説明

熱伝導性弾性シート及びその製造方法とこれを用いた電子機器

【課題】炭素繊維を使った、熱伝導率が高く、柔軟性があって発熱体や放熱体とよく密着し、経済的生産性に優れた熱伝導性弾性シートを提供する。
【解決手段】織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シート9と、前記織布シート9の空隙に充填された弾性体3と、を有することを特徴とする熱伝導性弾性シート6。また、織布を焼成した熱伝導性炭素繊維の織布シートが積層された積層織布シートを形成する工程と、前記積層織布シートの空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を充填する工程と、前記液状樹脂を硬化し積層織布熱伝導性弾性シートを形成する工程と、前記積層織布熱伝導性弾性シートを裁断する工程と、を備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多種多様に使用される熱伝導性シート及びその製造方法とこれを用いた電子機器に関し、具体的には、相対的に高温の物体(発熱体あるいは高温になっている部材等)と相対的に低温の物体(吸熱体あるいは常温にある部材等)との間に挟持されて熱を伝導する熱伝導性シート及びその製造方法とこれを用いた電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の回路基盤に実装される半導体素子や電子部品は一段と集積化が進み高発熱化の傾向にある。それらの発熱部品から発生される熱を放散させる目的で、回路基板にはヒートシンクや冷却ファンなどが装着されるが、放熱性を向上するためにそれらの冷却手段と回路基板との間に熱伝導性シートが装着されることが一般的である。この熱伝導性シートは、現実的には高価である割には熱伝導性の効果は不十分なものでしかない。この実情に対して、以下の公知文献がある。
【0003】
特許文献1には、ゴム状重合体や樹脂状重合体からなるバインダーに繊維の長さが0.2mmの短い炭素繊維(フィラー)を分散させた厚さ0.2mmの熱伝導性シートが開示されている。特許文献2には、接着剤樹脂中に分散された3次元構造を有する炭素繊維が記載されている。このうち文献1の発明は、短い炭素繊維に1本ごとに磁性体を付着させ、バインダーとの分散体に数千ガウスの磁場を数十分間かけてシートの厚み方向にこの炭素繊維を配向させることによって熱伝導性を高めようとするものであり、製造に手間が掛かり、経済的に不利なものである。
【0004】
特許文献3には、厚さ1.0mm及び1.2mmの「ピッチ系炭素繊維からなる基布(織布、不織布、クロス、抄紙、フェルト)にシリコーンゴムを含浸させてなる熱伝導性シート」が記載されている。この文献に記載されている実施例は、「不織布」のみであり、従来困難であったピッチ系炭素繊維を織布にすることについての開示はない。
【0005】
一方、実用化はされていないが、分散される短炭素繊維、ピッチ系炭素繊維ではなく、連続する長い炭素繊維のみに着目した文献が特許文献4、5にある。このうち、特許文献4には、炭化綿の強度の低下を解決するために、炭化綿の単体を強度のあるガラス繊維やステンレス製のメッシュに織り込んだシートが開示されている。
【0006】
他方、特許文献5は、ガス拡散性のために、セルロース質の織布を焼成した炭素繊維織布をそのまま用いることが記載されている。特に、この実施例5〜8には、セルロース質の織布を焼成した後に、炭素繊維織布をFEPディスパージョン液に浸漬して、炭素繊維に撥水性のFEP樹脂を10質量%塗布、付着せしめることが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特開2001−294676号公報
【特許文献2】特開平6−212137号公報
【特許文献3】特開2000−228471号公報
【特許文献4】特開2005−350816号公報
【特許文献5】国際公開00/49213号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らは、上記の従来技術における、分散したフィラーとして用いられている短い炭素繊維やピッチ系炭素繊維あるいは3次元炭素繊維においては局部的な高熱伝導性が確保できても、面全体において均一化された熱伝導性を得ることが難しいという課題を見出した。また、一方では、織布を炭化したような連続する長い炭素繊維単体シートでは、密着性を得ることが難しいという課題も見出した。さらには、連続する長い炭素繊維単体シートでは、わずかな圧力には対応でき、わずかな伸縮性があるが、大きな圧力を加えると炭素繊維自体が折れてしまう現象を見出した。
【0009】
本発明の目的は、炭素繊維自体の連続性を維持しながら大きな圧力にも耐え、所望の熱伝導性の機能を均一化できる熱伝導性シート、その製造方法及びこれを用いた熱伝導性シートを提供することである。また、本発明の別の目的は、熱伝導率が高く、柔軟性があって相対的に高温な物体(発熱体あるいは高温になっている部材等:以下単に「高温体」と呼ぶ。)や相対的に低温な物体(吸熱体あるいは常温にある部材等:以下単に「低温体」と呼ぶ。)とよく密着し、経済的にも安価で生産性に優れた熱伝導性シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の目的を達成するため鋭意検討を行った結果、具体的には、木綿等の織布を焼成した炭素繊維の高い熱伝導率と熱可塑性エラストマーまたはゴム状弾性体等の弾力性を活用し、高温体と低温体との間の密着性を高め接触部の熱伝導に対する抵抗(接触抵抗)を小さくした熱伝導性弾性シートを得ることが出来、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(1)織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートと、前記織布シートの空隙に充填された弾性体と、を有することを特徴とする熱伝導性弾性シート。
(2)前記織布シートは木綿の織布を焼成して得られた炭化綿シートである(1)に記載の熱伝導性弾性シート。
(3)前記織布シートは前記織布シートを複数積層した積層体であり、前記弾性体は前記積層体の空隙に充填されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱伝導性弾性シート。
(4)前記織布は、平織の繊維シートを複数積層し、さらに前記積層方向に織った複数織り織布であることを特徴とする請求項(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の熱伝導性弾性シート。
(5)前記熱伝導性弾性シートは、反発弾性(JISK6255)が30%以上60%以下であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の熱伝導性弾性シート。
(6)織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートを積層する工程と、前記積層織布の空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を充填する工程と、前記樹脂の硬化後に得られる積層織布熱伝導性弾性シートを所望形状に裁断する工程と、を備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
(7)織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートを積層する工程と、前記積層織布の空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を減圧充填する工程と、を備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
(8) 前記硬化後弾性を発現する液状樹脂が熱可塑性エラストマー又は液状ゴムであることを特徴とする(6)または(7)に記載の熱伝導性弾性シートの製造方法。
(9)木綿の織布を焼成した炭化綿シートと熱可塑性エラストマーのシートとを交互に積層する工程と、前記積層シートを加熱して前記熱可塑性エラストマーのシートを軟化または溶融せしめて液状化し前記炭化綿シートの空隙に充填する工程と、を備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
(10)発熱部を備えた発熱体基板と、放熱体と、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シート及び前記織布の空隙に充填された弾性体とを有する熱伝導性弾性シートと、を備え、前記熱伝導性弾性シートは、前記発熱体基板と前記放熱体との間に装着され、前記発熱体及び前記放熱体とに密着する密着面を有することを特徴とする電子機器。
(11)前記熱伝導性弾性シートは前記織布シートを複数積層した積層体であり、前記密着面は前記積層の厚み方向に裁断した裁断面であることを特徴とする(10)に記載の電子機器。
(12)前記熱伝導性弾性シートは前記織布シートを複数積層した積層体であり、前記密着面は前記積層の厚み方向と交差する方向の面であることを特徴とする(10)に記載の電子機器。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱伝導性弾性シートによれば、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートの空隙に充填された弾性体を備えているため、熱伝導性炭素繊維自体の変形による折れの問題を解決し、接触面に対してその弾性で密着できるので、伝熱効果も高く、均一な熱伝導性を発揮できる。したがって、熱伝導性炭素繊維自体の連続性を維持しながら大きな圧力にも耐え、所望の熱伝導性の機能を均一化でき、かつ、熱伝導率が高く、柔軟性があって高温体や低温体とよく密着し、経済的にも安価な熱伝導性シートが提供される。
このシートを用いた電子機器は、さらに、発熱部を有する発熱体基板の温度を実質的に低下できるので、機器全体の昇温問題をも解決できる。
また、本発明の熱伝導性弾性シートの製造方法によれば、弾性体により織布シートが支持されるので熱伝導性炭素繊維自体の変形による折れを防止することができ、高温体や低温体との接触面に対してその弾性で密着でき、伝熱効果も高く、均一な熱伝導性を発揮でき、さらに、所望の厚さに形成することができる熱伝導性弾性シートが製造される。したがって、熱伝導性炭素繊維自体の連続性を維持しながら大きな圧力にも耐え、所望の熱伝導性の機能を均一化でき、かつ、熱伝導率が高く、柔軟性があって高温体や低温体とよく密着し、経済的にも安価で生産性に優れた熱伝導性シートの製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図8を参照して、本発明の実施の形態を、最適な製造方法及び最適な構造及びそれを用いた電子機器を例に、説明する。まず、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートとして、厚みが0.5mmで、縦横それぞれ30mmの木綿の織布を焼成して得られた炭化綿シート9を10(複数)枚用意する。この10枚の炭化綿シート9を一体化して積層保持(ひも等により縛ったり、治具を用いて挟持しても良く、吸引部で押圧保持しても良い)し、積層炭化綿シート13を形成する(炭化綿の積層工程)。なお、織布を積層保持した上で、焼成し、積層炭化綿シート13を形成してもよい。この積層炭化綿シート13を、硬化後弾性を発現あるいは奏する液状体(液状樹脂:液状ゴムを含む)を供給できる樹脂液供給部15と減圧機構14を備えた密閉容器12内に、前記樹脂液供給部15の密封容器12内のノズル位置より上方に載置する。ここで、密閉容器12内を減圧(実質的に真空が好ましいが、空気を排除できればよい)し、樹脂液供給部15からの液状体の供給を開始する。その結果、前記積層炭化綿シート13のほとんどすべての空隙(繊維間の空間)に前記液状体が空気を残さずに充填されていく(液状樹脂の含浸工程)。この液状体は、積層炭化綿シート13の表面側に比較的多く存在することがある。このため、表面側の液状体を、積層面に沿って削除することが好ましい。なお、表面側の液状体を削除しなくてもよい。本実施例では、液状体が硬化した(樹脂の硬化工程)後で、積層炭化綿シート13の1枚目と2枚目の間及び9枚目と10枚目の間それぞれで、積層方向に沿って裁断する(所望形状形成工程)。この積層間では、それぞれの炭化綿シートが互いに接触しているので、裁断面は、炭化綿シート9の一部が露出した状態になる。これによって得られた熱伝導性弾性シート6は、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シート9と織布シート9の空隙に充填された弾性体3と、を有する。そして、発熱部としての電子機器要素7を備えた発熱体基板5(以降、単に「発熱体5」ともいう。)と、発熱部7で発熱した熱を放熱する放熱体(ヒートシンク)4と、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維(経糸1および横糸2)の織布シート9及び織布シート9の空隙に充填された弾性体3とを有する熱伝導性弾性シート6と、を備え、前記熱伝導性弾性シート6は、前記発熱体5と前記放熱体4との間に装着され、前記発熱体5及び前記放熱体4とに密着する密着面23XY(23YZ、23ZX)を有することを特徴とする電子機器21は、上記裁断面をこの密着面23XY(23YZ、23ZX)とすることで容易に得ることができる。密着面23XY(23YZ、23ZX)は必ずしも平坦な面でなくてもよい。発熱体5または放熱体4の面が例えば球形であれば、本熱伝導性弾性シート6の密着面23XY(23YZ、23ZX)もまた球形に密着するような凹面に裁断すればよい。
【0013】
織布シート9あるいは積層織布シートとしての積層炭化膜シート13に液状体を含浸させる弾性体入り積層炭化綿製造装置11は、成形容器としての密封容器12と、密封容器12の底部に連接する樹脂液供給部15と、密封容器12の頂部付近に連接する減圧機構14とを備える。減圧機構14は、密封容器12の頂部に連接するのがよいが、蓋に連接することになるので、蓋の開閉しやすさを考慮して、胴部分の頂部付近に連接してもよい。減圧機構14と樹脂液供給部15は開閉弁16を備え、密封容器12内の減圧と停止、および、樹脂液の供給と停止を迅速に行うことができる。減圧機構14は典型的には、不図示の真空ポンプと配管とを備える。さらに、熱可塑性エラストマー等を硬化させる(樹脂の硬化工程)ために、密封容器12内を加熱・冷却する機構を備えるのが好ましい。例えば、冷媒又は熱媒入口17および冷媒又は熱媒出口18を備えるジャケットを密封容器12に付属させ、ジャケット中に熱媒・冷媒を流して加熱・冷却してもよい。あるいは、電気ヒータ、その他の周知な加熱装置を用いて加熱してもよい。加熱することにより、熱可塑性エラストマーの粘度が下がり、織布シート9あるいは積層炭化膜シート13のより細かな空隙にも熱可塑性エラストマーが充填され、空隙率(残留する空気の体積の、弾性体入り積層炭化綿全体の体積に対する比)が低くなる。密封容器12が冷媒又は熱媒入口17および冷媒又は熱媒出口18を備えるジャケットを有する場合には、熱媒に変えて、低温の冷媒を熱媒入口17からジャケット、熱媒出口18に流すことにより、例えば常温まで短時間で冷却し、熱可塑性エラストマーを短時間で硬化することができる。冷媒で冷却せずに、例えば、密封容器12内に常温の大気を導入し、あるいは、密封容器12を常温の大気内に放置することにより、冷却してもよい。冷媒又は熱媒入口17および冷媒又は熱媒出口18に開閉弁あるいは三方弁を配設し、熱媒と冷媒の切替や、熱媒・冷媒の流入・流出と停止とを迅速に行えるようにすることが好ましい。
【0014】
本発明の熱伝導性弾性シート6は、熱伝導性炭素繊維が連続層を形成しているので熱伝導性が高くかつその連続層の周囲に弾性体3が配されているので、熱伝導性炭素繊維の連続性が崩れ難い。前記熱伝導性炭素繊維の連続層は炭化綿で構成できる。炭化綿は木綿の織布を焼成して得られる炭化綿シート9として本発明に最適に使用される。炭化綿は木綿の炭素繊維が密に絡み合った糸によって形成された織布の炭化体であって、糸の方向に熱伝導性炭素繊維の連続層を形成している。また木綿の炭化体は、木綿の綿毛がもつ自然の撚れがそのまま維持されているので、ピッチ系炭素繊維やPAN系炭素繊維に比べて、良好なしなやかさを備えていて熱伝導性弾性シート6の材料として好適である。さらに、木綿の織布を用いる場合は、安価である。織布としては平織、綾織、朱子織などがあるが、それらを炭化した炭化綿シート9は糸の方向、即ち織布の平面に沿った方向に連続層を形成しているので、いずれの織り方であってもよく、特に限定されるものではない。図2(b)に示すような平織の中でも二重織は、織布の表面と直角な方向にも糸(二重織糸)10が織り込まれているので、その炭化綿からなる本発明の熱伝導性弾性シート6は織布の厚み方向の熱伝導性が改善されるので、好ましい。炭化綿シート9は糸の方向に炭素繊維の連続層があるので、それを含む熱伝導性弾性シート6は、炭化綿シート9の厚み方向に裁断した裁断面を、高温体としての発熱体5及び低温体としての放熱体4との接触面とすることによってより高い熱伝導性が得られる。この本発明に対して、一般の熱伝導性シートは、細かい粒状の金属酸化物や細い炭素繊維などの熱伝導材を熱伝導性の低い樹脂体等に分散したものであって、そのような熱伝導性シートは熱伝導材が不連続に分散しているため、熱伝導性は低い。
【0015】
上記炭化綿シート9一枚の厚みは通常0.2mm〜1mm程度であるので、炭化綿シート9の厚み方向に裁断した裁断面を、発熱体5及び放熱体4との接触面とする場合、熱伝導性弾性シート6の接触面積を大きくするためには、炭化綿シート9を多層に積層すればよい。多層に積層した積層炭化綿シートに熱可塑性エラストマーまたはゴムを含浸させた樹脂体入り積層炭化綿をシートの厚み方向(垂直が好ましいが、面積を稼ぐために斜めに裁断しても良い)に裁断することによって、熱伝導性弾性シート6の接触面積を大きくすることが可能となる。また、裁断することによって所望の形状(面積)に形成された熱伝導性弾性シート6が得られる(所望形状形成工程)が、必ずしも裁断せず(所望形状形成工程を経ず)、用途によっては炭化綿シート9の大きさのまま使用してもよい。
【0016】
炭素繊維の連続層を有する熱伝導性弾性シート6の、発熱体5や放熱体4との接触面は、相手の面に対して密着して接触し、その接触面の空気を排除できることが必要である。接触面が密着性を有するためにはその接触面が平滑であることである。裁断面の平滑度(Ra:JIS B0601)は100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、最も好ましくは10μm以下である。
【0017】
また炭化綿シート9は織布としての表面を有するので、積層された炭化綿シート9同士の隣接面は糸の側面が密に接触しており擬似的な炭素繊維の連続層を形成している。従って、積層炭化綿の厚み方向と直角な方向に裁断した裁断面もまた高い熱伝導性を有し、本発明の一形態である。
【0018】
本発明の熱伝導性弾性シート6は、織られた糸の方向(横幅方向)の方がそれと直角の方向(即ち厚み方向)よりも熱伝導率は高いが、厚み方向においても、積層された隣接する炭化綿のシートが面で接触しているため、熱は全方位に立体的に拡散する点が特長である。従って、厚み方向、横幅方向いずれの方向にも熱伝導性弾性シート6として使用できる。
【0019】
本発明で使用される弾性体3としては、熱可塑性エラストマーまたはゴム状弾性体がある。
【0020】
本発明で使用される熱可塑性エラストマーとして、スチレン−ブタジエン共重合体及びスチレン−イソプレンブロック共重合体とそれらの水添物、シリコン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのうち、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合などの極性基を有するので、発熱体5や放熱体4の金属製の接触面と親和性があり、本発明の接触面における密着性を弾性に加えて向上させる点において好ましい。また上記シリコン系熱可塑性エラストマーは、シロキサンガスの発生を抑制したものが好ましい。
【0021】
また本発明に用いられるゴム状弾性体としては、ポリブタジエン、天然ゴム、ポリイソプレン、SBR,NBRなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレンブタジエンジエンブロック共重合体、スチレンイソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体およびこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレン共重合体、エチレンプロピレンジエン共重合体などが挙げられる。これらのうち、NBR、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴムが、ニトリル結合、ウレタン結合、エステル結合などの極性基を有するので、発熱体5や放熱体4の金属製の接触面と親和性があり、本発明の接触面における密着性を弾性に加えて向上させる点において好ましい。また上記シリコンゴムは、シロキサンガスの発生を抑制したものが好ましい。
【0022】
本発明に用いられる液状ゴムは、前記ゴム状弾性体の未加硫の液状のものを用いることができる。この液状ゴムを炭化綿に含浸し、含浸後加硫することによって硬化させ適切なゴム弾性が得られる。
【0023】
一般に炭素繊維やそれらの織布はそれ単独ではもろく押圧力や曲げに対して容易に崩れたり折れたりするが、本発明の熱伝導性弾性シート6は、溶融状態の熱可塑性エラストマーや液状ゴム等の弾性体3が、炭素繊維の連続層を形成する微細な繊維と繊維の間に充填され、繊維の一本一本を、またそれらによって構成されている糸を、更には糸によって構成されている織布を、補強している。この充填は、積層炭化綿を液状の熱可塑性エラストマーや液状ゴムの中に空気を排除するように浸漬して行う方法や、炭化綿シート9と熱可塑性エラストマーのシートを交互に積層(交互積層炭化綿の製造工程)した交互積層炭化綿を、熱可塑性エラストマーの融点以上に加熱すること(液状樹脂の含浸工程)によって行う方法がある。熱可塑性エラストマーの融点以上に加熱することにより熱可塑性エラストマーが軟化し、あるいは、溶融して、炭化綿シート9の繊維間に充填される。その際に、炭化綿シート9と熱可塑性エラストマーのシートを交互に積層した方向に加圧することにより、より充填が促進され易く空隙率が低くなる。また、積層炭化綿を密閉容器に入れ、容器の上方から吸引して、減圧下で、液状の熱可塑性エラストマーや液状ゴムなどの樹脂を、積層炭化綿の下方から導入することによって行う方法が、積層炭化綿シート中の繊維と繊維の間(空隙)にある空気を下方から上方に追い出しながら樹脂が確実に充填されるので、生成した弾性体入り積層炭化綿の空隙率が低くなるので好ましい。弾性体入り積層炭化綿から形成された熱伝導性弾性シート6の外部から加えられた外力は、弾性のある樹脂体に吸収されて炭素繊維の連続層を形成する繊維にかかる力が緩和される。従って、外力によって炭化綿織布の構造が崩れたりして炭素繊維の連続層が破壊されることは少なく、熱伝導性弾性シート6の高熱伝導性は安定的に保持され、本熱伝導性弾性シート6を実装した場合の耐久性が確保される。また液状の熱可塑性エラストマーや液状ゴムを減圧下で充填することによって熱伝導性弾性シート6の空隙率が大幅に小さくなり、その結果、空気による接触抵抗も排除されて熱伝導率は向上する。
【0024】
一般に、物体の表面には、微視的にみると数μmから数十μmの深さの凹凸があるので、剛直な平板同士を重ね合わせてもその接触面の凹凸は埋まらず、凹凸部に空気が存在し接触抵抗を形成している。従って、物体と物体の接触面におけるよりよい熱移動を図るためには、物体表面の凹凸部に存在する空気を除去する工夫が必要である。本発明の熱伝導性弾性シート6は、発熱体5の接触面と放熱体4の接触面に弾力的に圧接することによって前記接触面の凹凸部に食い込み、空気を排除し、接触面における接触抵抗を除去するものである。本発明の熱伝導性弾性シート6は炭素繊維の連続層に熱可塑性エラストマーまたはゴムを含浸しており弾力性があるので、発熱体5や放熱体4の接触面の微視的な凹凸部に食い込む柔軟性を備えている。
【0025】
また、高温体5や低温体4は、実働時には温度変動や振動があって、熱伝導性弾性シート6が挿入されている間隔が変動するので、本発明の熱伝導性弾性シート6は、膨張と収縮に自在に対応して接触面における凹凸に常に食い込める柔軟性と反発弾性を有している。この機能を一層安定的に保持するためには、本発明の熱伝導性弾性シート6の反発弾性(JISK6255)は30%以上60%以下が好ましい。
【0026】
本発明の熱伝導性弾性シート6はその厚みが0.2mm〜5mmで使用することが出来る。高温体5や低温体4の実働時の温度変動や振動が大きい場合には、熱伝導性弾性シート6の挿入間隔の変動も大きくなるので、熱伝導性弾性シート6の厚みを厚くすることによって対応できる。つまり、高温体5や低温体4の実働時の温度変動や振動が大きい場合は熱伝導性弾性シート6の厚みを大きくし、小さい場合は熱伝導性弾性シート6の厚みを小さくすればよい。熱伝導性弾性シート6の中での熱移動の速さを考慮すれば、熱伝導性弾性シート6は薄い方が好ましい。より好ましくは、熱伝導性弾性シート6の厚みは、0.5〜3.5mmが良い。
【0027】
上記炭化綿シート9は、木綿の織布を不活性ガス気流中で焼成して製造されることが好ましい。この焼成温度は、高い方が炭化綿の熱伝導率は高くなる。しかし温度が高くなるほど焼成時間が長くなり、焼成のための設備が高価となり、経済的生産性が低下する。一方、焼成温度が高いほど炭化綿の黒鉛化率が高くなり、剛直となりしなやかさが失われる。本発明に使用される木綿の織布を焼成して得られた炭化綿は炭素繊維の連続性を保持できるしなやかさと高い熱伝導性との両方を考慮して、焼成温度は、600℃〜1100℃であり、好ましくは750℃〜950℃である。
【実施例】
【0028】
1)熱伝導率の測定方法
熱伝導性弾性シートを、25mm×25mm×3mmに裁断して、熱伝導率測定用のサンプルとし、25mm×25mmの面を定常法熱伝導率測定装置(アルバック理工株式会社、GH−1)で測定した結果を熱伝導率(W/mK)とする。
【0029】
2)反発弾性の測定方法
反発弾性の測定方法はJIS K6255に準拠した。
【0030】
[実施例1]
1)炭化綿シート
20番手の木綿糸を目付量783g/mの平織にした織布0.25m(500mm×500mm)4枚を、焼成炉(株式会社ゼロエミッション製、機種:バッチ式炭化装置 OC)に入れ、窒素気流中にて、室温から400℃までは0.3℃/min、400℃〜750℃の間は1.9℃/min、で昇温し750℃で60分保持した後、室温まで冷却した。生成した炭化綿の目付量は130g/mで、厚み0.5mmであった。この炭化綿を裁断機(メーカー:堀鉄工所株式会社製、機種:HOD型油圧裁断機)にて、幅100mm×長さ100mm×厚み0.5mmの炭化綿シートに裁断した。
2)弾性体入り積層炭化綿
前項1)で製造した炭化綿シート(幅100mm×長さ100mm×厚み0.5mm)100枚を紐で縛って束ねて密閉容器に入れ、減圧下(1kPa:0.01気圧)で、室温で炭化綿全体が浸漬する量のウレタンエラストマー(ウレタン技研工業(株)、品番:セフタックC−7−21、A液とB液の質量比:A/B=75/25)を前記密閉容器に容器の下部から注入した。容器内圧を常圧にした後、容器内部を30分で90℃までに昇温し、60分間静置した後、温度を室温まで下げた。容器内から炭化綿100枚を積層した弾性体入り積層炭化綿が得られた。幅100mm×長さ100mm×厚み50mm、総質量は640gであった。
3)熱伝導性弾性シート
前項2)で製造した弾性体入り積層炭化綿を、裁断して、幅30mm×長さ50mm×厚み50mmの、長さ×厚み面(図1(a)のy−z面23YZ)を密着面とする熱伝導性弾性シートを作成した。上記長さ×厚み面23YZと直交する方向の熱伝導率を測定した結果、5.1W/mKであった。
【0031】
[実施例2]
上記2)で得られた弾性体入り積層炭化綿(幅100mm×長さ100mm×厚み50mm)を、厚み方向の上下それぞれ10mmを裁断切除して厚み30mmとし、更に幅と長さを裁断して、幅50mm×長さ50mm×厚み30mmの、幅50mm×長さ50mmの面を密着面とする熱伝導性弾性シートを作成した。この熱伝導性弾性シートの密着面(図1(b)のx−y面23XY)と直交する方向の熱伝導率は2.8W/mKであった。
【0032】
[実施例3]
実施例1で製造した幅100mm×長さ100mm×厚み0.5mmの炭化綿シート3枚を紐で縛って束ねて密閉容器に入れ、減圧下(1kPa:0.01気圧)で、室温で炭化綿全体が浸漬する量のウレタンエラストマー(ウレタン技研工業(株)、品番:セフタックC−7−21、A液とB液の質量比:A/B=75/25)を前記密閉容器に容器の下部から注入した。容器内圧を常圧にした後、容器内部を30分で90℃までに昇温し、60分間静置した後、温度を室温まで下げた。容器内から、炭化綿シート3枚を積層した、幅100mm×長さ100mm×厚み1.5mm、総質量137gの弾性体入り積層炭化綿が得られた。この弾性体入り積層炭化綿を裁断して、幅15mm、長さ50mm、厚み1.5mmのシートを作成した。更にこのシート30枚を厚み方向に接着剤で接着して厚み50mmとして、幅15mm、長さ50mm、厚み50mmの熱伝導性弾性シートを作成した。この熱伝導性弾性シートの熱伝導率は、長さ×厚み面(図1のx−z面23ZX)と直交する方向の熱伝導率は3.5W/mKであった。
【0033】
[実施例4]
ウレタンエラストマー(松本技研工業(株)、品番:MG8012)の幅100mm×長さ100mm×厚み0.3mm、のシートと実施例1で製造した、幅100mm×長さ100mm×厚み0.5mmの炭化綿シートを、炭化綿シートを最下段にして交互に夫々10枚重ね、熱プレスで200℃に昇温後、10分間で総厚み5mmまで圧縮した。次いで室温近傍まで冷却して弾性体入り積層炭化綿を得た。この弾性体入り積層炭化綿を、積層方向に裁断して、幅50mm×長さ50mm×厚み5mmの弾性体入り積層炭化綿を作成した。更にこれを厚み方向の上下夫々1mmを裁断切除して、その裁断面(図1のx−y面23XY)を密着面とする幅50mm×長さ50mm×厚み5mmの熱伝導性弾性シートを作成した。このシートの密着面と直交する方向の熱伝導率は、1.2W/mKであった。
【0034】
[実施例5]
実施例1で得られた熱伝導性弾性シート6を、図4に示すように発熱体基板5と放熱体4の間に装着し、ビス止め部8で発熱体基板5と放熱体4とを止めることにより熱伝導性弾性シート6を挟持し、発熱体基板5を一定温度に加温した電子機器21を用いて、図4のC点(熱伝導性弾性シートの発熱体側)の温度を測定した。C点は52℃であった。
【0035】
[比較例1]
実施例2において、熱伝導性弾性シートを装着せず、図5に示すように発熱体基板5と放熱体4を直接接触させ、発熱体基板5を一定温度に加温した電子機器22を用いて、図5のD点(熱伝導性弾性シートの発熱体側)の温度を測定した。D点は79℃だった。
【0036】
[比較例2]
図4に示す実施例5と同様に、発熱体基板5と放熱体4の間に、従来品の放熱シート(サンワサプライ(株)、品番:TK−215)を装着し、発熱体基板5を一定温度に加温した状態で、図4のC点(熱伝導性弾性シートの発熱体側)の温度を測定した。C点は65℃だった。
【0037】
以上の通り、本発明に係る熱伝導性弾性シートの熱伝導率は高く、比較例1の熱伝導性弾性シートを装着しない場合、および比較例2の従来品の放熱シートを装着した場合に比べ、本発明に係る熱伝導性弾性シートを備えた電子機器21は、放熱効率がよく、電子機器21の温度上昇を抑える効果を有することが確認された。
【0038】
即ち本発明は、実施例に対応させると、下記(1)〜(12)にまとめられる。
(1)例えば図1に示すように、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シート9と、前記織布シート9の空隙に充填された弾性体3と、を有することを特徴とする熱伝導性弾性シート6。
(2)前記織布シートは木綿の織布を焼成して得られた炭化綿シートである(1)に記載の熱伝導性弾性シート。
(3)例えば図1に示すように、前記織布シート9を積層し、前記弾性体は前記積層された織布シート9の空隙に充填されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の熱伝導性弾性シート6。
(4)例えば図2(a)および(b)に示すように、前記織布は、平織の繊維シートを積層し、さらに前記積層方向に織った複数織り織布であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の熱伝導性弾性シート。
(5)前記熱伝導性弾性シートは、反発弾性(JISK6255)が30%以上60%以下であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか1項に記載の熱伝導性弾性シート。
(6)例えば図6に示すように、織布を焼成した熱伝導性炭素繊維の織布シートが積層された積層織布シートを形成する工程(図6では、炭化綿の積層工程)と、前記積層織布シートの空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を充填する工程(液状樹脂の含浸工程)と、前記液状樹脂を硬化する工程(樹脂の硬化工程)と、を備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
(7)例えば図6および図8に示すように、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートが積層された積層織布シート13を形成する工程(図6では、炭化綿の積層工程)と、前記積層織布シート13の空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を減圧充填する工程(液状樹脂の含浸工程)と、前記液状樹脂を硬化する工程(樹脂の硬化工程)とを備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
(8) 前記硬化後弾性を発現する液状樹脂が熱可塑性エラストマー又は液状ゴムであることを特徴とする(6)または(7)に記載の熱伝導性弾性シートの製造方法。
(9)例えば図7に示すように、木綿の織布を焼成した炭化綿シートと熱可塑性エラストマーのシートとを交互に積層する工程と、前記積層したシートを加熱して前記熱可塑性エラストマーのシートを軟化または溶融せしめて前記炭化綿シートの空隙に充填する工程と、前記熱可塑性エラストマーを硬化する工程(樹脂の硬化工程)とを備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
(10)例えば図1および図4に示すように、発熱部7を備えた発熱体基板5と、発熱部7で発熱した熱を放熱する放熱体4と、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シート9及び前記織布シート9の空隙に充填された弾性体3とを有する熱伝導性弾性シート6と、を備え、前記熱伝導性弾性シート6は、前記発熱体基板5と前記放熱体4との間に装着され、前記発熱体基板5及び前記放熱体4とに密着する密着面23XY(23YZ、23ZX)を有することを特徴とする電子機器21。
(11)例えば図1に示すように、前記熱伝導性弾性シート6には前記織布シート9が積層され、前記密着面23YZ(23ZX)は前記織布シート9が積層された厚み方向に裁断した裁断面であることを特徴とする(10)に記載の電子機器。
(12)例えば図1に示すように、前記熱伝導性弾性シート6には前記織布シート9が積層され、前記密着面23XYは前記織布シート9が積層された厚み方向と交差する方向の面であることを特徴とする(10)に記載の電子機器。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、熱伝導性弾性シートの斜視図であり、(b)は、(a)をy軸を軸にして90度左回転した模式図である。
【図2】(a)は、平織の炭化綿シートの表面の模式図で、(b)は複数シートの複数織りの側面模式図である。
【図3】平織の熱伝導性弾性シートの接触面の上面模式図である。
【図4】実施例5及び比較例2の実施態様を説明する模式図である。
【図5】比較例1実施態様を説明する模式図である。
【図6】熱伝導性弾性シートの第1の製造方法のフローチャートである。
【図7】熱伝導性弾性シートの第2の製造方法のフローチャートである。
【図8】弾性体入り積層炭化綿の製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0040】
1 経糸
2 横糸
3 弾性体(樹脂体)
4 放熱体(ヒートシンク)(低温体)
5 発熱体基板(高温体、発熱体)
6 熱伝導性弾性シート
7 電子機器要素(発熱部)
8 ビス止め部
9 炭化綿シート(織布シート)
10 二重織糸
11 弾性体入り積層炭化綿製造装置
12 成型容器(密封容器)
13 積層炭化綿シート(積層織布シート)
14 減圧機構
15 樹脂液供給部
16 弁(開閉弁)
17 冷媒又は熱媒入口
18 冷媒又は熱媒出口
21、22 電子機器
23XY、23YZ、23ZX 密着面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シートと、前記織布シートの空隙に充填された弾性体と、を有することを特徴とする熱伝導性弾性シート。
【請求項2】
前記織布シートは木綿の織布を焼成して得られた炭化綿シートである請求項1に記載の熱伝導性弾性シート。
【請求項3】
前記織布シートを積層し、前記弾性体は前記積層された織布シートの空隙に充填されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱伝導性弾性シート。
【請求項4】
前記織布は、平織の繊維シートを積層し、さらに前記積層する方向に織った複数織り織布であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱伝導性弾性シート。
【請求項5】
前記熱伝導性弾性シートは、反発弾性(JISK6255)が30%以上60%以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱伝導性弾性シート。
【請求項6】
織布を焼成した熱伝導性炭素繊維の織布シートが積層された積層織布シートを形成する工程と、前記積層織布シートの空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を充填する工程と、前記液状樹脂を硬化する工程とを備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
【請求項7】
織布を焼成した熱伝導性炭素繊維の織布シートが積層された積層職布シートを形成する工程と、前記積層織布シートの空隙に硬化後弾性を発現する液状樹脂を減圧充填する工程と、前記液状樹脂を硬化する工程とを備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
【請求項8】
前記硬化後弾性を発現する液状樹脂が熱可塑性エラストマー又は液状ゴムである請求項6または7に記載の熱伝導性弾性シートの製造方法。
【請求項9】
木綿の織布を焼成した炭化綿シートと熱可塑性エラストマーのシートとを交互に積層する工程と、前記積層したシートを加熱して前記熱可塑性エラストマーのシートを軟化または溶融せしめて前記炭化綿シートの空隙に充填する工程と、前記熱可塑性エラストマーを硬化する工程とを備えることを特徴とする熱伝導性弾性シートの製造方法。
【請求項10】
発熱部を備えた発熱体基板と、前記発熱部で発熱した熱を放熱する放熱体と、織布が焼成された熱伝導性炭素繊維の織布シート及び前記織布シートの空隙に充填された弾性体とを有する熱伝導性弾性シートと、を備え、前記熱伝導性弾性シートは、前記発熱体基板と前記放熱体との間に装着され、前記発熱体基板及び前記放熱体とに密着する密着面を有することを特徴とする電子機器。
【請求項11】
前記熱伝導性弾性シートには前記織布シートが積層され、前記密着面は前記織布シートが積層された厚み方向に裁断した裁断面であることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。
【請求項12】
前記熱伝導性弾性シートには前記織布シートが積層され、前記密着面は前記織布シートが積層された厚み方向と交差する方向の面であることを特徴とする請求項10に記載の電子機器。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−29908(P2009−29908A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194475(P2007−194475)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(507252579)ラディエーション株式会社 (1)
【出願人】(397025587)エステー産業株式会社 (38)
【Fターム(参考)】