説明

熱可塑性基材用の紫外線−硬化保護層

本発明は第1層(S1)および第2層(S2)を含有する多層製品に関する。第1層は、下記のA)〜G)から得られる組成物であり:成分A.1およびA.2からなる群の少なくとも1種から選択される、1または複数の脂肪族ポリマー先駆物質A)(A.1)ウレタンまたはエステル結合を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート官能基を有する脂肪族オリゴマー、または対応するオリゴマーの混合物、およびA.2)1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する反応性脂肪族希釈剤、または対応する反応性希釈剤の混合物;B)1種またはそれ以上の、微粉化無機化合物;C)トリアジン、誘導体およびジフェニルトリアジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の有機紫外線吸収剤、好ましくは少なくとも1種のジフェニルトリアジン誘導体紫外線吸収剤;D)成分A、BおよびFの混合物について実験的に決定された固形分に基づき、0.1〜2wt%の塩基HALS類のラジカル捕捉剤、E)所望による、1またはそれ以上のレベリング剤、F)所望による、1またはそれ以上の溶媒およびG)少なくとも1種のノリッシュII型光開始剤。第2層は、熱可塑性ポリマーである。また、半発明は上述の成分から構成されるコーティング組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1層が、SiOナノ粒子を含有する紫外線硬化保護層であり、第2層が熱可塑性基材を含有する多層製品に関する。本発明は、第1層に関する紫外線硬化性組成物と、多層製品の製造方法および製品、例えば該多層製品を含有するガラス窓を有する製品の提供に関する。
【背景技術】
【0002】
C.ロスカー(PITTURE e VERNICIに所属)によるEuropean Coatings 2004年、第20巻、第7頁〜第10頁は、充填材を含有しないコーティング組成物系と比べて、十分に改良された引掻き抵抗性と耐摩耗性を備えるコーティング系として、二酸化ケイ素粒子を含有する紫外線硬化性有機コーティング組成物系を開示する。
【0003】
ポリカーボネート製の成形体は長年に亘り既知である。しかしながら、ポリカーボネートは、それ自体が本質的に紫外線安定性を有さないといった欠点を有する。ビスフェノールAポリカーボネートの感度特性は、最も高い感度で320nm〜330nmの間である。300nm未満の太陽放射は地球に到達せず、350nm以上においては、このポリカーボネートは無反応であり、黄変をもはや生じさせない。
【0004】
紫外線に感受性のあるプラスチック基材(例えばポリカーボネート)の恒久的なコーティング、すなわち、長期間におよぶ屋外使用に適する多層製品に関する効果的な紫外線保護が、第1層において更に要求されている。
【0005】
コーティングにおける使用に関して既知である代表的な紫外線安定剤は、紫外線吸収剤(例えば、2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-シアノアクリレートおよびオキサルアニリド(oxalanilide)など)、およびHALS型のラジカル捕捉剤(ヒンダードアミン系光安定剤)である。これらの更なるコーティング成分は、紫外線光と光開始剤の競合によるか、または開始剤の捕捉または伝達ラジカルの生成により、紫外線硬化バインダー中における、紫外線光により開始されるラジカル架橋反応に影響を及ぼす。
【0006】
紫外線硬化により形成され、有機マトリックスから構成される第1層を有する多層製品に関する先行技術によると、ナノ粒子で充填されると共に紫外線吸収剤を含有する。要約を以下に示す。
【0007】
EP-A0424645号明細書には、紫外線放射により硬化できるコーティング組成物が開示され、該組成物は、アクリレートおよびコロイド状二酸化ケイ素に基づき、該組成物において、紫外線吸収剤には、ベンゾフェノン、シアノアクリレートおよびベンゾトリアゾール型が可能な添加剤として明確に記載され、HALS型のラジカル捕捉剤も可能な添加剤として明確に記載されている。放射線硬化において紫外線光を使用する際に、紫外線吸収剤の量に応じて硬化が妨げられるといった問題が示されている。EP-A0424645号明細書によると、硬化用の光開始剤に関して制限はなく、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(Darcocure(登録商標)1173,チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)および2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(Irgacure(登録商標)651,チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)が明確に記載されている。
【0008】
EP-A0576247号明細書には、光開始剤および紫外線吸収剤として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(LucirinTPO、BASF AG社)と、アクリレートと、シリルアクリレートとコロイド状二酸化ケイ素に基づく、紫外線放射によって硬化可能なコーティング組成物が開示される。HALS型の立体障害アミン、フルオロアクリレートおよびアルキルアクリレートを、添加剤として所望により使用できる。また、Cyasorb(登録商標)UV-416、Cyasorb(登録商標)UV531、Cyasorb(登録商標)UV5411、Tinuvin(登録商標)328およびUnivol(登録商標)400および三種類のベンゾフェノンと2種類のベンゾトリアゾールも、紫外線吸収剤として明確に記載されている。しかしながら、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(3,5-ジtert.-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート(Tinuvin(登録商標)144、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)は記載されていない。
【0009】
更に、ノリッシュII型の光開始剤は、水素引抜き剤として既知である。アミンは共開始剤(coinitiator)として機能できる。この場合、エキシプレックス(励起状態)は、励起したノリッシュII型の光開始剤と第3級アミンから形成される。例えば、トリエタノールアミンは、慣習的に3級アミンとして使用される。アミン成分として塩基HALS系の使用に関する示唆はない(「コーティング、インク&ペイント用の紫外線配合物&EB配合物に関する化学&技術」第3巻、フリーラジカルおよびカチオン重合用の光開始剤、K.Dietliker、SITAテクノロジー社、ロンドン1991年、第46〜48頁および第192頁〜196頁)。
【0010】
H.J.hagemannによる、Prog.Org.Coat.1985年、第13巻、第123頁〜第150頁の文献においては、良好な硬度を付与する芳香族ケトンを有するアミンを使用することにより、完全な硬化がもたらされるが、酸素阻害の低下が記載されている。
【0011】
米国特許5468789号明細書には、コロイド状二酸化ケイ素と、アルコキシシリルアクリレート、アクリレートモノマーおよび特定の黄変阻害剤に基づくと共に、所望により、紫外線吸収剤、例えばレゾルシノールモノベンゾエートおよび2-メチルレゾルシノールジベンゾエート等を含有できる、紫外線放射によって硬化可能なコーティング組成物が開示される。
【0012】
WO2007/115678号明細書には、熱可塑性ポリマー層と紫外線硬化層から成る多層製品が開示される。紫外線硬化層は、1分子当り、少なくとも2つのアクリレート基と更にウレタンまたはエステル結合を有する脂肪族オリゴマーを含有するか、対応するオリゴマーの混合物を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する脂肪族の反応性希釈剤を含有する。さらに、1種または2種類の微粉化無機化合物と、少なくとも1種の有機紫外線吸収剤(好ましくはジフェニルトリアジン誘導体)と、HALS系の1種以上のラジカル捕捉剤と、アシルホスフィンオキシド誘導体およびα-アミノアルキルフェノン誘導体から成る群から選択される少なくとも1種の特定の光開始剤とを更に含有する。この発明とは異なり、ベンゾフェノン誘導体は光開始剤として使用されない。
【0013】
EP-A824119号明細書には、アクリルモノマー、光開始剤、紫外線吸収剤およびシリルアクリル化二酸化ケイ素に基づく紫外線硬化コーティング組成物が記載され、トリアジンが更に明確に記載されている。アシルホスフィンオキシドが光開始剤として使用される。
【0014】
彼の文献(「ビスフェノールAポリカーボネートの熱劣化および光分解の機構;ポリマー耐久性」、Advances in Chemistry シリーズ、第249巻(1996年)第59〜第76頁)において、ポリカーボネートの崩壊をもたらす要因には塩基の触媒効果が記載され、この根拠のために、原則として、主に塩基HALSをポリカーボネート中またはポリカーボネート上に使用しないことが忠告されている。
【0015】
今のところ、商業的に入手可能な系は、極めて低い摩耗値が要求されている、特に自動車向けのガラス窓に対する要求を十分に満たしていない。例えば、これらは、自動車向けプラスチック窓に関する基準ECE R43(2000)(ヨーロッパ)およびANSI Z26.1-1996(米国)において提示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0424645号A明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0576247号A明細書
【特許文献3】米国特許5468789号明細書
【特許文献4】国際特許出願公開第2007/115678号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第824119号A明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】C.ロスカー(PITTURE e VERNICIに所属)によるEuropean Coatings 2004年、第20巻、第7頁〜第10頁
【非特許文献2】「コーティング、インク&ペイント用の紫外線配合物&EB配合物に関する化学&技術」第3巻、フリーラジカルおよびカチオン重合用の光開始剤、K.Dietliker、SITAテクノロジー社、ロンドン1991年、第46〜48頁および第192頁〜196頁
【非特許文献3】H.J.hagemannによる、Prog.Org.Coat.1985年、第13巻、第123頁〜第150頁
【非特許文献4】「ビスフェノールAポリカーボネートの熱劣化および光分解の機構;ポリマー耐久性」、Advances in Chemistry シリーズ、第249巻(1996年)第59〜第76頁
【非特許文献5】ECE R43(2000)(ヨーロッパ)
【非特許文献6】ANSI Z26.1-1996(米国)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
先行技術によると、引掻き抵抗性と耐候安定性を改良した(例えばテーバー試験において小さな摩耗を示す)ポリカーボネート系の紫外線硬化コーティング組成物を提供することが目的であった。特に、コーティング組成物は、500gの荷重を加え1000サイクルで行うテーバー試験(CS 10Fホイール、IV型)において、2%未満のΔヘーズをもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
該目的は、アシルホスフィンオキシド誘導体およびα-アミノアルキルフェノン誘導体から成る群から選択される更なる光開始剤と所望により併用される、少なくとも1種のノリッシュII型光開始剤(好ましくはベンゾフェノン誘導体)と、0.1〜2wt%の塩基HALS類のラジカル捕捉剤を含有するコーティング配合物であって、
塗布および硬化の後に多層製品の第1層を形成する該配合物によって達成される。
【0020】
塩基HALSの使用は、ポリカーボネートの鹸化を可能にすることに起因して避けるべきであり、酸性樹脂との組合せにおいても避けるべきであると一般的に考えられており、また塩基HALS系とノリッシュII型光開始剤の相乗効果は、従前において既知ではないので、本発明による解決法は予期せぬものである。
【0021】
したがって、本発明は、第1層(SI)および第2層(S2)を含有する多層製品を提供し、該第1層は以下のものから得られるコーティング組成物であり、第2層は熱可塑性ポリマーである:
A)成分A.1およびA.2からなる群の少なくとも1種から選択される、1または複数の脂肪族ポリマー先駆物質:
A.1)ウレタンまたはエステル結合を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート官能基を有する脂肪族オリゴマー、または対応するオリゴマーの混合物、および
A.2)1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する反応性脂肪族希釈剤、または対応する反応性希釈剤の混合物、
B)1種またはそれ以上の微粉化無機化合物、
C)トリアジン誘導体およびジフェニルトリアジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の有機紫外線吸収剤、好ましくは少なくとも1種のジフェニルトリアジン誘導体系の紫外線吸収剤、
D)成分A、BおよびFの混合物について実験的に決定された固形分を単位として、0.1〜2wt%の塩基HALS類のラジカル捕捉剤、
E)所望による、1またはそれ以上のレベリング剤、
F)所望による、1またはそれ以上の溶媒および
G)少なくとも1種のノリッシュII型光開始剤(好ましくはベンゾフェノン誘導体)であって、
高い光化学反応性と、>300nm(特に好ましくはλ>350nm)の近紫外線領域における吸収バンドを備えることによって区別される、アシルホスフィンオキシド誘導体およびα-アミノアルキルフェノン誘導体から成る群から選択される更なる光開始剤と所望により組み合される該光開始剤。
【0022】
好ましい実施態様において、第1層(S1)の成分は、下記の定量的な割合で使用される。下記のものは、成分AおよびBの混合物に基づいて使用される;
20〜95wt%、好ましくは50〜80wt%の成分A、
5〜80wt%、好ましくは20〜50wt%の成分Bおよび
0.1〜10wt%、好ましくは0.5〜8wt%、特に好ましくは1〜5wt%の成分G。
【0023】
成分A、BおよびFの混合物に関して実験的に決定される固形分が、20〜50wt%、好ましくは30〜40wt%となるように、溶媒(成分F)の量が設定される。
【0024】
下記のものは、成分A、BおよびFの混合物の固形分に基づいて使用される:
0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜10wt%、特に好ましくは0.8〜5wt%の成分C、
0.1〜2wt%、好ましくは0.5〜1.8wt%、特に好ましくは0.6〜1.5wt%、特に0.6〜1.2wt%の成分Dおよび
0〜0.5、好ましくは0.1〜1wt%の成分E。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1層(S1)を調製するための成分
成分A
成分Aに係る脂肪族ポリマー先駆物質は、成分A.1およびA.2からなる群の少なくとも1種から選択され
A.1)ウレタンまたはエステル結合を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート官能基を有する脂肪族オリゴマー、または対応するオリゴマーの混合物、および
A.2)1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する反応性脂肪族希釈剤、または対応する反応性希釈剤の混合物。
【0026】
1分子あたり少なくとも2つのアクリレート基を有する、成分Aに係る適当なポリマー先駆物質は、好ましくは下記式で表わされるものであり、
【0027】
【化1】

式中、n≧2であり、
およびRは、相互に独立してHまたはC〜C30アルキル、好ましくはH、メチルまたはエチルであり、
成分A.1に係るポリマー先駆物質の場合、Rは、ウレタンまたはエーテル結合により結合している脂肪族炭化水素単位から成るn-価の有機残基であるか、または
成分A.2に係るポリマー先駆物質の場合、Rは、n-価の有機残基であり、好ましくは1〜30個の炭素原子を有する。
【0028】
脂肪族ウレタンアクリレートまたはポリエステルアクリレートの分類に属する成分A.1に係る適当なオリゴマーの生成は、それぞれ既知であり、それらのコーティングバインダーとしての使用も既知であり、「コーティング、インク&ペイント用の紫外線配合物&EB配合物に関する化学&技術」第2巻、1991年、SITAテクノロジー、ロンドン(P.K.T.初版、第73頁〜第123頁(ウレタンアクリレート)または第123頁〜第135頁(ポリエステルアクリレート)に記載されている。
【0029】
例えば、以下のものは商業的に入手可能であり、本発明において適当なものである:脂肪族ウレタンアクリレート、例えばEbecryl(登録商標)4858、Ebecryl(登録商標)284、Ebecryl(登録商標)265、Ebecryl(登録商標)264(いずれの場合も、サイテック・サーフェススペシャリティーズ製)、クレーバレー社製のCraynor(登録商標)925、ビアノバ樹脂社製のViaktin(登録商標)6160、バイエル・マテリアルサイエンスAG社のDesmolux(登録商標)U100、コグニス社のPhotomer(登録商標)6891など、または反応性希釈剤に溶解された脂肪族ウレタンアクリレート、例えばBASF AGのLaromer(登録商標)8987(ヘキサンジオールジアクリレート中70%濃度)、バイエル・マテリアルサイエンスAG社のDesmolux(登録商標)U680H(ヘキサンジオールジアクリレート中80%濃度)、クレーバレー社製のCraynor(登録商標)945B85(ヘキサンジオールジアクリレート中85%)およびCraynor(登録商標)963B80(ヘキサンジオールジアクリレート中80%)など、またはポリエステルアクリレート、例えばサイテック・サーフェス・スペシャリティーズ製のEbecryl(登録商標)810または830である。
【0030】
成分A.2に係る適当な反応性希釈剤の製造および使用は既知であり、「コーティング、インク&ペイント用の紫外線配合物&EB配合物に関する化学&技術」第2巻、1991年、SITAテクノロジー、ロンドン(P.K.T.初版、第237頁〜第306頁(反応性希釈剤)に記述されている。例えば、以下のものが本発明において適当である:
メタンジオールジアクリレート、1,2−エタンジオールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,2−プロパンジオールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートおよび対応するメタクリレート誘導体。1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびそれらのメタクリレート誘導体が好ましく使用される。1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートおよびそれらのメタクリレート誘導体が特に好ましく使用され、特に、成分A.1との混合物が好ましい。
【0031】
成分B
成分Bは、微粉化無機化合物であり、好ましくは周期表の第1〜第5主族(main group)または第1〜第8亜族(sub−group)、好ましくは第2〜第5主族もしくは第4〜第8亜族、特に好ましくは第3〜第5主族もしくは第4〜第8亜族から選択される一以上の金属の極性化合物のうちの少なくとも一種、またはこれらの金属と、酸素、水素、硫黄、リン、ホウ素、炭素、窒素もしくはケイ素から選択される少なくとも一種類の元素との化合物を含有する。
【0032】
好ましい化合物は、例えば、酸化物、水酸化物、水和酸化物、硫酸塩、亜硫酸塩、硫化物、炭酸塩、炭化物、硝酸塩、亜硝酸塩、窒化物、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、水素化物、リン酸塩またはホスホン酸塩である。
【0033】
好ましくは、微粉化無機化合物は、酸化物、リン酸塩、水酸化物から構成され、好ましくは、TiO、SiO、SnO、ZnO、ZnS、ZrO、Al、AlO(OH)、ベーマイト、アルミニウムホスフェート、および、TiN、WC、Fe、酸化鉄、NaSO、酸化バナジウム、ホウ酸亜鉛、ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、一元−、二元−または三元−ケイ酸塩である。混合物およびドープ化合物も同様に使用できる。
【0034】
水和酸化アルミニウム(例えばベーマイト)および二酸化ケイ素が特に好ましい。特に、二酸化ケイ素が好ましい。
【0035】
本発明に係る微粉化無機化合物は、は1〜200nm、好ましくは5〜50nm、特に好ましくは7〜40nmの平均粒度(d50値)を有する。特に、微粉化無機化合物は、((d90−d10)/d50)で表わされる粒度分布が狭く、2以下、特に好ましくは0.2〜1.0の分布を有する。粒度の決定は、超遠心分離分析法によって行われ、d90は90%値であり、d10は10%値であり、d50は総重量分布の平均値である。粒度決定に関する分析超遠心分離の使用は、H.G.Mueller Progr.Colloid Polym.Sci.2004年,第127巻,第9頁〜第13頁に記述されている。
【0036】
好ましい態様において、これらの微粉化無機化合物の表面は、アルコキシシラン化合物によって変性される。この目的を達成するために、下記式で表わされるアルコキシシラン化合物が好ましく使用される:
【0037】
【化2】

(式中、m=1,2または3、および
RおよびR'=一価有機残基、好ましくは、1〜30個の炭素原子を有するアルキル鎖である。)
【0038】
微粉化無機化合物の表面変性は、特に好ましくは、下記式で表わされるアクリレート官能化トリアルコキシシラン化合物で行われる:
【0039】
【化3】

(式中、RおよびRは、相互に独立して、HまたはC〜C30アルキル、好ましくはH、メチルまたはエチルであり、
は、1〜30個の炭素原子を有する二価有機残基、好ましくはアルキル鎖であり、
は、一価有機残基、好ましくは、1〜30個の炭素原子を有するアルキル鎖、特に好ましくはメチルおよびエチルである。)
【0040】
以下のアクリレート官能化トリアルコキシシラン化合物が、微粉化無機化合物の表面変性に特に好ましく使用される:(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシランおよびメタクリルオキシメチルトリメトキシシラン。
【0041】
好ましい実施態様において、微粉化無機化合物は、A)およびF)からなる群から選択される少なくとも一種類の成分における分散体として使用される。コーティング配合物中で凝集せずに分散できる微粉化無機化合物が好ましい。
【0042】
成分C
本発明における紫外線吸収剤は、ジフェニルトリアジン、ベンゾトリアゾール、オキサラニリドまたはヒドロキシベンゾフェノンの誘導体である。特に好ましいジフェニルトリアジンは、下記式(IV)で表わされるものである。
【0043】
【化4】

(式中、
X=OR、OCHCHOR、OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COOR、好ましくはOCH(R)COOR
=分枝もしくは非分枝C〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたは−CO−C〜C18アルキル、
=Hまたは分枝もしくは非分枝C〜Cアルキル、好ましくはCH、および
=C〜C12アルキル;C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキル、好ましくはC17)。
【0044】
X=OCH(R)COOR、R=CHであり、R=C17である式(IV)で表わされる紫外線吸収剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の紫外線吸収剤Tinuvin(登録商標)479)が、成分Cとして特に好ましく使用される。
【0045】
一般式(IV)で表わされるジフェニル置換トリアジンは、原則としてWO−A 96/28431;DE−A 197 39 797;WO−A 00/66675;US 6,225,384;US 6,255,483;EP−A 1 308 084およびDE−A 101 35 795により既知である。
【0046】
好ましい実施態様において、紫外線吸収剤は、第二層の最大感度域において高い紫外線吸収能を有し、特に好ましくは、紫外線吸収剤は、300〜340nmに最大紫外線吸収能を有する。
【0047】
ベンゾトリアゾール類の紫外線吸収剤には、以下のものが含まれる:例えばTinuvin(登録商標)171:(2-[2-ヒドロキシ-3-ドデシル-5−メチルベンジル]-フェニル)-2H-ベンズトリアゾール(CAS番号.125304-04-3)、Tinuvin(登録商標)234:(2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ(1,1-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンズトリアゾール(CAS番号.70321-86-7))、Tinuvin(登録商標)328:(2-[2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert.アミル-フェニル)-2H-ベンズトリアゾール(CAS番号.25973-55-1)。
【0048】
オキサラニリド類の紫外線吸収剤には、以下のものが含まれる:例えば、クラリアント社製のSand紫外線or(登録商標)3206(N-(2-エトキシフェニル)エタンジアミド(CAS番号.82493-14-9)またはN-(2-エトキシフェニル)-N'-(4-ドデシルルフェニル)オキサミド(CAS番号.79102-63-9)。
【0049】
ヒドロキシベンゾフェノン類の紫外線吸収剤は、例えば、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のCimasorb(登録商標)81(2-ベンゾイル-5-オクチルオキシフェノール(CAS番号.1843-05-6)、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン(CAS番号.131-56-6)、2-ヒドロキシ-4-(n-オクチルオキシ)ベンゾフェノン(CAS番号.1843-05-6)、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン(CAS番号.2985-59-3)である。
【0050】
トリアジン類の紫外線吸収剤には、以下のものが含まれる:例えば、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[(オクチルオキシカルボニル)-エチリデンオキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−[3-(2-エチルヘキシル-1-オキシ)-2-ヒドロキシプロピル]フェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン(CAS番号.137658-79-8)もTinuvin(登録商標)405(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)として既知であり、2,4-ジフェニル-6-[2-ヒドロキシ-4-(ヘキシルオキシ)フェニル]-1,3,5-トリアジン(CAS番号.147315-50-2)はTinuvin(登録商標)1577(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)として入手できる。化合物2−[2−ヒドロキシ−4−(2−エチルヘキシル)オキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジンはCAS番号204848-45-3で表わされ、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社より、Tinuvin(登録商標)479の名称で入手できる。化合物2−[2−ヒドロキシ−4−[(オクチルオキシカルボニル)-エチリデンオキシ]フェニル-4,6-ジ(4-フェニル)フェニル-1,3,5-トリアジンは、CAS番号204583-39-1で表わされ、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社より、CGX-紫外線A006の商品名で入手できる。
【0051】
成分D
本発明による成分Dは、いわゆるHALS系(ヒンダードアミン系光安定剤)である。本発明に係るHALS系は、塩基性で、一般にpK<7(好ましくは≦6.8、特に≦6)を示す、立体障害型のアミン化合物である。塩基性のHALS化合物は下記の一般構造を有する:
【0052】
【化5】

式中、Y=HまたはCHであり、
は下記式で表わされる;
【0053】
【化6】

(式中、
Z=二価官能基、例えば、好ましくはC(O)O、NHまたはNHCO
10=二価有機残基、例えば、好ましくは(CH)l(l=1〜12、好ましくは3〜10)、C=CH−Ph−OCH、または下記式で表わされる化合物、
【0054】
【化7】

および
11=HまたはC〜C20アルキル)。
【0055】
HALS化合物の例は、それらのpK値と共に、表1に示される。
【0056】
【表1】

【0057】
D3およびD4に関するpK値は、文献から引用し、D1に関するpK値はそれらから算出した(A.バレット:「コーティング組成物用の光防護剤」、1996年、Curt.R.ビンセント、ハノーバー)。D2に関する情報は、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社による技術データシートを用いた(2004年)。
【0058】
化合物D1は、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(3,5-ジ-tert.-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート;Tinuvin(登録商標)144(CAS番号63843-89-0)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製である。化合物D2は、2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4−イル)ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-s-トリアジン;Tinuvin(登録商標)152(CAS番号、150686-79-6)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製である。化合物D3は、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート;Tinuvin(登録商標)123(CAS番号、122586-52-1)チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製である。化合物D4は、N-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-2-ドデシルスクシンイミド;Sanduvor(登録商標)3058(CAS番号、106917-31-1)クラリアント社製である。さらに、式(D5)および式(D6)で表わされる、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケートと1-(メチル)-8-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケートの混合物も成分Dとして好ましい。
【0059】
【化8】

【0060】
混合物は、5以下のpKを示し、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のTinuvin(登録商標)292として商業的に入手できる(CAS番号、41556-26-7)。
【0061】
成分E
本発明に係る成分Eは、好ましくは、第二層の表面上でコーティング配合物の良好な濡れを促進すると共に、コーティング配合物の硬化によって形成される第一層表面の見た目を綺麗にする、全てのレベリング剤である。常套のレベリング剤の概説は、Janos Hajasによる「コーティングにおけるレベリング添加剤」,Johan Beileman(編),Wiley−VCH Verlag GmbH,Weinheim 2000年,第164〜179頁において記載されている。例えば、好ましくは、BYK Chemie社製のレベリング剤BYK(登録商標)300が使用される。
【0062】
成分F
本発明に係る成分Fは、事実上の第1層を形成するコーティング配合物の紫外線硬化後に、高い透明度と低い白濁を備える多層製品が得られる程度に、第2層と相溶性であり、コーティング配合物の分散、塗布および脱気を可能とする溶媒または溶媒混合物である。これらは、例えば、好ましくは、アルカン、アルコール、エステル、ケトンまたはそれらの混合物である。アルコール(メタノール以外)、酢酸エチルおよびブタノンが特に好ましく使用できる。ジアセトンアルコール(CHC(OH)CHC(=O)CH、酢酸エチル、メトキシプロパノールおよびブタノンからなる群の少なくとも一つから選択される溶媒または溶媒混合物がより特に好ましい。
【0063】
成分G
本発明に係る好ましいノリッシュII型光開始剤は、ベンゾフェノン誘導体である。これと共に、ラジカル形成は、水素引抜きにより行われる(へーグマン、Prog.Org.Coat.1985年、第13巻、第123頁〜第150頁参照)。
【0064】
【化9】

【0065】
本発明に係る特に好ましい光開始剤Gは、ノリッシュII型光開始剤から選択され、例えば、式(GI)で表わされるベンゾフェノン誘導体である:
【0066】
【化10】

(式中、RおよびRは、相互に独立して、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル、特にメチルまたはエチルを示し、および
nは相互に独立して、0,1,2または3、好ましくは0または1を示す)。
【0067】
他のノリッシュII型光開始剤は、「コーティング、インク&ペイント用の紫外線配合物&EB配合物に関する化学&技術」第2巻、1991年、SITAテクノロジー社、ロンドン、(P.K.T、初版)、第288頁〜第294に記載されている。ベンゾフェノン誘導体の他にも、チオキサントンおよび1,2-ジケトン誘導体もこの化合物類に属する。
【0068】
式(GI)で表わされるベンゾフェノン誘導体も、式(GII)で表わされる1-ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン誘導体と併用して使用できる:
【0069】
【化11】

(式中、RおよびRは、相互に独立して、C〜Cアルキル、好ましくはC〜Cアルキル、特にメチルまたはエチルを示し、および
nは相互に独立して、0,1,2または3、好ましくは0または1を示す)。
【0070】
式(GI)および式(GII)の化合物は、(GI):(GII)の重量比が70:30〜30:70、特に好ましくは60:40〜40:60、特に55:45〜45:55で好ましく使用される。
【0071】
特に好ましくは、ベンゾフェノン(CAS番号119-61-9)および1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(CAS番号947-19-3)であり、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製のIrgacure(登録商標)500の名称で1:1混合物として入手できる(すなわち、式(GI)および式(GII)の非置換誘導体)。
【0072】
更なる光開始剤として、ノリッシュI型の光開始剤も使用できる。好ましいものは、それぞれ、式V(アシルホスフィンオキシド)で表わされるアシルホスフィンオキシド誘導体、および式VI(α-アミノアルキルフェノン)で表わされるα-アミノアルキルフェノン誘導体である:
【0073】
【化12】

(式中、
12=C〜C30アルキル;またはC〜Cシクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アリールオキシまたはC〜C12アラルキル、いずれの場合も所望により、C〜Cアルキルおよび/または塩素、臭素で置換される;好ましくはフェニルまたは下記式で表わされる化合物:
【0074】
【化13】

【0075】
13=C〜C30アルキル、C〜C30アルコキシ;またはC〜Cシクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アリールオキシ、C〜C21アロイルまたはC〜C12アラルキル、いずれの場合も所望により、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cアシルおよび/または塩素、臭素で置換される;好ましくは下記で表わされる化合物:
【0076】
【化14】

14=C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、好ましくはCHまたはOCH
n=0〜5、好ましくは0、2または3
【0077】
15、R16、R17、R18は相互に独立してC〜C30アルキル;またはC〜Cシクロアルキル、C〜C20アリールまたはC〜C12アラルキルを示し、いずれの場合も所望により、C〜Cアルキルおよび/または塩素、臭素で置換される;好ましくは、R15=CHPhまたはCH、R16=CHCHまたはCH、R17=CHおよびR18=CHであり、また、
式(VI)中で示される窒素Nが複素環系、好ましくは下記式で表わされるモルホリンの一部となるように残基R17およびR18を結合させて環を形成させてもよい。
【0078】
【化15】

【0079】
19=C〜C30アルコキシ、C〜C30アルキルチオ、C〜C30ジアルキルアミノ;またはC〜Cシクロアルキル、いずれの場合も所望により、C〜Cアルキル、および/または塩素、臭素で置換される。この場合、環のC原子を、ヘテロ原子(例えば、N、OまたはSなど)により置換してもよく、好ましくはメチルチオまたは下記のものである)
【0080】
【化16】

【0081】
下記のものがノリッシュI型の光開始剤として好ましく使用される:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル-ホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO固形物、BASF AG社)、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)(2,4,4-トリメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルフェニル)ベンゾイルホスホネート(Lucirin(登録商標)8728、BASF AG社)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニル-ホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO-L、BASF AG社)、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(Irgacure(登録商標)369、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン(式VIa参照;Irgacure(登録商標)907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)
【0082】
【化17】

【0083】
ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニル-ホスフィンオキシド(Irgacure(登録商標)819、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニル-ホスフィンオキシド(Lucirin(登録商標)TPO-L、BASF AG社)、および2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン(Irgacure(登録商標)907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社)が特に好ましく使用される。
【0084】
式(GI)または(GI)と(GII)で表わされる光開始剤をそれぞれ単独で使用してもよく、混合して用いてもよい。あるいは式(V)および(VI)で表わされる光開始剤と混合させてもよい。
【0085】
光開始剤(V)および/または(VI)は、10〜35wt%、特に好ましくは15〜30wt%、特に18〜25wt%の量で好ましく使用される(光開始剤(G)の100wt%を単位とする)。
【0086】
第2層(S2)の調製
本発明に係る第2層の熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステル(例えば、ポリアルキレンテレフタレート)、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンエーテル、グラフトコポリマー(例えばABS)およびそれらの混合物である。
【0087】
第2層は好ましくはポリカーボネート、特にホモポリカーボネート、コポリカーボネートおよび/または熱可塑性ポリエステルカーボネートである。
【0088】
それらは、光散乱によって較正され、ジクロロメタン中またはフェノール/o−ジクロロベンゼンの等重量混合物中で相対溶液粘度を測定することにより決定される、好ましくは18,000〜40,000、好ましくは22,000〜36,000、特に24,000〜33,000の平均分子量Mwを有する。
【0089】
本発明に係るポリカーボネートへ対して、所望により[空隙]-安定剤、熱安定剤、帯電防止剤および顔料を常套の量で添加してもよく、所望により、表面用離型剤および/または流れ調整剤(例えば、アルキルおよびアリールホスファイト、ホスフェート、ホスファン、低分子カルボン酸エステル、ハロゲン化合物、塩、チョーク、石英粉末、グラスファイバー、カーボンファイバー、顔料並びにそれらの組み合わせ)を添加することにより、離型性および/または流動性を改良してもよい。そのような化合物は、例えば、WO 99/55772の第15頁〜第25頁、EP 1308084および「プラスチック添加剤ハンドブック」、Hans Zweifel編,第5版 2000年,Hnaser Publishers,ミュンヘンの対応する章に記述されている。
【0090】
ポリカーボネートの調製に関して、以下の文献が参照される:例えば、WO2004/063249A1、WO2001/05866A1、WO2000/105867、US-A5340905、US5097002、US-A5717057およびそれらに記載された文献。
【0091】
ポリカーボネートの製造は、好ましくは相界面法または溶融エステル交換法によって行われ、以下に例として相界面法について記述する。
【0092】
出発化合物として好ましく使用される化合物は、一般式(VII)で表わされるビスフェノールである:
【0093】
【化18】

(式中、Rは、一以上の芳香族基を含有し、炭素原子を6〜30個有する、二価の有機基である。)
【0094】
このような化合物の例は、ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)アルカン、インダンビスフェノール、ビス(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(ヒドロキシフェニル)ケトンおよびα,α’−ビス(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンの群に属するビスフェノールである。
【0095】
上記化合物群に属する特に好ましビスフェノールは、ビスフェノールA、テトラアルキルビスフェノールA、4,4−(メタ−フェニレンジイソプロピル)ジフェノール(ビスフェノールM)、4,4−(パラ−フェニレンジイソプロピル)ジフェノール、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BP−TMC)、および所望によりそれらの混合物である。
【0096】
好ましくは、本発明により使用されるビスフェノール化合物を、炭酸化合物(特にホスゲン)と反応させるか、または溶融エステル交換法の場合、ジフェニルカーボネートもしくはジメチルカーボネートと反応させる。
【0097】
ポリエステルカーボネートは、好ましくは、上述のビスフェノールと、少なくとも一種類の芳香族ジカルボン酸と、所望により炭酸同等物を反応させることにより得られる。適当な芳香族ジカルボン酸は、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、3,3’−または4,4’−ジフェニルジカルボン酸およびベンゾフェノンジカルボン酸である。ポリカーボネート中のカーボネート基の、80mol%以下、好ましくは20〜50mol%の部分を芳香族ジカルボキシレート基で置換してもよい。
【0098】
相界面法において使用される不活性有機溶媒は、例えば、ジクロロメタン、種々のジクロロエタンおよびクロロプロパン化合物、テトラクロロメタン、トリクロロメタン、クロロベンゼンおよびクロロトルエンであり、クロロベンゼンまたはジクロロメタンあるいはジクロロメタンとクロロベンゼンとの混合物が好ましく使用される。
【0099】
相界面反応は、触媒、例えば第三級アミン、特にN−アルキルピペリジンまたはオニウム塩などにより促進できる。トリブチルアミン、トリエチルアミンおよびN−エチルピペリジンが好ましく使用される。溶融エステル交換法の場合、DE−A 4 238 123において挙げられている触媒が好ましく使用される。
【0100】
少量の分枝剤を使用して意図的にかつ制御することにより、ポリカーボネートを分枝させることができる。いくつかの好適な分枝剤は、フルルグルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン;2,2−ビス−[4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン;2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール;2,6−ビス−(2−ヒドロキシ−5’−メチル−ベンジル)−4−メチルフェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン;ヘキサ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェニル)オルトテレフタレート;テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、テトラ−(4−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノキシ)メタン;α,α’,α’’−トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、3,3−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドール、1,4−ビス−(4’,4''−ジヒドロキシトリフェニル)−メチル)−ベンゼン、特に1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよびビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0101】
使用されるジフェノールに基づいて、0.05〜2mol%の分枝剤または分枝剤の混合物を所望により使用でき、ジフェノールと共に使用してもよく、合成の後期に添加してもよい。
【0102】
連鎖停止剤として、フェノール、例えばフェノール、アルキルフェノール、例えばクレゾールおよび4−tert.−ブチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、クミルフェノールまたはこれらの混合物を好ましく使用でき、ビスフェノール1モルあたり1〜20mol%、好ましくは2〜10mol%の量で使用できる。フェノール、4−tert.−ブチルフェノールまたはクミルフェノールが好ましい。
【0103】
連鎖停止剤および分枝剤を合成物へ単独で添加してもよく、あるいはビスフェノールと共に添加してもよい。
【0104】
溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造は、例えばDE−A 4238 123に記述されている。
【0105】
本発明による多層製品の第2層に好ましい本発明によるポリカーボネートは、好ましくは、ビスフェノールAを基剤とするホモポリカーボネート、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを基剤とするホモポリカーボネート、並びにビスフェノールAと1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの二種類のモノマーを基剤とするコポリカーボネートである。
【0106】
ビスフェノールAを基剤とするホモポリカーボネートが特に好ましい。
【0107】
ポリカーボネートは安定剤を含んでもよい。適当な安定剤は、例えばホスフィン、ホスファイトまたはSi含有安定剤およびEP−A 0 500 496に記述されている他の化合物である。トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス−(ノニルフェニル)ホスファイト、テトラキス−(2,4−ジ−tert.−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニレンジホスホナイト、およびトリアリールホスファイトが例示される。トリフェニルホスフィンおよびトリス−(2,4−ジ−tert.−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
【0108】
ポリカーボネートを含有する、本発明による多層製品の第二層は、更に、一価〜六価アルコール、特にグリセロール、ペンタエリトリトールまたはゲルベアルコールのエステルまたは部分エステルを、0.01〜0.5wt%含有する。
【0109】
一価アルコールの例は、ステアリルアルコール、パルミチルアルコールおよびゲルベアルコールである。
【0110】
二価アルコールの例は、グリコールである。
【0111】
三価アルコールの例は、グリセロールである。
【0112】
四価アルコール例は、ペンタエリトリトールおよびメソエリトリトールである。
【0113】
五価アルコールの例は、アラビトール、リビトールおよびキシリトールである。
【0114】
六価アルコールは、例えばマンニトール、グルシトール(ソルビトール)およびズルシトールである。
【0115】
エステルは、飽和脂肪族C10〜C36モノカルボン酸および所望によりヒドロキシモノカルボン酸、好ましくは飽和脂肪族C14〜C32モノカルボン酸および所望によりヒドロキシル−モノカルボン酸の、好ましくはモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル、ペンタエステルおよびヘキサエステルまたはそれらの混合物であり、特に統計的混合物である。
【0116】
市販の脂肪酸エステル、特にペンタエリトリトールおよびグリセロールの脂肪酸エステルは、その生成に起因して、60%未満の種々の部分エステルを含み得る。
【0117】
炭素原子を10〜36個有する飽和脂肪族モノカルボン酸の例には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸およびモンタン酸が含まれる。
【0118】
炭素原子を14〜22個有する好ましい飽和脂肪族モノカルボン酸の例には、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸が含まれる。
【0119】
飽和脂肪族モノカルボン酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸およびヒドロキシステアリン酸が特に好ましい。
【0120】
飽和脂肪族C10〜C36カルボン酸および脂肪酸エステルは、文献で知られているものであるか、または文献で知られている方法によって製造される。ペンタエリトリトール脂肪酸エステルの例は、上記特に好ましいモノカルボン酸のものである。ペンタエリトリトールの脂肪酸およびグリセロールとステアリン酸およびパルミチン酸とのエステルが特に好ましい。更に、ゲルベアルコールのエステルおよびグリセロールとステアリン酸およびパルミチン酸および所望によりヒドロキシステアリン酸とのエステルも特に好ましい。
【0121】
本発明による多層製品は、別の層、特に式(IV)で表わされる紫外線安定剤を含む更なる紫外線保護層(S3)を有してもよい。この場合、層の順序は、(S1)−(S2)−(S3)であり、層(S1)および(S3)は同一の組成を有していても異なる組成を有していてもよい。
【0122】
本発明による多層製品、または製造に用いられる熱可塑性ポリマーは、有機染料、無機着色顔料、蛍光染料および特に好ましくは光学的光沢剤を含有してもよい。
【0123】
本発明は、下記のものから得ることが出来るコーティング組成物も提供する:
A)成分A.1およびA.2からなる群の少なくとも1種から選択される、1または複数の脂肪族ポリマー先駆物質:
A.1)ウレタンまたはエステル結合を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート官能基を有する脂肪族オリゴマー、または対応するオリゴマーの混合物、および
A.2)1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する反応性脂肪族希釈剤、または対応する反応性希釈剤の混合物、
B)1種またはそれ以上の、微粉化無機化合物
C)トリアジン誘導体およびジフェニルトリアジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の有機紫外線吸収剤、好ましくは少なくとも1種のジフェニルトリアジン誘導体系紫外線吸収剤、
D)実験的に決定された混合物の含有量に基づき、0.1〜2wt%の、塩基HALS類ラジカル捕捉剤、
E)所望による、1またはそれ以上のレベリング剤、
F)所望による、1またはそれ以上の溶媒および
G)少なくとも1種のノリッシュII型光開始剤であって、高い光化学反応性と、>300nm(特に好ましくはλ>350nm)の近紫外線領域における吸収バンドを備えることにより区別される、アシルホスフィンオキシド誘導体およびα-アミノアルキルフェノン誘導体から成る群から選択される更なる光開始剤と所望により組み合される該光開始剤。
なお、該組成物は多層製品の少なくとも1層を調製するのに適している。
【0124】
また、本発明は、下記の工程によって多層製品を製造する方法も提供する:
(i)第1工程において、好ましくは、射出成形法または押出成形法によって、S2に係る熱可塑性ポリマーから調製された任意形状のプラスチック成形品である第2層(S2)上に、第1層(S1)をコーティング配合物形態で施し、次いで
(ii)第2工程において、第1層のコーティング配合物を硬化させる。
【0125】
好ましくは、第1工程(i)において、コーティング配合物を、フローコーティング法、ディップコーティング法、噴霧法、ローリングまたはスピンコーティングにより第2層の表面に施し、続いて、室温および/または昇温させて脱気する(好ましくは20℃〜200℃、特に好ましくは40〜120℃)。第2層の表面を、洗浄または活性化させることにより予め処理してもよい。
【0126】
好ましくは、第2工程(ii)において、紫外線光、鉄ドープ水銀灯若しくは純粋な水銀灯、またはガリウムでドープしたもの、好ましくは紫外線光源を使用することにより、第1層の硬化を行う。
【0127】
更に、本発明は、多層製品の製造と、多層製品から製造される製品を提供する。また、本発明は該多層製品の使用、特に、長期間にわたる高い視覚的印象(例えば、光沢)が要求される屋外用途向けの使用を提供する。
【0128】
また、本発明は、射出成形法または押出成形法により熱可塑性ポリマーから好ましく調製され、S1に係るコーティング組成物で被覆される(所望により更なる層S3でも被覆される)成形品として層S2を含有する、具体的な多層製品も提供する。例えば、この多層製品はガラスの性質を示し、例えば、建築ガラス、自動車ガラス、ヘッドライトレンズ、メガネまたはヘルメットバイザーに使用できる。
【実施例】
【0129】
成分A: Laromer(登録商標)8987、BASF AG社製の、反応性希釈剤として30%の1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを有する脂肪族ウレタントリアクリレート
成分AB:
成分AB1: Nanocryl(登録商標)xp21/1447(ナノレジン社);Laromer(登録商標)8987(BASF AG社製の、反応性希釈剤として30%の1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを有する脂肪族ウレタントリアクリレート、および固形分40wt%の微粉化SiO(d50値=24.1nm;((d90−d10)/d50)値=0.49)
【0130】
成分C: 紫外線吸収剤、Tinuvin(登録商標)479、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社
【0131】
成分D:
成分D-1: HALS系Tinuvin(登録商標)144、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社(本発明に係る)
成分D-2: HALS系Tinuvin(登録商標)152、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社
成分D-3: HALS系Tinuvin(登録商標)123、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社
成分D-4: HALS系Sanduvor(登録商標)3058、クラリアント社
【0132】
成分E:レベリング剤BYK(登録商標)300、BYKケミ社
【0133】
成分F: ジアセトンアルコール
【0134】
成分G:
成分G-1: Irgacure(登録商標)184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社(比較例)
成分G-2: Irgacure(登録商標)500、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社
成分G-3: Irgacure(登録商標)1800、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社(比較例)
成分G-4: Lucirin(登録商標)TPO-L、BASF AG社
【0135】
実験方法(概要):
a)コーティング配合物の調製:
表2における「基本的なコーティング配合」欄に記載した量の、ナノレジンAG社製の上述の成分ABを、同表において記載した量の成分F中に溶解させた。次いで、下記に記載するようにして、固形分をSatorius社のソリッドテスターMA40を使用して実験的に測定した。
【0136】
Satorius社製のソリッドテスターMA40を用いる固形分の実験的測定:
調製したコーティング溶液の約2g量をアルミニウム皿に置き、正確な重量m(加熱相前の初期重量)を決定する。次にこのコーティング溶液を105℃まで加熱し、一定の重量となるまで105℃において保持する。一定の重量に到達した後、重量m(一定の重量における最終重量)を読み取る。重量m(加熱相前の初期重量)に対するm(一定の重量における最終重量)の比率から実験的決定固形分を得る。
【0137】
成分Fによる事前の希釈をすることなく、使用される成分ABの固形分量を同様にして測定した。
【0138】
固形分測定用に取り出された量が減少したコーティング溶液へ、攪拌させながら、以下のものを引き続いて添加し、完全に溶解させた:
【0139】
(実験的に決定した固形分を単位として)2.2wt%の成分C
【0140】
(実験的に決定したABおよびFの固形分に基づき)1または2あるいは2wt%よりも高い量の成分D(表2における「紫外線安定剤」に関する欄を参照)、最も高い溶解量を意味する2wt%よりも高い場合、成分Dの未溶解部を濾過により除去する。
【0141】
(使用される成分ABの、実験的に決定された固形分に基づき)5wt%の成分G(混合に関する種類及び組成を表2に記載する)および
【0142】
(成分ABおよびFから構成されるコーティング溶液に基づき)0.5wt%の成分E。
【0143】
b)紫外線硬化コーティング配合物を用いる基材のコーティング
光学品質のMakrolon(登録商標)AL2647(バイエル・マテリアルサイエンス AG社;中粘度ビスフェノールA−ポリカーボネート、ISO 1133による300℃および1.2kgにおけるMVR12.5cm/10分、紫外線安定化あり、容易に離型)を用いて射出成形したポリカーボネート(PC)板(寸法10×15×0.32cm)を、120℃で1時間処理し、イソプロパノールで洗浄し、蒸発させ、紫外線前処理し(Hackemackの実験用紫外線放射器KTR2061を使用;ベルト速度3m/分であり、紫外線線量(Hgランプ)は1.6J/cm、線量計eta plus UMD−1で測定。)、次いで、イオン化空気で処理した。次に、a)で得られた紫外線硬化コーティング配合物を、フローコーティング法によって施した。被覆した板を室温にて30分かけて脱気し、次いで、110℃で30分間乾燥させ、再び、室温まで冷却した。
その後、得られた板を、ベルト速度1.2m/分の条件下、Hackemack社の実験用紫外線放射器KTR2061を用いて、9.6J/cmの紫外線線量(Feランプ)(線量計eta plus UMD1で測定)で硬化させた。
【0144】
c)PC基材上の紫外線硬化保護層の接着力に関する試験
以下の接着試験をおこなった:
(a)(ISO 2409またはASTM D 3359と同様にして)格子状の切断無しおよび有りの状態での、粘着テープの剥離(粘着テープは3M スコッチ898を使用した)
(b)(ISO 2812−2およびASTM 870−02と同様にして)約65℃の温水中に10日間貯蔵した後の粘着テープ剥離
【0145】
ここに記載した全ての実施例は、試験(a)および試験(b)の後に、完全な接着性を示した(ISOパラメータ:0、またはASTMパラメータ:5B)
【0146】
d)耐摩耗性の測定およびテーバー値の決定
まず、(c)から得られる)紫外線硬化第1層で被覆されたPC板の初期位相値を、Byk-Gardner社製のHaze Gard Plusを用い、ASTM D 1003に従い定義した。次いで、試験片の被覆面を、CS10Fホイール(IV型、灰色)を用い、ISO52347またはASTM D1044に従い、Erichsen社製の5131型Taber Abraserを用いることにより、引掻いた。500gの荷重を印加して1000回転させた後、最終的なヘイズ値を決定することにより、Δヘイズ値(試験片)を決定した。
【0147】
本発明に係る意義において、第1層は十分に高い引掻き抵抗性を有するべきである。この基準は、テーバー値が2以下の場合、本発明においてもたらされる。
結果:
【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
【表5】

【0152】
【表6】

【0153】
*2%を越える添加に際し、Tinuvin(登録商標)の不十分な溶解度に起因して、正確な含有量を測定するのは困難であった。何故ならば、未溶解の部分があり、該部分を濾過によって除去したからである。
【0154】
実施例および比較例に示されるように、1000回転および500gの条件でCSF10Fホイールを用いるテーバー試験において2%未満の摩耗を得るために、ベンゾフェノンを含有する表面硬化性の、ノリッシュII型光開始剤と共に、ナノ粒子と塩基性HALS系Tinuvin(登録商標)144が必要である。特に、改良された耐摩耗性と接着性は、1%のHALS濃度でもたらすことができる。より高いHALS濃度は、より十分な硬化をもたらすものと予測された。何故ならば、等モル型での反応を可能とするために、少なくとも理論上、0.488mmolのノリッシュII型光開始剤は、0.244mmolのTinuvin144を必要とする(Tinuvin144は、2つの反応性アミン中心を含む)からである。そして、驚くべきことに、より多量のHALSは、コーティング組成物の摩耗特性について、明らかな悪影響を及ぼす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1層(S1)と第2層(S2)を含有する多層製品であって、
第1層は下記のものから得られるコーティング組成物であり、第2層は熱可塑性ポリマーである、該多層製品:
A)成分A.1およびA.2からなる群の少なくとも1つから選択される、1種または複数種の脂肪族ポリマー先駆物質:
A.1)ウレタンまたはエステル結合を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート官能基を有する脂肪族オリゴマー、または対応するオリゴマーの混合物、および、
A.2)1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する反応性脂肪族希釈剤、または対応する反応性希釈剤の混合物、
B)1種または複数種の、微粉化無機化合物
C)トリアジン誘導体およびジフェニルトリアジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の有機紫外線吸収剤、
D)成分A、BおよびFの混合物について実験的に決定された固形分を単位として、0.1〜2wt%の塩基HALS類のラジカル捕捉剤、
E)所望による、1種または複数種のレベリング剤、
F)所望による、1種または複数種の溶媒、アルカン、アルコール、エステルおよびケトンからなる群の少なくとも1つから好ましく選択される該溶媒、および
G)少なくとも1種のノリッシュII型光開始剤。
【請求項2】
成分AおよびBの混合物を単位として、下記のものが第1層で使用される請求項1に記載の多層製品:
20〜95wt%の成分A、
5〜80wt%の成分Bおよび
0.1〜10wt%の成分Gおよび
成分A、BおよびFの混合物について実験的に決定した固形分が20〜50wt%となるような量の成分F、および
成分A、BおよびFの混合物の固形分を単位として、
0.1〜20wt%の成分C、
0〜10wt%の成分D、
0〜5wt%の成分E。
【請求項3】
成分A.2に係る反応性脂肪族希釈剤が、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびそれらのメタクリレート誘導体から成る群の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の多層製品。
【請求項4】
成分Bが1〜200nmの平均粒度(d50値)を有する二酸化ケイ素である、請求項1に記載の多層製品。
【請求項5】
成分Cが下記式(IV)で表わされる化合物である、請求項1に記載の多層製品:
【化1】

(式中、
X=OR、OCHCHOR、OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COOR
=分枝もしくは非分枝C〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたは−CO−C−C18アルキル、
=Hまたは分枝もしくは非分枝C〜Cアルキル、および
=C〜C12アルキル;C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキル)。
【請求項6】
式(IV)におけるXが、O-CH(CH)COO-C17を示す、請求項5に記載の多層製品。
【請求項7】
成分Dが下記式(V)で表わされる1種以上の化合物である、請求項1から6のいずれかに記載の多層製品:
【化2】

[式中、
Y=HまたはCH
は下記式から構成され、
【化3】

(式中、
Z=二価官能基、例えば、C(O)O、NHまたはNHCOなど、
10=二価有機基、例えば、(CH)l(l=1〜12)、C=CH−Ph−OCH、あるいは下記化合物
【化4】

11=HまたはC〜C20アルキル)]。
【請求項8】
成分Dが、ビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)(3,5-ジtert.-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート、またはビス-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートと1-(メチル)-8-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケートを含有する混合物から選択される、請求項7に記載の多層製品。
【請求項9】
成分Dが下記式で表わされる化合物である、請求項8に記載の多層製品:
【化5】

【請求項10】
ノリッシュI型光開始剤を更に含有する、請求項1から9のいずれかに記載の多層製品。
【請求項11】
成分Gが、下記式(GI)で表わされるベンゾフェノン誘導体であるか、またはGIと下記式(GII)で表わされる1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン誘導体との混合物である、請求項1に記載の多層製品:
【化6】

(式中、
およびRは、相互に独立して、C〜Cアルキルを示し、および
nは相互に独立して、0,1,2または3示す)
【化7】

(式中、
およびRは、相互に独立して、C〜Cアルキルを示し、および
nは0,1,2または3示す)。
【請求項12】
第2層が、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、グラフトコポリマーおよびポリアクリレートまたはポリメチルアクリレートから成る群の少なくとも1つから選択される、請求項1に記載の多層製品。
【請求項13】
式(IV)で表わされる紫外線安定剤を含有する更なる紫外線保護層(S3)を含有する、請求項1に記載の多層製品であって、
層の順序が(S1)-(S2)-(S3)であり、層(S1)および(S3)が同一の組成を有するか異なる組成を有することを特徴とする、該多層製品:
【化8】

(式中、
X=OR、OCHCHOR、OCHCH(OH)CHORまたはOCH(R)COOR
=分枝もしくは非分枝C〜C13アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C12アリールまたは−CO−C−C18アルキル、
=Hまたは分枝もしくは非分枝C〜Cアルキル、および
=C〜C12アルキル;C〜C12アルケニルまたはC〜Cシクロアルキル)。
【請求項14】
ノリッシュI型光開始剤が、下記の群の少なくとも1つから選択される、請求項10に記載の多層製品:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)(2,4,4-トリメチルフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメチルフェニル)ベンゾイルホスホネート、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノンおよび2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン。
【請求項15】
請求項1に係る多層製品が、建築ガラス、自動車ガラス、ヘッドライトレンズ、メガネまたはヘルメットバイザーである該多層製品。
【請求項16】
下記のA)〜G)から得られるコーティング組成物:
A)成分A.1およびA.2からなる群の少なくとも1つから選択される、1種または複数種の脂肪族ポリマー先駆物質:
A.1)ウレタンまたはエステル結合を含有すると共に、1分子当り少なくとも2つのアクリレート官能基を有する脂肪族オリゴマー、または対応するオリゴマーの混合物、および、
A.2)1分子当り少なくとも2つのアクリレート基を有する反応性脂肪族希釈剤、または対応する反応性希釈剤の混合物、
B)1種または複数種の、微粉化無機化合物、
C)トリアジン誘導体およびジフェニルトリアジン誘導体からなる群から選択される少なくとも1種の有機紫外線吸収剤、
D)混合物について実験的に決定された固形分を単位として、0.1〜2wt%の塩基HALS類のラジカル捕捉剤、
E)所望による、1種または複数種のレベリング剤、
F)所望による、1種または複数種の溶媒、および
G)少なくとも1種のノリッシュII型光開始剤。

【公表番号】特表2012−526671(P2012−526671A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510137(P2012−510137)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002700
【国際公開番号】WO2010/130349
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】