説明

熱交換装置及びこれを用いた冷却庫

【課題】部品点数の増加や加工工数の増加を抑えるとともに、生産性の高い熱交換装置を提供する。
【解決手段】低温の冷媒が流れ、少なくとも1箇所が曲げられた低温配管6と、内部に高温の冷媒が流れ、少なくとも中間部分で低温配管6と接触固定された2本の高温配管41、42とを有しており、2本の高温配管41、42は、低温配管6の曲げ方向と交差する方向に且つ低温配管6を挟んで対称となるように並んで配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部を冷媒が通過する熱交換装置及びこの熱交換装置を用いた冷蔵庫、冷凍庫等の冷却庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵(冷凍)庫等の冷却庫は、冷却装置として、圧縮式冷凍機を備えているものが多い。前記蒸気圧縮式冷凍機は、圧縮機で圧縮され凝縮器で液化された冷媒の流量を絞る絞り器として、キャピラリー管を備えているものがある。前記冷媒は前記キャピラリー管で減圧され気化して、蒸発器に流入する。前記低温の冷媒は前記蒸発器の周囲の空気と熱交換し、前記蒸発器の周囲の空気を冷却する。前記蒸発器を出た冷媒はサクションパイプを通り前記圧縮機に流入する。
【0003】
前記圧縮式冷凍機において、冷凍サイクルの効率を向上させるために、抵抗の異なる(内径及び/又は長さの異なる)2本のキャピラリー管と、切り替え弁とを備え、前記キャピラリー管を選択することで冷凍能力を調整しているものが実用化されている。前記圧縮式冷凍機では、前記2本のキャピラリー管が合流する部分では、前記2本のキャピラリー管を挿入して1本の配管にまとめるための合流部材が用いられている(例えば、特許3076522号公報、実用新案3118033号公報、特開2009−168196号公報等)。
【0004】
前記キャピラリー管には高温の冷媒が、前記サクションパイプには低温の冷媒がそれぞれ流れており、それぞれに流れる冷媒間で熱交換することで前記圧縮式冷凍機の冷凍サイクルの効率を上げることが可能である。また、前記サクションパイプを流動する冷媒の温度を上げることで、前記サクションパイプの着霜を抑制する効果もある。そして、1本のサクションパイプに2本のキャピラリー管を接触させる(特開2002−372319号公報等参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3076522号公報
【特許文献2】実用新案3118033号公報
【特許文献3】特開2009-168196号公報
【特許文献4】特開2002−372319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記キャピラリー管と前記サクションパイプとはそれぞれを流れる冷媒の熱交換の効果を高めるためある程度の接触長さが必要である。前記冷却庫は、内部の容量を大きくするため、前記圧縮式冷凍機の設置場所を大きく取ることができない。そこで、前記キャピラリー管及び前記サクションパイプを曲げて蛇行させている。このような前記キャピラリー管及び前記サクションパイプの曲げは、前記キャピラリー管と前記サクションパイプとを接触固定した後になされる。
【0007】
特開2002−372319号公報に記載の発明のように2本のキャピラリー管をサクションパイプに接触させているものの場合、前記キャピラリー管及び前記サクションパイプの曲げ方向によっては、前記キャピラリー管が前記サクションパイプにめり込んだり、前記キャピラリー管がつぶれたりしやすく、加工が難しい。また、このような不具合が発生しないように、前記キャピラリー管と前記サクションパイプとを別々に曲げ加工し、ロウ付けする方法も考えられるが、曲げ加工の回数が増えるとともに、前記キャピラリー管と前記サクションパイプとの曲げ部分の曲率を精度良くあわせる必要があり、加工に手間と時間がかかる。
【0008】
また、圧縮式冷凍機では、前記キャピラリー管は前記蒸発器の入口側配管に、前記サクションパイプ側の配管に接合される。上述したような、2本のキャピラリー管を備えている場合、特許3076522号公報、実用新案3118033号公報、特開2009−168196号公報等に記載されているような合流部材を用いて前記2本のキャピラリー管をまとめており、部品点数が増える。また、合流部材を用いる場合、少なくとも3箇所(2本のキャピラリー管及び合流後の配管と合流部材との接合部)ロウ付けしなくてはならず、それだけ、製造に手間と時間がかかる。また、前記合流部材を取り付けるために前記冷却庫内にスペースを設ける必要があり、前記合流部材を配置する場所によっては、前記合流部材における冷媒の漏れ等を確認することが難しい場合もある。
【0009】
そこで本発明は、2つのキャピラリー管を1つの蒸発器に接続する構造を有する熱交換装置であって、部品点数の増加や加工工数の増加を抑えるとともに、生産性の高い熱交換装置及びこの熱交換装置を用いた冷却庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、低温の冷媒が流れ、少なくとも1箇所が曲げられた低温配管と、内部に高温の冷媒が流れ、少なくとも中間部分で前記低温配管と接触固定された2本の高温配管とを有しており、前記2本の高温配管は、前記低温配管の曲げ方向と交差する方向に且つ前記低温配管を挟んで対称となるように並んで配置されていることを特徴とする。
【0011】
この構成によると、前記2本の高温配管を前記低温配管に接触固定した状態で前記低温配管の曲げ加工を行うとき、前記2本の高温配管と前記低温配管の曲げ部分での曲率を適切に調整することができるので、前記高温配管が外れたり、つぶれたり、前記低温配管にめり込んだりする不具合を低減することができる。
【0012】
上記構成において、前記2本の高温配管は少なくとも接触固定されている部分が、前記低温配管の曲げ方向と直交する方向に配置されている場合、前記2本の高温配管と1本の低温配管との曲率を同じにすることができ、前記高温配管が外れたり、つぶれたり、前記低温配管にめり込んだりする不具合を最も効果的に抑えることができる。
【0013】
上記構成において、前記2本の高温配管は管の内径又は長さの少なくとも一方が異なる配管である。
【0014】
上記構成において、前記低温配管は蒸発器と圧縮機とを接続するサクションパイプであり、前記2本の高温配管は凝縮器と前記蒸発器との間に配置されるキャピラリー管であって、前記2本のキャピラリー管は、冷媒回路に置いて平行に形成された配管であり、前記2本のキャピラリー管は、前記蒸発器の入口側配管にまとめて挿入、ロウ付け固定されている。
【0015】
この構成によると、前記2本のキャピラリー管と前記入口側配管とをまとめて加熱しロウを流し込むことでロウ付けすることができるので、加工にかかる時間を短縮することが可能である。また、前記サクションパイプと前記キャピラリー管とが近接して配置される構成となるので、前記サクションパイプと前記出口側配管、前記キャピラリー管と前記入口側配管とを連続して接続でき、それだけ製造時間を短縮することが可能である。
【0016】
上記構成において、前記2本のキャピラリー管の両端部は前記サクションパイプと分離されており、前記2本のキャピラリー管の少なくとも前記蒸発器の前記入口側配管に挿入固定される側の端部は、焼鈍されている。
【0017】
この構成によると、前記2本のキャピラリー管の前記入口側配管への取り回しの自由度が高くなるので、作業効率が上がる。
【0018】
上記構成において、前記蒸発器の入口側配管の管部は、前記2本のキャピラリー管を並べて挿入できる形状を有している。このこうせいによると、前記2本のキャピラリー管をまとめて、前記入口側配管に挿入することができるので、作業の効率が高くなる。
【0019】
上記構成において、前記2本のキャピラリー管の前記入口側配管に挿入固定される端部が、固定部材で束ねられている。前記固定部材として、リングロー、テープ、リボン等を挙げることができる。このように、前記キャピラリー管の前記入口側配管に挿入される部分を束ね、前記入口側配管に挿入することで、先端がわれにくく、前記キャピラリー管の前記入口側配管への挿入作業が容易になる。なお、前記リングローとして、前記2本のキャピラリー管を囲む円形のものや、一部が開口しているC形状のものであってもよい。
【0020】
上記構成において、前記入口側配管の管部が、前記蒸発器を設置位置に設置したとき、前記2本のキャピラリー管を水平方向に並べることができる形状である。この構成によると、前記2本のキャピラリー管と前記入口側配管の大きな隙間が上下に形成されるので、この隙間にロウを流し込みやすく、また、ロウの流れ込み度合いの確認もやりやすい。
【0021】
上位構成において、前記入口側配管の管部先端の開口には、先端に向かって外側に開いたテーパーが形成されている。このとき、前記テーパーとして、前記蒸発器を設置場所に設置したとき、下側の斜面長さが他の部分に比べて長いものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、2つのキャピラリー管を1つの蒸発器に接続することで、部品点数の増加や加工工数の増加を抑えるとともに、生産性の高い熱交換装置及びこの熱交換装置を用いた冷却庫を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる熱交換装置を備えた圧縮式冷凍機及び冷却庫の概略図である。
【図2】蒸発器の一例の斜視図である。
【図3】本発明にかかる熱交換パイプの斜視図である。
【図4】図3に示す熱交換パイプの断面図である。
【図5】図2に示す蒸発器のV部分の拡大斜視図である。
【図6】図5に示す蒸発器の入口側配管の矢印側から見た斜視図である。
【図7】図5に示す入口側配管の軸と沿う方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる蒸発器を備えた圧縮式冷凍機及び冷却庫の概略図である。図1に示すように、冷却庫は、断熱箱体の内部に冷蔵領域である冷蔵室R1と、冷凍領域である冷凍室R2とを備えている。また、冷却庫Rfには、冷蔵室R1、冷凍室R2の内部を冷却する圧縮式冷凍機Aが備えられている。圧縮式冷凍機Aは、圧縮機1、凝縮器2、切替弁3及び熱交換装置を備え、内部に冷媒が封入された冷凍サイクルである。そして、本発明にかかる熱交換装置は、第1キャピラリー管41、第2キャピラリー管42、蒸発器5及びサクションパイプ6とを含む。
【0025】
冷却庫Rfでは、冷蔵室R1と冷凍室R2とは断熱体で仕切られている。冷蔵室R1と冷凍室R2との間を仕切る断熱体には、冷蔵室R1と冷凍室R2との間で空気を流動させるためのダクト(不図示)が形成されている。後述するが、蒸発器5は冷凍室R2だけに配置されるものであり、圧縮式冷凍機Aは冷凍室R2を冷却する。冷却庫Rfでは、ダクトを介して冷凍室R2の冷気を冷蔵室R1に送ることで、冷蔵室R1を冷却する構成となっている。そして、蒸発器5と熱交換した冷気を冷凍室R2の内部に循環させるためのファン(不図示)及びダクトを介して冷凍室R2の冷気を冷蔵室R1に送るファン(不図示)が取り付けられている。
【0026】
まず、圧縮式冷凍機Aについて説明する。圧縮機1は冷媒を圧縮し、凝縮器2に送る電動機である。圧縮機1は冷却庫Rfの断熱箱体の外部に配置されている。凝縮器2は圧縮機1より送られてきた冷媒を冷却し凝縮する。圧縮式冷凍機Aでは、凝縮器2は冷却庫Rfの断熱箱体の外部に引き回された配管で構成されており、この配管を通過するときに冷媒の熱を冷却庫Rfの外部に排出する。なお、凝縮器2の構成としてはこれに限定されるものではなく、一般的に良く用いられる空冷式又は水冷式の熱交換器を利用したものであってもよい。また、凝縮器2は熱交換効率を高めるため、熱伝導率の高い銅等の金属で形成されている。なお、銅に限定されるものではなく、アルミニウム(合金)等、導電性が高い金属を採用することができる。
【0027】
切替弁3は凝縮器2からの冷媒を第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42のいずれか一方もしくは両方に流動させるための電磁弁である。切替弁3は冷蔵室R1及び(又は)冷凍室R2の内部温度、圧縮機1の回転数等をもとに切替動作を行うように構成されている。切替弁3も凝縮器2同様、冷却庫Rfの断熱箱体の外部に配置されている。また、切替弁3は、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の両方への冷媒の流動を封鎖する機能も備えている。圧縮機1が停止しているとき、切替弁3を操作し、凝縮器2からの冷媒の流出を抑制することで、凝縮器2側の冷媒圧力の低下を抑え、圧縮式冷凍機Aを省エネルギ化することが可能である。
【0028】
第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は、凝縮器2からの配管よりも小さな内径を有する銅管であり、凝縮器2からの冷媒の圧力を下げる絞り器である。第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42から出る冷媒は拡散され蒸発する。なお、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42は異なる内径を有している。このように、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42との内径が異なることで、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は抵抗が異なる。なお、圧縮式冷凍機Aではキャピラリー管の内径の差で抵抗を調整しているが、同じ内径の管を用い、長さで抵抗を調整してもよいし、内径及び長さを調整するようにしてもよい。
【0029】
第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42はまとめられて、蒸発器5の入口側配管51に直接接続されている。つまり、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は、断熱箱体の外側に配置されている切替弁3と、冷凍室R2の内部(断熱箱体の内部)に配置されている蒸発器5とを接続する配管であり、断熱箱体を横断している。なお、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流通する冷媒は温度が高く、冷蔵室R1、冷凍室R2に熱が伝わらないように、そして、凝縮器2からの熱で加熱されないように、切替弁3との接続する端部及び蒸発器5と接続する端部以外の部分が、断熱箱体の断熱層の内部に形成された空間である断熱部に配置されている。
【0030】
蒸発器5は内部を流通する冷媒が外部の空気と熱交換し外部の空気を冷却する熱交換器であり、冷凍室R2の内部に配置される。図2は蒸発器の一例の斜視図である。図2に示すように、蒸発器5は熱交換部50と、熱交換部50に冷媒を流入させる入口側配管51と、熱交換部50の冷媒が排出される出口側配管52とを備えている。熱交換部50は蛇行する配管と、互いに平行に配置され配管が貫通した複数枚のフィンとを備えている。なお、配管は直線部分と曲線部分とを有しており、熱交換部50では直線部分でフィンを貫通している。フィンによって熱交換部50の表面積が大きくなり、冷媒による冷却効果が高められる。
【0031】
蒸発器5の出口側配管52にはサクションパイプ6が接続されている。サクションパイプ6は蒸発器5と圧縮機1とを接続する配管である。サクションパイプ6を流れる冷媒と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を流れる冷媒とで熱交換を行う。なお、サクションパイプ6は、内部を流れる冷媒と第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流れる冷媒とで熱交換を行うことから、銅、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属(ここでは、銅管)で形成されている。また、サクションパイプ6も第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と同様に断熱箱体に形成されている断熱部に配置されている。サクションパイプ6の断熱部から圧縮機1までの部分では、断熱箱体の断熱層の外部に配置される。サクションパイプ6を流れる冷媒が第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流れる冷媒と熱交換をすることで暖められるので、サクションパイプ6も暖められ、サクションパイプ6の断熱層の外側に配置されている部分に霜や露が付着するのを抑制することができる。
【0032】
次に圧縮式冷凍機の動作について説明する。冷媒は圧縮機1で圧縮され、高温高圧の冷媒ガスとなり、凝縮器2に流入する。高温高圧の冷媒ガスは凝縮器2の内部を流動するときに、外部の空気と熱交換することで凝縮液化する。凝縮液化された冷媒は、切替弁3が切替動作されることで、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42のいずれかに流入する。
【0033】
冷媒は第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42で減圧される。なお、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42とは抵抗が異なっており、圧縮機1の回転数によって第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42のいずれか適切な方が選択されるようになっている。また、圧縮機1の回転数はそのままで第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を選択することで、蒸発器5における冷媒の蒸発温度を調整することも可能である。また、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は低温の冷媒が流れるサクションパイプ6と接触しているので、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流れる高温の冷媒は冷却される。これにより、蒸発器5における冷却力を高めることができる。
【0034】
第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42で減圧された冷媒は、低温低圧状態で蒸発器5に流入する。なお、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は蒸発器5の入口側配管51に接続されており、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42のいずれを通過した冷媒も入口側配管51から蒸発器5に流入する。
【0035】
蒸発器5に流入した冷媒は急激な圧力差によって気化する。冷媒は気化することで低温の冷媒ガスとして、蒸発器5の熱交換部50を流通する。このとき、熱交換部50を流通するときに冷凍室R2の内部の空気と熱交換し、冷凍室R2を冷却する。熱交換部50を流通した冷媒は熱交換により温度を上げ、出口側配管52からサクションパイプ6に流入する。サクションパイプ6は第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と接触しており、サクションパイプ6を流通する低温の冷媒は第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流通する高温の冷媒と熱交換することで加熱され適度な冷媒ガスとなって圧縮機1に吸入される。
【0036】
サクションパイプ6は冷凍室R2(断熱箱体)の内部に配置された蒸発器5の出口側配管52と、断熱箱体の外部に配置された圧縮機1とを接続する配管であり、断熱箱体の断熱層を横断する。なお、後述しているように、サクションパイプ6の内部を流れる冷媒と第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流れる冷媒とで熱交換を行う。
【0037】
そのため、サクションパイプ6は第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と断熱部の内部で接触するように配置されている。なお、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6とは表面で熱交換可能なように接着固定されており、熱交換パイプHpを構成している。なお、サクションパイプ6は銅、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属(ここでは、銅管)で形成されていることが好ましい。また、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6との固定方法として、はんだ付けで固定する方法を採用できる。また、これ以外にも、第1キャピラリー管41、第2キャピラリー管42及びサクションパイプ6への弊害のすくない固定方法を広く採用することが可能である。
【0038】
次に、本発明の要部である熱交換パイプについて図面を参照して説明する。図3は本発明にかかる熱交換パイプの平面図であり、図4は図3に示す熱交換パイプの断面図である。図4に示すように、熱交換パイプHpは、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と、サクションパイプ6との外周面が接触している。第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42はサクションパイプ6よりも外径及び内径が小さな管体である。
【0039】
さらに詳しく説明すると、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は一方の端部が切替弁3に、他方の端部が蒸発器5の入口側配管51に接続される。また、サクションパイプ6は一方の端部が圧縮機1に他方の端部が蒸発器5の出口側配管52に接続される。このことから、熱交換パイプHpでは、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の中間部とサクションパイプ6の中間部が断熱部の内部に配置されているとともに、ロウ付けにて接触固定されている。換言すると、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の両端部は、サクションパイプ6から分離されて形成されている。
【0040】
熱交換パイプHpでは、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6とが接触している部分で、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流通する高温の冷媒とサクションパイプ6を流れる低温の冷媒との間で熱交換が行われる。すなわち、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流通する冷媒は冷やされ、蒸発器5で蒸発するときの蒸発温度が低くなり、圧縮式冷凍機のサイクル効率を高めている。逆に、サクションパイプ6を流通する低温の冷媒は第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流通する高温の冷媒と熱交換することで加熱され、運転に適切な温度の冷媒ガスとなって圧縮機1に吸入される。また、サクションパイプ6の圧縮機1に接続部に近い部分は断熱部の外部に配置されているが、冷媒が温められていることで空気中の水分がサクションパイプ6の表面に霜として付着しにくい。
【0041】
しかしながら、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6との接触部分の長さが短いと、熱交換量が少なく、上述の効果が小さい。そこで、熱交換パイプHpでは、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6との接触固定されている部分を、蛇行させ、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6との接触長さを長くしている。
【0042】
このようにして、第1キャピラリー管41又は第2キャピラリー管42を流れる冷媒と、サクションパイプ6を流れる冷媒との熱交換量を増やしている。熱交換量を増加させることで、上述した効果を大きくすることが可能である。なお、熱交換パイプHpでは、2箇所曲げられた形状を有しているが、これに限定されるものではなく、曲げ数、形状は熱交換パイプHpの設置場所によって適宜設計されるものである。
【0043】
熱交換パイプHpは、サクションパイプ6と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とが固定された状態で、曲げ加工にて製造される。このとき、サクションパイプ6と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42との曲率が異なると、第1キャピラリー管41及び(又は)第2キャピラリー管42が潰れてしまったり、第1キャピラリー管41及び(又は)第2キャピラリー管42がサクションパイプ6にめり込んでしまったり、或いは、第1キャピラリー管41及び(又は)第2キャピラリー管42とサクションパイプ6とが剥離してしまったりする。そこで、図4に示すように、熱交換パイプHpはサクションパイプ6の曲げ方向と交差する線状で、サクションパイプ6の中心を挟んで対称となるように第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42が取り付けられている。
【0044】
このように、サクションパイプ6に第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を取り付けた状態で、曲げ加工をした場合、第1キャピラリー管41、第2キャピラリー管42及びサクションパイプ6の曲げ部の曲率が同じ又は略同じになる。これにより、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6との曲げによるずれが発生しにくく、第1キャピラリー管41、第2キャピラリー管42のつぶれや、サクションパイプ6にめり込む不具合が発生しにくい。このため、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42はサクションパイプ6の曲げ方向と略直交する線上に中心がくるようにサクションパイプ6に取り付けられている。
【0045】
なお、サクションパイプ6と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42との曲率が一致した場合、変形差が発生しない。このことから、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42はサクションパイプ6の曲げ方向と直交する線上に中心がくるように配置されることが好ましい。また、このような複数の管を張り合わせた管体を曲げる方法としては、複数のローラで管を押して曲げる曲げ加工法を挙げることができるが、これに限定されるものではなく、管体をつぶれないように、めり込まないように曲げることができる加工方法を広く採用することが可能である。
【0046】
第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6とは異なる位置で異なる配管(入口側配管51、出口側配管52)と接続している。そして、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42のサクションパイプ6から分離している部分は、熱処理(焼鈍)されており、変形できるようになっている。
【0047】
第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の先端は、変形可能であることから、必要に応じ、サクションパイプ6から離れた位置でまとめることが可能である。また、まとめた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を、届く範囲において、引き回すことが可能である。一方で、サクションパイプ6は熱処理されないので硬く、変形しにくい。また、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42のサクションパイプ6と接触ロウ付けされている部分も熱処理されておらず硬い。
【0048】
次に、蒸発器5の冷凍室R2への取り付けについて説明する。冷却庫Rfでは、蒸発器5が冷凍室R2に取り付けられる前に、熱交換パイプHpが断熱箱体の断熱部の内部に取り付けられている。このとき、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とサクションパイプ6の蒸発器5側の端部は、不図示の開口部より、冷凍室R2内に引き込まれている。上述しているように、サクションパイプ6の先端部は変形しにくく、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の先端部は変形可能となっている。
【0049】
このことから、サクションパイプ6が出口側配管52を貫通するように蒸発器5を冷却室R2内に配置する。蒸発器5はサクションパイプ6が出口側配管52に挿入された状態で、冷却庫Rfの冷凍室R2内部に固定する。その後、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42をまとめ、蒸発器5の入口側配管51に挿入する。第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と入口側配管51、サクションパイプ6と出口側配管52とは隙間にロウを流し込み、ロウ付けすることで固定される。
【0050】
第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と入口側配管51とのロウ付けについて図面を参照して説明する。図5は図2に示す蒸発器のV部分の拡大斜視図であり、図6は図5に示す蒸発器の入口側配管の矢印側から見た斜視図である。
【0051】
サクションパイプ6が出口側配管52に挿入されている蒸発器5は冷却室R2の内部に固定される。その後、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とをまとめた状態で、一緒に入口側配管51に挿入する。入口側配管51に挿入するときに取り回すとき、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42がねじれたり、引っ張られたりして、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42の先端が離れてしまうことがある。先端が離れている状態では、入口側配管51に挿入がやりにくい。
【0052】
そこで、図5に示しているように、入口側配管51に挿入する前に、リングロー43で第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42をまとめて束ねる。リングロー43で束ねることで第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42の先端が離れるのを抑制している。このことから、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42をきっちり入口側配管51に挿入することが可能である。リングロー43は図5に示すようにらせん状にねじられた構成のものであってもよく、リングロー44のように端部をつき合わせて形成されたもの、リングロー45のように一部が開口したC形状のものであってもよい。なお、リングロー43、44、45は、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42と同じ銅で形成されているが、これに限定されるものではなく、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42をしっかり束ねることができるものであってもよい。また、リングローの代わりに、テープ等を用いて束ねるものであってもよい。
【0053】
次に、入口側配管51について詳しく説明する。入口側配管51には、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42とが一緒に挿入される。そのため、図6に示しているように、入口側配管51は開口510の形状が長円形状となっている。開口510の長円形状は第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を束ねて挿入したとき、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42が入口側配管51の内壁を摺動する程度の大きさ及び形状を有するものである。
【0054】
また、図2、図5、図6等に示しているように、入口側配管51の開口510は第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42が左右(奥向き)に並ぶ長円形状となっている。束ねた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を円滑に開口510に挿入するため、図6に示すように、入口側配管51の開口510には、外側に向かって開くテーパー部511が形成されている。このテーパー部511が形成されていることで、束ねられた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の先端がテーパー511によって開口510の中心に導かれる。これにより、束ねられた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を入口側配管51に挿入する作業性が高くなる。
【0055】
また、冷却庫Rfは通常低温の冷凍室R2が冷蔵室R1よりも下に形成されており、蒸発器5が冷凍室R2に配置される。このような冷却庫Rfを製造する場合、作業者は蒸発器5に情報からアクセスすることが多い。この場合、作業者は束ねた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42は、上側から角度がついた状態で入口側配管51の開口510に挿入される場合が多い。この場合においても、入口側配管51の開口510にテーパー部11が形成されていることで、束ねた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を容易に開口510に挿入することが可能であり、作業性が高くなる。
【0056】
入口側配管51に第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を挿入した後、入口側配管51と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を加熱し、入口側配管51と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42との隙間に溶融されたロウを流し込むことでロウ付けする。ロウは第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42の接触部分と入口側配管51との隙間に流し込まれる。その後、毛管現象によって、入口側は管51と第1キャピラリー管41との隙間、第2キャピラリー管42との隙間に浸透していく。入口側配管51にテーパー部511が形成されていることで、溶融したロウがテーパー部分に溜まりやすく、ロウ付け作業自体も容易になる。
【0057】
また、入口側配管51に第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を左右に並んで挿入する構成であるので、ロウ付け時、溶融したロウを流入させる第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42の接触部分と入口側配管51との隙間が、上下に形成され、その隙間に溶融したロウを流し込むので、作業が容易である。また、作業者は、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42の接触部分と入口側配管51との隙間にロウがきっちり流入していることを確認することで、入口側配管51と第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42がきっちり固定されているかの確認を行っている。この第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42の接触部分と入口側配管51との隙間が上下に形成されているので、容易に確認を行うことができる。
【0058】
なお、冷却庫Rfにおいて、蒸発器5は冷凍室R2の壁部に近接して配置される。このことから、入口側配管51、第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42の加熱に、全体を均一に加熱しやすいトーチを用いることは困難である。そこで、引火しない誘導加熱装置を用いて加熱する方法が採用されている。誘導加熱装置は入口側配管51にコイルを近接させ、誘導による加熱を行っている。
【0059】
上述の実施形態では入口側配管51の開口510に形成されているテーパー部511は開口510の全周にわたって同じ長さの斜面を有するように形成されたものである。しかしながら、これに限定されるものではなく、図7に示すように、蒸発器5を冷却庫Rfの内部に配置したとき、下側の斜面の長さが他の部分よりも長いテーパー部512を形成してもよい。なお、図7は本発明にかかる熱交換装置に用いられる入口側配管の断面図である。このように、下側のテーパー部512を大きく形成することで、同じ大きさのテーパー部511を備えたものに対して、束ねた第1キャピラリー管41及び第2キャピラリー管42を挿入する作業が容易になる。また、下側の斜面が大きくなるので、第1キャピラリー管41と第2キャピラリー管42との接触部と入口側配管51との隙間が大きくなり、テーパー部512に溜まるロウの量が多くなる。これにより、第1キャピラリー管41、第2キャピラリー管42、入口側配管51との隙間を確実に埋めることができる。
【0060】
本発明の熱交換装置によると、キャピラリー管と入口側配管やサクションパイプと出口側配管とのロウ付け接合を、蒸発器を冷凍室に配置した後に行うので、ロウ付け部分が冷凍室の内部に配置されている。これにより、冷却庫を組み立てた後、冷媒を充填し、検査するときに、接合部における冷媒漏れの確認が容易であるとともに、冷媒漏れの修正が容易である効果も奏する。これにより、本発明の冷却庫では、歩留まりを高めることができるとともに、修理やメンテナンスも容易に行うことができる。
【0061】
なお、以上の説明において、ロウ付けと称している接合方法は、溶融時の浸透性(流動性)が高い無銀リン銅ロウ(BCuP−2:JIS)が用いられている。また、1本の太いパイプとそれに沿って配置される2本の細い管としてサクションパイプと2本のキャピラリー管を例に説明しているが、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明にかかる熱交換装置は、圧縮式冷凍装置における、凝縮器から圧縮機までの熱交換により内部を冷却する冷却装置として用いることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温の冷媒が流れ、少なくとも1箇所が曲げられた低温配管と、
内部に高温の冷媒が流れ、少なくとも中間部分で前記低温配管と接触固定された2本の高温配管とを有しており、
前記2本の高温配管は、前記低温配管の曲げ方向と交差する方向に且つ前記低温配管を挟んで対称となるように並んで配置されていることを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記2本の高温配管は少なくとも接触固定されている部分が、前記低温配管の曲げ方向と直交する方向に配置されている請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記2本の高温配管は管の内径又は長さの少なくとも一方が異なる配管である請求項1又は請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記低温配管は蒸発器と圧縮機との間に配置されるサクションパイプであり、
前記2本の高温配管は凝縮器と前記蒸発器との間に配置されるキャピラリー管であって、
前記2本のキャピラリー管は、冷媒回路に置いて平行に形成された配管であり、
前記2本のキャピラリー管は、前記蒸発器の入口側配管にまとめて挿入、ロウ付け固定されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記2本のキャピラリー管の両端部は前記サクションパイプと分離されており、
前記2本のキャピラリー管の少なくとも前記蒸発器の前記入口側配管に挿入固定される側の端部は、焼鈍されている請求項4に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記蒸発器の入口側配管の管部は、前記2本のキャピラリー管を並べて挿入できる形状を有している請求項4に記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記2本のキャピラリー管の前記蒸発器に挿入固定される端部は、固定部材で束ねられている請求項6に記載の熱交換装置。
【請求項8】
前記固定部材はリングローである請求項7に記載の熱交換装置。
【請求項9】
前記入口側配管の管部は、前記凝縮器を設置位置に設置したとき、前記2本のキャピラリー管を水平方向に並べることができる形状である請求項6から請求項8のいずれかに記載の熱交換装置。
【請求項10】
前記入口側配管の管部先端の開口には、先端に向かって外側に開いたテーパーが形成されている請求項4から請求項9のいずれかに記載の熱交換装置。
【請求項11】
前記テーパーは、前記蒸発器を設置場所に設置したとき、下側の斜面長さが他の部分に比べて長い請求項10に記載の熱交換装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の熱交換装置を備えている冷却庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−78022(P2012−78022A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224063(P2010−224063)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】