説明

熱可塑性エラストマー組成物とその製造方法

【課題】オレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムをポリマー成分として含み動的架橋することにより、押出成型品の外観、肌が優れ、更に圧縮永久歪、引張り強度等の物性を兼ね備えたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記の成分(A)〜(D)を動的熱処理して得られる組成物に成分(E)を添加して混練する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
(A):エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム40〜95重量部
(B):ポリオレフィン系樹脂5〜60重量部
(C):ハロゲン化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤0.1〜20重量部
(D):酸化鉄0.001〜0.7重量部
(E):ハロゲン成分捕捉剤0.1〜20重量部

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とその製造方法に関するものである。詳しくは、オレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムをポリマー成分として含み、動的熱処理して得られる組成物の押出し成形品の外観肌が優れ、しかも引張り強度、圧縮永久歪等の物性が優れたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂とゴムとを動的熱処理することで熱可塑性エラストマーを得る場合、架橋剤としてアルキルフェノール樹脂を、活性剤として塩化スズを併用することは、すでに公知である。かかる熱可塑性エラストマーは、加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様の成形加工性を有し、工程合理化やリサイクル性などの観点から注目され、自動車部品、家電部品、医療用機器部品、電線、などの分野で広範囲に使用されている。
【0003】
しかし、従来公知の技術で得られる熱可塑性エラストマーは、引張り強度、圧縮永久歪等の物性面では満足なものが得られるが、押出し品の外観、肌等は劣るという問題があった(特許文献1及び特許文献2参照)。この問題の原因は樹脂架橋剤と活性剤を一括添加し動的架橋を行うと、架橋反応が著しく速くなるため、オレフィン系樹脂とゴムとのモルホロジーが不適切となることにあった。
【0004】
【特許文献1】特開平4−63851公報
【特許文献2】特許第3303005公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、オレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムをポリマー成分として含み、動的架橋することにより、押出成型品の外観、肌が優れ、更に圧縮永久歪、耐油性、引っ張り強度等の物性を兼ね備えたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち第一の発明は、下記の成分(A)〜(D)を動的熱処理して得られる組成物に成分(E)を添加して混練する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に係るものである。
(A):エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム40〜95重量部
(B):ポリオレフィン系樹脂5〜60重量部
(C):ハロゲン化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤0.1〜20重量部
(D):酸化鉄0.001〜0.7重量部
(E):ハロゲン成分捕捉剤0.1〜20重量部
また、本発明のうち第二の発明は、上記の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、オレフィン系樹脂及びエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムをポリマー成分として含み動的架橋することにより、押出成型品の外観、肌が優れ、更に圧縮永久歪、引張り強度等の物性を兼ね備えたオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の(A)成分は、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムであり、具体的にはエチレン−α−オレフィン共重合体ゴム及びエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムをあげることができる。
【0009】
上記のα−オレフィンとしては、たとえばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどがあげられ、なかでもプロピレンが好ましい。また、非共役ジエンとしては、たとえば1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどがあげられる。
【0010】
(A)のエチレン/α−オレフィンの比率(重量比)は、好ましくは90/10〜30/70である。なお、エチレン−α−オレフィン共重合体ゴムとエチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを混合して用いてもよい。なお、油展ゴム及び非油展ゴムのいずれでもよい。なお、油展ゴム中の伸展油の含有量は、共重合体ゴム100重量部あたり好ましくは20〜200重量部である。
【0011】
伸展油は熱可塑性エラストマー組成物の低硬度化、耐油性の向上等の効果をもたらす。
油展ゴムを用いる場合、伸展油は共重合体ゴムとみなした重量を適用する。
【0012】
エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムの好ましい例として、エチレン/プロピレンの重量比率が85/15〜45/55のエチレン−プロピレン共重合体ゴムをあげることができる。
【0013】
エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムは、100℃のムーニー粘度(ML1+4100℃)が10〜350のものが好ましく、更に好ましくは30〜300である。該ムーニー粘度が低すぎると機械的強度に劣ることがあり、一方該ムーニー粘度が高すぎると成形品の外観が損なわれることがある。
【0014】
エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体ゴムを用いる場合の非共役ジエンの含有量は、好ましくは1〜30重量%、より好ましくは3〜20重量%である。エチレン含有量が90重量%を超える場合は、得られる組成物の柔軟性が失われ、50重量%未満の場合は機械的強度が低下する傾向にある。また、非共役ジエン含有量が1重量%未満の場合は、得られる組成物の架橋度が上がらないために機械的強度が低下し、30重量%を超える場合は、射出成形性等が劣る傾向を示し、コストの点でも不利になる。
【0015】
本発明の(B)成分は、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどの単独重合体又は共重合体があげられ、なかでもポリプロピレンが好ましい。
【0016】
ポリプロピレンは公知の重合体であり、公知の重合方法によって重合される。プロピレンを重合する際、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンを共重合してもよい。立体構造としては、アイソタクチック構造が好ましいが、シンジオタクチック構造のものやこれらの構造の混ざったもの、一部アタクチック構造を含むものも用いることができる。また、ポリプロピレンはプロピレンを主体とする重合体であり、プロピレンホモポリマー、プロピレン―α―オレフィンのランダムコポリマーやブロックコポリマー等である。ポリプロピレンのメルトフローレート(JIS K6758に従い、温度230℃、荷重21.18Nで測定する。)は0.05〜100g/10分であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜50g/10分である。
【0017】
本発明の(C)成分は、ハロゲン化アルキルフェノール樹脂架橋剤系のである。
【0018】
熱架橋性フェノール樹脂は、公知の反応方法により生産されるが、メチロール基を備えたアルキルフェノール樹脂、及び末端の水酸基を臭素化した臭素化アルキルフェノール樹脂等が(C)成分の架橋剤として供される。これらの中でもメチロール基を備えたアルキルフェノール樹脂は、塩素系の活性剤が必要であることから、生産設備の腐食性が著しいため、臭素化アルキルフェノール樹脂が好ましい。
臭素化アルキルフェノール架橋剤としては下式で表される化合物を例示することができる。



式中、nは0〜10の整数;Rは炭素数1〜15の飽和炭化水素基である。
【0019】
本発明の(D)成分は酸化鉄である。
【0020】
本発明の(E)成分はハロゲン成分補足剤として作用し、好ましくは、臭素捕捉作用がある物質であり、より好ましくは、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの内から選ばれる少なくとも一種である。中でも酸化亜鉛、酸化マグネシウムが特に好ましい。酸化亜鉛は1種、2種および活性亜鉛化等粒子径にこだわらずゴム用、塗料用、印刷用と広範囲なものが使用できる。
また酸化マグネシウムは、粒子径にこだわらずゴム用、樹脂用、食品添加物用等が使用できる。
【0021】
本発明の製造方法で使用する各成分の量は、次のとおりである。(A)の添加量は40〜95重量部であり、(B)の添加量は5〜60重量部であり(ただし、(A)及び(B)の合計を100重量部とする。)、(A)及び(B)の合計量100重量部あたりの(C)の添加量は0.1〜20重量部であり、(D)の添加量は0.001〜0.7重量部であり、(E)の添加量は0.1〜20重量部である。なお、油展ゴムを用いた場合の(A)の量は、伸展油を含んだ量を基準とする。また、各成分の量は、二種以上のものを併用した場合、合計量を基準とする。
【0022】
本発明の最大の特徴のひとつは、(D)成分である酸化鉄(架橋活性剤)の添加量が好ましくは微量であることにある。(D)成分が微量であると架橋速度が遅くなり、動的架橋が良好に進行するため、オレフィン系樹脂とゴムのモルフォロジーが好ましいものとなり、押出し成形品の外観、肌が改善される傾向がある。(D)成分の添加量が微量であるゆえ、(E)成分であるハロゲン成分捕捉剤と(D)成分を同時に添加し動的熱処理すると、(D)成分の活性剤としての効果が失われるため、架橋度が低下し圧縮永久歪、引張り強度等の物性が劣ることになる。このような問題を解消する方策として、(A)成分〜(D)成分とを添加し、動的熱処理を行った後、得られる組成物に(E)成分を添加して混練することを発見し本発明に至ったものである。
【0023】
本発明において、その効果を損なわない範囲で、各種目的に応じ他の成分を使用することが出来る。この様な成分としては、例えば、充填材、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、粘着付与剤、着色剤、中和剤、滑剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、抗菌剤、殺菌剤、カーボンブラック、タルク、クレー、シリカ等の無機フィラー類、ガラス繊維、炭素繊維、プロセスオイル、軟化剤等が挙げられる。
【0024】
本発明の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、(A)〜(D)成分を動的熱処理した後、得られる組成物に(E)成分を添加して混練するものであり、本発明により、押出し加工性が優れた熱可塑性エラストマーを得ることができる。
【0025】
(A)成分と(B)成分の重量比((A)/(B))は、40/60〜95/5である。(A)成分が過少であると、得られた組成物が弾性を示さなくなる傾向にあり、一方(A)成分が過多であると流動性が低下し、押出し物及び射出成形物等の外観不良となる傾向がある。(B)成分が過少であると流動性が低下し、押出し物の外観不良となる傾向がある。一方(B)成分が過多であると得られた組成物の硬度が高くなり、柔軟性が失われる傾向がある。
【0026】
(C)成分はハロゲン化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤である。(C)成分の添加量は、(A)と(B)の合計100重量部あたり0.1〜20重量部である。(C)成分が過少であるとオレフィン系共重合ゴムの十分な架橋度が得られないため、得られた組成物の引張り強度、圧縮永久歪等の物性が劣る傾向がある。一方(C)成分が過多であると得られた組成物の流動性の低下、臭気が強くなる、コストの点で不利になる等の問題がある傾向がある。
【0027】
(D)成分は架橋活性剤として作用する。(D)成分の添加量は、(A)と(B)の合計100重量部あたり0.001〜0.7重量部であり、好ましくは0.001〜0.5重量部、より好ましくは0.001〜0.3重量部、さらに好ましくは0.001〜0.1重量部である。(D)成分が過少であるとオレフィン系共重合ゴムの架橋度が低くなり、得られた組成物の耐熱性、引張り強度、圧縮永久歪等の物性が劣る傾向がある。一方(D)成分が過多であるとオレフィン系共重合ゴムの架橋速度が速くなることから、得られた組成物の押出し肌が悪化する傾向がある。
【0028】
(E)成分はハロゲン成分捕捉剤である。(E)成分の添加量は、(A)と(B)の合計100重量部あたり0.1〜20重量部である。(E)成分が過少であると動的熱処理による架橋反応で発生するハロゲンガスを補足することが不十分で、生産装置の腐食、環境汚染等の問題が発生する傾向がある。一方(E)成分が過多であると前記問題点は解消されるが、得られた組成物の引張り強度、圧縮永久歪等の物性が劣る傾向がある。
【0029】
(E)成分を添加するタイミングは、(A)〜(D)成分を加え動的熱処理を行った後である。(A)〜(E)を同時に添加し動的熱処理を行うと架橋度が低下し、得られた組成物の引張り強度、圧縮永久歪等の物性が劣ることになる。または、(E)成分として酸化亜鉛を用い、(A)〜(E)成分を同時に添加すると架橋速度が速くなるため、得られた組成物の引張り強度、圧縮永久歪等の物性は良好だが、押出し品の外観、肌が悪化することになる。
【0030】
本発明は、上記(A)〜(D)成分を動的熱処理して得られる組成物に(E)成分を添加して混練する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法である。動的熱処理装置としては開放型のミキシングロール、非開放型のバンバリーミキサー、ニーダー、押出機、二軸押出機等公知のものを使用することができる。またはニ種以上の複数の装置を組み合わせることも可能であるが、特に生産性の点で二軸押出機が好適に使用される。動的熱処理の条件(温度、時間)は、通常は150〜300℃、好ましくは170〜280℃で、時間は0.5〜30分、好ましくは1〜20分である。(E)成分を添加した後の混練は、該動的熱処理と同様の装置及び方法等で実施することができる。
【0031】
本発明によりえられる熱可塑性エラストマー組成物は、一般に使用される成型法例えば、射出成型法、押出成型法、中空成型法、圧縮成型法等により成形される。用途としては自動車部品(ウェザーストリップ、天井材、内装シート、バンパーモール、サイドモール、エアスポイラー、エアダクトホース、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド 、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション、フードシール、グラスランチャンネル、セカンダリーシール、各種パッキン類など)、土木・建材部品(止水材、目地材、建築用窓枠など)、スポーツ用品(ゴルフクラブ、テニスラケットのグリップ類など)、工業用部品(ホースチューブ、ガスケット等)、家電部品(ホース、パッキン類など)、医療用機器部品、電線、雑貨などの広汎な分野での資材として使用される。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
以下の実施例で使用した原材料および評価方法は次の通りである。
[使用した原材料]
EPDM(A成分):エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体ゴム(住友化学株式会社製エスプレン670F)パラフィン系オイル100部油展品
PP−1(B成分):ポリプロピレン(住友化学株式会社製ノーブレンHR100)
酸化防止剤:イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)
フェノール樹脂(C成分):臭素化アルキルフェノール樹脂(田岡化学(株)製タッキロール250−I
酸化鉄(D成分):酸化鉄(III)及び酸化鉄(IV)(いずれも関東化学製試薬1級)
酸化亜鉛(E成分):2種酸化亜鉛(正同化学製)
酸化マグネシウム(E成分):キョウワマグ150(協和化学製)
【0034】
[評価方法]
本発明で得られた熱可塑性エラストマー組成物を200℃で圧縮成型することにより厚み2mmの試験片を作成し、以下の方法で物性測定を行った。
硬度:JIS K6253準拠(Shore−A瞬間値)
破断強度:JIS K6251に準拠(JIS3号ダンベル、引張速度200mm/min)
破断伸び:同上
圧縮永久歪み:JIS K6262準拠(70℃、22時間、25%圧縮)
押出し肌表面粗さ(Rz)及び押出し肌実用性判定:25mmφ単軸押出機(ユニオンプラスチックス(株)製)L/D=20、フルフライトスクリュウ、幅100mm×厚み1mm平板状ダイス)を使用し、成形温度ホッパー部150℃、シリンダー220℃、ダイス220℃、スクリュウ回転数40rpmの条件で成形を行った。得られた押出成形品の表面を(株)東京精密社製表面粗さ計サーフコムにより10点平均粗さRzを測定した。(JIS B0601準拠)更に、実用性の優劣を目視にて○×(実用性がある=○、実用性なし=×)にて評価した。
押出し機の腐食性判定:下記の条件を適用しニ軸押出し機で動的熱処理を行った後、抜き出したスクリュウを洗浄炉(東レエンジニアリング(株)製フルクリーンIFB型)にて450℃x1時間熱処理した後、スクリュウの腐食状態を(腐食無し=○、僅かに腐食が認められる=×)判定した。
【0035】
実施例1〜5及び比較例1〜5
以下に実施例を明示するが材料の添加量は、(A)成分と(B)成分の合計重量が100重量部を基準とする。(表1参照)
ニ軸押出し機TEX44HCT((株)日本製鋼所製 L/D=42)にて回転数=280rpm、シリンダー温度=C1〜C2:30℃、C3〜C4:150℃、C5〜C11:185℃、C12:200℃、ヘッド温度=200℃、押出し速度=50kg/hrの基本条件において、(A)〜(D)成分の添加場所をシリンダー2の位置、(E成分)をシリンダー9の位置から添加した。
【0036】
実施例1:シリンダー2の位置から酸化鉄(III)(D成分)を0.01重量部添加し、シリンダー9位置からは酸化亜鉛(E成分)を0.3重量部添加した。実施例2:実施例1に準じるが、シリンダー2の酸化鉄(III)(D成分)の添加量を0.03重量部とした。実施例3:実施例2に準じるが、シリンダー9位置から酸化マグネシウム(E成分)を0.3重量部添加した。実施例4:実施例1に準じるが、フェノール樹脂(C成分)の添加量を3.6重量部とした。実施例5:シリンダー2から酸化鉄(IV)(D成分)をシリンダー9から酸化亜鉛(E成分)を0.8重量部添加した。これらはいずれも押出し肌が優れ、圧縮永久歪が優れ、しかも押出し機スクリュウの腐食性が無い。
【0037】
比較例1は(E)成分が未添加のため、押出し機スクリュウの腐食がある。比較例2は
、シリンダー位置9から(E)成分として酸化亜鉛を1重量部添加されているものの、シリンダー2位置からの酸化鉄(D成分)が未添加のため押出し肌が劣る。比較例3はシリンダー2の位置から酸化鉄(III)(D成分)を0.8重量部と多く添加しているため、押出し肌が劣る。比較例4は酸化鉄(IV)(D成分)を1.5重量部と多く添加しているため押出し肌が劣る結果になっている。比較例5はシリンダー2位置からの(D)成分、およびシリンダー9位置からの(E)成分が未添加のため、押出し加工ができず、押出し機スクリュウの腐食性がある。
【0038】
【表1】



【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】2軸押出し機のシリンダー位置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(D)を動的熱処理して得られる組成物に成分(E)を添加して混練する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
(A):エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム40〜95重量部
(B):ポリオレフィン系樹脂5〜60重量部
(C):ハロゲン化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤0.1〜20重量部
(D):酸化鉄0.001〜0.7重量部
(E):ハロゲン成分捕捉剤0.1〜20重量部
【請求項2】
(C)が臭素化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤である請求項2記載の製造方法。
【請求項3】
(E)が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの内から選ばれる少なくとも一種である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
下記の成分(A)〜(D)を動的熱処理して得られる組成物に成分(E)を添加して混練する熱可塑性エラストマー組成物の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物。
(A):エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム40〜95重量部
(B):ポリオレフィン系樹脂5〜60重量部
(C):ハロゲン化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤0.1〜20重量部
(D):酸化鉄0.001〜0.7重量部
(E):ハロゲン成分捕捉剤0.1〜20重量部
【請求項5】
(C)が臭素化アルキルフェノール樹脂系の架橋剤である請求項4記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
(E)が、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、酸化カルシウム及び炭酸
カルシウムの内から選ばれる少なくとも一種である請求項4記載の熱可塑性エラストマー組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2008−31445(P2008−31445A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165993(P2007−165993)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】