熱アシスト記録用磁気ディスク、その製造方法、および磁気記録方法
【課題】本発明は、(1)従来の熱アシスト記録方式やディスクリート方式(DTM等)によっても解決できないクロストークの問題、(2)従来の埋め込み型DTM等のもつ表面平坦性の問題、(3)DTMに熱アシスト方式を適用したときの、材料の熱膨張率差の問題を解決し、(4)特別な媒体構造を必要とせず、表面の平坦性が良好な、経済的・機能的に実現性の高い磁気ディスクを提供する。
【解決手段】イオン注入によるDTMは表面平坦性に優れ、且つイオン注入した部分(非記録領域)のキュリー温度(Tcn)と、イオン注入していない部分(記録領域)のキュリー温度(Tcr)の間の温度で熱アシスト記録することにより、クロストークを解消することができる。
【解決手段】イオン注入によるDTMは表面平坦性に優れ、且つイオン注入した部分(非記録領域)のキュリー温度(Tcn)と、イオン注入していない部分(記録領域)のキュリー温度(Tcr)の間の温度で熱アシスト記録することにより、クロストークを解消することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録装置における磁気記録時に熱アシスト方式を利用する磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報化の進展に伴い、記録装置の高容量化と機器の小型軽量化が求められている。この要求に応えるため、磁気記録装置、特に磁気ディスク記録装置(例えば、Hard Disk Drive (HDD))は、高記録密度化が追求されており、近年は、1Tb/in2以上の面記録密度達成を成し遂げるべく研究開発が行われている。
【0003】
磁気ディスク記録装置の高記録密度化は、記録ビットの大きさを微細化することで実現されてきた。しかし記録ビットを小さくするにつれて、磁化が熱エネルギーによって不安定となる熱揺らぎ現象が顕著に現れ、記録情報が消失することが問題となる。記録された信号が実用的な期間保持されるためには、情報記録媒体における情報の最小単位である記録ビットを構成する磁性粒子の体積を増やすか、またはその保磁力を大きくすることが要求される。微細化を進めれば、磁性粒子の体積を増やすことには限界があるため、磁性粒子の保磁力を増やす必要が出てくる。
しかし、磁性体の保磁力をむやみに大きくすると、磁気ヘッドにより情報書き込み時に発生する磁界では十分に記録媒体が磁化されず飽和記録されないために、オーバーライト特性が悪化するという磁気記録媒体として致命的な問題が生じる。
この問題を解決するために、磁気記録時の対策として熱アシスト記録方式が提案されている。
【0004】
熱アシスト記録方式は、情報書き込み時に記録媒体である磁性体を局所的に加熱して保磁力を低下させ、磁気ヘッドの磁界で磁性体を磁化し記録する方法である。記録媒体である磁性体を加熱する方法として、レーザー光照射により記録媒体を加熱する熱アシスト記録磁気ヘッドが開示されている(例えば特許文献2)。熱アシスト記録方式により1トラックあたりの(円周方向の)ビット記録密度(線記録密度:BPI)を上げて面記録密度を増やすことができる。
【0005】
一方、ディスクリートトラックメディアは、隣接する記録用の磁気記録領域間に磁気的に分離する非記録領域を配置させることにより、隣接磁性記録部同士の干渉を防ぐものである。これにより半径方向のトラック密度(TPI)を高めることができる。また、磁気記録領域と非記録領域をトラック状に並列配置しているディスクリートトラックメディア(DTM)に類する媒体として、磁気記録領域と非記録領域を隣接しながらさらに記録ビット間にも非記録領域を設けて人工的に規則正しく並べたビットパターンドメディア(BPM)がある(例えば特許文献1)。
磁気ディスクの面記録密度は、上記BPIとTPIの積で決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−226428号公報
【特許文献2】特開2002−117502号公報
【特許文献3】特開2006−260620号公報
【特許文献4】特開2007−134004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁気ディスクの高密度化の要求は年々厳しくなっており、そのためますます磁性体の保磁力を高くする必要が生じている。しかし、これまでよりも保磁力が高く磁気異方性が大きな材料を磁気記録部に使用した場合、上述のヘッドの記録磁界の限界の問題が生じる。そこで記録時だけ熱により記録媒体の保磁力を低下させる熱アシスト磁気記録方式が必要となる。熱アシスト記録においては、元々の磁性媒体の保磁力が高いため、高温下で保磁力を低くしての磁気記録が必要となるが、この熱の分布によって磁性体が不安定な状態となり、情報を書き込む際に、隣接した記録したくないトラックの情報を書き換えてしまう、いわゆるクロストーク現象が発生し、TPIを上げられないという問題が生じる。
【0008】
これを解決するため、磁気記録部の下層に熱伝道率の高い材料を配置する方法が提案されている(例えば特許文献3)。しかし、この方式では隣接トラックとの境界領域への物理的な対策がないためクロストークを防止することは限界があり、高密度化には対応できない。また磁気ディスク構造が複雑化して製造コストが増大するという欠点もある。
【0009】
これに対して、ディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)等の磁気ディスク(以下「DTM等」という)は、トラック間の非記録部に非磁性体を挟むことによって、トラック間の干渉によるノイズを抑えるものであり、トラック間の境界領域に対する物理的な対策と言えるが、非記録部に非磁性体を埋め込むためには複雑な製造工程を経る必要があり、経済性の観点から問題があった。
【0010】
つまり、本発明により解決すべき課題は、(1)従来の熱アシスト記録方式やディスクリート方式(DTM等)によっても解決できないクロストークの問題を解決し、高磁気記録密度化を達成すること、および(2)特別な媒体構造を必要とせず、また製造方法も従来と比べて簡便でかつ表面の平坦性が良好な、経済的・機能的に実現性の高い磁気ディスクを提供することである。
従来のディスクリート方式の適用、例えば一般的な磁気記録層の一部を物理的に除去した後に非磁性物質を埋め込むタイプのディスクリート方法では、平坦化に難があるためヘッドの浮上量を十分に下げられず、無理に下げると耐久性が劣化する(ヘッドクラッシュが起こりやすくなる)だけでなく、製造工程が複雑化しコストが大幅に増大する。
【0011】
また、従来の溝を掘って非磁性物質を埋め込んだディスクリートトラック媒体では、磁性物質と非磁性物質が異なることから、物質の熱膨張率の違いが生じる。このため、熱アシスト記録の際に高温になることで非磁性物質と磁性物質で段差が生じる懸念がある。この段差が生じることは浮上ヘッドを用いるHDDでは信頼性を著しく劣化させるため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、イオン注入によるDTM等であれば、非磁性材料の埋め込み工程等が不要であり、複雑な工程を経ることなくDTM等を得ることができるため、イオン注入によるDTM等と熱アシスト記録を併用することにより、経済性や機能性の観点からも高密度磁気記録が実現できると考え、検討を行った。
その結果、本発明者らは、イオン注入によるDTM等において、イオン注入した部分の材料の強磁性が、イオン注入していない部分の材料の強磁性に比べ劣化し、保磁力0となるキュリー温度(Tc)がイオン注入していない部分のキュリー温度より低くなる現象を利用し、この両キュリー温度の間の温度で磁気記録することにより、クロストークを効果的に防止できることを見出し、本発明をなすに至った。そして本発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0013】
(1)基板の少なくとも一方の表面上に、磁気情報の記録再生を行うための磁気記録領域と、前記磁気記録領域を磁気的に分離するための非記録領域とが、基板の面内方向において規則的に配置された磁気記録層を有し、
前記非記録領域にB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうち1種または2種以上の元素を含み、
熱アシスト記録方式により記録することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0014】
(2)前記非記録領域に含まれるB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素が、イオン照射によって注入された元素であることを特徴とする(1)に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0015】
(3)基板の少なくとも一方の表面上に、磁気情報の記録再生を行うための磁気記録領域と、前記磁気記録領域を磁気的に分離するための非記録領域とが、基板の面内方向において規則的に配置された磁気記録層を有し、
前記非記録領域にB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうち1種または2種以上の元素を含み、
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)と、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)とが、
Tcn < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスク。
もちろん、この磁気ディスクも熱アシスト記録方式により記録することを特徴としてもよい。
また、前記非記録領域に含まれるB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素が、イオン照射によって注入された元素であってもよい。
【0016】
(4)前記磁気記録領域の磁気異方性定数が5×106以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいじれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0017】
(5)前記磁気記録層にFePt系合金層を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0018】
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクであって、基板上に少なくとも、磁気異方性定数が5×106以上の磁気記録層を成膜後、当該磁気記録層の上方において所定の部分をマスキングし、イオン照射することにより、照射されたイオンを含む領域とイオンを含まない領域を形成するパターン形成工程を有することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクの製造方法。
【0019】
(7)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法であって、
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)、および
磁気記録時の温度である磁気記録温度(Tr)が、
Tcn ≦ Tr < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クロストークのない磁気記録が可能となるだけでなく、イオン注入法によるディスクリート・トラック・メディア(DTM)の製造方法を適用できるため、経済性でも、機能性でも優れた熱アシスト記録用磁気ディスクを得ることができる。よって、磁気ディスクの高記録密度化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ハードディスク装置(HDD)とディスクリートトラックメディアの概念図を示す図。図1(a)は、HDD装置の概略図である。図1(b)は、ディスクリートトラックメディアの概念図である。
【図2】磁気記録領域(イオン注入していない領域)と非記録領域(イオン注入をしている領域)の、保磁力と温度の関係を示す概念図。
【図3】磁気記録領域(イオン注入していない領域)と非記録領域(イオン注入をしている領域)の保磁力と温度の関係から、本発明を説明する概念図。
【図4】本発明に係る磁気ディスクの構造を示す概念図。
【図5】本発明に係る磁気ディスクの製造方法を示す概念図。
【図6】本発明の実施例におけるイオン注入前の磁化曲線を示す図。
【図7】本発明の実施例におけるイオン注入後の磁化曲線を示す図。
【図8】本発明の実施例における保磁力(Hc)の温度依存性を示す図。
【図9】本発明の実施例における常温で磁気記録したときのMFM画像を示す図。
【図10】本発明の実施例における200℃で磁気記録したときのMFM画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるDTM等の磁気記録ディスクは、その磁気記録層のうち、磁気記録領域を磁気的に分離する非記録領域のみをイオン注入法(イオン照射法ともいう)により低Hc化したものであり、熱アシスト磁気記録方式により、情報記録時に必要な部分のみ加熱し、磁化記録されるものである。その原理について説明する。なお本発明では、イオン注入法によって、発明の効果が得られる程度にHcを低くできればよく、セミハード磁性化や軟磁性化、もしくは弱磁性化させればよい。
【0023】
一般に、強磁性を示す磁性材料の保磁力(Hc)の値は、温度の上昇とともに小さくなる(図2)。さらに、イオン注入した部分(非記録領域)は、イオン注入されていない部分(磁気記録領域)に比べ、保磁力は小さくなる。 (図2)。
その結果、保磁力(Hc)が0となる温度(キュリー温度)で対比すると、イオン注入された部分のキュリー温度(Tcn)は、イオン注入されていない部分のキュリー温度(Tcr)より低くなる(図2)。
【0024】
本発明はこの現象を利用し、上記構造の磁気ディスクに対して、磁気記録する時の温度(Tr)を、この両領域のキュリー点温度の間の温度とすることを特徴としている。
この温度域であれば、イオン注入されていない部分(磁気記録領域)は強磁性であるが、イオン注入された部分(非記録領域)は常磁性を示す。そのため、非記録領域は、磁気記録ヘッドによる磁場が印可されても常磁性のため残留磁化はないことから記録ができない、このため温度が下がっても磁化はゼロのままで維持されることになる (図3)。
【0025】
一方、磁気記録領域は、磁気記録する時の温度(Tr)でも強磁性であるので、磁気記録ヘッドの磁場が印可されれば記録磁場方向に磁化され、残留磁化が生じる。そして温度の低下とともに、保磁力が回復し大きくなる(図3)。その結果、磁気記録領域には記録信号が強くのこり、隣接する非記録領域にはまったく残らないこととなる。このため、両領域間の磁気的なコントラストが強くなり、情報読み出し時の精度が格段に向上することになる。
【0026】
例えば、磁気記録層の材料としてFePt規則化合金を用いた場合、結晶成長後の状態でキュリー温度(Tcr)はおよそ300℃程度である。一方、そこにイオン照射エネルギーが1〜50KeV、ドーズ量が1E13〜1E17atoms/cm2)で窒素(N2)イオンを注入すると、キュリー温度(Tcn)が100℃程度に低下する。従って、この両者のキュリー温度間の温度で磁気記録することにより、コントラストの高い記録が可能となる。
ドーズ量が多すぎると記録領域の磁性材料と非記録領域のイオン照射した材料の組成の違いが大きくなるため、熱膨張率に変化が生じる可能性がある。このためある程度の照射量で限度があると思われる。
【0027】
ところで、従来のイオン照射によるDTM等への磁気記録では、磁気記録領域(イオン注入されていない領域)と低Hc化した非記録領域(イオン注入された領域)との、室温における保磁力の差が磁気的コントラストとなっている(図3)。
また、従来の(トラック間に非記録領域を設けてない媒体を使用する?)熱アシスト磁気記録方式では高々200℃程度までしかスポット加熱していない。言い換えれば、磁気記録温度(Tr)は高々200℃程度である。これは、一般的な磁性材料のTc以下の温度であるため、磁気記録領域と非記録領域は強磁性を保ちながら磁化される。そのため、非記録領域では残留磁化が残ってしまい、室温に戻ると図3のカーブに沿って保磁力が回復するため、本来は記録をしたくない非記録領域に情報が記録されてしまい、非記録領域でのトラックやビットの分離が不十分になってしまう。結果的に室温における両領域の保磁力の差は本発明による保磁力の差より小さくなり磁気的コントラストが小さくなってしまう(図3)。
従って、本発明に係る磁気ディスクのほうが、高いコントラストをもって、磁気記録が可能であることが分かる。
【0028】
本発明の解決すべき課題においても記述したが、磁気ディスクの高密度化のためには、一つの情報を記録するための領域(1ビット記録領域)を狭小化させることが重要である。これをSNRを落とさず実現するためには、各ビットを構成する最小単位である磁性粒子を小さくする必要があり、その結果生じる熱揺らぎ問題を防止するためには保磁力を大きくすることが必要である。保磁力を大きくするためには異方性磁界(Hk)を大きくすればよく、これは磁気異方性定数(Ku)を高くすればよい。具体的には、Kuが5×106以上となる材料への記録は、室温レベルの温度環境では記録ヘッド磁界が有限であるため非常に困難となっている。そのため、熱アシスト記録方式による記録方式が必須と考えられ、さらにクロストークの影響を排除して高記録密度化を達成するためにはトラック間を明確に分離することが必要となるため、本発明のようにトラックを高い磁気的コントラストで分離できる磁気記録方式が要求されてくる。
【0029】
次に、本発明に係る磁気ディスクの製造方法について説明する。
磁気ディスクは、概括的にみて、非磁性材料でできている円板状の基体1上に軟磁性層(SUL:Soft Under Layer)2、中間層3、磁気記録層4、保護層5、潤滑層8の順に各層が積み上げられて構成されている(図4)。磁気記録層4以下の各層は、また、いくつかの層に細分化されるが、本発明においては、その細分化された層構造は特に問わない。これら各層は、CVD法やPVD法、マグネトロンスパッタリング法等で、それぞれの層に必要な材料を成膜することで作られる。
【0030】
非磁性体の基体材料1としては、通常ガラスやアルミニウムが使われる。ガラス基体の材料は、特に問わない。例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。これらガラスやアルミニウムを円板状に加工し、表面研磨等施し、ガラスにおいては化学強化等の処置をして非磁性の基体として用いる。
【0031】
軟磁性層2は、垂直磁気記録方式において磁気記録層に垂直方向に磁束を通過させるために、記録時に一次的に磁気回路を形成するための層である。磁性層の材料としては、例えば、CoTaZrなどのコバルト系合金、CoFeTaZr、CoCrFeBなどのCo−Fe系合金、さらには、FeTaCやFeTaNなどのFe系合金などが用いられる。
【0032】
中間層3は、下層の軟磁性層2と上層の磁気記録層4の材料的な干渉作用を遮断する層である。また、上層の磁気記録層の粒径、粒径分散、結晶配向性を制御する言わば土台の機能を備えるものである。中間層をさらに上層と下層の2層に分けると磁気記録層の結晶配向性と粒径を同時に制御する上で好適である。例えば、中間層下層には、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nbなどの金属単体や、それらにW、Cr、V、Ta、Moなどを加えた合金を用いることができる。他方、中間層上層には、磁気記録層の結晶配向性制御のために、例えば、Ru、Re、Pd、Pt、Fe、AuなどのHcpまたはfcc結晶系材料や、RuCr、RuCoなどの合金を用いることができる。特にRuは、磁気記録層の磁性粒の主成分となるCoと格子定数が近く、結晶構造も同じhcp構造であるので、Coの結晶配向性の向上には有効である。また、上部の磁性層の組成に応じた材料とすることも重要である。例えば磁性層としてFePt系合金を用いる場合は、MgO系材料を用いることもできる。
【0033】
磁気記録層4は、パターンドメディアの主要な機能である情報を記録する部位になる。現在一般的な垂直記録方式の場合、柱状構造を有した強磁性体の磁性粒を、非磁性物質からなる粒界が取り囲んだグラニュラー構造で構成するとよい。磁気記録層の材料としては、例えばCo系合金、Fe系合金、Ni系合金に、酸化物を添加したコンポジット材料が用いられている。この材料を中間層上に成膜してエピタキシャル成長させることにより、柱状グラニュラー構造を好適に得ることができる。さらに、上記のコンポジット材料の他に、FePt合金やCoPt合金を規則格子化して高い磁気異方性をもつ材料としたいわゆる規則化格子材料、およびこれらに熱アシスト記録に用いるためにTcを低下させる目的で添加元素を添加した磁性材料も用いることができる。また高磁気異方性を示す、 Co/Pt多層膜などの界面磁気異方性を有するいわゆる人工格子膜なども用いることができる。
【0034】
図4に製造方法の一例の概要を示している。
図4(a)は、基板の少なくとも一方の表面上に磁気記録層4を成膜した状態を示す(図4は磁気記録層のみ図示している。)前述したように、磁気記録層4は、種種の材料の層が積層しており、全体厚さで5nm〜30nm程度の厚さを有する。なお、図4の各図では、積層した各層の境界は図示していない。
【0035】
次に、磁気記録層4上に、レジスト6を塗布する。磁気記録層4とレジスト6の間に剥離層(図示せず)を成膜してもよい。剥離層はたとえばダイヤモンドライクカーボンを用いることができ、1〜5nm程度の厚さが好適である。ダイヤモンドライクカーボンは例えばCVD法によって成膜することができる。
レジスト6は、この後のパターニング方法に適したレジストを選択することになる。ここでは、ナノインプリント法にてパターニングを施す場合を例に説明する。もちろん、パターニング方法は、ナノインプリント法に限定されるものでなく、半導体で用いられているリソグラフィー法等を用いることもできる。
【0036】
ナノインプリントのためには、ナノインプリントレジストを使用する。ナノインプリントレジストには、熱ナノインプリントレジスト、UV硬化ナノインプリントレジスト、室温ナノインプリントレジストがあるが、どれを採用してもよい。ここでは、室温ナノインプリントレジストを用いて説明する。
室温ナノインプリントレジストは、ケイ素(Si)化合物と添加剤(拡散用不純物、ガラス質形成剤、有機バインダー等)とを有機溶剤(アルコール、エステル、ケトン等)に溶解した液状質であり、例えば、シリカガラス、水素化シルセスキオキサンポリマー(HSQ)、水素化アルキルシロキサンポリマー(HOSP)、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー(MSQ)等があり、SOG(Spin On Glass)と呼ばれている。レジストマスク層成膜工程では、剥離層の上にSOGをスピンコート法により塗布し、成膜する。厚さは、パターニングにもよるが、50〜60nm程度とするのが好適である。
【0037】
図4(b)は、パターニングを示す。スタンパ11を押し当てることによって、磁性トラックパターンを転写(インプリント)する。スタンパ11には、転写しようとする磁気記録領域と非記録領域、すなわち、イオン遮蔽(マスク)して磁気記録層にイオンを注入しない領域(磁気記録領域)とイオン透過させて磁気記録層にイオンを注入する領域(非記録領域)のそれぞれのパターンに対応する凹凸パターンを有する。
【0038】
イオン照射時に、イオンを透過させる部分はレジストマスク層6を薄くするためレジストマスク層の凹部になり、イオンを遮蔽(マスク)する部分がレジストマスク層の凸部になる。スタンパ11の凹凸はこの逆となる。
例えば、レジストがSOGで、注入するイオンがB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2の各イオンまたは2種以上の複合イオンで、イオン照射エネルギーが1〜50KeV、ドーズ量が1E13〜1E17 atoms/cm2であれば、レジストマスク層の凹部の厚さは30nm以下が望ましい。また、そのときレジストマスク層の凸部の厚さts、凹部の厚さをtcとしたとき、その厚さの比は、2≦ts/tc≦10 を満足することが望ましい。レジストマスク層の凸部の厚さは、イオン照射エネルギーにもよるが、50nm以上であれば、イオンの透過がなく、十分なマスク効果が得られる。
スタンパ11により、磁気記録領域のパターンを転写した後、スタンパ11をレジストマスク層6から離す(離型する)ことにより、レジストマスク層6に所望の凹凸パターンが形成される。この時、スタンパ表面に剥離剤を塗布しておくと、スタンパの離型が容易となる。
【0039】
図4(c)は、イオン照射しているところを示す。レジストマスク層の凹部は、レジストマスク層が薄いため、イオン7は、レジストマスク層6を透過し、その直下にある磁気記録層4にイオンが注入される。
イオン7が磁気記録層4に注入されることにより、磁気記録層4のイオン注入部分4cの結晶構造が乱れ、磁性が弱まる。そのため、イオンが注入されない磁気記録層に比べ、はるかに弱い磁性となるため、隣接する磁気記録層を磁気的に分離することができる非記録領域を形成する。これにより、磁気記録領域4a間に分離領域として非記録領域4bが形成される。この幅を狭くするほど、磁気記録密度が向上することになる。
【0040】
注入するイオンは特に限定されないが、通常、B、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2からなる群から選択されたいずれか1つまたは複数のイオンを注入する。なお、上記のイオンの価数は全て+1価である。上記イオンの中でも、扱い易さの観点から、Ar、N2、O2、Kr、Xe、Ne、He、H2を用いることが好ましい。さらにコストの観点から、Ar、N2、O2を用いることがより好ましい。このとき、例えばイオン照射エネルギーが1〜50KeV、ドーズ量が1E13〜1E17 atoms/cm2であればSOGレジストマスク層の凹部を通して、磁気記録層にイオンを注入することができる。
【0041】
図4(d)は、レジストマスク層を除去するところ示す。レジストマスク層は、例えば、アルカリ溶剤によるウェットエッチング処理で除去することができる。ウェットエッチング処理に用いるアルカリ溶剤には、通常含KOH溶液、含NaOH溶液等が用いられるが、特にこれら溶液に限定されることなく、レジストマスクの種類により適宜選択すればよい。ウェットエッチング以外にも、RIE(Reactive Ion Etching)やアッシングといった、ドライエッチングプロセスによってレジストを除去することもできる。以上がパターン形成工程となる。
【0042】
この後、保護層5や潤滑層8等を成膜する。保護層はたとえばダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることができ、1〜5nm程度の厚さが好適である。ダイヤモンドライクカーボンは例えばプラズマCVD法によって成膜することができる。潤滑層は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜することができる。
以上の工程を経ることにより、磁気記録層に、照射したイオンを含む非記録領域と、照射イオンを含まない磁気記録領域を所定のパターンに従って形勢することができる。
【0043】
本発明に係る磁気ディスクの製造方法は、上記方法に限定されることはなく、イオン照射により照射したイオンを含む非記録領域と照射イオンを含まない磁気記録領域を、所定のパターンに従って形成するものであればよい。
イオン照射法以外のDTM等の製造方法として、磁気記録層の非記録部分に物理的な溝をエッチング等で形成し、そこに非磁性材料を埋め込む手法がある。しかし、この方法では工程が複雑となるだけでなく、表面の凹凸が生じ易いこととパーティクルが発生し易いことから、安定した磁気ヘッド浮上の障害となりやすい。
一方で、イオン照射法であれば、物理的な溝の形成工程も、その部分への埋め込み工程もなく、複雑な工程を経ることなく、平滑な表面を維持することができる。そのため、磁気ヘッドの浮上も安定する。このことから本実施例におけるイオン照射量ではイオン照射による磁性材料の熱膨張率などの変化が殆どなく、ヘッドの浮上特性に影響を与えなかったと考えられる。
【0044】
次に、本発明に係る磁気ディスクに磁気記録する方法について説明する。
前述したように、照射イオンを含まない磁気記録領域のキュリー温度(Tcr)と、照射イオンを含む非記録領域のキュリー温度(Tcr)の間の温度(磁気記録温度(Tr))で磁気記録する。このとき、磁気記録する部分のみをTrまで加熱するため、熱アシスト記録方式により磁気記録することが好ましい。
【0045】
熱アシスト記録方式であれば、通常記録できないような高い保磁力の媒体に対しても、記録に必要な部分のみの保磁力を低下させることで、記録することが可能である。スポット加熱の方法は、いくつかある。例えば、特許文献4に例示されているのは、レーザーによるスポット加熱方式である。また、電気抵抗体を記録ヘッド近傍に配置する方法もある。さらに、磁気ディスクの高密度化に伴い、加熱スポット径も光の波長以下の100nm程度が要求され、このため、例えばプラズモン加熱や近接場光加熱方法を用いることができる。ここで、プラズモン加熱とは、寸法が波長以下の物体(微小開口や微粒子など)に光を入射したとき、その物体近傍に局在するように発生する光のことをいう。
【実施例】
【0046】
直径65mmの非磁性で耐熱性のディスク状のガラス基板を準備し、該ガラス基板上に、軟磁性層として80Fe−8Ta−12C(100nm)、次に中間層としてMgO(20nm)、Fe(1 nm)、Au(40 nm)、を室温でスパッタ成膜した。
【0047】
次に、基板を300℃に加熱してFePt(15 nm)をスパッタ法にて成膜し、500℃でアニール処理することで規則化させた。X線にてFePtが規則化合金となっていることを確認した。なお、図5(a)ではFePt層4より上層示す。
さらにCVD法によりダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン膜(図示せず)を3nm成膜したものに、室温ナノインプリントレジスト(SOG)を塗布し、レジストマスク層6を成膜した。レジストマスク層厚は、80nmとした(図5(a))。
【0048】
パターニングは、ナノインプリント法にて行い、磁気記録領域幅65nm、非記録領域幅55nmのトラックピッチ120nm、イオンが注入されるパターン凹部のレジスト残膜厚は10nmとした(図5(b))。
パターニングを終えた磁気ディスク上にイオンビームを照射し、イオン注入を行った(図5(c))。イオン注入は、Arイオンを17KeVで1E14 atoms/cm2注入した。
その後、イオン注入を終えた磁気ディスクを、含KOH溶液に30分浸漬し、レジストマスク層を除去した(図5(d))。
その後、保護層(3nm)(図示せず)をCVD法にて成膜し、さらにPFPからなる潤滑層(1nm)(図示せず)をDip法にて成膜した。
最後に、X線にて磁気記録領域のFePt層が規則化合金となっており、非記録領域(イオン注入した部分)は、規則性が劣化していることを確認した。
【0049】
図6の磁化曲線が示すように、この媒体の磁気記録領域のHcは6200 Oeであった。この値は、イオン照射前の媒体にて確認した。イオン照射による磁化曲線の影響を調査するために、この媒体の全面へイオン照射を行うと、図7に示すように磁化曲線が変化しHcは1000Oe程度へ低下する。これは、実際の非記録領域(イオン注入した部分)の磁化曲線に相当する。この媒体へイオン照射を行うと図7に示すように磁化曲線が変化しHcは1000Oe程度へ低下する。イオン照射を行う際のエネルギーは、照射するイオン種(この場合はArイオン)と対象の磁性媒体材料によりモンテカルロ法による計算等を用いて注入深さを計算でき、FePt層全体にイオンが注入されるエネルギーを求めた(この場合はイオンの加速電圧17 KeVとした)。ここでイオン種はArに限らず磁性を効果的に改良することができればどのようなイオン種でもよい。例えばP、O、N、C、B、HなどやCo、W、Si、Ga、Ptの金属イオンなども有効である、価数も1価であっても2価であっても磁性を改良する効果を示せば何でもよい。イオンの照射量はこの実施例では1x1014 atoms/cm2としたが、十分な効果が得られる場合にはこれよりも少ない照射量でも構わない。
【0050】
これらの媒体でのTc(キュリー温度)を比較するために、Hcの温度依存性を測定した結果を図8に示す。このように、従来の比較例1の磁性媒体では温度を200℃程度まで上げても、Hcを4000 Oe程度低下させることができるが常磁性にはなってはいない。ここで本発明によるイオン照射を行った媒体では、実施例1に示すように200℃程度まで温度を上げるとHcはほぼゼロとなりHcは6000 Oe以上低下させることができ、さらにはTcを超えることから常磁性になっていることがわかる。
【0051】
つぎに、イオン照射によってDTMのトラックを分離する溝やBPMのビットを作製する方法を述べる。DTMの溝やBPMのビットをイオン照射によって作る場合には、イオンを遮蔽するための微細なパターンを形成する必要がある。本実施例では、イオン照射によって型くずれが起きにくいSOGレジストを用いた。ここではSOGレジストを用いたがイオンを遮蔽するためであれば、樹脂レジストやまたは別途メタルマスクなどを磁性層上に形成してイオンを遮蔽してもよい。別に接触させたマスクでなくとも、メンブレンマスクやステンシルマスクといった非接触のマスクパターンでもよい。
要はイオンを遮蔽したパターン部分が記録層となり、かつイオンが透過して磁性層を改良した部分が非記録部となるようなイオン照射によるパターン形成方法であればよい。トラックの幅を120nm溝の幅を80nmとしてイオン照射を行い磁気的なパターンを作製した。イオン照射による磁気的なトラック形成後には、レジストの除去を行い、保護膜と潤滑剤を塗布してHDDに必要な浮上ヘッドでの浮上に必要な表面状態とした。ここで浮上量がディスク表面から数nmと非常に低浮上であるHDD用の浮上ヘッドを媒体表面に浮上させ、浮上特性に問題ないことを確認した。
【0052】
ここで、室温で垂直方向に外部磁化を印可して媒体を磁化させたあとに、媒体の磁化状態をMFM(磁気力顕微鏡)により観察を行った結果を図9に示す。これに対して媒体を200℃まで加熱し高温中で垂直方向に磁化させた後にMFMによる磁化状態の観察を行った結果を図10に示す。
このように図9ではトラックの分離が十分でなく不明瞭であり、また記録部の保磁力も高いことから十分に飽和磁化されていない事がわかる。一方で実施例の図10では高温中で磁場を印可しているため記録部の磁化が十分に飽和磁化されており、さらに非記録部は磁化されていないため、記録部と非記録部のコントラストが非常にはっきりとしており明確にトラックが分離されることがわかる。この実施例で作製した磁気記録媒体を用いることでHDD用熱アシスト記録に供する高コントラストなディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、熱アシスト方式により記録する磁気ディスクと、その装置で利用することができる。特に、磁気記録領域と非記録領域に高精度で、且つ高コントラストで情報を書き込むことができるため、今後需要が高まることが予想される高密度小型磁気ディスク等へ適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
2 軟磁性層
3 中間層
4 磁気記録層
4a 磁気記録領域
4b 非記録領域
5 保護層
6 レジストマスク層
7 照射イオン
8 潤滑層
10 パターンドメディア断面構造
20 ハードディスクドライブ(HDD)
21 磁気ディスク
22 ジンバルバネ
23 駆動系(ロータリー型アクチュエーター)
24 磁気ヘッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録装置における磁気記録時に熱アシスト方式を利用する磁気ディスクに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル情報化の進展に伴い、記録装置の高容量化と機器の小型軽量化が求められている。この要求に応えるため、磁気記録装置、特に磁気ディスク記録装置(例えば、Hard Disk Drive (HDD))は、高記録密度化が追求されており、近年は、1Tb/in2以上の面記録密度達成を成し遂げるべく研究開発が行われている。
【0003】
磁気ディスク記録装置の高記録密度化は、記録ビットの大きさを微細化することで実現されてきた。しかし記録ビットを小さくするにつれて、磁化が熱エネルギーによって不安定となる熱揺らぎ現象が顕著に現れ、記録情報が消失することが問題となる。記録された信号が実用的な期間保持されるためには、情報記録媒体における情報の最小単位である記録ビットを構成する磁性粒子の体積を増やすか、またはその保磁力を大きくすることが要求される。微細化を進めれば、磁性粒子の体積を増やすことには限界があるため、磁性粒子の保磁力を増やす必要が出てくる。
しかし、磁性体の保磁力をむやみに大きくすると、磁気ヘッドにより情報書き込み時に発生する磁界では十分に記録媒体が磁化されず飽和記録されないために、オーバーライト特性が悪化するという磁気記録媒体として致命的な問題が生じる。
この問題を解決するために、磁気記録時の対策として熱アシスト記録方式が提案されている。
【0004】
熱アシスト記録方式は、情報書き込み時に記録媒体である磁性体を局所的に加熱して保磁力を低下させ、磁気ヘッドの磁界で磁性体を磁化し記録する方法である。記録媒体である磁性体を加熱する方法として、レーザー光照射により記録媒体を加熱する熱アシスト記録磁気ヘッドが開示されている(例えば特許文献2)。熱アシスト記録方式により1トラックあたりの(円周方向の)ビット記録密度(線記録密度:BPI)を上げて面記録密度を増やすことができる。
【0005】
一方、ディスクリートトラックメディアは、隣接する記録用の磁気記録領域間に磁気的に分離する非記録領域を配置させることにより、隣接磁性記録部同士の干渉を防ぐものである。これにより半径方向のトラック密度(TPI)を高めることができる。また、磁気記録領域と非記録領域をトラック状に並列配置しているディスクリートトラックメディア(DTM)に類する媒体として、磁気記録領域と非記録領域を隣接しながらさらに記録ビット間にも非記録領域を設けて人工的に規則正しく並べたビットパターンドメディア(BPM)がある(例えば特許文献1)。
磁気ディスクの面記録密度は、上記BPIとTPIの積で決まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−226428号公報
【特許文献2】特開2002−117502号公報
【特許文献3】特開2006−260620号公報
【特許文献4】特開2007−134004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
磁気ディスクの高密度化の要求は年々厳しくなっており、そのためますます磁性体の保磁力を高くする必要が生じている。しかし、これまでよりも保磁力が高く磁気異方性が大きな材料を磁気記録部に使用した場合、上述のヘッドの記録磁界の限界の問題が生じる。そこで記録時だけ熱により記録媒体の保磁力を低下させる熱アシスト磁気記録方式が必要となる。熱アシスト記録においては、元々の磁性媒体の保磁力が高いため、高温下で保磁力を低くしての磁気記録が必要となるが、この熱の分布によって磁性体が不安定な状態となり、情報を書き込む際に、隣接した記録したくないトラックの情報を書き換えてしまう、いわゆるクロストーク現象が発生し、TPIを上げられないという問題が生じる。
【0008】
これを解決するため、磁気記録部の下層に熱伝道率の高い材料を配置する方法が提案されている(例えば特許文献3)。しかし、この方式では隣接トラックとの境界領域への物理的な対策がないためクロストークを防止することは限界があり、高密度化には対応できない。また磁気ディスク構造が複雑化して製造コストが増大するという欠点もある。
【0009】
これに対して、ディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンドメディア(BPM)等の磁気ディスク(以下「DTM等」という)は、トラック間の非記録部に非磁性体を挟むことによって、トラック間の干渉によるノイズを抑えるものであり、トラック間の境界領域に対する物理的な対策と言えるが、非記録部に非磁性体を埋め込むためには複雑な製造工程を経る必要があり、経済性の観点から問題があった。
【0010】
つまり、本発明により解決すべき課題は、(1)従来の熱アシスト記録方式やディスクリート方式(DTM等)によっても解決できないクロストークの問題を解決し、高磁気記録密度化を達成すること、および(2)特別な媒体構造を必要とせず、また製造方法も従来と比べて簡便でかつ表面の平坦性が良好な、経済的・機能的に実現性の高い磁気ディスクを提供することである。
従来のディスクリート方式の適用、例えば一般的な磁気記録層の一部を物理的に除去した後に非磁性物質を埋め込むタイプのディスクリート方法では、平坦化に難があるためヘッドの浮上量を十分に下げられず、無理に下げると耐久性が劣化する(ヘッドクラッシュが起こりやすくなる)だけでなく、製造工程が複雑化しコストが大幅に増大する。
【0011】
また、従来の溝を掘って非磁性物質を埋め込んだディスクリートトラック媒体では、磁性物質と非磁性物質が異なることから、物質の熱膨張率の違いが生じる。このため、熱アシスト記録の際に高温になることで非磁性物質と磁性物質で段差が生じる懸念がある。この段差が生じることは浮上ヘッドを用いるHDDでは信頼性を著しく劣化させるため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、イオン注入によるDTM等であれば、非磁性材料の埋め込み工程等が不要であり、複雑な工程を経ることなくDTM等を得ることができるため、イオン注入によるDTM等と熱アシスト記録を併用することにより、経済性や機能性の観点からも高密度磁気記録が実現できると考え、検討を行った。
その結果、本発明者らは、イオン注入によるDTM等において、イオン注入した部分の材料の強磁性が、イオン注入していない部分の材料の強磁性に比べ劣化し、保磁力0となるキュリー温度(Tc)がイオン注入していない部分のキュリー温度より低くなる現象を利用し、この両キュリー温度の間の温度で磁気記録することにより、クロストークを効果的に防止できることを見出し、本発明をなすに至った。そして本発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0013】
(1)基板の少なくとも一方の表面上に、磁気情報の記録再生を行うための磁気記録領域と、前記磁気記録領域を磁気的に分離するための非記録領域とが、基板の面内方向において規則的に配置された磁気記録層を有し、
前記非記録領域にB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうち1種または2種以上の元素を含み、
熱アシスト記録方式により記録することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0014】
(2)前記非記録領域に含まれるB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素が、イオン照射によって注入された元素であることを特徴とする(1)に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0015】
(3)基板の少なくとも一方の表面上に、磁気情報の記録再生を行うための磁気記録領域と、前記磁気記録領域を磁気的に分離するための非記録領域とが、基板の面内方向において規則的に配置された磁気記録層を有し、
前記非記録領域にB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうち1種または2種以上の元素を含み、
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)と、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)とが、
Tcn < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスク。
もちろん、この磁気ディスクも熱アシスト記録方式により記録することを特徴としてもよい。
また、前記非記録領域に含まれるB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素が、イオン照射によって注入された元素であってもよい。
【0016】
(4)前記磁気記録領域の磁気異方性定数が5×106以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいじれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0017】
(5)前記磁気記録層にFePt系合金層を含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【0018】
(6)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクであって、基板上に少なくとも、磁気異方性定数が5×106以上の磁気記録層を成膜後、当該磁気記録層の上方において所定の部分をマスキングし、イオン照射することにより、照射されたイオンを含む領域とイオンを含まない領域を形成するパターン形成工程を有することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクの製造方法。
【0019】
(7)前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法であって、
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)、および
磁気記録時の温度である磁気記録温度(Tr)が、
Tcn ≦ Tr < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、クロストークのない磁気記録が可能となるだけでなく、イオン注入法によるディスクリート・トラック・メディア(DTM)の製造方法を適用できるため、経済性でも、機能性でも優れた熱アシスト記録用磁気ディスクを得ることができる。よって、磁気ディスクの高記録密度化が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ハードディスク装置(HDD)とディスクリートトラックメディアの概念図を示す図。図1(a)は、HDD装置の概略図である。図1(b)は、ディスクリートトラックメディアの概念図である。
【図2】磁気記録領域(イオン注入していない領域)と非記録領域(イオン注入をしている領域)の、保磁力と温度の関係を示す概念図。
【図3】磁気記録領域(イオン注入していない領域)と非記録領域(イオン注入をしている領域)の保磁力と温度の関係から、本発明を説明する概念図。
【図4】本発明に係る磁気ディスクの構造を示す概念図。
【図5】本発明に係る磁気ディスクの製造方法を示す概念図。
【図6】本発明の実施例におけるイオン注入前の磁化曲線を示す図。
【図7】本発明の実施例におけるイオン注入後の磁化曲線を示す図。
【図8】本発明の実施例における保磁力(Hc)の温度依存性を示す図。
【図9】本発明の実施例における常温で磁気記録したときのMFM画像を示す図。
【図10】本発明の実施例における200℃で磁気記録したときのMFM画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明によるDTM等の磁気記録ディスクは、その磁気記録層のうち、磁気記録領域を磁気的に分離する非記録領域のみをイオン注入法(イオン照射法ともいう)により低Hc化したものであり、熱アシスト磁気記録方式により、情報記録時に必要な部分のみ加熱し、磁化記録されるものである。その原理について説明する。なお本発明では、イオン注入法によって、発明の効果が得られる程度にHcを低くできればよく、セミハード磁性化や軟磁性化、もしくは弱磁性化させればよい。
【0023】
一般に、強磁性を示す磁性材料の保磁力(Hc)の値は、温度の上昇とともに小さくなる(図2)。さらに、イオン注入した部分(非記録領域)は、イオン注入されていない部分(磁気記録領域)に比べ、保磁力は小さくなる。 (図2)。
その結果、保磁力(Hc)が0となる温度(キュリー温度)で対比すると、イオン注入された部分のキュリー温度(Tcn)は、イオン注入されていない部分のキュリー温度(Tcr)より低くなる(図2)。
【0024】
本発明はこの現象を利用し、上記構造の磁気ディスクに対して、磁気記録する時の温度(Tr)を、この両領域のキュリー点温度の間の温度とすることを特徴としている。
この温度域であれば、イオン注入されていない部分(磁気記録領域)は強磁性であるが、イオン注入された部分(非記録領域)は常磁性を示す。そのため、非記録領域は、磁気記録ヘッドによる磁場が印可されても常磁性のため残留磁化はないことから記録ができない、このため温度が下がっても磁化はゼロのままで維持されることになる (図3)。
【0025】
一方、磁気記録領域は、磁気記録する時の温度(Tr)でも強磁性であるので、磁気記録ヘッドの磁場が印可されれば記録磁場方向に磁化され、残留磁化が生じる。そして温度の低下とともに、保磁力が回復し大きくなる(図3)。その結果、磁気記録領域には記録信号が強くのこり、隣接する非記録領域にはまったく残らないこととなる。このため、両領域間の磁気的なコントラストが強くなり、情報読み出し時の精度が格段に向上することになる。
【0026】
例えば、磁気記録層の材料としてFePt規則化合金を用いた場合、結晶成長後の状態でキュリー温度(Tcr)はおよそ300℃程度である。一方、そこにイオン照射エネルギーが1〜50KeV、ドーズ量が1E13〜1E17atoms/cm2)で窒素(N2)イオンを注入すると、キュリー温度(Tcn)が100℃程度に低下する。従って、この両者のキュリー温度間の温度で磁気記録することにより、コントラストの高い記録が可能となる。
ドーズ量が多すぎると記録領域の磁性材料と非記録領域のイオン照射した材料の組成の違いが大きくなるため、熱膨張率に変化が生じる可能性がある。このためある程度の照射量で限度があると思われる。
【0027】
ところで、従来のイオン照射によるDTM等への磁気記録では、磁気記録領域(イオン注入されていない領域)と低Hc化した非記録領域(イオン注入された領域)との、室温における保磁力の差が磁気的コントラストとなっている(図3)。
また、従来の(トラック間に非記録領域を設けてない媒体を使用する?)熱アシスト磁気記録方式では高々200℃程度までしかスポット加熱していない。言い換えれば、磁気記録温度(Tr)は高々200℃程度である。これは、一般的な磁性材料のTc以下の温度であるため、磁気記録領域と非記録領域は強磁性を保ちながら磁化される。そのため、非記録領域では残留磁化が残ってしまい、室温に戻ると図3のカーブに沿って保磁力が回復するため、本来は記録をしたくない非記録領域に情報が記録されてしまい、非記録領域でのトラックやビットの分離が不十分になってしまう。結果的に室温における両領域の保磁力の差は本発明による保磁力の差より小さくなり磁気的コントラストが小さくなってしまう(図3)。
従って、本発明に係る磁気ディスクのほうが、高いコントラストをもって、磁気記録が可能であることが分かる。
【0028】
本発明の解決すべき課題においても記述したが、磁気ディスクの高密度化のためには、一つの情報を記録するための領域(1ビット記録領域)を狭小化させることが重要である。これをSNRを落とさず実現するためには、各ビットを構成する最小単位である磁性粒子を小さくする必要があり、その結果生じる熱揺らぎ問題を防止するためには保磁力を大きくすることが必要である。保磁力を大きくするためには異方性磁界(Hk)を大きくすればよく、これは磁気異方性定数(Ku)を高くすればよい。具体的には、Kuが5×106以上となる材料への記録は、室温レベルの温度環境では記録ヘッド磁界が有限であるため非常に困難となっている。そのため、熱アシスト記録方式による記録方式が必須と考えられ、さらにクロストークの影響を排除して高記録密度化を達成するためにはトラック間を明確に分離することが必要となるため、本発明のようにトラックを高い磁気的コントラストで分離できる磁気記録方式が要求されてくる。
【0029】
次に、本発明に係る磁気ディスクの製造方法について説明する。
磁気ディスクは、概括的にみて、非磁性材料でできている円板状の基体1上に軟磁性層(SUL:Soft Under Layer)2、中間層3、磁気記録層4、保護層5、潤滑層8の順に各層が積み上げられて構成されている(図4)。磁気記録層4以下の各層は、また、いくつかの層に細分化されるが、本発明においては、その細分化された層構造は特に問わない。これら各層は、CVD法やPVD法、マグネトロンスパッタリング法等で、それぞれの層に必要な材料を成膜することで作られる。
【0030】
非磁性体の基体材料1としては、通常ガラスやアルミニウムが使われる。ガラス基体の材料は、特に問わない。例えば、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ソーダアルミノケイ酸ガラス、アルミノボロシリケートガラス、ボロシリケートガラス、石英ガラス、チェーンシリケートガラス、又は、結晶化ガラス等のガラスセラミックなどが挙げられる。これらガラスやアルミニウムを円板状に加工し、表面研磨等施し、ガラスにおいては化学強化等の処置をして非磁性の基体として用いる。
【0031】
軟磁性層2は、垂直磁気記録方式において磁気記録層に垂直方向に磁束を通過させるために、記録時に一次的に磁気回路を形成するための層である。磁性層の材料としては、例えば、CoTaZrなどのコバルト系合金、CoFeTaZr、CoCrFeBなどのCo−Fe系合金、さらには、FeTaCやFeTaNなどのFe系合金などが用いられる。
【0032】
中間層3は、下層の軟磁性層2と上層の磁気記録層4の材料的な干渉作用を遮断する層である。また、上層の磁気記録層の粒径、粒径分散、結晶配向性を制御する言わば土台の機能を備えるものである。中間層をさらに上層と下層の2層に分けると磁気記録層の結晶配向性と粒径を同時に制御する上で好適である。例えば、中間層下層には、Ni、Cu、Pt、Pd、Zr、Hf、Nbなどの金属単体や、それらにW、Cr、V、Ta、Moなどを加えた合金を用いることができる。他方、中間層上層には、磁気記録層の結晶配向性制御のために、例えば、Ru、Re、Pd、Pt、Fe、AuなどのHcpまたはfcc結晶系材料や、RuCr、RuCoなどの合金を用いることができる。特にRuは、磁気記録層の磁性粒の主成分となるCoと格子定数が近く、結晶構造も同じhcp構造であるので、Coの結晶配向性の向上には有効である。また、上部の磁性層の組成に応じた材料とすることも重要である。例えば磁性層としてFePt系合金を用いる場合は、MgO系材料を用いることもできる。
【0033】
磁気記録層4は、パターンドメディアの主要な機能である情報を記録する部位になる。現在一般的な垂直記録方式の場合、柱状構造を有した強磁性体の磁性粒を、非磁性物質からなる粒界が取り囲んだグラニュラー構造で構成するとよい。磁気記録層の材料としては、例えばCo系合金、Fe系合金、Ni系合金に、酸化物を添加したコンポジット材料が用いられている。この材料を中間層上に成膜してエピタキシャル成長させることにより、柱状グラニュラー構造を好適に得ることができる。さらに、上記のコンポジット材料の他に、FePt合金やCoPt合金を規則格子化して高い磁気異方性をもつ材料としたいわゆる規則化格子材料、およびこれらに熱アシスト記録に用いるためにTcを低下させる目的で添加元素を添加した磁性材料も用いることができる。また高磁気異方性を示す、 Co/Pt多層膜などの界面磁気異方性を有するいわゆる人工格子膜なども用いることができる。
【0034】
図4に製造方法の一例の概要を示している。
図4(a)は、基板の少なくとも一方の表面上に磁気記録層4を成膜した状態を示す(図4は磁気記録層のみ図示している。)前述したように、磁気記録層4は、種種の材料の層が積層しており、全体厚さで5nm〜30nm程度の厚さを有する。なお、図4の各図では、積層した各層の境界は図示していない。
【0035】
次に、磁気記録層4上に、レジスト6を塗布する。磁気記録層4とレジスト6の間に剥離層(図示せず)を成膜してもよい。剥離層はたとえばダイヤモンドライクカーボンを用いることができ、1〜5nm程度の厚さが好適である。ダイヤモンドライクカーボンは例えばCVD法によって成膜することができる。
レジスト6は、この後のパターニング方法に適したレジストを選択することになる。ここでは、ナノインプリント法にてパターニングを施す場合を例に説明する。もちろん、パターニング方法は、ナノインプリント法に限定されるものでなく、半導体で用いられているリソグラフィー法等を用いることもできる。
【0036】
ナノインプリントのためには、ナノインプリントレジストを使用する。ナノインプリントレジストには、熱ナノインプリントレジスト、UV硬化ナノインプリントレジスト、室温ナノインプリントレジストがあるが、どれを採用してもよい。ここでは、室温ナノインプリントレジストを用いて説明する。
室温ナノインプリントレジストは、ケイ素(Si)化合物と添加剤(拡散用不純物、ガラス質形成剤、有機バインダー等)とを有機溶剤(アルコール、エステル、ケトン等)に溶解した液状質であり、例えば、シリカガラス、水素化シルセスキオキサンポリマー(HSQ)、水素化アルキルシロキサンポリマー(HOSP)、アルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキオキサンポリマー(MSQ)等があり、SOG(Spin On Glass)と呼ばれている。レジストマスク層成膜工程では、剥離層の上にSOGをスピンコート法により塗布し、成膜する。厚さは、パターニングにもよるが、50〜60nm程度とするのが好適である。
【0037】
図4(b)は、パターニングを示す。スタンパ11を押し当てることによって、磁性トラックパターンを転写(インプリント)する。スタンパ11には、転写しようとする磁気記録領域と非記録領域、すなわち、イオン遮蔽(マスク)して磁気記録層にイオンを注入しない領域(磁気記録領域)とイオン透過させて磁気記録層にイオンを注入する領域(非記録領域)のそれぞれのパターンに対応する凹凸パターンを有する。
【0038】
イオン照射時に、イオンを透過させる部分はレジストマスク層6を薄くするためレジストマスク層の凹部になり、イオンを遮蔽(マスク)する部分がレジストマスク層の凸部になる。スタンパ11の凹凸はこの逆となる。
例えば、レジストがSOGで、注入するイオンがB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2の各イオンまたは2種以上の複合イオンで、イオン照射エネルギーが1〜50KeV、ドーズ量が1E13〜1E17 atoms/cm2であれば、レジストマスク層の凹部の厚さは30nm以下が望ましい。また、そのときレジストマスク層の凸部の厚さts、凹部の厚さをtcとしたとき、その厚さの比は、2≦ts/tc≦10 を満足することが望ましい。レジストマスク層の凸部の厚さは、イオン照射エネルギーにもよるが、50nm以上であれば、イオンの透過がなく、十分なマスク効果が得られる。
スタンパ11により、磁気記録領域のパターンを転写した後、スタンパ11をレジストマスク層6から離す(離型する)ことにより、レジストマスク層6に所望の凹凸パターンが形成される。この時、スタンパ表面に剥離剤を塗布しておくと、スタンパの離型が容易となる。
【0039】
図4(c)は、イオン照射しているところを示す。レジストマスク層の凹部は、レジストマスク層が薄いため、イオン7は、レジストマスク層6を透過し、その直下にある磁気記録層4にイオンが注入される。
イオン7が磁気記録層4に注入されることにより、磁気記録層4のイオン注入部分4cの結晶構造が乱れ、磁性が弱まる。そのため、イオンが注入されない磁気記録層に比べ、はるかに弱い磁性となるため、隣接する磁気記録層を磁気的に分離することができる非記録領域を形成する。これにより、磁気記録領域4a間に分離領域として非記録領域4bが形成される。この幅を狭くするほど、磁気記録密度が向上することになる。
【0040】
注入するイオンは特に限定されないが、通常、B、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2からなる群から選択されたいずれか1つまたは複数のイオンを注入する。なお、上記のイオンの価数は全て+1価である。上記イオンの中でも、扱い易さの観点から、Ar、N2、O2、Kr、Xe、Ne、He、H2を用いることが好ましい。さらにコストの観点から、Ar、N2、O2を用いることがより好ましい。このとき、例えばイオン照射エネルギーが1〜50KeV、ドーズ量が1E13〜1E17 atoms/cm2であればSOGレジストマスク層の凹部を通して、磁気記録層にイオンを注入することができる。
【0041】
図4(d)は、レジストマスク層を除去するところ示す。レジストマスク層は、例えば、アルカリ溶剤によるウェットエッチング処理で除去することができる。ウェットエッチング処理に用いるアルカリ溶剤には、通常含KOH溶液、含NaOH溶液等が用いられるが、特にこれら溶液に限定されることなく、レジストマスクの種類により適宜選択すればよい。ウェットエッチング以外にも、RIE(Reactive Ion Etching)やアッシングといった、ドライエッチングプロセスによってレジストを除去することもできる。以上がパターン形成工程となる。
【0042】
この後、保護層5や潤滑層8等を成膜する。保護層はたとえばダイヤモンドライクカーボン(DLC)を用いることができ、1〜5nm程度の厚さが好適である。ダイヤモンドライクカーボンは例えばプラズマCVD法によって成膜することができる。潤滑層は、PFPE(パーフロロポリエーテル)をディップコート法により成膜することができる。
以上の工程を経ることにより、磁気記録層に、照射したイオンを含む非記録領域と、照射イオンを含まない磁気記録領域を所定のパターンに従って形勢することができる。
【0043】
本発明に係る磁気ディスクの製造方法は、上記方法に限定されることはなく、イオン照射により照射したイオンを含む非記録領域と照射イオンを含まない磁気記録領域を、所定のパターンに従って形成するものであればよい。
イオン照射法以外のDTM等の製造方法として、磁気記録層の非記録部分に物理的な溝をエッチング等で形成し、そこに非磁性材料を埋め込む手法がある。しかし、この方法では工程が複雑となるだけでなく、表面の凹凸が生じ易いこととパーティクルが発生し易いことから、安定した磁気ヘッド浮上の障害となりやすい。
一方で、イオン照射法であれば、物理的な溝の形成工程も、その部分への埋め込み工程もなく、複雑な工程を経ることなく、平滑な表面を維持することができる。そのため、磁気ヘッドの浮上も安定する。このことから本実施例におけるイオン照射量ではイオン照射による磁性材料の熱膨張率などの変化が殆どなく、ヘッドの浮上特性に影響を与えなかったと考えられる。
【0044】
次に、本発明に係る磁気ディスクに磁気記録する方法について説明する。
前述したように、照射イオンを含まない磁気記録領域のキュリー温度(Tcr)と、照射イオンを含む非記録領域のキュリー温度(Tcr)の間の温度(磁気記録温度(Tr))で磁気記録する。このとき、磁気記録する部分のみをTrまで加熱するため、熱アシスト記録方式により磁気記録することが好ましい。
【0045】
熱アシスト記録方式であれば、通常記録できないような高い保磁力の媒体に対しても、記録に必要な部分のみの保磁力を低下させることで、記録することが可能である。スポット加熱の方法は、いくつかある。例えば、特許文献4に例示されているのは、レーザーによるスポット加熱方式である。また、電気抵抗体を記録ヘッド近傍に配置する方法もある。さらに、磁気ディスクの高密度化に伴い、加熱スポット径も光の波長以下の100nm程度が要求され、このため、例えばプラズモン加熱や近接場光加熱方法を用いることができる。ここで、プラズモン加熱とは、寸法が波長以下の物体(微小開口や微粒子など)に光を入射したとき、その物体近傍に局在するように発生する光のことをいう。
【実施例】
【0046】
直径65mmの非磁性で耐熱性のディスク状のガラス基板を準備し、該ガラス基板上に、軟磁性層として80Fe−8Ta−12C(100nm)、次に中間層としてMgO(20nm)、Fe(1 nm)、Au(40 nm)、を室温でスパッタ成膜した。
【0047】
次に、基板を300℃に加熱してFePt(15 nm)をスパッタ法にて成膜し、500℃でアニール処理することで規則化させた。X線にてFePtが規則化合金となっていることを確認した。なお、図5(a)ではFePt層4より上層示す。
さらにCVD法によりダイヤモンドライクカーボンからなるカーボン膜(図示せず)を3nm成膜したものに、室温ナノインプリントレジスト(SOG)を塗布し、レジストマスク層6を成膜した。レジストマスク層厚は、80nmとした(図5(a))。
【0048】
パターニングは、ナノインプリント法にて行い、磁気記録領域幅65nm、非記録領域幅55nmのトラックピッチ120nm、イオンが注入されるパターン凹部のレジスト残膜厚は10nmとした(図5(b))。
パターニングを終えた磁気ディスク上にイオンビームを照射し、イオン注入を行った(図5(c))。イオン注入は、Arイオンを17KeVで1E14 atoms/cm2注入した。
その後、イオン注入を終えた磁気ディスクを、含KOH溶液に30分浸漬し、レジストマスク層を除去した(図5(d))。
その後、保護層(3nm)(図示せず)をCVD法にて成膜し、さらにPFPからなる潤滑層(1nm)(図示せず)をDip法にて成膜した。
最後に、X線にて磁気記録領域のFePt層が規則化合金となっており、非記録領域(イオン注入した部分)は、規則性が劣化していることを確認した。
【0049】
図6の磁化曲線が示すように、この媒体の磁気記録領域のHcは6200 Oeであった。この値は、イオン照射前の媒体にて確認した。イオン照射による磁化曲線の影響を調査するために、この媒体の全面へイオン照射を行うと、図7に示すように磁化曲線が変化しHcは1000Oe程度へ低下する。これは、実際の非記録領域(イオン注入した部分)の磁化曲線に相当する。この媒体へイオン照射を行うと図7に示すように磁化曲線が変化しHcは1000Oe程度へ低下する。イオン照射を行う際のエネルギーは、照射するイオン種(この場合はArイオン)と対象の磁性媒体材料によりモンテカルロ法による計算等を用いて注入深さを計算でき、FePt層全体にイオンが注入されるエネルギーを求めた(この場合はイオンの加速電圧17 KeVとした)。ここでイオン種はArに限らず磁性を効果的に改良することができればどのようなイオン種でもよい。例えばP、O、N、C、B、HなどやCo、W、Si、Ga、Ptの金属イオンなども有効である、価数も1価であっても2価であっても磁性を改良する効果を示せば何でもよい。イオンの照射量はこの実施例では1x1014 atoms/cm2としたが、十分な効果が得られる場合にはこれよりも少ない照射量でも構わない。
【0050】
これらの媒体でのTc(キュリー温度)を比較するために、Hcの温度依存性を測定した結果を図8に示す。このように、従来の比較例1の磁性媒体では温度を200℃程度まで上げても、Hcを4000 Oe程度低下させることができるが常磁性にはなってはいない。ここで本発明によるイオン照射を行った媒体では、実施例1に示すように200℃程度まで温度を上げるとHcはほぼゼロとなりHcは6000 Oe以上低下させることができ、さらにはTcを超えることから常磁性になっていることがわかる。
【0051】
つぎに、イオン照射によってDTMのトラックを分離する溝やBPMのビットを作製する方法を述べる。DTMの溝やBPMのビットをイオン照射によって作る場合には、イオンを遮蔽するための微細なパターンを形成する必要がある。本実施例では、イオン照射によって型くずれが起きにくいSOGレジストを用いた。ここではSOGレジストを用いたがイオンを遮蔽するためであれば、樹脂レジストやまたは別途メタルマスクなどを磁性層上に形成してイオンを遮蔽してもよい。別に接触させたマスクでなくとも、メンブレンマスクやステンシルマスクといった非接触のマスクパターンでもよい。
要はイオンを遮蔽したパターン部分が記録層となり、かつイオンが透過して磁性層を改良した部分が非記録部となるようなイオン照射によるパターン形成方法であればよい。トラックの幅を120nm溝の幅を80nmとしてイオン照射を行い磁気的なパターンを作製した。イオン照射による磁気的なトラック形成後には、レジストの除去を行い、保護膜と潤滑剤を塗布してHDDに必要な浮上ヘッドでの浮上に必要な表面状態とした。ここで浮上量がディスク表面から数nmと非常に低浮上であるHDD用の浮上ヘッドを媒体表面に浮上させ、浮上特性に問題ないことを確認した。
【0052】
ここで、室温で垂直方向に外部磁化を印可して媒体を磁化させたあとに、媒体の磁化状態をMFM(磁気力顕微鏡)により観察を行った結果を図9に示す。これに対して媒体を200℃まで加熱し高温中で垂直方向に磁化させた後にMFMによる磁化状態の観察を行った結果を図10に示す。
このように図9ではトラックの分離が十分でなく不明瞭であり、また記録部の保磁力も高いことから十分に飽和磁化されていない事がわかる。一方で実施例の図10では高温中で磁場を印可しているため記録部の磁化が十分に飽和磁化されており、さらに非記録部は磁化されていないため、記録部と非記録部のコントラストが非常にはっきりとしており明確にトラックが分離されることがわかる。この実施例で作製した磁気記録媒体を用いることでHDD用熱アシスト記録に供する高コントラストなディスクリートトラック媒体やビットパターン媒体を提供することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、熱アシスト方式により記録する磁気ディスクと、その装置で利用することができる。特に、磁気記録領域と非記録領域に高精度で、且つ高コントラストで情報を書き込むことができるため、今後需要が高まることが予想される高密度小型磁気ディスク等へ適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 基板
2 軟磁性層
3 中間層
4 磁気記録層
4a 磁気記録領域
4b 非記録領域
5 保護層
6 レジストマスク層
7 照射イオン
8 潤滑層
10 パターンドメディア断面構造
20 ハードディスクドライブ(HDD)
21 磁気ディスク
22 ジンバルバネ
23 駆動系(ロータリー型アクチュエーター)
24 磁気ヘッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の少なくとも一方の表面上に、磁気情報の記録再生を行うための磁気記録領域と、前記磁気記録領域を磁気的に分離するための非記録領域とが、基板の面内方向において規則的に配置された磁気記録層を有し、
前記非記録領域に
B、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素を含み、熱アシスト記録方式により記録することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項2】
前記非記録領域に含まれるB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素が、イオン照射によって注入された元素であることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項3】
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)と、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)とが、
Tcn < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項4】
前記磁気記録領域の磁気異方性定数が5×106以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項5】
前記磁気記録層にFePt系合金層を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクであって、基板上に少なくとも、磁気異方性定数が5×106以上の磁気記録層を成膜後、当該磁気記録層の上方において所定の部分をマスキングし、イオン照射することにより、照射されたイオンを含む領域とイオンを含まない領域を形成するパターン形成工程を有することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法であって、
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)、および
磁気記録時の温度である磁気記録温度(Tr)が、
Tcn ≦ Tr < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法。
【請求項1】
基板の少なくとも一方の表面上に、磁気情報の記録再生を行うための磁気記録領域と、前記磁気記録領域を磁気的に分離するための非記録領域とが、基板の面内方向において規則的に配置された磁気記録層を有し、
前記非記録領域に
B、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素を含み、熱アシスト記録方式により記録することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項2】
前記非記録領域に含まれるB、P、Si、F、C、In、Bi、Kr、Ar、Xe、W、As、Ge、Mo、Sn、N2、O2、Ne、He、H2のうちの1種または2種以上の元素が、イオン照射によって注入された元素であることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項3】
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)と、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)とが、
Tcn < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項4】
前記磁気記録領域の磁気異方性定数が5×106以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項5】
前記磁気記録層にFePt系合金層を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスク。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクであって、基板上に少なくとも、磁気異方性定数が5×106以上の磁気記録層を成膜後、当該磁気記録層の上方において所定の部分をマスキングし、イオン照射することにより、照射されたイオンを含む領域とイオンを含まない領域を形成するパターン形成工程を有することを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法であって、
前記非記録領域のキュリー温度(Tcn)、
前記記録領域のキュリー温度(Tcr)、および
磁気記録時の温度である磁気記録温度(Tr)が、
Tcn ≦ Tr < Tcr
の関係を満たすことを特徴とする熱アシスト記録用磁気ディスクへの磁気記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−216155(P2011−216155A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83553(P2010−83553)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(510210911)ダブリュディ・メディア・シンガポール・プライベートリミテッド (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(510210911)ダブリュディ・メディア・シンガポール・プライベートリミテッド (53)
【Fターム(参考)】
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