説明

熱可塑性エラストマー組成物および製造方法

【課題】熱可塑性エラストマー組成物の加工性を良好にして意図しない異物等が生じたりエラストマー成形体表面の粗度が大きくなることを抑制し、エラストマー成形体の各種物性(耐ヘタリ性等)や外観性を良好にする。
【解決手段】EPDM100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練して得られバウンドラバーが形成されたゴム組成物を用いる。このゴム組成物,結晶性オレフィン系樹脂,フェノール樹脂系架橋剤,軟化剤を配合し、混練し動的架橋することにより熱可塑性エラストマー組成物を得る。また、目的に応じて、前記の動的架橋中に、混練物に対して非結晶性オレフィン系樹脂を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物および製造方法に関するものであって、例えば自動車用部品(ウェザーストリップ等),建築部品,電気部品等の幅広い分野の成形体に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマー組成物は、例えば良好な自己補強性,リサイクル性,経済性(例えば、単に熱可塑性樹脂成形体(プラスチック)同様の簡便な加工工程を経ることにより(加硫工程を省略して成形工程を行うことにより)所望の成形体が得られる等(良好な生産性))を有し、該エラストマー組成物から成る成形体(以下、エラストマー成形体と称する)は例えば加硫ゴム組成物から成る成形体同様の特性(弾性等)が得られるものであることから、該加硫ゴム組成物の代替になるものとして注目され、自動車用部品,建築部品,電気部品等の幅広い分野にて適用されている。
【0003】
例えば、ゴム材料(エチレン-α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(以下、EPDMと称する)等),樹脂材料(結晶性オレフィン系樹脂等)等の主成分(以下、エラストマー主成分と称する)に対して、カーボンブラック,架橋剤,架橋触媒(架橋反応を活性化する触媒),軟化剤等を配合して混練(架橋剤が反応しない温度で各配合成分が十分に分散するようにせん断力を与えて混練)し、その混練物の混練を行いながら加熱して架橋(例えば、架橋剤が反応する温度まで加熱して架橋(動的架橋))された組成物を適用した製品が知られている。具体例として、前記の樹脂材料として結晶性オレフィン系樹脂を用いたエラストマー成形体は、十分良好な生産性(成形加工サイクルの短さ),リサイクル性を有することから、自動車部品のウェザーストリップ等の分野では広く適用され始めている。
【0004】
前記のカーボンブラックは、比較的安価で、補強性,着色性,耐候性(紫外線を遮蔽する作用(エラストマー成形体を紫外線から防護する作用))等を有するが、単に熱可塑性エラストマー組成物中に対し多量に配合した場合には、ハードセグメントの結晶性が損なわれ加工性(押出し加工性等)が低くなってしまう。この加工性低下の一例として、いわゆる「メヤニ」や「ブツ」と称される異物(押出し成形機の口金の縁に付着して残存する異物、押出し加工されたエラストマー成形体表面に形成される粒子状の異物)が形成されたり、エラストマー成形体表面の粗度が大きくなることが挙げられ、これにより例えば成形体の外観性が低下する。熱可塑性エラストマー組成物自体は自己補強性を有することから、該熱可塑性エラストマー組成物の分野ではカーボンブラックを主に着色(黒色)剤としての用途で適用(例えば、エラストマー主成分約100重量部に対し0.2〜10.0重量部程度の範囲で配合)し、例えば屋外使用を目的とする各種製品(黒色のウェザーストリップ等)においても多く適用している(例えば、特許文献1等)。
【特許文献1】特開2006−57016号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記のように結晶性樹脂等を用いて成るエラストマー成形体は、熱可塑性を有するため、加硫ゴム組成物から成る成形体と比較して耐ヘタリ性(耐圧縮永久歪性,耐伸張永久歪性等)等の物理的物性が低く、例えば前記ウェザーストリップのように物性を長期間維持することが求められる製品(例えば、グラスランのようにガラス等を長期間保持する製品)においては、需要者が十分満足できる程度の品質のものを提供できなかった。
【0006】
また、カーボンブラックは、一般的に石油(ナフサ等)を用いて製造され少なからず硫黄成分を含んだものであるため、前記のようにカーボンブラックを用いたエラストマー成形体の場合、時間経過(例えば、屋外にて時間経過)と共に、該硫黄成分が樹脂成分中を移行(透過)して表面に露出し、白化現象が生じ外観性が更に悪化してしまうことがあった。この白化現象を防止する手法としては、エラストマー組成物中またはカーボンブラック中の硫黄成分含有量を制限(組成物中の硫黄含有量20ppm以下、カーボンブラック中の硫黄含有量0.4質量%以下に制限)する手法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0007】
したがって、前記のようにカーボンブラックの用途を着色に制限したり硫黄含有量を制限しなくとも、熱可塑性エラストマー組成物の加工性を良好にして意図しない異物等が生じたりエラストマー成形体表面の粗度が大きくなることを抑制し、エラストマー成形体の各種物性(耐ヘタリ性等)や外観性を良好にすることが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題に基づいてなされたものであり、意図的に、熱可塑性エラストマー分野の基準では比較的多量のカーボンブラックが配合されバウンドラバーが形成されたゴム組成物を用い、このゴム組成物に樹脂材料,架橋剤,軟化剤を配合し混練して動的架橋されたものであって、熱可塑性エラストマー組成物を加工する際に意図しない異物等が生じたりエラストマー成形体表面の粗度が大きくなることが抑制され、エラストマー成形体の各種物性(耐ヘタリ性等)や外観性が良好な熱可塑性エラストマー組成物を提供することにある。
【0009】
より具体的には、請求項1記載の発明は、EPDM100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練して得られバウンドラバーが形成されたゴム組成物と、結晶性オレフィン系樹脂と、フェノール樹脂系架橋剤と、軟化剤とを配合して混練し、その混練物を動的架橋して成ることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、複素粘性率の歪依存性G*rが80%以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、前記の混練物は非結晶性オレフィン系樹脂を配合したことを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3記載の発明において、前記のカーボンブラックの平均粒子径は40nm以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、ゴム組成物,結晶性オレフィン系樹脂,フェノール樹脂系架橋剤,軟化剤を配合して混練し、その混練物を動的架橋して成る組成物の製造方法であって、前記ゴム組成物は、エチレン‐α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練してバウンドラバーが形成されて成り、前記混練物は、動的架橋中に非結晶性オレフィン系樹脂が配合されたことを特徴とする。
【0014】
なお、前記の複素粘性率の歪依存性G*rは、例えば粘弾性測定機(米国アルファテクノロジーズ社製のRPA2000)を用いて周波数100rad/s,歪5%および20%での複素粘性率G*を測定し、下記式により算出することができる。
【0015】
「複素粘性率の歪依存性G*r(%)」=(「歪5%での複素粘性率G*(%)」/「歪5%での複素粘性率G*(%)」)×100
請求項1〜5記載の発明のように、EPDMに対し比較的多量のカーボンブラック等を加え混練して得られたゴム組成物においては、EPDMがカーボンブラックと物理的・化学的に反応(バウンドラバー中にカーボンブラックが取り込まれている状態となるように結合)し易く、該ゴム組成部中にバウンドラバーが形成され補強される。このようにバウンドラバーが形成されることにより、たとえ前記のように比較的多量のカーボンブラックを含んだゴム組成物を用いて成るエラストマー成形体であっても、該カーボンブラックによってハードセグメントの結晶性が荒らされることは起こり難くなる。
【0016】
また、前記バウンドラバーは非晶質であるため、前記のゴム組成物と結晶性オレフィン系樹脂とは互いに相溶性が高く、その両者およびフェノール樹脂系架橋剤等を加え混練した場合には、ゴム組成物が結晶性オレフィン系樹脂中に対し良好に分散(微分散)し易い。このように良好に分散されたものを動的架橋すると、例えば図1Aの概略図に示すように、熱可塑性エラストマー組成物のマトリックス相(海相)である結晶性オレフィン系樹脂1中において、ドメイン相(島相)である架橋ゴム成分(カーボンブラックを含んだ架橋ゴム成分)2aが極めて微細な状態で分散して形成、すなわち架橋ゴム成分密度が高くなる。したがって、エラストマー成形体中における硫黄成分の移行経路は狭くなり、たとえ該成形体中に硫黄成分が含まれていても白化現象が起こり難くなる。
【0017】
さらに、前記のように微細な架橋ゴム成分が分散されていることにより、該架橋ゴム成分と結晶性オレフィン系樹脂との接触面積は大きくなり、その両者のポアソン比の違いによって、弾性が大きくなると共に歪依存性が大きくなるものと予測できる。
【0018】
なお、前記のようなゴム組成物においてバウンドラバーが形成されていない場合、結晶性オレフィン系樹脂との相溶性は低くなり、結晶性オレフィン系樹脂中に対する分散性も悪くなる。このように分散性の低い状態で動的架橋されると、例えば図1Bの概略図に示すように、結晶性オレフィン系樹脂1中に大きい架橋ゴム成分(カーボンブラックを含んだ架橋ゴム成分)2bが形成され、エラストマー成形体中における硫黄成分の移行経路が広くなってしまうため、白化現象が起こり易くなる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1〜5記載の発明によれば、加工する際に意図しない異物等が生じたりエラストマー成形体表面の粗度が大きくなることを抑制でき加工性が良好になり、エラストマー成形体において良好な物性(耐ヘタリ性等)を付与することができると共に、良好な外観性を維持(例えば、白化現象等を抑制)することができる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、より良好な物性を付与することができると共に、より良好な外観性を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態の熱可塑性エラストマー組成物を図面等に基づいて詳細に説明する。
【0022】
本実施形態は、意図的に、熱可塑性エラストマー分野の基準では比較的多量のカーボンブラックが配合されバウンドラバーが形成されたゴム組成物を用い、このゴム組成物に樹脂材料,架橋剤,軟化剤を配合し混練して動的架橋されたものに関するものであって、前記のゴム組成物にはEPDM100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練して得られるものを用いる。
【0023】
本実施の形態の熱可塑性エラストマー組成物においては、以下に示すようなゴム組成物(EPDM,カーボンブラック,架橋触媒,軟化剤),結晶性オレフィン系樹脂,架橋剤(フェノール樹脂系架橋剤),架橋触媒(ハロゲン系化合物),軟化剤だけでなく、例えば使用目的(目的とするエラストマー成形体)に応じて非結晶性オレフィン系樹脂,架橋促進剤,充填剤,加工助剤等の各種成分等が適宜配合されたものであっても良い。
【0024】
[ゴム組成物]
前記のゴム組成物に用いるEPDMのα‐オレフィンとしては、例えばポリプロピレン、1‐ブテン、1‐ペンテン、1‐ヘキセン、4‐メチル‐1‐ペンテン、1‐オクテン等が挙げられ、これらα‐オレフィン群のなかから複数のものを選択し、例えばプロピレンと1‐ブテンの如く組み合わせて使用しても良い。また、ポリエン共重合体が5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5‐ビニル‐2‐ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデン等の環状の非共役ポリエンであるものや、1,4ヘキサジエン、7‐メチル‐1,6‐オクタジエン、4‐エチリデン‐8‐メチル‐1,7‐ノナジエン、4‐エチリデン‐1,7ウンデカジエン、4,8‐ジメチル‐1,4,8‐デカトリエン等の鎖状の非共役ポリエンであるものが挙げられる。これら各非共役ポリエンは、単独、または2種類以上組み合わせたものでも良く、その構成単位(エチレン‐α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体における非共役ポリエンの含有比率)は例えば約1wt%〜約20wt%とし、好ましくは約1wt%〜約15wt%、より好ましくは約5wt%〜約11wt%である。さらに、油展のEPDMにおいても好適に使用することができる。
【0025】
カーボンブラックにおいては、一般的に知られているもの(市販品等)を適宜適用することができ、例えばオイルファーネス法等によって製造されたものが挙げられる。また、好ましくは、平均粒子径が約40nm以上のものを用いたり、EPDM100phrに対する配合量を約50phr〜約100phrとすることが挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜変更して用いることができる。なお、平均粒子径が小さ過ぎる場合(例えば、平均粒子径26nm程度のものを用いる場合)や配合量が少な過ぎる場合(例えば、配合量50phr未満の場合)には、エラストマー成形体の機械的物性等は低下する可能性がある。また、該配合量が多過ぎる場合(例えば、配合量100phr超の場合)には、加工性等は低下する可能性がある。
【0026】
架橋触媒においては、例えばハロゲン系化合物を適用できる。このハロゲン系化合物とは、金属ハロゲン化物,有機ハロゲン化物を示すものであり、該金属ハロゲン化物としては第一塩化錫,第二塩化鉄,第二塩化銅等が挙げられ、有機ハロゲン化物として塩素化ポリプロピレン,塩素化ポリエチレン,臭化ブチルゴム,クロロプレンゴム等のハロゲン化樹脂が挙げられる。また、ハロゲン化物の好ましい配合量として約0.1phr〜約20phrの範囲、より好ましい配合量として約1phr〜約15phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。なお、配合量が少な過ぎる場合には架橋反応が起こり難くなり、エラストマー成形体の機械的物性は低下する可能性がある。また、配合量が多過ぎる場合には加工性(押出し加工性等)が低下したり、架橋反応が過剰に起こる可能性がある。
【0027】
軟化剤においては、例えばプロセスオイル,パラフィン系オイル,潤滑油,流動パラフィン,石油アスファルト,ワセリン等の石油系軟化剤や、コールタール,コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤や、ヒマシ油,アマニ油,ナタネ油,ヤシ油等の脂肪油系軟化剤が挙げられる。これら各軟化剤のうち、好ましくは石油系軟化剤が挙げられ、より好ましくはパラフィン系オイルが挙げられる。また、前記の軟化剤の好ましい配合量として約20phr以上に設定することが挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。なお、以上示した軟化剤は、ゴム組成物での使用に限られるものではなく、ゴム組成物と共に後述の結晶性オレフィン系樹脂等を混練する場合においても適宜用いること(例えば、約20phr以上の範囲で適用)ができるものである。
【0028】
なお、前記のゴム組成物においては、前記の各種成分の他に架橋促進剤,架橋助剤等の各主成分が配合されていても良い。例えば、前記の架橋促進剤としては、熱可塑性エラストマー組成物の分野で知られているものを適用でき、例えば酸化亜鉛,脂肪酸,脂肪酸金属塩等が挙げられ、ステアリン酸,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸亜鉛等の市販品も好適に適用できる。また、架橋促進剤の好ましい配合量として約0.5phr〜約7phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。加工助剤としては、熱可塑性エラストマー組成物の分野で知られているものを適用でき、例えばステアリン酸,リシノール酸,パルミチン酸,ラウリン酸等の高級脂肪酸、該高級脂肪酸のエステル類、ステアリン酸等の高級脂肪酸の塩が挙げられ、ステアリン酸,ステアリン酸カルシウム,ステアリン酸亜鉛等の市販品も好適に適用できる。また、加工助剤の好ましい配合量として約0.5phr〜約7phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
【0029】
[結晶性オレフィン系樹脂]
前記の結晶性オレフィン系樹脂としては、例えばエチレンの単独重合体や、エチレン,プロピレン等を主体とする結晶性の共重合体を用いることができる。具体例として、高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,エチレン・ブテン−1共重合体の結晶性エチレン系共重合体,アイソタクチックポリプロピレン,プロピレン−エチレン共重合体,プロピレン・ブテン−1共重合体,プロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体等が挙げられ、好ましくはポリプロピレン系重合体が挙げられる。また、結晶性オレフィン系樹脂の好ましい配合量として約50phr〜約300phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
【0030】
[非結晶性オレフィン系樹脂]
非結晶性オレフィン系樹脂は、前記のゴム組成物等と共に混練されるものであり、例えばα‐オレフィンの単独重合体や2種類以上の共重合体等を挙げることができる。ただし、共重合体の場合には、その主成分となる(実施例の非結晶性オレフィンの共重合体では、プロピレン・1‐ブテン)α‐オレフィン単位が、アタクチック構造で結合しているものを使用する。具体例としては、アタクチックポリ‐1‐ブテン等の単独重合体や、ポリプロピレン(50モル%以上含有)と他のα‐オレフィン(エチレン,1‐ブテン,1‐ペンテン,1‐ヘキセン,4‐メチル‐1‐ペンテン,1‐オクテン,1‐デセン等)との共重合体や、1‐ブテン(50モル%以上含有)と他のα‐オレフィン(エチレン,プロピレン,1‐ペンテン,1‐ヘキセン,4‐メチル‐1‐ペンテン,1‐オクテン,1‐デセン等)との共重合体等を挙げることができる。
【0031】
また、前記の各共重合体は、それぞれ単独で用いても良く、2種類以上を適宜組合わせて用いても良い。特に好ましくは、アタクチックポリプロピレン(プロピレン含有量50モル%以上)とエチレンとの共重合体や、プロピレンと1‐ブテンとの共重合体が挙げられる。さらに、好ましい配合量として約100phr以下、より好ましい配合量として約50phr以下に設定することが挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。例えば、前記の配合量が多過ぎる場合(例えば、約100phr超の場合)、ブリード現象を惹起し外観性を著しく悪化させる恐れがある。
【0032】
[架橋剤(フェノール樹脂系架橋剤)]
前記の架橋剤としてはフェノール樹脂系架橋剤を適用し、例えばアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、メチロール化アルキルフェノール樹脂等を適用できる。また、末端の水酸基を臭素化した臭化フェノール樹脂、例えば臭素化アルキルフェノール樹脂等のハロゲン化フェノール樹脂を用いることもでき、好ましくはアルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。フェノール樹脂系架橋剤の好ましい配合量として約3phr〜約20phrの範囲、より好ましい配合量として約4phr〜約15phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損わない程度であれば適宜用いることができる。
【0033】
なお、配合量が少な過ぎる場合には架橋反応が起こり難くなり、エラストマー成形体の機械的物性は低下する可能性がある。また、配合量が多過ぎる場合には、加工性(押出し加工性等)が低下したり、架橋反応が過剰に起こる可能性がある。さらに、架橋剤として前記のようなハロゲン化フェノール樹脂を用いた場合、該ハロゲン自体が架橋触媒の機能を有するため、そのハロゲン化フェノールと脱水金属酸化物との受酸反応生成物が生成されることから、前述の架橋触媒を省略することが可能となる。
【0034】
[充填剤]
充填剤としては、無機充填剤等が挙げられ、例えば炭酸カルシウム,クレー,シリカ,ケイ酸カルシウム,炭酸マグネシウム,水酸化マグネシウム,酸化アルミニウム,カオリン,マイカ,ゼオライト等が挙げられ、何れか1種類を用いても良く、複数の種類のものを組み合わせて用いても良い。好ましい配合量として約0〜約100phrの範囲が挙げられるが、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
【0035】
[その他]
以上示した各種成分の他には、液状ポリマー(液状ゴム),酸化防止剤,老化防止剤,脱水剤,熱安定剤,光安定剤,紫外線吸収剤,中和剤,滑剤(例えば、シリコーンオイル,シリコーンゲル等),摺動性パウダー(例えば、PMMA,フッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)系パウダー,アクリル系パウダー,シリコーンゴムパウダー,ポリカーボネート系パウダー,超高分子系ポリエチレンパウダー等),防雲剤,アンチブロッキング剤,スリップ剤,分散剤,難燃剤,帯電防止剤,導電性付与剤,粘着付与剤,架橋助剤,金属不活性剤,分子量調整剤,防菌・防黴剤,蛍光増白剤,摺動性向上剤,着色剤(酸化チタン等),金属粉末(フェライト等),ガラス繊維,無機繊維(金属繊維等),炭素繊維,有機繊維(アラミド繊維等),複合繊維,ガラスバルーン,ガラスフレーク,グラファイト,カーボンナノチューブ,フラーレン,硫酸バリウム,フッ素樹脂,充填剤ポリオレフィンワックス(ポリマービーズ等),セルロースパウダー,ゴム紛,再生ゴム等が挙げられ、何れか1種類または複数の種類のものを組み合わせ、目的とする熱可塑性エラストマー組成物の特性を大きく損なわない程度であれば適宜用いることができる。
【0036】
[製法]
本実施形態のゴム組成物においては、EPDM,カーボンブラック等を配合して混練でき、バウンドラバーが形成されたゴム組成物を得ることができるものであれば、熱可塑性エラストマー組成物の分野で用いられている手法(混練機,二軸押出し成形機等を用いた手法)を適用することができる。
【0037】
また、熱可塑性エラストマー組成物においては、前記のゴム組成物,結晶性オレフィン系樹脂等を配合して混練(動的架橋温度よりも低い温度で混練)でき、その混練物を加熱(動的架橋する温度に加熱)して動的架橋し、該架橋完了後に加工できるものであれば、熱可塑性エラストマー組成物の分野で用いられている手法(混練機,二軸押出し成形機等を用いた手法)を適用することができる。
【0038】
例えば、前記のゴム組成物,熱可塑性エラストマー組成物に係る混練には、それぞれ種々のミキサーを適用することができ、例えばラボプラストミル等のバッチ式ミキサーや二軸押出し式の成形機(例えば、混練しながら押出し成形可能なもの)等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマー組成物に係る混練において、前記の二軸押出し成形機を用いた場合は、例えばタンブラーミキサー(ドライブレンド)等を併用することにより、前記の混練,動的架橋,成形を連続的に行うことができる。
【0039】
なお、非結晶性オレフィン系樹脂を用いる場合は、該非結晶性オレフィン系樹脂を前記の混練物の動的架橋中(動的架橋開始後から動的架橋完了までの間;例えば、混練物の温度が約190℃〜約250℃の際)に配合および混練できるもの(例えば、二軸押出し式の成形機)を適用することが好ましい。非結晶性オレフィン系樹脂自体は架橋阻害反応を起こすことが無いものの、動的架橋前の混練物に対して配合した場合、その非結晶性オレフィン系樹脂とゴム組成物とが反応し熱可塑性エラストマー組成物の特性が損なわれる恐れがある。一方、動的架橋中の混練物に対して配合した場合には、該非結晶性オレフィン系樹脂が結晶性オレフィン系樹脂側に取り込まれている状態になり易くなる。
【実施例】
【0040】
次に、本実施形態に基づいて種々の熱可塑性エラストマー組成物(後述のエラストマーS1〜S12(実施例),P1〜P9(従来例))を作製し、それらエラストマーから成る成形体(後述の成形体GS1〜GS12(実施例),GP1〜GP9(従来例))の外観性と物性を検証した。
【0041】
まず、ゴム材料としてEPDM(ダウケミカル社製のノーデルIP4760P,住友化学社製のエスプレン7456(油展20phr);以下、それぞれをEPDM‐1,EPDM‐2と称する)、カーボンブラック(旭カーボン社製の旭♯35(平均粒子径78nm,硫黄含有量0.5wt%),旭♯50H(平均粒子径85nm,硫黄含有量0.5wt%),旭♯60(平均粒子径45nm,硫黄含有量0.6wt%),旭♯60H(平均粒子径41nm,硫黄含有量0.6wt%),旭♯70(平均粒子径26nm,硫黄含有量0.6wt%),;以下、カーボンA,B,C,D,Eと称する)、架橋触媒としてハロゲン系架橋触媒(塩化第一錫(日本化学産業社製),塩素化ポリエチレン(日本製紙ケミカル社製のスーパークロンポリエチレンタイプ),塩素化ポリプロピレン(日本製紙ケミカル社製のスーパークロンポリエチレンタイプ))、軟化剤としてプロセスオイル(JOMO社製のP300)をそれぞれ下記表1に示すように用い、後述の製法A,Bの何れかを適用してそれぞれのゴム組成物を作成した。なお、前記の各ゴム組成物は、下記の表1に示す各種材料の他に、添加剤としてステアリン酸(日本油脂社製のステアリン酸)1phr,酸化亜鉛(三井金属鉱業社製の酸化亜鉛)1phr,酸化防止剤(チバスペシャリティケミカル社製のIrganox1010)0.5phrを配合(EPDM等と共に配合)したものとする。
【0042】
そして、前記のゴム組成物の他に、結晶性オレフィン系樹脂として結晶性ポリプロピレン樹脂(出光社製のE‐200GP)、非結晶性オレフィン系樹脂としてプロピレン・1‐ブテン共重合体(宇部興産社製のUBETAC APAO UT2780)、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂(田岡化学社製のタッキロール205‐I)、軟化剤としてプロセスオイル(ゴム組成物に用いたものと同じ)をそれぞれ下記表1に示すように用い、後述の製法A〜Cの何れかを適用してそれぞれ熱可塑性エラストマー(以下、それぞれをエラストマーS1〜S12,P1〜P7と称する)を作成した。また、前記の該エラストマーS1〜P7で適用した各種材料をそれぞれ下記表1に示すように用い、後述の製法Dを適用してそれぞれ熱可塑性エラストマー(以下、それぞれをエラストマーP8,P9と称する)を作成した。
【0043】
【表1】

【0044】
[製法]
<製法A>
製法Aでは、まずゴム組成物において、EPDM,カーボンブラック,架橋触媒,軟化剤,添加剤(ステアリン酸,酸化亜鉛,酸化防止剤)をミキサー(三菱重工社製のMR5E(製法B,Cも同機種))に対して一括投入(充填率70%)し、該ミキサーの混練条件を50rpmに設定して5分間混練し、その混練物を分出してペレット状(5mm×5mm×5mm)のゴム組成物を得た。
【0045】
次に、前記のゴム組成物と共に結晶性オレフィン系樹脂,架橋剤をタンブラーミキサーにより15分間ドライブレンドした後、そのブレンド物(混練物)と共に軟化剤をΦ30の二軸押出し成形機(神戸製鋼所社製;L/D=74)に投入し、成形条件を温度200℃,回転数450rpm,滞留時間2分間に設定して混練しながら加熱し、前記のブレンド物を動的架橋させながら押出しすることにより、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0046】
<製法B>
製法Bでは、前記の製法Aと同様の手法によりペレット状のゴム組成物を得て、そのゴム組成物と共に結晶性オレフィン系樹脂,架橋剤をタンブラーミキサーにより15分間ドライブレンドした後、そのブレンド物と共に軟化剤をΦ30の二軸押出し成形機(神戸製鋼所社製;L/D=74)に投入し、以下製法A同様に混練および加熱、動的架橋、押出し成形を行って、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。なお、前記の動的架橋中において、ブレンド物のうち200℃の温度分布に位置するバレル口(ブレンド物の温度(成形機内に設置されたセンサ等により検出される温度)が200℃に達する領域のバレル口)から、非結晶性オレフィン系樹脂を投入して配合し、該動的架橋を完了させたものとする。
【0047】
<製法C>
製法Cでは、まずEPDM,カーボンブラック,軟化剤,添加剤(ステアリン酸,酸化亜鉛,酸化防止剤)を用いて(架橋触媒以外のものを用いて)、前記の製法Aと同様の手法によりペレット状のゴム組成物を得た。そして、前記のゴム組成物と共に結晶性オレフィン系樹脂,架橋剤,架橋触媒をタンブラーミキサーにより15分間ドライブレンドした後、そのブレンド物と共に軟化剤をΦ30の二軸押出し成形機(神戸製鋼所社製;L/D=74)に投入し、以下製法A同様に混練および加熱、動的架橋、押出し成形を行って、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0048】
<製法D>
製法Dでは、まずEPDM,カーボンブラック,添加剤(ステアリン酸,酸化亜鉛,酸化防止剤),結晶性オレフィン系樹脂,架橋剤をタンブラーミキサーにより15分間ドライブレンドした後、そのブレンド物と共に軟化剤をΦ30の二軸押出し成形機(神戸製鋼所社製;L/D=74)に投入し、以下製法A同様に混練および加熱、動的架橋、押出し成形を行って、ペレット状の熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0049】
[検証]
前記のように得られた各エラストマーS1〜S12,P1〜P9を用いて、以下に示す方法により種々の検証を行い、その結果を後述の表2に示した。
【0050】
<外観性(「メヤニ」,「ブツ」の有無、表面粗さ,耐変色性)>
まず、D20−10型ラボブラストミル一軸押出し機(東洋精機製作所製,20Φ)を用いて(押出し加工条件;シリンダー前段の温度180℃,シリンダー中段の温度190℃,シリンダー後段の温度200℃,ヘッドの温度200℃,口金形状2mm×10mm,回転速度50rpm)、前記のエラストマーS1〜S12,P1〜P9をそれぞれ押出し加工することにより、長さ300mmの成形体GS1〜GS12,GP1〜GP9をそれぞれ5時間連続で作製し続け、口金の「メヤニ」の有無を観測した。なお、後述の表2中の「メヤニ」の欄において、記号「◎」は「メヤニ」が全く観られなかった場合、記号「○」は「メヤニ」が若干観られたが成形体への付着は観られなかった場合、記号「△」は「メヤニ」が観られ2〜5時間経過時の成形体において付着が観られた場合、記号「×」は「メヤニ」が観られ0〜2時間経過時の成形体において付着が観られた場合であったものとする。
【0051】
また、前記の成形体GS1〜GS12,GP1〜GP9をそれぞれ100回押出し加工した場合において「ブツ」の有無を観測し、該「ブツ」数(直径0.5mm以上の「ブツ」の数)の平均値を観測した。なお、後述の表2中の「ブツ」の欄において、記号「◎」は平均値が1個以下、記号「○」は平均値が1〜2個、記号「×」は平均値が3個以上であったものとする。
【0052】
さらに、前記の成形体GS1〜GS12,GP1〜GP9をそれぞれ矩形平板状(5mm×100mm×2mm)に打ち抜いて試料片を作製し、その試料片の表面の汚れをアルコールで拭き取った後、表面粗さ計(小坂研究所社製のサーフコーダSE30D)を用いた十点平均法(JIS−B0601に準拠した方法)により該試料片の表面粗さ(十点平均粗度)をそれぞれ測定した。なお、前記表面粗さ計の触針には、触針先端半径2μmのものを使用した。
【0053】
さらにまた、JIS Z 8722‐Cに準拠して、前記の成形体GS1〜GS12,GP1〜GP9をそれぞれ温度70℃の雰囲気下で70時間の加熱処理を行ってから室温下にて30分間放置し、その放置後の成形体と加熱処理前の成形体(押出し成形直後の成形体)との色相差(ΔE)を分光測色計(コニカミノルタ社製のcμ‐2600d)により測定し、白化現象を想定した耐変色性を調べた。
【0054】
<粘弾性特性>
前記のエラストマーS1〜S12,P1〜P9において、粘弾性測定機(米国アルファテクノロジーズ社製のRPA2000)を用いて周波数100rad/s,歪5%および20%での複素粘性率G*を測定し、下記式により複素粘性率の歪依存性G*r(%)を算出した。
【0055】
「複素粘性率の歪依存性G*r(%)」=(「歪5%での複素粘性率G*(%)」/「歪5%での複素粘性率G*(%)」)×100
<機械的物性(圧縮永久歪率,伸張永久歪率)>
JIS−K6262法に基づいて、各成形体GS1〜GS12,GP1〜GP9を所望形状(JIS規定の形状)の試験片に加工(打抜き)し、それぞれの圧縮永久歪率(70℃×22時間,圧縮率25%),伸張永久歪率(70℃×22時間,伸長率25%)を測定した。
【0056】
<硬度>
JIS K 6253に準拠して、前記の成形体GS1〜GS12,GP1〜GP9の硬度をタイプAのデュロメータにより測定した。
【0057】
<総合判定>
前記の各種検証結果を比較し総合的に判定した。なお、後述の表2中の「総合判定」の欄において、記号「◎」は好適な結果が得られた場合、記号「×」は不適格な結果が得られた場合、記号「○」は十分な結果が得られた場合(「◎」よりは劣るが、「×」よりも良好な場合)、記号「△」は不十分な結果が得られた場合(「○」よりは劣るが、「×」よりも良好な場合)であったものとする。
【0058】
【表2】

【0059】
表2の結果から、それぞれ以下に示すことが読み取れる。
【0060】
[従来例(カーボンブラックが配合されたゴム組成物を用いた場合)]
カーボンブラックの配合量が比較的少量のエラストマーP1を用いた場合や、ゴム組成物中に架橋触媒が配合されていないエラストマーP4を用いた場合や、ゴム組成物における軟化剤の配合量が多量のエラストマーP6を用いた場合は、「メヤニ」や「ブツ」等が観られなかったものの少なからず白化現象が生じ、物性において悪い結果になってしまった。また、該カーボンブラックの配合量が極めて多量のエラストマーP2を用いた場合や、結晶性オレフィン系樹脂等と共に架橋触媒を混練したエラストマーP7を用いた場合は、粘弾性特性が良好で十分な物性が得られたものの、外観性が低くなってしまった。さらに、カーボンブラックの平均粒子径が極めて小さいエラストマーP3を用いた場合や、ゴム組成物における軟化剤の配合量が少量のエラストマーP5を用いた場合は、外観性および物性において悪い結果になってしまった。
【0061】
これらの結果から、たとえカーボンブラックが配合されたゴム組成物を用いた熱可塑性エラストマー組成物であっても、ゴム組成物中のカーボンブラックにおいて配合量が過少・過多または平均粒子径が過小であったり、該ゴム組成物中の軟化剤において配合量が過少・過多であったり、該ゴム組成物中に架橋触媒が配合されていない場合には、外観性や物性が低くなってしまうことが読み取れる。
【0062】
[従来例(カーボンブラックが配合されたゴム組成物を用いない場合)]
前記のエラストマーP1〜P7のようなゴム組成物を適用せず、カーボンブラックが比較的多量配合されたエラストマーP8を用いた場合は、外観性および物性において悪い結果になってしまった。また、エラストマーP8と同様の組成であって、該カーボンブラックの配合量が極めて少量のエラストマーP9(例えば、特許文献1同様の配合の熱可塑性エラストマー)を用いた場合は、十分良好な外観性が得られたものの、物性が低くなってしまった。
【0063】
これらの結果から、カーボンブラックが配合されたゴム組成物を用いない場合には、たとえカーボンブラックの配合量を調整しても、外観性や物性が低くなってしまうことが読み取れる。
【0064】
[実施例(エラストマーS1〜S12を用いた場合)]
カーボンブラックが配合されたゴム組成物を用いたものであって、該カーボンブラック(平均粒子径が一般的な範囲内のカーボンブラック)の配合量が50phr〜100phrのエラストマーS1〜S5,S12を用いた場合は、エラストマーP1〜P9とは異なり、外観性や物性において十分良好な結果が得られた。また、前記のエラストマーS1〜S5,S12と同様であって、ハロゲン系架橋触媒として塩素化ポリエチレン,塩素化ポリプロピレンを配合したエラストマーS6,S7を用いた場合や、軟化剤の配合量が20phr以上のエラストマーS8,S10を用いた場合や、ゴム組成物において油展されたEPDMが配合されたエラストマーS9を用いた場合においても、十分良好な結果が得られた。さらに、非結晶性オレフィン系樹脂が配合されたエラストマーS11を用いた場合は、エラストマーS1〜S10,S12と比較して、外観性や物性がより良好な結果が得られた。
【0065】
これらの結果から、EPDM100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練して得られるゴム組成物を用いて成る熱可塑性エラストマー組成物によれば、カーボンブラックの用途を着色のみに制限したり硫黄含有量を制限しなくとも、エラストマー成形体の各種物性(耐ヘタリ性等)や外観性を良好にできることが読み取れる。
【0066】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0067】
例えば、実施例では、エラストマーS1〜S12を用いて検証し説明したが、熱可塑性エラストマー分野の技術常識に基づいて、ゴム組成物中のハロゲン系架橋触媒等の配合量や種類、ゴム組成物以外の各種成分(結晶性オレフィン系樹脂,非結晶性オレフィン系樹脂,フェノール樹脂系架橋剤,軟化剤)等の配合量や種類を適宜変更しても、実施例同様の作用効果が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】熱可塑性エラストマー組成物の架橋ゴム成分の分散状態を説明するための概略図。
【符号の説明】
【0069】
1…結晶性オレフィン系樹脂
2a,2b…架橋ゴム成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン‐α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練して得られバウンドラバーが形成されたゴム組成物と、結晶性オレフィン系樹脂と、フェノール樹脂系架橋剤と、軟化剤とを配合して混練し、その混練物を動的架橋して成ることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
複素粘性率の歪依存性G*rが80%以下であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記の混練物は非結晶性オレフィン系樹脂を配合したことを特徴とする請求項1または2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記のカーボンブラックの平均粒子径は45nm以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
ゴム組成物,結晶性オレフィン系樹脂,フェノール樹脂系架橋剤,軟化剤を配合して混練し、その混練物を動的架橋して成る組成物の製造方法であって、
前記ゴム組成物は、エチレン‐α‐オレフィン・非共役ポリエン共重合体100phrに対しカーボンブラック50phr〜100phr,軟化剤20phr以上,ハロゲン系架橋触媒を加え混練してバウンドラバーが形成されて成り、
前記混練物は、動的架橋中に非結晶性オレフィン系樹脂が配合されたことを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−120731(P2009−120731A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296569(P2007−296569)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000158840)鬼怒川ゴム工業株式会社 (171)
【Fターム(参考)】