説明

熱処理装置及び記憶媒体

【課題】加熱効率が高く、しかも更なる高速での昇温及び降温が可能な熱処理装置を提供する。
【解決手段】被処理体Wに対して所定の熱処理を施すようにした熱処理装置2において、排気可能になされた処理容器4と、前記処理容器内に設けられてその上面側に前記被処理体を載置させるための載置台18と、前記載置台の上部に設けられる複数の熱電変換素子22と、前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓8と、前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段12と、前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子58を含む複数の加熱光源52よりなる加熱手段46とを備える。これにより、加熱効率が高く、しかも被処理体に対して更なる高速での昇温及び降温が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ等に対して加熱用の光を照射することにより所定の熱処理を行う枚葉式の熱処理装置及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイスを製造するには、半導体ウエハに成膜処理、パターンエッチング処理、酸化拡散処理、改質処理、アニール処理等の各種の熱処理を繰り返し行なって所望のデバイスを製造するが、半導体デバイスが高密度化、多層化及び高集積化するに伴ってその仕様が年々厳しくなっており、これらの各種の熱処理のウエハ面内における均一性の向上及び膜質の向上が特に望まれている。例えば半導体デバイスであるトランジスタのチャネル層の処理を例にとって説明すると、このチャネル層に不純物原子のイオン注入後に、原子構造を安定化させる目的でアニール処理が一般的に行われる。
【0003】
この場合、上記アニール処理を長時間行うと原子構造は安定化するが、不純物原子が膜厚方向へ奥深くまで拡散して下方へ突き抜けてしまうので、極力短時間で行う必要がある。すなわち、チャネル層などの膜厚を薄くしつつ、且つ突き抜けも生ずることなく原子構造を安定化させるためには、半導体ウエハを高温まで高速で昇温し、且つアニール処理後にあっては拡散が生じないような低い温度まで高速で降温させることが必要となる。
このようなアニール処理を可能とするために、従来の処理装置では、加熱ランプを用いたランプアニールが一般的に行われている(特許文献1)。
【0004】
また他の従来の処理装置としては、例えば特許文献2に示すように、ウエハステージにペルチェ素子を設け、100〜250℃程度でウエハをエッチングする際に、昇降温時に上記ペルチェ素子を用いるようにした処理装置がある。
そして、最近にあっては、比較的大出力が可能となるように開発されたことから、加熱源や光源としてLED素子やレーザ素子等の半導体光射出素子(半導体発光素子)が用いられる傾向にある(特許文献3〜5)。このLED素子やレーザ素子にあっては、素子自体の発熱は加熱ランプと比較して非常に少なく、且つ寿命も加熱ランプと比較してかなり長いので多用される傾向にある。
【0005】
例えば特許文献3においては、ヒートパイプとLED素子とを組み合わせたランプが開示されており、特許文献4においては、LED素子やレーザ素子でレジストを加熱するようにした点が開示されており、また特許文献5には、CVD処理を行うためにLED素子アレイを用いるようにした点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5689614号
【特許文献2】特開2001−85408号公報
【特許文献3】特開2004−296245号公報
【特許文献4】特開2004−134674号公報
【特許文献5】米国特許第6818864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前述したように、熱処理を行う場合には、ウエハ表面の温度分布が均一になるように加熱する必要があるばかりか、特に、酸化拡散処理を行う場合には、注入された不純物が過度に拡散することを防止する等の理由でウエハ温度を短時間で昇降温させる必要がある。
そして、上述のように開示された従来の装置において、例えばLED素子を用いている場合には、ランプ加熱と同様にウエハの急速な昇温は可能であり、またランプ加熱と異なって素子自体は余り加熱されないので、ある程度の速い速度でのウエハの降温が可能である。
【0008】
しかしながら、線幅や膜厚等のデザインルールがより厳しくなると、ウエハに対してより速い速度での降温操作が求められるが、上記した従来装置にあっては、新たなデザインルールに対応するような高速降温を実行することが困難である、といった問題点があった。
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。本発明の目的は、加熱効率が高く、しかも更なる高速での昇温及び降温が可能な熱処理装置及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、被処理体に対して所定の熱処理を施すようにした熱処理装置において、排気可能になされた処理容器と、前記処理容器内に設けられてその上面側に前記被処理体を載置させるための載置台と、前記載置台の上部に設けられる複数の熱電変換素子と、前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、を備えたことを特徴とする熱処理装置である。
【0010】
このように、載置台に複数の熱電変換素子を設け、この上方に半導体光射出素子を設け、被処理体の加熱時には、熱電変換素子に被処理体の加熱方向への電流を流すと共に半導体光射出素子をオンしてこれから加熱用の光を射出して被処理体を加熱するようにし、冷却時には、熱電変換素子に被処理体の冷却方向への電流を流すと共に半導体光射出素子をオフするようにしたので、ランプ加熱と比較して加熱効率が高く、しかも更なる高速での昇温及び降温を行うことができる。
【0011】
この場合、例えば請求項2に規定するように、前記各加熱光源には、該加熱光源からの光を反射して前記被処理体に向ける第1のリフレクタがそれぞれ設けられる。
また例えば請求項3に規定するように、前記各第1のリフレクタからの反射光は、それぞれ前記被処理体の異なる領域に向けて集光するように設定されている。
このように、各第1のリフレクタからの反射光は、それぞれ被処理体の異なる領域に向けて集光するように設定されているので、被処理体の表面の照度分布は均一化され、これにより、面内温度の均一性を向上させることができる。
【0012】
また例えば請求項4に規定するように、前記第1のリフレクタの反射面は曲面状に成形されている。
また例えば請求項5に規定するように、前記各加熱光源は、ヒートパイプよりなる素子取付棒と、該素子取付棒の先端部に取り付けられた複数の前記半導体光射出素子と、よりなる。
また例えば請求項6に規定するように、前記加熱手段は、前記光透過窓の上方を覆う素子取付用ハウジングを有し、前記各素子取付棒の基部は前記素子取付用ハウジングに支持されている。
【0013】
また例えば請求項7に規定するように、前記素子取付用ハウジングは、ドーム状に成形されており、その内側は曲面状に成形された反射面よりなる第2のリフレクタとして形成されている。
また例えば請求項8に規定するように、前記素子取付用ハウジングには、前記素子取付棒の基部側を冷却するための素子冷却手段が設けられる。
また例えば請求項9に規定するように、前記各素子取付棒は、鉛直方向または鉛直方向に近似する方向に沿って設けられる。
【0014】
また例えば請求項10に規定するように、前記被処理体の温度を測定するための放射温度計を有し、該放射温度計の測定波長帯域を、前記半導体光射出素子からの光の波長帯域とは異なるように設定している。
このように、放射温度計の測定波長帯域を、半導体光射出素子からの光の波長帯域とは異なるように設定しているので、放射温度計に対する迷光がなくなり、放射温度計による温度測定を正確に行うことができる。
また例えば請求項11に規定するように、前記半導体光射出素子は、LED素子または半導体レーザ素子よりなる。
【0015】
また例えば請求項12に規定するように、前記加熱手段は、前記光透過窓の上方を覆う素子取付用ハウジングを有し、該素子取付用ハウジングの下面は前記載置台に対向するように平坦な素子取付面になされると共に、該素子取付面に前記複数の半導体光射出素子が設けられる。
また例えば請求項13に規定するように、前記半導体光射出素子を設ける領域は、前記載置台上に載置される前記被処理体の投影面積よりも広くなされている。
また例えば請求項14に規定するように、前記半導体光射出素子は、所定の数毎に1つの小さな素子設置基板に取り付けられて、全体で複数のモジュールにブロック化されている。
【0016】
また例えば請求項15に規定するように、前記素子設置基板は、熱伝導性の良好な金属材料を断面凹部状に成形してなる。
また例えば請求項16に規定するように、前記モジュールの素子設置基板に取り付けられる前記所定の数の半導体光射出素子は電気的に直列に接続される。
また例えば請求項17に規定するように、前記素子取付面及び/又は前記素子設置基板の表面はそれぞれ反射面になされてリフレクタを構成している。
また例えば請求項18に規定するように、前記半導体光射出素子は、LED素子または半導体レーザ素子よりなる。
【0017】
また例えば請求項19に規定するように、前記半導体光射出素子は、LEDチップまたは半導体レーザチップよりなる。
また例えば請求項20に規定するように、前記半導体光射出素子は、面発光型の素子である。
また例えば請求項21に規定するように、前記複数の半導体光射出素子は、複数のゾーンに区画されており、各ゾーン毎に独立して制御可能になされている。
【0018】
また例えば請求項22に規定するように、前記複数の熱電変換素子の近傍には、必要時に熱媒体を流す熱媒体流路が設けられている。
また例えば請求項23に規定するように、前記熱処理装置は、該熱処理装置全体の動作を制御するための制御手段を有し、該制御手段は、前記被処理体の加熱時には前記加熱手段をオンすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を加熱するような方向へ電流を流し、前記被処理体の冷却時には前記加熱手段をオフすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を冷却するような方向へ電流を流すように制御する。
【0019】
請求項24に係る発明は、被処理体に対して所定の熱処理を施すようにした熱処理装置において、排気可能になされた処理容器と、前記処理容器内に設けられてその上面側に前記被処理体を載置させるための載置台と、前記載置台に、または前記載置台の下方に設けられて前記被処理体を加熱する下側加熱手段と、前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、を備えたことを特徴とする熱処理装置である。
【0020】
この場合、例えば請求項25に規定するように、前記下側加熱手段は、複数の熱電変換素子、抵抗加熱ヒータ、または加熱ランプのいずれかよりなる。
また例えば請求項26に規定するように、前記熱処理装置は、該熱処理装置全体の動作を制御するための制御手段を有し、該制御手段は、前記被処理体の加熱時には、前記下側加熱手段をオンして前記被処理体を所定の温度まで予備加熱し、その後、前記加熱手段をオンして前記被処理体を所定の処理温度まで昇温するように制御する。
【0021】
請求項27に係る発明は、排気可能になされた処理容器と、前記処理容器内に設けられてその上面側に被処理体を載置させるための載置台と、前記載置台の上部に設けられる複数の熱電変換素子と、前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、を有する熱処理装置を用いて被処理体に対して所定の熱処理を施すに際して、前記被処理体の加熱時には前記加熱手段をオンすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を加熱するような方向へ電流を流し、前記被処理体の冷却時には前記加熱手段をオフすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を冷却するような方向へ電流を流すように制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
【0022】
請求項28に係る発明は、排気可能になされた処理容器と、前記処理容器内に設けられてその上面側に前記被処理体を載置させるための載置台と、前記載置台に、または前記載置台の下方に設けられて前記被処理体を加熱する下側加熱手段と、前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、を有する熱処理装置を用いて被処理体に対して所定の熱処理を施すに際して、前記被処理体の加熱時には、前記下側加熱手段をオンして前記被処理体を所定の温度まで予備加熱し、その後、前記加熱手段をオンして前記被処理体を所定の処理温度まで昇温するように制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る熱処理装置及び記憶媒体によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
載置台に複数の熱電変換素子を設け、この上方に半導体光射出素子を設け、被処理体の加熱時には、熱電変換素子に被処理体の加熱方向への電流を流すと共に半導体光射出素子をオンしてこれから加熱用の光を射出して被処理体を加熱するようにし、冷却時には、熱電変換素子に被処理体の冷却方向への電流を流すと共に半導体光射出素子をオフするようにしたので、ランプ加熱と比較して加熱効率が高く、しかも更なる高速での昇温及び降温を行うことができる。
【0024】
特に請求項3に係る発明によれば、各第1のリフレクタからの反射光は、それぞれ被処理体の異なる領域に向けて焦光するように設定されているので、被処理体の表面の照度分布は均一化され、これにより、面内温度の均一性を向上させることができる。
また特に請求項10に係る発明によれば、放射温度計の測定波長帯域を、半導体光射出素子からの光の波長帯域とは異なるように設定しているので、放射温度計に対する迷光がなくなり、放射温度計による温度測定を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の熱処理装置の第1実施例の一例を示す断面構成図である。
【図2】熱電変換素子の配列状態を示す平面図である。
【図3】加熱光源の半導体光射出素子から放出された加熱用の光の光路を示す図である。
【図4】半導体光射出素子が取り付けられた素子取付棒を示す拡大断面図である。
【図5】素子取付棒の先端部分を示す拡大斜視図である。
【図6】本発明の熱処理装置の第2実施例の一例を示す断面構成図である。
【図7】複数のモジュールにブロック化された所定の数の半導体光射出素子が取り付けられる素子設置基板の配列状態を示す平面図である。
【図8】素子設置基板の配列状態を示す拡大断面図である。
【図9】1つの素子設置基板を示す拡大平面図である。
【図10】1つのLEDチップの一例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の熱処理装置の第3実施例の一例を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に本発明に係る熱処理装置及び記憶媒体の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の熱処理装置の第1実施例を示す断面構成図、図2は熱電変換素子の配列状態を示す平面図、図3は加熱光源の半導体光射出素子から放出された加熱用の光の光路を示す図、図4は半導体光射出素子が取り付けられた素子取付棒を示す拡大断面図、図5は素子取付棒の先端部分を示す拡大斜視図である。
図1に示すように、この第1実施例の熱処理装置2は、例えばアルミニウムにより筒体状に成形された処理容器4を有している。この処理容器4は例えば300mmウエハを収容できるような大きさに設定されている。この処理容器4の天井部は開口されており、この開口部には、Oリング等のシール部材6を介して後述する加熱用の光に対して透明な光透過窓8が気密に設けられている。この光透過窓8の材料としては、例えば石英等が用いられる。
【0027】
また、この処理容器4の側壁には、開口7が設けられると共に、この開口7には半導体ウエハWを搬出入する際に開閉されるゲートバルブ10が設けられる。また処理容器4の他の側壁には、処理時に必要なガスを内部へ導入するガス導入手段としてのガスノズル12が設けられている。また処理容器4の底部の周辺部には、排気口14が形成されており、この排気口14には図示しない真空ポンプが介設された排気系が接続されて、処理容器4内の雰囲気を例えば真空排気可能としている。尚、処理によっては処理容器4内は大気圧程度に維持される。またこの処理容器4の底部は大きく開口され、この開口に例えばOリング等のシール部材16を介在させて底部を兼ねる肉厚な載置台18が気密に取り付け固定されている。
【0028】
この載置台18は、例えばアルミニウム製の肉厚な載置台本体20と、この上部に設けられる複数の熱電変換素子22と、この熱電変換素子22の上面側に設置される薄い円板状の載置板24とにより構成され、この載置板24上に被処理体である半導体ウエハWを直接的に載置するようになっている。具体的には、上記熱電変換素子22としては、例えばペルチェ素子が用いられる。このペルチェ素子は、異種の導体や半導体を電極によって直列に接続し電流を流すと接点間でジュール熱以外に熱の発生や吸熱が生じる素子であり、例えば200℃以下の温度での使用に耐え得るBi Te (ビスマス・テルル)素子、より高温で使用できるPbTe(鉛・テルル)素子、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)素子等によって形成されており、熱電変換素子制御部26にリード線28を介して電気的に接続されている。熱電変換素子制御部26は、前記ウエハWの熱処理時に熱電変換素子に供給される電流の方向や大きさを制御する。
【0029】
図2にペルチェ素子よりなる熱電変換素子22の配列の一例を示す。図2においては、直径が300mmのウエハWに対して60個の熱電変換素子22を前記載置板24の裏面側に略全面にわたってほとんど隙間なく敷き詰めた例を示している。このように熱電変換素子22を密接させて配置すると、ウエハWと載置板24を均一に加熱することができる。熱電変換素子22の形状は、四角形に限らず、円形や六角形であってもよい。ここで熱電変換とは、熱エネルギーを電気エネルギーに、また電気エネルギーを熱エネルギーに変換することを言う。
【0030】
上記載置台本体20の内部には、熱媒体流路30がその平面方向の略全面に亘って形成されている。この熱媒体流路30は、上記熱電変換素子22の下部に設けられており、ウエハWの降温時に熱媒体として冷媒(水)が供給されることにより、上記熱電変換素子22の下面から温熱を奪ってこれを冷却するように構成されている。また、ウエハWの昇温時には必要に応じて温媒が供給されることにより、熱電変換素子22の下面から冷熱を奪ってこれを加熱するように構成されている。尚、熱媒体流路30は、熱媒体を送給する媒体循環器32に熱媒体導入管34と熱媒体排出管36を介して接続されている。これにより、媒体循環器32は熱媒体を熱媒体流路30に循環供給する。
【0031】
また上記熱電変換素子22上に設置される載置板24の材料としては、使用する加熱光源からの光線を最も吸収し易いSiO 材、AlN材、SiC材等によって製作され、紫外線を主に射出する場合は主に紫外線を吸収し易いGe材、Si材、金属材等によって製作される。載置台18にはウエハWを昇降する図示しない昇降機構が設けられ、この昇降機構は、載置台本体20及び載置板24を貫通してウエハWを下から支持する複数本の昇降自在な支持ピンと、これらの支持ピンを昇降させる駆動装置等で構成されている。
【0032】
また、載置台本体20には、これを上下方向に貫通する貫通孔37が形成されており、ここに放射温度計38が設置される。具体的には、上記貫通孔37に上記載置板24の下面まで延びる光ファイバ40を気密状態で挿通して載置板24からの輻射光を案内し得るようになっている。そして、この光ファイバ40の端部には放射温度計本体42が接続されており、所定の測定波長帯域の光より載置板24の温度、すなわちウエハ温度を測定できるようになっている。ここで後述するように、放射温度計38の測定波長帯域は、半導体光射出素子からの光の波長帯域とは異なるように設定されている。
【0033】
そして、処理容器4の光透過窓8の上方には、上記ウエハWに向けて加熱用の光を照射する加熱手段46が設けられている。具体的には、この加熱手段46は、上記光透過窓8の上方を覆うようにして設けられるドーム状に成形された素子取付用ハウジング48を有している。このドーム状の素子取付用ハウジング48は、例えばアルミニウムや銅等の熱伝導性の良好な材料により形成されており、全体が例えば半球状に成形されている。この素子取付用ハウジング48の下端部の一部と処理容器4の上端部の一部との間には図示しないヒンジで接合されており、上記素子取付用ハウジング48を展開可能としている。
【0034】
この素子取付用ハウジング48の内周面には、例えば金メッキ等が施された高放射率の反射面となっており、第2のリフレクタ50として構成されている。そして、この素子取付用ハウジング48の内周面側に、複数の加熱光源52が取り付けられて、これより加熱用の光(光線)を射出するようになっている。この加熱光源52は、ドーム状の素子取付用ハウジング48の内周面の略全域に亘って比較的均一等に分布させて設けられており、例えばここでは全体で100個程度設けられている。そして、図3にも示すように、各加熱光源52に対応させて、曲面状に窪ませて成形された第1のリフレクタ54がそれぞれ設けられている。この第1のリフレクタ54の内周面も、例えば金メッキ等が施された高反射率の反射面となっている。この第1のリフレクタ54の開口面は円形に成形されている。ここで上述のように素子取付用ハウジング48をドーム状の曲面形状にすることにより、平面形状の場合と比較して上記加熱光源52を多数取り付けることができ、その分、加熱用に大電力を投入することができる。
【0035】
そして、上記各加熱光源52は、図4及び図5にも示すように、微小な棒状の素子取付棒56と、この先端部に取り付けられた複数の半導体光射出素子58とよりなり、この素子取付棒56の基部を、上記素子取付用ハウジング48の第1のリフレクタ54の中央部に設けた接続端子60に接続して取り付けることにより、この素子取付棒56を支持固定すると共に、必要とする電力を上記半導体光射出素子58に供給できるようになっている。尚、上記接続端子60は、図示しない配線を介して電源系に接続されている。これにより、大部分の素子取付棒56は鉛直方向、または鉛直方向に近似する方向に沿って設けられることになる。
【0036】
そして、上記素子取付棒56は、中空状になされた例えばヒートパイプよりなり、図4にも示すように、その内面にはウィック62が貼り付けられると共に、内部には作動流体が密封されている。この素子取付棒56は、例えばアルミニウムや銅のような熱伝導性の良好な金属材料よりなる。この素子取付棒56は、多角形、例えば図5に示す場合には八角形に成形されており、その先端面及び先端部の側面に上記半導体光射出素子58を集中させて取り付けており、全体として点光源とみなせる程度の大きさになっている。ここで上記半導体光射出素子58は、LED素子または半導体レーザ素子よりなり、現状の技術ですでに1個当たりの素子で高出力が得られるものが開発されている。例えばLED素子を例にとれば、1素子当たり30W程度の高出力が得られる素子が開発され、また半導体レーザ素子を例にとれば1cm 素子当たり2.5kW程度の高出力が得られる素子が開発されている。
【0037】
従って、1本の素子取付棒56に上記半導体光射出素子58を30個取り付けると仮定すると、1つの加熱光源52からは、LED素子の場合には”30W×30”=900W(ワット)の高出力が得られることになる。そして、加熱光源52の全体の数が100個と仮定すると、全出力は100×900W=90kWになる。尚、上記素子取付棒56自体にも、上記接続端子60と各半導体光射出素子58とを電気的に接続する図示しない配線が設けられている。
ここで上記素子取付棒56の全体の長さは、20〜50mm程度であり、また八角形の一辺の長さL1は1mm程度であり、非常に小型化されている。
【0038】
ここで上記半導体光射出素子58から出射される光(熱線)の波長としては、1.7μm以下の領域、例えば1μm程度の赤外線が好ましい。波長が1.17μm以下の半導体光射出素子58を用いる理由は、ウエハWがシリコン基板の場合、シリコン基板の熱線に対する吸収率が熱線の波長とウエハ自体の温度に依存するからである。すなわち、波長が1.17μm程度までの熱線は、シリコン基板の温度に関係なく、0.5〜0.7程度の高い吸収率を示すが、波長が1.17μmよりも大きくなると、吸収率はシリコン基板の温度に大きく依存し、温度が低くなると吸収率も小さくなる(透過率は大きくなる)。例えばシリコン基板が270〜600℃の範囲で変化すると、それに応じて吸収率は0.1〜0.7の範囲で変化する。従って、シリコン基板からなるウエハWを高速昇温させるには、波長が1.17μm以下の熱線を放射する半導体光射出素子58を用いることが好ましい。尚、熱線とは、前述したように紫外光線から赤外光線までの光線を含む広い概念で用いている。
【0039】
この場合、前述した放射温度計38の測定波長帯域は、測定誤差の原因となる迷光を発生させないために、上記半導体光射出素子58の光の波長とは異なるように設定し、例えば1.17μmよりも大きな波長、例えば3μm程度の波長を測定波長帯域として設定する。
【0040】
ここで、図3に示すように、上記第1のリフレクタ54の曲面形状を2つの焦点f1、f2を有する回転楕円面と仮定し、点光源とみなせる加熱光源52の半導体光射出素子58群を焦点f1に設定すると、加熱光源52から放射された光のうち第1のリフレクタ54で反射した反射光62Aは第2の焦点f2に集光する。ただし、実際には完全な点光源ではないので、加熱光源52から出て第1のリフレクタ54で反射した反射光62Aであってもその一部は拡散して第2の焦点f2に集光せずその周りを照射する。また、加熱光源52から出射し第1のリフレクタ54に当たらない直射光62Bの一部はウエハWの表面を直接照射し、他の一部は第2のリフレクタ50に当たって反射した後、ウエハWの表面を照射する。ウエハWを照射する光のうち、ウエハWに吸収される量は最大でも70%程度であり、残りは反射または透過する。このうち反射した光は第2のリフレクタ50で反射することにより再度ウエハWを照射する。そして直射光のうち載置台18や底板を照射する光が損失となる。この損失となる光線の量は、第1のリフレクタ54の大きさ、傾き、開口径等を変えることにより極力少なくすることができる。
【0041】
加熱光源52の数は、ウエハWの大きさ、加熱光源1つ当たりのウエハWの照射面積S1、ウエハWの昇温レートの設計指標、加熱光源52全体のパワー、第2のリフレクタ50の直径等によって決定される。
ここで各加熱光源52より照射される照射面積S1の領域は、ウエハWの表面においてそれぞれ異なる領域に向けて集光するように設定され、ウエハWの表面の全域をカバーできるように設定されている。
【0042】
そして、図1に戻って、上記加熱光源52を設けた素子取付用ハウジング48には、上記素子取付棒56の基部側を冷却するための素子冷却手段66が設けられる。具体的には、この素子冷却手段66は、上記素子取付棒56の基部の近傍を通るように形成された冷媒通路68を有しており、冷媒入口68Aから冷却媒体として例えば冷却水を導入し、冷媒出口68Bから排出するようになっている。尚、上記素子取付用ハウジング48の内側空間を空冷するようにしてもよい。そして、この熱処理装置2の全体は、例えばマイクロコンピュータ等よりなる制御手段70により制御される。そして、この制御手段70は、この装置全体の動作を制御するためのプログラムを記憶するための例えばフロッピディスクやフラッシュメモリ等よりなる記憶媒体72を有している。
【0043】
次に、以上のように構成された熱処理装置2によるウエハWに対する熱処理動作について説明する。上述したように、以下に説明する動作は、上記記憶媒体72に記憶されたプログラムに基づいて行われる。ここでは表面に不純物が注入されたウエハWをアニールする場合を例にとって説明する。
【0044】
まず、処理容器4の側壁に設けられているゲートバルブ10を開き、処理すべきウエハWを開口7より処理容器4内に搬入し、これを載置台18の載置板24上に載置する。この後、ゲートバルブ10を閉じて処理容器4を密閉する。次に、排気手段によって処理容器4内を真空排気してガス供給源より供給される処理ガス、例えばアルゴンガスや窒素ガスに置換し、所定のプロセス圧力(例えば100〜10000Pa)に維持する。
【0045】
次に、ペルチェ素子よりなる熱電変換素子22に通電してウエハWを予備加熱する。予備加熱温度は500〜600℃程度である。この予備加熱温度では、ウエハWに注入されている不純物が拡散することはない。
ウエハWの温度は放射温度計38によって検出されており、この放射温度計38が所定の予備加熱温度になったことを検出すると、加熱手段46の全ての加熱光源52をオンして各半導体光射出素子58から光を放射し、この熱線でウエハWの表面を照射して所定の処理温度(例えば1000℃)まで瞬時に昇温させる。この際、熱電変換素子22に供給する電力も例えばフルパワーとしてウエハWを迅速に昇温させる。そして、この高温状態を所定の時間維持することにより、アニール処理を行う。このように、ウエハWは上下両面より加熱されることになり、例えば100〜300℃/sec程度まで昇温速度を上げて高速昇温を実現することができる。
【0046】
特に、高出力が可能な半導体光射出素子58を複数個集合して点光源化した加熱光源52を多数個配置し、各加熱光源52より高出力の加熱用の光(熱線)を照射するようにしたので、ウエハ面上における熱線の照度を非常に高くすることができ、迅速な昇温が可能となる。尚、ウエハの昇温時には、上記熱電変換素子22は下側加熱手段として機能することになる。
このアニール処理時には、ペルチェ素子よりなる熱電変換素子22の裏面側には冷熱が発生するので、この冷熱を排除するために載置台本体20に設けた熱媒体流路30には加熱媒体を流すようにし、熱電変換素子22を効率的に動作させるのがよい。
【0047】
また、加熱手段46の半導体光射出素子58は発光効率が良好であるとはいえ、これ自体に或る程度の発熱が生じることは避けられない。しかし、この半導体光射出素子58が取り付けられている素子取付棒56はヒートパイプで構成されているので、上記半導体光射出素子58で発生した熱を素子取付棒56の他端へ搬送してこれをアルミニウム等よりなる素子取付用ハウジング48側へ伝搬し、更に、この素子取付用ハウジング48に設けた素子冷却手段66の冷媒通路68に冷却水を流して熱を排出するようにしているので、半導体光射出素子58及び素子取付棒56を効率的に冷却することができる。
【0048】
また、ヒートパイプよりなる素子取付棒56の多くは、鉛直方向、またはこれに近似する方向に沿って設けられているので、主として重力によって動作するヒートパイプを効率的に動作させることができ、その分、半導体光射出素子58の冷却効率を高めることができる。
また第1のリフレクタ54及び第2のリフレクタ50により、発光効率の高い半導体光射出素子58から射出された光を効率的に且つ均一にウエハ面に照射することができるので、加熱効率を向上させることができ、しかもウエハ温度の面内均一性を高めることができる。
【0049】
このようにして、所定の短時間だけアニール処理を行ったならば、ウエハW中の不純物が過度に拡散することを防止するために、ウエハWをできるだけ速く冷却する。すなわち、この場合にはウエハ温度を高速降温させるために、ペルチェ素子よりなる熱電変換素子22に加熱時とは反対方向へ電流を流してその上面を冷却する。これにより、載置板24が冷却されてウエハWを急激に冷却する。この時、熱電変換素子22の下面は温熱が発生して加熱されるので、これを冷却するために、熱媒体流路30へは、ウエハ加熱時とは逆に冷却媒体を流すようにする。これにより、熱電変換素子22を効率的に動作させることができる。
【0050】
そして、上記動作と同時に、素子取付用ハウジング48に設けた加熱手段46の各加熱光源52をオフし、これに供給していた電力を遮断する。そして、これと同時に素子冷却手段66の冷媒通路68には継続して冷媒、例えば冷却水を流して各加熱光源52の素子取付棒56及び半導体降射出素子58を継続して冷却する。この場合、ウエハ加熱源として加熱ランプを用いた場合には、加熱ランプ自体が大きな熱容量を有し、しかも消灯しても加熱ランプ自体が高温状態になっているので、この加熱ランプ自体が発する輻射熱によりウエハが加熱されてしまい、冷却手段を用いても降温速度に限界が生じ、降温速度をより大きくすることは困難であるが、本発明装置のように、素子自体の発熱量が非常に少ないLED素子や半導体レーザ素子よりなる半導体光射出素子58を用い、しかも、この素子58や素子取付棒56を素子冷却手段66で冷却するので、素子自体の発熱量を抑制できるのみならず、これらを迅速に冷却することができるので、放出する輻射熱を大幅に削減でき、この結果、ウエハWの降温速度を大幅に向上させて高速降温を実現することができる。
【0051】
この場合、ウエハ加熱時に説明したように、素子取付棒56としてヒートパイプを用い、且つ多くの素子取付棒56はヒートパイプが効率的に動作するように鉛直方向、或いはこれに近似する方向に沿って設けられているので、より効果的乃至効率的に半導体光射出素子58を冷却することができ、この結果、より大きな降温速度での高速降温を行うことができる。本発明装置によれば、ウエハを例えば100〜300℃/sec程度の高速降温で冷却することができる。また半導体光射出素子58は、加熱ランプと比較して長寿命化させることができる。
尚、上記実施例においては、加熱光源52毎に設けた第1のリフレクタ54の曲面形状を回転楕円面としたが、これに限定されず、回転楕円面に近似する曲面、例えば回転放物面(パラボラ状)或いは半球面等に設定してもよい。
【0052】
また、素子取付用ハウジング48に設けた各加熱光源52を例えば同心円状の複数のゾーン毎に区画し、ゾーン毎に供給電力を制御できるようにしてもよい。
また、ガス導入手段12としてはノズルに限定されず、例えば加熱用の光に対して透明な材料、例えば石英製のシャワーヘッド構造を用いるようにしてもよい。
更には、上記実施例では、素子取付用ハウジング48を半球状の曲面形状(ドーム状)に成形した場合を例にとって説明したが、これに限定されず、回転楕円形状、或いはこれに近似する曲面形状、更には、加熱光源52の取り付け個数は少なくなるが、平面形状に成形するようにしてもよく、いずれにしても、各加熱光源52の出力パワーやウエハWの加熱温度等に依存して設計される。
【0053】
<第2実施例>
次に本発明の係る熱処理装置の第2実施例について説明する。
先の第1実施例では、素子取付用ハウジング48を略半球のようにドーム状に成形した場合を例にとって説明したが、この第2実施例ではこの素子取付用ハウジング48を略平坦に成形した場合の具体例について説明する。
図6はこのような本発明の熱処理装置の第2実施例の一例を示す断面構成図、図7は複数のモジュールにブロック化された所定の数の半導体光射出素子が取り付けられる素子設置基板の配列状態を示す平面図、図8は素子設置基板の配列状態を示す拡大断面図、図9は1つの素子設置基板を示す拡大平面図、図10は1つのLEDチップの一例を示す概略断面図である。尚、図1乃至図5において示した構成部分と同一の構成部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0054】
図6に示すように、この第2実施例における熱処理装置80では、上述したように、処理容器4の天井部に設けた光透過窓8の上方を覆う加熱手段46の素子取付用ハウジング82はドーム状ではなく、略平板状に成形されており、その周辺部が僅かに下方向へ直角に屈曲されたような形状となっている。このような形状の素子取付用ハウジング82は、熱伝導性の良好な金属材料、例えばアルミニウムを削り出すことによって形成することができる。この素子取付用ハウジング82には、冷媒通路68が全面に亘って形成されて、素子冷却手段66を構成している。
【0055】
また素子取付用ハウジング82の内側面、すなわち図中の下面は、上記載置台18に対向するように平坦な素子取付面84として形成されている。この素子取付面84と上記光透過窓8との間の距離H1は例えば10〜20mm程度と非常に小さく設定され、加熱効率を高めるようになっている。そして、この素子取付面84に、複数(多数)の半導体光射出素子58が略全面に亘って設けられることになる。
具体的には、上記複数の半導体光射出素子58は所定の数毎に複数のモジュールにブロック化されており、各ブロック毎に取り付けられる。すなわち、ここでは1つのモジュールに対して1つの小さな素子設置基板86を有しており、この素子設置基板86を図7及び図8にも示すように、上記平坦な素子取付面84に略隙間なく平面的に配列して取り付けている。この素子設置基板86を設ける領域は、載置台18上のウエハWの投影面積よりも広くなされている。
【0056】
そして、各素子設置基板86に、図9に示すように所定の数の上記半導体光射出素子58が取り付けられることになる。上記素子設置基板86は、熱伝導性の良好な金属材料、例えばアルミニウムで形成されており、その周辺部86Aが下方向へ僅かに高くなされて全体で略断面凹部状になされている。図示例ではこの素子設置基板86は正方形状に成形されているが、この形状に限定されるものではない。そして、この素子設置基板86の裏面側(図8の場合は上面側)の4隅には非貫通穴状態となる位置決め用のザグリ88が形成されている。
【0057】
そして、この素子設置基板86に、上述したように半導体光射出素子58が微少間隙ずつ離間させて縦横に整然と配列して取り付けられている。ここで1つの素子設置基板86の縦横の1辺の長さL2(図9参照)はそれぞれ例えば25mm程度、その厚さは5mm程度であり、上記半導体光射出素子58を縦横にそれぞれ30個ずつ、全体で900個設けている。そして、このようなモジュール、すなわち素子設置基板86は、素子取付用ハウジング82の全体で例えば148個程度設けられている。尚、図7に示す場合は素子設置基板86の数を簡略化して示している。従って、半導体光射出素子58は、素子取付用ハウジング82の全体で133200(=900×148)個設けられることになる。尚、この半導体光射出素子58の設置数は、上記数値に限定されず、1つの素子の出力やウエハWの昇温速度の設計値等に依存する。
【0058】
この場合、半導体光射出素子58としては、LEDチップや半導体レーザチップを樹脂等によりパッケージした素子を用いていもよいが、実装密度を向上できることからLEDチップや半導体LED素子や半導体レーザチップを用いるのがよい。すなわち、周知のようにLED素子や半導体レーザ素子は、一般的には、半導体ウエハに多数形成される各素子を素子毎に単体に切り出してチップ化し、これにレンズを設けて樹脂等によりパッケージ化することにより形成されるが、ここでは樹脂等によりパッケージ化される前のLEDチップや半導体レーザチップを用いるのがよい。
【0059】
そして、ここでは上記半導体光射出素子58として、パッケージ化する前の微小なLEDチップ58Aを用いている。このLEDチップ58Aの中でも、光量が多いことから、いわゆる面発光が可能な面発光型のLEDチップ58Aを用いるのがよい。このような面発光型のLEDチップ58Aは、例えば0.3〜1mm角の大きさであり、上記素子設置基板86に高い密度で実装することができる。図10に示すように、このLEDチップ58Aは、例えば凹凸状のサファイア基板90上に発光領域92を形成し、この上に窒化物半導体層94を形成し、更にその表面に例えばメッシュ状電極96を形成することにより構成される。
【0060】
そして、図9に示すように、1つの素子設置基板86に取り付けられた例えば900個の各半導体光射出素子58は、電源設備をできるだけ少なくするために配線100により電気的に直列接続されており、また、この素子設置基板86の周辺部には、外部に対して電気的に接続される電極102A、102Bが設けられている。
そして、この素子設置基板86の内面86B(図8においては下面)や素子取付用ハウジング82の素子取付面84(図6参照)も鏡面仕上げされて反射面になされており、それぞれリフレクタとして構成されている。これにより、ウエハ加熱時の熱効率を高めるようになっている。
【0061】
そして、このように形成された素子設置基板86、すなわち半導体光射出素子58は、図7に示すように複数のゾーンに区画されて、各ゾーン毎に独立して制御可能になされている。図7に示す場合は、中央部のゾーン104Aと、その周辺部に均等に配置された4つのゾーン104B〜104Eとに全部で5つのゾーンに区画されている。尚、図7におけるゾーンの区画線は概略的に示すものである。
【0062】
さて、上述のように構成した第2実施例の熱処理装置80も、基本的には先に説明した第1実施例と同様に動作することになる。
特にこの第2実施例の場合には、素子取付用ハウジング82をドーム状ではなく、平板状に成形するようにしたので、各半導体光射出素子58とウエハWとの間が第1実施例の場合よりも小さくなり、その分、加熱効率を向上させることができる。
また、各素子設置基板86に取り付ける半導体光射出素子58として、例えば半導体ウエハから切り出したような状態のチップ状のLEDチップ58Aを用いることにより、このLEDチップ58Aを高い実装密度で取り付けることができ、その分、昇温速度をより大きくすることができる。
【0063】
また、半導体光射出素子58を直接的に取り付ける素子設置基板86及び素子取付用ハウジング82を、それぞれ熱伝導性の良好な金属材料で構成しているので、上記半導体光射出素子58にて発生した熱を、素子取付用ハウジング82に設けた素子冷却手段66の冷媒通路68に冷却水等を流すことにより系外へ効率的に廃棄でき、これによって上記半導体光射出素子58、素子設置基板86及び素子取付用ハウジング82等を効率的に冷却でき、従って、その分、ウエハWの降温速度をより大きくすることができる。
【0064】
また半導体光射出素子58を取り付けるに際して、これを所定の数毎に1つの素子設置基板86に設けて全体をモジュール化し、この素子設置基板86を素子取付用ハウジング82に取り付けるようにしているので、装着作業を簡略化することができる。
また各半導体光射出素子58は、ウエハ面と平行に配列されるので、ウエハWを面内均一性に加熱できるのみならず、光学設計及び熱設計もそれぞれ簡単化することができる。
更には、素子取付用ハウジング82が平坦化されているので、その分、装置自体も小型化することができる。
【0065】
<第3実施例>
次に本発明に係る熱処理装置の第3実施例について説明する。
先の第1及び第2実施例では、載置台16側にペルチェ素子よりなる熱電変換素子22を設けた場合を例にとって説明したが、これに限定されず、従来用いられていた通常の載置台を用いてもよい。
【0066】
図11はこのような本発明の熱処理装置の第3実施例の一例を示す断面構成図である。ここでは、処理容器の天井部側に、図6に示す第2実施例の平板状の素子取付用ハウジング82を用いた加熱手段46を設けた場合を例にとって説明する。尚、図1乃至図10に示す構成部分と同一の構成部分については同一符号を付して説明を省略する。
図11に示すように、この第3実施例の熱処理装置110では、上述したように、載置台18に、下側加熱手段112として先の熱電変換素子22に代えて、例えば抵抗加熱ヒータ114を設けている。そして、この抵抗加熱ヒータ114の動作はヒータ制御部116により制御されることになる。
【0067】
この抵抗加熱ヒータ114の動作は、ウエハの昇温時は先の第1及び第2実施例の場合と同様である。しかしウエハWの降温時は先の熱電変換素子22を用いた時には、電流を昇温時とは逆方向へ流すことによりウエハを強制的に冷却することはできるが、ここでは抵抗加熱ヒータ114への通電を停止するだけなので、先の第1及び第2実施例よりもウエハの降温速度が少し低下してしまう。尚、ウエハの降温時に、熱媒体流路30へ冷却媒体を流して載置台18自体を冷やしてウエハWの冷却を促進させるのは勿論である。
尚、ここでは下側加熱手段112として抵抗加熱ヒータ114を用いたが、これに限定されず、例えば加熱ランプを用いてもよく、この場合には載置台18を薄い板状に成形して、この下方より加熱ランプの熱線を照射することになる。
【0068】
また上記第2実施例では、半導体光射出素子58として、ウエハから切り出された小片状のLEDチップ58Aや半導体レーザチップを用いた場合を例にとって説明したが、第1実施例においても、チップを樹脂等によりパッケージしてなる素子のみならず、これらの小片状のLEDチップや半導体レーザチップを用いてもよいのは勿論である。
【0069】
またここでは熱処理としてアニール処理を例にとって説明したが、これに限定されず、酸化拡散処理、成膜処理、改質処理、エッチング処理等の他の熱処理においても本発明を適用することができる。
また、半導体光射出素子58としては、LED素子と半導体レーザ素子とを混在させて設けるようにしてもよい。
更には、ここでは被処理体として半導体ウエハを例にとって説明したが、これに限定されず、ガラス基板、LCD基板、セラミック基板等にも本発明を適用することができ、その場合には各基板の種類に対応させて最も光吸収率の高い波長を出力する半導体光射出素子を選択する。
【符号の説明】
【0070】
2…熱処理装置、4…処理容器、8…光透過窓、12…ガスノズル(ガス導入手段)、18…載置台、20…載置台本体、22…熱電変換素子(ペルチェ素子)、24…載置板、26…熱電変換素子制御部、38…放射温度計、46…加熱手段、48…素子取付用ハウジング、50…第2のリフレクタ、52…加熱光源、54…第1のリフレクタ、56…素子取付棒、58…半導体光射出素子、66…素子冷却手段、68…冷媒通路、70…制御手段、72…記憶媒体、80…熱処理装置、82…素子取付用ハウジング、84…素子取付面、86…素子設置基板、110…熱処理装置、112…下側加熱手段、114…抵抗加熱ヒータ、W…半導体ウエハ(被処理体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体に対して所定の熱処理を施すようにした熱処理装置において、
排気可能になされた処理容器と、
前記処理容器内に設けられてその上面側に前記被処理体を載置させるための載置台と、
前記載置台の上部に設けられる複数の熱電変換素子と、
前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、
前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、
前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、
を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記各加熱光源には、該加熱光源からの光を反射して前記被処理体に向ける第1のリフレクタがそれぞれ設けられることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
前記各第1のリフレクタからの反射光は、それぞれ前記被処理体の異なる領域に向けて集光するように設定されていることを特徴とする請求項2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記第1のリフレクタの反射面は曲面状に成形されていることを特徴とする請求項2または3記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記各加熱光源は、ヒートパイプよりなる素子取付棒と、該素子取付棒の先端部に取り付けられた複数の前記半導体光射出素子と、よりなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記加熱手段は、前記光透過窓の上方を覆う素子取付用ハウジングを有し、前記各素子取付棒の基部は前記素子取付用ハウジングに支持されていることを特徴とする請求項5記載の熱処理装置。
【請求項7】
前記素子取付用ハウジングは、ドーム状に成形されており、その内側は曲面状に成形された反射面よりなる第2のリフレクタとして形成されていることを特徴とする請求項6記載の熱処理装置。
【請求項8】
前記素子取付用ハウジングには、前記素子取付棒の基部側を冷却するための素子冷却手段が設けられることを特徴とする請求項6または7記載の熱処理装置。
【請求項9】
前記各素子取付棒は、鉛直方向または鉛直方向に近似する方向に沿って設けられることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項10】
前記被処理体の温度を測定するための放射温度計を有し、該放射温度計の測定波長帯域を、前記半導体光射出素子からの光の波長帯域とは異なるように設定していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項11】
前記半導体光射出素子は、LED素子または半導体レーザ素子よりなることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項12】
前記加熱手段は、前記光透過窓の上方を覆う素子取付用ハウジングを有し、該素子取付用ハウジングの下面は前記載置台に対向するように平坦な素子取付面になされると共に、該素子取付面に前記複数の半導体光射出素子が設けられることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項13】
前記半導体光射出素子を設ける領域は、前記載置台上に載置される前記被処理体の投影面積よりも広くなされていることを特徴とする請求項12記載の熱処理装置。
【請求項14】
前記半導体光射出素子は、所定の数毎に1つの小さな素子設置基板に取り付けられて、全体で複数のモジュールにブロック化されていることを特徴とする請求項12または13記載の熱処理装置。
【請求項15】
前記素子設置基板は、熱伝導性の良好な金属材料を断面凹部状に成形してなることを特徴とする請求項14記載の熱処理装置。
【請求項16】
前記モジュールの素子設置基板に取り付けられる前記所定の数の半導体光射出素子は電気的に直列に接続されることを特徴とする請求項14または15記載の熱処理装置。
【請求項17】
前記素子取付面及び/又は前記素子設置基板の表面はそれぞれ反射面になされてリフレクタを構成していることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項18】
前記半導体光射出素子は、LED素子または半導体レーザ素子よりなることを特徴とする請求項12乃至17のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項19】
前記半導体光射出素子は、LEDチップまたは半導体レーザチップよりなることを特徴とする請求項12乃至17のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項20】
前記半導体光射出素子は、面発光型の素子であることを特徴とする請求項18または19記載の熱処理装置。
【請求項21】
前記複数の半導体光射出素子は、複数のゾーンに区画されており、各ゾーン毎に独立して制御可能になされていることを特徴とする請求項12乃至20のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項22】
前記複数の熱電変換素子の近傍には、必要時に熱媒体を流す熱媒体流路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至21のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項23】
前記熱処理装置は、該熱処理装置全体の動作を制御するための制御手段を有し、該制御手段は、前記被処理体の加熱時には前記加熱手段をオンすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を加熱するような方向へ電流を流し、
前記被処理体の冷却時には前記加熱手段をオフすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を冷却するような方向へ電流を流すように制御することを特徴とする請求項1乃至22のいずれかに記載の熱処理装置。
【請求項24】
被処理体に対して所定の熱処理を施すようにした熱処理装置において、
排気可能になされた処理容器と、
前記処理容器内に設けられてその上面側に前記被処理体を載置させるための載置台と、
前記載置台に、または前記載置台の下方に設けられて前記被処理体を加熱する下側加熱手段と、
前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、
前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、
前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、
を備えたことを特徴とする熱処理装置。
【請求項25】
前記下側加熱手段は、複数の熱電変換素子、抵抗加熱ヒータ、または加熱ランプのいずれかよりなることを特徴とする請求項24記載の熱処理装置。
【請求項26】
前記熱処理装置は、該熱処理装置全体の動作を制御するための制御手段を有し、該制御手段は、前記被処理体の加熱時には、前記下側加熱手段をオンして前記被処理体を所定の温度まで予備加熱し、その後、前記加熱手段をオンして前記被処理体を所定の処理温度まで昇温するように制御することを特徴とする請求項24または25記載の熱処理装置。
【請求項27】
排気可能になされた処理容器と、
前記処理容器内に設けられてその上面側に被処理体を載置させるための載置台と、
前記載置台の上部に設けられる複数の熱電変換素子と、
前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、
前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、
前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、
を有する熱処理装置を用いて被処理体に対して所定の熱処理を施すに際して、
前記被処理体の加熱時には前記加熱手段をオンすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を加熱するような方向へ電流を流し、
前記被処理体の冷却時には前記加熱手段をオフすると共に前記熱電変換素子に前記被処理体を冷却するような方向へ電流を流すように制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。
【請求項28】
排気可能になされた処理容器と、
前記処理容器内に設けられてその上面側に被処理体を載置させるための載置台と、
前記載置台に、または前記載置台の下方に設けられて前記被処理体を加熱する下側加熱手段と、
前記処理容器の天井部を気密に覆う光透過窓と、
前記処理容器内に向けて必要なガスを導入するガス導入手段と、
前記光透過窓の上方に設けられて前記被処理体に向けて加熱用の光を射出する半導体光射出素子を含む複数の加熱光源よりなる加熱手段と、を有する熱処理装置を用いて被処理体に対して所定の熱処理を施すに際して、
前記被処理体の加熱時には、前記下側加熱手段をオンして前記被処理体を所定の温度まで予備加熱し、その後、前記加熱手段をオンして前記被処理体を所定の処理温度まで昇温するように制御するプログラムを記憶することを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−178576(P2012−178576A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−88033(P2012−88033)
【出願日】平成24年4月9日(2012.4.9)
【分割の表示】特願2005−351220(P2005−351220)の分割
【原出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】