熱伝導性複合粒子、熱伝導性シート及びこれらの製造方法
【課題】煩雑で高コストとなる被覆工程を用いず、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する新規な構造の熱伝導性複合粒子及び熱伝導性シート、及び、当該新規な構造の熱伝導性複合粒子及び熱伝導性シートの簡易で低コストな製造方法を提供する。
【解決手段】高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体2a及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2と、前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子4と、を具備する熱伝導性複合粒子1を製造し、これを用いて熱伝導性シートを得る。
【解決手段】高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体2a及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2と、前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子4と、を具備する熱伝導性複合粒子1を製造し、これを用いて熱伝導性シートを得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性複合粒子、熱伝導性シート及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、IC、パワー部品及び高輝度LED等から発生する熱を効率よく逃がすための熱伝導性(伝熱)シート、熱伝導性ゲル、熱伝導グリース及び熱伝導接着剤には、熱伝導性フィラーが添加されている。
【0003】
かかる熱伝導性フィラーについて、例えば特許文献1においては、高い効率で熱を伝導することができ、しかも絶縁性を有する熱伝導性シートを提供すること、及びこのような熱伝導性シートを容易に製造することができる方法を提供することを意図して、以下のような技術が提案されている(特許文献1、要約等)。
【0004】
即ち、特許文献1には、柔軟性を有する絶縁性高分子材料よりなる両面が平坦なシート基体中に、磁性を示す絶縁性伝熱粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなることを特徴とする熱伝導性シートと、その製造方法が提案されている。
【0005】
また、例えば特許文献2においては、発熱体または受熱体を十分に密着させることができ、しかも、高い効率で熱を伝導することができる熱伝導板およびその製造方法を提供することを意図して、以下のような技術が提案されている(特許文献2、要約等)。
【0006】
即ち、特許文献2には、金属製の基板と、この基板における少なくとも一面に一体的に設けられた熱伝導層とを具えてなり、前記熱伝導層は、柔軟性を有する高分子材料中に、磁性を示す熱伝導性粒子および非磁性の熱伝導性粒子が含有されてなり、当該磁性を示す熱伝導性粒子が、当該熱伝導層の厚み方向に並ぶよう配向された状態で含有されていることを特徴とする熱伝導板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−274302号公報
【特許文献2】特開2002−299530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、金属粒子からなる磁性粒子を芯粒子として用いることを前提として、金属粒子からなる磁性粒子とこれを被覆する高熱伝導性材料とで構成された絶縁性伝熱粒子が用いられており、スパッタリングやCVD法によって、上記芯粒子(金属粒子)を高熱伝導性材料で直接被覆することが提案されており(特許文献1、段落番号[0032]、[0033]、実施例等)、被覆工程が比較的煩雑で高コストになるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術においては、ニッケル、鉄又はコバルト等の金属やMn−Znフェライト又はi−Znフェライト等の金属酸化物からなる芯粒子と、これを被覆する熱伝導性粒子と、で構成された磁性を示す熱伝導粒子が用いられており、化学メッキ法、スパッタリング法又はCVD(化学蒸着法)によって、上記芯粒子(金属粒子又は金属酸化物粒子)を熱伝導性粒子で直接被覆することが提案されており(特許文献2、段落番号[0029]〜[0031]、実施例等)、被覆工程が比較的煩雑で高コストになるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、煩雑で高コストとなる被覆工程を用いなくても、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する新規な構造の熱伝導性複合粒子を提供すること、及び、当該新規な構造の熱伝導性複合粒子及びこれを含む熱伝導性シートの製造方法の簡易で低コストな製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のように、いわゆる熱伝導性粒子としては、従来、金属粒子等とこれを直接覆う熱伝導性材料とで構成された熱伝導性粒子が用いられ、その製造方法としては、比較的煩雑で高コストなスパッタリング法又はCVD(化学蒸着法)を用いるのが、当業者にとっての一般的な認識であった。
【0012】
これに対し、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上述の当業者の一般的な認識があったにもかかわらず、芯粒子として、磁性粒子からなる金属粒子等ではなく、磁性体を含有するマトリクス樹脂を用いれば、比較的簡易で低コストな方法で従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する熱伝導性(複合)粒子が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、
磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子と、
前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子と、を具備すること、
を特徴とする熱伝導性複合粒子を提供する。
【0014】
上述のように、本発明の熱伝導性複合粒子は、磁性体を含有するマトリクス樹脂と、前記マトリクス樹脂を覆う熱伝導性粒子と、で構成された新規な構造を有している。このような磁性体を含有するマトリクス樹脂を芯粒子として用いれば、比較的煩雑で高コストなスパッタリング法又はCVD(化学蒸着法)ではなく、比較的簡易で低コストな高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法によって、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する熱伝導性(複合)粒子を得ることができることを、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果見出した。
【0015】
以上のように、本発明によれば、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現する熱伝導性複合粒子を提供することができる。
【0016】
したがって、本発明は、
磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子と、前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子と、を具備する熱伝導性複合粒子の製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆う工程を含むこと、
を特徴とする熱伝導性複合粒子の製造方法をも提供する。
【0017】
このような製造方法により、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現することができる本発明の熱伝導性複合粒子を確実に得ることができる。
【0018】
また、本発明は、
上記の本発明の熱伝導性複合粒子を含み、
前記熱伝導性シート内において前記熱伝導性複合粒子が配列していること、
を特徴とする熱伝導性シートにも関する。
【0019】
本発明の熱伝導性シートは、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現する熱伝導性複合粒子を用いているため、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく満たすものである。
【0020】
また、本発明の熱伝導性シートでは、熱伝導性複合粒子の量が少なくても、熱伝導性複合粒子が磁場により配向して熱伝導パスが効率よく形成されることにより高い熱伝導率が得られ、また、熱伝導性複合粒子の量を減らすことによってシート材料の性質を損なわず柔軟性を有する熱伝導性シートを実現することができる。
【0021】
また、本発明は、上記本発明の熱伝導性シートの製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆うことにより、熱伝導性複合粒子を得る工程と、
前記熱伝導性複合粒子と前記熱伝導性シートのシート材料との成型材料において、前記熱伝導性複合粒子を配向させる工程と、
前記熱伝導性複合粒子を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シートを得る工程と、
を含むこと、
を特徴とする熱伝導性シートの製造方法にも関する。
【0022】
このような製造方法により、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現する熱伝導性複合粒子を用いているため、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく満たす熱伝導性シートをより確実に得ることができる。
【0023】
また、熱伝導性複合粒子の量が少なくても、熱伝導性複合粒子が磁場により配向して熱伝導パスが効率よく形成されることにより高い熱伝導率が得られ、また、熱伝導性複合粒子の量を減らすことによってシート材料の性質を損なわず柔軟性を有する熱伝導性シートをより確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する新規な熱伝導性複合粒子及び熱伝導性シート並びに熱伝導性複合粒子及び熱伝導性シートの簡易で低コストな製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の熱伝導性複合粒子の一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。
【図2】実施例1において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(アルミナ)。
【図3】実施例2において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(チッ化アルミニウム)。
【図4】実施例3において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(炭化ケイ素)。
【図5】実施例4において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(チッ化ホウ素)。
【図6】参考例としての磁性樹脂粒子(磁性トナー)のSEM写真である。
【図7】実施例5及び実施例6で作製した本発明の熱伝導性シートの一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。
【図8】比較例1及び比較例2で作製した熱伝導性シートの断面を概念的に示す概略縦断面図である。
【図9】比較例3及び比較例4で作製した熱伝導性シートの断面を概念的に示す概略縦断面図である。
【図10】比較例5及び比較例6で作製した熱伝導性シートの断面を概念的に示す概略縦断面図である。
【図11】本発明の実施例及び比較例において測定した熱伝導率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の熱伝導性複合粒子、熱伝導性シート及びこれらの製造方法の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面においては、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0027】
[熱伝導性複合粒子]
図1は本発明の熱伝導性複合粒子の一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。図1に示す本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bとで構成された磁性樹脂粒子2と、磁性樹脂粒子2を覆う熱伝導性粒子4と、を含む構成を有している。
【0028】
図1に示す本実施形態の熱伝導性複合粒子1においては、熱伝導性粒子4が磁性樹脂粒子2の表面全体を覆っているが、熱伝導性粒子4は磁性樹脂粒子2の表面に部分的に付着していてもよく(即ち、磁性樹脂粒子2の少なくとも一部を被覆していてもよく)、必ずしも磁性樹脂粒子2の表面全体を被覆していなくてもよい。したがって、熱伝導性粒子4は、磁性樹脂粒子2の表面において、連続する層又は不連続な層を形成していてもよい。
【0029】
なお、図1においては、本実施形態の熱伝導性複合粒子1を概念的に示したものであるため、各構成部材が綺麗な形状を有しているが、実際に得られる本発明の熱伝導性複合粒子では必ずしもそのような綺麗な形状を有しているわけではない(後述する図2〜図5に示すSEM写真参照)。
【0030】
本実施形態の熱伝導性複合粒子1を構成する磁性樹脂粒子2は、マトリクス樹脂2b中に磁性体2aが含まれて構成されており、例えば従来から電子写真装置に用いられている磁性トナーを磁性樹脂粒子2として使用することができる。
【0031】
(1)磁性樹脂粒子
この磁性樹脂粒子2は、磁性体2a及びバインダーとなるマトリクス樹脂2bを含み、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他にもカーボンブラック等の導電助材、ワックス等の分散材、シリカ等の外添剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0032】
磁性体2aは、従来の磁性トナーに用いられているいわゆる磁性粉であればよく、これを構成する材料としては、例えばニッケル、鉄、コバルト、ZrFe2、FeBe2、FeRh、マグネタイト(Fe3O4)、式:MO・Fe2O3(式中、MはMn、Fe、Ni、Cu、Mg又はZn等を含む。)で表されるフェライト及びこれらの混合物であるMn−Znフェライト並びにNi−Znフェライト、FeMn2O4等のマンガナイト、並びに式:MO・Co2O3(式中、MはFe又はNi等を含む。)で表されるコバルタイト、Fe(CO)5で表される鉄ペンタカルボニル等を用いることができる。
【0033】
磁性体2aの形状や寸法は、磁性体2aがマトリクス樹脂2bに覆われて磁性樹脂粒子2を構成できる範囲であれば特に制限されないが、磁性樹脂粒子2中での分散性を考慮すると、略球状(略粒子状)で平均粒子径が1〜10μm程度であることが好ましい。なお、ここでいう「平均粒子径」とは、粒子をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径のことを言い、一般的にD50と表現される径である。例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550によって測定することができる(以下、同様。)。
【0034】
なかでも、マグネタイト(Fe3O4)としては、例えばチタン工業(株)製のBL−10、BL−50、BL−100、BL−200、BL−SP、BL−250及びRB−BL、関東電化工業(株)製のKBC−100SS及びKBC−100SNW等が挙げられる。その他、カルボニル鉄粉としては、BASF社製のハードグレードである、EM、ES、ES−I、ER、ER−I、EW、EW−I、HF、HQ、HS、OF、OM、ON、OS、ソフトグレードである、CC、CD、CF、CL、CM、CN、CS、SM、SQ等が挙げられる。
【0035】
磁性樹脂粒子2中の磁性体2aの含有量は、例えば磁性樹脂粒子2の電気抵抗を所望のレベルにコントロールすることや磁性樹脂粒子2中での磁性体2aの分散性等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0036】
次に、マトリクス樹脂2aを構成する樹脂としては、従来の磁性トナーに用いられている種々の樹脂を用いることができ、例えばスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体及びスチレン−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート共重合体等のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、並びにポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0037】
磁性樹脂粒子2のマトリクス樹脂2bを構成する樹脂の分子量は、本発明の効果が損なわれない限りは特に制限されないが、磁性体2a等との混合及び分散のし易さを考慮して適宜選択すればよい。また、磁性樹脂粒子2中のマトリクス樹脂2bの含有量は、特に制限はないが、磁性体2b及び必要に応じて含まれる任意の材料を確実に保持して磁性樹脂粒子2を形成し得る範囲であればよい。
【0038】
なお、任意の材料である前記ワックスとしては、例えばポリプロピレン系ワックス(例えば三洋化成工業(株)製のビスコール550P)等が挙げられ、その含有量も本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常1〜5質量%程度である。
【0039】
このような磁性樹脂粒子2は、従来公知の種々の方法で製造することができ、例えば磁性体2a、マトリクス樹脂2bを構成する樹脂、及びその他の任意成分を、混練機又は押出機等を用いて加熱溶融混練し、冷却固化させた後、得られた塊状物を粉砕分級機にて粉砕及び分級する方法等を採用することができる。
【0040】
かかる磁性樹脂粒子2の粒径は、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない広い範囲で適宜選択すればよい。
【0041】
また、磁性樹脂粒子2の形状は、特に限定されるものではないが、熱伝導性粒子4を付着乃至は担持させ、また、最終的に得られる本実施形態の熱伝導性複合粒子1の使用し易さ等を考慮すると、略球状(略粒子状)であればよく、また、凝集して2次粒子を形成している塊状であってもよい。
【0042】
このような条件を満足する磁性樹脂粒子2を用いれば、最終的に得られる本実施形態の熱伝導性複合粒子1において良好な伝熱経路が形成され、所望する熱伝導性を得ることができる。
【0043】
(2)熱伝導性粒子
本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、図1に示すように、上記のような磁性樹脂粒子2の表面を熱伝導性粒子4が覆うことにより構成されている。
【0044】
この熱伝導性粒子4を構成する材料は、本実施形態の熱伝導性複合粒子1に熱伝導性を付与し得るものであれば導電性材料でも絶縁性材料でもよく、例えば、銀、アルミウニム、銅、アルミニウム合金、銅合金及びステンレス(SUS)等の金属、チッ化ホウ素(ボロンナイトライド)、チッ化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、チッ化アルミニウム及び炭化ケイ素等のセラミックス、並びにカーボンブラック及びダイヤモンド等の炭素材料等を挙げることができる。
【0045】
熱伝導性粒子4の形状や寸法は、熱伝導性粒子4が上記の磁性樹脂粒子4の表面を被覆できる範囲であればよいが、最終的に得られる熱伝導性複合粒子1の熱伝導性の向上という観点からは、磁性樹脂粒子2の表面をできるだけ緻密に被覆できる形状や寸法であるのが好ましい。
【0046】
したがって、熱伝導性粒子4は、略粒状で、少なくとも磁性樹脂粒子4よりも小さく、例えば平均粒子径が0.01〜5μm程度であることが好ましい。
【0047】
なかでも、酸化アルミニウム(アルミナ)としては、例えば住友化学(株)製のAKP3000(比重3.97g/cm3、粒径:0.5μm)、チッ化アルミニウムとしては、例えば(株)トクヤマ製の高純度窒化アルミニウム粉末SH−1(比重3.255g/cm3、粒径:1.1μm、一次粒子径:約0.6μm)、炭化ケイ素としては、例えばSUPERIORGRAPHITE社製の8S059AD20(比重3.22g/cm3、粒径:約0.6μm)、チッ化ホウ素(ボロンナイトライド)としては、例えば水島合金鉄(株)製のFS−1(比重2.2g/cm3、平均粒子径:0.3μm)等が、それぞれ挙げられる。
【0048】
熱伝導性複合粒子1において、磁性樹脂粒子2に対する熱伝導性粒子4の被覆量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択可能であるが、良好な熱伝導性が得られるという観点から、磁性樹脂粒子2表面における熱伝導性粒子4の被覆率(磁性樹脂粒子2の表面積に対して熱伝導性粒子4が被覆する部分の面積の割合)は、約60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であればよい。
【0049】
また、熱伝導性複合粒子1において、磁性樹脂粒子2に対する熱伝導性粒子4の含有量も、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択可能であるが、磁性樹脂粒子2に対する熱伝導性粒子4の含有量は、10〜200質量%程度であり、熱伝導性粒子の比重、粒子径により適宜選択される。
【0050】
[熱伝導性複合粒子の製造方法]
次に、本実施形態の熱伝導性複合粒子1の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、(1)磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を調製乃至は用意する工程と、(2)高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性樹脂粒子2を熱伝導性粒子4で覆う工程と、によって製造することができる。以下、個々の製造工程についてより具体的に説明する。
【0051】
(a)第一工程
磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を調製乃至は用意する。この磁性樹脂粒子2は、従来公知の磁性トナーの製造方法に従って製造することができ、また、市販の磁性トナーを磁性樹脂粒子2として用いることができる。
【0052】
製造する場合には、例えば、所定量の、磁性体2a及びマトリクス樹脂2bと、更には例えば電荷制御剤、外添剤等を混合させ溶融混練し、得られた塊状体を乾燥し、ジェットミル等の機械的粉砕手段にて粉砕した後、所定の粒度の粒子に分級して製造するのが通常である。
【0053】
(2)第二工程
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性樹脂粒子2を熱伝導性粒子4で覆う(被覆する)。この工程における各被覆方法の条件は、磁性樹脂粒子2を熱伝導性粒子4で覆う(被覆する)することができる範囲で適宜選択することができる。
【0054】
例えば高速気流中衝撃法は、(株)奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムを用いて実施することができる。
【0055】
[熱伝導性シート]
本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、代表的には、熱伝導性シートに好適に利用することができる。この熱伝導性シートは、絶縁性高分子材料で構成されたシート状乃至は板状の基材と、当該基材に含有された熱伝導性複合粒子1と、を含むものである。
【0056】
ここで、図7は、上記本実施形態の熱伝導性複合粒子1を含む本発明の熱伝導性シートの一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。図7に示すように、本実施形態の熱伝導性シート10は、母材(マトリクス)である基材8と熱伝導性複合粒子1とを含んでおり、基材8内において熱伝導性複合粒子1が磁場によって配向(配列)している。
【0057】
しがたって、熱伝導性複合粒子1は熱伝導性シート10内において、例えば面方向及び/又は厚み方向において適宜の方向に配列し、全体に略均一に分散している。熱伝導性複合粒子1の量、間隔及び配列方法等については、熱伝導性シート10や所望するそのスペック等、具体的用途や使用条件等に応じて適宜設計することが可能である。
【0058】
基材8は、柔軟性を有する絶縁性高分子材料等からなるシート材料により形成され、このような絶縁性高分子材料としては、例えば、硬化ゴム、硬化ゲル若しくは熱可塑性エラストマー又はこれらを含む組成物を用いることができる。
【0059】
硬化ゴム組成物を得るために用いることのできる硬化性のゴム材料としては、種々のものを用いることができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム等の共役ジエン系ゴム及びこれらの水素添加物、スチレン−ブタジエン−ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴム及びこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、並びにエチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0060】
なかでも、熱伝導性シート10に耐熱性を要求する場合には、共役ジエン系ゴム以外のものを用いることが好ましく、特に、成形加工性および電気特性の観点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0061】
シリコーンゴムとしては、例えば液状シリコーンゴムを架橋又は縮合したものを用いることができる。液状シリコーンゴムは、その粘度が歪速度10−1secで105ポアズ以下のものが好ましく、縮合型のもの、付加型のもの、ビニル基やヒドロキシル基を含有するものなどのいずれであってもよい。具体的には、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム及びメチルフェニルビニルシリコーン生ゴム等を挙げることができる。
【0062】
これらのうちのビニル基を含有する液状シリコーンゴム(ビニル基含有ポリジメチルシロキサン)は、通常、ジメチルジクロロシラン又はジメチルジアルコキシシランを、ジメチルビニルクロロシラン又はジメチルビニルアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引続き溶解−沈殿の繰り返しによる分別を行うことにより得られる。
【0063】
また、ビニル基を両末端に含有する液状シリコーンゴムは、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、重合停止剤として例えばジメチルジビニルシロキサンを用い、その他の反応条件(例えば、環状シロキサンの量及び重合停止剤の量)を適宜選択することにより得られる。ここで、アニオン重合の触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化n−ブチルホスホニウム等のアルカリ又はこれらのシラノレート溶液などを用いることができ、反応温度は、例えば80〜130℃である。
【0064】
このようなビニル基含有ポリジメチルシロキサンは、その分子量Mw(標準ポリスチレン換算質量平均分子量をいう。以下同じ。)が例えば10000〜40000のものであればよい。また、得られるシート基体の耐熱性の観点からは、分子量分布指数(標準ポリスチレン換算質量平均分子量Mwと標準ポリスチレン換算数平均分子量Mnとの比Mw/Mnの値をいう。以下同じ。)が2以下のものであればよい。
【0065】
一方、ヒドロキシル基を含有する液状シリコーンゴム(ヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン)は、通常、ジメチルジクロロシラン又はジメチルジアルコキシシランを、ジメチルヒドロクロロシラン又はジメチルヒドロアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引続き溶解−沈殿の繰り返しによる分別を行うことにより得られる。
【0066】
また、環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、重合停止剤として、例えばジメチルヒドロクロロシラン、メチルジヒドロクロロシラン又はジメチルヒドロアルコキシシラン等を用い、その他の反応条件(例えば、環状シロキサンの量及び重合停止剤の量)を適宜選択することによっても得られる。ここで、アニオン重合の触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化n−ブチルホスホニウム等のアルカリ又はこれらのシラノレート溶液等を用いることができ、反応温度は、例えば80〜130℃である。
【0067】
このようなヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンとしては、その分子量Mwが10000〜40000のものを用いることができる。また、得られるシート基体の耐熱性の観点からは、分子量分布指数が2以下のものが好ましい。上記のビニル基含有ポリジメチルシロキサン及びヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンの両者を併用することもできる。
【0068】
なお、硬化性のゴム材料を硬化させるためには、適宜の硬化触媒を用いることができる。このような硬化触媒としては、有機過酸化物、脂肪酸アゾ化合物又はヒドロシリル化触媒等を用いることができる。硬化触媒として用いられる有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ビスジシクロベンゾイル、過酸化ジクミル及び過酸化ジターシャリーブチル等が挙げられる。硬化触媒として用いられる脂肪酸アゾ化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。ヒドロシリル化反応の触媒として使用し得るものの具体例としては、塩化白金酸及びその塩、白金−不飽和基含有シロキサンコンプレックス、ビニルシロキサンと白金とのコンプレックス、白金と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとのコンプレックス、トリオルガノホスフィン又はホスファイトと白金とのコンプレックス、アセチルアセテート白金キレート、環状ジエンと白金とのコンプレックス等の公知のものが挙げられる。硬化触媒の使用量は、硬化性ゴム材料の種類、硬化触媒の種類、その他の硬化処理条件を考慮して適宜選択されるが、通常、硬化性ゴム材料100質量部に対して3〜15質量部である。
【0069】
硬化性ゴム材料中には、硬化性ゴム材料のチクソトロピー性の向上、粘度調整、熱伝導性複合粒子1の分散安定性の向上及び熱伝導性シートの高強度化等を目的として、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナ等の無機充填材を含有させることができる。このような無機充填材の使用量は、熱伝導性シート10の熱伝導性を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0070】
また、基材8を構成する絶縁性高分子材料として用いられる硬化ゲル組成物としては、例えば付加型シリコーンゴム及びフロロシリコーンゴム等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば信越化学工業(株)製の「X−32−1342」、「X−31−7006」、「KE−1051」、「KE110Gel」、「KE104Gel」及び「FE53」等を用いることができる。
【0071】
更にまた、基材8を構成する絶縁性高分子材料として用いられる熱可塑性エラストマー組成物としては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(各種ナイロン等)、フッ素ポリマー系熱可塑性エラストマー、及び通常のエラストマーに可塑剤を添加したもの等が挙げられる。
【0072】
[熱伝導性シートの製造方法]
次に、本実施形態の熱伝導性シート10の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の熱伝導性シート10は、(1)高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を、熱伝導性粒子4で覆うことにより、熱伝導性複合粒子1を得る工程と、(2)熱伝導性複合粒子1と熱伝導性シート10の基材8を構成するシート材料との成型材料を、型に流し込み、前記混合物中において熱伝導性複合粒子1を配向させる工程と、(3)熱伝導性複合粒子1を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シート10を得る工程と、によって製造することができる。
以下、個々の製造工程についてより具体的に説明する。
【0073】
(A)第一工程
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を、熱伝導性粒子4で覆うことにより、熱伝導性複合粒子1を得る。この第一工程の詳細は、上記において熱伝導性複合粒子1の製造方法として説明したとおりである。
【0074】
(B)第二工程
熱伝導性複合粒子1と熱伝導性シート10の基材8を構成するシート材料との成型材料を、型に注入し、磁場を印加して、前記成型材料中において熱伝導性複合粒子1を配向させる。熱伝導性複合粒子1と混合するシート材料は、上述した硬化ゴム、硬化ゲル若しくは熱可塑性エラストマー又はこれらを含む組成物等の絶縁性高分子材料が成型される前の状態の材料である。
【0075】
したがって、シート材料としては、例えば、硬化ゴム、硬化ゲル又は熱可塑性エラストマーを構成するモノマー又はオリゴマーの単体又は混合物を含む組成物(必要に応じて硬化触媒等を含む。)や、硬化ゴム、硬化ゲル又は熱可塑性エラストマーの溶融物又は溶液又は分散液を用いることができる。溶液の場合は、前記絶縁性高分子材料をアルコール等の各種有機溶媒と混合して溶解させればよい。
【0076】
上記のような成型材料は、例えば、ブレンダー、ミキサー、振動撹拌機、ロール、押出し機などの混合装置や混練装置等を用いて、熱伝導性複合粒子1と熱伝導性シート10のシート材料8とを常法によって混合・攪拌することにより得られる。なお、成型材料中、シート材料は溶解等していてもよいが、上記熱伝導性複合粒子は分散している。
【0077】
また、上記成型材料に磁場を印加しながらこれを成型して熱伝導性シート10を得る場合、まず、型(キャビティ)に上記成型材料を流し込む。この型としては、例えば、耐候性を有する樹脂製容器(例えば、シリコーン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができ、樹脂種類に応じて離型処理をしておく方が望ましい。)、非磁性金属製容器(例えばアルミニウム、非磁性ステンレス鋼(SUS305)、チタン、黄銅等)等を用いることができる。
【0078】
ついで、上記成型材料に含まれる熱伝導性複合粒子1を所定の方向に配向させる。配向方法としては、磁場又は電場を用いる方法や、流動場や剪断場を用いる方法等が挙げられる。本実施形態の熱伝導性複合粒子1は異方性磁化率を有し均一に配向し易いため、磁場又は電場を用いる配向方法を採用することが好ましい。この場合、磁場発生装置として、具体的には、永久磁石や電磁石、超伝導磁石等を用いることができる。
【0079】
(C)第3工程
熱伝導性複合粒子1を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シート10を得る。この工程は、いわゆる成型工程であり、熱伝導性複合粒子1を所定の方向に配向させたまま、上記成型材料を固化する。これにより熱伝導性シート10が得られる。上記成型材料の固化は、基材8の種類に応じて架橋反応や冷却固化等により行われる。必要に応じて自然乾燥又は加熱乾燥してもよい。
【0080】
熱伝導性シート10は、上記成型材料を最終形状と同形状のキャビティを有する型に流し込み、型成形することにより、一枚ずつ形成することができる。これとは別の方法として、ブロック状の成形体を成型し、これをスライスすることにより、一つの成型体から複数の熱伝導性シート10を形成してもよい(露出工程)。
【0081】
また、必要に応じて、得られた熱伝導性シート10の表面を研磨してもよい(研磨工程)。研磨工程では、研磨紙や布やヤスリなどを用いて、熱伝導性シート10の表面から露出した熱伝導性複合粒子1の端面を研磨する。これにより熱伝導性複合粒子1の端面を平坦に潰して、熱伝導性シート10の表面をより平滑にすることができる。
【0082】
かかる熱伝導性シート10の、形状、寸法、硬度、絶縁性、熱伝導度及び熱伝導性複合粒子1の含有量等は、所望する用途や使用条件等に応じて適宜選択すればよい。また、上記熱伝導性シート10は、従来公知の方法で製造することができる。
【0083】
以上、本発明の代表的な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。ここで示された実施形態は本発明の一例に過ぎず、特許請求の範囲の技術的思想及び教示の範囲で種々の設計変更が可能であり、したがって他の実施形態も種々存在し、それらは本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の熱伝導性複合粒子について更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
≪実施例1≫
マトリクス樹脂であるスチレン−ブチルメタクリレート共重合体100質量部と磁性体であるFe3O4(平均粒径0.5μm)120質量部とを二軸混練押出機にて溶融混練した。その後、混練物を冷却し、カッターミルにて粗粉砕した後、ジェットミルにて微粉砕し、分級して、平均粒径7.9μmの磁性樹脂粒子を作製した。当該磁性樹脂粒子の表面を、(株)奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステムを用いた高速気流中衝撃法にて、住友化学(株)製のAKP3000(酸化アルミニウム(アルミナ)、比重3.97g/cm3、粒径:0.5μm)からなる熱伝導性粒子で被覆し、実施例1の熱伝導性複合粒子1を作製した。
【0086】
このとき、熱伝導性粒子の充填量は20.12gとし、磁性樹脂粒子の充填量は29.88gとした。また、上記ハイブリダイゼーションシステムを用いた被覆工程は、オーダーミクスチャー(粒子径差が大きく、粒子間に強い相互作用が働く場合には、微粒子が粗粒子表面に規則正しく配列した混合物が得られ、このような混合物を理想混合状態にあるオーダードミクスチャーという。)の形成条件:OMダイザー1000rpm×1分間と、ハイブリダイザー条件:15000rpm×5分間の条件で実施した。
【0087】
≪実施例2≫
熱伝導性粒子として(株)トクヤマ製の高純度窒化アルミニウム粉末SH−1(チッ化アルミニウム、比重3.255g/cm3、粒径:1.1μm、一次粒子径:約0.6μm)を用い、熱伝導性粒子及び磁性樹脂粒子の充填量がそれぞれ20.17g及び29.83gであった以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱伝導性複合粒子2を作製した。
【0088】
≪実施例3≫
熱伝導性粒子としてSUPERIOR GRAPHITE社製の8S059AD20(炭化ケイ素、比重3.22g/cm3、平均粒径:約0.6μm)を用い、熱伝導性粒子及び磁性樹脂粒子の充填量がそれぞれ20.02g及び29.98gであった以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱伝導性複合粒子3を作製した。
【0089】
≪実施例4≫
熱伝導性粒子として水島合金鉄(株)製のFS−1(チッ化ホウ素、比重2.2g/cm3、平均粒子径:0.3μm)を用い、熱伝導性粒子及び磁性樹脂粒子の充填量がそれぞれ13.51g及び16.49gであった以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱伝導性複合粒子4を作製した。
【0090】
[評価試験]
実施例1〜実施例4の熱伝導性複合粒子の表面のSEM写真を、(株)日立ハイテクノロジーズ製のS−4800を用いて撮影し、得られたSEM写真を用いてこれら熱伝導性複合粒子の表面における熱伝導性粒子による被覆の状態を評価した。SEM写真を図2〜図5に示した。また、図6に、参考のために磁性樹脂粒子(磁性トナー)のみのSEM写真を示した。これらから、実施例1〜実施例4の熱伝導性複合粒子では、表面に熱伝導性粒子により被覆層が形成されていることが確認された。
【0091】
≪実施例5≫
実施例3で作製した熱伝導性複合粒子3を用いて熱伝導性シートを作製した。まず、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、ナイロン:熱伝導性複合粒子3の体積比が40:60となるように、熱伝導性複合粒子3を添加、分散させて成型材料を得た。この成型材料は、(株)シンキー製の自転・公転ミキサー「泡とり練太郎ARE−250」で、2000rpm及び2分間の条件で分散させた。
【0092】
その後、上記成型材料を、離型処理を施したアルミニウム製の非磁性金属性容器に注型し、永久磁石で当該容器を挟んで60mTの磁場を印加し、成型材料内の熱伝導性複合粒子3を配向させた。そして、磁場を印加して熱伝導性複合粒子3を配向させたまま上記成型材料を自然乾燥し、メタノールを完全に揮発させて、本発明の熱伝導性シート1を作製した。
【0093】
≪実施例6≫
実施例4で作製した熱伝導性複合粒子4を用いた以外は、実施例5と同様にして、本発明の熱伝導性シート2を作製した。
【0094】
≪比較例1≫
磁場を印加しなかった以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート1を作製した。
【0095】
≪比較例2≫
磁場を印加しなかった以外は、実施例6と同様にして、比較熱伝導性シート2を作製した。
【0096】
≪比較例3≫
まず、熱伝導性粒子であるSUPERIORGRAPHITE社製の8S059AD20(炭化ケイ素、比重3.22g/cm3、平均粒径:約0.6μm)20.02gと、実施例1で用いた磁性樹脂粒子29.98gと、を混合して混合物を得た。次に、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、ナイロン:上記混合物の体積比が40:60となるように、上記混合物を添加、分散させて成型材料を得た。そして、磁場を印加しない以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート3を作製した。
【0097】
≪比較例4≫
まず、熱伝導性粒子である水島合金鉄(株)製のFS−1(チッ化ホウ素、比重2.2g/cm3、平均粒子径:0.3μm)13.51gと、実施例1で用いた磁性樹脂粒子16.49gと、を混合して得た混合物を用いた以外は、比較例3と同様にして、比較熱伝導性シート4を作製した。
【0098】
≪比較例5≫
まず、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、実施例5で用いた熱伝導性複合粒子3に含まれる熱伝導性粒子(炭化ケイ素)と同量の熱伝導性粒子を添加、分散させて成型材料を得た。そして、磁場を印加しない以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート5を作製した。
【0099】
≪比較例6≫
まず、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、実施例6で用いた熱伝導性複合粒子4に含まれる熱伝導性粒子(チッ化ホウ素)と同量の熱伝導性粒子を添加、分散させて成型材料を得た。そして、磁場を印加しない以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート6を作製した。
【0100】
[評価試験]
(1)目視観察
実施例5及び実施例6並びに比較例1〜比較例6で得た熱伝導性シートについて、目視により色を観察した。その結果を表1に示した。
【0101】
(2)断面観察
実施例5及び実施例6並びに比較例1〜比較例6で得た熱伝導性シートについて、断面をSEMにより観察した。その結果を図7〜図10に示した。図7に示すように、実施例5及び実施例6では、磁性樹脂粒子2と熱伝導性粒子4とで構成される熱伝導性複合粒子1が、基材8中において一定の方向に配向している熱伝導性シート10が観察された。一方、比較例1及び比較例2では、図8に示すように熱伝導性複合粒子1が配向しておらず、比較例3及び比較例4では、図9に示すように磁性樹脂粒子2と熱伝導性粒子4とがランダムに分散しており、比較例5及び比較例6では、図10に示すように熱伝導性粒子4のみがランダムに分散していた。
【0102】
(3)熱伝導率
実施例5及び実施例6並びに比較例1〜比較例6で得た熱伝導性シートについて、(株)アイフェイズ社製のアイフェイズモバイル1uを用い、温度波分析法により、熱伝導率を測定した。結果を表1及び図11に示した。なお、Braggemanの式により導いた熱伝導率の理論値と、各熱伝導性シート中の総粒子体積%及び熱伝導性粒子の実質体積%も併記した。
【0103】
【表1】
【0104】
表1及び図11から、本発明の熱伝導性シート1及び2では、熱伝導性複合粒子を配向させることにより、熱伝導性粒子がSiCの場合もBNの場合も、熱伝導率が飛躍的に上昇していることがわかる。
【0105】
本発明により得られる熱伝導性複合粒子は、IC、パワー部品及び高輝度LED等から発生する熱を効率よく逃がすための熱伝導性(伝熱)シート、熱伝導性ゲル、熱伝導グリース及び熱伝導接着剤において、熱伝導性フィラーとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1・・・熱伝導性複合粒子、
2・・・磁性樹脂粒子(磁性トナー)、
2a・・・磁性体、
2b・・・マトリクス樹脂、
4・・・熱伝導性粒子
8・・・基材、
10・・・熱伝導性シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性複合粒子、熱伝導性シート及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、IC、パワー部品及び高輝度LED等から発生する熱を効率よく逃がすための熱伝導性(伝熱)シート、熱伝導性ゲル、熱伝導グリース及び熱伝導接着剤には、熱伝導性フィラーが添加されている。
【0003】
かかる熱伝導性フィラーについて、例えば特許文献1においては、高い効率で熱を伝導することができ、しかも絶縁性を有する熱伝導性シートを提供すること、及びこのような熱伝導性シートを容易に製造することができる方法を提供することを意図して、以下のような技術が提案されている(特許文献1、要約等)。
【0004】
即ち、特許文献1には、柔軟性を有する絶縁性高分子材料よりなる両面が平坦なシート基体中に、磁性を示す絶縁性伝熱粒子が当該シート基体の厚み方向に配向された状態で含有されてなることを特徴とする熱伝導性シートと、その製造方法が提案されている。
【0005】
また、例えば特許文献2においては、発熱体または受熱体を十分に密着させることができ、しかも、高い効率で熱を伝導することができる熱伝導板およびその製造方法を提供することを意図して、以下のような技術が提案されている(特許文献2、要約等)。
【0006】
即ち、特許文献2には、金属製の基板と、この基板における少なくとも一面に一体的に設けられた熱伝導層とを具えてなり、前記熱伝導層は、柔軟性を有する高分子材料中に、磁性を示す熱伝導性粒子および非磁性の熱伝導性粒子が含有されてなり、当該磁性を示す熱伝導性粒子が、当該熱伝導層の厚み方向に並ぶよう配向された状態で含有されていることを特徴とする熱伝導板が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−274302号公報
【特許文献2】特開2002−299530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、金属粒子からなる磁性粒子を芯粒子として用いることを前提として、金属粒子からなる磁性粒子とこれを被覆する高熱伝導性材料とで構成された絶縁性伝熱粒子が用いられており、スパッタリングやCVD法によって、上記芯粒子(金属粒子)を高熱伝導性材料で直接被覆することが提案されており(特許文献1、段落番号[0032]、[0033]、実施例等)、被覆工程が比較的煩雑で高コストになるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2に記載の技術においては、ニッケル、鉄又はコバルト等の金属やMn−Znフェライト又はi−Znフェライト等の金属酸化物からなる芯粒子と、これを被覆する熱伝導性粒子と、で構成された磁性を示す熱伝導粒子が用いられており、化学メッキ法、スパッタリング法又はCVD(化学蒸着法)によって、上記芯粒子(金属粒子又は金属酸化物粒子)を熱伝導性粒子で直接被覆することが提案されており(特許文献2、段落番号[0029]〜[0031]、実施例等)、被覆工程が比較的煩雑で高コストになるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、煩雑で高コストとなる被覆工程を用いなくても、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する新規な構造の熱伝導性複合粒子を提供すること、及び、当該新規な構造の熱伝導性複合粒子及びこれを含む熱伝導性シートの製造方法の簡易で低コストな製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のように、いわゆる熱伝導性粒子としては、従来、金属粒子等とこれを直接覆う熱伝導性材料とで構成された熱伝導性粒子が用いられ、その製造方法としては、比較的煩雑で高コストなスパッタリング法又はCVD(化学蒸着法)を用いるのが、当業者にとっての一般的な認識であった。
【0012】
これに対し、本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、上述の当業者の一般的な認識があったにもかかわらず、芯粒子として、磁性粒子からなる金属粒子等ではなく、磁性体を含有するマトリクス樹脂を用いれば、比較的簡易で低コストな方法で従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する熱伝導性(複合)粒子が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0013】
即ち、本発明は、
磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子と、
前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子と、を具備すること、
を特徴とする熱伝導性複合粒子を提供する。
【0014】
上述のように、本発明の熱伝導性複合粒子は、磁性体を含有するマトリクス樹脂と、前記マトリクス樹脂を覆う熱伝導性粒子と、で構成された新規な構造を有している。このような磁性体を含有するマトリクス樹脂を芯粒子として用いれば、比較的煩雑で高コストなスパッタリング法又はCVD(化学蒸着法)ではなく、比較的簡易で低コストな高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法によって、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する熱伝導性(複合)粒子を得ることができることを、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果見出した。
【0015】
以上のように、本発明によれば、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現する熱伝導性複合粒子を提供することができる。
【0016】
したがって、本発明は、
磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子と、前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子と、を具備する熱伝導性複合粒子の製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆う工程を含むこと、
を特徴とする熱伝導性複合粒子の製造方法をも提供する。
【0017】
このような製造方法により、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現することができる本発明の熱伝導性複合粒子を確実に得ることができる。
【0018】
また、本発明は、
上記の本発明の熱伝導性複合粒子を含み、
前記熱伝導性シート内において前記熱伝導性複合粒子が配列していること、
を特徴とする熱伝導性シートにも関する。
【0019】
本発明の熱伝導性シートは、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現する熱伝導性複合粒子を用いているため、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく満たすものである。
【0020】
また、本発明の熱伝導性シートでは、熱伝導性複合粒子の量が少なくても、熱伝導性複合粒子が磁場により配向して熱伝導パスが効率よく形成されることにより高い熱伝導率が得られ、また、熱伝導性複合粒子の量を減らすことによってシート材料の性質を損なわず柔軟性を有する熱伝導性シートを実現することができる。
【0021】
また、本発明は、上記本発明の熱伝導性シートの製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆うことにより、熱伝導性複合粒子を得る工程と、
前記熱伝導性複合粒子と前記熱伝導性シートのシート材料との成型材料において、前記熱伝導性複合粒子を配向させる工程と、
前記熱伝導性複合粒子を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シートを得る工程と、
を含むこと、
を特徴とする熱伝導性シートの製造方法にも関する。
【0022】
このような製造方法により、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく実現する熱伝導性複合粒子を用いているため、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能と、製造における簡易さ及び低コストと、を同時にバランスよく満たす熱伝導性シートをより確実に得ることができる。
【0023】
また、熱伝導性複合粒子の量が少なくても、熱伝導性複合粒子が磁場により配向して熱伝導パスが効率よく形成されることにより高い熱伝導率が得られ、また、熱伝導性複合粒子の量を減らすことによってシート材料の性質を損なわず柔軟性を有する熱伝導性シートをより確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、従来と同等以上の熱伝導性及び分散性等の性能を有する新規な熱伝導性複合粒子及び熱伝導性シート並びに熱伝導性複合粒子及び熱伝導性シートの簡易で低コストな製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の熱伝導性複合粒子の一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。
【図2】実施例1において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(アルミナ)。
【図3】実施例2において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(チッ化アルミニウム)。
【図4】実施例3において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(炭化ケイ素)。
【図5】実施例4において作製した熱伝導性複合粒子のSEM写真である(チッ化ホウ素)。
【図6】参考例としての磁性樹脂粒子(磁性トナー)のSEM写真である。
【図7】実施例5及び実施例6で作製した本発明の熱伝導性シートの一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。
【図8】比較例1及び比較例2で作製した熱伝導性シートの断面を概念的に示す概略縦断面図である。
【図9】比較例3及び比較例4で作製した熱伝導性シートの断面を概念的に示す概略縦断面図である。
【図10】比較例5及び比較例6で作製した熱伝導性シートの断面を概念的に示す概略縦断面図である。
【図11】本発明の実施例及び比較例において測定した熱伝導率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の熱伝導性複合粒子、熱伝導性シート及びこれらの製造方法の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面においては、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0027】
[熱伝導性複合粒子]
図1は本発明の熱伝導性複合粒子の一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。図1に示す本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bとで構成された磁性樹脂粒子2と、磁性樹脂粒子2を覆う熱伝導性粒子4と、を含む構成を有している。
【0028】
図1に示す本実施形態の熱伝導性複合粒子1においては、熱伝導性粒子4が磁性樹脂粒子2の表面全体を覆っているが、熱伝導性粒子4は磁性樹脂粒子2の表面に部分的に付着していてもよく(即ち、磁性樹脂粒子2の少なくとも一部を被覆していてもよく)、必ずしも磁性樹脂粒子2の表面全体を被覆していなくてもよい。したがって、熱伝導性粒子4は、磁性樹脂粒子2の表面において、連続する層又は不連続な層を形成していてもよい。
【0029】
なお、図1においては、本実施形態の熱伝導性複合粒子1を概念的に示したものであるため、各構成部材が綺麗な形状を有しているが、実際に得られる本発明の熱伝導性複合粒子では必ずしもそのような綺麗な形状を有しているわけではない(後述する図2〜図5に示すSEM写真参照)。
【0030】
本実施形態の熱伝導性複合粒子1を構成する磁性樹脂粒子2は、マトリクス樹脂2b中に磁性体2aが含まれて構成されており、例えば従来から電子写真装置に用いられている磁性トナーを磁性樹脂粒子2として使用することができる。
【0031】
(1)磁性樹脂粒子
この磁性樹脂粒子2は、磁性体2a及びバインダーとなるマトリクス樹脂2bを含み、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他にもカーボンブラック等の導電助材、ワックス等の分散材、シリカ等の外添剤等の任意成分を含んでいてもよい。
【0032】
磁性体2aは、従来の磁性トナーに用いられているいわゆる磁性粉であればよく、これを構成する材料としては、例えばニッケル、鉄、コバルト、ZrFe2、FeBe2、FeRh、マグネタイト(Fe3O4)、式:MO・Fe2O3(式中、MはMn、Fe、Ni、Cu、Mg又はZn等を含む。)で表されるフェライト及びこれらの混合物であるMn−Znフェライト並びにNi−Znフェライト、FeMn2O4等のマンガナイト、並びに式:MO・Co2O3(式中、MはFe又はNi等を含む。)で表されるコバルタイト、Fe(CO)5で表される鉄ペンタカルボニル等を用いることができる。
【0033】
磁性体2aの形状や寸法は、磁性体2aがマトリクス樹脂2bに覆われて磁性樹脂粒子2を構成できる範囲であれば特に制限されないが、磁性樹脂粒子2中での分散性を考慮すると、略球状(略粒子状)で平均粒子径が1〜10μm程度であることが好ましい。なお、ここでいう「平均粒子径」とは、粒子をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量となる径のことを言い、一般的にD50と表現される径である。例えば、(株)堀場製作所製の動的光散乱式粒径分布測定装置LB−550によって測定することができる(以下、同様。)。
【0034】
なかでも、マグネタイト(Fe3O4)としては、例えばチタン工業(株)製のBL−10、BL−50、BL−100、BL−200、BL−SP、BL−250及びRB−BL、関東電化工業(株)製のKBC−100SS及びKBC−100SNW等が挙げられる。その他、カルボニル鉄粉としては、BASF社製のハードグレードである、EM、ES、ES−I、ER、ER−I、EW、EW−I、HF、HQ、HS、OF、OM、ON、OS、ソフトグレードである、CC、CD、CF、CL、CM、CN、CS、SM、SQ等が挙げられる。
【0035】
磁性樹脂粒子2中の磁性体2aの含有量は、例えば磁性樹脂粒子2の電気抵抗を所望のレベルにコントロールすることや磁性樹脂粒子2中での磁性体2aの分散性等を考慮して、適宜選択すればよい。
【0036】
次に、マトリクス樹脂2aを構成する樹脂としては、従来の磁性トナーに用いられている種々の樹脂を用いることができ、例えばスチレン−メチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、スチレン−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体及びスチレン−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート共重合体等のスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のスチレン−アクリル系樹脂、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、並びにポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0037】
磁性樹脂粒子2のマトリクス樹脂2bを構成する樹脂の分子量は、本発明の効果が損なわれない限りは特に制限されないが、磁性体2a等との混合及び分散のし易さを考慮して適宜選択すればよい。また、磁性樹脂粒子2中のマトリクス樹脂2bの含有量は、特に制限はないが、磁性体2b及び必要に応じて含まれる任意の材料を確実に保持して磁性樹脂粒子2を形成し得る範囲であればよい。
【0038】
なお、任意の材料である前記ワックスとしては、例えばポリプロピレン系ワックス(例えば三洋化成工業(株)製のビスコール550P)等が挙げられ、その含有量も本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常1〜5質量%程度である。
【0039】
このような磁性樹脂粒子2は、従来公知の種々の方法で製造することができ、例えば磁性体2a、マトリクス樹脂2bを構成する樹脂、及びその他の任意成分を、混練機又は押出機等を用いて加熱溶融混練し、冷却固化させた後、得られた塊状物を粉砕分級機にて粉砕及び分級する方法等を採用することができる。
【0040】
かかる磁性樹脂粒子2の粒径は、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない広い範囲で適宜選択すればよい。
【0041】
また、磁性樹脂粒子2の形状は、特に限定されるものではないが、熱伝導性粒子4を付着乃至は担持させ、また、最終的に得られる本実施形態の熱伝導性複合粒子1の使用し易さ等を考慮すると、略球状(略粒子状)であればよく、また、凝集して2次粒子を形成している塊状であってもよい。
【0042】
このような条件を満足する磁性樹脂粒子2を用いれば、最終的に得られる本実施形態の熱伝導性複合粒子1において良好な伝熱経路が形成され、所望する熱伝導性を得ることができる。
【0043】
(2)熱伝導性粒子
本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、図1に示すように、上記のような磁性樹脂粒子2の表面を熱伝導性粒子4が覆うことにより構成されている。
【0044】
この熱伝導性粒子4を構成する材料は、本実施形態の熱伝導性複合粒子1に熱伝導性を付与し得るものであれば導電性材料でも絶縁性材料でもよく、例えば、銀、アルミウニム、銅、アルミニウム合金、銅合金及びステンレス(SUS)等の金属、チッ化ホウ素(ボロンナイトライド)、チッ化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、チッ化アルミニウム及び炭化ケイ素等のセラミックス、並びにカーボンブラック及びダイヤモンド等の炭素材料等を挙げることができる。
【0045】
熱伝導性粒子4の形状や寸法は、熱伝導性粒子4が上記の磁性樹脂粒子4の表面を被覆できる範囲であればよいが、最終的に得られる熱伝導性複合粒子1の熱伝導性の向上という観点からは、磁性樹脂粒子2の表面をできるだけ緻密に被覆できる形状や寸法であるのが好ましい。
【0046】
したがって、熱伝導性粒子4は、略粒状で、少なくとも磁性樹脂粒子4よりも小さく、例えば平均粒子径が0.01〜5μm程度であることが好ましい。
【0047】
なかでも、酸化アルミニウム(アルミナ)としては、例えば住友化学(株)製のAKP3000(比重3.97g/cm3、粒径:0.5μm)、チッ化アルミニウムとしては、例えば(株)トクヤマ製の高純度窒化アルミニウム粉末SH−1(比重3.255g/cm3、粒径:1.1μm、一次粒子径:約0.6μm)、炭化ケイ素としては、例えばSUPERIORGRAPHITE社製の8S059AD20(比重3.22g/cm3、粒径:約0.6μm)、チッ化ホウ素(ボロンナイトライド)としては、例えば水島合金鉄(株)製のFS−1(比重2.2g/cm3、平均粒子径:0.3μm)等が、それぞれ挙げられる。
【0048】
熱伝導性複合粒子1において、磁性樹脂粒子2に対する熱伝導性粒子4の被覆量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択可能であるが、良好な熱伝導性が得られるという観点から、磁性樹脂粒子2表面における熱伝導性粒子4の被覆率(磁性樹脂粒子2の表面積に対して熱伝導性粒子4が被覆する部分の面積の割合)は、約60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上であればよい。
【0049】
また、熱伝導性複合粒子1において、磁性樹脂粒子2に対する熱伝導性粒子4の含有量も、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択可能であるが、磁性樹脂粒子2に対する熱伝導性粒子4の含有量は、10〜200質量%程度であり、熱伝導性粒子の比重、粒子径により適宜選択される。
【0050】
[熱伝導性複合粒子の製造方法]
次に、本実施形態の熱伝導性複合粒子1の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、(1)磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を調製乃至は用意する工程と、(2)高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性樹脂粒子2を熱伝導性粒子4で覆う工程と、によって製造することができる。以下、個々の製造工程についてより具体的に説明する。
【0051】
(a)第一工程
磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を調製乃至は用意する。この磁性樹脂粒子2は、従来公知の磁性トナーの製造方法に従って製造することができ、また、市販の磁性トナーを磁性樹脂粒子2として用いることができる。
【0052】
製造する場合には、例えば、所定量の、磁性体2a及びマトリクス樹脂2bと、更には例えば電荷制御剤、外添剤等を混合させ溶融混練し、得られた塊状体を乾燥し、ジェットミル等の機械的粉砕手段にて粉砕した後、所定の粒度の粒子に分級して製造するのが通常である。
【0053】
(2)第二工程
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性樹脂粒子2を熱伝導性粒子4で覆う(被覆する)。この工程における各被覆方法の条件は、磁性樹脂粒子2を熱伝導性粒子4で覆う(被覆する)することができる範囲で適宜選択することができる。
【0054】
例えば高速気流中衝撃法は、(株)奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステムを用いて実施することができる。
【0055】
[熱伝導性シート]
本実施形態の熱伝導性複合粒子1は、代表的には、熱伝導性シートに好適に利用することができる。この熱伝導性シートは、絶縁性高分子材料で構成されたシート状乃至は板状の基材と、当該基材に含有された熱伝導性複合粒子1と、を含むものである。
【0056】
ここで、図7は、上記本実施形態の熱伝導性複合粒子1を含む本発明の熱伝導性シートの一実施形態の構造を概念的に示す概略断面図である。図7に示すように、本実施形態の熱伝導性シート10は、母材(マトリクス)である基材8と熱伝導性複合粒子1とを含んでおり、基材8内において熱伝導性複合粒子1が磁場によって配向(配列)している。
【0057】
しがたって、熱伝導性複合粒子1は熱伝導性シート10内において、例えば面方向及び/又は厚み方向において適宜の方向に配列し、全体に略均一に分散している。熱伝導性複合粒子1の量、間隔及び配列方法等については、熱伝導性シート10や所望するそのスペック等、具体的用途や使用条件等に応じて適宜設計することが可能である。
【0058】
基材8は、柔軟性を有する絶縁性高分子材料等からなるシート材料により形成され、このような絶縁性高分子材料としては、例えば、硬化ゴム、硬化ゲル若しくは熱可塑性エラストマー又はこれらを含む組成物を用いることができる。
【0059】
硬化ゴム組成物を得るために用いることのできる硬化性のゴム材料としては、種々のものを用いることができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム等の共役ジエン系ゴム及びこれらの水素添加物、スチレン−ブタジエン−ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴム及びこれらの水素添加物、クロロプレン、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、並びにエチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0060】
なかでも、熱伝導性シート10に耐熱性を要求する場合には、共役ジエン系ゴム以外のものを用いることが好ましく、特に、成形加工性および電気特性の観点から、シリコーンゴムを用いることが好ましい。
【0061】
シリコーンゴムとしては、例えば液状シリコーンゴムを架橋又は縮合したものを用いることができる。液状シリコーンゴムは、その粘度が歪速度10−1secで105ポアズ以下のものが好ましく、縮合型のもの、付加型のもの、ビニル基やヒドロキシル基を含有するものなどのいずれであってもよい。具体的には、ジメチルシリコーン生ゴム、メチルビニルシリコーン生ゴム及びメチルフェニルビニルシリコーン生ゴム等を挙げることができる。
【0062】
これらのうちのビニル基を含有する液状シリコーンゴム(ビニル基含有ポリジメチルシロキサン)は、通常、ジメチルジクロロシラン又はジメチルジアルコキシシランを、ジメチルビニルクロロシラン又はジメチルビニルアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引続き溶解−沈殿の繰り返しによる分別を行うことにより得られる。
【0063】
また、ビニル基を両末端に含有する液状シリコーンゴムは、オクタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、重合停止剤として例えばジメチルジビニルシロキサンを用い、その他の反応条件(例えば、環状シロキサンの量及び重合停止剤の量)を適宜選択することにより得られる。ここで、アニオン重合の触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化n−ブチルホスホニウム等のアルカリ又はこれらのシラノレート溶液などを用いることができ、反応温度は、例えば80〜130℃である。
【0064】
このようなビニル基含有ポリジメチルシロキサンは、その分子量Mw(標準ポリスチレン換算質量平均分子量をいう。以下同じ。)が例えば10000〜40000のものであればよい。また、得られるシート基体の耐熱性の観点からは、分子量分布指数(標準ポリスチレン換算質量平均分子量Mwと標準ポリスチレン換算数平均分子量Mnとの比Mw/Mnの値をいう。以下同じ。)が2以下のものであればよい。
【0065】
一方、ヒドロキシル基を含有する液状シリコーンゴム(ヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン)は、通常、ジメチルジクロロシラン又はジメチルジアルコキシシランを、ジメチルヒドロクロロシラン又はジメチルヒドロアルコキシシランの存在下において、加水分解および縮合反応させ、例えば引続き溶解−沈殿の繰り返しによる分別を行うことにより得られる。
【0066】
また、環状シロキサンを触媒の存在下においてアニオン重合し、重合停止剤として、例えばジメチルヒドロクロロシラン、メチルジヒドロクロロシラン又はジメチルヒドロアルコキシシラン等を用い、その他の反応条件(例えば、環状シロキサンの量及び重合停止剤の量)を適宜選択することによっても得られる。ここで、アニオン重合の触媒としては、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化n−ブチルホスホニウム等のアルカリ又はこれらのシラノレート溶液等を用いることができ、反応温度は、例えば80〜130℃である。
【0067】
このようなヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンとしては、その分子量Mwが10000〜40000のものを用いることができる。また、得られるシート基体の耐熱性の観点からは、分子量分布指数が2以下のものが好ましい。上記のビニル基含有ポリジメチルシロキサン及びヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサンの両者を併用することもできる。
【0068】
なお、硬化性のゴム材料を硬化させるためには、適宜の硬化触媒を用いることができる。このような硬化触媒としては、有機過酸化物、脂肪酸アゾ化合物又はヒドロシリル化触媒等を用いることができる。硬化触媒として用いられる有機過酸化物の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ビスジシクロベンゾイル、過酸化ジクミル及び過酸化ジターシャリーブチル等が挙げられる。硬化触媒として用いられる脂肪酸アゾ化合物の具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。ヒドロシリル化反応の触媒として使用し得るものの具体例としては、塩化白金酸及びその塩、白金−不飽和基含有シロキサンコンプレックス、ビニルシロキサンと白金とのコンプレックス、白金と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとのコンプレックス、トリオルガノホスフィン又はホスファイトと白金とのコンプレックス、アセチルアセテート白金キレート、環状ジエンと白金とのコンプレックス等の公知のものが挙げられる。硬化触媒の使用量は、硬化性ゴム材料の種類、硬化触媒の種類、その他の硬化処理条件を考慮して適宜選択されるが、通常、硬化性ゴム材料100質量部に対して3〜15質量部である。
【0069】
硬化性ゴム材料中には、硬化性ゴム材料のチクソトロピー性の向上、粘度調整、熱伝導性複合粒子1の分散安定性の向上及び熱伝導性シートの高強度化等を目的として、必要に応じて、通常のシリカ粉、コロイダルシリカ、エアロゲルシリカ、アルミナ等の無機充填材を含有させることができる。このような無機充填材の使用量は、熱伝導性シート10の熱伝導性を損なわない範囲で適宜選択すればよい。
【0070】
また、基材8を構成する絶縁性高分子材料として用いられる硬化ゲル組成物としては、例えば付加型シリコーンゴム及びフロロシリコーンゴム等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば信越化学工業(株)製の「X−32−1342」、「X−31−7006」、「KE−1051」、「KE110Gel」、「KE104Gel」及び「FE53」等を用いることができる。
【0071】
更にまた、基材8を構成する絶縁性高分子材料として用いられる熱可塑性エラストマー組成物としては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(各種ナイロン等)、フッ素ポリマー系熱可塑性エラストマー、及び通常のエラストマーに可塑剤を添加したもの等が挙げられる。
【0072】
[熱伝導性シートの製造方法]
次に、本実施形態の熱伝導性シート10の製造方法の一例について説明する。
本実施形態の熱伝導性シート10は、(1)高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を、熱伝導性粒子4で覆うことにより、熱伝導性複合粒子1を得る工程と、(2)熱伝導性複合粒子1と熱伝導性シート10の基材8を構成するシート材料との成型材料を、型に流し込み、前記混合物中において熱伝導性複合粒子1を配向させる工程と、(3)熱伝導性複合粒子1を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シート10を得る工程と、によって製造することができる。
以下、個々の製造工程についてより具体的に説明する。
【0073】
(A)第一工程
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体2a及び磁性体2aを含有するマトリクス樹脂2bを含む磁性樹脂粒子2を、熱伝導性粒子4で覆うことにより、熱伝導性複合粒子1を得る。この第一工程の詳細は、上記において熱伝導性複合粒子1の製造方法として説明したとおりである。
【0074】
(B)第二工程
熱伝導性複合粒子1と熱伝導性シート10の基材8を構成するシート材料との成型材料を、型に注入し、磁場を印加して、前記成型材料中において熱伝導性複合粒子1を配向させる。熱伝導性複合粒子1と混合するシート材料は、上述した硬化ゴム、硬化ゲル若しくは熱可塑性エラストマー又はこれらを含む組成物等の絶縁性高分子材料が成型される前の状態の材料である。
【0075】
したがって、シート材料としては、例えば、硬化ゴム、硬化ゲル又は熱可塑性エラストマーを構成するモノマー又はオリゴマーの単体又は混合物を含む組成物(必要に応じて硬化触媒等を含む。)や、硬化ゴム、硬化ゲル又は熱可塑性エラストマーの溶融物又は溶液又は分散液を用いることができる。溶液の場合は、前記絶縁性高分子材料をアルコール等の各種有機溶媒と混合して溶解させればよい。
【0076】
上記のような成型材料は、例えば、ブレンダー、ミキサー、振動撹拌機、ロール、押出し機などの混合装置や混練装置等を用いて、熱伝導性複合粒子1と熱伝導性シート10のシート材料8とを常法によって混合・攪拌することにより得られる。なお、成型材料中、シート材料は溶解等していてもよいが、上記熱伝導性複合粒子は分散している。
【0077】
また、上記成型材料に磁場を印加しながらこれを成型して熱伝導性シート10を得る場合、まず、型(キャビティ)に上記成型材料を流し込む。この型としては、例えば、耐候性を有する樹脂製容器(例えば、シリコーン処理されたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等を用いることができ、樹脂種類に応じて離型処理をしておく方が望ましい。)、非磁性金属製容器(例えばアルミニウム、非磁性ステンレス鋼(SUS305)、チタン、黄銅等)等を用いることができる。
【0078】
ついで、上記成型材料に含まれる熱伝導性複合粒子1を所定の方向に配向させる。配向方法としては、磁場又は電場を用いる方法や、流動場や剪断場を用いる方法等が挙げられる。本実施形態の熱伝導性複合粒子1は異方性磁化率を有し均一に配向し易いため、磁場又は電場を用いる配向方法を採用することが好ましい。この場合、磁場発生装置として、具体的には、永久磁石や電磁石、超伝導磁石等を用いることができる。
【0079】
(C)第3工程
熱伝導性複合粒子1を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シート10を得る。この工程は、いわゆる成型工程であり、熱伝導性複合粒子1を所定の方向に配向させたまま、上記成型材料を固化する。これにより熱伝導性シート10が得られる。上記成型材料の固化は、基材8の種類に応じて架橋反応や冷却固化等により行われる。必要に応じて自然乾燥又は加熱乾燥してもよい。
【0080】
熱伝導性シート10は、上記成型材料を最終形状と同形状のキャビティを有する型に流し込み、型成形することにより、一枚ずつ形成することができる。これとは別の方法として、ブロック状の成形体を成型し、これをスライスすることにより、一つの成型体から複数の熱伝導性シート10を形成してもよい(露出工程)。
【0081】
また、必要に応じて、得られた熱伝導性シート10の表面を研磨してもよい(研磨工程)。研磨工程では、研磨紙や布やヤスリなどを用いて、熱伝導性シート10の表面から露出した熱伝導性複合粒子1の端面を研磨する。これにより熱伝導性複合粒子1の端面を平坦に潰して、熱伝導性シート10の表面をより平滑にすることができる。
【0082】
かかる熱伝導性シート10の、形状、寸法、硬度、絶縁性、熱伝導度及び熱伝導性複合粒子1の含有量等は、所望する用途や使用条件等に応じて適宜選択すればよい。また、上記熱伝導性シート10は、従来公知の方法で製造することができる。
【0083】
以上、本発明の代表的な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。ここで示された実施形態は本発明の一例に過ぎず、特許請求の範囲の技術的思想及び教示の範囲で種々の設計変更が可能であり、したがって他の実施形態も種々存在し、それらは本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【実施例】
【0084】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の熱伝導性複合粒子について更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
≪実施例1≫
マトリクス樹脂であるスチレン−ブチルメタクリレート共重合体100質量部と磁性体であるFe3O4(平均粒径0.5μm)120質量部とを二軸混練押出機にて溶融混練した。その後、混練物を冷却し、カッターミルにて粗粉砕した後、ジェットミルにて微粉砕し、分級して、平均粒径7.9μmの磁性樹脂粒子を作製した。当該磁性樹脂粒子の表面を、(株)奈良機械製作所製のハイブリタイゼーションシステムを用いた高速気流中衝撃法にて、住友化学(株)製のAKP3000(酸化アルミニウム(アルミナ)、比重3.97g/cm3、粒径:0.5μm)からなる熱伝導性粒子で被覆し、実施例1の熱伝導性複合粒子1を作製した。
【0086】
このとき、熱伝導性粒子の充填量は20.12gとし、磁性樹脂粒子の充填量は29.88gとした。また、上記ハイブリダイゼーションシステムを用いた被覆工程は、オーダーミクスチャー(粒子径差が大きく、粒子間に強い相互作用が働く場合には、微粒子が粗粒子表面に規則正しく配列した混合物が得られ、このような混合物を理想混合状態にあるオーダードミクスチャーという。)の形成条件:OMダイザー1000rpm×1分間と、ハイブリダイザー条件:15000rpm×5分間の条件で実施した。
【0087】
≪実施例2≫
熱伝導性粒子として(株)トクヤマ製の高純度窒化アルミニウム粉末SH−1(チッ化アルミニウム、比重3.255g/cm3、粒径:1.1μm、一次粒子径:約0.6μm)を用い、熱伝導性粒子及び磁性樹脂粒子の充填量がそれぞれ20.17g及び29.83gであった以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱伝導性複合粒子2を作製した。
【0088】
≪実施例3≫
熱伝導性粒子としてSUPERIOR GRAPHITE社製の8S059AD20(炭化ケイ素、比重3.22g/cm3、平均粒径:約0.6μm)を用い、熱伝導性粒子及び磁性樹脂粒子の充填量がそれぞれ20.02g及び29.98gであった以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱伝導性複合粒子3を作製した。
【0089】
≪実施例4≫
熱伝導性粒子として水島合金鉄(株)製のFS−1(チッ化ホウ素、比重2.2g/cm3、平均粒子径:0.3μm)を用い、熱伝導性粒子及び磁性樹脂粒子の充填量がそれぞれ13.51g及び16.49gであった以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱伝導性複合粒子4を作製した。
【0090】
[評価試験]
実施例1〜実施例4の熱伝導性複合粒子の表面のSEM写真を、(株)日立ハイテクノロジーズ製のS−4800を用いて撮影し、得られたSEM写真を用いてこれら熱伝導性複合粒子の表面における熱伝導性粒子による被覆の状態を評価した。SEM写真を図2〜図5に示した。また、図6に、参考のために磁性樹脂粒子(磁性トナー)のみのSEM写真を示した。これらから、実施例1〜実施例4の熱伝導性複合粒子では、表面に熱伝導性粒子により被覆層が形成されていることが確認された。
【0091】
≪実施例5≫
実施例3で作製した熱伝導性複合粒子3を用いて熱伝導性シートを作製した。まず、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、ナイロン:熱伝導性複合粒子3の体積比が40:60となるように、熱伝導性複合粒子3を添加、分散させて成型材料を得た。この成型材料は、(株)シンキー製の自転・公転ミキサー「泡とり練太郎ARE−250」で、2000rpm及び2分間の条件で分散させた。
【0092】
その後、上記成型材料を、離型処理を施したアルミニウム製の非磁性金属性容器に注型し、永久磁石で当該容器を挟んで60mTの磁場を印加し、成型材料内の熱伝導性複合粒子3を配向させた。そして、磁場を印加して熱伝導性複合粒子3を配向させたまま上記成型材料を自然乾燥し、メタノールを完全に揮発させて、本発明の熱伝導性シート1を作製した。
【0093】
≪実施例6≫
実施例4で作製した熱伝導性複合粒子4を用いた以外は、実施例5と同様にして、本発明の熱伝導性シート2を作製した。
【0094】
≪比較例1≫
磁場を印加しなかった以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート1を作製した。
【0095】
≪比較例2≫
磁場を印加しなかった以外は、実施例6と同様にして、比較熱伝導性シート2を作製した。
【0096】
≪比較例3≫
まず、熱伝導性粒子であるSUPERIORGRAPHITE社製の8S059AD20(炭化ケイ素、比重3.22g/cm3、平均粒径:約0.6μm)20.02gと、実施例1で用いた磁性樹脂粒子29.98gと、を混合して混合物を得た。次に、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、ナイロン:上記混合物の体積比が40:60となるように、上記混合物を添加、分散させて成型材料を得た。そして、磁場を印加しない以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート3を作製した。
【0097】
≪比較例4≫
まず、熱伝導性粒子である水島合金鉄(株)製のFS−1(チッ化ホウ素、比重2.2g/cm3、平均粒子径:0.3μm)13.51gと、実施例1で用いた磁性樹脂粒子16.49gと、を混合して得た混合物を用いた以外は、比較例3と同様にして、比較熱伝導性シート4を作製した。
【0098】
≪比較例5≫
まず、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、実施例5で用いた熱伝導性複合粒子3に含まれる熱伝導性粒子(炭化ケイ素)と同量の熱伝導性粒子を添加、分散させて成型材料を得た。そして、磁場を印加しない以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート5を作製した。
【0099】
≪比較例6≫
まず、ナイロン(ナガセケムテックス(株)製のトレジンF−K30)をメタノールに溶解させ、得られた溶液に、実施例6で用いた熱伝導性複合粒子4に含まれる熱伝導性粒子(チッ化ホウ素)と同量の熱伝導性粒子を添加、分散させて成型材料を得た。そして、磁場を印加しない以外は、実施例5と同様にして、比較熱伝導性シート6を作製した。
【0100】
[評価試験]
(1)目視観察
実施例5及び実施例6並びに比較例1〜比較例6で得た熱伝導性シートについて、目視により色を観察した。その結果を表1に示した。
【0101】
(2)断面観察
実施例5及び実施例6並びに比較例1〜比較例6で得た熱伝導性シートについて、断面をSEMにより観察した。その結果を図7〜図10に示した。図7に示すように、実施例5及び実施例6では、磁性樹脂粒子2と熱伝導性粒子4とで構成される熱伝導性複合粒子1が、基材8中において一定の方向に配向している熱伝導性シート10が観察された。一方、比較例1及び比較例2では、図8に示すように熱伝導性複合粒子1が配向しておらず、比較例3及び比較例4では、図9に示すように磁性樹脂粒子2と熱伝導性粒子4とがランダムに分散しており、比較例5及び比較例6では、図10に示すように熱伝導性粒子4のみがランダムに分散していた。
【0102】
(3)熱伝導率
実施例5及び実施例6並びに比較例1〜比較例6で得た熱伝導性シートについて、(株)アイフェイズ社製のアイフェイズモバイル1uを用い、温度波分析法により、熱伝導率を測定した。結果を表1及び図11に示した。なお、Braggemanの式により導いた熱伝導率の理論値と、各熱伝導性シート中の総粒子体積%及び熱伝導性粒子の実質体積%も併記した。
【0103】
【表1】
【0104】
表1及び図11から、本発明の熱伝導性シート1及び2では、熱伝導性複合粒子を配向させることにより、熱伝導性粒子がSiCの場合もBNの場合も、熱伝導率が飛躍的に上昇していることがわかる。
【0105】
本発明により得られる熱伝導性複合粒子は、IC、パワー部品及び高輝度LED等から発生する熱を効率よく逃がすための熱伝導性(伝熱)シート、熱伝導性ゲル、熱伝導グリース及び熱伝導接着剤において、熱伝導性フィラーとして好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1・・・熱伝導性複合粒子、
2・・・磁性樹脂粒子(磁性トナー)、
2a・・・磁性体、
2b・・・マトリクス樹脂、
4・・・熱伝導性粒子
8・・・基材、
10・・・熱伝導性シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子と、
前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子と、を具備すること、
を特徴とする熱伝導性複合粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の熱伝導性複合粒子の製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆う工程を含むこと、
を特徴とする熱伝導性複合粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の熱伝導性複合粒子を含む熱伝導性シートであって、
前記熱伝導性シート内において前記熱伝導性複合粒子が配列していること、
を特徴とする熱伝導性シート。
【請求項4】
請求項3に記載の熱伝導性シートの製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆うことにより、熱伝導性複合粒子を得る工程と、
前記熱伝導性複合粒子と前記熱伝導性シートのシート材料との成型材料において、前記熱伝導性複合粒子を配向させる工程と、
前記熱伝導性複合粒子を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シートを得る工程と、
を含むこと、
を特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【請求項1】
磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子と、
前記磁性樹脂粒子を被覆する熱伝導性粒子と、を具備すること、
を特徴とする熱伝導性複合粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の熱伝導性複合粒子の製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆う工程を含むこと、
を特徴とする熱伝導性複合粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の熱伝導性複合粒子を含む熱伝導性シートであって、
前記熱伝導性シート内において前記熱伝導性複合粒子が配列していること、
を特徴とする熱伝導性シート。
【請求項4】
請求項3に記載の熱伝導性シートの製造方法であって、
高速気流中衝撃法、メカノフュージョン法又はメカノケミカル法により、磁性体及び前記磁性体を含有するマトリクス樹脂を含む磁性樹脂粒子を、熱伝導性粒子で覆うことにより、熱伝導性複合粒子を得る工程と、
前記熱伝導性複合粒子と前記熱伝導性シートのシート材料との成型材料において、前記熱伝導性複合粒子を配向させる工程と、
前記熱伝導性複合粒子を配向させたまま前記成型材料を成型して熱伝導性シートを得る工程と、
を含むこと、
を特徴とする熱伝導性シートの製造方法。
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−124449(P2012−124449A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49471(P2011−49471)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】
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