熱伝導性フィラー、熱伝導性樹脂複合材、及び熱伝導性フィラーの製造方法
【課題】 樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラーを提供すること。
【解決手段】 細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする熱伝導性フィラー。
【解決手段】 細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする熱伝導性フィラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性フィラー、それを用いた熱伝導性樹脂複合材、並びに熱伝導性フィラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の電気・電子・電装部品、自動車部品等の多種多様な用途に樹脂材料が用いられている。しかしながら、樹脂材料は熱伝導率が小さいため、樹脂材料を用いた部品が蓄熱し易いといった問題があり、熱伝導性及び放熱特性に優れた樹脂材料が求められている。
【0003】
このような樹脂材料の熱伝導性を向上させる技術として、例えば、特開平8−283456号公報(特許文献1)には、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭素等からなる高熱伝導性無機繊維と、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等からなる高熱伝導性無機粉末とを共に熱可塑性樹脂に充填せしめてなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のように無機繊維を含有する従来の樹脂複合材においては、混練工程及び成形工程におけるせん断力によって無機繊維が破砕されてしまい、かかる無機繊維による熱伝導性の向上に限界があるという問題があった。
【0004】
また、特表2002−505249号公報(特許文献2)には、窒化ホウ素、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、二硫化モリブデン、黒鉛等の高熱伝導性無機粒子を含有する水性サイジング組成物の乾燥残渣によりコーティングされた繊維ストランドを含む樹脂複合材が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載のようにサイジング組成物を用いて無機粒子を担持させた繊維ストランドを含む従来の樹脂複合材においては、無機粒子がサイジング成分により覆われており、また無機粒子の担持量を十分に向上させることが困難であり、やはり熱伝導性の向上に限界があるという問題があった。
【特許文献1】特開平8−283456号公報
【特許文献2】特表2002−505249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラー及びその製造方法、並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満たす基材の表面に特定の量の微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを用いることにより、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一の熱伝導性フィラーは、細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーは、粒子状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいて、前記微細酸化亜鉛が、溶液法により前記基材の表面に析出して形成されたものであることが好ましく、下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることがより好ましい。
【0010】
本発明の第一の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たす細長状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0011】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たす粒子状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0012】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法は、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめた後に、酸素含有雰囲気下において150〜1000℃で且つ基材の分解温度又は溶融温度以下の温度で熱処理する工程を更に含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることが好ましく、また、前記微細酸化亜鉛が下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることが好ましい。
【0014】
本発明の熱伝導性樹脂複合材は、マトリックスとなる樹脂と、前記樹脂中に分散している前記本発明の熱伝導性フィラーとを備えることを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明の熱伝導性フィラーを用いることによって樹脂複合材の熱伝導性が十分に向上するようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の熱伝導性フィラーにおいては、所定の熱伝導率を有し且つ所定の大きさの基材の表面に高熱伝導性の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合している。そして、本発明の熱伝導性フィラーにおいては、混練工程や成形工程において微細酸化亜鉛が基材から脱離したり粉砕されることなく、微細酸化亜鉛が基材に結合した状態でマトリックスとなる樹脂中に分散する。そのため、本発明の熱伝導性フィラーを用いて得られた樹脂複合材においては、微細酸化亜鉛と基材とによる熱伝導が効率良く相乗的に達成されるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラー及びその製造方法、並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーについて説明する。本発明の第一の熱伝導性フィラーは、細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーは、粒子状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいて用いる基材は、25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上であることが必要であり、3W/mk以上であることがより好ましく、30W/mk以上であることが特に好ましい。前記熱伝導率が0.5W/mk未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない。
【0021】
このような基材の組成は特に制限されず、炭素系材料(例えば、炭素、黒鉛)、ガラス質材料(例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、リン酸塩ガラス、鉛ガラス)、金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン)、鉱物系材料(例えば、タルク、モンモリロナイト、セピオライト、ハイドロタルサイト、マイカ、ヘクトライト)、金属窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、金属炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられる。
【0022】
本発明にかかる基材は、基材と後述する微細酸化亜鉛との結合性をより向上させるという観点から、表面が活性化されていることが好ましく、このような活性化処理としては、酸化処理、親水化処理、極性基付加処理、官能基付加処理が好適に採用される。
【0023】
また、前記基材が炭素系材料、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物の場合は、基材と後述する微細酸化亜鉛との結合性を更に向上させるという観点から、表面がガラス質材料、シロキサン系化合物、シリカ系化合物等の被覆材で被覆処理されていることが好ましい。このような被覆材の量は、被覆処理された基材において0.01容量%〜10容量%であることが好ましく、0.1容量%〜5容量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明にかかる基材の形状は、(i)繊維状、針状、棒状、筒状等の細長状であっても、(ii)球状、破砕状、板状等の粒子状であってもよいが、それぞれの形状に応じて以下の条件を満たすことが必要である。
【0025】
すなわち、本発明にかかる基材が(i)細長状基材の場合(第一の熱伝導性フィラーの基材)、前記基材の平均直径は0.1μm〜5μmであることが必要であり、0.5μm〜2μmであることがより好ましい。
【0026】
この平均直径が0.1μm未満では微細酸化亜鉛の結合が困難となり、他方、5μmを超えると熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない。
【0027】
また、前記基材が(i)細長状基材の場合、前記基材の平均長さは0.5μm〜500μmであることが必要であり、1μm〜250μmであることがより好ましい。この平均長さが0.5μm未満では微細酸化亜鉛の結合が困難となり、他方、500μmを超えると熱伝導性フィラーの製造時にフィラーが凝集して結合が不均一となる場合や、熱伝導性樹脂複合材中への熱伝導性フィラーの分散が不均一となる場合がある。
【0028】
さらに、前記基材が(i)細長状基材の場合、前記基材の平均アスペクト比は5〜500であることが必要であり、20〜350であることがより好ましい。この平均アスペクト比が5未満の場合は後述する(ii)粒子状基材の条件が適用されることとなり、他方、500を超えると熱伝導性フィラーの製造時にフィラーが凝集して結合が不均一となる場合や、熱伝導性樹脂複合材中への熱伝導性フィラーの分散が不均一となる場合がある。
【0029】
一方、本発明にかかる基材が(ii)粒子状基材の場合(第二の熱伝導性フィラーの基材)、前記基材の平均直径は0.5μm〜20μmであることが必要であり、1μm〜5μmであることがより好ましい。この平均直径が0.5μm未満では微細酸化亜鉛の結合が困難となり、他方、20μmを超えると微細酸化亜鉛と基材とを結合させた効果が小さくなって熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない。
【0030】
本発明にかかる基材の強度は特に制限されないが、樹脂複合材を得る際における溶融混練及び成形時のせん断力に耐え得る強度であることが好ましく、具体的には引張強さが0.1GPa以上のものであることが好ましく、0.2GPa以上のものであることがより好ましい。
【0031】
また、本発明にかかる基材の溶融あるいは分解温度も特に制限されないが、熱伝導性フィラーを得る際に熱処理により不純物の除去と酸化亜鉛を安定化させることが容易となるという観点から、基材の溶融あるいは分解温度が200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。
【0032】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーは、前述の基材に加えて、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛を備えている。なお、本明細書において「直接結合」とは、微細酸化亜鉛がサイジング組成物等の接着成分を介して基材の表面に担持されているのではなく、基材の表面に酸化亜鉛が析出及び成長して形成された微細酸化亜鉛が基材表面に直接的に結合していることをいう。このように直接結合している微細酸化亜鉛は基材表面に強固に結合しており、具体的には、10分間の超音波洗浄(出力:300W、共振周波数:36kHz)によって基材から脱離する微細酸化亜鉛の割合が50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
このような微細酸化亜鉛としては、溶液法により前記基材の表面に析出して形成されたものであることが好ましく、下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm(特に好ましくは0.2μm〜1μm)
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm(特に好ましくは0.2μm〜3μm)
(c3)平均アスペクト比が1〜50(特に好ましくは5〜20)
を満たすものであることがより好ましい。
【0034】
前記微細酸化亜鉛の平均直径が上記下限未満では基材表面に酸化亜鉛を直接結合させた効果が少なくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると基材表面への酸化亜鉛の析出が困難となる傾向にある。また、前記微細酸化亜鉛の平均長さが上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度を増加させたり、混練時に破断する微細酸化亜鉛の量が増加する傾向にある。さらに、前記微細酸化亜鉛の平均アスペクト比が上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度を増加させたり、混練時に破断する微細酸化亜鉛の量が増加する傾向にある。
【0035】
本発明にかかる微細酸化亜鉛の形状は、上記条件を満たすものであればよく特に限定されないが、繊維状、針状、棒状、筒状、角柱状、粒子状等の形状のものが好ましい。また、本発明にかかる微細酸化亜鉛の平均直径が、用いた基材の平均直径の1/1000〜3/5であることが好ましく、1/200〜1/2であることがより好ましい。さらに、本発明にかかる微細酸化亜鉛はその直径の均一性が高いことが好ましく、具体的には全微細酸化亜鉛のうちの50質量%以上が微細酸化亜鉛の平均直径の1/4倍〜4倍の範囲内の直径を有していることが好ましい。
【0036】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーは、前述のとおり前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛を備えているが、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることが必要であり、40容量%〜85容量%であることがより好ましく、50容量%〜85容量%であることが特に好ましい。前記酸化亜鉛の比率が30容量%未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができなくなり、他方、90容量%を超えると樹脂との混練工程や成形工程において微細酸化亜鉛が基材から脱離したり粉砕され易くなり、得られる樹脂複合材の熱伝導性が不十分となる。
【0037】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいては、用いる基材1g当たりに対して、担持された微細酸化亜鉛による比表面積の増加量が1m2〜500m2であることが好ましく、3m2〜200m2であることがより好ましく、7m2〜100m2であることが特に好ましい。前記比表面積の増加量が上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができなくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると樹脂との複合化における溶融粘度が増加する傾向にある。
【0038】
また、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいて、基材に結合している微細酸化亜鉛の方向は特に限定されず、基材の表面に対して垂直方向であっても、平行方向であっても、ランダムであってもよいが、熱伝導性フィラーの熱伝導がより向上するという観点から、全微細酸化亜鉛のうちの20質量%〜95質量%(より好ましくは50質量%〜80質量%)が基材の表面に対して垂直方向±45°の範囲内の方向に形成されていることが好ましい。
【0039】
次に、本発明の熱伝導性フィラーの製造方法について説明する。本発明の第一の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に前記(i)細長状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより前記本発明の第一の熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0040】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に前記(ii)粒子状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより前記本発明の第二の熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0041】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法において用いる亜鉛含有化合物は特に制限されず、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、中でも熱伝導率の向上に有効な大きさを有する微細酸化亜鉛が合成され易くなるという観点からは硝酸亜鉛が好ましく、粒子状の微細酸化亜鉛が合成され易くなるという観点からは塩化亜鉛が好ましく、筒状の微細酸化亜鉛が合成され易くなるという観点からは酢酸亜鉛が好ましい。
【0042】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法において用いる反応溶液は、分散媒を含有する塩基性の溶液であり、かかる反応溶液の主たる溶媒は水であることが好ましい。また、かかる反応溶液を塩基性に維持するためのpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン等が好適に採用される。さらに、かかる反応溶液のpHは、反応開始時においてpH=7〜14の範囲(反応終了時においてpH=7〜9の範囲)にあることが好ましく、酸化亜鉛の析出量の向上及び析出時間の短縮や、錯形成を回避するといった観点から反応開始時においてpH=9〜10の範囲(反応終了時においてpH=7〜8の範囲)にあることがより好ましい。
【0043】
また、前記反応溶液に添加する分散媒としては、メタノール、エタノール等のアルコールが好ましい。このような分散媒の配合量は特に限定されないが、反応溶液中の水100容量部に対して分散媒の量が2〜30容量部であることが好ましい。なお、pH調整剤としてトリブチルアミン等の非水溶性の塩基を使用する場合は、分散媒の配合量を増やすことによって分散性を上げるという観点から、反応溶液中の水100容量部に対して分散媒の量が30〜60容量部であることが好ましい。
【0044】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、先ず、前記塩基性の反応溶液中に前記基材を分散させた状態とする。その際、反応溶液中の前記亜鉛含有化合物の配合量は特に限定されないが、均一な微細酸化亜鉛を析出せしめるという観点から0.2mol/L〜5mol/Lであることが好ましい。
【0045】
また、前記反応溶液中に分散させる前記基材の配合量も特に限定されないが、前記亜鉛含有化合物1モル当たりの前記基材の配合量が0.01cm3〜100cm3であることが好ましく、0.1cm3〜20cm3であることがより好ましい。さらに、前記亜鉛含有化合物1モル当たりの前記基材の単純外形面積が0.01m2/mol〜1000m2/molであることが好ましく、0.5m2/mol〜100m2/molであることがより好ましい。前記基材の配合量や単純外形面積が上記下限未満では合成される酸化亜鉛に対する基材量が少なくなり、熱伝導性フィラーを効率良く製造することができなくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができなくなる傾向にある。
【0046】
次に、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、前記基材を分散させた反応溶液を60℃〜200℃(より好ましくは120℃〜180℃)に維持する。それによって前記基材の表面に微細酸化亜鉛が析出し、成長することによって前記本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーが得られる。なお、反応温度が60℃未満では反応速度が低下して効率良く基材の表面に十分量の微細酸化亜鉛を析出せしめることが困難であり、他方、200℃を超えると反応速度の観点から基材に結合していない遊離酸化亜鉛が生成し易くなり、また微細酸化亜鉛の形状が不均一になり易くなる。また、反応時間は特に限定されないが、前記基材の表面に担持させる微細酸化亜鉛の大きさの制御と収率の向上という観点から2時間〜10時間が好ましく、3時間〜5時間がより好ましい。
【0047】
さらに、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出させ、必要に応じて洗浄及び乾燥せしめた後に、酸素含有雰囲気下(例えば、大気中)において150〜1000℃で且つ基材の分解温度又は溶融温度以下の温度で熱処理する工程を更に含むことが好ましい。このような熱処理を施すことによって、不純物がより確実に除去され、また酸化亜鉛がより安定化する傾向にある。なお、熱処理の温度が前記下限未満では不純物の除去や酸化亜鉛の安定化が十分に達成されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると必要以上のエネルギーを消費することになる。また、熱処理の時間は特に限定されないが、不純物の除去や酸化亜鉛の安定化をより確実に達成するという観点から0.5〜24時間が好ましい。
【0048】
次に、本発明の熱伝導性樹脂複合材について説明する。本発明の熱伝導性樹脂複合材は、マトリックスとなる樹脂と、前記樹脂中に分散している前記本発明の熱伝導性フィラーとを備えることを特徴とするものである。
【0049】
このようなマトリックスとなる樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、PPS樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、混練時及び成形時の溶融温度が前記基材の溶融・分解温度未満であることが好ましい。
【0050】
得られる熱伝導性樹脂複合材における前記本発明の熱伝導性フィラーの添加量は、特に限定されないが、0.1容量%〜60容量%であることが好ましく、1容量%〜50容量%であることがより好ましい。前記熱伝導性フィラーの添加量が上記下限未満では樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると樹脂複合材の流動性を低下させる傾向にある。
【0051】
なお、本発明の熱伝導性樹脂複合材においては、前記本発明の熱伝導性フィラーの一種を単独で用いてもよいが、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の熱伝導性樹脂複合材においては、前記本発明の熱伝導性フィラーと、それ以外の熱伝導性フィラーとを組み合わせて用いてもよく、その場合は、後者のフィラーの熱伝導率が20W/mk以上であることが好ましく、また前者のフィラーの割合が0.1容量%〜20容量%程度であることが好ましい。
【0052】
また、前記樹脂中に前記本発明の熱伝導性フィラーを分散させる方法は特に限定されず、樹脂中にフィラーを分散させる際に一般的に採用される公知の混合及び混練方法を適宜採用することができる。さらに、本発明の熱伝導性樹脂複合材の形状及び成形方法も特に限定されず、樹脂の成形方法として一般的に採用される公知の成形方法を適宜採用して、目的に応じた形状の熱伝導性樹脂複合材とすることができる。なお、本発明の熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度は特に限定されないが、成形温度におけるMFRで0.1〜200g/(10分、荷重2.16kg)程度であることが好ましい。
【0053】
このようにして得られた本発明の熱伝導性樹脂複合材においては、前記微細酸化亜鉛と前記基材とによる熱伝導が効率良く相乗的に達成されており、樹脂単独の熱伝導率に対して厚さ方向(流動方向に対して垂直方向)の熱伝導率が0.1W/mk以上向上していることが好ましく、0.3W/mk以上向上していることがより好ましい。また、樹脂単独の熱伝導率に対して厚さ方向(流動方向に対して垂直方向)の熱伝導率の上昇率が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<熱伝導性フィラーの合成及び評価>
各原料として以下のものを用いた。
[亜鉛含有化合物]
・硝酸亜鉛六水和物:和光純薬工業製
[基材]
・ガラス繊維A:旭ファイバーグラス製、商品名:マイクロガラスウールCMFL208、繊維径:0.8μm、組成:ホウ珪酸ガラス、25℃における熱伝導率:0.8W/mk
・ガラス繊維B:旭ファイバーグラス製、商品名:ミルドファイバーMF20JH1−20、繊維径:10μm、平均繊維長:243μm、組成:Eガラス(アルミノ珪酸ガラス)、25℃における熱伝導率:0.8W/mk
・球状シリカ:アドマテックス製、商品名:アドマファインSO−C6、平均粒径:2.4μm、組成:SiO2、25℃における熱伝導率:1.3W/mk
[pH調整剤]
・アンモニア水:28%アンモニア水、和光純薬工業製
[分散媒]
・エタノール:和光純薬工業製。
【0056】
(実施例1)
以下の手順で本発明の熱伝導性フィラーを合成した。すなわち、先ず、基材となるガラス繊維Aをハンマーミルとふるい(40メッシュ)を用いて平均繊維長が250μmとなるように裁断した。次に、攪拌機と冷却管を取り付けたガラス製の500mlセパラブルフラスコに、0.1モルの硝酸亜鉛六水和物(29.749g)をイオン交換水(300ml)に溶かして得た溶液と、基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)を加えた。次に、得られた反応溶液に分散剤としてエタノール(30ml)及びpH調整剤としてアンモニア水(50ml)を加え、180℃に加熱したオイルバスを用いて冷却管に水を流した還流状態で反応溶液を3時間維持しつつ攪拌を続けた。なお、反応溶液の反応開始時のpHは10、反応終了時のpHは8であった。
【0057】
そして、所定時間の反応が終了した後、攪拌と加熱を止めて静置状態で反応溶液を冷却し、80℃以下に温度が下がった後に吸引ろ過器を用いて反応溶液中の酸化亜鉛担持フィラーを分離し、水洗浄とエタノール洗浄を行った。次いで、得られた酸化亜鉛担持フィラーを凍結乾燥処理によって乾燥せしめた後、大気中において熱処理(200℃、12時間)を行い、熱伝導性フィラーを得た。収量は7.250gであった。
【0058】
次に、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の基材に対する割合を以下のようにして求めた。すなわち、先ず、得られた熱伝導性フィラー(0.5g)を6N−HClに浸漬し、溶解せずに残ったフィラー分をろ紙(5B)を用いてろ別し、水洗した後、ろ紙に包んだ状態でフィラー分をるつぼ中に入れて灼残分(基材)の量を求めた。
【0059】
その結果、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合は89.8質量%であり、ガラス繊維の比重を2.54、酸化亜鉛の比重を5.78として質量分率から体積分率を計算したところ、体積分率は79.1容量%であった。
【0060】
また、上記の結果から、仕込みに用いた硝酸亜鉛六水和物29.749g(0.1モル)に対して、収量7.250gの中で6.511gの酸化亜鉛(0.0800モル)が合成できたことになり、酸化亜鉛としての収率は80%であることが確認された。
【0061】
続いて、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける担持成分(析出成分)の分析を以下のようにして行った。すなわち、得られた熱伝導性フィラーにおいて基材に担持されている析出成分のX線回析を行ったところ、図1(a)に示されるXRDパターンが得られた。図1(b)に示されるXRDパターンは標準ZnO(JCPDS#36−1451、J.Zhang et al.,Chem.Commun.,2002,262−263参照)のものであり、両者のピークが一致していることから、得られた熱伝導性フィラーにおける担持成分(析出成分)が酸化亜鉛(ZnO)であることが確認された。
【0062】
次に、実施例1で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察した。得られた電子顕微鏡写真を図2及び図3に示す。比較のために示した図4及び図5に示す基材との比較からも明らかなとおり、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面にロッド状の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合していることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0063】
さらに、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける基材への微細酸化亜鉛の結合状態の強さを以下のようにして確認した。すなわち、得られた熱伝導性フィラー(1.0g)をイオン交換水中に添加し、超音波洗浄器(出力:300W、共振周波数:36kHz)を用いて10分間の超音波洗浄処理を行い、洗浄処理後の熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察した。得られた電子顕微鏡写真を図6及び図7に示す。図2及び図3に示す洗浄処理前の熱伝導性フィラーとの比較からも明らかなとおり、洗浄処理後の熱伝導性フィラーにおいても洗浄処理前と同様に基材の表面に微細酸化亜鉛が高密度で結合していることから、微細酸化亜鉛が強固に基材表面に結合していることが確認された。なお、前記超音波洗浄処理による微細酸化亜鉛の脱離率は約15質量%であった。
【0064】
(比較例1)
基材となるガラス繊維Aの裁断品の添加量を4.5gに変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。得られた熱伝導性フィラーについて実施例1と同様にして熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合を求めたところ48.5質量%であり、体積分率は29.4容量%であった。
【0065】
また、比較例1で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、図8に示した電子顕微鏡写真からも明らかなとおり、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面に結合している微細酸化亜鉛が少なく、微細酸化亜鉛の密度が低いことが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0066】
(比較例2)
基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)に代えてガラス繊維B(4.5g)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。得られた熱伝導性フィラーについて実施例1と同様にして熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合を求めたところ50.1質量%であり、体積分率は30.6容量%であった。
【0067】
また、比較例2で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、図9〜図11に示した電子顕微鏡写真からも明らかなとおり、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の割合が多く、表面に結合している微細酸化亜鉛が相対的に少ないことが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)に代えて球状シリカ(2.25g)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。得られた熱伝導性フィラーについて実施例1と同様にして熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合を求めたところ72.7質量%であり、体積分率は49.2容量%であった。
【0069】
また、実施例2で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面にロッド状の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合していることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0070】
(比較例3)
基材となるガラス繊維Aの裁断品を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして微細酸化亜鉛のみからなる熱伝導性フィラーを得た。比較例3で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、図12に示した電子顕微鏡写真からも明らかなとおり、得られた微細酸化亜鉛そのものは実施例1で得られた微細酸化亜鉛と同様にロッド状のものであることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<熱伝導性樹脂複合材の作製及び評価>
各原料として以下のものを用いた。
[熱伝導性フィラー]
・実施例1〜2及び比較例1〜3で用いた基材及び得られた熱伝導性フィラー
・球状アルミナ:アドマテックス製、商品名:アドマファインAO−800、平均粒径:6.1μm、組成:Al2O3、25℃における熱伝導率:30W/mk
[熱可塑性樹脂]
・6ナイロン樹脂:宇部興産製、商品名:1015B、融点:225℃。
【0073】
(実施例3〜5)
6ナイロン樹脂と実施例1で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドした状態で二軸押出機(テクノベル製、二軸押出機KZW15−60MG、スクリュー径15mm)に供給し、溶融・混練した。そして、混練された樹脂複合材を二軸押出機からストランド状に押出し、水槽で固化させた後にペレタイザーでカットして熱伝導性樹脂複合材のペレットを得た。なお、二軸押出機のシリンダ設定温度は260℃、スクリュー回転数は200rpm、供給量は3kg/hとした。
【0074】
次に、得られた熱伝導性樹脂複合材を用いて以下のようにして熱伝導率評価用の試験片を作製した。すなわち、真空乾燥処理(80℃、12時間)を行った熱伝導性樹脂複合材のペレットを用いて、プレス成形により試験片を作製した。なお、プレス設定温度は250℃、試験片形状は75mm(縦)×75mm(横)×2mm(厚さ)とした。
【0075】
そして、得られた試験片を用いて、定常法熱伝導率測定装置(カトーテック製、精密迅速熱物性測定装置サーモラボ2型)によって25℃(温度差10℃)における熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0076】
(比較例4)
熱伝導性フィラーを添加せず6ナイロン樹脂のみを用いたこと以外は実施例3と同様にして6ナイロン樹脂のみからなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0077】
(比較例5)
6ナイロン樹脂と基材であるガラス繊維Aと比較例3で得られた微細酸化亜鉛のみからなるフィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0078】
(比較例6)
6ナイロン樹脂と比較例1で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0079】
(比較例7)
6ナイロン樹脂と比較例2で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0080】
(実施例6)
6ナイロン樹脂と実施例2で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0081】
(比較例8)
6ナイロン樹脂と基材である球状シリカと比較例3で得られた微細酸化亜鉛のみからなるフィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
(実施例7)
6ナイロン樹脂と実施例1で得られた熱伝導性フィラーと実施例2で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0083】
(実施例8)
6ナイロン樹脂と実施例1で得られた熱伝導性フィラーと球状アルミナとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0084】
(比較例9)
6ナイロン樹脂と球状アルミナとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2に示した熱伝導率の測定結果から明らかな通り、本発明の熱伝導性フィラーを用いて得た実施例3〜6の樹脂複合材は、熱伝導性フィラーが分散されていない比較例4の樹脂に比べて熱伝導性が大きく向上していることが確認された。
【0087】
また、実施例3〜6の樹脂複合材は、基材とフィラーとを単にブレンドして用いた比較例5、8の樹脂複合材に比べても熱伝導性が大きく向上していることから、基材表面に微細酸化亜鉛が直接結合している本発明の熱伝導性フィラーを用いることによって樹脂複合材の熱伝導率を大幅に向上させることができることが確認された。
【0088】
さらに、基材表面に微細酸化亜鉛が結合していても本発明の範囲外である熱伝導性フィラーを用いた比較例6及び7の樹脂複合材は、それらより熱伝導性フィラーの量が少ない実施例1の樹脂複合材よりも熱伝導率が低いことから、本発明の熱伝導性フィラーを用いることによって樹脂複合材の熱伝導率を大幅に向上させることができることが確認された。
【0089】
また、複数種類の本発明の熱伝導性フィラーを組み合わせて用いた実施例7の樹脂複合材が優れた熱伝導性を示していることから、繊維状基材を用いた本発明の熱伝導性フィラーと球状基材を用いた本発明の熱伝導性フィラーとの併用効果が確認された。
【0090】
さらに、本発明の熱伝導性フィラーと市販フィラーとを組み合わせて用いた実施例8の樹脂複合材が、市販のフィラーのみを用いた比較例9の樹脂複合材より優れた熱伝導性を示していることから、本発明の熱伝導性フィラーと市販フィラーとの併用効果も確認された。
【0091】
<熱伝導性樹脂複合材における結合状態の評価>
実施例4で得られた樹脂複合材から作製した熱伝導率評価用試験片から1g分を切り出し、評価用試料とした。そして、評価用試料から燃焼処理(600℃、4時間)により有機成分を除去し、灼残分を走査型電子顕微鏡により観察することにより基材への微細酸化亜鉛の結合状態を調べた。その結果、図13及び図14に示す電子顕微鏡写真からも明らかなように、樹脂複合材中においても微細酸化亜鉛が基材表面に結合した状態で分散していることが確認された。
【0092】
また、実施例5で得られた樹脂複合材から作製した熱伝導率評価用試験片の端部を室温状態で破断し、破断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより基材への微細酸化亜鉛の結合状態を調べた。その結果、図15に示す電子顕微鏡写真からも明らかなように、樹脂複合材中においても微細酸化亜鉛が基材表面に結合した状態で分散していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラー及びその製造方法、並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材を提供することが可能となる。
【0094】
したがって、本発明の熱伝導性フィラー並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材は、各種の電気・電子・電装部品、自動車部品等の多種多様な用途に有用であり、特に自動車用の電気・電子・電装部品の材料や、自動車用のモーター、電池、ラジエーター等の部品の材料として非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】(a)は実施例1で得られた熱伝導性フィラーの析出成分のXRDパターン、(b)は標準ZnOのXRDパターンをそれぞれ示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1で用いた基材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で用いた基材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの超音波洗浄処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの超音波洗浄処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】比較例1で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例2で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例2で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例2で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例3で得られた微細酸化亜鉛のみからなる熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例4で得られた樹脂複合材を燃焼処理した灼残分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】実施例4で得られた樹脂複合材を燃焼処理した灼残分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】実施例5で得られた樹脂複合材を破断した断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性フィラー、それを用いた熱伝導性樹脂複合材、並びに熱伝導性フィラーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の電気・電子・電装部品、自動車部品等の多種多様な用途に樹脂材料が用いられている。しかしながら、樹脂材料は熱伝導率が小さいため、樹脂材料を用いた部品が蓄熱し易いといった問題があり、熱伝導性及び放熱特性に優れた樹脂材料が求められている。
【0003】
このような樹脂材料の熱伝導性を向上させる技術として、例えば、特開平8−283456号公報(特許文献1)には、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、炭素等からなる高熱伝導性無機繊維と、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等からなる高熱伝導性無機粉末とを共に熱可塑性樹脂に充填せしめてなる熱可塑性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1に記載のように無機繊維を含有する従来の樹脂複合材においては、混練工程及び成形工程におけるせん断力によって無機繊維が破砕されてしまい、かかる無機繊維による熱伝導性の向上に限界があるという問題があった。
【0004】
また、特表2002−505249号公報(特許文献2)には、窒化ホウ素、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、二硫化モリブデン、黒鉛等の高熱伝導性無機粒子を含有する水性サイジング組成物の乾燥残渣によりコーティングされた繊維ストランドを含む樹脂複合材が開示されている。しかしながら、特許文献2に記載のようにサイジング組成物を用いて無機粒子を担持させた繊維ストランドを含む従来の樹脂複合材においては、無機粒子がサイジング成分により覆われており、また無機粒子の担持量を十分に向上させることが困難であり、やはり熱伝導性の向上に限界があるという問題があった。
【特許文献1】特開平8−283456号公報
【特許文献2】特表2002−505249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラー及びその製造方法、並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の条件を満たす基材の表面に特定の量の微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを用いることにより、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第一の熱伝導性フィラーは、細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーは、粒子状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいて、前記微細酸化亜鉛が、溶液法により前記基材の表面に析出して形成されたものであることが好ましく、下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることがより好ましい。
【0010】
本発明の第一の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たす細長状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0011】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たす粒子状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0012】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法は、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめた後に、酸素含有雰囲気下において150〜1000℃で且つ基材の分解温度又は溶融温度以下の温度で熱処理する工程を更に含むことが好ましい。
【0013】
また、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることが好ましく、また、前記微細酸化亜鉛が下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることが好ましい。
【0014】
本発明の熱伝導性樹脂複合材は、マトリックスとなる樹脂と、前記樹脂中に分散している前記本発明の熱伝導性フィラーとを備えることを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明の熱伝導性フィラーを用いることによって樹脂複合材の熱伝導性が十分に向上するようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明の熱伝導性フィラーにおいては、所定の熱伝導率を有し且つ所定の大きさの基材の表面に高熱伝導性の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合している。そして、本発明の熱伝導性フィラーにおいては、混練工程や成形工程において微細酸化亜鉛が基材から脱離したり粉砕されることなく、微細酸化亜鉛が基材に結合した状態でマトリックスとなる樹脂中に分散する。そのため、本発明の熱伝導性フィラーを用いて得られた樹脂複合材においては、微細酸化亜鉛と基材とによる熱伝導が効率良く相乗的に達成されるようになると本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラー及びその製造方法、並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0018】
先ず、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーについて説明する。本発明の第一の熱伝導性フィラーは、細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーは、粒子状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とするものである。
【0020】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいて用いる基材は、25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上であることが必要であり、3W/mk以上であることがより好ましく、30W/mk以上であることが特に好ましい。前記熱伝導率が0.5W/mk未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない。
【0021】
このような基材の組成は特に制限されず、炭素系材料(例えば、炭素、黒鉛)、ガラス質材料(例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、珪酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、リン酸塩ガラス、鉛ガラス)、金属酸化物(例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン)、鉱物系材料(例えば、タルク、モンモリロナイト、セピオライト、ハイドロタルサイト、マイカ、ヘクトライト)、金属窒化物(例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム)、金属炭化物(例えば、炭化ケイ素)等が挙げられる。
【0022】
本発明にかかる基材は、基材と後述する微細酸化亜鉛との結合性をより向上させるという観点から、表面が活性化されていることが好ましく、このような活性化処理としては、酸化処理、親水化処理、極性基付加処理、官能基付加処理が好適に採用される。
【0023】
また、前記基材が炭素系材料、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物の場合は、基材と後述する微細酸化亜鉛との結合性を更に向上させるという観点から、表面がガラス質材料、シロキサン系化合物、シリカ系化合物等の被覆材で被覆処理されていることが好ましい。このような被覆材の量は、被覆処理された基材において0.01容量%〜10容量%であることが好ましく、0.1容量%〜5容量%であることがより好ましい。
【0024】
本発明にかかる基材の形状は、(i)繊維状、針状、棒状、筒状等の細長状であっても、(ii)球状、破砕状、板状等の粒子状であってもよいが、それぞれの形状に応じて以下の条件を満たすことが必要である。
【0025】
すなわち、本発明にかかる基材が(i)細長状基材の場合(第一の熱伝導性フィラーの基材)、前記基材の平均直径は0.1μm〜5μmであることが必要であり、0.5μm〜2μmであることがより好ましい。
【0026】
この平均直径が0.1μm未満では微細酸化亜鉛の結合が困難となり、他方、5μmを超えると熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない。
【0027】
また、前記基材が(i)細長状基材の場合、前記基材の平均長さは0.5μm〜500μmであることが必要であり、1μm〜250μmであることがより好ましい。この平均長さが0.5μm未満では微細酸化亜鉛の結合が困難となり、他方、500μmを超えると熱伝導性フィラーの製造時にフィラーが凝集して結合が不均一となる場合や、熱伝導性樹脂複合材中への熱伝導性フィラーの分散が不均一となる場合がある。
【0028】
さらに、前記基材が(i)細長状基材の場合、前記基材の平均アスペクト比は5〜500であることが必要であり、20〜350であることがより好ましい。この平均アスペクト比が5未満の場合は後述する(ii)粒子状基材の条件が適用されることとなり、他方、500を超えると熱伝導性フィラーの製造時にフィラーが凝集して結合が不均一となる場合や、熱伝導性樹脂複合材中への熱伝導性フィラーの分散が不均一となる場合がある。
【0029】
一方、本発明にかかる基材が(ii)粒子状基材の場合(第二の熱伝導性フィラーの基材)、前記基材の平均直径は0.5μm〜20μmであることが必要であり、1μm〜5μmであることがより好ましい。この平均直径が0.5μm未満では微細酸化亜鉛の結合が困難となり、他方、20μmを超えると微細酸化亜鉛と基材とを結合させた効果が小さくなって熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない。
【0030】
本発明にかかる基材の強度は特に制限されないが、樹脂複合材を得る際における溶融混練及び成形時のせん断力に耐え得る強度であることが好ましく、具体的には引張強さが0.1GPa以上のものであることが好ましく、0.2GPa以上のものであることがより好ましい。
【0031】
また、本発明にかかる基材の溶融あるいは分解温度も特に制限されないが、熱伝導性フィラーを得る際に熱処理により不純物の除去と酸化亜鉛を安定化させることが容易となるという観点から、基材の溶融あるいは分解温度が200℃以上であることが好ましく、250℃以上であることがより好ましい。
【0032】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーは、前述の基材に加えて、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛を備えている。なお、本明細書において「直接結合」とは、微細酸化亜鉛がサイジング組成物等の接着成分を介して基材の表面に担持されているのではなく、基材の表面に酸化亜鉛が析出及び成長して形成された微細酸化亜鉛が基材表面に直接的に結合していることをいう。このように直接結合している微細酸化亜鉛は基材表面に強固に結合しており、具体的には、10分間の超音波洗浄(出力:300W、共振周波数:36kHz)によって基材から脱離する微細酸化亜鉛の割合が50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0033】
このような微細酸化亜鉛としては、溶液法により前記基材の表面に析出して形成されたものであることが好ましく、下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm(特に好ましくは0.2μm〜1μm)
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm(特に好ましくは0.2μm〜3μm)
(c3)平均アスペクト比が1〜50(特に好ましくは5〜20)
を満たすものであることがより好ましい。
【0034】
前記微細酸化亜鉛の平均直径が上記下限未満では基材表面に酸化亜鉛を直接結合させた効果が少なくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると基材表面への酸化亜鉛の析出が困難となる傾向にある。また、前記微細酸化亜鉛の平均長さが上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度を増加させたり、混練時に破断する微細酸化亜鉛の量が増加する傾向にある。さらに、前記微細酸化亜鉛の平均アスペクト比が上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度を増加させたり、混練時に破断する微細酸化亜鉛の量が増加する傾向にある。
【0035】
本発明にかかる微細酸化亜鉛の形状は、上記条件を満たすものであればよく特に限定されないが、繊維状、針状、棒状、筒状、角柱状、粒子状等の形状のものが好ましい。また、本発明にかかる微細酸化亜鉛の平均直径が、用いた基材の平均直径の1/1000〜3/5であることが好ましく、1/200〜1/2であることがより好ましい。さらに、本発明にかかる微細酸化亜鉛はその直径の均一性が高いことが好ましく、具体的には全微細酸化亜鉛のうちの50質量%以上が微細酸化亜鉛の平均直径の1/4倍〜4倍の範囲内の直径を有していることが好ましい。
【0036】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーは、前述のとおり前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛を備えているが、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることが必要であり、40容量%〜85容量%であることがより好ましく、50容量%〜85容量%であることが特に好ましい。前記酸化亜鉛の比率が30容量%未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができなくなり、他方、90容量%を超えると樹脂との混練工程や成形工程において微細酸化亜鉛が基材から脱離したり粉砕され易くなり、得られる樹脂複合材の熱伝導性が不十分となる。
【0037】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいては、用いる基材1g当たりに対して、担持された微細酸化亜鉛による比表面積の増加量が1m2〜500m2であることが好ましく、3m2〜200m2であることがより好ましく、7m2〜100m2であることが特に好ましい。前記比表面積の増加量が上記下限未満では熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができなくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると樹脂との複合化における溶融粘度が増加する傾向にある。
【0038】
また、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーにおいて、基材に結合している微細酸化亜鉛の方向は特に限定されず、基材の表面に対して垂直方向であっても、平行方向であっても、ランダムであってもよいが、熱伝導性フィラーの熱伝導がより向上するという観点から、全微細酸化亜鉛のうちの20質量%〜95質量%(より好ましくは50質量%〜80質量%)が基材の表面に対して垂直方向±45°の範囲内の方向に形成されていることが好ましい。
【0039】
次に、本発明の熱伝導性フィラーの製造方法について説明する。本発明の第一の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に前記(i)細長状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより前記本発明の第一の熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0040】
また、本発明の第二の熱伝導性フィラーの製造方法は、亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に前記(ii)粒子状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより前記本発明の第二の熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする方法である。
【0041】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法において用いる亜鉛含有化合物は特に制限されず、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、水酸化亜鉛、酸化亜鉛等が挙げられ、中でも熱伝導率の向上に有効な大きさを有する微細酸化亜鉛が合成され易くなるという観点からは硝酸亜鉛が好ましく、粒子状の微細酸化亜鉛が合成され易くなるという観点からは塩化亜鉛が好ましく、筒状の微細酸化亜鉛が合成され易くなるという観点からは酢酸亜鉛が好ましい。
【0042】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法において用いる反応溶液は、分散媒を含有する塩基性の溶液であり、かかる反応溶液の主たる溶媒は水であることが好ましい。また、かかる反応溶液を塩基性に維持するためのpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアミン等が好適に採用される。さらに、かかる反応溶液のpHは、反応開始時においてpH=7〜14の範囲(反応終了時においてpH=7〜9の範囲)にあることが好ましく、酸化亜鉛の析出量の向上及び析出時間の短縮や、錯形成を回避するといった観点から反応開始時においてpH=9〜10の範囲(反応終了時においてpH=7〜8の範囲)にあることがより好ましい。
【0043】
また、前記反応溶液に添加する分散媒としては、メタノール、エタノール等のアルコールが好ましい。このような分散媒の配合量は特に限定されないが、反応溶液中の水100容量部に対して分散媒の量が2〜30容量部であることが好ましい。なお、pH調整剤としてトリブチルアミン等の非水溶性の塩基を使用する場合は、分散媒の配合量を増やすことによって分散性を上げるという観点から、反応溶液中の水100容量部に対して分散媒の量が30〜60容量部であることが好ましい。
【0044】
本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、先ず、前記塩基性の反応溶液中に前記基材を分散させた状態とする。その際、反応溶液中の前記亜鉛含有化合物の配合量は特に限定されないが、均一な微細酸化亜鉛を析出せしめるという観点から0.2mol/L〜5mol/Lであることが好ましい。
【0045】
また、前記反応溶液中に分散させる前記基材の配合量も特に限定されないが、前記亜鉛含有化合物1モル当たりの前記基材の配合量が0.01cm3〜100cm3であることが好ましく、0.1cm3〜20cm3であることがより好ましい。さらに、前記亜鉛含有化合物1モル当たりの前記基材の単純外形面積が0.01m2/mol〜1000m2/molであることが好ましく、0.5m2/mol〜100m2/molであることがより好ましい。前記基材の配合量や単純外形面積が上記下限未満では合成される酸化亜鉛に対する基材量が少なくなり、熱伝導性フィラーを効率良く製造することができなくなる傾向にあり、他方、上記上限を超えると熱伝導性フィラーの熱伝導が不十分となり、得られる樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができなくなる傾向にある。
【0046】
次に、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、前記基材を分散させた反応溶液を60℃〜200℃(より好ましくは120℃〜180℃)に維持する。それによって前記基材の表面に微細酸化亜鉛が析出し、成長することによって前記本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーが得られる。なお、反応温度が60℃未満では反応速度が低下して効率良く基材の表面に十分量の微細酸化亜鉛を析出せしめることが困難であり、他方、200℃を超えると反応速度の観点から基材に結合していない遊離酸化亜鉛が生成し易くなり、また微細酸化亜鉛の形状が不均一になり易くなる。また、反応時間は特に限定されないが、前記基材の表面に担持させる微細酸化亜鉛の大きさの制御と収率の向上という観点から2時間〜10時間が好ましく、3時間〜5時間がより好ましい。
【0047】
さらに、本発明の第一及び第二の熱伝導性フィラーの製造方法においては、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出させ、必要に応じて洗浄及び乾燥せしめた後に、酸素含有雰囲気下(例えば、大気中)において150〜1000℃で且つ基材の分解温度又は溶融温度以下の温度で熱処理する工程を更に含むことが好ましい。このような熱処理を施すことによって、不純物がより確実に除去され、また酸化亜鉛がより安定化する傾向にある。なお、熱処理の温度が前記下限未満では不純物の除去や酸化亜鉛の安定化が十分に達成されない傾向にあり、他方、前記上限を超えると必要以上のエネルギーを消費することになる。また、熱処理の時間は特に限定されないが、不純物の除去や酸化亜鉛の安定化をより確実に達成するという観点から0.5〜24時間が好ましい。
【0048】
次に、本発明の熱伝導性樹脂複合材について説明する。本発明の熱伝導性樹脂複合材は、マトリックスとなる樹脂と、前記樹脂中に分散している前記本発明の熱伝導性フィラーとを備えることを特徴とするものである。
【0049】
このようなマトリックスとなる樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、イミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂や、アミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、PPS樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、混練時及び成形時の溶融温度が前記基材の溶融・分解温度未満であることが好ましい。
【0050】
得られる熱伝導性樹脂複合材における前記本発明の熱伝導性フィラーの添加量は、特に限定されないが、0.1容量%〜60容量%であることが好ましく、1容量%〜50容量%であることがより好ましい。前記熱伝導性フィラーの添加量が上記下限未満では樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることができない傾向にあり、他方、上記上限を超えると樹脂複合材の流動性を低下させる傾向にある。
【0051】
なお、本発明の熱伝導性樹脂複合材においては、前記本発明の熱伝導性フィラーの一種を単独で用いてもよいが、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本発明の熱伝導性樹脂複合材においては、前記本発明の熱伝導性フィラーと、それ以外の熱伝導性フィラーとを組み合わせて用いてもよく、その場合は、後者のフィラーの熱伝導率が20W/mk以上であることが好ましく、また前者のフィラーの割合が0.1容量%〜20容量%程度であることが好ましい。
【0052】
また、前記樹脂中に前記本発明の熱伝導性フィラーを分散させる方法は特に限定されず、樹脂中にフィラーを分散させる際に一般的に採用される公知の混合及び混練方法を適宜採用することができる。さらに、本発明の熱伝導性樹脂複合材の形状及び成形方法も特に限定されず、樹脂の成形方法として一般的に採用される公知の成形方法を適宜採用して、目的に応じた形状の熱伝導性樹脂複合材とすることができる。なお、本発明の熱伝導性樹脂複合材の溶融粘度は特に限定されないが、成形温度におけるMFRで0.1〜200g/(10分、荷重2.16kg)程度であることが好ましい。
【0053】
このようにして得られた本発明の熱伝導性樹脂複合材においては、前記微細酸化亜鉛と前記基材とによる熱伝導が効率良く相乗的に達成されており、樹脂単独の熱伝導率に対して厚さ方向(流動方向に対して垂直方向)の熱伝導率が0.1W/mk以上向上していることが好ましく、0.3W/mk以上向上していることがより好ましい。また、樹脂単独の熱伝導率に対して厚さ方向(流動方向に対して垂直方向)の熱伝導率の上昇率が5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0055】
<熱伝導性フィラーの合成及び評価>
各原料として以下のものを用いた。
[亜鉛含有化合物]
・硝酸亜鉛六水和物:和光純薬工業製
[基材]
・ガラス繊維A:旭ファイバーグラス製、商品名:マイクロガラスウールCMFL208、繊維径:0.8μm、組成:ホウ珪酸ガラス、25℃における熱伝導率:0.8W/mk
・ガラス繊維B:旭ファイバーグラス製、商品名:ミルドファイバーMF20JH1−20、繊維径:10μm、平均繊維長:243μm、組成:Eガラス(アルミノ珪酸ガラス)、25℃における熱伝導率:0.8W/mk
・球状シリカ:アドマテックス製、商品名:アドマファインSO−C6、平均粒径:2.4μm、組成:SiO2、25℃における熱伝導率:1.3W/mk
[pH調整剤]
・アンモニア水:28%アンモニア水、和光純薬工業製
[分散媒]
・エタノール:和光純薬工業製。
【0056】
(実施例1)
以下の手順で本発明の熱伝導性フィラーを合成した。すなわち、先ず、基材となるガラス繊維Aをハンマーミルとふるい(40メッシュ)を用いて平均繊維長が250μmとなるように裁断した。次に、攪拌機と冷却管を取り付けたガラス製の500mlセパラブルフラスコに、0.1モルの硝酸亜鉛六水和物(29.749g)をイオン交換水(300ml)に溶かして得た溶液と、基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)を加えた。次に、得られた反応溶液に分散剤としてエタノール(30ml)及びpH調整剤としてアンモニア水(50ml)を加え、180℃に加熱したオイルバスを用いて冷却管に水を流した還流状態で反応溶液を3時間維持しつつ攪拌を続けた。なお、反応溶液の反応開始時のpHは10、反応終了時のpHは8であった。
【0057】
そして、所定時間の反応が終了した後、攪拌と加熱を止めて静置状態で反応溶液を冷却し、80℃以下に温度が下がった後に吸引ろ過器を用いて反応溶液中の酸化亜鉛担持フィラーを分離し、水洗浄とエタノール洗浄を行った。次いで、得られた酸化亜鉛担持フィラーを凍結乾燥処理によって乾燥せしめた後、大気中において熱処理(200℃、12時間)を行い、熱伝導性フィラーを得た。収量は7.250gであった。
【0058】
次に、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の基材に対する割合を以下のようにして求めた。すなわち、先ず、得られた熱伝導性フィラー(0.5g)を6N−HClに浸漬し、溶解せずに残ったフィラー分をろ紙(5B)を用いてろ別し、水洗した後、ろ紙に包んだ状態でフィラー分をるつぼ中に入れて灼残分(基材)の量を求めた。
【0059】
その結果、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合は89.8質量%であり、ガラス繊維の比重を2.54、酸化亜鉛の比重を5.78として質量分率から体積分率を計算したところ、体積分率は79.1容量%であった。
【0060】
また、上記の結果から、仕込みに用いた硝酸亜鉛六水和物29.749g(0.1モル)に対して、収量7.250gの中で6.511gの酸化亜鉛(0.0800モル)が合成できたことになり、酸化亜鉛としての収率は80%であることが確認された。
【0061】
続いて、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける担持成分(析出成分)の分析を以下のようにして行った。すなわち、得られた熱伝導性フィラーにおいて基材に担持されている析出成分のX線回析を行ったところ、図1(a)に示されるXRDパターンが得られた。図1(b)に示されるXRDパターンは標準ZnO(JCPDS#36−1451、J.Zhang et al.,Chem.Commun.,2002,262−263参照)のものであり、両者のピークが一致していることから、得られた熱伝導性フィラーにおける担持成分(析出成分)が酸化亜鉛(ZnO)であることが確認された。
【0062】
次に、実施例1で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察した。得られた電子顕微鏡写真を図2及び図3に示す。比較のために示した図4及び図5に示す基材との比較からも明らかなとおり、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面にロッド状の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合していることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0063】
さらに、実施例1で得られた熱伝導性フィラーにおける基材への微細酸化亜鉛の結合状態の強さを以下のようにして確認した。すなわち、得られた熱伝導性フィラー(1.0g)をイオン交換水中に添加し、超音波洗浄器(出力:300W、共振周波数:36kHz)を用いて10分間の超音波洗浄処理を行い、洗浄処理後の熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察した。得られた電子顕微鏡写真を図6及び図7に示す。図2及び図3に示す洗浄処理前の熱伝導性フィラーとの比較からも明らかなとおり、洗浄処理後の熱伝導性フィラーにおいても洗浄処理前と同様に基材の表面に微細酸化亜鉛が高密度で結合していることから、微細酸化亜鉛が強固に基材表面に結合していることが確認された。なお、前記超音波洗浄処理による微細酸化亜鉛の脱離率は約15質量%であった。
【0064】
(比較例1)
基材となるガラス繊維Aの裁断品の添加量を4.5gに変更した以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。得られた熱伝導性フィラーについて実施例1と同様にして熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合を求めたところ48.5質量%であり、体積分率は29.4容量%であった。
【0065】
また、比較例1で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、図8に示した電子顕微鏡写真からも明らかなとおり、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面に結合している微細酸化亜鉛が少なく、微細酸化亜鉛の密度が低いことが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0066】
(比較例2)
基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)に代えてガラス繊維B(4.5g)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。得られた熱伝導性フィラーについて実施例1と同様にして熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合を求めたところ50.1質量%であり、体積分率は30.6容量%であった。
【0067】
また、比較例2で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、図9〜図11に示した電子顕微鏡写真からも明らかなとおり、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の割合が多く、表面に結合している微細酸化亜鉛が相対的に少ないことが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0068】
(実施例2)
基材となるガラス繊維Aの裁断品(0.747g)に代えて球状シリカ(2.25g)を用いた以外は実施例1と同様にして熱伝導性フィラーを得た。得られた熱伝導性フィラーについて実施例1と同様にして熱伝導性フィラーにおける酸化亜鉛の割合を求めたところ72.7質量%であり、体積分率は49.2容量%であった。
【0069】
また、実施例2で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、得られた熱伝導性フィラーにおいては基材の表面にロッド状の微細酸化亜鉛が高密度で直接結合していることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0070】
(比較例3)
基材となるガラス繊維Aの裁断品を添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして微細酸化亜鉛のみからなる熱伝導性フィラーを得た。比較例3で得られた熱伝導性フィラーを走査型電子顕微鏡にて観察したところ、図12に示した電子顕微鏡写真からも明らかなとおり、得られた微細酸化亜鉛そのものは実施例1で得られた微細酸化亜鉛と同様にロッド状のものであることが確認された。また、得られた電子顕微鏡写真に基づいて微細酸化亜鉛の平均直径、平均長さを求め、得られた結果を表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
<熱伝導性樹脂複合材の作製及び評価>
各原料として以下のものを用いた。
[熱伝導性フィラー]
・実施例1〜2及び比較例1〜3で用いた基材及び得られた熱伝導性フィラー
・球状アルミナ:アドマテックス製、商品名:アドマファインAO−800、平均粒径:6.1μm、組成:Al2O3、25℃における熱伝導率:30W/mk
[熱可塑性樹脂]
・6ナイロン樹脂:宇部興産製、商品名:1015B、融点:225℃。
【0073】
(実施例3〜5)
6ナイロン樹脂と実施例1で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドした状態で二軸押出機(テクノベル製、二軸押出機KZW15−60MG、スクリュー径15mm)に供給し、溶融・混練した。そして、混練された樹脂複合材を二軸押出機からストランド状に押出し、水槽で固化させた後にペレタイザーでカットして熱伝導性樹脂複合材のペレットを得た。なお、二軸押出機のシリンダ設定温度は260℃、スクリュー回転数は200rpm、供給量は3kg/hとした。
【0074】
次に、得られた熱伝導性樹脂複合材を用いて以下のようにして熱伝導率評価用の試験片を作製した。すなわち、真空乾燥処理(80℃、12時間)を行った熱伝導性樹脂複合材のペレットを用いて、プレス成形により試験片を作製した。なお、プレス設定温度は250℃、試験片形状は75mm(縦)×75mm(横)×2mm(厚さ)とした。
【0075】
そして、得られた試験片を用いて、定常法熱伝導率測定装置(カトーテック製、精密迅速熱物性測定装置サーモラボ2型)によって25℃(温度差10℃)における熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0076】
(比較例4)
熱伝導性フィラーを添加せず6ナイロン樹脂のみを用いたこと以外は実施例3と同様にして6ナイロン樹脂のみからなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0077】
(比較例5)
6ナイロン樹脂と基材であるガラス繊維Aと比較例3で得られた微細酸化亜鉛のみからなるフィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0078】
(比較例6)
6ナイロン樹脂と比較例1で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0079】
(比較例7)
6ナイロン樹脂と比較例2で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0080】
(実施例6)
6ナイロン樹脂と実施例2で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0081】
(比較例8)
6ナイロン樹脂と基材である球状シリカと比較例3で得られた微細酸化亜鉛のみからなるフィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0082】
(実施例7)
6ナイロン樹脂と実施例1で得られた熱伝導性フィラーと実施例2で得られた熱伝導性フィラーとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0083】
(実施例8)
6ナイロン樹脂と実施例1で得られた熱伝導性フィラーと球状アルミナとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0084】
(比較例9)
6ナイロン樹脂と球状アルミナとを表2に示す配合割合となるようにドライブレンドしたこと以外は実施例3と同様にして熱伝導性樹脂複合材からなる試験片を作製し、熱伝導率を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2に示した熱伝導率の測定結果から明らかな通り、本発明の熱伝導性フィラーを用いて得た実施例3〜6の樹脂複合材は、熱伝導性フィラーが分散されていない比較例4の樹脂に比べて熱伝導性が大きく向上していることが確認された。
【0087】
また、実施例3〜6の樹脂複合材は、基材とフィラーとを単にブレンドして用いた比較例5、8の樹脂複合材に比べても熱伝導性が大きく向上していることから、基材表面に微細酸化亜鉛が直接結合している本発明の熱伝導性フィラーを用いることによって樹脂複合材の熱伝導率を大幅に向上させることができることが確認された。
【0088】
さらに、基材表面に微細酸化亜鉛が結合していても本発明の範囲外である熱伝導性フィラーを用いた比較例6及び7の樹脂複合材は、それらより熱伝導性フィラーの量が少ない実施例1の樹脂複合材よりも熱伝導率が低いことから、本発明の熱伝導性フィラーを用いることによって樹脂複合材の熱伝導率を大幅に向上させることができることが確認された。
【0089】
また、複数種類の本発明の熱伝導性フィラーを組み合わせて用いた実施例7の樹脂複合材が優れた熱伝導性を示していることから、繊維状基材を用いた本発明の熱伝導性フィラーと球状基材を用いた本発明の熱伝導性フィラーとの併用効果が確認された。
【0090】
さらに、本発明の熱伝導性フィラーと市販フィラーとを組み合わせて用いた実施例8の樹脂複合材が、市販のフィラーのみを用いた比較例9の樹脂複合材より優れた熱伝導性を示していることから、本発明の熱伝導性フィラーと市販フィラーとの併用効果も確認された。
【0091】
<熱伝導性樹脂複合材における結合状態の評価>
実施例4で得られた樹脂複合材から作製した熱伝導率評価用試験片から1g分を切り出し、評価用試料とした。そして、評価用試料から燃焼処理(600℃、4時間)により有機成分を除去し、灼残分を走査型電子顕微鏡により観察することにより基材への微細酸化亜鉛の結合状態を調べた。その結果、図13及び図14に示す電子顕微鏡写真からも明らかなように、樹脂複合材中においても微細酸化亜鉛が基材表面に結合した状態で分散していることが確認された。
【0092】
また、実施例5で得られた樹脂複合材から作製した熱伝導率評価用試験片の端部を室温状態で破断し、破断面を走査型電子顕微鏡により観察することにより基材への微細酸化亜鉛の結合状態を調べた。その結果、図15に示す電子顕微鏡写真からも明らかなように、樹脂複合材中においても微細酸化亜鉛が基材表面に結合した状態で分散していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、樹脂複合材の熱伝導性を十分に向上させることが可能な熱伝導性フィラー及びその製造方法、並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材を提供することが可能となる。
【0094】
したがって、本発明の熱伝導性フィラー並びにそれを用いた高熱伝導性の樹脂複合材は、各種の電気・電子・電装部品、自動車部品等の多種多様な用途に有用であり、特に自動車用の電気・電子・電装部品の材料や、自動車用のモーター、電池、ラジエーター等の部品の材料として非常に有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】(a)は実施例1で得られた熱伝導性フィラーの析出成分のXRDパターン、(b)は標準ZnOのXRDパターンをそれぞれ示すグラフである。
【図2】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例1で用いた基材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】実施例1で用いた基材の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの超音波洗浄処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1で得られた熱伝導性フィラーの超音波洗浄処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】比較例1で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】比較例2で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】比較例2で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】比較例2で得られた熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】比較例3で得られた微細酸化亜鉛のみからなる熱伝導性フィラーの走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】実施例4で得られた樹脂複合材を燃焼処理した灼残分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】実施例4で得られた樹脂複合材を燃焼処理した灼残分の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】実施例5で得られた樹脂複合材を破断した断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする熱伝導性フィラー。
【請求項2】
粒子状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする熱伝導性フィラー。
【請求項3】
前記微細酸化亜鉛が、溶液法により前記基材の表面に析出して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性フィラー。
【請求項4】
前記微細酸化亜鉛が下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー。
【請求項5】
マトリックスとなる樹脂と、前記樹脂中に分散している請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラーとを備えることを特徴とする熱伝導性樹脂複合材。
【請求項6】
亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たす細長状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項7】
亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たす粒子状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項8】
前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめた後に、酸素含有雰囲気下において150〜1000℃で且つ基材の分解温度又は溶融温度以下の温度で熱処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項9】
前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項10】
前記微細酸化亜鉛が下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることを特徴とする請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項1】
細長状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする熱伝導性フィラー。
【請求項2】
粒子状基材と、前記基材の表面に直接結合している微細酸化亜鉛とを備える熱伝導性フィラーであって、前記基材が下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たすものであり、且つ、前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする熱伝導性フィラー。
【請求項3】
前記微細酸化亜鉛が、溶液法により前記基材の表面に析出して形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱伝導性フィラー。
【請求項4】
前記微細酸化亜鉛が下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラー。
【請求項5】
マトリックスとなる樹脂と、前記樹脂中に分散している請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラーとを備えることを特徴とする熱伝導性樹脂複合材。
【請求項6】
亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(a1)、(a2)、(a3)及び(a4)の条件:
(a1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(a2)平均直径が0.1μm〜5μm
(a3)平均長さが0.5μm〜500μm
(a4)平均アスペクト比が5〜500
を満たす細長状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項7】
亜鉛含有化合物と分散媒とを含有する塩基性溶液中に、下記(b1)及び(b2)の条件:
(b1)25℃における熱伝導率が0.5W/mk以上
(b2)平均直径が0.5μm〜20μm
を満たす粒子状基材を分散させた状態で60〜200℃に維持し、前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめることにより、表面に微細酸化亜鉛が直接結合している熱伝導性フィラーを得ることを特徴とする熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項8】
前記基材の表面に微細酸化亜鉛を析出せしめた後に、酸素含有雰囲気下において150〜1000℃で且つ基材の分解温度又は溶融温度以下の温度で熱処理する工程を更に含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項9】
前記フィラーにおける前記酸化亜鉛の比率が30容量%〜90容量%であることを特徴とする請求項6〜8のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
【請求項10】
前記微細酸化亜鉛が下記(c1)、(c2)及び(c3)の条件:
(c1)平均直径が0.05μm〜5μm
(c2)平均長さが0.05μm〜5μm
(c3)平均アスペクト比が1〜50
を満たすものであることを特徴とする請求項6〜9のうちのいずれか一項に記載の熱伝導性フィラーの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−254637(P2007−254637A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−82567(P2006−82567)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】
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