説明

熱交換器用のフラットチューブの曲げ加工法及び曲げフラットチューブ

【課題】フラットチューブ曲げプロセス後、折り返し弓形部分の断面積及び肉厚が減少しないようにする方法を提供する。
【解決手段】フラットチューブの曲げ方法は、フラットチューブ(1)を中央部分(3)の幅の狭い長手方向側部(10)のところで長手方向軸線(11)に対して180°の角度曲げるステップ、フラットチューブ(1)の内側曲げ半径部(12)を加工するステップ及び/又は曲げ中、フラットチューブ(1)の外側曲げ半径部(13)を大きくするステップを有し、フラットチューブ(1)の総断面積(6)及びフラットチューブ(1)の壁(7)の厚さを曲げ半径部(12,13)においても維持し、チューブ頂面(4)及びチューブ底面(15)を平らに維持し且つ互いに対して平行に整列させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器用のフラットチューブを曲げ加工する方法であって、フラットチューブは、冷媒を運ぶための流入部分、湾曲中央部分、及び還流部分を備え、熱交換器は、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、流入部分及び還流部分の両端部の各々のところでコレクタに連結されている方法及び曲げフラットチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、フラットチューブは、CO2圧力管であり、このCO2圧力管は、高圧又は低圧チューブとして構成されている場合がある。
【0003】
フラットチューブに関する技術の現状の曲げ方法は、先ず最初に、フラットチューブの全長にわたって中央部分をフラットチューブの長手方向軸線を中心として90°の角度ひねり、次に、長手方向軸線に対して横方向に180°の角度曲げ、次に、中央部分を再び90°の角度ひねって還流部分を流入部分と逆に平行に延びるよう構成することから成る。
【0004】
2つの回転運動のために、フラットチューブの中央部分は、例えば15ミリメートルの幅を有するようフィン平面を残す。したがって、フラットチューブのチューブ壁を熱貫流のために完全には利用することができない。
【0005】
技術の現状のもう1つの問題は、設計に起因して、流れ断面積を完全に利用することができないということにある。
【0006】
コレクタを備えたフラットチューブ形熱交換器が、独国特許出願公開第3936109号明細書に記載されている。この熱交換器は、互いに上下に配置されると共に互いに距離を置いて配置され、波形フィンの中間層を備えた複数本のフラットチューブを備えている。各フラットチューブは、少なくとも1つの流入部分及び少なくとも1つの還流部分を有し、これら流入部分及び還流部分を介して、熱交換器の側に形成された入口が、熱交換器の同一の側に形成された出口と流体連通状態にあり、これら部分の断面は、矩形である。各フラットチューブは、湾曲部分を介して互いに連結された直線状流入部分と軸線状還流部分を有する。流入部分と還流部分は両方共、これら端部のところがこれらの幅に関してテーパしている。また、湾曲部分は、その両フェースのところに、その幅に関してテーパした断面を有し、湾曲部分のテーパした断面は、流入部分及び還流部分のテーパした断面のところに位置している。
【0007】
曲げフラットチューブ内の湾曲部分の連結の両端部のところのテーパは、冷媒の流量を減少させ、それ故、熱貫流性能を減少させるという問題がある。
【0008】
さらに、折り返し弓形部分を備えたフラットチューブ及びこのフラットチューブを利用して構成された熱交換器が、独国特許出願公開第10306848号明細書に記載されており、この場合、フラットチューブは、弓形部分に隣接したフラットチューブの平らなチューブ部分の両方が少なくとも側方において互いにずれた長手方向軸線を有する互いに逆の通過方向に長手方向に延びるように曲げられる。折り返し弓形部分は、主曲げ軸線がチューブ長手方向延長部に対して所与の角度だけフラットチューブ平面に平行に延び、フラットチューブ平面は、フラットチューブの長手方向延長部及び側方延長部によって構成される。
【0009】
欧州特許第1036296号明細書では、熱交換器チューブブロック用のフラットチューブが記載されており、これらフラットチューブは、少なくとも1つの折り返し弓形部分を有し、この場合、各フラットチューブは、長手方向におけるその隣接の平らなチューブ部分の両方が、通過方向が互いに逆であり、長手方向軸線が少なくとも側方に互いにずれた状態で延びるよう曲げられる。折り返し弓形部分では、フラットチューブの側方軸線は、積み重ね方向に対して垂直な長手方向及び側方向に平行な平面に対し最大45°の角度をなしている。
【0010】
【特許文献1】独国特許出願公開第3936109号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10306848号明細書
【特許文献3】欧州特許第1036296号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
折り返し弓形部分の問題は、折り返し弓形部分に対するフラットチューブの断面が、冷媒の流量を減少させるよう減少しているということにある。加うるに、折り返し弓形部分の肉厚は、薄い。フィン形態は、フラットチューブの延長部全体にわたって連続していない。
【0012】
本発明の目的は、曲げプロセス後、折り返し弓形部分の断面積及び更に折り返し弓形部分の肉厚が、減少しないように適当に構成された熱交換器用フラットチューブの曲げ加工方法及び曲げフラットチューブを提供することにある。2本の互いにずれた平行なフラットチューブ相互間には、連続したフィン形態が保証される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の問題は、請求項1及び請求項5の特徴記載部分によって解決される。熱交換器用のフラットチューブを曲げ加工する方法であって、フラットチューブは、冷媒のための流入部分、湾曲中央部分、及び還流部分を備え、熱交換器は、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、流入部分及び還流部分の両端部の各々のところでコレクタに連結されており、この方法は、請求項1の特徴記載部分に従って、
a.フラットチューブを中央部分の幅の狭い長手方向側部のところで長手方向軸線に対して180°の角度、曲げるステップ、
b1.フラットチューブの内側曲げ半径部を加工するステップ、及び/又は
b2.曲げ中、フラットチューブの外側曲げ半径部を大きくするステップを有し、
フラットチューブの総断面積及びフラットチューブの壁の厚さを曲げ半径部においても維持し、フラットチューブのチューブ頂面及びチューブ底面を中央部分においても平らに且つ互いに対して平行に形作る。
【0014】
フラットチューブは、曲げプロセス中、その断面積が固定され、フラットチューブは、曲げ装置を用いてマンドレル上で曲げられる。
曲げ中、フラットチューブは、フラットチューブのスプリングバックのために過度に曲げられるのがよい。
【0015】
さらに、フラットチューブを常温で、即ち、室温で、即ち、約20℃で曲げることも可能であり、あらかじめ設定された曲げパラメータを変更するのが有用である。曲げを、室温と150℃の最高温度の温度範囲で実施するのがよい。
【0016】
あらかじめ設定された曲げ速度により内側断面領域の変形に大きな度合まで影響を及ぼすことができる。
【0017】
平らなチューブ頂面と平らなチューブ底面の平行度の維持により、チューブ壁がフィンを連続して備えるよう構成され、それ故、かかるチューブ壁を熱貫流に完全に使用できるので、有利には性能が向上する。
【0018】
本発明の方法を用いて製造して曲げられたフラットチューブでは、曲げフラットチューブは、熱貫流用の冷媒のための流入部分、湾曲中央部分、及び還流部分を備えた曲げフラットチューブであって、曲げフラットチューブは、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法を用いて製造され、熱交換器が、コレクタを有し、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、流入部分及び還流部分の両端部の各々のところでコレクタに連結され、曲げフラットチューブは、請求項5の特徴記載部分に従って、フラットチューブの中央部分は、160°〜180°の角度の平らな曲げ部を備え、曲げ半径部全体では、フラットチューブの断面積及びフラットチューブの壁の厚さは、一定に構成され、フラットチューブの頂面は、中央部分のフラットチューブの底面に連続して平行に整列している。
【0019】
フラットチューブの総断面積は、曲げ半径部で利用される。
【0020】
フラットチューブは、曲げプロセス中、曲げ半径部が加工され、又は曲げ半径部が大きくされる。
【0021】
熱交換器として、非常に効率のよい3流体型のコンパクトな熱交換器を提供でき、この熱交換器は、曲げフラットチューブが他の同じように曲げられたフラットチューブと一緒に、流入部分及び還流部分の端部領域が各々連結されたコレクタを備える。
【0022】
特に、曲げフラットチューブは、CO2流れのためのヘッダ収集チューブ(コレクタ)を備えた組合せ型CO2/空気/グリコール熱交換器に使用できる。
【0023】
CO2冷媒流れについて所与の流れ/流量で熱交換器を設計する場合、チューブの或る特定の幾何学的形状が提供される。チューブの長い側部のところの壁半径部の曲げにより、中央部分内の全体として平らな表面に達することができ、したがって、フィンを2本の隣り合うフラットチューブ相互間の中央部分相互間に連続して配置することができるようになる。
【0024】
本発明により、フラット曲げプロセスに起因して流れ通過総断面積を最適に利用することができる。したがって、設計に起因して、熱貫流の効率を向上させることができる。
【0025】
また、本発明により、フラットチューブをフィンにはんだ付け又はろう付け際の熱力学的な利点を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明を添付の図面の幾つかの図を参照して実施形態の例によって詳細に説明する。
【0027】
以下において、図1と図2を共に参照する。
【0028】
図1には、熱伝達のための冷媒の運搬のための流入部分2、湾曲中央部分3、及び還流部分4を備えた曲げフラットチューブ1が示されており、熱交換器(図示せず)は、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、流入部分2及び還流部分4の両端部の各々のところでコレクタに連結されている。
【0029】
本発明によれば、フラットチューブ1の中央部分3は、160°〜180°の角度の平らな曲げ部5を備え、中央部分3では、フラットチューブ1の断面積6及びフラットチューブ1の壁7の厚さは、ほぼ一定に構成され、フラットチューブの頂面14は、中央部分3のフラットチューブの底面15に連続して平行に整列している。
【0030】
冷媒として、二酸化炭素(CO2)、空気及びグリコールの三元組合せを使用するのがよい。
【0031】
例えば、フラットチューブ1は、矩形断面領域6を備えたマルチポートチューブであるのがよく、この断面領域は、矩形の一方の側では6.0mm〜8.5mm、矩形の上述の側とは垂直の他方の側に関して1.5mm〜2.8mmのものであり、それにより、マルチポートチューブ1は、側方に180°の角度中央が曲げられる。マルチポートチューブ1は、連結具として、流入部分2について入口ポート8及び還流部分4について出口ポート9を有し、両方のポート8,9は、はんだ付け又はろう付け後、コレクタ(図示せず)に連結される。
【0032】
曲げプロセス後、曲げフラットチューブ1の連続したチューブ頂面14及びチューブ底面15を完全なフィン連結面として利用することができる。
【0033】
熱交換器用のフラットチューブを曲げ加工する方法であって、フラットチューブ1は、冷媒の運搬ための流入部分2、湾曲中央部分3、及び還流部分4を備え、熱交換器は、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、流入部分2及び還流部分4の両端部の各々のところでコレクタに連結されており、この方法は、
a.フラットチューブ1を中央部分3の幅の狭い長手方向側部10のところで長手方向軸線11に対して180°の角度、曲げるステップ、
b1.フラットチューブ1の内側曲げ半径部12を加工するステップ、及び/又は
b2.曲げ中、フラットチューブ1の外側曲げ半径部13を大きくするステップを有し、
フラットチューブ1の総断面積6及びフラットチューブ1の壁7の厚さを曲げ半径部12,13においても維持し、フラットチューブ1のチューブ頂面4及びチューブ底面15を平らに維持し且つ互いに対して平行に整列させる。
【0034】
曲げ中、フラットチューブ1の壁7の厚さは、一定のままであるように設定されるのがよい。
【0035】
フラットチューブ1は、曲げプロセス中、その断面積6が固定され、フラットチューブ1は、曲げ装置を用いてマンドレル上で曲げられる。
【0036】
曲げ中、フラットチューブは、フラットチューブ1のスプリングバックのために過度に曲げられるのがよい。
【0037】
マルチフロー型CO2/空気/グリコール熱交換器では、曲げCO2フラットチューブ1は、コレクタに割り当てられた一方の側でのみポート8,9に固定される。
【0038】
本発明のフラットチューブ1は、構成材料としてAA3103又はAA6003で作られている。
【0039】
曲げプロセスを室温、例えば20℃、150℃の最高動作温度、又はこれらの間の温度で実施するのがよい。
【0040】
本発明により、曲げ中、フラットチューブ1の壁7の肉厚の圧縮及び変形を回避することができる。あらかじめ設定された曲げ速度により内側断面領域の変形に大きな度合まで影響を及ぼすことができ、それにより、曲げパラメータを変更するのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の曲げフラットチューブの略図である。
【図2】図1のA−A線に沿って見た曲げフラットチューブの断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 フラットチューブ
2 流入部分
3 中央部分
4 還流部分
5 平らな曲げ部
6 断面領域
7 壁
8 接続部
9 接続部
10 長手方向側部
11 長手方向軸線
12 内側曲げ半径部
13 外側曲げ半径部
14 チューブ頂面
15 チューブ底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器用のフラットチューブを曲げ加工する方法であって、前記フラットチューブは、冷媒のための流入部分、湾曲中央部分、及び還流部分を備え、前記熱交換器は、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、前記流入部分及び還流部分の両端部の各々のところでコレクタに連結されており、前記方法が、本質的に、次のステップ、即ち、
a.前記フラットチューブ(1)を前記中央部分(3)の幅の狭い長手方向側部(10)のところで長手方向軸線(11)に対して180°の角度、曲げるステップ、
b1.前記フラットチューブ(1)の内側曲げ半径部(12)を加工するステップ、及び/又は
b2.曲げ中、前記フラットチューブ(1)の外側曲げ半径部(13)を大きくするステップを有し、
前記フラットチューブ(1)の総断面積(6)及び前記フラットチューブ(1)の壁(7)の厚さを前記曲げ半径部(12,13)においても維持し、前記フラットチューブ(1)のチューブ頂面(4)及びチューブ底面(15)を平らに維持し且つ互いに対して平行に整列させる、方法。
【請求項2】
曲げは、室温と150℃の最高温度との温度範囲で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記フラットチューブ(1)は、前記曲げプロセス中、その断面積(6)が固定され、前記フラットチューブ(1)は、曲げ装置を用いてマンドレル上で曲げられる、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
曲げ中、前記フラットチューブ(1)は、前記フラットチューブ(1)のスプリングバックのために過度に曲げられる、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の方法。
【請求項5】
熱貫流用の冷媒のための流入部分、湾曲中央部分、及び還流部分を備えた曲げフラットチューブであって、前記曲げフラットチューブは、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の方法を用いて製造され、熱交換器が、コレクタを有し、互いにずれた平行な少なくとも2本のフラットチューブが、これらの間に設けられたフィンを備えた状態で、前記流入部分及び還流部分の両端部の各々のところで前記コレクタに連結されている曲げフラットチューブにおいて、前記フラットチューブ(1)の前記中央部分(3)は、160°〜180°の角度の平らな曲げ部(5)を備え、曲げ半径部(12,13)全体では、前記フラットチューブ(1)の断面積(6)及び前記フラットチューブ(1)の壁(7)の厚さは、一定に構成され、前記フラットチューブの頂面(14)は、前記中央部分(3)の前記フラットチューブの底面(15)に連続して平行に整列している、曲げフラットチューブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−283406(P2007−283406A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105086(P2007−105086)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】