説明

熱処理炉用カーボンヒーター

【課題】熱処理炉において、発熱部全体の温度分布を均一化して使用特性を改善した新規の熱処理炉用カーボンヒーターを提供する。
【解決手段】ヒーター本体2、3の中間個所7と端子側個所8の連続部9に、ヒーター本体の端子側個所を細く、U型の先端折り返し側個所を太くする段付き構造部10を設けることによって、ヒーター本体の端子側個所の断面積を減らして抵抗値を大きくする機能部を形成し、また端子部を固有抵抗が1500〜1900μΩ・cmである材質にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉用のカーボンヒーターに関するもので、具体的にはヒーター全体の温度分布を均一化して使用特性を改善した熱処理炉用カーボンヒーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前知られているUターン型ヒーターの発熱部は、当該発熱部の中心軸線に直交する向きの何処を切ってもその切断端面の形状が同じで、同一の断面積になっているものであった。
【0003】
このため、上記Uターン型ヒーターの発熱部は、次に述べるような理由によって、発熱部の端子側に位置する個所の温度が同発熱部の中間に位置する個所より低くなり、また先端折り返し側に位置するU型先端部近傍の温度は高くなるという使用特性、すなわち部位によって温度分布が不均一になる使用特性を有していた。
【0004】
上記端子側個所の温度が低くなる原因としては、端子接続部の銅製クランプが水冷されているために低くなることを挙げることができる。また、U型先端部近傍は逆に放熱要素が少なく、温度が上昇する傾向にあることが挙げることができる。
【0005】
そこで、本発明者は、温度分布を均一化して、使用特性を改善することを課題として鋭意研究を行った結果、ヒーター本体の端子側個所が細く、折り返しのU型先端部側が太くなるように、その中間部を段付き構造にすることが有効であり、また端子部の材質を従来の端子材質よりも熱伝導率が低くかつ固有抵抗が大きな材質とすることが有効であることを見出した。
【0006】
そして、上記知見に基づく実施により、段付き構造にしたことで端子側個所の断面積を減らして抵抗値を増加させ得たこと、当該抵抗値の増加により端子側個所の発熱温度を高くして同端子側からの放熱分を補い得たことが確認できた。また併せて、端子部の材質を変更したことで発熱部の熱量が端子側に放散することを防ぎ得たこと、端子部も僅かの発熱をすることが確認できた。
【0007】
なお、本出願人は、ヒーター本体の端子側個所が細く、U型先端部側が太くなるような中間段付き構造をもつ熱処理炉用カーボンヒーターについて、先行技術文献を調査したが、これらに関連する先行技術文献は見出すことができなかった。
【0008】
図4(イ)は、従来の熱処理炉用U型カーボンヒーターを炉内に挿入設置した状態の断面的な正面説明図で、被加熱品の進行方法正面から見た図であり、図4(ロ)は図4(イ)の位置関係に対応した炉内の温度分布を示すグラフであり、図4(ロ)には従来のカーボンヒーターを使用した場合と本発明に係るカーボンヒーターを使用した場合の炉内温度分布の両方を比較表示してある。
【0009】
図4(イ)において、符号1はカーボンヒーター、2及び3は該ヒーター1を構成するヒーター本体、4はヒーター1の折り返しのU型先端部、5及び6はヒーター端子部、11は炉体、12は断熱材、13はグラファイトマッフル、14は端子ボックスである。
【0010】
図4(ロ)において、従来品を示す点線の折れ線グラフでは、端子5,6側とU型先端部4側とでは略50℃の差があり、被加熱品が通過する有効加熱帯(A〜Bの部分)ではU型先端部4側に向って温度が漸増する傾斜カーブ状態を呈している。これに対し、本発明品を示す実線の折れ線グラフは、端子5,6側とU型先端部4側(折り返し側)とでは略同じ温度であり、有効加熱帯(A〜B)では略同じ温度の横ばい状態を示していることが分かる。従って、これらのことから、本発明を実施することによって、温度の均一化が達成された発明品を確実に提供し得ることが容易に理解できる。
【0011】
ここで、発熱部の発熱について述べる。すなわち、発熱部の単位長さの発熱量は、当該発熱部の中心軸線に直交する向きで切った断面積により決まる。つまり、同じ電流が流れる場合、狭い断面積部分の方が広い断面積部分の方よりも発熱量が多くなるので、端子側個所の方が高い温度になり易いのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、発熱部全体の温度分布を均一化して使用特性の改善ができた新規の熱処理炉用カーボンヒーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1に係る熱処理炉用カーボンヒーターは、ヒーター本体と端子部を備えた熱処理炉用カーボンヒーターに関し、ヒーター本体の端子側個所の断面積を減らして同端子側個所の抵抗値を大きくしたものである。
【0014】
そして、端子側個所の断面積を減らす方法としては、例えばUターン型ヒーターでは、ヒーター本体の中間個所と端子側個所の連続部に、ヒーター本体の端子側個所を細く、U型の先端折り返し側個所を太くする段付き構造部を設ける。
【0015】
従って、請求項1に係る熱処理炉用カーボンヒーターにあっては、端子側個所の発熱温度が上記抵抗値の増大により高くなる。その結果、同端子側からの放熱ロスは補填され、上記温度分布の均一化の達成を可能にする。
【0016】
請求項2に係る熱処理炉用カーボンヒーターは、上記端子部はその固有抵抗を1500〜1900μΩ・cmである材質としたことを特徴とする。
【0017】
すなわち、請求項2に係る熱処理炉用カーボンヒーターは、端子部も僅かに発熱して発熱部の熱量が端子側に放散することを防ぎ得るので、結果として、均一な温度分布の実現が可能になる。
【0018】
なお、本発明に係る熱処理炉用カーボンヒーターは、端子接続部側が低くなり、U型の先端折り返し側が上昇するような傾向にある温度環境において主に使用される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る熱処理炉用カーボンヒーターは、ヒーター本体の端子側個所の断面積を減らして抵抗値を大きくしたので、端子側個所の発熱温度を高くすることができ、結果として、同端子側からの放熱ロスを補填でき、上記温度分布の均一化を達成することができる。
【0020】
請求項2に係る熱処理炉用カーボンヒーターは、端子部を固有抵抗が1500〜1900μΩ・cmである材質としたので、端子側に放散する熱量を減少させることができるのみならず、上記材質の端子部は使用時には発熱する熱量が減少するので、結果として、均一な温度分布の実現が容易にできるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施例1.
以下、本発明に係る実施例を図1〜図3に基づいて説明する。なお、図1はカーボンヒーター全体を示す一部断面正面図であり、図2は同じく一部断面側面図であり、図3は図1のA部分を示す拡大図である。
【0022】
この実施例に係る熱処理炉用カーボンヒーター1は、2本のグラファイト製ヒーター本体2、3を構成し、これらヒーター本体2、3の一方端をU型先端部(連結部)4により連結すると共に、各ヒーター本体2、3の他方端にヒーター端子5,6を装着することにより得たUターン型ヒーターである。
【0023】
上記ヒーター本体2、3は、固有抵抗1100μΩ・cmのカーボンであり、外径φ51mm/内径φ38mmの管体である。そして、これら各ヒーター本体2、3において完成後に端子側個所8として機能する部分の外周面を切削加工により切除して外径φ49mmとして、ヒーター本体2、3の中間個所7と端子側個所8との連続部9に段付き構造部10を設け、よって端子側個所8の中心線に直交する切断端面の断面積を減らして、当該端子側個所8の抵抗値を大きくなるようにしてある。
【0024】
また、上記U型先端部4は、固有抵抗800μΩ・cmのカーボンであり、ヒーター本体2、3に連結装着してあるものである。
【0025】
なお、上記実施例1はUターン型ヒーターについて述べたが、本発明はカーボンヒーター本体の左右両端にヒーター端子を装着したストレート型ヒーターを上下に並列配置したものにも適用することができ、この場合には、ヒーター本体の左右両側の端子側に寄せたヒーター本体中間部の外周面を切削加工により切除して外径を細くした前記と同様の段付き構造部を設けるようにする。
【0026】
実施例2.
また、上記ヒーター端子5,6は、例えば固有抵抗1700μΩ・cmのカーボンであり、各ヒーター本体2、3にはネジ込み(図示せず)により装着してある。なお、当該ヒーター端子5,6の固有抵抗は、1500〜1900μΩ・cmであることが望ましく、1500μΩ・cm以下である場合、あるいは1900μΩ・cm以上である場合には、前記したような効果が得られない。
【0027】
ちなみに、炉温1300℃で、Uターン型のヒーター端子5,6に固有抵抗が850μΩ・cmの従来品と、固有抵抗が1700μΩ・cmの本発明品に関して、それぞれその端子損失熱量を測定した結果、従来品では損失熱量2840Kcal/時・本に対し、本発明品では損失熱量2220Kcal/時・本と、損失熱量が明らかに少ないことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施例を示す一部断面正面図である。
【図2】同じく一部断面側面図である。
【図3】図1のA部分を示す拡大図である。
【図4】従来のUターン型カーボンヒーターを炉内に挿入設置した状態の断面的な正面説明図(イ)とその位置関係に対応した炉内の温度分布を示すグラフ(ロ)であり、図4(ロ)には従来のカーボンヒーターを使用した場合(点線で表示)と本発明に係るカーボンヒーターを使用した場合(実線で表示)の炉内温度分布の両方を比較表示してある。
【符号の説明】
【0029】
1−熱処理炉用カーボンヒーター
2、3−ヒーター本体
4−U型先端部
5、6−ヒーター端子
7−中間個所
8−端子側個所
9−連続部
10−段付き構造部
11−炉体
12−断熱材
13−グラファイトマッフル
14−端子ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒーター本体と端子部を備えた熱処理炉用カーボンヒーターにおいて、ヒーター本体の端子部側個所の断面積を減らして同端子部側個所の抵抗値を大きくしたことを特徴とする熱処理炉用カーボンヒーター。
【請求項2】
請求項1記載の端子部は、その固有抵抗を1500〜1900μΩ・cmである材質としたことを特徴とする熱処理炉用カーボンヒーター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−3129(P2007−3129A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185629(P2005−185629)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000157072)関東冶金工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】