説明

熱交換器、及び熱交換器システム

【課題】配管が接続される熱交換器のパイプの破損を抑制することを目的とする。
【解決手段】熱交換器10は、天板11、底板12及び冷媒流通部13を有する。コネクタ50は筒状の形状を有し、一方の端部51から所定距離を隔てた位置の外周面上にフランジ部53が形成されている。コネクタ50の他方の端部52には配管60が取り付けられる。導入側取付部14は熱交換器10から突出して設けられ、冷媒流通部13に連通する中空部を有する。導入側取付部14の中空部には、コネクタの一方の端部51が挿入される。第1のリテーナ30は、コネクタ50のフランジ部53に係合することにより、コネクタ50を導入側取付部14に対して抜け止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両に搭載される熱交換器に関し、特に、コネクタが取り付けられる熱交換器に関する。また、本発明は、熱交換器にコネクタが取り付けられた熱交換器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの電動車両のように、電動機によって走行する車両が知られている。このような電動車両には、電動機の他に、充放電可能なバッテリ、電動機とバッテリとの間で授受される電力を制御するインバータなどが搭載されている。電動機やインバータなどは動作に伴って発熱する。従って、電動機やインバータなどから発せられた熱を除去して冷却するために、冷媒を循環させて熱を運び出す熱交換器が用いられる。
【0003】
従来技術に係る熱交換器は、内部に冷媒が流れる中空のケースと、冷媒をケースの内部に導入するための流入側パイプと、冷媒を外部に排出するための流出側パイプとを有する。流入側パイプと流出側パイプとにはそれぞれホースが取り付けられ、ポンプから吐き出された冷媒が、ホースを通って流入側パイプからケース内に供給される。電動機やインバータで発生した熱は冷媒に放たれ、冷媒は流出側パイプから排出される。
【0004】
従来においては、熱交換器のパイプにホースを取り付けるために、パイプを長くして熱交換器のケースから外側に突出させている。ケースから突出したパイプをホース内に挿入した状態で、ホースの外側からホースバンドで締め付けることにより、ホースがパイプに固定される。
【0005】
下記特許文献1には、パイプとホースとの間にクイックコネクタを設け、パイプをクイックコネクタ内に挿入して固定することにより、パイプとホースとを簡便に接続できる機構が開示されている。
【0006】
下記特許文献2には、パイプとホースとの間にL字型のコネクタを設け、パイプをコネクタ内に挿入して固定する機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−234024号公報
【特許文献2】特開2005−265013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のように、従来においては、熱交換器のパイプをホース内又はコネクタ内に挿入して固定している。従って、ホース又はコネクタがパイプから外れ難いように、ホース又はコネクタをパイプに取り付けるためには、熱交換器から突出するパイプを長くして、ホース内又はパイプ内に挿入されるパイプの長さを確保する必要がある。また、ホース内又はコネクタ内にはOリングが設置される。パイプにおいてOリングが当接する部分は、平坦性を確保する必要があるため、その部分の長さを確保する必要がある。
【0009】
しかしながら、振動などによる荷重が熱交換器に加わった場合に、パイプを長くするほど、ホース内又はコネクタ内に挿入されたパイプの根元に曲げや圧縮などの力が集中しやすくなるため、パイプが破損するおそれがある。
【0010】
本発明は、配管が接続される熱交換器のパイプの破損を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、熱交換器において、冷媒流通部を有する熱交換器本体と、前記熱交換器本体の一部から突出して設けられ、突起部が形成されたコネクタが挿入される中空部を有する取付部と、前記取付部に固設された係合部と、を備え、前記係合部は、前記コネクタの前記突起部を含む領域が前記中空部に挿入された状態で、前記コネクタが挿入される方向とは反対側において前記突起部に当接することにより、前記コネクタが挿入される方向とは反対方向への前記コネクタの移動を規制することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る熱交換器において、前記取付部は前記中空部に繋がる開口部を有し、前記係合部は、前記開口部を介して前記中空部に挿入されて前記取付部に対して着脱可能に設けられ、前記係合部を、前記開口部を介して前記中空部内に突出させ、前記コネクタが挿入される方向とは反対側において前記突起部に当接させて、前記反対方向への前記コネクタの移動を規制することが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る熱交換器において、前記取付部の前記中空部の内面に装着され、前記中空部に挿入された前記コネクタの外周面に密着するシール部材を更に有することが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る熱交換器において、前記取付部の前記中空部内であって前記中空部に挿入された前記コネクタの前記突起部よりも前記冷媒流通部側に設けられ、前記コネクタの前記冷却流通部側への移動により前記突起部によって前記冷却流通部側に押圧されて変形する緩衝部材を更に有することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、コネクタと熱交換器とを備え、前記コネクタは、筒状の形状を有し、一方の端部から所定距離を隔てた位置の外周面上に突起部が形成され、他方の端部に配管が取り付けられており、前記熱交換器は、冷媒流通部を有する熱交換器本体と、前記冷媒流通部に連通する中空部を有し、前記熱交換器本体の一部から突出して設けられ、前記コネクタの前記一方の端部が前記中空部に挿入された取付部と、前記取付部に固設され、前記コネクタの前記突起部を含む領域が前記中空部に挿入された状態で、前記コネクタが挿入される方向とは反対側において前記突起部に当接することにより、前記コネクタが挿入される方向とは反対方向への前記コネクタの移動を規制する係合部と、を有する、ことを特徴とする熱交換器システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、配管が取り付けられるコネクタを取付部の中空部内に挿入し、係合部によってコネクタの移動を規制することにより、熱交換器の取付部をコネクタ内又は配管内に挿入せずに、熱交換器と配管とを接続することが可能となる。このような態様でコネクタを熱交換器に取り付けることにより、取付部の長さを確保しなくても、熱交換器と配管とを接続することができるため、取付部への応力の集中が緩和され、熱交換器のパイプの破損を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る熱交換器、コネクタ、及び配管を示す上面図である。
【図2】熱交換器を示す断面図と、コネクタ及び配管を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る熱交換器の取付部、リテーナ、及びコネクタを示す斜視図である。
【図4】熱交換器の取付部にコネクタを挿入したときのリテーナの動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態に係る熱交換器を示す断面図、及びコネクタを示す側面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る熱交換器の取付部を示す断面図と、コネクタを示す側面図である。
【図7】変形例に係る熱交換器を示す側面図と、コネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る熱交換器について、図を用いて説明する。一例として、ハイブリッド車両のインバータ用の熱交換器について説明する。冷媒としては、腐食防止性能及び凍結防止性能を有するLLC(ロングライフクーラント)を使用することができる。
【0019】
図1から図3を参照して、本実施形態に係る熱交換器について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る熱交換器、コネクタ、及び配管を示す上面図である。図2は、熱交換器を示す断面図と、コネクタ及び配管を示す側面図である。図3は、本発明の実施形態に係る熱交換器の取付部、リテーナ、及びコネクタを示す斜視図である。
【0020】
本実施形態においては、熱交換器10と配管60とをコネクタ50を介して接続する。コネクタ50は熱交換器10に取り付けられて、第1のリテーナ30と第2のリテーナ40とによって熱交換器10に固定される。配管60の材料としては、樹脂又は金属が用いられる。コネクタ50は、円筒状などの筒状の形状を有する。また、一例として、コネクタ50は、L字状に折れ曲がった形状を有する。コネクタ50の一方の端部51から所定距離を隔てた位置の外周面上には、環状に突出するフランジ部53(突起部)が形成されている。コネクタ50の他方の端部52には、配管60が取り付けられる。コネクタ50の端部52を配管60内に挿入した状態で、配管60の外側からホースバンド61で締め付けることにより、配管60がコネクタ50に固定される。熱交換器10と配管60とコネクタ50とが接続されて、熱交換器システムを構成する。
【0021】
図2に示すように、熱交換器10は、天板11と、天板11に対向して設けられた底板12と、天板11及び底板12の間に形成される冷媒流通部13と、を有する。天板11と底板12と冷媒流通部13とによって、熱交換器本体が構成される。天板11の端部は、例えば曲げ加工されており、その曲げ加工された部分と底板12とがロウ付けなどの接続技術によって接合されている。天板11と底板12とが接合されて、天板11と底板12との間に密閉された空間である冷媒流通部13が形成される。天板11及び底板12の材料としては、例えばアルミニウムなどの金属が用いられる。天板11の表面には、例えば図示しない車両用のインバータが取り付けられる。
【0022】
図1及び図2に示すように、熱交換器10の側面には、冷媒を冷媒流通部13に導入するための導入側取付部14と、冷媒を冷媒流通部13から排出するための排出側取付部15とが設けられている。導入側取付部14及び排出側取付部15は、円筒状などの筒状の形状を有し、熱交換器10の側面から外側に向けて突出して設けられている。導入側取付部14及び排出側取付部15の中空部は、冷媒流通部13に繋がっており、冷媒流通部13に連通している。従って、熱交換器10は、導入側取付部14及び排出側取付部15の中空部を除いて外部から密閉された容器であり、その中に形成された冷媒流通部13に冷媒が流される。また、導入側取付部14及び排出側取付部15の中空部には、コネクタ50が挿入される。
【0023】
以下では、導入側取付部14、排出側取付部15、及びコネクタ50は、それぞれ円筒状の形状を有するものとして説明する。また、導入側取付部14と排出側取付部15とは同じ構造を有するため、以下では導入側取付部14について説明し、排出側取付部15の説明を省略する。
【0024】
図2及び図3に示すように、導入側取付部14は、天板11から外側に延びて設けられた部材と、底板12から外側に延びて設けられた部材とによって円筒状に構成されている。一例として、導入側取付部14は、天板11と底板12とに一体的に設けられている。導入側取付部14の中空部の内径はコネクタ50の外径よりも大きく、導入側取付部14の中空部にコネクタ50の端部51が挿入される。
【0025】
導入側取付部14の上半部には、導入側取付部14の先端側から順番に、左右一対の開口部16と左右一対の開口部18とが、それぞれ左右対称に形成されている。2つの開口部16の間は仕切り部17となっており、2つの開口部18の間は仕切り部19となっている。
【0026】
図3に示すように、第1のリテーナ30は、一部が開口して導入側取付部14の外周の一部を囲むコの字状に形成されている。第1のリテーナ30は、平板状の基板部31の両側から下方に突出して設けられた左右一対の抜止部32a、32bを有する。基板部31は、ほぼ平板状に形成されており、導入側取付部14の上方から嵌合可能に形成されている。抜止部32a、32bは、基板部31からそれぞれ左右対称で下方に延びる長細板状に形成されている。抜止部32a、32bは、導入側取付部14の開口部16に上方から差込可能となっている。抜止部32a、32bの上端部の相互間には、溝33が形成されている。溝33は、導入側取付部14の仕切り部17に嵌合可能に形成されている。第1のリテーナ30は、例えば弾性変形可能な樹脂によって構成されている。また、抜止部32aと抜止部32bとの間の距離は、コネクタ50の外径よりも長く、フランジ部53の外径よりも短い。
【0027】
第2のリテーナ40は、一部が開口して導入側取付部14の外周の一部を囲むコの字状に形成されている。第2のリテーナ40は、互いに対向して配置された平板状の基板部41及び基板部42を有する。また、第2のリテーナ40は、基板部41、42のそれぞれの両側から下方に突出して設けられた左右一対の抜止部43a、43bを有する。基板部41、42は、ほぼ平板状に形成されており、導入側取付部14の上方から嵌合可能に形成されている。抜止部43a、43bは、基板部41、42からそれぞれ左右対称で下方に延びる長細板状に形成されている。基板部41と基板部42との間には、基板部41、42、及び抜止部43a、43bに沿って緩衝部45が設けられている。基板部41、42、及び抜止部43a、43bは、緩衝部45にそれぞれ接続されている。緩衝部45は、基板部41と基板部42とを結ぶ方向に加わる圧縮荷重を緩和する機能を有する。緩衝部45は、例えば蛇腹形状を有する部材、バネやゴムなどの弾性部材、又は、発泡部材などの塑性変形する部材で構成されている。すなわち、基板部41と基板部42とを結ぶ方向に圧縮荷重が加わった場合に、緩衝部45は、その圧縮荷重に応じて縮む部材であってもよいし、その圧縮荷重によって潰れる部材であってもよい。抜止部43a、43b、及び緩衝部45は、導入側取付部14の開口部18に上方から差込可能となっている。抜止部43a、43bの上端部の相互間には、溝44が形成されている。溝44は、導入側取付部14の仕切り部19に嵌合可能に形成されている。また、抜止部43aと抜止部43bとの間の距離は、コネクタ50の外径よりも長く、フランジ部53の外径よりも短い。
【0028】
次に、図1から図4を参照して、熱交換器10の導入側取付部14にコネクタ50を取り付ける手順について説明する。図4は、熱交換器の取付部にコネクタを挿入したときのリテーナの動作を説明するための図である。まず、第1のリテーナ30の抜止部32a、32bを導入側取付部14の開口部16の上方から導入側取付部14の中空部に挿入し、基板部31を下方に押し込む。第1のリテーナ30の溝33が、導入側取付部14の仕切り部17に嵌合される。これにより、第1のリテーナ30の動きが規制される。なお、第1のリテーナ30を上方に引き抜くことにより、溝33と仕切り部17との嵌合が外れて、第1のリテーナ30を導入側取付部14から取り外すことができる。このように、第1のリテーナ30は、導入側取付部14に対して着脱可能に設けられている。また、第2のリテーナ40の抜止部43a、43bと緩衝部45とを、導入側取付部14の開口部18の上方から導入側取付部14の中空部に挿入し、基板部41、42を下方に押し込む。第2のリテーナ40の溝44が、導入側取付部14の仕切り部19に嵌合される。これにより、第2のリテーナ40の動きが規制される。なお、第2のリテーナ40を上方に引き抜くことにより、溝44と仕切り部19との嵌合が外れて、第2のリテーナ40を導入側取付部14から取り外すことができる。このように、第2のリテーナ40は、導入側取付部14に対して着脱可能に設けられている。
【0029】
そして、コネクタ50の端部51を導入側取付部14の中空部に挿入する。なお、図中において、矢印Aの方向が挿入方向に相当する。第1のリテーナ30の抜止部32aと抜止部32bとの間の距離は、コネクタ50の外径よりも長いため、コネクタ50は、抜止部32aと抜止部32bとの間を通って導入側取付部14の内部に挿入される。また、第2のリテーナ40の抜止部43aと抜止部43bとの間の距離は、コネクタ50の外径よりも長いため、コネクタ50は、抜止部43aと抜止部43bとの間を通って導入側取付部14の内部に挿入される。
【0030】
一方、コネクタ50のフランジ部53の外径は、第1のリテーナ30の抜止部32aと抜止部32bとの間の距離よりも長い。従って、コネクタ50を、導入側取付部14の内部において挿入方向に押し進めると、フランジ部53が第1のリテーナ30を通過するときに抜止部32a、32bを外側に押圧し、第1のリテーナ30を外側に広げるように変形させる。このように第1のリテーナ30が外側に広がるため、フランジ部53が抜止部32a、32bを乗り越えて、その後方に進入可能となる。フランジ部53が第1のリテーナ30の抜止部32a、32bの後方に進入すると、図4に示すように、第1のリテーナ30の抜止部32a、32bへの押圧が解除されて、第1のリテーナ30は元の形状に戻る。フランジ部53の外径は、抜止部32aと抜止部32bとの間の距離よりも長いため、フランジ部53は、挿入方向とは反対側(前方側)において抜止部32a、32bに当接する。すなわち、第1のリテーナ30の抜止部32a、32bは、挿入方向とは反対側(前方側)においてフランジ部53と係合する。その結果、コネクタ50は、抜け方向(挿入方向とは反対の方向)への移動が規制され、導入側取付部14に対して抜け止めされて熱交換器10に接続される。なお、抜止部32a、32bが係合部の一例に相当する。
【0031】
また、コネクタ50のフランジ部53の外径は、第2のリテーナ40の基板部41に設けられた抜止部43aと抜止部43bとの間の距離よりも長い。従って、フランジ部53が第1のリテーナ30の抜止部32a、32bを乗り越えた後、フランジ部53は、抜止部43a、43bを乗り越えることができず、挿入方向側(後方側)において抜止部43a、43bに当接する。すなわち、第2のリテーナ40の抜止部43a、43bは、挿入方向側(後方側)においてフランジ部53と係合する。その結果、コネクタ50は、挿入方向への移動が規制される。
【0032】
以上のように、第1のリテーナ30と第2のリテーナ40とによって、コネクタ50の移動が規制されて、コネクタ50が導入側取付部14に固定される。すなわち、第1のリテーナ30によって挿入方向とは反対の方向へのコネクタ50の移動が規制され、第2のリテーナ40によって挿入方向へのコネクタ50の移動が規制される。
【0033】
また、図2に示すように、導入側取付部14の内面であって開口部18よりも冷媒流通部13側には、凹部などの図示しないシール部材収容部が形成されている。このシール部材収容部には、Oリングなどのシール部材20が配置されている。すなわち、シール部材20は、第1のリテーナ30及び第2のリテーナ40よりも冷媒流通部13側(挿入方向側)に配置されている。シール部材20は、弾性を有する樹脂などで構成されている。一例として、シール部材20は、ゴム又はプラスチックで構成されている。シール部材20がコネクタ50の外周面に密着してシールを図ることが可能となっている。
【0034】
なお、排出側取付部15は導入側取付部14と同じ構成を有し、排出側取付部15にも、第1のリテーナ30と第2のリテーナ40とによってコネクタ50が固定される。また、排出側取付部15の内面にも、第1のリテーナ30及び第2のリテーナ40よりも冷媒流通部13側(挿入方向側)にシール部材20が配置されている。
【0035】
導入側取付部14と排出側取付部15とにそれぞれコネクタ50を取り付け、コネクタ50を介して熱交換器10に配管60を接続する。図示しないポンプから吐き出された冷媒は配管60を通り、導入側取付部14に取り付けられたコネクタ50を介して冷媒流通部13に供給される。例えば図示しないインバータで発生した熱は熱交換器10に伝導し、冷媒に放熱される。そして、冷媒は、排出側取付部15に取り付けられたコネクタ50を介して冷媒流通部13から配管60に排出される。これにより、発熱したインバータが冷却される。
【0036】
以上のように、配管60が取り付けられたコネクタ50を導入側取付部14内に挿入し、第1のリテーナ40によってコネクタ50を導入側取付部14に対して抜け止めすることにより、導入側取付部14をコネクタ50内又は配管60内に挿入せずに、熱交換器10と配管60とを接続することが可能となる。このような態様でコネクタ50を熱交換器10に取り付けることにより、導入側取付部14の長さを確保しなくても、熱交換器10と配管60とを接続することができるため、導入側取付部14への応力の集中を緩和して、熱交換器10のパイプの破損を抑制することが可能となる。すなわち、本実施形態では、配管60が取り付けられるコネクタ50を導入側取付部14に挿入しているため、導入側取付部14を配管60内に直接挿入して固定する場合と比べて、導入側取付部14を短くして、熱交換器10と配管60とを接続することが可能となる。そのことにより、導入側取付部14の根元に加わる応力を緩和することが可能となる。例えば、導入側取付部14は、第1のリテーナ30、第2のリテーナ40、及びシール部材20を設置するためのスペースを確保できる長さがあればよい。そのため、導入側取付部14を配管60内に直接挿入して固定する場合と比べて、導入側取付部14を短くすることが可能となるため、導入側取付部14の根元に加わる応力を緩和することが可能となる。
【0037】
また、図2及び図5を参照して、上下方向又は左右方向の振動がコネクタ50に発生して、コネクタ50を曲げる方向に荷重が加わる場合について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る熱交換器を示す断面図、及びコネクタを示す側面図である。上下方向又は左右方向(図中の矢印Bの方向)の振動がコネクタ50に発生すると、導入側取付部14の内側に配置されたシール部材20が、振動による荷重を吸収する。上述したようにシール部材20は、ゴムやプラスチックなどの弾性を有する部材で構成されているため、シール部材20はコネクタ50に発生した振動を吸収して、熱交換器10に伝達する荷重を軽減することが可能となる。そのことにより、熱交換器10のパイプの破損を抑制することが可能となる。なお、図5においては説明のために、第1のリテーナ30及び第2のリテーナ40を省略し、振動によるコネクタ50の動きを強調して図示している。
【0038】
また、図2及び図6を参照して、挿入方向(矢印Aの方向)にコネクタ50を圧縮する荷重が加わる場合について説明する。図6は、本発明の実施形態に係る熱交換器の取付部を示す断面図と、コネクタを示す側面図である。コネクタ50に圧縮荷重が加わる前は、図6(a)に示すように、第1のリテーナ30によってコネクタ50が抜け止めされ、第2のリテーナ40によって挿入方向へのコネクタ50の移動が規制されている。例えば車両衝突時に、コネクタ50に対して挿入方向(矢印Aの方向)に圧縮荷重が加わると、図6(b)に示すように、コネクタ50は挿入方向に移動する。この場合、コネクタ50の外周面上に形成されたフランジ部53が、第2のリテーナ40を挿入方向に押圧する。具体的には、フランジ部53が、第2のリテーナ40の基板部41の抜止部43a、43bに当接して、基板部41を挿入方向に押し込む。基板部41が挿入方向に押し込まれることにより、基板部41と基板部42との間に設けられた緩衝部45に、挿入方向への圧縮荷重が加わる。緩衝部45は、蛇腹形状を有する部材、弾性部材、又は、塑性変形する部材で構成されているため、緩衝部45は、圧縮荷重によって挿入方向に縮み又は潰れて、挿入方向への圧縮荷重を吸収することができる。また、緩衝部45が挿入方向に縮む又は潰れることにより、挿入方向にコネクタ50が移動するためのスペースが確保されるため、熱交換器10に荷重が伝達し難くなる。このように、緩衝部45を導入側取付部14に設けることにより、熱交換器10に伝達する圧縮荷重を軽減することが可能となる。一例として、緩衝部45は、車両衝突時にコネクタ50に発生し得る圧縮荷重によって縮む又は潰れる強度を持っていることが好ましい。
【0039】
上述した実施形態では、第1のリテーナ30と第2のリテーナ40とは別体として説明したが、第1のリテーナ30と第2のリテーナ40とは、導入側取付部14の軸方向(挿入方向)に沿って接続されていてもよい。
【0040】
なお、排出側取付部15は導入側取付部14と同じ構成を有するため、排出側取付部15にコネクタ50を取り付けた場合においても、上述した効果と同じ効果を奏することができる。
【0041】
次に、図7を参照して変形例について説明する。図7は、変形例に係る熱交換器を示す側面図と、コネクタを示す断面図である。上述した実施形態では、コネクタ50を、導入側取付部14及び排出側取付部15内に挿入して固定したが、導入側取付部14及び排出側取付部15をコネクタ50内に挿入して固定してもよい。例えば、コネクタ50の上半部には、左右一対の開口部54と左右一対の開口部55とが、それぞれ左右対称に形成されている。また、導入側取付部14の一方の端部から所定距離を隔てた位置の外周面上には、環状に突出するフランジ部14a(突起部)が形成されている。
【0042】
まず、第1のリテーナ30の抜止部32a、32bをコネクタ50の開口部54の上方からコネクタ50の中空部に挿入する。また、第2のリテーナ40の抜止部43a、43bと緩衝部45とを、コネクタ50の開口部55の上方からコネクタ50の中空部に挿入する。
【0043】
そして、導入側取付部14をコネクタ50の中空部に挿入する。導入側取付部14のフランジ部14aの外径を、第1のリテーナ30の抜止部32aと抜止部32bとの間の距離よりも長くすることで、フランジ部14aが第1のリテーナ30を通過するときに抜止部32a、32bを外側に押圧し、第1のリテーナ30を外側に広げるように変形させる。このように第1のリテーナ30が外側に広がるため、フランジ部14aが抜止部32a、32bを乗り越えて、その後方に進入可能となる。フランジ部14aが第1のリテーナ30の抜止部32a、32bの後方に進入すると、第1のリテーナ30の抜止部32a、32bへの押圧が解除されて、第1のリテーナ30は元の形状に戻る。フランジ部14aの外径は、抜止部32aと抜止部32bとの間の距離よりも長いため、フランジ部14aは、挿入方向とは反対側において抜止部32a、32bに当接する。すなわち、第1のリテーナ30の抜止部32a、32bは、挿入方向とは反対側においてフランジ部14aに係合する。その結果、導入側取付部14は、抜け方向(挿入方向とは反対の方向)への移動が規制される。
【0044】
また、導入側取付部14のフランジ部14aの外径を、第2のリテーナ40の基板部41に設けられた抜止部43aと抜止部43bとの間の距離よりも長くすることで、挿入方向側において抜止部43a、43bに当接する。すなわち、第2のリテーナ40の抜止部43a、43bは、挿入方向側においてフランジ部14aと係合する。その結果、導入側取付部14は、挿入方向への移動が規制される。
【0045】
なお、コネクタ50の内面には、導入側取付部14の外周面に密着してシールを図るシール部材20が配置されている。
【0046】
以上のように、導入側取付部14をコネクタ50内に挿入する場合であっても、第1のリテーナ30と第2のリテーナとによって、導入側取付部14に対するコネクタ50の移動が規制されて、コネクタ50が導入側取付部14に固定される。排出側取付部15にも、同様にコネクタ50が固定される。これにより、熱交換器10と配管60とを接続することが可能となる。
【0047】
なお、導入側取付部14をコネクタ50内に挿入する場合には、導入側取付部14の外周面上にフランジ部14aを形成する必要がある。一方、上述した実施形態のように、導入側取付部14内にコネクタ50を挿入して固定する場合には、導入側取付部14にフランジ部を形成する必要がないため、製造コストや製造の工程数を削減することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 熱交換器、11 天板、12 底板、13 冷媒流通部、14 導入側取付部、15 排出側取付部、16,18 開口部、20 シール部材、30 第1のリテーナ、31,41,42 基板部、32a,32b,43a,43b 抜止部、40 第2のリテーナ、45 緩衝部、50 コネクタ、53 フランジ部、60 配管、61 ホースバンド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器において、
冷媒流通部を有する熱交換器本体と、
前記熱交換器本体の一部から突出して設けられ、突起部が形成されたコネクタが挿入される中空部を有する取付部と、
前記取付部に固設された係合部と、を備え、
前記係合部は、前記コネクタの前記突起部を含む領域が前記中空部に挿入された状態で、前記コネクタが挿入される方向とは反対側において前記突起部に当接することにより、前記コネクタが挿入される方向とは反対方向への前記コネクタの移動を規制することを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
前記取付部は前記中空部に繋がる開口部を有し、
前記係合部は、前記開口部を介して前記中空部に挿入されて前記取付部に対して着脱可能に設けられ、
前記係合部を、前記開口部を介して前記中空部内に突出させ、前記コネクタが挿入される方向とは反対側において前記突起部に当接させて、前記反対方向への前記コネクタの移動を規制することを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の熱交換器において、
前記取付部の前記中空部の内面に装着され、前記中空部に挿入された前記コネクタの外周面に密着するシール部材を更に有することを特徴とする熱交換器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器において、
前記取付部の前記中空部内であって前記中空部に挿入された前記コネクタの前記突起部よりも前記冷媒流通部側に設けられ、前記コネクタの前記冷却流通部側への移動により前記突起部によって前記冷却流通部側に押圧されて変形する緩衝部材を更に有することを特徴とする熱交換器。
【請求項5】
コネクタと熱交換器とを備え、
前記コネクタは、筒状の形状を有し、一方の端部から所定距離を隔てた位置の外周面上に突起部が形成され、他方の端部に配管が取り付けられており、
前記熱交換器は、
冷媒流通部を有する熱交換器本体と、
前記冷媒流通部に連通する中空部を有し、前記熱交換器本体の一部から突出して設けられ、前記コネクタの前記一方の端部が前記中空部に挿入された取付部と、
前記取付部に固設され、前記コネクタの前記突起部を含む領域が前記中空部に挿入された状態で、前記コネクタが挿入される方向とは反対側において前記突起部に当接することにより、前記コネクタが挿入される方向とは反対方向への前記コネクタの移動を規制する係合部と、を有する、
ことを特徴とする熱交換器システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−137127(P2012−137127A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288659(P2010−288659)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】