説明

熱分解ガスの改質方法及びシステム

【課題】熱分解ガス中のタールを除去又は改質するための熱損失を少なくする。
【解決手段】本発明の熱分解ガスの改質システムは、廃棄物等を熱分解して得られる熱分解ガスを800℃以上1000℃未満の温度で加熱してタールを低分子量の炭化水素等に改質する改質器1と、改質された熱分解ガスを冷却してガス中に残存するタールを凝縮させて回収する冷却器2と、タールが回収された熱分解ガスをタールが溶解可能な洗浄油で洗浄するタール洗浄塔3を設けて精製ガスを得ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解ガスの改質方法及びシステムに係り、特に、熱分解ガスに含まれる高分子量の炭化水素を低分子量の炭化水素等に変換するのに好適な熱分解ガスの改質方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解ガスは、木質系チップ等のバイオマス、あるいは種々の廃棄物を熱分解して得られる熱分解ガスを燃料ガスや原料ガスとして有効利用することが考えられている。
【0003】
しかし、廃棄物の熱分解ガスには、種々の不純物が含まれることから、そのまま燃料ガスや化学工業の原料ガスとして用いることはできないため、熱分解ガスを精製する方法及びシステムが種々提案されている。特に、熱分解ガスには、炭素Cが5以上の高分子量の炭化水素(以下、タールと総称する。)が含まれることがあり、タールは凝縮温度が比較的高いことから低温になると液状となる。液状のタールは、燃料ガスや原料ガスの用途によっては種々の問題を引き起こすため、熱分解ガス中のタールの除去等が要請される。
【0004】
そこで、特許文献1には、バイオマスガス化システムにおいて、球体セラミックを充填した蓄熱体やハニカム構造の蓄熱体を1100℃以上に加熱し、その蓄熱体にバイオマスの熱分解ガスを通して、タールを低分子量の炭化水素等に改質することが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、可燃性廃棄物の熱分解ガスを空気吹きガスクラッカーに導入して1000〜1200℃で部分燃焼し、熱分解ガスに含まれるタール分や軽油分をC数1〜4程度の低分子量の炭化水素等に分解して改質処理することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−60533号公報
【特許文献2】特開2004−238535号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の技術によれば、熱分解ガス中のタールを低分子量の炭化水素等に変換するために、1000℃以上の高温に加熱しなければならず、タールの除去等に必要な熱量が多く、改質システムの熱損失が多いという問題について配慮されていない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、熱分解ガス中のタールを除去又は改質するための熱損失を少なくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の熱分解ガスの改質方法は、廃棄物等を熱分解して得られる熱分解ガスを800℃以上1000℃未満の温度で加熱して、前記熱分解ガス中の高分子量の炭化水素を低分子量の炭化水素等に変換して改質する第1ステップと、第1ステップで改質された熱分解ガスを冷却してガス中に残存する高分子量の炭化水素を凝縮させて回収する第2ステップと、第2ステップで高分子量の炭化水素が回収された熱分解ガスを、高分子量の炭化水素が溶解可能な洗浄油で洗浄する第3ステップを有してなることを特徴とする。
【0010】
つまり、熱分解ガスを加熱して改質する第1ステップの後に、熱分解ガスを冷却してガス中に残存する高分子量の炭化水素を凝縮させて回収する第2ステップを設け、さらに、高分子量の炭化水素が溶解可能な洗浄油で洗浄する第3ステップを有することから、熱分解ガスを加熱して改質する第1ステップの改質率を抑えることができる。そこで、熱分解ガスを加熱して改質する加熱温度を1000℃未満に抑えることができ、熱分解ガス中の高分子量の炭化水素(タール)を除去又は改質するための熱損失を少なくすることが可能になる。
【0011】
ここで、洗浄油には、灯油、軽油、機械洗浄油(例えば、ヘキサン、ベンゼンなど)の少なくとも一つを用いることができる。
【0012】
また、熱分解ガスを洗浄した洗浄油を加熱して高分子量の炭化水素をガス化して分離する第4ステップを設けることが望ましい。この場合、高分子量の炭化水素が分離された洗浄油を第3ステップの洗浄に再利用することができる。第4ステップの洗浄油の加熱源としては、第3ステップで精製された熱分解ガスの一部を燃焼して用いることができる。
【0013】
さらに、第2ステップで回収された液状の高分子量の炭化水素と、第4ステップでガス化されたガス状の高分子量の炭化水素を、第1ステップに戻して改質処理することができる。これによれば、改質された熱分解ガスの熱量を増加させることができる。
【0014】
一方、本発明の熱分解ガスの改質システムは、上述した改質方法を適用して構成することができる。具体的には、廃棄物等を熱分解して得られる熱分解ガスを部分燃焼して該熱分解ガス中の高分子量の炭化水素を低分子量の炭化水素等に変換して改質する改質器を備えてなる熱分解ガスの改質システムにおいて、前記改質器は、熱分解ガスを800℃以上1000℃未満の温度で加熱して熱分解ガスを改質し、前記改質器から排出される熱分解ガスを冷却して、ガス中に残存する高分子量の炭化水素を凝縮させて回収する冷却器と、該冷却器から排出される熱分解ガスを高分子量の炭化水素が溶解可能な洗浄油で洗浄する洗浄塔を備えて構成できる。
【0015】
この場合において、前記冷却器は、熱分解ガスを冷却水により冷却する熱交換器又は熱分解ガスに噴霧する水噴霧塔を適用できる。また、前記洗浄塔から排出される前記洗浄油を加熱して該洗浄油中に溶解した高分子量の炭化水素を気化させるストリッパーを備えて構成することができる。さらに、前記冷却器により回収された液状の高分子量の炭化水素と、前記ストリッパーにより気化されたガス状の高分子量の炭化水素を、前記改質器の上流側に戻す循環配管を備えて構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱分解ガス中のタールを除去又は改質するための熱損失を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の熱分解ガスの改質方法を適用してなる改質システムを実施形態に基づいて説明する。
【0018】
図1に、一実施形態の熱分解ガスの改質システムの系統構成図を示す。図示のように、改質器1には、廃棄物等の熱分解ガスが導入されている。熱分解ガスは、図示していない廃棄物等を熱分解する熱分解炉(例えば、回転ドラム型の熱分解キルン)から供給されるようになっている。改質器1には、図示していない改質剤供給装置から、改質剤として、酸素O、水蒸気HO、あるいは空気等が供給されるようになっている。
【0019】
改質器1によって改質された熱分解ガスは、冷却器2に導入されるようになっている。冷却器2は、冷却水が流通される伝熱管等の伝熱流路を備えた熱交換器で構成されている。しかし、冷却器2は、熱交換器に限らず、冷却水を噴霧する水噴霧塔で構成することができる。
【0020】
冷却器2で冷却された熱分解ガスは、タール洗浄塔3に導入される。タール洗浄塔3には、図示していない洗浄油供給装置から、タールを溶解可能な洗浄油が散布されるようになっている。また、タール洗浄塔3の内部には、熱分解ガスと洗浄油の気液接触を促進するラヒシリングなどの充填層が設けられている。
【0021】
タール洗浄塔3の底部に流下した洗浄油は、抜き出されてストリッパー4に導入されて再生されるようになっている。ストリッパー4には、設定温度に昇温されたストリッパーガスが流通されるようになっている。また、ストリッパー4の内部には、ストリッパーガスと洗浄油の気液接触を促進するラヒシリングなどの充填層が設けられている。
【0022】
次に、このように構成される実施の形態の動作について説明する。熱分解炉から排出される熱分解ガス中のタール含有量は、バイオマス又は廃棄物等のガス化原料の性状に依存し、また、熱分解炉の形式及び操作温度にも依存する。改質器1に導入される熱分解ガスは、別に導入される純酸素又は空気中の酸素によりその一部が燃焼され、改質器1内部の熱分解ガスの温度を所定の温度に昇温する。ここで、所定の温度は、本実施の形態では、800℃以上、1000℃未満の範囲で適宜設定する。これにより、改質器1に導入された熱分解ガス中のタールは、熱分解されて、CO、H、CO、C数1〜4程度の低分子量の炭化水素に変換される。さらに、熱分解ガス中のタールは、別に導入される水蒸気HOとの水性反応により改質される。
【0023】
このようにして改質された熱分解ガスは、冷却器2に導かれ、熱分解ガス中に変換されないで残存しているタールを凝縮させるために冷却される。この冷却温度は、高沸点のタールが凝縮する露点温度(例えば、60〜90℃以上)である。これにより、凝縮したタールは冷却器2内を流下して底部に溜まる。底部に溜まった液状のタールは、図示していないポンプ等で抜き出され、本実施の形態の場合は、改質器1の上流に戻され、再度高温にて改質される。
【0024】
冷却器2で冷却によりタールが除去された熱分解ガスには、凝縮されなかったタールが微量残っている場合がある。そこで、冷却器2で冷却された熱分解ガスをタール洗浄塔3の底部に導き、熱分解ガスの上昇流にタール洗浄塔3の頂部から洗浄油を対向流で散布してタールを洗浄油中に溶解させる。このタール洗浄塔3の操作温度は、例えば60度以下が好ましい。この洗浄油は、タールを溶解可能な油性の液体であればよいが、例えば、灯油、軽油、機械洗浄油(例えば、ヘキサン、ベンゼンなど)の少なくとも一つを用いることができる。
【0025】
このようにして、タール洗浄塔3により微量なタール(低沸点タールを含む。)をも除去されて精製された精製ガスは、タール洗浄塔3の頂部から抜き出され、図示していない用途に供給される。
【0026】
一方、タール洗浄塔3の底部に流下された使用済の洗浄油(低沸点タールを含む。)は、抜き出されてストリッパー4に導入され、加熱されたストリッパーガスとの熱交換により洗浄油に溶解されたタールがガス化されてストリッパー4の頂部から抜き出される。ここで、ストリッパーガスは、タール洗浄塔3で精製された精製ガスの一部を用いることができる。このストリッパーガスは、タールガスとともにストリッパー4の頂部から抜き出される。抜き出されたタールガスは、図示していない送風機等で、本実施の形態の場合は、改質器1の上流に戻され、再度高温にて改質される。なお、抜き出されたタールガスを、熱分解炉の熱源の一部として用いることもできる。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態によれば、熱分解ガスを加熱して改質する改質器1の後流側に、熱分解ガスを冷却してガス中に残存するタールを凝縮させて回収する冷却器2を設け、さらに、タールが溶解可能な洗浄油で洗浄するタール洗浄塔3を用いてタールを除去していることから、改質システム全体としてのタールの除去率を低下させることなく、改質器1の改質温度を1000℃未満に抑えることができるので、熱損失を少なくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態の熱分解ガスの改質システムの系統構成図を示す。
【符号の説明】
【0029】
1 改質器
2 冷却器
3 タール洗浄塔
4 ストリッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物等を熱分解して得られる熱分解ガスを800℃以上1000℃未満の温度で加熱して、前記熱分解ガス中の高分子量の炭化水素を低分子量の炭化水素等に変換して改質する第1ステップと、
第1ステップで改質された熱分解ガスを冷却してガス中に残存する高分子量の炭化水素を凝縮させて回収する第2ステップと、
第2ステップで高分子量の炭化水素が回収された熱分解ガスを、高分子量の炭化水素が溶解可能な洗浄油で洗浄する第3ステップを有してなる熱分解ガスの改質方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱分解ガスの改質方法において、
さらに、第3ステップで前記熱分解ガスを洗浄した前記洗浄油を加熱して前記高分子量の炭化水素をガス化して分離する第4ステップを有し、
前記高分子量の炭化水素が分離された前記洗浄油を前記第3ステップで再利用することを特徴とする熱分解ガスの改質方法。
【請求項3】
請求項2に記載の熱分解ガスの改質方法において、
前記第4ステップの洗浄油の加熱源として、前記第3ステップで精製された前記熱分解ガスの一部を燃焼して用いることを特徴とする熱分解ガスの改質方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の熱分解ガスの改質方法において、
前記第2ステップで回収された液状の高分子量の炭化水素と、前記第4ステップでガス化されたガス状の高分子量の炭化水素を、前記第1ステップに戻して改質処理することを特徴とする熱分解ガスの改質方法。
【請求項5】
廃棄物等を熱分解して得られる熱分解ガスを部分燃焼して該熱分解ガス中の高分子量の炭化水素を低分子量の炭化水素等に変換して改質する改質器を備えてなる熱分解ガスの改質システムにおいて、
前記改質器は、熱分解ガスを800℃以上1000℃未満の温度で加熱して熱分解ガスを改質し、
前記改質器から排出される熱分解ガスを冷却して、ガス中に残存する高分子量の炭化水素を凝縮させて回収する冷却器と、該冷却器から排出される熱分解ガスを高分子量の炭化水素が溶解可能な洗浄油で洗浄する洗浄塔を備えてなることを特徴とする熱分解ガスの改質システム。
【請求項6】
請求項5に記載の熱分解ガスの改質システムにおいて、
前記冷却器は、熱分解ガスを冷却水により冷却する熱交換器又は熱分解ガスに噴霧する水噴霧塔であることを特徴とする熱分解ガスの改質システム。
【請求項7】
請求項5に記載の熱分解ガスの改質システムにおいて、
前記洗浄油は、灯油、軽油、機械洗浄油の少なくとも一つであることを特徴とする熱分解ガスの改質システム。
【請求項8】
請求項5に記載の熱分解ガスの改質システムにおいて、
さらに、前記洗浄塔から排出される前記洗浄油を加熱して該洗浄油中に溶解した高分子量の炭化水素を気化させるストリッパーを備えてなることを特徴とする熱分解ガスの改質システム。
【請求項9】
請求項8に記載の熱分解ガスの改質システムにおいて、
さらに、前記冷却器により回収された液状の高分子量の炭化水素と、前記ストリッパーにより気化されたガス状の高分子量の炭化水素を、前記改質器の上流側に戻す循環配管を備えてなることを特徴とする熱分解ガスの改質システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−215445(P2009−215445A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61173(P2008−61173)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】