説明

熱可塑性ポリウレタン樹脂、成形品、および、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法

【課題】機械強度に優れるとともに、優れた熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂、その熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形して得られる成形品、および、そのような熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造できる熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールとを、少なくとも反応させることにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造する。また、その熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形することにより、成形品を得る。
HO−Y−NH−CO−(X)−CO−NH−Y−OH (1)
(式中、Xは、脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基または芳香環含有炭化水素基を示し、Y1およびY2は、互いに同一または相異なって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上である原子団を示す。また、nは、0または1の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタン樹脂、成形品、および、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールの反応により得られるゴム弾性体であって、ポリイソシアネートおよび低分子量ポリオールの反応により形成されるハードセグメントと、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールの反応により形成されるソフトセグメントとを備えている。
【0003】
このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーでは、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールの種類や配合割合を変更することにより、弾性率などの各種物性を調整することができ、また、耐摩耗性、機械強度(引張強度など)などの優れた特性を確保することができる。そのため、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、例えば、押出成形、射出成形など、熱可塑性樹脂の成形加工方法における成形材料として用いられており、例えば、靴のソールおよびインソール、スキー靴、自動車外装部品および内装部品、電装部品、キャスター類、ロール、ホース、チューブ、シート、繊維などの各種産業分野において、よく使用されている。
【0004】
このような熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、耐久性を向上させるべく、例えば、アミド基含有ポリオールと、ポリエステルジオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させて、TPUのペレットを製造し、また、そのTPUのペレットを射出成形することにより、ポリウレタン樹脂成形品を製造する方法が、知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1では、実施例3および4に記載されるように、モノエタノールアミンと、グルタル酸ジメチルまたはアジピン酸ジメチルとを反応させることにより、化学式HO−(CH−NH−CO−(CH−CO−NH−(CH−OH、または、化学式HO−(CH−NH−CO−(CH−CO−NH−(CH−OHで示されるアミド基含有ポリオールを、製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−72732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、上記のアミド基含有ポリオールと、ポリエステルジオールと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートとの反応により得られるTPUは、機械強度などに優れるものの、熱安定性が十分ではなく、耐熱性に劣る場合がある。
【0008】
また、耐熱性に劣るTPUでは、その熱成形性を十分に確保することができないため、押出成形、射出成形などによる成形品を、効率良く得ることができないという不具合がある。
【0009】
本発明の目的は、機械強度に優れるとともに、優れた熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂、その熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形して得られる成形品、および、そのような熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造できる熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールとを、少なくとも反応させてなることを特徴としている。
【0011】
HO−Y−NH−CO−(X)−CO−NH−Y−OH (1)
(式中、Xは、脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基または芳香環含有炭化水素基を示し、Y1およびY2は、互いに同一または相異なって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上である原子団を示す。また、nは、0または1の整数を示す。)
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、前記ポリイソシアネートと、前記アミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメントの含有量が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、25質量%以上であることが好適である。
【0012】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、前記ポリイソシアネートが、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、それらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0013】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、前記高分子量ポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適である。
【0014】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、5%重量減少温度が290℃以上であることが好適である。
【0015】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、前記高分子量ポリオールが、オキシエチレン基を含有し、前記オキシエチレン基の含有量が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、20質量%以上、65質量%以下であることが好適である。
【0016】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、厚み20μmのフィルムにしたときの透湿度が8000g/m・24h以上、300000g/m・24h以下であることが好適である。
【0017】
また、本発明の成形品は、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形することにより得られることを特徴としている。
【0018】
また、本発明の成形品は、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂をフィルムに成形することにより得られることが好適である。
【0019】
また、本発明の成形品は、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出成形することにより得られることが好適である。
【0020】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法は、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、少なくとも、前記ポリイソシアネートと、前記高分子量ポリオールと、前記アミド基含有ジオールとを、非プロトン性極性溶媒中で溶液重合させることを特徴としている。
【0021】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法は、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、少なくとも、前記ポリイソシアネートと、前記高分子量ポリオールと、前記アミド基含有ジオールとを、溶融重合させることを特徴としている。
【0022】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法は、上記の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、少なくとも、前記ポリイソシアネートと、前記高分子量ポリオールと、前記アミド基含有ジオールとを、非水分散重合させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオール、より具体的には、水酸基の酸素原子(O)と、アミド基の窒素原子(N)とを最短で結合する原子の個数が3以上であるアミド基含有ジオールが用いられるため、優れた機械強度を確保するとともに、優れた熱安定性を備えることができる。
【0024】
また、本発明の成形品は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形することにより得られるため、効率良く製造されることができる。
【0025】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法によれば、優れた機械強度および熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を、容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、合成後に再度加熱溶融できるポリウレタン樹脂であって、合成後に加熱溶融不能である熱硬化性ポリウレタン樹脂(注型ポリウレタン樹脂)とは区別される。
【0027】
従って、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、一旦、ペレットなどの成形材料として成形し、その後、例えば、押出成形、射出成形などにより、任意の形状に成形することができる。
【0028】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、アミド基含有ジオールとを、少なくとも反応させることにより得られる。
【0029】
このような熱可塑性ポリウレタン樹脂は、詳しくは後述するが、ポリイソシアネートおよび高分子量ポリオールが少なくとも反応することにより形成されるソフトセグメントと、ポリイソシアネートおよびアミド基含有ジオールが少なくとも反応することにより形成されるハードセグメントとを備えている。
【0030】
ポリイソシアネートは、イソシアネート基を2つ以上有する有機化合物であって、例えば、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートなどのジイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、4,4′−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)などが挙げられる。
【0032】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどが挙げられる。
【0033】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、1,3−または1,4−シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物(CHDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)などが挙げられる。
【0034】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,2−、2,3−または1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0035】
また、ポリイソシアネートとしては、例えば、上記したジイソシアネート(芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートなど)の誘導体も挙げられる。
【0036】
ジイソシアネートの誘導体としては、例えば、上記したジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記したジイソシアネートと、アルコール類との反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、ジイソシアネートと低分子量ポリオール(後述)との反応より生成するポリオール変性体(ポリオール付加体、ウレタン変性体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記したジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記したジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記したジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記したジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0037】
これらポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
ポリイソシアネートとして、好ましくは、m−またはp−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)
、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(XDI)、1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、1,4−または1,3−シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物(CHDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、および、それらの誘導体が挙げられる。より好ましくは、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられ、さらに好ましくは、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、4,4′−、2,4′−または2,2′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(水添MDI、H12MDI)、1,3−または1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(水添XDI、HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が挙げられる。
【0039】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上の有機化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール、天然油ポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオールなどのマクロポリオールが挙げられる。
【0040】
ポリエーテルポリオールは、例えば、低分子量ポリオール(後述)および/または低分子量ポリアミン(後述)を開始剤として、これにアルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、オキセタン化合物などの炭素数2−5のアルキレンオキサイド)の開環付加重合(単独重合または共重合(アルキレンオキサイドとして、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが併用される場合には、ブロック共重合および/またはランダム共重合))させることにより得ることができる。
【0041】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400未満の有機化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、アルカン(炭素数7〜22)ジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、キシレングリコール、ビスヒドロキシエチレンテレフタレート、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリオキシエチレングリコール、テトラオキシエチレングリコール、ペンタオキシエチレングリコール、ヘキサオキシエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリオキシプロピレングリコール、テトラオキシプロピレングリコール、ペンタオキシプロピレングリコール、ヘキサオキシプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールおよびその他の脂肪族トリオール(炭素数8〜24)などの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。また、多価アルコールとしては、上記の1〜8価アルコールに、さらに、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加した付加重合体(ポリオキシアルキレンポリオール)も含まれる。
【0042】
低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,3−または1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジン、o、mまたはp−トリレンジアミン(TDA、OTD)などの低分子量ジアミン、例えば、ジエチレントリアミンなどの低分子量トリアミン、例えば、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのアミノ基を4個以上有する低分子量ポリアミンなどが挙げられる。
【0043】
これら開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
開始剤として、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられる。
【0045】
ポリエーテルポリオールとして、より具体的には、上記した低分子量グリコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られる、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などのポリオキシC2−3アルキレン(エチレンおよび/またはプロピレン)グリコールが挙げられる。
【0046】
また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコール(ポリオキシブチレングリコール)、テトラヒドロフランの重合単位に上記の2価アルコールを共重合させることにより得られる非晶性(常温液状)のポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとを共重合させることにより得られる、ポリオキシC2−4アルキレングリコールなどが挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールの1種または2種以上から選択される多価アルコールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、および、その酸ハライドとの縮合反応またはエステル交換反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0048】
低分子量ポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0049】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2,2−ジメチルマロン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタル酸、メチルヘキサン二酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜20)、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などが挙げられる。
【0050】
多塩基酸のアルキルエステルとしては、上記した多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。
【0051】
酸無水物としては、上記した多塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられ、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2−アルキル(炭素数12〜18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸などが挙げられる。
【0052】
酸ハライドとしては、上記した多塩基酸から誘導される酸ハライドが挙げられ、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0053】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12−ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0054】
また、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合により得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどのラクトン系ポリオールなどが挙げられ、さらには、それらポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオールなどに上記の2価アルコールを共重合させることにより得られるラクトン系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0055】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類を付加重合して得られる、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、1,5−ペンタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとの共重合体からなる非晶性ポリカーボネートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる非晶性ポリカーボネートジオールが挙げられる。
【0056】
アクリルポリオールとしては、例えば、1つ以上の水酸基を有する重合性単量体と、それに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられる。
【0057】
水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。
【0058】
また、それらと共重合可能な別の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0059】
そして、アクリルポリオールは、それら単量体を適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって得ることができる。
【0060】
エポキシポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと、例えば、エピクロルヒドリン、β−メチルエピクロルヒドリンなどの多官能ハロヒドリンとを反応させることよって得られるエポキシポリオールが挙げられる。
【0061】
天然油ポリオールとしては、例えば、ひまし油、やし油などの水酸基含有天然油などが挙げられる。
【0062】
シリコーンポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体として、ビニル基含有のシリコーン化合物、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが用いられる共重合体、および、末端アルコール変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0063】
フッ素ポリオールとしては、例えば、上記したアクリルポリオールの共重合において、共重合可能な別の単量体としてビニル基含有のフッ素化合物、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンなどが用いられる共重合体などが挙げられる。
【0064】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオール、部分ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0065】
ポリウレタンポリオールは、上記のマクロポリオール(例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなど)を、イソシアネート基に対する水酸基の当量比(OH/NCO)が1を超過する割合で、上記ポリイソシアネートと反応させることによって、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリウレタンポリオール、あるいは、ポリエステルポリエーテルポリウレタンポリオールなどとして得ることができる。
【0066】
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
高分子量ポリオールとして、透湿性の観点から、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフランとアルキレンオキサイドとの共重合体、ポリエステルポリオールが挙げられる。
【0068】
また、高分子量ポリオールとして、透湿性の観点から、とりわけ好ましくは、オキシエチレン基を有するポリエーテルポリオールが挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)、テトラヒドロフランとエチレンオキサイドとの共重合体が挙げられる。
【0069】
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、400〜5000、好ましくは、1400〜3000、より好ましくは、1500〜2500である。
【0070】
また、高分子量ポリオールの水酸基価は、例えば、22〜280mgKOH/g、好ましくは、37〜81mgKOH/g、より好ましくは、45〜75mgKOH/gである。
【0071】
なお、水酸基価は、JIS K 1557−1のA法またはB法に準拠するアセチル化法やフタル化法などから求めることができる。
【0072】
アミド基含有ジオールは、水酸基を2つ有する、アミド基含有有機化合物であって、下記一般式(1)で示される。
【0073】
HO−Y−NH−CO−(X)−CO−NH−Y−OH (1)
(式中、Xは、脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基または芳香環含有炭化水素基を示し、Y1およびY2は、互いに同一または相異なって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上である原子団を示す。また、nは、0または1の整数を示す。)
上記式(1)中、Xは、脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基または芳香環含有炭化水素基を示す。
【0074】
Xにおいて、脂肪族炭化水素基としては、例えば、2価の、直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0075】
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基(テトラメチレン基)、ペンチレン基(ペンタメチレン基)、ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)、ヘプチレン基(ヘプタメチレン基)、オクチレン基(オクタメチレン基)、ノニレン基、デシレン基、イソデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基などの炭素数1〜18の直鎖状アルキレン基、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、オクテニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、テトラデセニレン基、ヘキサデセニレン基、オクタデセニレン基などの炭素数2〜18の直鎖状アルケニレン基、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、オクテニレン基などの炭素数2〜8の直鎖状アルキニレン基などが挙げられる。
【0076】
分岐状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチルエチレン基、メチルプロピレン基、エチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基、2−エチルヘキシレン基などの炭素数3〜18の分岐状アルキレン基、例えば、メチルエチニレン基、メチルプロペニレン基、メチルブテニレン基などの炭素数3〜18の分岐状アルケニレン基、例えば、メチルプロピニレン基、メチルブチニレン基などの炭素数4〜8の分岐状アルキニレン基などが挙げられる。
【0077】
Xにおいて、脂環含有炭化水素基としては、例えば、2価の脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0078】
なお、脂環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の脂環式炭化水素を含有していればよく、例えば、その脂環式炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、Xに結合されるカルボニル基(−CO−)は、脂環式炭化水素に直接結合していてもよく、脂環式炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0079】
このような脂環含有炭化水素基として、より具体的には、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基などの炭素数3〜8のシクロアルキレン基などが挙げられる。
【0080】
また、脂肪族炭化水素基を含有する脂環含有炭化水素基としては、例えば、メチルシクロヘキシレン基、水添キシリレン基、水添テトラメチルキシリレン基、シクロヘキシルメチレン基、イソホロン基、ノルボルニレン基、アダマンチレン基などが挙げられる。
【0081】
Xにおいて、芳香環含有炭化水素基としては、例えば、2価の芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0082】
なお、芳香環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の芳香族炭化水素を含有していればよく、例えば、その芳香族炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、Xに結合されるカルボニル基(−CO−)は、芳香族炭化水素に直接結合していてもよく、芳香族炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0083】
このような芳香環含有炭化水素基として、より具体的には、例えば、フェニレン基、トリレン基、ジメチルフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、トリフェニレン基などの炭素数6〜20のアリーレン基、例えば、キシリレン基(フェニレンビス(メチレン)基)、フェニルプロピレン基などの炭素数6〜20のアラルキレン基などが挙られる。
【0084】
また、上記の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基および芳香環含有炭化水素基)は、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含むことができる。
【0085】
このような炭化水素基として、より具体的には、例えば、ジメチレンエーテル基、ジエチレンエーテル基、トリエチレンエーテル基、ジプロピレンエーテル基、トリプロピレンエーテル基などのアルキレンエーテル基(エーテル結合を含む脂肪族炭化水素基)などが挙げられる。
【0086】
上記式(1)において、nは、0または1の整数を示す。
【0087】
すなわち、アミド基含有ジオールは、Xを含有しないか(n=0)、または、1つ含有することができる(n=1)。
【0088】
なお、アミド基含有ジオールがXを含有しない場合(n=0)には、アミド基含有ジオールに含有される2つのカルボニル基(−CO−)の炭素原子(C)は、互いに直接結合される。
【0089】
上記式(1)において、Y1およびY2は、互いに同一または相異なって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上である原子団を示す。
【0090】
このような原子団としては、2価の有機基が挙げられる。このような有機基としては、例えば、OとNとを単独の経路で結合させる2価の炭化水素基、OとNとを複数の経路で結合させる2価の炭化水素基などが挙げられる。
【0091】
OとNとを単独の経路で結合させる2価の炭化水素基としては、例えば、2価の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0092】
2価の脂肪族炭化水素基としては、例えば、炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
【0093】
炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基(テトラメチレン基)、ペンチレン基(ペンタメチレン基)、ヘキシレン基(ヘキサメチレン基)、ヘプチレン基(ヘプタメチレン基)、オクチレン基(オクタメチレン基)、ノニレン基、デシレン基、イソデシレン基、ドデシレン基、テトラデシレン基、ヘキサデシレン基、オクタデシレン基などの炭素数3〜18の直鎖状アルキレン基、例えば、プロペニレン基、ブテニレン基、ブタジエニレン基、オクテニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、テトラデセニレン基、ヘキサデセニレン基、オクタデセニレン基などの炭素数3〜18の直鎖状アルケニレン基、例えば、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、オクテニレン基などの炭素数3〜8の直鎖状アルキニレン基などが挙げられる。
【0094】
上記一般式(1)においてY1およびY2で示される原子団が、炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基である場合には、アミド基含有ジオールは、下記一般式(2)で示される。
【0095】
HO−R−NH−CO−(X)−CO−NH−R−OH (2)
(式中、Xおよびnは、式(1)と同意義を示し、R1およびR2は、互いに同一または相異なって、炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基を示す。)
上記一般式(2)において、アミド基含有ジオールに含まれる水酸基の酸素原子(O)と、アミド基の窒素原子(N)とは、R1、R2で示される炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基により単独の経路で結合され、それらを最短で結合する原子(すなわち、炭素原子)の個数が、3以上とされる。
【0096】
また、上記の炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基は、分岐鎖として、安定な官能基を含むことができる。
【0097】
分岐鎖として含まれる官能基としては、例えば、上記脂肪族炭化水素基、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)などが挙げられる。
【0098】
これら官能基としては、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0099】
例えば、官能基として上記脂肪族炭化水素基が用いられる場合には、Y1およびY2で示される原子団としては、分岐状の2価の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0100】
このような分岐状の2価の脂肪族炭化水素基(炭素数4以上であり、かつ、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上の脂肪族炭化水素基)としては、例えば、メチルプロピレン基、エチルプロピレン基、ジメチルプロピレン基、2−エチルヘキシレン基などの炭素数4〜18の分岐状のアルキレン基、例えば、メチルプロペニレン基、メチルブテニレン基などの炭素数4〜18の分岐状のアルケニレン基、例えば、メチルプロピニレン基、メチルブチニレン基などの炭素数4〜8の分岐状のアルキニレン基などが挙げられる。
【0101】
上記一般式(1)においてY1およびY2で示される原子団が、分岐状の脂肪族炭化水素基(炭素数4以上であり、かつ、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上の脂肪族炭化水素基)である場合には、アミド基含有ジオールは、例えば、下記一般式(3)などで示される。
【0102】
HO−R(R)−NH−CO−(X)−CO−NH−R(R)−OH (3)
(式中、Xおよびnは、式(1)と同意義を示し、R3およびR4は、互いに同一または相異なって、炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基を示し、R5およびR6は、互いに同一または相異なって、R3またはR4に分岐鎖として結合する脂肪族炭化水素基を示す。)
上記一般式(3)において、アミド基含有ジオールに含まれる水酸基の酸素原子(O)と、アミド基の窒素原子(N)とは、R3、R4で示される炭素数3以上の2価の直鎖状の脂肪族炭化水素基により単独の経路で結合され、それらを最短で結合する原子(すなわち、炭素原子)の個数が、3以上とされる。
【0103】
OとNとを複数の経路で結合させる炭化水素基としては、例えば、2価の脂環含有炭化水素基、2価の芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0104】
2価の脂環含有炭化水素基としては、例えば、上記したXにおける2価の脂環含有炭化水素基と同様の2価脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0105】
一方、2価の脂環含有炭化水素基は、OとNとを複数の経路で結合するため、例えば、その構造異性体(位置異性体)などによって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3未満となり、上記一般式(1)におけるY1およびY2として用いることができない場合がある。
【0106】
より具体的には、例えば、2価の脂環含有炭化水素基であるシクロヘキシレン基は、位置異性体として、1,4−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基および1,2−シクロへキシレン基を含んでいる。
【0107】
Y1およびY2が1,4−シクロへキシレン基であるアミド基含有ジオールを下記一般式(4)に、また、Y1およびY2が1,3−シクロへキシレン基であるアミド基含有ジオールを下記一般式(5)に、また、Y1およびY2が1,2−シクロへキシレン基であるアミド基含有ジオールを下記一般式(6)に、それぞれ示す。
【0108】
【化1】

【0109】
上記一般式(4)に示すアミド基含有ジオールにおいて、OとNとを最短で結合する原子の個数は、4である。また、上記一般式(5)に示すアミド基含有ジオールにおいて、OとNとを最短で結合する原子の個数は、3である。
【0110】
すなわち、上記一般式(4)および一般式(5)に示すアミド基含有ジオールにおいて、OとNとを最短で結合する原子の個数は、3以上である。
【0111】
従って、上記一般式(1)においてY1およびY2で示す原子団として、1,4−シクロへキシレン基および1,3−シクロへキシレン基を用いることができる。
【0112】
一方、上記一般式(6)に示すアミド基含有ジオールは、OとNとを6つの原子で結合する経路を備えるが、OとNとを最短で結合する原子の個数は、2である。
【0113】
従って、上記一般式(1)においてY1およびY2で示す原子団として、1,2−シクロへキシレン基を用いることができない。
【0114】
このように、本発明において、上記一般式(1)においてY1およびY2で示す原子団が、2価の脂環含有炭化水素基である場合には、上記のXにおける2価の脂環含有炭化水素基のうち、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上となるものが、適宜選択される。
【0115】
このような脂環含有炭化水素基として、より具体的には、例えば、1,4−または1,3−シクロヘキシレン基、水添キシリレン基、1,4−または2,5−ノルボルニレン基、1,5−または2,6−アダマンチレン基などが挙げられる。
【0116】
2価の芳香環含有炭化水素基としては、例えば、上記したXにおける2価の芳香環含有炭化水素基と同様の2価芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0117】
一方、2価の芳香環含有炭化水素基は、OとNとを複数の経路で結合するため、例えば、その構造異性体(位置異性体)などによって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3未満となり、上記一般式(1)におけるY1およびY2として用いることができない場合がある。
【0118】
より具体的には、例えば、2価の芳香環含有炭化水素基であるフェニレン基は、位置異性体として、p−フェニレン基、m−フェニレン基およびo−フェニレン基を含んでいる。
【0119】
Y1およびY2がp−フェニレン基であるアミド基含有ジオールを下記一般式(7)に、また、Y1およびY2がm−フェニレン基であるアミド基含有ジオールを下記一般式(8)に、また、Y1およびY2がo−フェニレン基であるアミド基含有ジオールを下記一般式(9)に、それぞれ示す。
【0120】
【化2】

【0121】
上記一般式(7)に示すアミド基含有ジオールにおいて、OとNとを最短で結合する原子の個数は、4である。また、上記一般式(8)に示すアミド基含有ジオールにおいて、OとNとを最短で結合する原子の個数は、3である。
【0122】
すなわち、上記一般式(7)および一般式(8)に示すアミド基含有ジオールにおいて、OとNとを最短で結合する原子の個数は、3以上である。
【0123】
従って、上記一般式(1)においてY1およびY2で示す原子団として、p−フェニレン基およびm−フェニレン基を用いることができる。
【0124】
一方、上記一般式(9)に示すアミド基含有ジオールは、OとNとを6つの原子で結合する経路を備えるが、OとNとを最短で結合する原子の個数は、2である。
【0125】
従って、上記一般式(1)においてY1およびY2で示す原子団として、o−フェニレン基を用いることができない。
【0126】
このように、本発明において、上記一般式(1)においてY1およびY2で示す原子団が2価の芳香環含有炭化水素基である場合には、上記のXにおける2価の芳香環含有炭化水素基のうち、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上となるものが、適宜選択される。
【0127】
このような芳香環含有炭化水素基として、より具体的には、例えば、m−またはp−フェニレン基、m−またはp−トリレン基、キシリレン基(フェニレンビス(メチレン)基)、フェニルプロピレン基などが挙げられる。
【0128】
また、上記の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基および芳香環含有炭化水素基)は、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含むことができる。
【0129】
このような炭化水素基として、より具体的には、例えば、ジメチレンエーテル基、ジエチレンエーテル基、トリエチレンエーテル基、ジプロピレンエーテル基、トリプロピレンエーテル基などのアルキレンエーテル基(エーテル結合を含む脂肪族炭化水素基)などが挙げられる。
【0130】
また、Y1およびY2としては、上記の2価の炭化水素基(脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基および芳香環含有炭化水素基)に限定されず、公知の2価の有機基を用いることができる。
【0131】
Y1およびY2として、好ましくは、2価の炭化水素基、より好ましくは、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環含有炭化水素基が挙げられる。
【0132】
そして、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールは、例えば、ジカルボン酸とモノアミノアルコールとの縮合反応や、例えば、ジカルボン酸のアルキルエステルとモノアミノアルコールとのエステル交換反応などにより、得ることができる。
【0133】
ジカルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0134】
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、2,2−ジメチルマロン酸、2,2−ジメチルグルタル酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタル酸、メチルヘキサン二酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜20)、シトラコン酸、水添ダイマー酸(非環状水添ダイマー酸)、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
【0135】
脂環族ジカルボン酸としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸、環状水添ダイマー酸などが挙げられる。
【0136】
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられる。
【0137】
また、ジカルボン酸のアルキルエステルとしては、例えば、上記したジカルボン酸(脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸)の、例えば、ジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル、メチルエチルエステル、メチルプロピルエステル、エチルプロピルエステルなどが挙げられる。
【0138】
これらジカルボン酸ジエステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0139】
モノアミノアルコールとしては、例えば、モノアミノ脂肪族アルコール、モノアミノ脂環族アルコール、モノアミノ芳香族アルコールなどが挙げられる。
【0140】
モノアミノ脂肪族アルコールとしては、例えば、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール(5−アミノ−1−ペンチルアルコール)、6−アミノ−1−ヘキサノール、8−アミノ−1−オクタノール、10−アミノ−1−デカノール、4−アミノ−2−ブタノール、4−アミノ−2−メチル−1−ブタノール、3−アミノ−2,2−ジメチル−1−プロパノール、6−アミノ−2−メチル−2−ヘプタノールなどが挙げられる。
【0141】
モノアミノ脂環族アルコールとしては、例えば、4−アミノシクロヘキサノール、3−アミノシクロヘキサノール、2−アミノメチル−1−シクロヘキサノール、3−アミノ−1−アダマンタノール、2−ヒドロキシメチル−1−シクロヘキシルアミンなどが挙げられる。
【0142】
モノアミノ芳香族アルコールとしては、例えば、3−アミノ−3−フェニルプロパン−1−オール、4−(アミノメチル)−4−フェニルシクロヘキサノールなどが挙げられる。
【0143】
また、モノアミノアルコールは、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含むことができる。このようなモノアミノアルコールとして、より具体的には、例えば、2−(2−アミノエトキシ)エタノールなどが挙げられる。
【0144】
これらモノアミノアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0145】
そして、アミド基含有ジオールの製造では、例えば、ジカルボン酸またはそのジエステルおよびモノアミノアルコールを、ジカルボン酸またはそのジエステル1モルに対して、モノアミノアルコールが、例えば、2〜10モル、好ましくは、3〜6モルとなるように処方(混合)した後、例えば、100〜160℃、好ましくは、120〜140℃で、例えば、1〜12時間、好ましくは、2〜8時間反応させる。なお、反応温度は、一定温度、あるいは、段階的に昇温または冷却することもできる。また、反応は、無溶媒でもよいが、必要により、例えば、反応温度と同程度、または、それ以上の沸点を有する公知の反応溶媒(例えば、N−メチルピロリドンなど)を用いることもできる。
【0146】
さらに、このような反応では、必要に応じて、得られた反応混合物から、アミド基含有ジオールを、例えば、再結晶などの結晶化処理により分離することができる。
【0147】
結晶化処理において用いられる結晶化溶媒としては、特に制限されないが、例えば、水、例えば、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトンなどの極性溶媒などが挙げられる。
【0148】
これら結晶化溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0149】
このようにして得られるアミド基含有ジオールの融点は、例えば、40〜320℃、好ましくは、40〜160℃である。
【0150】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、少なくとも、上記ポリイソシアネートと、上記高分子量ポリオールと、上記アミド基含有ジオールとを反応させる。
【0151】
また、この方法では、これら必須成分(すなわち、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよびアミド基含有ジオール)の他、任意成分として、低分子量ポリオールを配合することもできる。
【0152】
低分子量ポリオールとしては、例えば、上記の低分子量ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0153】
なお、ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、および、必要により配合される低分子量ポリオールの反応において、アミド基含有ジオールおよび低分子量ポリオールは、鎖伸長剤として、用いられる。
【0154】
すなわち、熱可塑性ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤の反応により、合成される。
【0155】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法では、例えば、プレポリマー法、ワンショット法などの公知の方法を採用することができる。
【0156】
プレポリマー法では、例えば、まず、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、アミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)とを反応させる。
【0157】
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、ポリイソシアネートと高分子量ポリオールとを、高分子量ポリオール中の水酸基に対するポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、1.1〜20、好ましくは、1.7〜10、さらに好ましくは、2.0〜7.0となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、40〜150℃、好ましくは、60〜120℃で、例えば、30秒間〜8時間、好ましくは、30分間〜3時間反応させる。なお、反応終了後には、必要に応じて、未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、除去することもできる。
【0158】
次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、アミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)とを反応させるには、イソシアネート基末端プレポリマーと、アミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)とを、アミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)中の水酸基に対するイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.75〜1.3、好ましくは、0.9〜1.1となるように処方(混合)し、例えば、40〜280℃、好ましくは、100〜260℃、より好ましくは、120〜240℃で、例えば、30秒〜12時間、好ましくは、30分間〜4時間反応させる。
【0159】
また、ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールおよびアミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)とを、高分子量ポリオールおよびアミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)中の水酸基の総量に対する、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が、例えば、0.8〜1.2、好ましくは、0.9〜1.1、より好ましくは、0.98〜1.05となるように処方(混合)した後、例えば、40〜280℃、好ましくは、100〜260℃で、例えば、30秒〜12時間、好ましくは、30分間〜4時間反応させる。なお、反応温度は、一定温度、あるいは、段階的に昇温または冷却することもできる。
【0160】
これらプレポリマー法およびワンショット法において、上記各成分(ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、イソシアネート基末端プレポリマー、低分子量ポリオールなど)の混合では、特に制限されないが、好ましくは、ディゾルバーなどの混合槽、例えば、循環式の低圧、高圧衝突混合装置、例えば、高速撹拌ミキサー、スタティックミキサー、ニーダー、例えば、単軸または二軸回転式の押出機などの混合装置が、用いられる。
【0161】
また、プレポリマー法およびワンショット法において、水酸基を含有する化合物(高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、および、必要により配合される低分子量ポリオール)は、好ましくは、前処理として、加熱減圧処理され、含水量が低減される。
【0162】
これら水酸基を含有する化合物(高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、および、必要により配合される低分子量ポリオール)それぞれの含水量は、それぞれの総量に対して、例えば、0.05質量%以下、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは0.02質量%以下、通常、0.005質量%以上である。
【0163】
また、プレポリマー法またはワンショット法により、上記各成分(ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、アミド基含有ジオール、イソシアネート基末端プレポリマー、低分子量ポリオールなど)を反応(重合)させる方法としては、特に制限されず、公知の重合方法、より具体的には、例えば、溶液重合、水中懸濁重合、非水分散重合、溶融重合(バルク重合)などが挙げられる。好ましくは、溶液重合、非水分散重合、溶融重合が挙げられる。
【0164】
溶液重合では、極性有機溶媒に上記各成分を加え、溶解させるとともに、上記各成分を重合させる。
【0165】
極性有機溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0166】
これら極性有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0167】
なお、極性有機溶媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途や、反応系の粘度などにより、適宜設定される。
【0168】
非水分散重合では、例えば、低極性有機溶媒に上記各成分を加えるとともに、分散剤を配合し、上記各成分を分散させるとともに、重合させる。
【0169】
低極性有機溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0170】
これら低極性有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0171】
なお、低極性有機溶媒の配合割合は、特に制限されず、目的および用途や、反応系の粘度などにより、適宜設定される。
【0172】
分散剤としては、特に制限されないが、例えば、特開2004−169011号公報に記載される分散剤や、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基、アミノ基などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、無機酸塩、有機酸塩などのイオン性の親水基を有する公知の水溶性高分子、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤などの公知の界面活性剤などが挙げられる。
【0173】
溶融重合(バルク重合)では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネートを撹拌しつつ、これに、高分子量ポリオールおよびアミド基含有ジオール(および、必要により配合される低分子量ポリオール)を加え、上記反応温度に加熱し、上記各成分を溶融させるとともに、重合させる。
【0174】
また、上記の重合方法においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などの公知のウレタン化触媒を添加することができる。
【0175】
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス−(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
【0176】
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫系化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
【0177】
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
【0178】
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0179】
さらに、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂においては、必要に応じて、さらに、公知の添加剤、例えば、可塑剤、発泡剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、離型剤、触媒、さらには、顔料、染料、滑剤、フィラー、加水分解防止剤などを、適宜の割合で配合することができる。これら添加剤は、各成分の1種または2種以上に添加してもよく、また、各成分の製造時に添加してもよく、また、各成分の混合時に添加してもよく、さらには、得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂に添加することもできる。
【0180】
そして、このようにして得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、その重量平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による重量平均分子量)が、例えば、60000〜300000、好ましくは、90000〜250000である。
【0181】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂において、ポリイソシアネートとアミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメントの濃度は、例えば、10〜60質量%、好ましくは、25〜50質量%、より好ましくは、30〜45質量%である。
【0182】
なお、ハードセグメント(ポリイソシアネートとアミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメント)濃度は、例えば、各成分の配合割合(仕込)から次式により算出することができる。
[アミド基含有ジオールの質量(g)+アミド基含有ジオールの質量(g)/アミド基含有ジオールの分子量)×ポリイソシアネートの分子量]÷[(ポリイソシアネートの質量(g)+高分子量ポリオールの質量(g)+アミド基含有ジオールの質量(g)+その他の成分(任意成分としての低分子量ポリオール、添加剤など)の質量(g))]×100
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂において、任意成分として、低分子量ポリオールが配合される場合には、ポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメントの濃度は、例えば、1〜50質量%、好ましくは、5〜40質量%、より好ましくは、5〜35質量%である。
【0183】
なお、ハードセグメント(ポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメント)濃度は、例えば、各成分の配合割合(仕込)から次式により算出することができる。
[低分子量ポリオールの質量(g)+低分子量ポリオールの質量(g)/低分子量ポリオールの分子量)×ポリイソシアネートの分子量]÷[(ポリイソシアネートの質量(g)+高分子量ポリオールの質量(g)+低分子量ポリオールの質量(g)+その他の成分(必須成分としてのアミド基含有ジオール、添加剤など)の質量(g))]×100
そして、ポリイソシアネートとアミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメントの濃度と、ポリイソシアネートと低分子量ポリオールとの反応により形成されるハードセグメントの濃度との総量は、例えば、10〜60質量%、好ましくは、25〜50質量%、より好ましくは、30〜45質量%である。
【0184】
そして、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂の5%熱重量減少温度(測定法:熱重量分析(昇温速度10℃/分、窒素気流下))は、例えば、280℃以上、好ましくは、290℃以上であり、通常、330℃以下である。
【0185】
また、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂において、高分子量ポリオールがオキシエチレン基を含有する場合には、そのオキシエチレン基の含有量が、熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、80質量%以下、好ましくは、65質量%以下である。
【0186】
オキシエチレン基の含有量が上記下限以上であれば、その熱可塑性ポリウレタン樹脂を厚み20μmのフィルムにしたときに、その透湿度を向上させることができる。
【0187】
このような透湿度(JIS L−1099に準拠)としては、例えば、4000g/m・24h以上、好ましくは、8000g/m・24h以上、より好ましくは、10000g/m・24h以上であり、通常、300000g/m・24h以下である。
【0188】
そして、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂は、特に制限されず、公知の成形方法、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、キャスト成形などの熱可塑性樹脂の成形加工方法、好ましくは、射出成形、押出成形、プレス成形により、例えば、ペレット状、板状、繊維状、ストランド状、フィルム状、シート状、パイプ状、中空状、箱状などの各種形状の成形品に成形することができる。
【0189】
上記成形加工方法のうち、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱溶融成形(射出成形、押出成形、プレス成形など)における成形温度は、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱特性に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、例えば、70〜280℃、好ましくは、100〜250℃である。
【0190】
また、このような方法では、例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱溶融成形において、超臨界二酸化炭素などを導入し、熱可塑性ポリウレタン樹脂中に超臨界流体を拡散および溶解させれば、超臨界二酸化炭素が発泡剤となって、熱可塑性ポリウレタン樹脂を、微細かつ均一なセルからなるマイクロセルラーフォームとして形成することができる。
【0191】
また、熱可塑性ポリウレタン樹脂に、可塑剤(例えば、脂肪族二塩基酸エステル類、リン酸エステル類、エポキシ系可塑剤など)を配合すれば、熱可塑性ポリウレタン樹脂のガラス転移点を低下させ、さらには、粘度を低下させることができる。
【0192】
これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂の射出成形性、押出成形性を向上することができ、成形体の薄肉化、成形体の表面精度の向上、成形温度の低下などを図ることができる。
【0193】
また、キャスト成形では、熱可塑性ポリウレタン樹脂が可溶な有機溶媒、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの極性非プロトン性有機溶媒などを用いて、熱可塑性ポリウレタン樹脂の溶液を調製し、その溶液を、基板に塗工し、上記有機溶媒の沸点以下の温度で、不活性ガス気流下において、溶媒を揮発除去させることによって、キャストフィルムを得ることができる。
【0194】
また、このようにして得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂は、例えば、公知の紡糸方法(例えば、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸など)により容易に紡糸することができ、弾性繊維とすることができる。
【0195】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂によれば、透湿度に優れたフィルムを形成できるため、衣料用透湿フィルム、具体的には、例えば、レインコート、ウインドブレーカーなどの製造において、好適に用いられる。
【0196】
さらに、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、上記の用途に限定されず、例えば、自動車部品、エレクトロニクス部品、機械・産業部品、電線・ケーブル、ロール、ホース・チューブ、ベルト、フィルム・シート、ラミネート品、コーティング、接着剤、シール材、スポーツ・レジャー用品、靴関連部品、雑貨、介護用品、住宅用品、医療、建材、土木関連、防水材・舗装材、発泡体、スラッシュパウダーなどの各種産業分野において、用いることができる。
【0197】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、上記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオール、より具体的には、水酸基の酸素原子(O)と、アミド基の窒素原子(N)とを最短で結合する原子の個数が3以上であるアミド基含有ジオールが用いられるため、優れた機械強度を確保するとともに、優れた熱安定性を備えることができる。
【0198】
また、本発明の成形品は、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形することにより得られるため、効率良く製造されることができる。
【0199】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法によれば、優れた機械強度および熱安定性を備える熱可塑性ポリウレタン樹脂を、容易に製造することができる。
【実施例】
【0200】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。また、実施例などに用いられる測定方法を、以下に示す。
<融点(単位:℃)>
示差熱走査熱量計(島津製作所製 DSC−60)を用いて、窒素気流下(50mL/min)、昇温速度10℃/minで分析することにより、融点を測定した。
<重量平均分子量>
N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬製、DMF、液体クロマトグラフィ用)に0.01mol/Lの濃度でLiBr(和光純薬製)を溶解したものを遊離液として使用した。GPC測定装置(昭和電工製 商品名:Shodex GPC101)に、カラム(昭和電工製 商品名:KD−G、KD−804)を直列に装着し、カラム温度45℃、溶離液の流速0.6mL/minの条件で、示差屈折計(RI)検出器を用いて測定し、予め作成した標準ポリスチレンの検量線から、重量平均分子量(Mw)を算出した。
(1)溶液重合
実施例1
〔アミド基含有ジオールの合成〕
500mLのセパラブルフラスコに、テレフタル酸ジメチル(和光純薬製)48.1部と、3−アミノ−1−プロパノール(和光純薬製)112部とを装入し、窒素気流下、135℃で6.5時間加熱撹拌した。
【0201】
反応混合物に、イソプロピルアルコール(結晶化溶媒)をゆっくり加え、アミド基含有ジオールであるN,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミドの無色結晶59.8部(収率86モル%)を得た。
【0202】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
窒素雰囲気下、撹拌機が装着された反応器に、N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミドの無色結晶8.72部、ポリエチレングリコール(日油製、商品名PEG 2000U)29.8部、および、脱水ジメチルアセトアミド(有機溶媒、和光純薬製)50部を入れ、100℃で加熱撹拌して、均一な溶液とした。
【0203】
これに、脱水ジメチルアセトアミド10部に4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬製)11.5部を溶解した溶液を、滴下により徐々に加え、滴下終了後、1時間加熱撹拌を継続した。
【0204】
反応溶液を80℃まで冷却し、その後、620部のアセトニトリルで再沈殿させ、沈殿した固形物を、ろ過分別した後、160部のアセトニトリルで2回洗浄した。
【0205】
得られた固形分を、窒素気流下、70℃で1時間加熱乾燥させ、その後、さらに、100℃で一晩減圧乾燥した。
【0206】
これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂44.8部を得た。
【0207】
実施例2
〔アミド基含有ジオールの合成〕
実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0208】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表1に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0209】
実施例3
〔アミド基含有ジオールの合成〕
実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0210】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表1に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0211】
実施例4
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(5−ヒドロキシペンチル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0212】
(原料成分)
・テレフタル酸ジメチル(和光純薬製)39.0部
・5−アミノ−1−ペンチルアルコール(東京化成製)124部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表1に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0213】
実施例5
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0214】
(原料成分)
・テレフタル酸ジメチル(和光純薬製)29.2部
・2−(2−アミノエトキシ)エタノール(和光純薬製)94.7部
(結晶化溶媒)
・テトラフドロフラン
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表1に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0215】
実施例6
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アミド)を合成した。
【0216】
(原料成分)
・trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(岩谷瓦斯製)30.0部
・3−アミノ−1−プロパノール(和光純薬製)68.0部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表2に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0217】
実施例7
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アミド)を合成した。
【0218】
(原料成分)
・trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(岩谷瓦斯製)40.5部
・2−(2−アミノエトキシ)エタノール(和光純薬製)126部
(結晶化溶媒)
・テトラフドロフラン
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表2に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0219】
実施例8
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)を合成した。
【0220】
(原料成分)
・2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(和光純薬製)48.9部
・2−(2−アミノエトキシ)エタノール(和光純薬製)126部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表2に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0221】
実施例9
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)オキサミド)を合成した。
【0222】
(原料成分)
・シュウ酸ジメチル(東京化成製)25.0部
・2−(2−アミノエトキシ)エタノール(和光純薬製)90.2部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表2に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0223】
実施例10
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)アジピン酸アミド)を合成した。
【0224】
(原料成分)
・アジピン酸ジメチル(東京化成製)52.3部
・2−(2−アミノエトキシ)エタノール(和光純薬製)130部
(結晶化溶媒)
・テトラフドロフラン
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表2に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0225】
実施例11
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとし、反応溶媒として、N−メチルピロリドン(和光純薬製)40部を配合した以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(trans−4−ヒドロキシシクロヘキシル)マロン酸アミド)を合成した。
【0226】
(原料成分)
・マロン酸ジメチル(東京化成製)28.9部
・trans−4−アミノシクロヘキサノール(和光純薬製)92.4部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表3に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0227】
実施例12
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(trans−4−ヒドロキシシクロヘキシル)コハク酸アミド)を合成した。
【0228】
(原料成分)
・コハク酸ジメチル(和光純薬製)14.6部
・trans−4−アミノシクロヘキサノール(和光純薬製)69.1部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表3に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0229】
実施例13
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとし、反応溶媒として、N−メチルピロリドン(和光純薬製)40部を配合した以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(trans−4−ヒドロキシシクロヘキシル)グルタル酸アミド)を合成した。
【0230】
(原料成分)
・グルタル酸ジメチル(東京化成製)61.2部
・trans−4−アミノシクロヘキサノール(和光純薬製)132部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表3に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0231】
実施例14
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(trans−4−ヒドロキシシクロヘキシル)アジピン酸アミド)を合成した。
【0232】
(原料成分)
・アジピン酸ジメチル(東京化成製)17.5部
・trans−4−アミノシクロヘキサノール(和光純薬製)69.0部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表3に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0233】
実施例15
〔アミド基含有ジオールの合成〕
実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0234】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表4に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0235】
実施例16
〔アミド基含有ジオールの合成〕
実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0236】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表4に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0237】
実施例17
〔アミド基含有ジオールの合成〕
実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0238】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表4に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0239】
比較例1
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0240】
(原料成分)
・テレフタル酸ジメチル(和光純薬製)43.3部
・エタノールアミン(関東化学製)80.4部
(結晶化溶媒)
・水−エタノール混合溶媒(質量比5:2)
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表5に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0241】
比較例2
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)−trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸アミド)を合成した。
【0242】
(原料成分)
・trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(岩谷瓦斯製)40.5部
・エタノールアミン(関東化学製)72.8部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表5に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0243】
比較例3
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−メチル−2−ヒドロキシエチル)テレフタル酸アミド)を合成した。
【0244】
(原料成分)
・テレフタル酸ジメチル(和光純薬製)48.6部
・1−アミノ−2−プロパノール(東京化成製)113部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表5に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0245】
比較例4
〔アミド基含有ジオールの合成〕
アミド基含有ジオールを合成せず、市販のN,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)オキサミド(東京化成製)を用いた。
【0246】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表5に示す配合処方に基づいて、実施例1と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0247】
各実施例および各比較例において得られたアミド基含有ジオールの収率、上記一般式(1)におけるXに対応する炭化水素基、Y1およびY2に対応する原子団、および、融点を、表1〜5に示す。
【0248】
また、各実施例および各比較例において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度(ポリイソシアネートとアミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメント濃度)を、表1〜5に示す。
【0249】
また、実施例1〜14および各比較例において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量を、表1〜5に示す。
【0250】
【表1】

【0251】
【表2】

【0252】
【表3】

【0253】
【表4】

【0254】
【表5】

【0255】
なお、表中の略号および商品名は、下記の通りである(以下同様)。
PEG−2000U:ポリエチレングリコール、数平均分子量2000、水酸基価56mgKOH/g、日油製
ポリセリンDC−1800E:ポリエーテルポリオール、(エチレングリコールおよびテトラヒドロフラン共重合体)、数平均分子量1800、水酸基価62mgKOH/g、日油製
タケラックU−2420:ポリエステルポリオール、数平均分子量2000、水酸基価56mgKOH/g、三井化学製
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(2)非水分散重合
実施例18
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(5−ヒドロキシペンチル)イソフタル酸アミド)を合成した。
【0256】
(原料成分)
・イソフタル酸ジメチル(関東化学製)38.8部
・5−アミノ−1−ペンチルアルコール(東京化成製)126部
(結晶化溶媒)
・イソプロピルアルコール
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
窒素雰囲気下、撹拌機が装着された反応器に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬製)11.8部、ポリエチレングリコール(日油製、商品名PEG2000U)26.7部、および、オクタン(有機溶媒、和光純薬製)102部を入れ、100℃で加熱撹拌して、均一な分散液とした。
【0257】
これに、分散剤として、ヘキサメチレンアジペート系ポリエステル−ポリラウリルアクリレートグラフト共重合体(特開2004−169011号公報に記載の分散剤)0.5部を加え、その後、上記のアミド基含有ジオールを徐々に加え、添加終了後、2時間加熱撹拌を継続した。
【0258】
その後、得られた固形物をろ過分別し、200部のn−ヘキサンで2回洗浄した。
【0259】
得られた固形分を、窒素気流下、70℃で1時間加熱乾燥させ、その後、さらに、70℃で一晩減圧乾燥した。
【0260】
これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂40.7部を得た。
【0261】
実施例19
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)コハク酸アミド)を合成した。
【0262】
(原料成分)
・コハク酸ジメチル(和光純薬製)45.12部
・2−(2−アミノエトキシ)エタノール(和光純薬製)133部
(結晶化溶媒)
・テトラヒドロフラン
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表6に示す配合処方に基づいて、実施例18と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0263】
比較例5
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタル酸アミド)を合成した。
【0264】
(原料成分)
・イソフタル酸ジメチル(和光純薬製)48.5部
・エタノールアミン(関東化学製)90.7部
(結晶化溶媒)
・テトラヒドロフラン
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表6に示す配合処方に基づいて、実施例18と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0265】
比較例6
〔アミド基含有ジオールの合成〕
各成分を下記の通りとした以外は、実施例1と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)アジピン酸アミド)を合成した。
【0266】
(原料成分)
・アジピン酸ジメチル(東京化成製)43.6部
・エタノールアミン(関東化学製)92.3部
(結晶化溶媒)
・テトラヒドロフラン
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
表6に示す配合処方に基づいて、実施例18と同様の方法により、熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造した。
【0267】
各実施例および各比較例において得られたアミド基含有ジオールの収率、上記一般式(1)におけるXに対応する炭化水素基、Y1およびY2に対応する原子団、および、融点を、表6に示す。
【0268】
また、各実施例および各比較例において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度(ポリイソシアネートとアミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメント濃度)および重量平均分子量を、表6に示す。
(3)溶融重合
実施例20
実施例19と同様の方法により、アミド基含有ジオール(N,N’−ビス(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル)コハク酸アミド)を合成した。
【0269】
〔熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造〕
窒素雰囲気下、撹拌機が装着された反応器に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(和光純薬製)11.5部と、ポリエチレングリコール(日油製、商品名PEG 2000U)14.9部と、エチレングリコールおよびテトラヒドロフラン共重合体(日油製、商品名 ポリセリンDC−1800E)14.6部とを入れ、加熱撹拌して、イソシアネート基末端プレポリマーを合成した。
【0270】
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーを100℃に昇温し、上記のアミド基含有ジオール8.9部を徐々に加えて、5分混練した後、100℃に予熱した金型(バット)に移した。
【0271】
その後、窒素気流下、100℃で20時間静置し、反応を完了させた。
【0272】
これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂40.6部を得た。
【0273】
各実施例において得られたアミド基含有ジオールの収率、上記一般式(1)におけるXに対応する炭化水素基、Y1およびY2に対応する原子団、および、融点を、表6に示す。
【0274】
また、各実施例において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂のハードセグメント濃度(ポリイソシアネートとアミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメント濃度)および重量平均分子量を、表6に示す。
【0275】
【表6】

【0276】
評価
(1)熱安定性評価
<5%重量減少温度(単位:℃)>
実施例1〜14、18〜20および各比較例において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂の5%重量減少温度を、熱重量分析装置(島津製作所製 TGA−50)を用いて、窒素気流下(30mL/min)、昇温速度10℃/minにより、測定した。その結果を、表1〜6に示す。
(考察)
各実施例で得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂の5%重量減少温度は、いずれも、290℃以上であり、一方、各比較例で得られる熱可塑性ポリウレタン樹脂の5%重量減少温度は、いずれも、290℃未満である。
【0277】
このことから、水酸基の酸素原子(O)と、アミド基の窒素原子(N)とを最短で結合する原子の個数が3以上であるアミド基含有ジオールを用いれば、水酸基の酸素原子(O)と、アミド基の窒素原子(N)とを最短で結合する原子の個数が3未満であるアミド基含有ジオールを用いる場合に比べ、熱安定性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂を製造できることが確認された。
【0278】
また、このことは、Xが、脂肪族炭化水素基である場合のみならず、凝集性の強い炭化水素基(芳香環含有炭化水素基、脂環含有炭化水素基)である場合にも確認された。
【0279】
このことから、熱可塑性ポリウレタン樹脂の熱安定性は、Xの構造には依存せず、Yの構造に依存することが確認された。
(2)機械強度評価
実施例1、4および5、および、比較例1および5において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、熱プレス成形(成形条件:スペーサー厚さ0.3mm、熱プレス設定温度100〜240℃、冷却プレス設定温度20℃、設定圧力7.5MPa、予熱時間2分、熱プレス時間2分、冷却プレス3分)し、さらに100℃において、4時間、窒素気流下でアニール処理し、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるシートを得た。
【0280】
次いで、得られたシートの、23℃、50%相対湿度下における弾性率(MPa)、引張強度(MPa)および破断伸び(%)を、引張試験機(インストロン社製 引張試験機INSTRON1123)により、JIS K−7311に記載の方法に準拠して測定した。
【0281】
その結果を、表7に示す。
【0282】
【表7】

【0283】
(考察)
表7から、このような熱可塑性ポリウレタン樹脂では、優れた熱安定性を確保するため、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上であるアミド基含有ジオールを用いる場合にも、優れた機械強度を確保できることがわかる。
【0284】
参考評価
(1)透湿性評価
実施例1および15〜17において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、熱プレス成形(成形条件:スペーサー厚さ0.3mm、熱プレス設定温度100〜240℃、冷却プレス設定温度20℃、設定圧力7.5MPa、予熱時間2分、熱プレス時間2分、冷却プレス3分)し、さらに100℃において、4時間、窒素気流下でアニール処理し、熱可塑性ポリウレタン樹脂からなるシート(厚み20μm)を得た。
【0285】
次いで、得られたシートの透湿度を、JIS L−1099 B−1法(酢酸カリウム法)記載の方法に準拠し、フィルムと水が接する面に、ナイロンタフタを重ねた後に、測定した。その後、透湿度を、24時間の値に換算した。
【0286】
その結果を、表8に示す。
【0287】
なお、表1および4に示すように、実施例1および15〜17では、同種のアミド基含有ジオール(N,N’−ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタル酸アミド)を用いる一方、別種の高分子量ポリオール、または、高分子量ポリオールの混合物を用いて、オキシエチレン基の含有量(%)が異なる熱可塑性ポリウレタン樹脂を、それぞれ製造している。
【0288】
実施例1および15〜17の熱可塑性ポリウレタン樹脂におけるオキシエチレン基の含有量(%)を、表8に示す。
【0289】
【表8】

【0290】
(考察)
表8の記載から、オキシエチレン基の含有量(%)が高い熱可塑性ポリウレタン樹脂によれば、優れた透湿性を確保できることがわかる。
(2)加熱分解性
実施例4および比較例1において得られた熱可塑性ポリウレタン樹脂を、加熱時発生ガス質量分析法(EGA−MS法)により分析した。
【0291】
比較例1の熱可塑性ポリウレタン樹脂からは、263℃において、アミド基含有ジオールの脱水環化生成物である2,2’−(1,4−フェニレン)ビス(2−オキサゾリン)が生成し、また、282℃において、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートの加水分解により生成する4,4’−ジアミノジフェニルメタンが観測された。
【0292】
一方、実施例4の熱可塑性ポリウレタン樹脂からは、これらと同じ温度領域での分解生成物は観測されず、より高温の335℃、314℃において、それぞれ、アミド基含有ジオール化合物由来の構造不確定の分解成分と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとを検出した。
【0293】
すなわち、比較例1の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、アミド基含有ジオールに由来する成分が、低温において脱離する(すなわち、熱安定性に劣る)、一方、実施例4の熱可塑性ポリウレタン樹脂では、そのような成分は、低温において脱離しない(すなわち、熱安定性に優れる)ことが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートと、高分子量ポリオールと、下記一般式(1)で示されるアミド基含有ジオールとを、少なくとも反応させてなることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂。
HO−Y−NH−CO−(X)−CO−NH−Y−OH (1)
(式中、Xは、脂肪族炭化水素基、脂環含有炭化水素基または芳香環含有炭化水素基を示し、Y1およびY2は、互いに同一または相異なって、OとNとを最短で結合する原子の個数が3以上である原子団を示す。また、nは、0または1の整数を示す。)
【請求項2】
前記ポリイソシアネートと、前記アミド基含有ジオールとの反応により形成されるハードセグメントの含有量が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、25質量%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、および、それらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項4】
前記高分子量ポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項5】
5%重量減少温度が290℃以上であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項6】
前記高分子量ポリオールが、オキシエチレン基を含有し、
前記オキシエチレン基の含有量が、前記熱可塑性ポリウレタン樹脂の総量に対して、20質量%以上、65質量%以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項7】
厚み20μmのフィルムにしたときの透湿度が8000g/m・24h以上、300000g/m・24h以下であることを特徴とする、請求項6に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を成形することにより得られることを特徴とする、成形品。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂をフィルムに成形することにより得られることを特徴とする、請求項8に記載の成形品。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリウレタン樹脂を押出成形することにより得られることを特徴とする、請求項8または9に記載の成形品。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
少なくとも、前記ポリイソシアネートと、前記高分子量ポリオールと、前記アミド基含有ジオールとを、
非プロトン性極性溶媒中で溶液重合させることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
少なくとも、前記ポリイソシアネートと、前記高分子量ポリオールと、前記アミド基含有ジオールとを、
溶融重合させることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法であって、
少なくとも、前記ポリイソシアネートと、前記高分子量ポリオールと、前記アミド基含有ジオールとを、
非水分散重合させることを特徴とする、熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。


【公開番号】特開2011−213867(P2011−213867A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83473(P2010−83473)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】