説明

熱交換器

【課題】熱交換管の内圧に対する耐圧性を向上しうる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器1の熱交換管4は、1対の平坦壁11,12と、両平坦壁11,12の両側縁部どうしに跨る2つの側壁14を有する。熱交換管4の一方の側壁を両平坦壁11,12に一体に形成する。他方の側壁17は、上平坦壁11に一体に形成されて下側に突出した上側壁形成部16と、下平坦壁12に一体に形成されて上側に突出した第2側壁形成部17とからなる。両側壁形成部16,17の先端部に連なって内方突出壁18,19を設け、両内方突出壁18,19どうしを互いにろう付する。上内方突出壁18の先端部に連なって上側に曲げられた屈曲部23を設け、下内方突出壁19の先端部に連なって下側に曲げられた屈曲部24を設ける。両屈曲部23,24の先端部に連なって、両側壁形成部16,17側にのびかつ両平坦壁11,12内面に面接触する平坦部25,26を設け、両平坦部25,26を両平坦壁11,12にろう付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンプレッサ、工作機械、油圧機器などの産業機械のオイルクーラ、アフタークーラなどに使用される熱交換器に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
オイルクーラ、アフタークーラなどに使用される熱交換器として、本出願人は、先に、幅方向を通風方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された複数のアルミニウム製扁平中空体と、隣り合う扁平中空体間に、扁平中空体の長手方向両端部に位置するように配置されて扁平中空体に接合された1対のアルミニウム製スペーサと、両端に位置する扁平中空体の外側に、扁平中空体の長手方向両端部に位置するように配置されて扁平中空体に接合された1対のアルミニウム製エンドブロックと、隣り合う扁平中空体間でかつ両スペーサ間、および両端に位置する扁平中空体の外側でかつ両エンドブロック間に配置されて扁平中空体にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィンとを備えており、扁平中空体が、両面にろう材層を有するブレージングシートからなる1対の平板と、両平板間に配されかつ両平板にろう付された押出形材製流路形成体とよりなる熱交換器を提案した(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の熱交換器においては、流体を流す扁平中空体として、両面にろう材層を有するブレージングシートからなる1対の平板と、両平板間に配されかつ両平板にろう付された押出形材製流路形成体とよりなるものが用いられているので、熱交換器全体のコストが高くなるとともに重量が大きくなるという問題がある。
【0005】
ところで、低コストで軽量化を図りうる熱交換器として、互いに対向する1対の平坦壁および両平坦壁の両側縁部どうしに跨る2つの側壁を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の両端部が接続されたヘッダタンクとを備えており、熱交換管が、1枚の金属板を曲げて所定部分をろう付することにより形成され、熱交換管の一方の側壁が両平坦壁に一体に形成され、他方の側壁が第1平坦壁に一体に形成されて第2平坦壁側に突出した第1側壁形成部と、第2平坦壁に一体に形成されて第1平坦壁側に突出した第2側壁形成部とからなり、両側壁形成部の先端に、それぞれ熱交換管の幅方向外方に突出した平坦な外方突出壁が一体に形成され、両側壁形成部の外方突出壁どうしがろう付された熱交換器が知られている(特許文献2参照)。
【0006】
ところで、特許文献2記載の熱交換器においては、上記他方の側壁が、両側壁形成部の先端に設けられた外方突出壁どうしをろう付することにより形成されているが、ヘッダタンクとの組み合わせを考慮すると、外方突出壁の幅をそれほど大きくすることはできない。したがって、ろう付面積が比較的小さくなってろう付強度が不足し、内圧に対する十分な耐圧性が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−24440号公報
【特許文献2】特開2007−178010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、低コスト化および軽量化を図りうるとともに、熱交換管の内圧に対する耐圧性を向上しうる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)互いに対向する1対の平坦壁および両平坦壁の両側縁部どうしに跨る2つの側壁を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の両端部が接続されたヘッダタンクとを備えており、熱交換管が、1枚の金属板を曲げて所定部分をろう付することにより形成され、熱交換管の一方の側壁が両平坦壁に一体に形成され、他方の側壁が第1平坦壁に一体に形成されて第2平坦壁側に突出した第1側壁形成部と、第2平坦壁に一体に形成されて第1平坦壁側に突出した第2側壁形成部とからなる熱交換器において、
両側壁形成部の先端部に連なって、それぞれ熱交換管の幅方向内方に突出した内方突出壁が設けられ、両内方突出壁どうしが互いにろう付され、第1側壁形成部の内方突出壁の先端部に連なって第1平坦壁側に曲げられた屈曲部が設けられるとともに、第2側壁形成部の内方突出壁の先端部に連なって第2平坦壁側に曲げられた屈曲部が設けられ、両屈曲部の先端部に連なって、それぞれ両側壁形成部側にのびかつ両平坦壁内面に面接触する平坦部が設けられ、両平坦部が両平坦壁にろう付されている熱交換器。
【0011】
2)熱交換管における両平坦壁と一体に形成された一方の側壁が、熱交換管の厚み方向の中間部が外方に突出した横断面円弧状であり、熱交換管の他方の側壁を形成する両側壁形成部が、それぞれ外方に突出した横断面円弧状であり、両内方突出壁と両側壁形成部との連接部が、それぞれ外方に突出した横断面円弧状であり、両屈曲部が、それぞれ熱交換管の厚み方向の中間部が、熱交換管における両平坦壁と一体に形成された一方の側壁側に突出した横断面円弧状である上記1)記載の熱交換器。
【0012】
3)熱交換管内に、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を備えたインナーフィンが配置されており、インナーフィンの波頂部および波底部が両平端壁にろう付されている上記2)記載の熱交換器。
【0013】
4)上記1)〜3)のうちのいずれかに記載された熱交換器からなる産業機械用オイルクーラ。
【発明の効果】
【0014】
上記1)〜3)の熱交換器によれば、両側壁形成部の先端部に連なって、それぞれ熱交換管の幅方向内方に突出した内方突出壁が設けられ、両内方突出壁どうしが互いにろう付され、第1側壁形成部の内方突出壁の先端部に連なって第1平坦壁側に曲げられた屈曲部が設けられるとともに、第2側壁形成部の内方突出壁の先端部に連なって第2平坦壁側に曲げられた屈曲部が設けられ、両屈曲部の先端部に連なって、それぞれ両側壁形成部側にのびかつ両平坦壁内面に面接触する平坦部が設けられ、両平坦部が両平坦壁にろう付されているので、ろう付されている部分の面積が大きくなってろう付強度が増大する。特に、両側壁形成部の先端部に連なって設けられた内方突出壁の幅を、特許文献2記載の熱交換器の熱交換管における外方突出壁の幅に比べて大きくすることも可能となり、ろう付面積が増大する。また、熱交換管における両側壁形成部の先端部どうしの間、両内方突出壁の先端部どうしの間、両屈曲部の先端部と平坦壁との間、および平坦部の先端部と平坦壁との間に、それぞれ溶融ろう材が再凝固することにより得られたフィレットが形成されるので、フィレットが形成される箇所が、特許文献2記載の熱交換器に用いられている熱交換管よりも多くなり、これによってもろう付強度が増大する。したがって、熱交換管の内圧に対する耐圧性が向上する。しかも、熱交換管が、1枚の金属板を曲げることにより形成されているので、熱交換器全体の低コスト化および軽量化を図ることができる。
【0015】
上記2)の熱交換器によれば、熱交換管における両側壁形成部の先端部どうしの間、両屈曲部の内方突出壁側端部どうしの間、両屈曲部と両平坦壁との間、および両平坦部の先端部と両平坦壁との間にフィレットが形成されやすくなる。
【0016】
上記2)の熱交換器のように、熱交換管における両平坦壁と一体に形成された一方の側壁が、熱交換管の厚み方向の中間部が外方に突出した横断面円弧状である場合に、上記3)の熱交換器のように、熱交換管内に、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を備えたインナーフィンが配置されていると、熱交換管内の幅方向の両端部に、インナーフィンが存在しない比較的大きな空間が生じることになり、その結果熱交換管内の幅方向の両端部に生じた空間の通路抵抗が、インナーフィンが存在している部分の通路抵抗よりも低くなり、上記空間を多くの流体が流れることになって、熱交換効率が低下する。しかしながら、上記1)のように構成されていると、熱交換管内の幅方向の一端部には、インナーフィンが存在しない比較的大きな空間が生じることを防止することができる。したがって、熱交換効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の熱交換器を適用した産業機械用オイルクーラを示す垂直断面図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による熱交換器を、産業機械用オイルクーラに適用したものである。
【0019】
図1はこの発明による熱交換器を適用したオイルクーラの全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成を示す。
【0020】
なお、以下の説明において、図1の上下、左右を上下、左右というものとし、図2の左側を前、これと反対側を後というものとする。
【0021】
図1において、産業機械に用いられるオイルクーラ(1)は、左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対のアルミニウム製ヘッダタンク(2)(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間において幅方向を通風方向(前後方向)に向けるとともに上下方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部が両ヘッダタンク(2)(3)にろう付により接続されたされた複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(4)と、隣り合う熱交換管(4)どうしの間、および上下両端の熱交換管(4)の外側に配置されて熱交換管(4)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)と、上下両端のコルゲートフィン(5)の外側に配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたアルミニウム製サイドプレート(6)とを備えている。
【0022】
右側ヘッダタンク(3)は、高さ方向の中央部において仕切部材(7)により上下2つのヘッダ部(3a)(3b)に仕切られており、上ヘッダ部(3a)にオイル入口(8)が設けられ、下ヘッダ部(3b)にオイル出口(9)が設けられている。
【0023】
図2および図3に示すように、熱交換管(4)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートを曲げるとともに所定部分をろう付することにより形成されたものであって、互いに対向する上下1対の平坦壁(11)(12)と、両平坦壁(11)(12)の前後両側縁部どうしに跨る2つの側壁(13)(14)とを有しており、熱交換管(4)の内部にはアルミニウム製インナーフィン(15)が配置されている。
【0024】
前側壁(13)は、上下両平坦壁(11)(12)と一体に形成されたものであって、高さ方向(熱交換管(4)の厚み方向)の中央部が熱交換管(4)の幅方向外方(前方)に突出した横断面半円形状となっている。
【0025】
後側壁(14)は、上平坦壁(11)(第1平坦壁)に一体に形成されて下平坦壁(12)側(第2平坦壁側)に突出した上側壁形成部(16)(第1側壁形成部)と、下平坦壁(12)に一体に形成されて上平坦壁(11)側に突出した下側壁形成部(17)とからなる。上側壁形成部(16)は、後方に向かって下側に湾曲しかつ中間部が外方に突出した横断面円弧状であり、下側壁形成部(17)は、後方に向かって上側に湾曲しかつ中間部が外方に突出した横断面円弧状である。両側壁形成部(16)(17)を合わせた形状は、高さ方向(熱交換管(4)の厚み方向)の中央部が熱交換管(4)の幅方向外方(後方)に突出した横断面半円形状に近い形状となっている。上下両側壁形成部(16)(17)の先端部に連なって、それぞれ熱交換管(4)の幅方向内方(前方)に突出した平坦な内方突出壁(18)(19)が一体に形成されており、両内方突出壁(18)(19)どうしが互いにろう付されている。両内方突出壁(18)(19)と両側壁形成部(16)(17)との連接部(21)(22)は、それぞれ中間部が外方に突出した横断面円弧状である。上内方突出壁(18)の先端部(内端部)に連なって、上平坦壁(11)側に曲げられかつ上下方向の中間部が前方(両平坦壁(11)(12)と一体に形成された前側壁(13)側)に突出した横断面半円形状の屈曲部(23)が一体に設けられ、下内方突出壁(19)の先端部(内端部)に連なって、下平坦壁(12)側に曲げられかつ上下方向の中間部が前方に突出した横断面半円形の屈曲部(24)が一体に設けられている。また、上屈曲部(23)の上端および下屈曲部(24)の下端に、それぞれ後方(両側壁形成部(16)(17)側)にのびかつ両平坦壁(11)(12)内面に面接触する平坦部(25)(26)が設けられており、上平坦部(25)が上平坦壁(11)にろう付されるとともに、下平坦部(26)が下平坦壁(12)にろう付されている。そして、熱交換管(4)における両側壁形成部(16)(17)の先端部どうしの間、両屈曲部(23)(24)の内方突出壁(18)(19)側端部どうしの間、両屈曲部(23)(24)と両平坦壁(11)(12)との間、および両平坦部(25)(26)の先端部と両平坦壁(11)(12)との間に、それぞれ溶融ろう材が再凝固することにより得られたフィレット(27)が形成されている。
【0026】
熱交換管(4)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる平坦な金属素板にロールフォーミングを施して管素材を形成するとともに、管素材内にインナーフィン(15)を配置し、管素材の所定部分をろう付するとともに、インナーフィンを管素材にろう付することによりつくられる。
【0027】
インナーフィン(15)はオフセット状であり、左右方向にのびる波頂部(28a)、前後方向にのびる波底部(28b)、および波頂部(28a)と波底部(28b)とを連結する連結部(28c)を有する波状帯板(28)が、左右方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成されたものであり、左右方向に隣り合う2つの帯板(28)の波頂部(28a)どうしおよび波底部(28b)どうしは、前後方向に位置ずれしている。
【0028】
なお、インナーフィン(15)としては、左右方向にのびる波頂部、左右方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のものが用いられていてもよい。
【0029】
オイルクーラ(1)は、すべての部品を一括してろう付することにより製造される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明による熱交換器は、産業機械用オイルクーラに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0031】
(1):オイルクーラ(熱交換器)
(2)(3):ヘッダタンク
(4):熱交換管
(11)(12):平坦壁
(13)(14):側壁
(15):インナーフィン
(16)(17):側壁形成部
(18)(19):内方突出壁
(21)(22):円弧状部分
(23)(24):屈曲部
(25)(26):平坦部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の平坦壁および両平坦壁の両側縁部どうしに跨る2つの側壁を有し、かつ互いに間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置された複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の両端部が接続されたヘッダタンクとを備えており、熱交換管が、1枚の金属板を曲げて所定部分をろう付することにより形成され、熱交換管の一方の側壁が両平坦壁に一体に形成され、他方の側壁が第1平坦壁に一体に形成されて第2平坦壁側に突出した第1側壁形成部と、第2平坦壁に一体に形成されて第1平坦壁側に突出した第2側壁形成部とからなる熱交換器において、
両側壁形成部の先端部に連なって、それぞれ熱交換管の幅方向内方に突出した内方突出壁が設けられ、両内方突出壁どうしが互いにろう付され、第1側壁形成部の内方突出壁の先端部に連なって第1平坦壁側に曲げられた屈曲部が設けられるとともに、第2側壁形成部の内方突出壁の先端部に連なって第2平坦壁側に曲げられた屈曲部が設けられ、両屈曲部の先端部に連なって、それぞれ両側壁形成部側にのびかつ両平坦壁内面に面接触する平坦部が設けられ、両平坦部が両平坦壁にろう付されている熱交換器。
【請求項2】
熱交換管における両平坦壁と一体に形成された一方の側壁が、熱交換管の厚み方向の中間部が外方に突出した横断面円弧状であり、熱交換管の他方の側壁を形成する両側壁形成部が、それぞれ外方に突出した横断面円弧状であり、両内方突出壁と両側壁形成部との連接部が、それぞれ外方に突出した横断面円弧状であり、両屈曲部が、それぞれ熱交換管の厚み方向の中間部が、熱交換管における両平坦壁と一体に形成された一方の側壁側に突出した横断面円弧状である請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
熱交換管内に、通風方向にのびる波頂部、通風方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部を備えたインナーフィンが配置されており、インナーフィンの波頂部および波底部が両平端壁にろう付されている請求項2記載の熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれかに記載された熱交換器からなる産業機械用オイルクーラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−229853(P2012−229853A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98308(P2011−98308)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】