説明

熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置及び成形方法

【課題】熱可塑性樹脂の発泡成形体、特にポリ乳酸を主原料とする発泡成形体の成形において、コスト的なデメリットや、生産性の低下を防止しつつ、成形性を向上し得る熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置及び成形方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子を金型11、12のキャビティ13内において加熱して発泡させ、成形体を成形する熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置10であって、金型11、12として耐圧金型を用い、金型11、12のチャンバー23、27に二酸化炭素を設定圧力で且つ設定時間だけ加圧供給する二酸化炭素供給手段35を設け、キャビティ13への予備発泡粒子の充填後、二酸化炭素供給手段35によりキャビティ13内に二酸化炭素を加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の発泡成形体、特にポリ乳酸を主原料とする発泡成形体の成形に好適な熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置及び成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石資源を原料とする発泡ポリスチレン、発泡ポリオレフィンの代替として、特許文献1には、ポリ乳酸を主たる原料とする発泡成形体が提案されている。この発泡成形体は、非石油資源である澱粉を出発原料としており、近年の石油事情、環境保全の見地から見て非常に望ましいものであると言える。当該発泡成形体は、発泡ポリスチレンと同等の機械物性、2次加工性を有しており、通常の梱包用緩衝材として十分使用できるものである。しかしながら、特許文献1の発泡成形体は、従来の発泡ポリスチレンに比べ、発泡剤含有発泡粒子の金型への充填性に問題があり、また2次発泡力が低いために、深箱や複雑な成形体への型内成形が難いという問題があった。この問題を解決するための対策として、2次発泡力を高める取り組みがなされている。つまり、充填性を上げることができなくても、2次発泡力を上げることができれば、結果的に充填性も上がり、成形性も良くなるためである。
【0003】
2次発泡力を高めて発泡粒子の型内成形性を改善させる技術として、例えば特許文献2には、ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子に無機気体を圧入して、発泡粒子に内圧を付与する方法が開示されている。内圧が付与された発泡粒子は、成形時の2次発泡力が向上し、得られる成形体の形状安定性等が改善される傾向にある。しかしながら、特許文献2では、内圧付与の処理時間が少なくとも1時間必要であり、生産性に欠けるという問題がある。また、発泡粒子に内圧を付与するために使用される容器の容積が極めて大きなものになる。また、通常の大きさの容器を使用する場合には、容器の数が増える等、経済上の不利益が生じるものである。
【0004】
上記の技術は、ポリ乳酸系発泡粒子でも実施されており、例えば、特許文献3に開示されている。該特許文献3においても、内圧付与の処理時間は1時間以上必要としており、生産性に欠ける問題がある。
【0005】
また、特許文献4では、二酸化炭素を用いて、ポリ乳酸系発泡粒子に内圧を付与する技術が記載されている。しかしながら、二酸化炭素を圧入する条件には触れておらず、成形時には5−70%圧縮しないと成形体が得られないことより、十分な内圧付与が行われていないことがわかる。
【0006】
以上のように、従来のポリ乳酸系発泡成形体の製造技術においては、型内成形性(発泡剤含有発泡粒子の2次発泡力)を向上しようとすると、内圧付与の処理時間が1時間以上必要となり、生産性が低くなるのが現状である。そこで、生産性を落とさずに成形性を向上する技術が強く望まれている。
【0007】
【特許文献1】国際公開第99/21915号パンフレット
【特許文献2】特開平7−178747号公報
【特許文献3】特開2004−217923号公報
【特許文献4】特開2003−64213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂の発泡成形体、特にポリ乳酸を主原料とする発泡成形体の成形において、コスト的なデメリットや、生産性の低下を防止しつつ、成形性を向上し得る熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置及び成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ乳酸系発泡粒子に特定の条件下で二酸化炭素を付与すると、短時間であるにも拘わらず、ポリ乳酸系発泡粒子の2次発泡力が十分に高くなり、充填性及び成形性を改善できることを見出した。また、内圧付与の処理時間を短縮できることから、金型内において内圧を付与した後、成形体を型内発泡成形した場合であっても、従来と同等の生産性を維持できるとの発想を得、またこの技術は、ポリ乳酸系樹脂以外の熱可塑性合成樹脂にも適用できることの発想を得て、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明に係る熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置は、熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子を金型のキャビティ内において加熱して発泡させ、成形体を成形する熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置であって、前記金型として耐圧金型を用い、前記金型に二酸化炭素を設定圧力で且つ設定時間だけ加圧供給する二酸化炭素供給手段を設け、前記キャビティへの予備発泡粒子の充填後、前記二酸化炭素供給手段によりキャビティ内に二酸化炭素を加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させるものである。
【0011】
この成形装置では、キャビティへの予備発泡粒子の充填後、二酸化炭素供給手段によりキャビティ内に二酸化炭素を加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入して、予備発泡粒子に内圧を付与してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させるので、予備発泡粒子に圧入した二酸化炭素により2次発泡力を高めて、成形体の成形性を向上できる。しかも、予備発泡粒子に圧入した二酸化炭素は、徐々に外部へ排出されることになるが、この成形装置では、金型内において予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入しているので、二酸化炭素を圧入して、予備発泡粒子に内圧を付与した後、ほとんど時間を空けることなく、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形することが可能となり、二酸化炭素が抜けることによる2次発泡力の低下を防止できる。また、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入時間は短時間でよいので、生産性が低下することもない。更に、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入を金型内で行うので、二酸化炭素の圧入のためのタンクやホッパを別途設ける必要がなく、しかも金型としては、耐圧金型を用いる必要はあるが、圧縮充填用の金型をそのまま転用できるので、安価に実施できる。
【0012】
ここで、前記金型内に充填した二酸化炭素を回収する回収手段を設けることが好ましい実施の形態である。この場合には、温室効果ガスである二酸化炭素の大気中への排出をできるだけ少なくできるので、地球環境に優しい型内発泡成形装置を実現できる。また、二酸化炭素の消費量を節減できるので、ランニングコストも低減できる。
【0013】
前記熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸系樹脂を用いることも好ましい実施の形態である。この場合には、ポリ乳酸系樹脂を用いた予備発泡粒子の2次発泡力を高めて、従来から改善が求められていたポリ乳酸系樹脂成形体の成形性を向上できる。
【0014】
前記予備発泡粒子として、ポリ乳酸系樹脂粒子に炭素数3〜6の炭化水素系発泡剤を含浸させたポリ乳酸系発泡性粒子を用いることもできる。この場合には、予備発泡粒子の2次発泡力を一層高めて、二酸化炭素を圧入するための処理時間を10分間以下の短時間にすることが可能となり、生産性を高めつつ成形性を向上できる。
【0015】
前記予備発泡粒子として、ゲル化処理したポリ乳酸系樹脂を主成分としたポリ乳酸系発泡粒子を用いることも好ましい実施の形態である。ゲル化処理を行うと、ポリ乳酸系発泡粒子の発泡性を向上でき、成形体の成形性を向上できるので好ましい。
【0016】
前記金型内における二酸化炭素の圧力を、0.1MPa以上、2.0MPa以下に設定することも好ましい実施の形態である。金型内における二酸化炭素の圧力が、0.1MPa未満の場合には、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の内圧を十分に高めることができず、2次発泡力が低くなり、2.0MPaを超える場合には、耐圧性を高めるため金型の製作コストが高くなるので、金型内における二酸化炭素の圧力は、0.1MPa以上、2.0MPa以下に設定することが好ましい。
【0017】
前記金型内における予備発泡粒子の加圧時間を、0.5分間以上、10分間以下に設定することも好ましい実施の形態である。二酸化炭素による予備発泡粒子の加圧時間が、0.5分間未満の場合には、予備発泡粒子に対して十分な二酸化炭素を加圧注入することができず、二次発泡力が低くなり、10分間を超える場合には、生産性が低下するので、加圧時間は、0.5分間以上、10分間以下に設定することが好ましい。
【0018】
本発明に係る熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法は、耐圧金型のキャビティ内に、熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子を充填し、その後、金型内に二酸化炭素を設定圧力で且つ設定時間だけ加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形するものである。
【0019】
この成形方法では、キャビティへの予備発泡粒子の充填後、キャビティ内に酸化炭素を加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入し、予備発泡粒子に内圧を付与してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させるので、予備発泡粒子に圧入した二酸化炭素により2次発泡力を高めて、成形体の成形性を向上できる。しかも、予備発泡粒子に圧入した二酸化炭素は、徐々に外部へ排出されることになるが、この成形方法では、金型内において予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入しているので、二酸化炭素を圧入して、予備発泡粒子に内圧を付与した後、ほとんど時間を空けることなく、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形することが可能となり、二酸化炭素が抜けることによる2次発泡力の低下を防止できる。また、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入時間は短時間でよいので、生産性が低下することもない。更に、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入を金型内で行うので、二酸化炭素の圧入のためのタンクやホッパを別途設ける必要がなく、しかも金型としては、耐圧金型を用いる必要はあるが、圧縮充填用の金型をそのまま転用できるので、安価に実施できる。
【0020】
ここで、この成形方法において、前記予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、金型内の二酸化炭素を回収し、その後、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形すること、前記熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸系樹脂を用いること、前記予備発泡粒子として、ポリ乳酸系樹脂粒子に炭素数3〜6の炭化水素系発泡剤を含浸させたポリ乳酸系発泡性粒子を用いること、前記予備発泡粒子として、ゲル化処理したポリ乳酸系樹脂を主成分としたポリ乳酸系発泡粒子を用いること、前記金型内における二酸化炭素の圧力を、0.1MPa以上、2.0MPa以下に設定すること、前記金型内における予備発泡粒子の加圧時間を、0.5分間以上、10分間以下に設定すること、などが好ましい実施の形態である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置及び成形方法によれば、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してその2次発泡力を高めているので、成形体の成形性を向上できる。しかも、金型内において予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入しているので、二酸化炭素の圧入後、ほとんど時間を空けることなく、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形することが可能となり、二酸化炭素が抜けることによる2次発泡力の低下を防止できる。また、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入時間は短時間でよいので、生産性が低下することもない。更に、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入を金型内で行うので、二酸化炭素の圧入のためのタンクやホッパを別途設ける必要がなく、しかも金型としては、耐圧金型を用いる必要はあるが、圧縮充填用の金型をそのまま転用できるので、安価に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<予備発泡粒子>
先ず、型内発泡成形装置で用いる予備発泡粒子について説明する。
予備発泡粒子の素材としては、ポリ乳酸系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等を採用できる。また、脂肪族ポリエステル成分単位を少なくとも35モル%以上含む生分解性脂肪族ポリエステル系樹脂を採用することも可能で、この場合の脂肪族ポリエステル系樹脂としては、ヒドロキシ酸重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトンの開環重合物、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)等の脂肪族多価アルコールと脂肪族カルボン酸との重縮合物が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種用いることができる。
【0023】
特に、ポリ乳酸系樹脂を用いた発泡成形体は、非石油資源である澱粉を出発原料としていることから、近年の石油事情、環境保全の見地から非常に望ましいものであるが、2次発泡力が低いために、深箱や複雑な成形体への型内成形が難いという問題がある。本発明では、予備発泡粒子の2次発泡力を高めることで、予備発泡粒子の2次発泡力を高めて成形性を改善できるので、ポリ乳酸系樹脂を用いた発泡成形体の成形に好適である。
【0024】
ポリ乳酸系樹脂を用いる場合には、炭化水素系発泡剤を含有したポリ乳酸系発泡粒子に、特定の条件で二酸化炭素を付与した後、型内成形することになる。本発明におけるポリ乳酸系発泡粒子とは、基材樹脂がポリ乳酸系樹脂である。該ポリ乳酸系樹脂は、特に限定はないが、結晶性の高い樹脂は発泡、成形が結晶化により困難になる傾向があるため、乳酸成分の異性体比率が5%以上、好ましくは8%以上であるポリ乳酸を主成分としたものである。本発明の効果を阻害しない範囲においては、ポリ乳酸系樹脂に他の樹脂を添加して基材樹脂とする事ができる。該基材樹脂中にはポリ乳酸系樹脂が50重量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上である。
【0025】
尚、前記ポリ乳酸系樹脂は、一部モノマーが乳酸と交換可能な脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族多価カルボン酸、脂肪族多価アルコール等で置き換わってもよく、エポキシ化大豆油やエポキシ化亜麻仁で一部架橋されていてもよい。
【0026】
前記脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、少なくとも1種含有される。また、前記脂肪族多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水コハク酸、無水アジピン酸、トリメシン酸、プロパントリカルボン酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、少なくとも1種含有される。また、前記脂肪族多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種含有される。
【0027】
前記ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度は、JIS K 7210(荷重2.16kg)に準拠したメルトインデックス(MI)値で0.1〜10g/10分の高分子量のポリ乳酸系樹脂であることが好ましい。MI値がこの範囲にあれば、生産性に優れ、発泡倍率の高い発泡成形体を得やすい傾向にあり、本発明の目的・効果を発現しやすい。
【0028】
本発明においては、ポリ乳酸系発泡粒子の基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂をゲル化処理することが、発泡性、成形性の観点から好ましい。ゲル化処理によりポリ乳酸系樹脂を発泡に適する粘度領域まで増粘させることができる。このためのゲル化処理には、従来公知の各種の方法、例えば、ポリイソシアネート化合物、過酸化物、酸無水物、エポキシ化合物等、一般的な架橋剤を少なくとも1種選択して用いる方法、電子線架橋方法、シラン架橋方法等が包含されるが、架橋剤を用いる方法が好ましい。
【0029】
前記ポリイソシアネート化合物としては、芳香族、脂環族、脂肪族系のポリイソシアネート化合物が使用可能であり、芳香族ポリイソシアネートとしては、トリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロン、水酸化ジフェニルメタンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられ、脂肪族ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレン、リジンを骨格とするポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0030】
前記過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメン等の有機化酸化物が挙げられる。
【0031】
前記酸無水物としては、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、エチレン−無水マレイン酸共重合体、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
【0032】
前記エポキシ化合物としては、グリシジルメタクリレート−メチルメタクリレート共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン共重合体、グリシジルメタクリレート−スチレン−ブチルアクリレート共重合体、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヤシ脂肪酸グリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等の各種グリシジルエーテル及び各種グリシジルエステル等が挙げられる。
【0033】
これら架橋剤のうち、ポリイソシアネート化合物を用いることが好ましい。その理由は、ポリイソシアネート化合物を用いれば、混練時の架橋増粘によるトルクアップが少なく、混練後に水分の存在下で加熱することで尿素結合、ウレタン結合、アロファネート結合などによる後増粘が可能だからである。ポリイソシアネート化合物の中でも、汎用性、取り扱い性、耐候性等の観点からトリレン、ジフェニルメタン骨格とするポリイソシアネート化合物、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートを使用することが好ましい。
【0034】
架橋剤の添加量は、任意に選定することが可能であるが、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.1重量部〜6.0重量部であることが好ましく、より好ましくは0.2重量部〜5.0重量部、更に好ましくは0.5重量部〜4.0重量部である。添加量が0.1重量部〜6.0重量部の場合、ポリ乳酸系樹脂の溶融粘度を発泡に適した領域まで上昇させることができる。
【0035】
本発明の発泡剤としては、特に限定はなく従来公知のものが使用でき、プロパン、イソブタン、ノルマルブタン、イソヘキサン、ノルマルヘキサン、シクロブタン、シクロヘキサン、イソペンタン、ノルマルペンタン、シクロペンタン等の炭化水素系発泡剤や、塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロジフルオロメタン等のハロゲン化炭化水素系発泡剤、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル等のエーテル系発泡剤、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の無機系発泡剤が挙げられ、それらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。それらの内、ポリ乳酸系樹脂に対するガス散逸が少なく、発泡性粒子輸送が可能であり、所望の発泡性が得られる点から、炭素数3−6の炭化水素系発泡剤が好ましい。
【0036】
前記ポリ乳酸系樹脂中には、例えば、黒、灰色、茶色、青色、緑色等の着色顔料又は染料を添加してもよい。着色した基材樹脂を用いれば着色された発泡粒子及び発泡成形体を得ることができる。着色剤としては、有機系、無機系の顔料、染料などが挙げられる。このような顔料及び染料としては、従来公知の各種のものを用いることができる。また、気泡調整剤として、例えばタルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ほう酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の無機物を予め添加することができる。基材樹脂であるポリ乳酸系樹脂に着色顔料、染料又は無機物等の添加剤を添加する場合は、添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、通常は分散性等を考慮して添加剤のマスターバッチを作り、それと基材樹脂とを混練することが好ましい。着色顔料又は染料の添加量は着色の色によっても異なるが、通常、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して0.001重量部〜5重量部が好ましく、0.02重量部〜3重量部とすることがより好ましい。前記ポリ乳酸系樹脂中には、本発明の効果を損なわない程度であれば、その他、難燃剤、帯電防止剤、耐候剤などの添加剤を添加しても良い。
【0037】
ポリ乳酸系樹脂の予備発泡粒子を製造するには、まずポリ乳酸系樹脂からポリ乳酸系発泡性粒子を製造し、次いで該発泡性粒子を予備発泡させるという、従来公知の方法が採用できる(例えば、国際公開第99/021915号パンフレット参照。)。
【0038】
具体的には、ポリ乳酸系樹脂粒子は、ポリ乳酸系樹脂と架橋剤、必要に応じてその他添加剤を押出機で溶融混練した後、水中カッターやストランドカッター等で押出カットすることで得ることができる。ポリ乳酸系樹脂粒子の1個当りの重量は、0.05〜10mgが好ましく、より好ましくは0.1〜4mgである。粒子重量が前記範囲であれば、樹脂粒子の生産性が良好であり、型内成形時の充填性が良好になる傾向である。
【0039】
次に前記ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、ポリ乳酸系発泡性粒子を得る。ポリ乳酸系樹脂粒子に発泡剤を含浸する方法としては、所望の発泡性が得られる発泡剤の存在下で、十分な圧力がかかる条件さえそろっていれば特に限定されるものではない。例えば、密閉容器内に水性媒体または非水性媒体を入れて、これに樹脂粒子と発泡剤を添加して、適度な温度、時間で攪拌することにより樹脂粒子に発泡剤を含浸させることが可能である。水性媒体で含浸を行う場合には、加水分解反応を受けやすいポリエステル系樹脂組成物であることを考慮し、加水分解を抑制する工夫や短時間で含浸を終了させることが好ましい。
【0040】
発泡剤の含浸量としては、発泡剤の種類や所望の発泡倍率により調整すれば良いが、例えば、発泡倍率30倍以上の発泡粒子を得るためには、発泡性粒子を構成する基材樹脂100重量部に対して、4重量部以上が好ましい。
【0041】
なお、発泡剤の含浸では、安定した含浸性、発泡性を得るために含浸助剤、分散剤などを使用しても良い。含浸助剤としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類に代表されるプロトン系溶剤,アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類,酢酸エチル、酢酸ブチル、ノルマルプロピルアセテートなどのエステル類,トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、などに代表される非プロトン系溶剤、などが挙げられるが、水性媒体で含浸する場合はポリ乳酸系樹脂の加水分解を助長しない、非プロトン系溶剤を用いることが好ましい。
【0042】
前記分散剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
また、水性媒体で含浸する場合は、樹脂中への水の浸透を抑制する目的で、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウムなどの1価の金属塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの2価の金属塩、硫酸アルミニウムなどの3価の金属塩、などの水溶性塩類などを添加することが好ましい。前記樹脂中への水の浸透を抑制する目的で添加する水溶性塩類などの添加量は、水100重量部に対して5重量部以上、さらに好ましくは7.5重量部以上が好ましい。
【0044】
上記において、ポリ乳酸系発泡性粒子を得る際に、押出機を用いることができ、その場合、ポリ乳酸系樹脂と架橋剤、必要に応じてその他添加剤を押出機へ投入し、その後発泡剤を加え溶融混練した後、混練物を押出し、押出された混練物をカットして発泡性粒子を得ることができる。
【0045】
次に、前記のようにして得られるポリ乳酸系発泡性粒子を予備発泡させてポリ乳酸系樹脂の予備発泡粒子を得る。具体的には、発泡ポリスチレン用の予備発泡機を用いて、ポリ乳酸系発泡性粒子を蒸気や熱風、高周波等によって予備発泡する方法(A)が挙げられ、最も簡便である。また、他の方法として、樹脂粒子を密閉容器内において発泡剤の存在下で分散媒に分散させるとともに、その内容物を加熱して樹脂粒子を軟化させてその粒子内に発泡剤を含浸させ、次いで容器の一端を開放し、容器内圧力を発泡剤の蒸気圧以上の圧力に保持しながら粒子と分散媒とを同時に容器内よりも低圧の雰囲気(通常は大気圧下)に放出して発泡させる発泡方法(B)、基材樹脂と架橋剤、その他添加剤を押出機で溶融させると共に、発泡剤と混練して発泡性溶融混練物とし、次いでストランド状に押出して発泡させると共に、冷却後適当な長さに切断するか又はストランドを適当な長さに切断後冷却することによって発泡粒子を製造する方法(C)が挙げられるが、発泡性粒子輸送が可能であるという点から方法(A)が好ましい。
【0046】
<型内発泡成形装置>
次に、前記予備発泡粒子を用いて発泡成形体を成形する型内発泡成形装置について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、型内発泡成形装置10は、対面配置したコア側金型11及びキャビティ側金型12と、コア側金型11とキャビティ側金型12とで形成されるキャビティ13内に無機ガスの流れに乗せて予備発泡粒子を充填するための充填器14と、予備発泡粒子の貯留タンク15とを備えている。
【0047】
コア側金型11及びキャビティ側金型12は、少なくとも予備発泡粒子に付与する二酸化炭素の圧力に耐え得る耐圧構造に構成されている。コア側金型11及びキャビティ側金型12としては、従来の発泡ポリスチレンや発泡ポリオレフィン等の金型を用いることができるが、耐圧性が要求されることから、圧縮充填方式の成形機用の金型を好適に採用できる。
【0048】
コア側金型11は、枠状フレーム20と、枠状フレーム20に固定されたバックプレート21及びコア型22を備え、コア側金型11内にはチャンバー23が形成されている。キャビティ側金型12は、枠状フレーム24と、枠状フレーム24に固定されたバックプレート25及びキャビティ型26を備え、キャビティ側金型12内にはチャンバー27が形成されている。コア型22とキャビティ型26間には、両金型11、12を型閉めした状態で、成形体を成形するためのキャビティ13が形成され、コア型22及びキャビティ型26にはチャンバー23、27とキャビティ13とを連通する多数の通気孔28が形成されている。通気孔28は、コア型22とキャビティ型26に直接的に0.5mmφ程度のコアベントホールを穿設したり、0.5mmφ程度の丸孔や幅0.5mm程度のスリットを複数個透設した外径7〜12mmの蓋を有する筒体からなるコアベントを、コア型22とキャビティ型26に穿設したコアベント取付孔に嵌め込んで形成したものである。
【0049】
両チャンバー23、27には制御弁V1、V2を介設した供給管30が接続されるとともに、制御弁V3、V4を介設したと排出管31が接続され、発泡成形体の成形のために必要な蒸気や圧縮空気などの流体は供給管30を通じて金型11、12内に供給され、排出管31を通じて排出されるように構成されている。また、両チャンバー23、27内には、図示していないが、コア型22とキャビティ型26に対して冷却水を噴霧して、成形体を冷却するための冷却水供給管が設けられている。尚、符号V5、V6は蒸気の供給及び圧縮空気の供給を制御する制御弁であり、符号V7、V8は、排気及びドレンの排出を制御する制御弁である。また、符号32は、貯留タンク15を開閉するためのシャッターで、符号33は、成形体を離型するためのエジェクタピンである。
【0050】
本発明に係る熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置10は、前記構成に加えて、供給管30を通じてキャビティ13内に二酸化炭素を加圧供給する二酸化炭素供給手段35と、キャビティ13内に加圧供給した二酸化炭素を、排出管31を通じて回収する回収手段36とを備え、キャビティ13への予備発泡粒子の充填後、二酸化炭素供給手段35によりキャビティ13内に二酸化炭素を加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させるものである。
【0051】
二酸化炭素供給手段35は、二酸化炭素を封入したボンベで構成され、二酸化炭素供給手段35から供給管30に連なる配管の途中部には制御弁V9が介設され、この制御弁V9を開放することで、チャンバー23、27内に設定圧力の二酸化炭素が供給されるように構成されている。
【0052】
回収手段36は、金型11、12内に加圧供給された二酸化炭素を回収するもので、有機塩基溶液に二酸化炭素を吸収させたり、高分子膜を用いて二酸化炭素を分離したり、無機多孔体に二酸化炭素を吸着させることで、回収するように構成したもので、回収手段36から排出管31に連なる配管の途中部には制御弁V10が介設され、この制御弁V10を開放することで、チャンバー23、27内の二酸化炭素が回収手段36に供給されるように構成されている。尚、チャンバー23、27内の二酸化炭素を回収する際には、制御弁V10の開放後、供給管30から圧縮空気を供給して、チャンバー23、27内の二酸化炭素を掃気することが好ましい。回収した二酸化炭素は、そのまま二酸化炭素供給手段35に供給することもできるし、一旦貯留した後、ボンベに詰めなおして再利用することもできる。尚、チャンバー23、27内の二酸化炭素は、大気開放することも可能であるが、二酸化炭素の消費量を少なくしてランニングコストを低減するとともに、二酸化炭素による地球温暖化を極力防止するため、回収手段36により回収することが好ましい。
【0053】
<型内発泡成形方法>
次に、前記型内発泡成形装置10により発泡成形体を成形する成形方法について説明する。尚、本実施の形態では、予備発泡粒子としてポリ乳酸系樹脂の予備発泡粒子を用いた場合について説明するが、前述した他の熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子を用いた場合でも、同様に成形することができる。
【0054】
発泡成形体の成形は、ポリ乳酸系樹脂の予備発泡粒子をキャビティ13内へ充填する充填工程と、チャンバー23、27内に二酸化炭素を加圧供給して、キャビティ13内に充填した予備発泡粒子に対して二酸化炭素を圧入する二酸化炭素圧入工程と、二酸化炭素を圧入した予備発泡粒子を蒸気で加熱して発泡融着させる加熱工程と、コア型22及びキャビティ型26の背面側へ向けて冷却水を噴霧して、発泡融着させた成形体を冷却する冷却工程と、成形体をエジェクタピン33で離型する離型工程などを備えている。尚、冷却工程及び離型工程は、周知の方法で行われるので、その詳細な説明を省略する。
【0055】
充填工程では、貯留タンク15のシャッター32を開放して、無機ガスの流れに乗せて予備発泡粒子を貯留タンク15から充填器14へ供給し、充填器14から無機ガスの流れに乗せてキャビティ13内に充填する。充填方法としては、加圧充填、圧縮充填、クラッキング充填など周知の充填方法を採用することができる。
【0056】
二酸化炭素圧入工程では、二酸化炭素供給手段35により、チャンバー23、27内に二酸化炭素を設定圧力で設定時間だけ加圧供給することになる。具体的には、チャンバー23、27内における二酸化炭素の圧力は、0.1≦圧力(MPa)≦2.0が好ましく、より好ましくは0.2≦圧力(MPa)≦1.0、さらに好ましくは0.3≦圧力(MPa)≦1.0に設定することになる。また、二酸化炭素による加圧処理時間は、処理する温度又は二酸化炭素が保有する湿度等によっても異なるが、0.5≦処理時間(min)≦10が好ましく、より好ましくは1≦処理時間(min)≦10、さらに好ましくは3≦処理時間(min)≦10、特に好ましくは3≦処理時間(min)≦5に設定することになる。この範囲であれば、生産性を低下させることなく、発泡粒子の2次発泡力を大きく向上させることができる。尚、二酸化炭素の充填時には、チャンバー23、27内及びキャビティ13内に残留する空気を二酸化炭素で掃気した後、二酸化炭素の圧力を設定圧まで高めることが好ましい。
【0057】
こうして、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入した後、回収手段36により金型11、12内の二酸化炭素を回収する。このとき、金型11、12内の内圧が大気圧になった時点あるいはその前に、チャンバー23、27内に圧縮空気を供給して、チャンバー23、27内に残存する二酸化炭素を回収することが好ましい。
【0058】
次に、加熱工程で、上記の二酸化炭素が付与された二酸化炭素含有ポリ乳酸系発泡粒子に蒸気を通して、発泡粒子間の空気を蒸気に置き換えるとともに、蒸気で加熱して、相互に発泡融着させて成形体を得ることになる。
【0059】
この型内発泡成形方法では、二酸化炭素を圧入した予備発泡粒子を用いて成形を行うので、生産性を低下させることなく、ポリ乳酸系樹脂からなる予備発泡粒子の二次発泡力を高めて、成形品の成形性を向上できる。つまり、これまで、発泡粒子の型内成形性を改善するために、発泡粒子に空気などで内圧を付与する方法は公知化されている。しかしながら、従来技術では基材樹脂の種類に関わらず、60分以上の長時間加圧しないと内圧が付与されず、生産性に乏しい問題があった(特開平7−178747号公報)。そこで本発明では、上記で得られたポリ乳酸系発泡粒子に対して、二酸化炭素で加圧することで、短時間で二酸化炭素付与を完了し、発泡粒子の2次発泡力を大きく向上している。これは、ポリ乳酸系樹脂と二酸化炭素の親和性が高く、短時間で樹脂中に浸透するからと推定している。また、従来技術では、内圧付与時に発泡粒子のセル膜を損傷すること多いが、本発明においては、セル膜損傷が少ない傾向にある。しかも、金型11、12内において予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入しているので、二酸化炭素の圧入後、ほとんど時間を空けることなく、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形することが可能となり、二酸化炭素が抜けることによる2次発泡力の低下を防止できる。また、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入時間は短時間でよいので、生産性が低下することもない。更に、予備発泡粒子に対する二酸化炭素の圧入を金型11、12内で行うので、二酸化炭素の圧入のためのタンクやホッパを別途設ける必要がなく、しかも金型11、12としては、耐圧金型を用いる必要はあるが、圧縮充填用の金型をそのまま転用できるので、安価に実施できる。
【0060】
以上のようにして得られたポリ乳酸系発泡成形体は、従来の生産性を維持しつつ型内成形時の成形性を改善でき、深箱や複雑な成形体を作製することができる。また、機械物性に優れ、発泡性粒子輸送が可能であるという利点をも有したものである。
【0061】
本発明のポリ乳酸系発泡成形体は種々の用途に使用することができる。例えば、精密機器、電化製品、電子機器、電子部品などの緩衝材、食品類、酒類、薬品類などの包装材、展示パネル、マネキン、デコレーション等の美粧材、食品、機械部品、電子部品などの通い箱、断熱材、建築材、玩具、アイスクリーム、冷凍食品等の保温材などに使用することができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。尚、本実施例は、金型外において二酸化炭素を圧入した予備発泡粒子を成形装置に充填して成形を行った場合のものである。また、評価は下記の方法で行った。なお、実施例において「部」及び「%」は重量基準である。
【0063】
<評価方法>
(1)発泡性粒子の発泡剤含浸率:
含浸率は含浸前後の樹脂粒子重量から以下の式で求められる。
含浸率(%)=100×(含浸後重量−含浸前重量)/含浸前重量
【0064】
(2)発泡粒子の発泡倍率の測定方法:
内容積2000cm3のポリエチレン製カップに発泡粒子を擦切り一杯量り取り、重量を測定し、カップ重量を差引いて発泡粒子の重量を求める。発泡粒子の重量と見かけ体積(2000cm3)から下記の式により求められる。
発泡倍率=見かけ体積(2000cm3)/発泡粒子の重量
【0065】
(3)発泡粒子の内圧:
内圧付与処理終了後の発泡粒子の重量を測定した後、該粒子から内圧付与処理によって、拡散浸透した空気を追い出し、粒子の重量を測定し、変化量から理想気体の状態方程式に基づいて求めた。
【0066】
(4)発泡粒子の2次発泡力:
発泡粒子30cm3(見かけ体積)を100℃の蒸し器に10秒間投入し、発泡(2次発泡)させる。2次発泡させた発泡粒子の見かけ体積を測定し、下記の式により発泡粒子の2次発泡力とした。
2次発泡力=2次発泡後の見かけ体積/見かけ体積(30cm3
【0067】
(実施例1)
まず、D体比率10%、MI値3.7g/10分のポリ乳酸100重量部とポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン(株)製、商品名:MR−200)3.0重量部を、二軸押出機(東芝機械製、TEM35B)を用いて、シリンダー温度185℃で溶融混練し、水中カッターを用いて約1mmφ(約1.5mg)のビーズ状のポリ乳酸系樹脂粒子を得た。
【0068】
得られたポリ乳酸系樹脂粒子100重量部に対して、水100重量部、発泡剤として脱臭ブタン(ノルマルブタン/イソブタン重量比=7/3)12重量部、含浸助剤として食塩10重量部、分散剤としてポリオキシエチレンオレイルエーテル0.3重量部を耐圧容器に仕込み、90℃で90分間保持した。十分に冷却後取出し、乾燥して、ポリ乳酸系発泡性粒子を得た。該ポリ乳酸系発泡性粒子の含浸率は5.7%であった。
【0069】
得られたポリ乳酸系発泡性粒子を予備発泡機(ダイセン工業製、BHP−300)に約1.5kg投入し、90℃の蒸気下に40〜60秒間保持した。得られた発泡粒子を風乾した後、篩を使用し融着粒子を分別した。該ポリ乳酸系発泡粒子の発泡倍率は35倍であった。
【0070】
得られたポリ乳酸系発泡粒子を密閉容器内に充填し、表1に従って、二酸化炭素を封入して密閉容器内圧力を0.3MPaで1分間保持することで内圧付与を行った。その後、容器内の圧力を開放し、二酸化炭素含有ポリ乳酸系発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した。評価結果は表1の通りであった。
発泡成形機(ダイセン工業製、KR−57)に300×450×20mmの金型を設置し、上記で得られた発泡粒子を圧縮率0%で充填し、スチーム圧0.1MPaで10〜20秒処理し型内成形を実施し、発泡成形体を得た。
【0071】
【表1】

【0072】
(実施例2)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaで保持する時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1の通りであった。
【0073】
(実施例3)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaで保持する時間を5分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1,2の通りであった。
【0074】
(実施例4)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaで保持する時間を10分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1の通りであった。
【0075】
(比較例1)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、密閉容器に気体を封入しなかった以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1の通りであった。
【0076】
(比較例2)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、密閉容器に封入する気体をエアーとし、エアー封入後の密閉容器内圧力を0.3MPaで保持する時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1〜4の通りであった。
【0077】
(比較例3)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、密閉容器に封入する気体をエアーとし、エアー封入後の密閉容器内圧力を0.3MPaで保持する時間を60分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1〜4の通りであった。
【0078】
(比較例4)
ポリ乳酸系発泡性粒子を作製する際に、発泡剤として二酸化炭素を使用し、またポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.3MPaで保持する時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表1の通りであった。
【0079】
実施例1〜4、及び比較例1〜4より、2.0を越える2次発泡力を得ようとすると、内圧付与がエアーによる場合、同じ発泡剤であっても付与時間を60分間以上の長い時間が必要であるが、本発明に従えば1分間でも同等の2次発泡力が得られた。しかも、内圧付与圧力が0.3MPaであれば、それを1分間以上維持すれば従来技術同等以上の2次発泡力が得られた。一方、発泡剤として二酸化炭素を用いた比較例4では、得られた発泡粒子に二酸化炭素で内圧付与を行っても、内圧付与は十分でなく、2次発泡力は低いものであった。
【0080】
(実施例5)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.1MPaに変え、さらにその保持時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表2の通りであった。
【0081】
【表2】

【0082】
(実施例6)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.5MPaに変え、さらにその保持時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表2の通りであった。
【0083】
(実施例7)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、ポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を1.0MPaに変え、さらにその保持時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表2の通りであった。
【0084】
(比較例5)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、密閉容器に封入する気体をエアーとし、エアー封入後の密閉容器内圧力を1.0MPaに変え、さらにその保持時間を3分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表2の通りであった。
【0085】
実施例2、5〜7及び比較例2、3、5より、内圧付与が二酸化炭素による場合、3分間という短い時間でも0.1MPa以上の圧力を維持すれば、エアー付与以上の効果が得られた。また、二酸化炭素付与では内圧付与圧力は、高いほど2次発泡力が上がった。
【0086】
(実施例8)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、熟成後のポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.1MPaに変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表3の通りであった。
【0087】
(実施例9)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、熟成後のポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.5MPaに変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表3の通りであった。
【0088】
(実施例10)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、熟成後のポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を1.0MPaに変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表3の通りであった。
【0089】
【表3】

【0090】
実施例1、8〜10及び比較例2、3より、内圧付与が二酸化炭素による場合、1分間という短い時間でも0.3MPa以上の圧力を維持すれば、エアー付与(従来技術)以上の効果が得られた。
【0091】
(実施例11)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、熟成後のポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.5MPaに変え、さらにその保持時間を5分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表4の通りであった。
【0092】
【表4】

【0093】
(実施例12)
ポリ乳酸系発泡粒子を作製する際に、熟成後のポリ乳酸系発泡粒子を充填し、二酸化炭素を封入した後の密閉容器内圧力を0.5MPaに変え、さらにその保持時間を10分間に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。その際、発泡成形体中の発泡粒子の内圧と2次発泡力を評価した結果は表4の通りであった。
【0094】
実施例6、9、11、12及び比較例2、3より、内圧付与圧力が0.5MPaであれば、それを1分間以上維持すれば従来技術を越える2次発泡力が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】型内発泡成形装置の概略構成図
【符号の説明】
【0096】
10 型内発泡成形装置 11 コア側金型
12 キャビティ側金型 13 キャビティ
14 充填器 15 貯留タンク
20 枠状フレーム 21 バックプレート
22 コア型 23 チャンバー
24 枠状フレーム 25 バックプレート
26 キャビティ型 27 チャンバー
28 通気孔
30 供給管 31 排出管
32 シャッター 33 エジェクタピン
35 二酸化炭素供給手段 36 回収手段
V1〜V10 制御弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子を金型のキャビティ内において加熱して発泡させ、成形体を成形する熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置であって、
前記金型として耐圧金型を用い、
前記金型に二酸化炭素を設定圧力で且つ設定時間だけ加圧供給する二酸化炭素供給手段を設け、
前記キャビティへの予備発泡粒子の充填後、前記二酸化炭素供給手段によりキャビティ内に二酸化炭素を加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、予備発泡粒子を加熱して発泡させる、
ことを特徴とする熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項2】
前記金型内に充填した二酸化炭素を回収する回収手段を設けた請求項1記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸系樹脂を用いた請求項1又は2記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項4】
前記予備発泡粒子として、ポリ乳酸系樹脂粒子に炭素数3〜6の炭化水素系発泡剤を含浸させたポリ乳酸系発泡性粒子を用いた請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項5】
前記予備発泡粒子として、ゲル化処理したポリ乳酸系樹脂を主成分としたポリ乳酸系発泡粒子を用いた請求項1〜4のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項6】
前記金型内における二酸化炭素の圧力を、0.1MPa以上、2.0MPa以下に設定した請求項3〜5のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項7】
前記金型内における予備発泡粒子の加圧時間を、0.5分間以上、10分間以下に設定した請求項3〜6のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形装置。
【請求項8】
耐圧金型のキャビティ内に、熱可塑性樹脂からなる予備発泡粒子を充填し、その後、金型内に二酸化炭素を設定圧力で且つ設定時間だけ加圧供給して、予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してしてから、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形することを特徴とする熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。
【請求項9】
前記予備発泡粒子に二酸化炭素を圧入してから、金型内の二酸化炭素を回収し、その後、予備発泡粒子を加熱して発泡させ、成形体を成形する請求項8記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂として、ポリ乳酸系樹脂を用いた請求項8又は9記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。
【請求項11】
前記予備発泡粒子として、ポリ乳酸系樹脂粒子に炭素数3〜6の炭化水素系発泡剤を含浸させたポリ乳酸系発泡性粒子を用いた請求項8〜10のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。
【請求項12】
前記予備発泡粒子として、ゲル化処理したポリ乳酸系樹脂を主成分としたポリ乳酸系発泡粒子を用いた請求項8〜11のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。
【請求項13】
前記金型内における二酸化炭素の圧力を、0.1MPa以上、2.0MPa以下に設定した請求項8〜12のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。
【請求項14】
前記金型内における予備発泡粒子の加圧時間を、0.5分間以上、10分間以下に設定した請求項8〜13のいずれか1項記載の熱可塑性樹脂の型内発泡成形方法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−61753(P2009−61753A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233806(P2007−233806)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】