説明

熱交換器

【課題】実際に製作可能な構造で、小型、高出力かつ瞬時目標温度(単位時間あたりの昇温到達可能な温度)を高め短時間で目標の湯温の湯を供給可能とした直交対向流熱交換器を提供すること。
【解決手段】第一流体の流路と第二流体の流路を直交対向流配置して構成した熱交換器であって、第一流体が流れる複数の横流れ流路からなる層と第二流体が流れる複数の縦流れ流路からなる層とを複数重ねて配置して小間隔流路ブロックを形成し、この小間隔流路ブロックを横流れ流路が連結する方向に複数個直列接続して熱交換部を形成してなり、一端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路を入口として他端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路が出口となるように第一流体の流路を連続して形成し、かつ、他端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路を入口として一端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路が出口となるように第二流体の流路を連続して形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒ−トポンプ暖房機、ヒ−トポンプ給湯機等に組み込まれている熱交換器に関するものであり、小型、高出力かつ被加熱流体を加熱し瞬時に目標温度に到達可能な熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒ−トポンプ暖房機並びにヒ−トポンプ給湯機には様々な熱交換器が用いられている。特許文献1〜6はその代表例である。これらの特許文献1〜6に開示されている熱交換器の大きさはヒ−トポンプ暖房機並びにヒ−トポンプ給湯機の室外機の幅と同等なものが多く、銅を代表とする金属材料が多く使用されている。また、これらの熱交換器は貯湯タンクとセットで使用される場合、さらに多量な金属材料が使用され、設置スペ−スの確保などさまざまな解決すべき問題点があった。
【0003】
近年、電力利用の高効率化、CO排出減少の有効手段としてヒートポンプ技術が有効視されているが、ヒ−トポンプ暖房機並びにヒ−トポンプ給湯機の普及には上記熱交換器の問題点を克服することが必要である。一方、従来の燃焼式ボイラをヒ−トポンプ暖房機に置き換える場合、その熱交換能力は10kW以上必要となり、これを特許文献1〜6に開示されている熱交換器で構成すると全体のサイズが大きくなり、上記の問題点が更に大きくなる。
【0004】
このため、小型、高出力かつできるだけ短時間で被加熱流体である水を目標の湯温まで昇温可能な熱交換器の研究開発は急務となり、これらを改善した技術として特許文献7〜9が既に開示されている。
【0005】
特許文献7には、拡散接合技術を用いたコンパクトで耐圧性に優れる一体型の積層構造熱交換器が提案されている。この熱交換器は非常にコンパクトであるため、瞬間的に作動流体間の熱交換が行われ、かつ熱交換能力が高いものを実現している。
【0006】
特許文献8には、流路案内板付きの箱型の筐体と曲がり菅の組み合わせにより熱交換器を構成した例が提案されている。
【0007】
特許文献9には、U字状に湾曲したフィン付管をシェル本体部に収め、伝熱管の外側にフィンを設け、伝熱促進と共にコンパクト性の高い熱交換器が提案されている。また、瞬時目標温度(単位時間あたりの昇温到達可能な温度)を高めることを考慮し、水側の圧力損失が小さい比較的単純な構造が提案されている。
【特許文献1】特開2001−280862号公報
【特許文献2】特開2001−201275号公報
【特許文献3】特開2003−214778号公報
【特許文献4】特開2003−202194号公報
【特許文献5】特開2003−343995号公報
【特許文献6】特開2004−257691号公報
【特許文献7】特開2005−282951号公報
【特許文献8】特開2007−240098号公報
【特許文献9】特開2007−298266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、作動流体間の熱交換を行う場合には対向流が最も効率がよいため、熱交換器を設計する場合には作動流体の方向が対向流となるように設計することが理想的である。この観点から見ると、前記特許文献7に開示されている熱交換器は、小型化の観点からは非常に理想的構造であるが、作動流体流れの形式が直交流であるため熱交換有効率の向上に不向きと言える。
【0009】
前記特許文献8では、作動流体の方向が対向流となっているものの、具体的な寸法条件を提示していないため、この熱交換器のコンパクト性や熱交換能力、またはどれだけの時間で目標とする温度の湯を沸かすことが可能か不明である。
【0010】
前記特許文献9における作動流体の方向は直交順向流であり、この構成では熱交換有効率の向上を期待できない。また、通常の家庭では45℃のお湯を水道の蛇口を開いた際の水の流量およそ8リットル/minで供給するニーズがあると述べているが、本発明の給湯能力がそれを満たしているかどうかは明確に示されていない。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、実際に製作可能な構造で、小型、高出力かつ瞬時目標温度(単位時間あたりの昇温到達可能な温度)を高め短時間で目標の湯温の湯を供給可能とした熱交換器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1は、第一流体の流路と第二流体の流路を直交対向流配置して構成した熱交換器であって、前記第一流体が流れる複数の横流れ流路からなる層と前記第二流体が流れる複数の縦流れ流路からなる層とを複数重ねて配置して小間隔流路ブロックを形成し、この小間隔流路ブロックを横流れ流路が連結する方向に複数個直列接続して熱交換部を形成してなり、一端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路を入口として他端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路が出口となるように第一流体の流路を連続して形成し、かつ、他端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路を入口として一端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路が出口となるように第二流体の流路を連続して形成したことを特徴とする熱交換器である。
【0013】
本発明の請求項2は、請求項1に加えて、複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第二流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの縦流れ流路の出口と入口とを第二流体を混合する混合部によって接続したことを特徴とする熱交換器である。
【0014】
本発明の請求項3は、請求項1又は2に加えて、複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第一流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの横流れ流路の出口と入口とを第一流体を混合する混合部によって接続したことを特徴とする熱交換器である。
【0015】
本発明の請求項4は、請求項1乃至3に加えて、前記小間隔流路ブロックを偶数個用いて、第二流体の出入口を前記熱交換器の同一面側に設けたことを特徴とする熱交換器である。
【0016】
本発明の請求項5は、請求項1乃至4に加えて、前記熱交換器は、熱交換部と前記熱交換部を囲むケーシングとからなり、前記ケーシングは、前記熱交換部を収容する本体部と、本体部を封止するカバーとからなり、前記カバーの前記熱交換部に対向する面に押圧用凸部を設け、前記カバーを前記本体部に装着した際に前記押圧用凸部により前記横流れ流路又は前記縦流れ流路の少なくともいずれか一方を押圧することを特徴とする熱交換器である。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によれば、横流れ流路と縦流れ流路とを複数重ねて配置することで流路が密集した小間隔流路ブロックを形成し、この小間隔流路ブロックを複数個用いて熱交換部を形成して、全体として第一流体と第二流体が直交対向流となるように構成したので、小型、高出力かつ瞬時目標温度(単位時間あたりの昇温到達可能な温度)を高め短時間で目標の湯温の湯を供給可能とした直交対向流熱交換器を提供することが可能となった。
【0018】
請求項2記載の発明によれば、複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第二流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの縦流れ流路の出口と入口とを第二流体を混合する混合部によって接続することで、第二流体(例えば水)が混合部を通過するとき、各小間隔流路を流れてきた水が速度差や流路の急縮小・拡大によって混合されて、次の小間隔流路ブロックに入る時にはほぼ均一な温度となるため、次の小間隔流路ブロックで第一流体(例えば冷媒)と熱交換を行うとき、水側の温度条件が揃うので、結局冷媒の過熱ポイント(熱交換器中で冷媒の潜熱放出が終わったときの位置)をほぼ同じ位置で取ることが可能となる。従って、熱交換器設計時の温度のばらつきがなくなるため、熱交換器としての必要最低限の大きさで所要の熱交換能力を実現でき、熱交換器の設計品質が向上する。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第一流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの横流れ流路の出口と入口とを第一流体を混合する混合部によって接続することで、横流れ流路を流れる第一流体についても過熱ポイントをほぼ同じ位置で取ることが可能となる。
【0020】
請求項4記載の発明によれば、前記小間隔流路ブロックを偶数個用いて、第二流体の出入口を前記熱交換器の同一面側に設けたので、熱交換器の同じ側面側に出入口を設けられ、その反対面は配管がないため、熱交換器を取り付けるときの設置面として活用できる。
【0021】
請求項5記載の発明によれば、熱交換部を囲むケーシングは、前記熱交換部を収容する本体部と、本体部を封止するカバーとからなり、前記カバーの前記熱交換部に対向する面に押圧用凸部を設け、前記カバーを前記本体部に装着した際に前記押圧用凸部により前記横流れ流路又は前記縦流れ流路の少なくともいずれか一方を押圧するようにしたので、重ねて配置した流路間の隙間を無くすことができ、これにより重ねて配置した流路間の接触熱抵抗の発生を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明による熱交換器は、第一流体の流路と第二流体の流路を直交対向流配置して構成した熱交換器であって、前記第一流体が流れる複数の横流れ流路からなる層と前記第二流体が流れる複数の縦流れ流路からなる層とを複数重ねて配置して小間隔流路ブロックを形成し、この小間隔流路ブロックを横流れ流路が連結する方向に複数個直列接続して熱交換部を形成してなり、一端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路を入口として他端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路が出口となるように第一流体の流路を連続して形成し、かつ、他端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路を入口として一端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路が出口となるように第二流体の流路を連続して形成したことを特徴とし、複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第二流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの縦流れ流路の出口と入口とを第二流体を混合する混合部によって接続したことを特徴とするものである。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本発明の熱交換器10の実施例1を表した模式図であり、分かり易さのために内部を透過させて描いている。この図1において、熱交換器10は、ケーシング11の一方の側面に第一流体流入口14が設けられ、他方の側面に第一流体流出口15が設けられている。また、ケーシング11の正面の一端に第二流体流入口16が設けられ、他端に第二流体流出口17が設けられている。例えば、第一流体としてR410Aを使用し、この第一流体の流れ方向を以下横流れという。第二流体としては被加熱流体として水を使用し、この第二流体の流れを縦流れという。
【0024】
図1(a)に示すように、本発明の熱交換器10の内部には、複数の横流れ流路18と縦流れ流路19を重ねて配置して形成した小間隔流路ブロック12a〜12dが、横流れ方向に直列配列されて熱交換部22が形成されている。この小間隔流路ブロック12a〜12dは、複数の流路を小さいピッチで集積して構成したもので、伝熱性能、圧力損失、構造上の強度、剛性など因子を考慮して、小間隔は最終的に流路の列ピッチと段ピッチで定義する。
図1(d)及び(e)に示すように、A−A断面においては縦流れ流路19が所定の段数×列数で形成してあり、B−B断面においては横流れ流路18が所定の段数×列数で形成してあり、これらの横流れ流路18と縦流れ流路19とが段方向に交互に重ねて配置されて小間隔流路ブロック12a〜12dが形成されている。
【0025】
A−A断面における縦流れ流路19の数及びB−B断面における横流れ流路18の数は共に、熱交換器として求められる伝熱促進や圧力損失低減に応じて適宜設計することが可能であるが、概ね、段方向のピッチは0.5〜2mmであり、列方向のピッチは0.1〜2mmであり、段数と列数は10〜100の間に決定されている。但し、上記の数値に限定されるものではなく、設計条件に応じて変更可能である。
【0026】
図3に示すのは、実施例1における小間隔流路ブロック12a〜12dの具体的構成例を表した斜視図である。図3(a)に示すように、各小間隔流路ブロック12は、横流れ流路18となる溝を複数形成した横流れ流路用板材20と、縦流れ流路19となる溝を複数形成した縦流れ流路用板材21とを交互に積層して形成される。これらの横流れ流路用板材20及び縦流れ流路用板材21は熱伝導率の高い銅、アルミ、ステンレスなどの金属部材で形成されている。これらを所定数積層した後に、例えば拡散接合技術を用いて接合することで、小間隔流路ブロック12が完成する。このようにして形成した小間隔流路ブロック12a〜12dを横流れ流路18が連結されるように4つ並べることによって、熱交換部22を構成している。
【0027】
なお、図3(a)に示すようにして小間隔流路ブロック12a〜12dを形成した後にこれらを直列接続して熱交換部22を形成するものとして説明したが、各ブロックをそれぞれ形成するのではなく、熱交換部22全体を一度に形成するように横流れ流路用板材20及び縦流れ流路用板材21を構成してこれを積層するようにしてもよい。全体を積層してこれを概念的に一定間隔で小間隔流路ブロック12a〜12dというように分けても、個別に小間隔流路ブロックを形成した場合と同様の構成となる。
【0028】
前記第二流体流入口16から流入した水は、小間隔流路ブロック12aに形成された複数の縦流れ流路19に流入して他端側から流出するが、この小間隔流路ブロック12aの出口と次の小間隔流路ブロック12bの入口を接続するものとして、混合部13aが形成されている。混合部13aは、12aの出口の面と12bの入口の面に対応して形成された空間であり、この混合部13aにより、小間隔流路ブロック12aの複数の縦流れ流路19でそれぞれ加熱された水を均一に混ぜ合わせて次の小間隔流路ブロック12bに流入する水温を均一にすることができる。
同様に、小間隔流路ブロック12bの出口と次の小間隔流路ブロック12cの入口の間には混合部13bが設けられ、小間隔流路ブロック12cの出口と次の小間隔流路ブロック12dの入口の間には混合部13cが設けられている。
【0029】
前記小間隔流路ブロック12a〜12dを流れる水は、各ブロックにおいてはR410Aが流れる横流れと直交する方向に流れる。しかし、水は小間隔流路ブロック12a〜12dと混合部13a〜13cを介して往復するようにして横流れと逆の方向に流れるので、全体としては横流れと対向流となる。以上のようにして、本発明による熱交換器の冷媒と水の流れは直交対向流を構成する。ここで水の出入り口16、17は熱交換器10の同じ側面側に設けられ、その反対面は配管がないため熱交換器10を取り付けるときの設置面として活用できる。
【0030】
図2(a)乃至(c)に示すのは、本発明の実施例1による熱交換器10の具体的な例である。この図2において、横流れ構造は冷媒R410Aの凝縮過程の二相流れが重力により気相と液相に分離することを防ぎ、二相流れの均一性を維持するために、第一流体流入口14から第一流体流出口15までの間がストレートに形成され、冷媒R410Aは各々の小間隔流路ブロック12a〜12dの横流れ流路18をストレートに流れる。一方、水の流路は四つの小間隔流路ブロック12a〜12dに分割された小間隔流路で、各々のブロックは並列に配置されており、水は流れの途中で各流路ブロックを出入りしながら進む。中間に配置された二つの小間隔流路ブロック12b及び12cの出入口には混合部13a〜13cが設けられ、水が均一な温度となりやすくなるような構造とした。ここで、水が混合部を通過するとき、速度差や流路の急縮小・拡大によって温度が均一となり、次の小間隔流路ブロックに入る。ほぼ均一な温度をもつ水が次の小間隔流路ブロックで冷媒と熱交換を行うとき、水側の温度条件が揃うので、結局冷媒の過熱ポイントをほぼ同じ位置で取ることが可能となる。従って、熱交換器の設計品質が向上する。
【0031】
また、混合部13a〜13cのそれぞれに温度センサ23a〜23cを設けて水流路の途中の水の温度を直接検出する。これにより、目標の水温が得られるようにリアルタイムで冷媒の温度・流量を調整して冷凍サイクルの制御が行いやすくなる。
【0032】
図2(d)に示すのは、小間隔流路ブロック12a〜12dにおいて横流れ流路18と縦流れ流路19を形成する間隔及び構成数の一例を示したものである。冷媒が流れる横流れ流路18は、段ピッチ1.15mm、列ピッチ0.6mmとし、19段×37列で構成する。水が流れる縦流れ流路19は、段ピッチ1.15mm、列ピッチ0.5mmとし、20段×17列で構成する。
【0033】
以上のようにして熱交換部22を形成した熱交換器10は、ケーシング11の大きさが、142mm×50mm×18mmとなり、温度センサ23a〜23cを含めても全体の体積が151cmとなる。従来の二重管を採用した熱交換器等に比較して、同じ熱交換能力を得るための体積を100分の1以上小さくすることが可能となり、重量についても8分の1以下とすることが可能となった。
【実施例2】
【0034】
図4に示すのは、本発明の実施例2における熱交換器の具体的な製作図である。基本的構成は前記実施例1と同様であるので、この実施例2においては、実施例1と異なる部分のみ符号を付して説明し、他の共通部分については説明を省略する。
図4において、横流れは水(被加熱流体)で、縦流れはCO(冷媒)超臨界流れである。この実施例2においては、第一流体を水、第二流体をCOとして説明する。前記実施例1と同様に、縦流れであるCOの流れの途中には混合部13a〜13cを設け、さらに、横流れである水の流れの途中にも混合部24a〜24cを設け、各々の流体で均一な温度を得やすくなるようにしたことを特徴とする。ここで、水とCOが混合部を通過するとき、速度差や流路の急縮小・拡大によってそれぞれの流体で温度が均一となり、次の小間隔流路ブロックに入る。ほぼ均一な温度をもつ水が次の小間隔流路ブロックでCO(冷媒)と熱交換を行うとき、水側とCO側の温度条件は揃うので、結局冷媒の出口温度をほぼ同じに取ることが可能となる。従って、実施例1と同様に、熱交換器の設計品質が向上する。
また、この実施例2における水のように液相流体の流路を横流れとすると、縦流れにした場合より圧力損失の低減を図ることが出来る。この結果、流体の流量を増やすことができ、より高い給湯能力を得ることが可能となる。
【0035】
また、前記実施例1と同様の縦流れ側だけでなく、横流れ側の混合部24a〜24cにおいても温度センサを設け、各流体の温度を直接検出するようにしてもよい。これによって、作動流体間熱交換に関する温度情報に基づく最適な冷凍サイクルの制御を施すことが可能となる。
【0036】
ここで小間隔流路ブロックの出入口に混合部を設けるか否かはその流路を流れる流体(冷媒)が二相状態を示すか否かで決定してもよい。これは二相状態の流体(冷媒)を流路ブロックから混合部に流入させた場合、重力の影響により流体(冷媒)が混合部の上部に気相、下部に液相と分離し、このような流体(冷媒)が混合部の後の流路ブロックに流入すると各小間隔流路に流れる流体(冷媒)の状態が不均一となり、期待した熱交換器の設計品質の向上が得られなくなるおそれがあるためである。従って、二相状態を示す流体(冷媒)を用いる場合は、小間隔流路ブロックの間に混合部を設けずに熱交換器を構成することが望ましく、二相状態を示さない流体(冷媒)を用いる場合は、小間隔流路ブロックの間に混合部を設けて温度の均一化を図ることが望ましい。
【実施例3】
【0037】
前記実施例1、2においては、横流れ流路用板材20と縦流れ流路用板材21とを交互に積層し、一例として拡散接合することで小間隔流路ブロック12a〜12dを構成したが、この実施例3においては、流体流路となる多数の細管を集積して小間隔流路ブロック12a〜12dを構成することを特徴とする。基本的構成は前記実施例1及び2と同様であるので、この実施例3においては、異なる部分のみ符号を付して説明し、他の共通部分については説明を省略する。
【0038】
図5は、本発明の実施例3における熱交換器の構成を示したものである。本実施例3による熱交換器は熱交換を行なう熱交換部22とそれを囲むケーシング11で構成され、ケーシング11は熱交換部22を収容する本体部11aと同本体部11aに装着して前記本体部を封止するカバー11bとからなっている。
【0039】
また、熱交換部22の流体流路は、多数の細管を集積した多数細管小間隔流路で形成されている。具体的には、横流れを構成する横流れ管25と縦流れを構成する縦流れ管26とを交互に重ねて配置する。図6(a)に示すように複数の横流れ管25を配置した層と、図6(b)に示すように複数の縦流れ管26を配置した層とを交互に重ねて配置して熱交換部22を構成する。このようにして重ねて配置した場合のD−D断面、E−E断面の拡大図を、それぞれ図5(e)及び(f)に示す。なお、細管のサイズの一例としては、内径0.25mm外径0.45mmで設計することが考えられるが、細管のサイズがこのサイズに限定されることなく、伝熱促進や圧力損失低減の設計に応じて調整することが望ましい。
【0040】
上記のようにして重ねて配置した熱交換部22を、縦流れ管26の数に基づいて一定間隔で区切って、仮想的に小間隔流路ブロック12a〜12dを構成して、中間に配置された2つの小間隔流路ブロック12b及び12cの出入口には、実施例1及び2の場合と同様に、混合部13a〜13cを設けて水温の均一化を図る。
【0041】
図5(a)に示すように、ケ−シングの本体部11aを封止するためのカバー11bの裏面(熱交換部と対向する側の面)には、押圧用凸部27が設けられた構造となっており、このカバー11bをケーシングの本体部11aにネジ等により止め付けると、上記の押圧用凸部27が横流れ管25と縦流れ管26を重ねて配置した部分を押圧して細管段間の隙間を無くすことができ、これにより細管段間の接触熱抵抗の発生を防ぐことができる。最終的に、止め付けた後でカバー11bとケーシングの本体部11aとをロー付けして一体化構造にする。
【0042】
以上のような構成において、冷媒はR410Aを使用し、第一流体流入口14から流入した冷媒は熱交換部22の小間隔流路ブロック12a〜12dを構成する多数の横流れ管25を通過して第一流体流出口15から出てくる。水は横流れと直交する方向で第二流体流入口16から流入し、小間隔流路ブロック12a〜12dを構成する多数の縦流れ管26及び混合部13a〜13cを通過して第二流体流出口17から出てくる。このとき、水は多数細管小間隔流路を往復するにつれて横流れと逆の方向に流れるので、全体としては横流れと対向流となる。
【実施例4】
【0043】
前記実施例3においては、横流れ管25を配置した層と縦流れ管26を配置した層とを交互に重ねて配置して熱交換部22を構成するようにしたが、この実施例4では、横流れ管25のみを用いて、縦流れである水は横流れ管25の層間を通り抜ける構成としたことを特徴とする。基本的構成は前記実施例1乃至3と同様であるので、この実施例4においては、異なる部分のみ符号を付して説明し、他の共通部分については説明を省略する。
【0044】
図7は、本発明の実施例4における熱交換器の構成を示したものである。本実施例による熱交換器は、熱交換を行なう熱交換部22とそれを囲むケーシング11で構成され、ケーシング11は熱交換部22を収容する本体部11aと前記本体部11aを封止するカバー11bとからなっている。また、熱交換部22の冷媒側の流体流路は横流れ管25で構成され、多数の横流れ管25を集積して段ピッチホルダ28により支持する。この横流れ管25の管と管の隙間部分が、水が流れる流路となる。
【0045】
図8(a)に示すのは、実施例4における横流れ管25の配置(20段、36列)を示した一例である。図8(a)に示す例では、横流れ管25は規則正しく整然と配置しているが、これに限定されるものではなく、図8(b)に示すように、様々なパターンが考えられ、熱伝達率の向上や圧力損失低減に設計条件に応じて変更可能とする。
【0046】
また、図9に示すのは、段ピッチホルダ28の一例である。この段ピッチホルダ28は、熱交換器の出入口側二箇所と内部三箇所に設け、細管を貫通させる孔のパタ−ンを有する。この貫通孔のパタ−ンは図8(b)に示す細管配置パタ−ンの変化を実現する。この段ピッチホルダ28は、例えば、図9(a)に示すように、専用に設計された金網で構成して金網の網目部分に細管を配置して段ピッチホルダ28とすることも可能であり、また、図9(b)に示すように、金属板に細管がちょうど貫通するサイズの孔加工を施すことにより段ピッチホルダ28を形成することも可能である。
【0047】
前記段ピッチホルダ28を内部三箇所に設けることで、仮想的に小間隔流路ブロック12a〜12dを構成して、かつ、中間に配置された2つの小間隔流路ブロック12b及び12cの出入口には、実施例1及び2の場合と同様に、混合部13a〜13cを設けて水温の均一化を図る。この段ピッチホルダ28を小間隔流路ブロック12a〜12dの各境界部分に配置することで、水が混合部13を経由せずにブロック間を直接移動することを防いでおり、これによって、全体として直交対向流を実現している。
【実施例5】
【0048】
実施例5は、図10に示すように、前述の実施形態1〜4までに述べたケ−シング11の外形寸法を統一し、かつ、複数の芯パターンのサイズを統一することで、汎用性を高めたものである。ここで、芯パターンとは、熱交換部22を構成する冷媒及び水の流路形成手段のパターンをいい、例えば芯パターンとしては、図10(d)〜(f)に示すように、(芯パターン:1)多数集積した小間隔流路芯、(芯パターン:2)縦流れと横流れをそれぞれ細管に流れる流路芯、(芯パターン:3)横流れが細管に縦流れが細管外側の隙間に流れる流路芯が想定される。このように、ケ−シング11の筐体外形寸法を一定として芯の多様化に対応させた熱交換器の構造は、芯の多様な製造方法が適用可能であり、流れ様式と伝熱様式に応じた流路の水力直径の設計に柔軟性を与える。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の熱交換器の実施例1を表した平面図である。
【図2】本発明の実施例1による熱交換器10の具体的な製作図である。
【図3】実施例1における小間隔流路ブロック12a〜12dの具体的構成例を表した斜視図である。
【図4】本発明の実施例2における熱交換器の具体的な製作図である。
【図5】本発明の実施例3における熱交換器の構成を示した平面図である。
【図6】(a)は、複数の横流れ管25を配置した層を表した上面図であり、(b)は、複数の縦流れ管26を配置した層を表した上面図である。
【図7】本発明の実施例4における熱交換器の構成を示した平面図である。
【図8】実施例4における横流れ管25の配置を示した模式図である。
【図9】段ピッチホルダ28の一例を表した模式図である。
【図10】本発明の実施例5における熱交換器の構成を示した平面図である。
【符号の説明】
【0050】
10…熱交換器、11…ケーシング、11a…本体部、11b…カバー、12a〜12d…小間隔流路ブロック、13…混合部、14…第一流体流入口、15…第一流体流出口、16…第二流体流入口、17…第二流体流出口、18…横流れ流路、19…縦流れ流路、20…横流れ流路用板材、21…縦流れ流路用板材、22…熱交換部、23a〜23c…温度センサ、24a〜24c…混合部、25…横流れ管、26…縦流れ管、27…押圧用凸部、28…段ピッチホルダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一流体の流路と第二流体の流路を直交対向流配置して構成した熱交換器であって、前記第一流体が流れる複数の横流れ流路からなる層と前記第二流体が流れる複数の縦流れ流路からなる層とを複数重ねて配置して小間隔流路ブロックを形成し、この小間隔流路ブロックを横流れ流路が連結する方向に複数個直列接続して熱交換部を形成してなり、一端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路を入口として他端部の小間隔流路ブロックの横流れ流路が出口となるように第一流体の流路を連続して形成し、かつ、他端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路を入口として一端部の小間隔流路ブロックの縦流れ流路が出口となるように第二流体の流路を連続して形成したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第二流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの縦流れ流路の出口と入口とを第二流体を混合する混合部によって接続したことを特徴とする請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
複数個直列接続した小間隔流路ブロックのうち、熱交換器全体の第一流体の出入り口に該当しない部分において、隣接する小間隔流路ブロックの横流れ流路の出口と入口とを第一流体を混合する混合部によって接続したことを特徴とする請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記小間隔流路ブロックを偶数個用いて、第二流体の出入口を前記熱交換器の同一面側に設けたことを特徴とする請求項1乃至3記載の熱交換器。
【請求項5】
前記熱交換器は、熱交換部と前記熱交換部を囲むケーシングとからなり、前記ケーシングは、前記熱交換部を収容する本体部と、本体部を封止するカバーとからなり、前記カバーの前記熱交換部に対向する面に押圧用凸部を設け、前記カバーを前記本体部に装着した際に前記押圧用凸部により前記横流れ流路又は前記縦流れ流路の少なくともいずれか一方を押圧することを特徴とする請求項1乃至4記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−117102(P2010−117102A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292177(P2008−292177)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【出願人】(307009034)株式会社WELCON (7)
【Fターム(参考)】