説明

熱交換装置

【課題】高効率、高出力の熱交換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】多数枚のプレートフィン1に設けられた貫通孔14に貫通されて密着保持された伝熱パイプ3と、前記伝熱パイプ3内に挿入されたシーズヒータ4とを備え、前記伝熱パイプ3とシーズヒータ4との間には環状のスペーサを介して空気層となる間隙10を設けた。したがって、スペーサによって間隙10が確実に形成されて、その間隙10の空気層が熱緩衝作用を発揮し、加熱すべき流体などの負荷が変動しても、伝熱パイプ3およびプレートフィン1の急激なる温度変動を抑制できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばシーズヒータを熱源とする熱交換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の熱交換装置として、並設された多数枚のプレートフィンにシーズヒータを貫通させたものとか、ヒーズヒータのパイプと一体にフィンを形成したものがあった(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】実開平4−68928号公報
【特許文献2】特開平6−231873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の構成のうち、前者の熱交換装置では、プレートフィンに対するシーズヒータの貫通構成として、同シーズヒータのパイプを拡径することができないため、貫通部での密着性がどうしても悪く、シージヒータからプレートフィンへの熱伝導がよくなかった。
【0004】
また、後者のものでは、フィンがヒーズヒータのパイプと一体に形成してあるため、前記のような熱伝導特性面での問題はないが、フィンの面積が大きくとれず、熱効率が高くできなかった。
【0005】
加えて、両者共通の課題として、作動温度を高くできない点が挙げられる。すなわち、フィンによって加熱される空気などの負荷変動に対する耐久性が低いものであった。
【0006】
さらに述べれば、フィンは熱伝導性の良いアルミニウムなどからなり、例えば、負荷としての空気の流動量が極端に減少、若しくはゼロになると、フィンが異常に温度上昇し、時として、その溶融を生起してしまうものである。
【0007】
したがって、シーズヒータの温度としてはフィンが溶融する温度以下に抑制しておく必要があり、これより作動温度としてどうしても低いものとなってしまい、低出力のものに特定されるものであった。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解消したもので、耐熱性に優れ、高効率、高出力の熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の熱交換装置は、並設された多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入されたシーズヒータとを備え、前記伝熱パイプとシーズヒータとの間には環状のスペーサを介して空気層となる間隙を設けたものである。
【0010】
前記間隙の空気層は熱緩衝作用を発揮し、したがって、加熱すべき流体、すなわち負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を抑制できるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱交換装置によれば、スペーサを介して伝熱パイプとシーズヒータとの間には
確実に空気層となる間隙が設定される。そして、前記間隙の空気層が熱緩衝作用を発揮して加熱すべき負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を防止できる。
【0012】
したがって、熱伝導性に優れた材料を伝熱パイプおよびプレートフィンに使用でき、その結果として、装置の高出力化、高効率化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の熱交換装置は、並設された多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入されたシーズヒータとを備え、前記伝熱パイプとシーズヒータとの間には環状のスペーサを介して空気層となる間隙を設けたものである。
【0014】
したがって、スペーサを介して伝熱パイプとシーズヒータとの間には確実に空気層となる間隙が設定される。そして、前記間隙の空気層が熱緩衝作用を発揮して加熱すべき負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を防止できる。
【0015】
スペーサは伝熱パイプおよびシーズヒータの長手方向両端に位置させるのが好ましい。
【0016】
また、シーズヒータはパイプ内に電気ヒータを挿設するとともに、これらパイプ、電気ヒータ間に絶縁材を充填して構成され、さらに、前記電気ヒータの両端に接続された端子は封口材を貫通して両側外方に突出しており、電気ヒータが存在しないパイプの外周にスペーサを位置させた。
【0017】
この構成によれば、スペーサ過熱が抑制されることとなり、耐久性面で有利となる。
【0018】
前記スペーサの外端部に外拡がり状のテーパ部を形成しておけば、このテーパ部に伝熱パイプを当接させることで、この伝熱パイプの長手方向の位置決めを行うことができる。
【0019】
そして、これら熱交換装置を空気流動路に配置すれば、高出力、高効率の温風暖房機とすることができる。
【0020】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態が本発明を限定するものでない。
【0021】
(実施の形態1)
図において、多数枚のプレートフィン1を並設して一つのフィンブロック2を構成し、このフィンブロック2にそれぞれ伝熱パイプ3を介して複数のシーズヒータ4が挿通してある。
【0022】
前記シーズヒータ4は、鉄などからなるパイプ5内の中心線上に電気ヒータ6を挿設するとともに、これらパイプ5、電気ヒータ6間に酸化マグネシウムなどの絶縁材7を充填して構成されている。
【0023】
さらに、前記電気ヒータ6の両端に接続された端子8は封口材9を貫通してパイプ5の両側外方に突出している。
【0024】
そして、前記伝熱パイプ3とシーズヒータ4のパイプ5との間には空気層となる間隙10が設定してある。
【0025】
前記間隙10は、シーズヒータ4におけるパイプ5の端部に配置したスペーサ11の外周に伝熱パイプ3を結合せることで形成されるものであり、また、前記スペーサ11の外端部に外拡がりのテーパ部12を設けて伝熱パイプ3の端部への当りとすることによって、シーズヒータ4の長手方向の位置決めが図られている。
【0026】
前記伝熱パイプ3は熱良導材、例えば銅などでつくられており、熱膨張、腐食などを考慮してスペーサ11も同材質に設定されている。スペーサ11の位置は、その耐熱性などを配慮してシーズヒータ4の電気ヒータ6が存在しない端子8の挿通部外周に対応している。
【0027】
次に、プレートフィン1に対する伝熱パイプ3の貫通構成について述べる。
【0028】
前記プレートフィン1は熱良導性のアルミニウムなどが使用されており、伝熱パイプ3を貫通させるために、孔縁13を筒状とした貫通孔14が形成してある。
【0029】
前記伝熱パイプ3を貫通孔14に通した後、その伝熱パイプ3を拡径することで筒状の孔縁13に密着され、良好な熱伝達経路を形成するようにしてある。
【0030】
以上の構成において、通電により、先ず、シーズヒータ4の電気ヒータ6が発熱し、その熱は絶縁材7を介してパイプ5に伝わり、輻射エネルギーとして放射され、間隙10を通して伝熱パイプ3に至る。
【0031】
これによって、伝熱パイプ3は吸収した輻射エネルギーにて加熱され、次いで伝導によりプレートフィン1に伝達される。
【0032】
したがって、フィンブロック2が温風暖房機の通風路に臨ませて配置してあれば、この通風路を流れる空気がプレートフィン1の間の隙間を通過する際、対流などの作用で加熱され、温風化されるものである。
【0033】
ここで、前記シーズヒータ4を空気層となる間隙10をおいて伝熱パイプ3に内設した意義について説明する。
【0034】
例えば、温風暖房機において、その通風路に常に一定量の空気が流動することはない。つまり、シーズヒータ4にかかる負荷は刻々と変化するものである。すなわち、暖房の設定温度などに関連して負荷はリニアーに、或いは断続的ON−OFF的に変動し、それに伴って、シーズヒータ4の出力も制御する必要がある。
【0035】
しかしながら、空気量の変動とシーズヒータ4における電気ヒータ6の出力制御を完全に同期させることは理論的に困難で、特に、負荷が急激に小方向に変動したときにはシーズヒータ4の温度が異常値に近い値まで上昇してしまう。
【0036】
ここで、プレートフィン1は熱良導材であるアルミニウムなどが使用されているところから、その耐熱性を考慮すると、シーズヒータ4として高出力のものを使用できないことが理解できるであろう。
【0037】
しかるに、本実施の形態のように、シーズヒータ4の外側に間隙10をおいて伝熱パイプ3を設けておくと、その間隙10の空気層が熱緩衝作用を発揮し、シーズヒータ4の温度変化を吸収することとなる。
【0038】
その結果、伝熱パイプ3およびプレートフィン1にアルミニウムとか銅などの熱良導材
を使用しても、それらが異常高温に達することがなく、耐熱性の障害とならないものである。
【0039】
以上から、熱交換装置としての効率が向上し、加えて高出力化が図れるものであり、高い耐久性がえられることとなる。
【0040】
前記のように、熱交換装置としての高効率、高出力化を可能とするシーズヒータ4と伝熱パイプ3との間の間隙10を確保するスペーサ11は、前記シーズヒータ4のパイプ5の外周面に接するが、その位置は電気ヒータ6が存在しない部位に設定されているため、高温になることがなく、したがって、銅などを使用しても温度的には支障がないものである。
【0041】
また、そのスペーサ11にテーパ部12を形成しているので、一つのスペーサ11をシーズヒータ4の一端に取付けて伝熱パイプ3の中に通し、その伝熱パイプ3の端部にテーパ部12が当るまで移動させ、その後、もう一つのスペーサ11をシーズヒータ4の他端に嵌め、そのテーパ部12が伝熱パイプ3の他端に当るまで移動させることで、自ずとシーズヒータ4の長手方向の位置決めがなされるものである。
【0042】
プレートフィン1および伝熱パイプ3はそれらの放射率を小さく、すなわち、輻射熱の発生を可及的に抑制するのが望ましい。
【0043】
例えば、温風暖房機にあって、負荷である空気の加熱はプレートフィン1の熱に起因する対流、伝導が殆んどで、輻射熱は空気加熱に寄与しないものである。
【0044】
表1は金属材料別の放射率を示している。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から材料としてはアルミニウム、銅、銀などが適しているが、コスト面を考慮すれば、アルミニウム、銅の採用が適切であろう。
【0047】
加えて、同じ材料でも表面を研磨すればするほど放射率が低下するため、アルミニウム
、銅の表面を研磨する表面処理を施した方が有利である。
【0048】
表面処理で放射率が低いアルミニウムまたは銅を採用することにより、放射率が0.1程度となるので、シーズヒータ4が発生する熱エネルギーQの多くが対流伝熱エネルギーQcとなり、シーズヒータ4における電気ヒータ6の熱エネルギーを効率よく周囲の空気を暖めるために利用することができる。
【0049】
ここで熱エネルギーQを簡易的な理論式で表すと、輻射エネルギーQr=A×ε×(Tw4−To4)と対流伝熱エネルギーQc=A×h×(Tw−To)との和Q=Qr+Qcとなる。
【0050】
ここでAは熱源の表面積、εは放射率、Twは電気ヒータ表面温度、Toは周囲温度、hは空気の熱伝達率である。
【0051】
この式からわかるように放射率εが大きくなると温度の4乗で計算される輻射エネルギーの影響が大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明にかかる熱交換装置は、スペーサを介して伝熱パイプとシーズヒータとの間には確実に空気層となる間隙が設定され、前記間隙の空気層が熱緩衝作用を発揮して加熱すべき負荷が変動しても、伝熱パイプおよびプレートフィンの急激なる温度変動を防止できるもので、装置の高出力化、高効率化が可能となり、温風を熱源とする暖房機や乾燥機などへの利用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1における熱交換装置の要部拡大断面図
【図2】同熱交換装置の全体斜視図
【図3】同熱交換装置の一部断面図
【符号の説明】
【0054】
1 プレートフィン
3 伝熱パイプ
4 シーズヒータ
5 パイプ
6 電気ヒータ
7 絶縁材
8 端子
9 封口材
10 間隙
11 スペーサ
12 テーパ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
並設された多数枚のプレートフィンと、前記プレートフィンに設けられた貫通孔に貫通されて密着保持された伝熱パイプと、前記伝熱パイプ内に挿入されたシーズヒータとを備え、前記伝熱パイプとシーズヒータとの間には環状のスペーサを介して空気層となる間隙を設けた熱交換装置。
【請求項2】
スペーサは伝熱パイプおよびシーズヒータの長手方向両端に位置させた請求項1記載の熱交換装置。
【請求項3】
シーズヒータはパイプ内に電気ヒータを挿設するとともに、これらパイプ、電気ヒータ間に絶縁材を充填して構成され、さらに、前記電気ヒータの両端に接続された端子は封口材を貫通して両側外方に突出しており、電気ヒータが存在しないパイプの外周にスペーサを位置させた請求項1記載の熱交換装置。
【請求項4】
スペーサの外端部に外拡がり状のテーパ部を形成して、このテーパ部に伝熱パイプを当接させることで、この伝熱パイプの長手方向の位置決めを行うようにした請求項1記載の熱交換装置。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載の熱交換装置を空気流動路に配置した温風暖房機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−218137(P2009−218137A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62175(P2008−62175)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】