説明

熱交換器

【課題】 レインフォースとタンクとの結合力不足によるコア部の剛性を招くことなく、コア部の更なる幅方向のコンパクト化が実現できる熱交換器の提供。
【解決手段】 所定間隔を置いて配置される一対のタンク2,3と、一対のタンク2,3に両端部が挿通し固定される複数のチューブ4aと、該チューブ4aと交互に積層される複数のフィン4bとから成るコア部4と、コア部4の積層方向両側にそれぞれ配置され、一対のタンク2,3に両端部が挿通し固定されるレインフォース10を備える熱交換器(コンデンサ1)において、レインフォース10を全長に亘ってコア部4の積層方向外側に開口した略コ字状断面に形成し、レインフォース10の略コ字状断面の両側壁10a,10aを長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器として特許文献1、2に記載の技術が知られている。
この発明によれば、コア部の積層方向両側が一対のタンクに両端部が挿通し固定されたレインフォースで連結補強している(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2006−52866号公報
【特許文献2】特開2006−52867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、レインフォースのタンクへの挿入部が平板状に形成されているため、コア部の幅や板材の厚みを小さく設定すると、レインフォースとタンクとの結合力が不足して、コア部の剛性不足を招く虞があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、レインフォースとタンクとの結合力不足によるコア部の剛性不足を招くことなく、コア部の幅や板材の厚み方向のコンパクト化を実現できる熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、所定間隔を置いて配置される一対のタンクと、上記一対のタンクに両端部が挿通し固定される複数のチューブと、該チューブと交互に積層される複数のフィンとから成るコア部と、上記コア部の積層方向両側にそれぞれ配置され、上記一対のタンクに両端部が挿通し固定されるレインフォースを備える熱交換器において、上記レインフォースを全長に亘ってコア部の積層方向外側に開口した略コ字状断面に形成し、上記レインフォースの略コ字状断面の両側壁を長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、レインフォースを全長に亘ってコア部の積層方向外側に開口した略コ字状断面に形成し、レインフォースの略コ字状断面の両側壁を長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成している。
これにより、レインフォースの端部の剛性を向上でき、タンクとの結合力を強化でき、レインフォースとタンクとの結合力不足によるコア部の剛性不足を招くことなく、コア部の幅や板材の厚み方向のコンパクト化を実現できる。
また、レインフォースの両側壁を長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成しているため、レインフォースの両側壁の高さに起因してレインフォースの剛性が過大となり、ろう付け処理中においてコア部の温度低下に伴う収縮に追従できなくなるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は実施例1の熱交換器を示す正面図、図2は実施例1の要部拡大断面図、図3は実施例1のタンク本体の分解斜視図、図4は同斜視図である。
図5は実施例1のチューブプレートの拡大斜視図、図6は実施例1のタンクプレートの側面図、図7は図4のS7−S7線における断面図、図8は図4のS8−S8線における断面図である。
【0009】
図9は実施例1のレインフォースの平面図、図10は同正面図、図11は同斜視図(一部のみ)、図12は同拡大平面図(一部のみ)、図13は同拡大正面図(一部のみ)、図14のS14−S14線における断面図、図15、16は実施例1のレインフォースとタンクとの固定を説明する図である。
【0010】
先ず、全体構成を説明する。
図1に示すように、実施例1の熱交換器が採用されたコンデンサ1は、左右に所定間隔を置いて配置された一対のタンク2,3と、両タンク2,3の間に配置されたコア部4等が備えられている。
【0011】
タンク2は、4枚の板状のディバイドプレートD1で3つの室R1,R3,R6に区分けされる他、室R1に連通した入力ポート5aを備える入力コネクタ5が設けられる一方、室R6に連通した出力ポート6aを備える出力コネクタ6が設けられている。
【0012】
タンク3は、4枚のディバイドプレートD1で3つの室R2,R4,R5に区分けされる他、接続管7,8を介して室R4,R5に連通したレシーバタンク9が設けられている。
【0013】
コア部4は、両端部がそれぞれ対応するタンク2,3に挿通し固定された複数の偏平管状のチューブ4aと、隣接するチューブ4aに波状の頂部が接合された波板状のフィン4bとから構成されている。
また、コア部4の積層方向両側は、両端部がそれぞれ対応するタンク2,3に挿通し固定された一対のレインフォース10,10で連結補強されている。
【0014】
次に、タンク2,3のタンク本体11について詳述する。
なお、タンク2,3のタンク本体11の基本構造は同じであり、さらに、タンク本体11は上下対称形状であるため、以下、タンク2のタンク本体11の上端部を図示して説明する。
【0015】
図2〜4に示すように、タンク2のタンク本体11は、チューブプレート12と、チューブプレート12に最中状に重ねられるタンクプレート13と、タンク本体11の端部から所定代を有した位置に配置され、これら両者の間に介装される前述のディバイドプレートD1から構成されている。
【0016】
図5に示すように、チューブプレート12は、略コ字状断面を有して半筒状に形成され、該コ字状断面の対向する両側壁12a,12aと、これら両側壁12a,12a同士を結合する結合壁12bとを備えている。
チューブプレート12の両側壁12a,12aには、それぞれ側方へ突出した一対の爪部12c,12cが該チューブプレート12の長手方向に沿って等間隔で複数形成されている。
また、複数の爪部12c,12cのうちの最外側に配置された一対の爪部12d,12dは、チューブプレート12の端部から所定代だけ移動した位置に配置される最外側位置のディバイドプレートD1の外側(上方)位置に形成されている。
なお、一対の爪部12c,12c(一対の爪部12d,12d)の詳細な部位の形状、形成数、形成位置等については適宜設定できる。
結合壁12bには、レインフォース10の端部が挿通し固定されるレインフォース孔12eと、チューブ4aの端部が挿通し固定されるチューブ孔12fとが形成されている。
【0017】
具体的には、レインフォース孔12eの下縁部には、タンク本体11の内側に向けてバーリング加工された案内部12gが隣接するチューブ孔12f側に形成されている。
従って、案内部12gをレインフォース孔12eの周縁の上縁部に形成した場合に比べて、バーリング加工に伴う材料の引き代をタンク本体11の上方側に確保する必要がなく、タンク本体11の長さを短くでき、ひいてはコンデンサ1のコンパクト化を図れる。
一方、チューブ孔12fは、タンク本体11の内側に向けてバーリング加工された上下一対の案内部12hが形成されている。
【0018】
一方、タンクプレート13は、略コ字状断面を有して半筒状に形成され、該コ字状断面の対向する両側壁13a,13aと、これら両側壁13a,13a同士を結合する結合壁13bとを備えている。
図6に示すように、タンクプレート13における一対の爪部12d,12dに対応する位置には、両側壁13a,13aから結合壁13bの両肩部13cに掛けて一対の爪用係止孔13d,13dがそれぞれ略四角形状に形成されている。
なお、爪用係止孔13dの高さ寸法は、爪部12dの高さ寸法と同一か、僅かに大きく設定されている。
【0019】
タンクプレート13の結合壁13bにおける最外側位置のディバイドプレートD1の外側(上方)位置には、後述する車両搭載ピン14の係止部14dが係止される車両搭載ピン用係止孔13eが四角形状に形成されている。
結合壁13bにおける最外側位置のディバイドプレートD1が介装される位置には、該ディバイドプレートD1に突設された突部13fが挿入固定されるディバイドプレート用係止孔13gが四角形状に形成されている。
結合壁13bにおけるコネクタ5(コネクタ6)が固定される位置には円形状の連通孔13hが形成されている。
【0020】
そして、図3、4に示すように、両プレート12,13の間に各ディバイドプレートD1を所定位置に介装し、チューブプレート12の両側壁12a,12aの内側にタンクプレート13の両側壁13a,13aを配置した状態として、これら両者を最中状に重ねた後、各爪部12c,12dをタンクプレート13に加締め固定することにより、タンク本体11を仮組みできる。
【0021】
この際、図7に示すように、一対の爪部12c,12cは、内側に屈折してそれぞれ対応するタンクプレート13の両肩部13cに沿って当接した状態で加締められる。
これにより、両プレート12,13を長手方向に亘って複数箇所で固定維持できる。
【0022】
一方、図8に示すように、一対の爪部12d,12dは、内側に屈折してそれぞれ対応する爪用係止孔13d,13dの孔周縁13iに当接した状態で加締められる。
具体的には、実施例1では、各爪部12dは爪用係止孔13dに当接させるのに必要最低限の角度、例えば90°以上の大きな角度で内側に屈折されており、各爪部12dの内面は爪用係止孔13dの孔周縁13iの側面部13jに当接した状態で加締められている。
【0023】
これにより、両プレート12,13を加締め固定できると同時に、水平面内の相対回転方向(図8中矢印X1で図示)への傾倒を防止でき、これら両者の相対回転による位置ずれを防止できる。
さらに、各爪部12dの上下面は、爪用係止孔13dの孔周縁13iの上下面部13kに当接または近接するため、両プレート12,13の長手方向の位置ずれも防止できる。
従って、両プレート12,13を良好に位置決めした状態で堅固に加締め固定できる。
【0024】
なお、コネクタ5(コネクタ6)は、両プレート12,13を重ねる前に予めタンクプレート13の対応する連通孔13hをバーリング加工して外側に向けて環状突起状に形成された環状突起部によって加締め固定されることにより、タンクプレート13に当接した状態で仮組み可能に構成されている(特許文献1参照)。
【0025】
図1、2に示すように、車両搭載ピン14は、コンデンサ1の上下左右端部を車両側に固定支持させるための固定部材であり、樹脂製となっている。
車両搭載ピン14は、車両側に締結される円筒状のピン部14aと、ピン部14aの下端に連続して拡径された円盤状の鍔部14bと、鍔部14の底面に形成された環状突起状の嵌合部14cと、側方に開口された一部で構成される係止部14dを有する舌片部14e等が備えられている。
そして、車両搭載ピン14の嵌合部14cの内側にタンク本体11の端部を挿入して外嵌させると、舌片部14eが樹脂の弾性変形により側方へ変形した後、係止部14dが両搭載ピン用係止孔13eに係止することにより、車両搭載ピン14をタンク本体11に装着できる。
【0026】
次に、レインフォース10について詳述する。
なお、コア部4の積層方向両側に配置されたレインフォース10,10は同一形状部材であり、図9、10に示すように、左右対称形状であるため、以下、コア部4の上端部に設けられたレインフォース10の左側端部を図示して説明する。
【0027】
図11〜14に示すように、レインフォース10は、全長に亘ってコア部4の積層方向外側に開口した略コ字状断面に形成され、該コ字状断面の対向する両側壁10a,10aと、両側壁10a,10a同士を結合する結合壁10bとが備えられている。
図11に示すように、各側壁10aは、結合壁10bからの高さが最も高く設定され、平坦な上面を有する中央壁10cがレインフォースの10eの長手方向中央に大きく延設されている。
また、この中央壁10cの長手方向端部から段部10dを介して端部側へ低く形成される平坦な上面を有する中途壁10eと、この中途壁10eから段部10fを介して低く形成される平坦な上面を有する端部壁10gが形成されている。
端部壁10gの先端側は徐々に低くなる傾斜部10h(図12参照)が形成されると共に、この傾斜部10hは内側に屈曲した傾斜面を有して結合壁10bの端部に接続されている。
これにより、各側壁10aは、長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成されている。
【0028】
一方、結合壁10bの端部における幅方向中央には長手方向に切欠開口された半長孔状の開口部10iが形成されている。
さらに、開口部10iの長手方向と一直線状に近接して、結合壁10bの底面の基準面から下方へ突出した略半円柱状の凸部10jと、この凸部10jと連続して該凸部10jよりも低い突出高さを有して下方へ突出した線状のビード部10kが所定長さで形成されている。
実施例1では結合壁10bの上面における凸部10jとビード部10kの対向する位置を板厚方向にプレス加工して、該凸部10jとビード部10kを形成しているが、この限りではない。
なお、開口部10iや凸部10jの長さ、形状、形成位置、各寸法等は適宜設定できる。また、本実施例においては開口部10iを設定したが、この限りではなく、開口部10iを設定しないレインフォース10を適用しても良い。
【0029】
そして、図2に示すように、レインフォース10は、チューブプレート12のレインフォース孔12eに挿通し固定される。
この際、図15(a)に示すように、レインフォース10の端部をレインフォース孔12eに徐々に挿入すると、先ず、レインフォース10に端部下面がレインフォース孔12eの案内部12gに摺動してスムーズに案内される。
これにより、レインフォース10の挿入性を良好にできる。
また、レインフォース10が上方に位置ずれした状態で挿入された場合でも傾斜部10hが先端側に行くに連れて低く傾斜しているため、レインフォース孔12eをスムーズに挿入できる。
さらに、レインフォース10が幅方向に位置ずれした状態で挿入された場合でも傾斜部10hが内側に行くにつれて屈曲してR形状となっているため、レインフォース孔12eをスムーズに挿入できる。
【0030】
その後、レインフォース10の端部をレインフォース孔12eにさらに挿入すると、図15(b)に示すように、レインフォース10の段部10fがチューブプレート12の側面に当接することにより、レインフォース10を位置決めした状態で固定できる。
従って、レインフォース10の段部10fよりも先端側部分がチューブプレート12(タンク2(タンク3))への挿入部10mとなる。
【0031】
最後に、図16に示すように、レインフォース10の開口部10iを図示を省略する治具を用いて幅方向(図16中矢印方向)に拡開することにより、レインフォース10をレインフォース孔12eに加締め固定する。
なお、開口部10iを設定しないレインフォース10を適用する場合においては、レインフォース10の端部壁10g又は傾斜部10hを拡開することにより、レインフォース10をレインフォース孔12eに加締め固定しても良い。
この際、レインフォース10の挿入部10mの端部壁10gがレインフォース孔12eの周縁の側方に加締められるため、レインフォース10の挿入部10mを平板状にした場合に比べてレインフォース孔12eとの接触面積を大きく確保でき、レインフォース10を堅固に固定できる。
即ち、平板状の挿入部で挿入部10mと同じ接触面積を確保するためには、平板状の厚み(結合壁に相当する部位)を端部壁10gと同じ厚みに設定する必要があるのに対し、挿入部10mは結合壁10bの板厚を大きくすることなく、接触面積を大きく確保できる。
【0032】
また、レインフォース10はタンク2,3の長手方向最外側に配置されるディバイドプレートD1の外側に挿通し固定されるため、コンデンサ1の流通媒体の非流通路に挿通し固定されることとなる。
従って、タンク2,3内の密封性を考慮することなく、レインフォース10を固定できる。
なお、図16において、チューブプレート12にタンクプレート13を組み付けた状態で図示しているが、この限りではない。
【0033】
一方、フィン4bは、公知の特開2006−123084号に記載のフィン圧縮行程にて圧縮された状態でチューブ4aと交互に積層配置されて、コア部4を形成した後、前述したレインフォース10と同時にタンク2,3に組み付けられる。
この際、図2に示すように、コア部4の積層方向最外端に位置するフィン4cの長手方向両端部はレインフォース10の凸部10jに係止した状態で配置される。
さらに、フィン4cの長手方向両端部における高さ方向端部(波状の頂部)は、ビード部10kとチューブ4aに挟持されて内側へ押圧された状態で配置される。
【0034】
これにより、凸部10jによってフィン4cの圧縮の復元を防止して、長手方向への位置ずれを規制できる。
また、ビード部10kによってフィン4cを保持する力を向上でき、フィン4cの長手方向への位置ずれ及び幅方向への位置ずれを防止できる。
【0035】
その他、樹脂製の車両搭載ピン14を除くコンデンサ1の各構成部材の接合部同士のうちのすくなくとも一方にはブレージングシートから構成され、又は予めフラックスを塗布や貼付したろう材が成形されている。
【0036】
次に、作用を説明する。
[コンデンサのろう付け性について]
このようなコンデンサ1を製造する際には、樹脂製の車両搭載ピン14を除く前述した全ての構成部材を予め仮組みした後、加熱炉内で熱処理することにより各構成部材の接合部同士をろう付け接合して一体的に形成する。
【0037】
その後、車両搭載ピン14を各タンク2,3のタンク本体11の両端部にそれぞれ装着した後、コンデンサ1を車両搭載ピン14のピン部14aを介して車両に搭載する。
なお、レシーバタンク9は、その内部構造によって熱処理後に装着する場合もある。
【0038】
ここで、従来の発明にあっては、レインフォースのタンクへの挿入部が平板状に形成されているため、コア部の幅を小さく設定すると、レインフォースとタンクとの結合力が不足して、コア部の剛性不足を招く虞があった。
この結果、コア部を積層方向内側に保持する力が弱くなるため、コア部のチューブとフィンのろう付け不良が発生する虞がある。
加えて、ろう付け処理後においてもコア部の剛性が低いため、コンデンサの耐久性が低下してしまう。
【0039】
また、通常、コンデンサはコア部を水平状態にして加熱炉内で上下方向に複数個配置した状態で収容されてろう付け処理される。
この際、レインフォースとコア部との熱膨脹量差に伴う温度プロフィルの違いによりコア部の最外端に設けられたフィンの保持力が弱くなる虞があった。
具体的には、レインフォースは、コア部に比べて熱マスが大きいため、コア部に比べて温度上昇及び下降が緩やかな温度プロフィルとなる。換言すると、レインフォースは、コア部に比べて熱し易く冷えにくい。
この結果、特にろう付け処理中における温度低下時において、コア部の温度低下にレインフォースが追従できず、レインフォースに隣接するフィンの両端部が自重によって下方へ垂れ下がる。
加えて、レインフォースに隣接するフィンが波状の形状に起因して長手方向に伸びてしまい、チューブプレートに接触する虞があった。
なお、レインフォースに隣接するフィンがチューブプレートに接触すると、このフィンのろう材がチューブプレート側に流れて奪われるため、ろう付け不良を招いてしまう。
【0040】
これに対し、実施例1では、レインフォース10の挿入部10mが略コ字状断面に形成されて剛性が高くなっているため、チューブプレート12(タンク2,3)に対して堅固に固定できる。
これにより、良好なろう付け処理を実現してコア部4の剛性を向上でき、コンデンサ1の耐久性を向上できる。
【0041】
また、レインフォース10の段部10fと端部壁10gの上面とがそれぞれ対応するチューブプレート12の側面とレインフォース孔12eの周縁の上方に当接しているため、ろう付け処理中における温度上昇時において、コア部4が温度上昇に伴う積層方向外側への膨脹を規制できる。
【0042】
一方、レインフォース10の両側壁10a,10aの高さが段部10d,10fによって長手方向中央から長手方向両端部に行くに連れて低くなる形状になっているため、レインフォース10の両側壁10a,10aの高さに起因してレインフォース10の剛性が過大となり、前述したコア部4の温度低下に伴う収縮に追従できなくなるのを防止できる。
【0043】
また、凸部10jによってフィン4cが長手方向に伸びて位置ずれするのを防止できる。
この際、凸部10jはフィン4cの波状の頂部の幅方向中央に接触して、フィン4cを係止しているため、安定した状態でフィン4cの位置ずれを防止できる。
【0044】
さらに、ビード部10kによってフィン4cが長手方向に伸びて位置ずれするのを防止できる上、フィン4cの両端部が下方へ垂れ下がって位置ずれするのを防止できる。
この際、ビード部10kはフィン4cの幅方向中央に接触して、フィン4cを係止しているため、安定した状態でフィン4cの位置ずれを防止できる。
【0045】
このように、実施例1では、コンデンサ1のろう付け処理を良好に行うことができる。
【0046】
[コンデンサの作動について]
このように構成されたコンデンサ1では、入力コネクタ5の入力ポート5aを介してエンジン側からタンク2の室R1に流入した60℃前後の高温な流通媒体が、先ず、コア部4のそれぞれ対応するチューブ4aを介してタンク3の室R2、タンク2の室R3、タンク3の室R4の順番にターンしながら流通する間にコア部4を通過する車両走行風または図示しないファンの強制風と熱交換されて冷却される。
次に、接続管7を介してタンク3の室R4に流入した流通媒体は、レシーバタンク9に流入して気液分離された後、接続管8を介してタンク3の室R5に流入する。
最後に、タンク3の室R5に流入した流通媒体は、コア部4の対応するチューブ4aを介してタンク2の室R6に流入する間にコア部4を通過する車両走行風または図示しないファンの強制風と熱交換されて45℃前後まで過冷却された後、出力コネクタ6の出力ポート6aを介してエバポレータ側へ送出され、熱交換器として機能する。
【0047】
次に、効果を説明する。
以上説明したように、実施例1では、所定間隔を置いて配置される一対のタンク2,3と、一対のタンク2,3に両端部が挿通し固定される複数のチューブ4aと、該チューブ4aと交互に積層される複数のフィン4bとから成るコア部4と、コア部4の積層方向両側にそれぞれ配置され、一対のタンク2,3に両端部が挿通し固定されるレインフォース10を備える熱交換器(コンデンサ1)において、レインフォース10を全長に亘ってコア部4の積層方向外側に開口した略コ字状断面に形成し、レインフォース10の略コ字状断面の両側壁10a,10aを長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成した。
これにより、レインフォース10の両端部におけるタンク2,3への挿入部10mの剛性を向上できる。
従って、レインフォース10とタンク2,3との結合力不足によるコア部4の剛性不足を招くことなく、コア部4の更なる幅方向のコンパクト化が実現できる。
【0048】
また、レインフォース10の両側壁10a,10aの高さが段部10d,10fによって長手方向中央から長手方向両端部に行くに連れて低くなる形状になっているため、レインフォース10の両側壁10a,10aの高さに起因してレインフォース10の剛性が過大となり、コア部4の温度低下に伴う収縮に追従できなくなるのを防止できる。
これにより、レインフォース10の拘束力を維持して良好なろう付けが可能となる。
【0049】
また、レインフォース10の略コ字状断面の両側壁10a,10aの両端部にコア部4の積層方向内側に行くに連れて低くなる傾斜部10hを形成し、レインフォース10の端部が挿通し固定されるタンク2,3の固定孔(レインフォース孔12e)の周縁におけるコア部3の積層方向内側に、バーリング加工して形成された案内部12gを形成した。
これにより、レインフォース10の挿入性を向上できると同時に、タンク2,3の長手方向の長さ寸法を短くでき、タンク2,3のコンパクト化、ひいてはコンデンサ1のコンパクト化を図れる。
【0050】
また、レインフォース10をコンデンサ1の流通媒体の非流通路に挿通し固定した。
これにより、タンク2,3の密封性を考慮することなく、レインフォース10を固定できる。
【0051】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、図17に示すように、レインフォース孔12eの周縁に、幅方向へ向けてバーリング加工された案内部20を設けても良く、この場合、レインフォース孔10の挿入性が更に向上する。
【0052】
また、熱交換器の種類は、コンデンサに限らず、ラジエータ、インタークーラ、オイルクーラ等の熱交換器に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1の熱交換器を示す正面図である。
【図2】実施例1の要部拡大断面図である。
【図3】実施例1のタンク本体の分解斜視図である。
【図4】実施例1のタンク本体の斜視図である。
【図5】実施例1のチューブプレートの拡大斜視図である。
【図6】実施例1のタンクプレートの側面図である。
【図7】図4のS7−S7線における断面図である。
【図8】図4のS8−S8線における断面図である。
【図9】実施例1のレインフォースの平面図である。
【図10】実施例1のレインフォースの正面図である。
【図11】実施例1のレインフォースの端部の斜視図である。
【図12】実施例1のレインフォースの端部の平面図である。
【図13】実施例1のレインフォースの端部の正面図である。
【図14】図12のS14−S14線における断面図である。
【図15】実施例1のレインフォースとタンクとの固定を説明する図である。
【図16】実施例1のレインフォースとタンクとの固定を説明する図である。
【図17】その他の実施例のチューブプレートを説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
D1 ディバイドプレート
1 コンデンサ
2、3 タンク
4 コア部
4a チューブ
4b、4c フィン
5 入力コネクタ
5a 入力ポート
6 出力コネクタ
6a 出力ポート
7、8 接続管
9 レシーバタンク
10 レインフォース
10a 側壁
10b 結合壁
10c 中央壁
10d、10f 段部
10e 中途壁
10g 端部壁
10h 傾斜部
10i 開口部
10j 凸部
10k ビード部
10m 挿入部
11 タンク本体
12 チューブプレート
12a (チューブプレートの)側壁
12b (チューブプレートの)結合壁
12c、12d 爪部
12e レインフォース孔
12f チューブ孔
12g、12h 案内部
13 タンクプレート
13a (チューブプレートの)側壁
13b (チューブプレートの)結合壁
13c 両肩部
13d 爪用係止孔
13e 車両搭載ピン用係止孔
13f 突部
13g ディバイドプレート用係止孔
13h 連通孔
13i 孔周縁
13j 側面部
13k 上下面部
14 車両搭載ピン
14a ピン部
14b 鍔部
14c 嵌合部
14d 係止部
14e 舌片部
20 案内部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔を置いて配置される一対のタンクと、
前記一対のタンクに両端部が挿通し固定される複数のチューブと、該チューブと交互に積層される複数のフィンとから成るコア部と、
前記コア部の積層方向両側にそれぞれ配置され、前記一対のタンクに両端部が挿通し固定されるレインフォースを備える熱交換器において、
前記レインフォースを全長に亘ってコア部の積層方向外側に開口した略コ字状断面に形成し、
前記レインフォースの略コ字状断面の両側壁を長手方向中央から長手方向両端部側に行くに連れて階段状に低くなる形状に形成したことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1記載の熱交換器において、
前記レインフォースの略コ字状断面の両側壁の長手方向両端部にコア部の積層方向内側に行くに連れて低くなる傾斜部を形成し、
前記レインフォースの端部が挿通し固定されるタンクの固定孔の周縁におけるコア部の積層方向内側に、バーリング加工して形成された案内部を設けたことを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2記載の熱交換器において、
前記レインフォースを熱交換器の流通媒体の非流通路に挿通し固定したことを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−85026(P2010−85026A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255031(P2008−255031)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】