ヘッドの製造方法が提供される。
【0038】
この本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法において、ユニット加工バーを形成した後であって、ユニット加工バー用マーク部を設ける前に、光源の検査を行い、その後、この検査によって良品と判定されたユニット加工バーのみを用いて製造工程を実施することが好ましい。
【0039】
また、この本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法において、レーザ光を用いたマーキングによって、ユニット加工バー用マーク部を形成することが好ましい。さらに、ユニット加工バーのバー接着面及び/又はスライダ加工バーのABSとなる面とは反対側の面に、UV硬化樹脂を予め塗布し、ユニット加工バー用マーク部とスライダ加工バー用マーク部とを一致させた上で、紫外線を照射してユニット加工バーとスライダ加工バーとを固着することが好ましい。
【発明の効果】
【0040】
本発明による熱アシスト磁気記録用の光源ユニットによれば、集積面とABSとが垂直であるヘッド構成において、光源をABSから遠ざけた位置に設置し、しかも光源の不良品率及び設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる。また、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、集積面とABSとが垂直である構成であって光源をABSから遠ざけた位置に設置した薄膜磁気ヘッドの製造において、光源の不良品率及び設置位置の誤差による歩留まりの低下を回避することができる。
【0041】
また、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、記録媒体の加熱効率が高い薄膜磁気ヘッドが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
【0043】
図1は、本発明による光源ユニット、及びこの光源ユニットを備えた薄膜磁気ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【0044】
図1によれば、薄膜磁気ヘッド21は、データ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド素子32を備えたスライダ22と、熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード40を備えた光源ユニット23とが、それぞれの背面2201及び接着面2300を接面させて接着、固定された構成を有している。ここで、スライダ22の背面2201は、スライダ22のABS2200とは反対側の面である。
【0045】
スライダ22は、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面であるABS2200を有するスライダ基板220と、スライダ基板220のABS2200に垂直な集積面2202に形成された、データ信号を読み出すためのMR効果素子33及びデータ信号を書き込むための電磁コイル素子34から構成される磁気ヘッド素子32と、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の間を通して設けられている導波路層35と、磁気ディスクの記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部36と、MR効果素子33、電磁コイル素子34、導波路層35及び近接場光発生部36を覆うように集積面2202上に形成された被覆層38と、被覆層38の層面から露出した、MR効果素子33及び電磁コイル素子34に2つずつ接続されている合計4つの信号端子電極37と、光源ユニット23との位置合わせのために用いられるスライダ用マーク部11とを備えている。
【0046】
ここで、スライダ用マーク部11は、被覆層38のトラック幅方向に対向している両側面380及び381のうちの少なくとも1つ(図1の実施形態では側面380)の面上であって、導波路層35の位置と、集積面2202に垂直な方向において一致する位置に設けられている。なお、このスライダ用マーク部11は、位置合わせの際に、後述するユニット用マーク部10の近傍に位置することが望ましいため、側面380のスライダ端面222側の端部に設けられていることが好ましい。
【0047】
MR効果素子33、電磁コイル素子34、及び近接場光発生部36の一端は、ABS2200側のスライダ端面221に達している。ここで、スライダ端面221は、スライダ22のABS2200側の面であってABS2200以外の部分の面である。実際の書き込み又は読み出し動作時には、薄膜磁気ヘッド21が回転する磁気ディスク表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の端が磁気ディスクと微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0048】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23から導波路層35を通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36を照射し、この照射によって、近接場光発生部36のスライダ端面221に達した端から近接場光が発生する。この近接場光によって、後述するように、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0049】
導波路層35は、ともに放物線に沿って湾曲した、トラック幅方向において対向する2つの側面351を有しており、ABS2200とは反対側のスライダ端面222に達した端面352から入射した平行に揃えられたレーザ光39が、この両側面351での反射によって、スライダ端面221側の端面である集光面350に集光可能となっている。なお、スライダ端面222は、スライダ22のABS2200とは反対側の面であって背面2201以外の部分の面である。また、近接場光発生部36は、一方の端が導波路層35の集光面350に接しており、他方の端がスライダ端面221に達している微細な近接場光ギャップ部361と、互いの先端をこの近接場光ギャップ部361を介して対向させている2つの対向金属層360とを備えている。近接場光発生部36においては、近接場光ギャップ部361と、この微細な近接場光ギャップ部361を狭持した対向金属層360とが、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造を実現している。この「蝶ネクタイ型」構造においては、その中心部に発生する非常に強い電界の集中に起因して、近接場光が発生する。
【0050】
この近接場光の電界強度は、入射光に比べて桁違いに強く、この非常に強力な近接場光が、磁気ディスク表面の対向する局所部分を急速に加熱する。これにより、この局所部分の保磁力が、書き込み磁界による書き込みが可能な大きさまでに低下するので、高密度記録用の高保磁力の磁気ディスクを使用しても、電磁コイル素子34による書き込みが可能となる。なお、近接場光は、スライダ端面221から磁気ディスクの表面に向かって、上述した近接場光ギャップ部361のトラック幅方向の幅又は層厚程度までの領域に存在する。従って、10nm又はそれ以下の浮上量である現状において、近接場光は、十分に記録層部分に到達することができる。また、このように発生する近接場光の幅は、同じく上述した幅又は層厚と同程度であって、この近接場光の電界強度は、この幅又は層厚以上の領域では指数関数的に減衰するので、非常に局所的に磁気ディスクの記録層部分を加熱することができる。
【0051】
同じく図1によれば、光源ユニット23は、スライダ22の背面2201に接着される接着面2300を有するユニット基板230と、ユニット基板230の接着面2300とは反対側のユニット上面2301に形成されていて、接着面2300とは垂直な素子形成面2302に及んでいる堀込み2003と、堀込み2003に設置されており、出光端400がユニット基板230に遮られずに露出しているレーザダイオード40と、素子形成面2302上に設けられており、レーザダイオード40から放射されたレーザ光の光路を含み、このレーザ光を自身の接着面側の端面410まで伝播させるための伝播層41と、伝播層41に設けられており、レーザダイオード40から放射されたレーザ光の伝播を調整するためのレンズ部としての回折光学素子部42と、伝播層41に設けられており、素子形成面2302に対して斜めに形成された、伝播層41の層面を反射面430とし、レーザ光を端面410に向けさせるための光路変更部としてのプリズム部43と、レーザダイオード40用の駆動端子電極440及び441と、スライダ22との位置合わせのために用いられるユニット用マーク部10とを備えている。
【0052】
ここで、ユニット用マーク部10は、伝播層41のトラック幅方向に対向している両側面411及び412のうちの少なくとも1つであって、素子形成面2302側から見て、集積面2202側から見た際のスライダ用マーク部11のある側と同じ側となる面上(図1の実施形態では側面411上)であって、伝播層41の接着面2300側の端面410においてレーザ光が達する位置と、素子形成面2302に垂直な方向において一致する位置に設けられている。なお、このユニット用マーク部10は、位置合わせの際に、スライダ用マーク部11の近傍に位置することが望ましいため、側面411の端面410側の端部に設けられていることが好ましい。
【0053】
レーザダイオード40の出光端400から放射されたレーザ光は、伝播層41を伝播するにつれて、素子形成面2302に垂直な軸aを中心として広がっていくが、伝播層41に設けられており軸aを自身の軸とする回折光学素子部42を通過することによって、平行に揃った光、又は集束した光に変換される。このように伝播を調整されたレーザ光は、プリズム部43の反射面430に達して同面で全反射するによって、その進行方向を90°、すなわち、接着面2300(ABS2200)に垂直な方向に変更させられる。その後、レーザ光は、伝播層41の接着面2300側の端面410まで伝播し、この端面410から放射されて、導波路層35の端面352に、同層の層面に平行な方向に伝播するレーザ光として、入射する。
【0054】
以上に述べたように、薄膜磁気ヘッド21は、スライダ22と光源ユニット23とを合わせた構成になっていて、それぞれを形成した後に、組み合わせることにより製造することができる。従って、例えば、前もって光源ユニットの特性評価を行って、良品のみを薄膜磁気ヘッドの製造に使用すれば、ヘッド製造時のヘッド全体の製造歩留まりが、ほぼスライダの製造歩留まりとなり、光源としてのレーザダイオードの不良品率によるヘッド全体の製造歩留まりの低下を回避することができる。
【0055】
また、光源ユニット23は、スライダ22のABS2200とは反対側の背面2201に接着されるので、常に、レーザダイオード40をABS2200から遠ざけた位置に設置することが可能となる。
【0056】
さらに、このような光源ユニット23を用いることによって、上述したように、スライダ22の導波路層35の端面352に、同層の層面に平行な方向に伝播するレーザ光を入射させることができる。すなわち、集積面2202とABS2200とが垂直である構成を有する薄膜磁気ヘッド21において、適切な大きさ及び方向を有するレーザ光が、確実に供給可能となる。その結果、磁気ディスクの記録層の加熱効率が高い熱アシスト磁気記録を実現可能とする。
【0057】
なお、スライダ22及び光源ユニット23の大きさは任意であるが、例えば、スライダ22は、トラック幅方向の幅700μm×長さ(奥行き)850μm×厚み230μmの、いわゆるフェムトスライダであってもよい。この場合、光源ユニット23は、これよりも一回り小さい大きさ、例えば、トラック幅方向の幅700μm×長さ(奥行き)700μm×厚み180μmであってもよい。ここで、光源ユニット23のトラック幅方向の幅は、位置合わせをする際にスライダ用マーク部11とユニット用マーク部10とが同時に確認し易いように、スライダ22のトラック幅方向の幅と同じであることが好ましい。
【0058】
また、通常用いられるレーザダイオードの典型的な大きさは、例えば、幅250μm×長さ(奥行き)250μm×厚み65μm程度であり、例えば、この大きさの光源ユニット23のユニット上面2301に、この大きさのレーザダイオード40を設置できる堀込み2003を形成することが、十分に可能となっている。この際、この堀込み2003の深さを65μm、又はこれよりも数μm深くしておけば、レーザダイオード40の上面をユニット上面2301と同等か、又は低くすることができる。ただし、この堀込み2003の深さを、例えば30μm程度として、レーザダイオード40の上面を若干突出させてもよい。また、光源ユニット23の大きさを、レーザダイオード40が設置可能な範囲でより小さくすることによって、1枚の基板ウエハから、より多数の光源ユニット23を収得することが可能となる。
【0059】
次いで、スライダ22と光源ユニット23とを固着する際の位置合わせについて説明する。スライダ22と光源ユニット23との位置を合わせる際、最も重要なことは、光源ユニット23の伝播層41の端面410から放射された光が、スライダ22の導波路層35を伝播してABS2200側のスライダ端面221(近接場光発生部36)に十分かつ確実に達するようにすることである。
【0060】
ここで、導波路層35の端面352でのトラック幅方向の幅は、伝播層41の端面410に達したレーザ光のスポットの同方向の径に比べて、十分大きく設定可能である。その一方、導波路層35の端面352での厚さは、このスポットのこの厚さ方向の径に比べてそれほど大きくできない。例えば、伝播層41の端面410に達したレーザ光のスポットにおいて、トラック幅方向の径は、例えば5〜40μm程度であり、この径に直交する径は、例えば1〜6μm程度である。一方、このレーザ光を受け取る導波路層35の端面352でのトラック幅方向の幅は、例えば50〜500μm程度であるが、導波路層35の厚さは、例えば1〜6μm程度である。その結果、スライダ22と光源ユニット23とにおいて、トラック幅方向での位置合わせは比較的容易に行うことができるが、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせは、かなり困難となる。
【0061】
これに対して、図1に示す本発明の薄膜磁気ヘッドによれば、スライダ用マーク部11が、側面380上であって導波路層35の位置と集積面2202に垂直な方向において一致する位置に設けられており、さらに、ユニット用マーク部10が、側面411上であって伝播層41の端面410においてレーザ光が達する位置と素子形成面2302に垂直な方向において一致する位置に設けられている。
【0062】
ここで、このようなマーク部を用いて、スライダ22と光源ユニット23との位置合わせを行うことを考える。最初に、このようなスライダ用マーク部11を備えたスライダ22の背面2201と、このようなユニット用マーク部10を備えた光源ユニット23の接着面2300とを接面させ、次いで、スライダ用マーク部11とユニット用マーク部10とを、例えば光学顕微鏡等を備えた画像認識アライナーを用いて集積面2202(素子形成面2302)に垂直な方向において一致させた上で、スライダ22と光源ユニット23とを固着する。これにより、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせを確実かつ簡便に行うことができる。その結果、光源としてのレーザダイオード40を設置する際の設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下が回避される。
【0063】
なお、スライダ用マーク部11及びユニット用マーク部10の位置は、本実施形態での位置に限定されるものではなく、例えば、それぞれ、導波路層35の位置及びレーザ光の達する位置から所定の距離だけずれた位置に設けられていてもよい。また、スライダ22において、近接場光発生部36を設けずに、導波路層35の集光面350をスライダ端面221から露出させて、磁気ディスクに集光したレーザ光を照射して、磁気ディスクを加熱してもよい。
【0064】
図2(A)は、図1に示した薄膜磁気ヘッド21の要部の構成を概略的に示す、図2のA−A線断面図であり、図2(B)は、磁気ヘッド素子32及び近接場光発生部36のスライダ端面221における端の形状を示す平面図である。
【0065】
まず、薄膜磁気ヘッド21のスライダ22の構成要素について説明する。
【0066】
図2(A)のスライダ22において、220はアルティック(Al−TiC)等からなるスライダ基板であり、磁気ディスク表面に対向するABS2200を有している。このスライダ基板220のABS2200を底面とした際の一つの側面である集積面2202に、読み出し用のMR効果素子33と、書き込み用の電磁コイル素子34と、これらの素子を保護する被覆層38とが主に形成されている。さらに、被覆層38の側面380のスライダ端面222側の端部に、スライダ用マーク部11が形成されている。
【0067】
MR効果素子33は、MR積層体332と、この積層体を挟む位置に配置されている下部シールド層330及び上部シールド層334とを含む。下部シールド層330及び上部シールド層334は、例えば、厚さ0.5〜3μm程度のNiFe、CoFeNi、CoFe、FeN若しくはFeZrN等で構成することができる。
【0068】
MR積層体332は、面内通電型(CIP(Current In Plain))巨大磁気抵抗(GMR(Giant Magneto Resistive))多層膜、垂直通電型(CPP(Current Perpendicular to Plain))GMR多層膜、又はトンネル磁気抵抗(TMR(Tunnel Magneto Resistive))多層膜を含み、非常に高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受する。上下部シールド層334及び330は、MR積層体332が雑音となる外部磁界の影響を受けることを防止する。
【0069】
このMR積層体332がCIP-GMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330の各々とMR積層体332との間に絶縁用の上下部シールドギャップ層がそれぞれ設けられる。さらに、MR積層体332にセンス電流を供給して再生出力を取り出すためのMRリード導体層が形成される。一方、MR積層体332がCPP-GMR多層膜又はTMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330はそれぞれ上下部の電極層としても機能する。
【0070】
MR積層体332は、例えば、TMR効果多層膜を含む場合、IrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる厚さ5〜15nm程度の反強磁性層と、例えば強磁性材料であるCoFe等、又はRu等の非磁性金属層を挟んだ2層のCoFe等から構成されており反強磁性層によって磁化方向が固定されている磁化固定層と、例えばAl、AlCu等からなる厚さ0.5〜1nm程度の金属膜が真空装置内に導入された酸素によって又は自然酸化によって酸化された非磁性誘電材料からなるトンネルバリア層と、例えば強磁性材料である厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されておりトンネルバリア層を介して磁化固定層との間でトンネル交換結合をなす磁化自由層とが、順次積層された構造を有している。
【0071】
電磁コイル素子34は、垂直磁気記録用であり、主磁極層340、ギャップ層341、コイル層342、コイル絶縁層343、及び補助磁極層344を備えている。主磁極層340は、コイル層342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスクの記録層まで収束させながら導くための導磁路である。ここで、主磁極層340のスライダ端面221側の端部340aの層厚方向の長さ(厚さ)は、他の部分に比べて小さくなっている。この結果、高記録密度化に対応した微細な書き込み磁界が発生可能となる。
【0072】
ここで、主磁極層340は、例えば、ABS側の端部での全厚が約0.01μm〜約0.5μmであって、この端部以外での全厚が約0.5μm〜約3.0μmのNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。ギャップ層341は、例えば、厚さ約0.01μm〜約0.5μmのAl又はDLC等から構成されている。コイル層342は、例えば、厚さ約0.5μm〜約3μmのCu等から構成されている。コイル絶縁層343は、例えば、厚さ約0.1μm〜約5μmの熱硬化されたレジスト層等から構成されている。補助磁極層344は、例えば、厚さ約0.5μm〜約5μmのNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。
【0073】
導波路層35は、MR効果素子33と電磁コイル素子34との間に位置していて集積面2202と平行に伸長しているが、スライダ端面221の近傍において、スライダ端面221に向かってその厚さ方向においても先細りした形状を有している。導波路層35は、何れの部分においても、被覆層38を形成する材料よりも高い屈折率nを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された誘電材料から構成されている。例えば、被覆層38が、SiO(n=1.5)から形成されている場合、導波路層35は、Al(n=1.63)から形成されていてもよい。さらに、被覆層38が、Al(n=1.63)から形成されている場合、導波路層35は、Ta(n=2.16)、Nb(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO(n=2.3〜2.55)から形成されていてもよい。導波路層35をこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によるだけではなく、界面での全反射条件が整うことによって、レーザ光の伝播損失が小さくなり、近接場光の発生効率が向上する。
【0074】
スライダ用マーク部11は、上述したような材料で形成された被覆層38の側面380の端部に、例えば、金属膜等からなる、幅1〜5μm程度の微細なパターンであってもよい。また、ドライエッチング加工又は機械加工によるマーク又は傷であってもよい。さらには、レーザマーカ等を用いたレーザ光によるマーキングによって形成された、加工マーク又はレーザ痕であってもよい。
【0075】
図2(A)において、近接場光発生部36の近接場光ギャップ部361は、導波路層35と同じ誘電材料で形成されている。また、図2(A)には図示されておらず図1に示されている、近接場光発生部36の対向金属層360は、Au、Pd、Pt、Rh若しくはIr、若しくはこれらのうちのいくつかの組合せからなる合金、又はAl、Cu等が添加されたこれらの合金等の導電材料から形成されている。
【0076】
近接場光ギャップ部361のトラック幅方向の幅及び層厚は、入射されるレーザ光の波長よりも十分に小さく、それぞれ、約10nm〜約300nm及び約10nm〜約200nmである。また、近接場光ギャップ部361のスライダ端面221に垂直な方向の長さは、例えば、10〜500nm程度である。また、導波路層35の端面352でのトラック幅方向の幅は、例えば、50〜500μm程度である。
【0077】
図2(B)によれば、スライダ端面221上において、近接場光ギャップ部361の発生端361aは、電磁コイル素子34の主磁極層340の端340bに近接していて、端340bのリーディング側に位置している。また、発生端361aの形状は、トレーリング側に短辺を有する正台形となっている。
【0078】
ここで、近接場光は、入射されるレーザ光の波長及び導波路層35の形状にも依存するが、一般に、最も幅の狭いトレーリング側の短辺近傍において最も強い強度を有する。すなわち、磁気ディスクの記録層部分を加熱する熱アシスト作用において、このトレーリング側の短辺近傍が、主要な加熱作用部分となる。
【0079】
また、主磁極層340の端340bの形状は、トレーリング側に長辺を有する逆台形となっている。すなわち、主磁極層340の端部340aの側面には、ロータリーアクチュエータでの駆動により発生するスキュー角の影響によって隣接トラックに不要な書き込み等を及ぼさないように、ベベル角が付けられている。ベベル角の大きさは、例えば、15°程度である。実際に、書き込み磁界が主に発生するのは、トレーリング側の長辺近傍であり、この長辺の長さによって書き込みトラックの幅が決定される。
【0080】
以上に述べた、近接場光ギャップ部361の発生端361a、及び主磁極層340の端340bの配置及び形状によれば、主要な加熱作用部分である発生端361aのトレーリング側の短辺近傍が、書き込み部分である主磁極層の端340bに非常に近い位置にあるので、磁気ディスクの記録層部分に熱を加えた直後に、ほとんど間を置かず、書き込み磁界を印加することができる。これにより、熱アシストによる安定した書き込み動作が、確実に実行可能となる。
【0081】
なお、変更態様として、電磁コイル素子34は、長手磁気記録用であってもかまわない。この場合、主磁極層340及び補助磁極層344の代わりに、下部磁極層及び上部磁極層が設けられ、さらに、下部磁極層及び上部磁極層のスライダ端面221側の端部に挟持された書き込みギャップ層が設けられる。この書き込みギャップ層位置からの漏洩磁界によって書き込みが行われる。
【0082】
また、MR効果素子33と導波路層35及び近接場光発生部36との間に、素子間シールド層48が形成されているが、この素子間シールド層48と導波路層35との間に、さらに、バッキングコイル部が形成されていてもよい。バッキングコイル部は、電磁コイル素子34から発生してMR効果素子33の上下部電極層を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE)現象の抑制を図るものである。このバッキングコイル部は、長手磁気記録用のヘッドの場合、又は垂直磁気記録用のヘッドであっても不要の場合には省略される。また、コイル層342は、図2(A)において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。
【0083】
次いで、薄膜磁気ヘッド21の光源ユニット23の構成要素について説明する。
【0084】
図2(A)の光源ユニット23において、230はアルティック(Al−TiC)等からなるユニット基板であり、スライダ基板220の背面2201に接着している接着面2300を有している。この接着面2300を底面とした際の一つの側面である素子形成面2302上に、伝播層41が設けられており、この伝播層41に、回折光学素子部42と、プリズム部43とが設けられており、さらに、ユニット基板230に形成された堀込み2003に、レーザダイオード40が設置されている。さらに、伝播層41の側面411の端面410側の端部に、ユニット用マーク部10が形成されている。
【0085】
伝播層41は、レーザダイオード40の出光端400から回折光学素子部42及びプリズム部43を介して、自身の端面410に至るまでの光路を含んでいる。回折光学素子部42は、通常の曲面を有する光学凸レンズにおいて、レンズ厚み方向に関する波長の倍数分の材質を削除した上で、波長の2−n乗の高さを単位とした(n−1)個の層による階段構造によって近似したレンズパターンである。
【0086】
この回折光学素子部42の構成は、後に、他の図面を用いて詳細に説明するが、伝播層41を形成する材料よりも高い屈折率nを有しており、例えばスパッタリング法等を用いて形成された誘電材料から構成されている。例えば、伝播層41が、SiO(n=1.5)から形成されている場合、回折光学素子部42は、Al(n=1.63)から形成されていてもよい。さらに、伝播層41が、Al(n=1.63)から形成されている場合、回折光学素子部42は、Ta(n=2.16)、Nb(n=2.33)、TiO(n=2.3〜2.55)又はTiO(n=2.3〜2.55)から形成されていてもよい。回折光学素子部42が伝播層41よりも高い屈折率を有することによって、回折光学素子部42を通過するレーザ光が、界面での屈折に基づくレンズ作用によって平行な光又は集束した光に調整される。なお、伝播層41の厚さは、例えば、30〜60μm程度であり、回折光学素子部42の厚さは、後述するようにレーザ光の波長に依存するが、例えば0.5〜5μm程度である。
【0087】
プリズム部43は、素子形成面2302に対して斜めに形成された、伝播層41の層面を反射面430として、レーザ光の進行方向を変更させるものである。回折光学素子部42によって、例えば平行に揃えられたレーザ光が、このプリズム部43の反射面430に臨界角以上の入射角で入射すると、このレーザ光は、反射面430で全反射し、平行に揃えられたまま端面410の方向に進行方向を変更させられる。実際、伝播層41がSiO(n=1.5)又はAl(n=1.63)のいずれで形成されている場合でも、磁気ディスク装置内の雰囲気(屈折率nは約1)よりは大きな屈折率を有しているので、このような全反射が可能となる。例えば、回折光学素子部42によって平行に揃えられたレーザ光が素子形成面2302に垂直な方向に進行して来る場合、端面410側の辺が素子形成面2302に対して平行に持ち上がる形で45°に傾いて、平坦な反射面430が形成されることによって、全反射後のレーザ光を、接着面2300に垂直な方向を有する光とすることができる。
【0088】
ユニット用マーク部10は、上述したような材料で形成された伝播層41の側面411の端部に、例えば、レーザマーカ等を用いたレーザ光によるマーキングによって形成された、幅1〜5μm程度の加工マーク又はレーザ痕であってもよい。また、金属膜等からなる微細なパターンであってもよい。さらには、ドライエッチング加工又は機械加工によるマーク又は傷であってもよい。
【0089】
また、変更態様として、回折光学素子部42が、本実施形態のようにレーザダイオード40とプリズム部43とを結ぶ光路上にはなく、レーザ光がプリズム部43において全反射した後に達する光路上の位置に設けられてもよい。また、レーザダイオード40が、本実施形態のように堀込み2003に形成されているのではなく、その底面の電極がユニット基板230の素子形成面2302に電気的に接続された状態で固定されていてもよい。この場合、レーザ光は、レーザダイオードの出光端から伝播層41の端面410に向かって放射され、伝播層41に形成された回折光学素子部を通過して平行に揃えられることが好ましい。
【0090】
また、さらなる変更態様として、光路変更部が、本実施形態のようにプリズム部43ではなく、グレーチングカプラ(Grating Coupler)部であってもよい。さらにまた、レンズ部及び光路変更部として、グレーチングカプラ部のみが設けられていてもよい。以上に述べた変更態様においても、適切な方向を有する平行に揃えられたレーザ光を得ることが可能となる。
【0091】
図3(A)及び(B)は、レーザダイオード40の構成、及びレーザダイオード40のユニット基板230への搭載方法を示す概略図である。
【0092】
図3(A)によれば、レーザダイオード40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてもよく、例えば、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiO、Al等からなる反射膜50及び51が成膜されており、レーザ光が放射される出光端400には、一方の反射膜50における活性層40eの位置に開口が設けられている。
【0093】
放射されるレーザ光の波長λは、例えば600〜650nm程度である。ただし、スライダ22(図1)に近接場光発生部36を設ける場合、対向金属層360(図1)の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、対向金属層360としてAuを用いる場合、レーザ光の波長λは、600nm近傍が好ましい。
【0094】
レーザダイオード40の大きさは、上述したように、例えば、幅250μm×長さ(奥行き)250μm×厚み65μm程度である。ここで、レーザダイオード40の幅は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、レーザダイオード40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、レーザダイオード40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0095】
また、このレーザダイオード40の駆動においては、磁気ディスク装置内の電源が使用可能である。実際、磁気ディスク装置は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、レーザ発振動作には十分の電圧を有している。また、レーザダイオード40の消費電力も、例えば、数十mW程度であり、磁気ディスク装置内の電源で十分に賄うことができる。
【0096】
図3(B)によれば、レーザダイオード40は、ユニット基板230に形成された堀込み2003に搭載されており、一方の電極が、鉛フリー半田の1つであるAuSn合金52による半田付けによって、堀込み2003の底面と電気的に接続されながら固定されている。ここでユニット基板230は、例えばアルティックから形成されており導電性を有する。実際の固定においては、例えば、堀込み2003の底面に厚さ0.7〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、レーザダイオード40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等による200〜300℃程度までの加熱を行って固定してもよい。なお、堀込み2003の底面と接続される電極は、n電極40aでもp電極40jでもかまわない。
【0097】
ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニットを例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本発明によれば、この光源ユニットがスライダとは別に製造されるため、スライダ内の磁気ヘッド素子がこの高温の悪影響を受けずに済む。
【0098】
駆動端子電極440は、ユニット基板230のユニット上面2301上に、厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層を介して形成された、厚さ1〜3μm程度の、例えばスパッタリング法等を用いて形成されたAu、Cu等の層からなる。また、駆動端子電極441は、レーザダイオード40の半田付けされていないもう一方の電極上に、同じく、厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層を介して形成された、厚さ1〜3μm程度の、例えばスパッタリング法等を用いて形成されたAu、Cu等の層からなる。
【0099】
なお、レーザダイオード40及び駆動端子電極440及び441は、当然に、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、レーザダイオード40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。さらに、レーザダイオード40の電極の半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらにまた、レーザダイオード40の両方の電極をユニット基板から絶縁させて、駆動端子電極を形成してもよい。さらにまた、レーザダイオード40を、ユニット基板上に直接、半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
【0100】
図4(A)は、回折光学素子部42の原理を説明するための概略図であり、図4(B)は、回折光学素子部42を含む伝播層41の、光源ユニット23のユニット上面2301に平行な面による断面図である。
【0101】
最初に、回折光学素子部42の原理の説明を行う。まず、図4(A−1)に示された断面のように通常の曲面を有する光学凸レンズにおいて、図4(A−2)に示す断面のように、レンズ厚み方向に関して、レーザ光の波長の倍数分の材質を削除する。次いで、図4(A−3)に示す断面のように、例えば、レーザ光の1/4波長の高さを単位とした3つの層からなる階段構造によって、図4(A−2)に示す断面を離散的に近似する。なお、一般に、波長の2−n乗の高さを単位とした場合、階段構造の層数は、(n−1)個となる。この図4(A−3)に示したような断面を有する階段構造部が、回折光学素子部42であり、もとの図4(A−1)に示された断面を有するレンズと同等の機能を有することになる。
【0102】
図4(B)によれば、回折光学素子部42は、集積面に平行に積層された環状の第1、第2及び第3の回折格子層420、421及び422が適切に積層されて、図4(A−3)に相当する断面を有する積層体パターンとなっている。回折光学素子部42の厚さは、その中心部において、レーザ光の波長以下に小さくすることができる。すなわち、回折光学素子部42は、薄膜微細加工技術を用いて平面状に薄く作り込むことができるので、光源ユニットの伝播の調整用として非常に適している。なお、同図の回折光学素子部42は、上述したように、レーザ光の1/4波長の高さを単位とした場合であるが、当然、1/2波長、1/8波長等の高さを単位として回折光学素子部が形成されていてもよい。
【0103】
ここで、回折光学素子部42の形成方法について説明する。図4(B)において、ユニット基板230の素子形成面2302上に形成された、例えば、スパッタリング法等を用いて形成されたSiOからなる第1の伝播層41a上に、例えば、スパッタリング法等を用いて所定の厚さを有するTiO膜を形成する。次いで、このTiO膜上に、例えばNiFe等からなる所定のパターンを形成した後、このNiFe等のパターンをマスクとして、塩素系ガスを用いたRIE法によるエッチング処理を行い、第1の回折格子層420を形成する。次いで、この第1の回折格子層420の形成方法と同様の方法を用いて、第2の回折格子層421及び第3の回折格子層422を順次積み重ねて形成することによって、回折光学素子部42の形成を完了する。その後、形成された回折光学素子部42を覆うように、例えば、スパッタリング法等を用いてSiO膜を成膜し、その後、化学的機械的研磨(CMP)法等を用いてこの膜面を平坦化して第2の伝播層41bを形成することにより、伝播層41の形成を完了する。
【0104】
なお、回折光学素子部が、レーザ光のトラック幅方向の広がりを調整する第1の回折光学素子部と、レーザ光の接着面2300に垂直な方向(図の紙面に垂直な方向)の広がりを調整する第2の回折光学素子部との組み合わされた光学系であってもよい。
【0105】
図5(A)は、本発明に係るスライダ加工バー及びスライダ22の形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートであり、図5(B)は、本発明によるユニット加工バー及び光源ユニット23の形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【0106】
最初に、スライダ加工バー及びスライダ22の製造方法を説明する。図5(A)によれば、まず、スライダ用のウエハ基板の集積面に、MR効果素子33が形成される(ステップSS1)。次いで、近接場光発生部36が形成され(ステップSS2)、その後、導波路層35が形成される(ステップSS3)。さらに、この導波路層35の形成に合わせて、後にスライダ22と光源ユニット23とが接着される場合には、スライダ用マーク部11を形成し(ステップSS4)、後述するように、後にスライダ加工バーとユニット加工バーとが接着される場合には、スライダ加工バー用マーク部を形成する(ステップSS4′)。次いで、必要であれば、バッキングコイル部が形成される(ステップSS5)。
【0107】
次いで、データを書き込むための電磁コイル素子34が形成され(ステップSS6)、その後、被覆層38及び信号端子電極37が形成される(ステップSS7)。以上により、主に、磁気ヘッド素子32、導波路層35、近接場光発生部36及び信号端子電極37からなる磁気ヘッド素子パターンを、ウエハ基板上に形成するためのウエハ薄膜工程が終了する。
【0108】
次いで、ウエハ薄膜工程が終了したこのウエハ基板を切断して、スライダ加工バーを切り出す(ステップSS8)。次いで、このスライダ加工バーにMRハイト加工を施す(ステップSS9)。その後、ABS側のスライダ端面に保護膜を形成する(ステップSS10)。次いで、ABSにレールを形成する加工を行う(ステップSS11)。ここで、スライダ加工バーの製造工程が完了する。この後、薄膜磁気ヘッド21の製造においてスライダ加工バーとユニット加工バーとを固着する場合は、この製造されたスライダ加工バーを用いる。
【0109】
これに対して、この後の薄膜磁気ヘッド21の製造にスライダ22を用いる場合は、この加工バーを切断して個々のスライダ22への分離を行う(ステップSS12)。以上により、機械加工工程が終了して、スライダ22の製造工程が完了する。
【0110】
次いで、ユニット加工バー及び光源ユニット23の製造方法を説明する。図5(B)によれば、まず、光源ユニット用のウエハ基板の素子形成面に、第1の伝播層41aが形成される(ステップSU1)。次いで、回折光学素子部42が形成され(ステップSU2)、その後、第2の伝播層41bが形成される(ステップSU3)。以上により、回折光学素子部42をウエハ基板上に形成するためのウエハ薄膜工程が終了する。
【0111】
次いで、ウエハ薄膜工程が終了したこのウエハ基板を切断して、ユニット加工バーを切り出す(ステップSU4)。その後、伝播層41となる層を研削してプリズム部43を形成する(ステップSU5)。次いで、ユニット加工バーに堀込み2003を形成し(ステップSU6)、形成された堀込み2003にレーザダイオード40を搭載する(ステップSU7)。その後、駆動端子電極440及び441を形成する(ステップSU8)。なお、プリズム部43の形成工程(ステップSU5)と、堀込み2003の形成工程(ステップSU6)との順序が逆になってもかまわない。ただし、レーザダイオード40の搭載(ステップSU7)は、プリズム部43の形成工程(ステップSU5)が終了した後であることが好ましい。
【0112】
ここで、薄膜磁気ヘッド21の製造においてスライダ加工バーとユニット加工バーとを固着する場合は、レーザダイオード40の特性検査を行い(ステップSU10′)、この検査において良品と判定されたユニット加工バーを、以後の製造工程に用いる。その後、全てのレーザダイオードが良品と判定されたユニット加工バーに、ユニット加工バー用マーク部を形成する(ステップSU11′)。ここで、ユニット加工バーの製造工程が完了する。
【0113】
これに対して、この後の薄膜磁気ヘッド21の製造に光源ユニット23を用いる場合は、このユニット加工バーを切断して個々の光源ユニット23への分離を行う(ステップSU9)。その後、レーザダイオード40の特性検査を行い(ステップSU10)、この検査において、搭載されたレーザダイオードが良品と判定された光源ユニット23だけを、以後の製造工程に用いる。次いで、レーザダイオードが良品と判定された光源ユニット23に、ユニット用マーク部10を形成する(ステップSU11)。以上により、機械加工工程が終了して、光源ユニット23の製造工程が完了する。
【0114】
なお、本実施形態では、ユニット加工バー用マーク部及びユニット用マーク部10はともに、特性検査後に形成されているが、特性検査前、又は特性検査中に形成されてもよい。
【0115】
図6(A)は、本発明による、スライダ22及び光源ユニット23を固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートであり、図6(B)は、本発明による、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【0116】
最初に、スライダ22及び光源ユニット23を固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法を説明する。図6(A)によれば、まず、スライダ22の背面2201及び/又は光源ユニット23の接着面2300に、UV(紫外線)硬化樹脂を予め塗布する(ステップS1)。次いで、スライダ用マーク部11とユニット用マーク部10とを、集積面2202(素子形成面2302)に垂直な方向において一致させることにより位置合わせを行う(ステップS2)。最後に、UV(紫外線)を照射してスライダ22及び光源ユニット23を固着することによって(ステップS3)、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0117】
次いで、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法を説明する。図6(B)によれば、まず、スライダ加工バー及び/又はユニット加工バーの接着される面に、UV硬化樹脂を予め塗布する(ステップS1′)。次いで、スライダ加工バー用マーク部とユニット加工バー用マーク部とを、集積面2202(素子形成面2302)に垂直な方向において一致させることにより位置合わせを行う(ステップS2′)。その後、UV(紫外線)を照射して、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する(ステップS3′)。最後に、この固着した加工バーを切断分離することによって(ステップS4′)、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0118】
以下、上述したフローチャートに示された薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態について、さらに、図を用いて詳細に説明する。
【0119】
図7(A)〜(C)は、本発明によるスライダの形成方法における、ウエハ薄膜工程の一実施形態を示す断面図及び平面図である。なお、図7(A)、(B−1)及び(C)における断面は、素子形成面及びABSに垂直な面であり、また、図7(B−2)は、集積面側から見た平面図となっている。
【0120】
以下、これらの図を用いてスライダのウエハ薄膜工程を説明する。まず、図7(A)に示すように、例えばアルティック(Al−TiC)等から形成されたウエハ基板60上に、例えばスパッタリング法によって、例えばAl等からなる厚さ0.05〜10μm程度の下地被覆層61を積層する。次いで、下地被覆層61上に、例えばフレームめっき法を含むパターンめっき法、又はスパッタリング法等によって、例えばNiFe、NiFeCo、CoFe、FeN又はFeZrN等からなる厚さ0.5〜3μm程度の下部シールド層330を形成する。
【0121】
次いで、例えばスパッタリング法、フォトリソグラフィ法及びイオンビームエッチング法等を用いて、MR積層体332を形成する。次いで、下部シールド層330と同様にして、上部シールド層334を形成する。以上の工程によって、MR効果素子33の形成が終了する。次いで、例えばスパッタリング法によって、上部シールド層334上に、例えばAl等からなる厚さ0.1〜2.0μm程度の第1の被覆層62を形成する。さらに、例えばスパッタリング法、又はフレームめっき法等によって、第1の被覆層62上に、例えばNiFe、NiFeCo、CoFe、FeN又はFeZrN等からなる厚さ0.3〜4μm程度の素子間シールド層48を形成する。
【0122】
次いで、図7(B−1)に示すように、素子間シールド層48上に、例えばスパッタリング法によって、例えばAl等からなる厚さ0.3〜1.0μm程度の第2の被覆層63を形成する。さらに、この第2の被覆層63上に、近接場光発生部36及び導波路層35を形成する。導波路層35の先細りした部分及び近接場光発生部36の形成方法については、別の図面を用いて詳細に説明する。
【0123】
ここで、図7(B−2)に示すように、導波路層35の形成とともに又は直前若しくは直後に、被覆層38の側面380のスライダ端面222側の端部となる位置に、例えば、Ti、Ta、Au、NiFe等の金属膜の微細パターン、又は導波路層35に用いられている材料と同じ材料の微細パターンからなるスライダ用マーク部11を形成する。この際、スライダ用マーク部11及び導波路層35の端面352が、集積面2202(図7(B−1))から等しい距離に位置するように設定される。なお、このスライダ用マーク部の厚さは、位置合わせ精度を確保するために、少なくとも導波路層35の端面352での厚さと同等か又はそれ以下とすることが好ましい。
【0124】
ただし、後述するように、薄膜磁気ヘッド21の製造にスライダ加工バーを用いる場合は、スライダ用マーク部11に代えて、スライダ加工バーの被覆層となる層のトラック幅方向に対向する両側面のうちの少なくとも1つの位置となるように、スライダ加工バー用マーク部(図9(D)の74)が設けられてもよい。また、このスライダ加工バー用マーク部として、スライダ用マーク部11が代わりに用いられてもよい。
【0125】
次いで、近接場光発生部36、導波路層35及びスライダ用マーク部11を覆うように、例えばスパッタリング法によって、例えばAl等からなる厚さ0.3〜5μm程度の第3の被覆層64を形成する。その後、例えば化学的機械的研磨(CMP)法等によって、第3の被覆層64を平坦化する。
【0126】
次いで、図7(C)に示すように、平坦化された第3の被覆層64上に、例えばスパッタリング法、又はフレームめっき法等によって、例えばNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等からなる厚さ0.01〜0.5μm程度の主磁極主要層3400と、同じく例えばスパッタリング法、又はフレームめっき法等によって、例えばNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等からなる厚さ0.5〜3μm程度の主磁極補助層3401とを形成する。これにより、主磁極層340が形成される。
【0127】
次いで、主磁極層340上に、例えばスパッタリング法、CVD法等によって、例えばAl又はDLC等からなる厚さ0.01〜0.5μm程度のギャップ層341を形成し、次いで、ギャップ層341上に、例えば熱硬化されたレジスト層等からなる厚さ0.1〜5μm程度のコイル下地絶縁層65を形成し、このコイル下地絶縁層65上に、例えばフレームめっき法等によって、例えばCu等からなる厚さ0.5〜3μm程度のコイル層342を形成する。
【0128】
さらに、このコイル層342を覆うように、例えば熱硬化されたレジスト層等からなる厚さ0.1〜5μm程度のコイル絶縁層343を形成する。さらに、コイル絶縁層343を覆うように、例えばNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等からなる厚さ約0.5〜5μm程度の補助磁極層344を形成する。以上の工程によって、電磁コイル素子34の形成が終了する。最後に、MR効果素子33及び電磁コイル素子34を覆うように、例えばAl等からなる絶縁膜を成膜した後、この絶縁膜を例えばCMP法等を用いて平坦化することによって第4の被覆層66を形成し、さらにMR効果素子33及び電磁コイル素子34のための信号端子電極を形成して、ウエハ薄膜工程が終了する。
【0129】
図8は、導波路層35の先細りした部分及び近接場光発生部36の形成方法の一実施形態を説明する平面図及び断面図である。なお、図8(A2)〜(E2)は、それぞれ、図8(A1)〜(E1)のa−a線〜e−e線断面を表している。
【0130】
図8(A1)及び(A2)において、最初に、Al等の下地1000の上に、近接場光発生部となる、下地よりも屈折率の高いTiO等の誘電体膜1001を成膜し、その上に、リフトオフ用のレジストパターン1002を形成する。次いで、図8(B1)及び(B2)に示すように、イオンミリング法等を用いて、レジストパターン1002の直下を除いて、誘電体膜1001の不要部分を除去する。その後、図8(C1)及び(C2)に示すように、スパッタリング法等を用いて、対向金属層となるAu等の導電膜1003を成膜し、次いで、レジストパターン1002及びその上の導電膜を、いわゆるリフトオフによって除去する。
【0131】
その後、図8(D1)及び(D2)に示すように、レジストパターン1004が形成された後、イオンミリング法等を用いて、レジストパターン1004の直下を除いて、誘電体膜1001及び導電膜1003の不要部分を除去する。次いで、図8(E1)及び(E2)に示すように、スパッタリング法等を用いて、誘電体膜1001と同じ誘電材料からなるバックフィル誘電体膜1005を形成する。その後、レジストパターン1004及びその上の誘電体膜を、いわゆるリフトオフによって除去する。なお、さらに、後のスライダ加工バーのMRハイト工程において、図8(E2)のf−f線よりも左側の部分が研削されることにより、図8(E2)のf−f線がABS側のスライダ端面となって、f−f線よりも右側がスライダの近接場光発生部となる。
【0132】
以上の工程を繰り返すことによって、図8(F)に示すように、近接場光発生部36の近接場光ギャップ部361、バックフィル誘電体膜1005からなる導波路部1006、さらにその後形成された導波路部1007と、複数個の順次大きくなる導波路部を、連続して形成することができる。これらの導波路部は、導波路層35の先細りした端部を構成することになる。さらに、下地1000と同じく、導波路層を構成する材料よりも屈折率の小さい、例えば、Al等の材料からなるカバー誘電体膜1008を形成する。ここで近接場光ギャップ部361の厚さは、例えば、約30nmであり、導波路部1006の厚さは、例えば、約300nmであり、導波路部1007の厚さは、例えば、約1μmである。さらに、下地1000及びカバー誘電体膜1008の厚さは、例えば、約60nmである。
【0133】
図9(A)〜(E)は、本発明によるスライダ加工バー及びスライダ22の形成方法の一実施形態を示す概略図である。
【0134】
図9(A)に示すように、スライダのウエハ薄膜工程が完了したウエハ基板であるスライダウエハ70の素子形成面上には、多数の磁気ヘッド素子パターン71が、マトリクス状に並んで形成されている。磁気ヘッド素子パターン71は、形成されたスライダ22において、主にMR効果素子33、電磁コイル素子34、導波路層35、近接場光発生部36及び信号端子電極37となる部分である。
【0135】
最初に、このスライダウエハ70を、樹脂等を用いて切断分離用治具に接着して切断し、図9(B)に示すように、複数の磁気ヘッド素子パターン71が一列に並んだスライダ加工バー72を切り出す。次いで、このスライダ加工バー72を、樹脂等を用いて研磨用治具に接着し、このスライダ加工バー72のABS側となる端面720に、MR効果素子のMR高さ(MRハイト)、すなわちスライダ端面221に垂直な方向での長さを決定するMRハイト加工としての研磨を施す。このMRハイト加工は、図9(C)に示すように、最終的に、磁気ヘッド素子32及び近接場光発生部36がスライダ端面221に露出して、MR効果素子33のMR積層体332が所定のMRハイトになり、しかも近接場光発生部36の近接場光ギャップ部361が所定の高さ(スライダ端面221に垂直な方向での長さ)になるまで行われる。
【0136】
次いで、スライダ端面221に、例えば、磁気ヘッド素子の端を保護するためのダイヤモンドライクカーボン(DLC)等からなる保護膜を形成する。その後、保護膜が形成されたスライダ加工バー72を、樹脂等を用いてレール形成用治具に接着し、フォトリソグラフィ法、及びイオンミリング法若しくは反応性イオンエッチング(RIE)法等を用いてABSにレールを形成する加工を行い、図9(D)に示すように、スライダ加工バー73を完成させる。なお、薄膜磁気ヘッド21の製造にこのスライダ加工バー73を用いる場合、スライダ加工バー73には、スライダ加工バー用マーク部74が現れている。
【0137】
これに対して、この後の薄膜磁気ヘッド21の製造にスライダ22を用いる場合は、このスライダ加工バー73を、樹脂等を用いて切断用治具に接着し、溝入れ処理を行った後、切断処理を行い、スライダ加工バー73を切断分離し、図9(E)に示すように、スライダ22を完成させる。この場合、スライダ22には、スライダ用マーク部11が現れている。
【0138】
図10(A)〜(I)は、本発明によるユニット加工バー及び光源ユニット23の形成方法の一実施形態を示す概略図である。
【0139】
図10(A)によれば、最初に、ユニット基板となる基板ウエハ上に、伝播層41となる誘電体膜80と回折光学素子部42とを形成し、次いで、この誘電体膜80及び回折光学素子部42が形成されたユニットウエハ81を、樹脂等を用いて切断分離用治具に接着して切断し、図10(B)に示すように、複数の回折光学素子部42が一列に並んだユニット加工バー82を切り出す。なお、回折光学素子部42の形成される間隔は、スライダウエハ70(図9(A))に形成される磁気ヘッド素子パターン71の間隔と同じであって、ユニット加工バー82のトラック幅方向の幅は、スライダ加工バー72の同方向の幅と同じに設定される。
【0140】
次いで、このユニット加工バー82の誘電体膜80のエッジを、砥石等の研磨手段に所定の角度で押し当てて研磨する。この際の研磨面が後に反射面430となる。反射面430の傾き角は、研磨の際の押し当てる所定の角度によって制御される。次いで、図10(C)に示すように、ユニット加工バー82において光源ユニット23のユニット上面2301となる面に、フォトオリソグラフィ法、及びイオンミリング法若しくはRIE法等を用いて、堀込み2003を形成する。
【0141】
次いで、同じく図10(C)に示すように、形成された堀込み2003に、上述したようにAuSn合金による半田付け等を用いて、レーザダイオード40を搭載する。その後、図10(D)に示すように、レーザダイオード40用の駆動端子電極440及び441を形成し、ユニット加工バー83を形成する。
【0142】
ここで、薄膜磁気ヘッド21の製造においてスライダ加工バー73(図9(D))とユニット加工バー83とを固着する場合は、図10(E)に示すように、ユニット加工バー83に搭載されたレーザダイオード40の特性検査を行う。特性検査は、検査用プローブ84を、駆動端子電極440及び441に接触させて実際にレーザダイオード40を駆動させ、フォトダイオード等の受光素子85を用いて、ABS側のスライダ端面221となる誘電体膜80の端面86から放射されるレーザ光を検出することによって行う。
【0143】
検査項目としては、端面86での放射強度(レーザダイオード40の発光強度)、端面86での放射位置、及びレーザダイオード40の寿命等が挙げられる。この特性検査において、搭載された全てのレーザダイオードが良品と判定されたユニット加工バーだけを、以後の製造工程に用いる。ただし、1つの変更態様として、不良品と判定されたレーザダイオードの位置をすべて特定しておいて、スライダ加工バーとユニット加工バーとを固着して切断分離した後、特定したレーザダイオードを備えた薄膜磁気ヘッドを不良品として除去してもよい。
【0144】
次いで、図10(F)に示すように、薄膜磁気ヘッド21の製造にこのユニット加工バー83を用いる場合、レーザマーカ等を用いて、ユニット加工バー83のトラック幅方向に対向していて誘電体膜80の端面86に垂直な両側面87のうちの少なくとも1つの面上であって、端面86においてレーザ光が達する位置と素子形成面2302に垂直な方向において一致する位置に、ユニット加工バー用マーク部88を設け、ユニット加工バー83を完成させる。なお、このユニット加工バー用マーク部88は、位置合わせの容易さの観点から、素子形成面2302側から見て、集積面2202側から見た際のスライダ加工バー用マーク部74(図9(D))のある側と同じ側となる側面87上に設けられる。
【0145】
これに対して、この後の薄膜磁気ヘッド21の製造に光源ユニット23を用いる場合は、ユニット加工バー83を、樹脂等を用いて切断用治具に接着し、溝入れ処理を行った後、切断処理を行い、図10(G)に示すように、光源ユニット23に分離する。その後、図10(H)に示すように、光源ユニット23に搭載されたレーザダイオード40の特性検査を行う。特性検査は、検査用プローブ84を、駆動端子電極440及び441に接触させて実際にレーザダイオード40を駆動させ、フォトダイオード等の受光素子85を用いて、伝播層41の接着面側の端面410から放射されるレーザ光を検出することによって行う。ここで、この検査において、搭載されたレーザダイオードが良品と判定された光源ユニット23だけを、以後の製造工程に用いる。
【0146】
次いで、図10(I)に示すように、レーザマーカ等を用いて、光源ユニット23のトラック幅方向に対向している伝播層41の側面411上であって、端面410においてレーザ光が達する位置と素子形成面2302に垂直な方向において一致する位置に、ユニット用マーク部10を設けて、光源ユニット23を完成させる。
【0147】
図11(A)〜(C)は、本発明による、スライダ22及び光源ユニット23を固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【0148】
図11(A)によれば、まず、形成されたスライダ22の背面2201及び形成された光源ユニット23の接着面2300の両方又はいずれか一方に、UV硬化型エポキシ接着剤等のUV硬化樹脂を予め塗布する。次いで、図11(B)に示すように、背面2201及び接着面2300を接面させ、例えば光学顕微鏡等を備えた画像認識アライナ−を用いて、伝播層41のABS側の端面410から放射された光が導波路層35を伝播してABS側のスライダ端面221(近接場光発生部36)に達するように、スライダ用マーク部11とユニット用マーク部10とを、集積面2202(素子形成面2302)に垂直な方向において一致させることにより位置合わせを行う。最後に、図11(C)に示すように、背面2201及び接着面2300を接面させた部分に紫外線を照射して、スライダ22及び光源ユニット23を固着することによって、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0149】
上述したように、導波路層35の端面352でのトラック幅方向の幅は、伝播層41の端面410に達したレーザ光のスポットにおける同方向の径に比べて、十分大きく設定可能である。その一方、導波路層35の端面352での厚さは、このスポットのこの厚さ方向の径に比べて、それほど大きくすることはできない。その結果、スライダ22と光源ユニット23とにおいて、トラック幅方向での位置合わせは比較的容易に行うことができるが、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせは、かなり困難となる。これに対して、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、スライダ用マーク部11とユニット用マーク部10とを用いることによって、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせを確実かつ簡便に行うことができる。その結果、光源としてのレーザダイオード40を設置する際の設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下が、回避される。
【0150】
図12(A)〜(D)は、本発明による、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッド21の製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【0151】
図12(A)によれば、まず、形成されたスライダ加工バー73のABSとなる面とは反対側の面7301と、形成されたユニット加工バー83の、切断分離後に接着面2300となるバー接着面8301との両方又はいずれか一方に、UV硬化型エポキシ接着剤等のUV硬化樹脂を予め塗布する。次いで、図12(B)に示すように、これらの面を接面させ、例えば光学顕微鏡等を備えた画像認識アライナ−を用いて、伝播層41のABS側の端面410から放射された光が導波路層35を伝播してABS側のスライダ端面221(近接場光発生部36)に達するように、スライダ加工バー用マーク部74とユニット加工バー用マーク部88とを、集積面2202(素子形成面2302)に垂直な方向において一致させることにより位置合わせを行う。
【0152】
その後、図12(C)に示すように、接面させた部分にUV(紫外線)を照射して、スライダ加工バー73及びユニット加工バー83を固着する。最後に、図12(D)に示すように、固着された加工バーを、樹脂等を用いて切断用治具に接着し、溝入れ処理を行った後、切断分離処理を行い、薄膜磁気ヘッド21の製造工程が完了する。
【0153】
上述したスライダ22と光源ユニット23との位置関係と同じく、スライダ加工バー73及びユニット加工バー83においても、トラック幅方向での位置合わせは比較的容易に行うことができるが、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせは、かなり困難となる。これに対して、本発明による薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、スライダ加工バー用マーク部74とユニット加工バー用マーク部88とを用いることによって、トラック幅方向とは垂直な方向での位置合わせを確実かつ簡便に行うことができる。その結果、光源としてのレーザダイオード40を設置する際の設置位置の誤差によるヘッド全体の製造歩留まりの低下が、回避される。
【0154】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明による光源ユニット、及びこの光源ユニットを備えた薄膜磁気ヘッドの一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した薄膜磁気ヘッドの要部の構成を概略的に示す、図2のA−A線断面図、及び磁気ヘッド素子及び近接場光発生部のスライダ端面における端の形状を示す平面図である。
【図3】レーザダイオードの構成、及びレーザダイオードのユニット基板への搭載方法を示す概略図である。
【図4】回折光学素子部の原理を説明するための概略図、及び回折光学素子部を含む伝播層の、光源ユニットのユニット上面に平行な面による断面図である。
【図5】本発明に係るスライダ加工バー及びスライダの形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャート、並びに本発明によるユニット加工バー及び光源ユニットの形成方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【図6】本発明による、スライダ及び光源ユニットを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャート、並びに本発明による、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を概略的に示すフローチャートである。
【図7】本発明によるスライダの形成方法における、ウエハ薄膜工程の一実施形態を示す断面図及び平面図である。
【図8】導波路層の先細りした部分及び近接場光発生部の形成方法の一実施形態を説明する平面図及び断面図である。
【図9】本発明によるスライダ加工バー及びスライダの形成方法の一実施形態を示す概略図である。
【図10】本発明によるユニット加工バー及び光源ユニットの形成方法の一実施形態を示す概略図である。
【図11】本発明による、スライダ及び光源ユニットを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【図12】本発明による、スライダ加工バー及びユニット加工バーを固着する薄膜磁気ヘッドの製造方法の一実施形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0156】
10 ユニット用マーク部
11 スライダ用マーク部
21 薄膜磁気ヘッド
22 スライダ
220 スライダ基板
2200 ABS
2201 背面
2202 集積面
221、222 スライダ端面
23 光源ユニット
230 ユニット基板
2300 接着面
2301 ユニット上面
2302 素子形成面
32 磁気ヘッド素子
33 MR効果素子
330 下部シールド層
332 MR積層体
334 上部シールド層
34 電磁コイル素子
340 主磁極層
340a 端部
341 ギャップ層
342 コイル層
343 コイル絶縁層
344 補助磁極層
35 導波路層
350 集光面
351 側面
352 端面
36 近接場光発生部
360 対向金属層
361 近接場光ギャップ部
37 信号端子電極
38、62、63、64、66 被覆層
380、381 側面
39 レーザ光
40 レーザダイオード
400 出光端
41 伝播層
410 端面
411、412 側面
42 回折光学素子部
43 プリズム部
430 反射面
440、441 駆動端子電極
48 素子間シールド層
50、51 反射膜
52 AuSn合金
60 ウエハ基板
61 下地被覆層
65 コイル下地絶縁層
70 スライダウエハ
71 磁気ヘッド素子パターン
72、73 スライダ加工バー
720 端面
74 スライダ加工バー用マーク部
80 誘電体膜
81 ユニットウエハ
82、83 ユニット加工バー
8301 バー接着面
84 検査用プローブ
85 受光素子
86 端面
87 側面
88 ユニット加工バー用マーク部
1000 下地
1001 誘電体膜
1002、1004 レジストパターン
1003 導電膜
1005 バックフィル誘電体膜
1006、1007 導波路部
1008 カバー誘電体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダの浮上面とは反対側の面に接着される接着面を有するユニット基板と、該ユニット基板に設けられた光源と、該ユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面上に設けられており、該光源から放射されて該接着面側の自身の端面に達する光の光路を含む伝播層と、該伝播層に設けられており、該光源から放射された光の伝播を調整するためのレンズ部と、該伝播層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つに設けられた、該スライダとの位置合わせのためのユニット用マーク部とを備えていることを特徴とする熱アシスト磁気記録用の光源ユニット。
【請求項2】
前記ユニット用マーク部の位置が、前記伝播層の接着面側の端面において前記光が達する位置と、前記素子形成面に垂直な方向において一致することを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記伝播層に設けられており、前記光を該伝播層の接着面側の端面に向けさせるための光路変更部をさらに備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記光路変更部が、前記光が前記レンズ部を通過した後に達する光路上の位置に設けられて、前記ユニット基板の素子形成面に対して斜めに形成された、前記伝播層の層面を反射面としたプリズム部であることを特徴とする請求項3に記載の光源ユニット。
【請求項5】
前記レンズ部が、回折光学素子部であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項6】
前記光源がレーザダイオードであり、該レーザダイオードが、前記ユニット基板の接着面とは反対側の面に形成されていて素子形成面に及んでいる堀込みに設けられており、該レーザダイオードの出光端が該ユニット基板に遮られずに露出しており、さらに、該ユニット基板が導電性を有していて、該レーザダイオードの底面をなす電極が、該ユニット基板に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項7】
前記伝播層の接着面側の端面から放射される光が、接着面に垂直な方向を有する平行に揃えられた光であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項8】
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、前記ユニット用マーク部を除いて請求項1から7のいずれか1項に記載の光源ユニットとなり、
スライダ加工バーの浮上面となる面とは反対側の面に接着され、切断分離されることによって前記接着面となるバー接着面を有しており、
前記伝播層となる層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つに設けられた、該スライダ加工バーとの位置合わせのためのユニット加工バー用マーク部を備えていることを特徴とするユニット加工バー。
【請求項9】
前記ユニット加工バー用マーク部の位置が、前記伝播層の接着面側の端面において前記光が達する位置と、前記素子形成面に垂直な方向において一致することを特徴とする請求項8に記載のユニット加工バー。
【請求項10】
接着面を有するユニット基板と、該ユニット基板に設けられた光源と、該ユニット基板の接着面とは垂直な素子形成面上に設けられており、該光源から放射されて該接着面側の自身の端面に達する光の光路を含む伝播層と、レンズ部とを備えた熱アシスト磁気記録用の光源ユニットを形成し、
形成された前記光源ユニットにおいて、前記伝播層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つの面上であって、該伝播層の接着面側の端面において前記光が達する位置と前記素子形成面に垂直な方向において一致する位置に、ユニット用マーク部を設け、
浮上面及び該浮上面に垂直な集積面を有するスライダ基板と、該集積面に形成された磁気ヘッド素子と、前記光を該浮上面とは反対側の自身の端面から受け入れて該浮上面側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、該磁気ヘッド素子及び該導波路層を覆うように該集積面上に形成された被覆層と、該被覆層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つの面上であって、該導波路層の位置と該集積面に垂直な方向において一致する位置に設けられたスライダ用マーク部とを備えたスライダを形成し、
前記ユニット用マーク部が設けられた前記光源ユニットの接着面と、前記スライダの浮上面とは反対側の面とを接面させ、次いで、前記伝播層の接着面側の端面から放射された光が前記導波路層を伝播して前記浮上面側のスライダ端面に達するように、該ユニット用マーク部と前記スライダ用マーク部とを、前記集積面に垂直な方向において一致させた上で、該光源ユニットと該スライダとを固着することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記光源ユニットを形成した後であって、前記ユニット用マーク部を設ける前に、光源の検査を行い、その後、該検査によって良品と判定された光源ユニットのみを用いて製造工程を実施することを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
レーザ光を用いたマーキングによって、前記ユニット用マーク部を形成することを特徴とする請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記光源ユニットの接着面及び/又は前記スライダの浮上面とは反対側の面に、UV硬化樹脂を予め塗布し、前記ユニット用マーク部と前記スライダ用マーク部とを一致させた上で、紫外線を照射して該光源ユニットと該スライダとを固着することを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、接着面を有するユニット基板と、光を放射するレーザダイオードと、該接着面に垂直な素子形成面に形成された該光を伝播する伝播層と、レンズ部とを備えた熱アシスト磁気記録用の光源ユニットとなり、切断分離されることによって該接着面となるバー接着面を有するユニット加工バーを形成し、
前記ユニット加工バーにおいて、前記伝播層となる層のトラック幅方向に対向している両側面のうちの少なくとも1つの面上であって、該伝播層の接着面側の端面において前記光が達する位置と前記素子形成面に垂直な方向において一致する位置に、ユニット加工バー用マーク部を設け、
切断分離されることによって、分離後の個々のチップが、浮上面及び該浮上面に垂直な集積面を有するスライダ基板と、該集積面に形成された磁気ヘッド素子と、前記光を該浮上面とは反対側の自身の端面から受け入れて該浮上面側のスライダ端面に向けて伝播させるための導波路層と、該磁気ヘッド素子及び該導波路層を覆う被覆層と、該被覆層内であって該導波路層の位置と該集積面に垂直な方向において一致する位置に設けられたスライダ加工バー用マーク部とを備えた熱アシスト磁気記録用のスライダとなるスライダ加工バーを形成し、
前記ユニット加工バー用マーク部が設けられた前記ユニット加工バーのバー接着面と、前記スライダ加工バーの浮上面となる面とは反対側の面とを接面させ、次いで、前記伝播層の接着面側の端面から放射された光が前記導波路層を伝播して前記浮上面側のスライダ端面に達するように、前記ユニット加工バー用マーク部と前記スライダ加工バー用マーク部とを、前記集積面に垂直な方向において一致させた上で、該ユニット加工バーと該スライダ加工バーとを固着し、その後、固着された該ユニット加工バー及び該スライダ加工バーを切断分離することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
【請求項15】
前記ユニット加工バーを形成した後であって、前記ユニット加工バー用マーク部を設ける前に、光源の検査を行い、その後、該検査によって良品と判定されたユニット加工バーのみを用いて製造工程を実施することを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
レーザ光を用いたマーキングによって、前記ユニット加工バー用マーク部を形成することを特徴とする請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ユニット加工バーのバー接着面及び/又は前記スライダ加工バーの浮上面となる面とは反対側の面に、UV硬化樹脂を予め塗布し、前記ユニット加工バー用マーク部と前記スライダ加工バー用マーク部とを一致させた上で、紫外線を照射して該ユニット加工バーと該スライダ加工バーとを固着することを特徴とする請求項14から16のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2007−335028(P2007−335028A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167415(P2006−167415)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】