説明

熱可塑性樹脂フィルムおよびその製造方法

【課題】 高度な耐熱性、無色透明性、光学等方性を有する熱可塑性樹脂フィルムを提供すること。
【解決手段】 溶融製膜法により得られる熱可塑性樹脂フィルムであって、(i)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、および(ii)特定のグルタル酸無水物単位を有する共重合体を含み、厚みが5〜250μmであり、ヘイズ値が1.0%以下である熱可塑性樹脂フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れる熱可塑性樹脂フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂やポリメタクリル酸メチル樹脂に代表される非晶性透明樹脂は電気・電子分野をはじめ広く利用されている。特にポリカーボネート樹脂はコンパクトディスク等の記録メディア用基材として利用されているが、光弾性係数が大きく、複屈折が大きいという課題を有している。一方、ポリメタクリル酸メチル樹脂は、複屈折が小さく、光学特性に優れるものの、耐熱性が十分ではなく、レーザー追記型光学ディスクのような耐熱性が必要とされる用途に使用するには問題がある。
【0003】
ポリメタクリル酸メチル樹脂など、アクリル系熱可塑性樹脂の耐熱性改善については、酸無水物やマレイミド化合物との共重合や、グルタルイミド構造の導入など、ポリマー骨格および組成の改良で耐熱性の向上を図る方法(例えば、特許文献1)が開示されている。
しかし近年、光学部品に用いられるアクリル系熱可塑性樹脂フィルムには、その要求が高度化、多様化し、上記耐熱性等に加えて、極めて高い透明性や無欠点性が求められるようになってきた。
【0004】
特許文献2には、アクリル系熱可塑性樹脂フィルムの耐熱性改善に加え、透明性向上の記載があるが、該特許文献2はポリマー分を溶媒に溶かして製膜する、いわゆる溶液製膜法を用いているため、溶媒除去のための工程、費用を要し、品質・物性面で、溶媒除去時の突沸欠点、残存溶媒による物性低下が生じるといった問題があった。
【0005】
また、アクリル系熱可塑性樹脂フィルムの透明性や無欠点性を高めるためには、ポリマー濾過によりアクリル系熱可塑性樹脂に含まれる異物を除去することが有効であるが、従来の溶融製膜によるアクリル系熱可塑性樹脂フィルムでは、溶融粘度が高く濾過精度に限界があるため、透明性や無欠点性が不十分であり、さらに溶融粘度を下げるため溶融温度を高くするとポリマーが着色して無色透明性が悪化するという問題があった。
【非特許文献1】「プラスチックフィルム・シートの現状と将来展望」、株式会社富士キメラ総研(発行人:表良吉)、2004年6月4日、p165−p168
【非特許文献2】「光学用透明樹脂」、株式会社技術情報協会(発行人:高薄一弘)、2001年12月17日、p59
【特許文献1】特開平7−268036号公報
【特許文献2】特開平18−206881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記した従来の問題を解決し、ポリメタクリル酸メチルに匹敵する優れた光学特性を有し、優れた耐熱性、透明性、光学等方性を有する熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は以下の特徴を有する。すなわち、本発明は、
(1)溶融製膜法により得られる熱可塑性樹脂フィルムであって、(i)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、および(ii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を有する共重合体を含み、厚みが5〜250μmであり、ヘイズ値が1.0%以下である熱可塑性樹脂フィルム、
【0008】
【化1】

【0009】
(上記式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
(2)前記共重合体がさらに(iii)不飽和カルボン酸単位を有している、上記(1)記載の熱可塑性樹脂フィルム、
(3)フィルムのガラス転移温度が120℃以上である、上記(1)または(2)記載の熱可塑性樹脂フィルム、
(4)フィルムのb値が0.5以下である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム、
(5)波長400〜700nmの光線に対するフィルムの位相差が5nm以下である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム、
(6)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(i)を30〜95重量%、グルタル酸無水物単位(ii)を5〜60重量%、不飽和カルボン酸単位(iii)を0〜5重量%含有する(ただし、各単位(i)(ii)(iii)の合計は100重量%)、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム、
(7)不飽和カルボン酸単位(iii)の含有量が0〜1重量%である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム、
(8)不飽和カルボン酸単位(iii)が、下記一般式(2)で表される構造を有する、上記(2)〜(7)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム、
【0010】
【化2】

【0011】
(ただし、Rは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
(9)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(i)が、下記一般式(3)で表される構造を有する、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム、
【0012】
【化3】

【0013】
(ただし、Rは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式の炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式の炭化水素基を示す。)
(10)反応させる単量体の全量を100重量%として、不飽和カルボン酸アルキルエステル30〜93重量%と、不飽和カルボン酸単量体7〜70重量%とを共重合させ、得られた共重合体を加熱することにより脱水及び/又は脱アルコール反応せしめることによりグルタル酸無水物単位を生成させる、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、
(11)Tダイを用いて熱可塑性樹脂フィルムを製造するに際し、Tダイのリップ間隙とフィルム平均厚みとが下記式を満足するようにTダイのリップ間隙を調整する、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、
(Tダイのリップ間隙(mm)/フィルム平均厚み(μm))×1,000≦20.0
(12)Tダイの上流に位置する配管内に、配管内を流れる熱可塑性樹脂の壁面近傍部分と中心部分とを分流せしめる分流手段を設けて、中心部分の熱可塑性樹脂をTダイから吐出する、上記(11)記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、
を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以下説明するように、本発明によれば、高い透明性を有する熱可塑性樹脂フィルムが得られる。さらに、本発明で得られる熱可塑性樹脂フィルムは、優れた耐熱性と透明性を生かした、光学ディスク、ディスプレイ部材、光学レンズ、液晶バックライト用導光板などの用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、(i)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、および(ii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を有する共重合体を含み、厚みが5〜250μmであり、ヘイズ値が1.0%以下である。
【0016】
【化4】

【0017】
(上記式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
ここで、上記(ii)の共重合体がさらに(iii)不飽和カルボン酸単位を有していることも好ましい。
【0018】
なお、本明細書において単に「アルキル」という場合には直鎖状及び分枝状の両者が包含される。
【0019】
本発明において上記した共重合体を製造する方法としては、特に制限はないが、後の加熱工程により上記グルタル酸無水物単位(ii)を与える不飽和カルボン酸単量体及び不飽和カルボン酸アルキルエステルを共重合させ、原重合体とした後、かかる原重合体を適当な触媒の存在下あるいは非存在下で加熱し、脱アルコール及び/又は脱水による分子内環化反応を行わせることにより製造することができる。この場合、典型的には、原重合体を加熱することにより2単位の不飽和カルボン酸単位(iii)のカルボキシル基が脱水されて、あるいは、隣接する不飽和カルボン酸単位(iii)と不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(i)からアルコールの脱離により1単位の前記グルタル酸無水物単位(ii)が生成される。
【0020】
この際に用いられる不飽和カルボン酸単量体としては特に制限はなく、好ましい不飽和カルボン酸単量体として、下記一般式(4)
【0021】
【化5】

【0022】
(ただし、Rは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
で表される化合物、マレイン酸、及びさらには無水マレイン酸の加水分解物などが挙げられるが、特に熱安定性が優れる点でアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、より好ましくはメタクリル酸である。これらはその1種または2種以上用いることができる。なお、上記一般式(4)で表される不飽和カルボン酸単量体は、共重合すると上記一般式(2)で表される構造の不飽和カルボン酸単位(iii)を与える。
【0023】
また不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体としては特に制限はないが、好ましい例として、下記一般式(5)で表されるものを挙げることができる。
【0024】
【化6】

【0025】
(ただし、Rは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基であり、又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基を示す。)
これらのうち、炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式炭化水素基又は置換基を有する該炭化水素基を持つアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルが特に好適である。なお、上記一般式(5)で表される不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は、共重合すると上記一般式(3)で表される構造の不飽和カルボン酸アルキルエステル単位を与える。
【0026】
不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体の好ましい具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシルおよび(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチルなどが挙げられ、なかでもメタクリル酸メチルが最も好ましく用いられる。これらはその1種または2種以上を用いることができる。
【0027】
これらの単量体を共重合する方法については特に制限はなく、ラジカル重合や、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の種々の重合方法を用いることができる。
【0028】
これらの原重合体製造時に用いられる単量体混合物の好ましい割合は、該単量体混合物を100重量%として、不飽和カルボン酸単量体が7〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%、最も好ましくは15〜40重量%、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体は好ましくは30〜93重量%、より好ましくは30〜90重量%、最も好ましくは30〜85重量%である。
【0029】
不飽和カルボン酸単量体量が7重量%未満の場合には、原重合体の加熱による環化反応物生成量が少なくなり、従って共重合体の耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。一方、不飽和カルボン酸単量体量が70重量%以上の場合には、原重合体の加熱による環化反応後に反応性の高い不飽和カルボン酸単位が多量に残存する傾向があり、非熱可逆性の結合が生成することがあるため、成形が困難になる可能性がある。
【0030】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムにおける各共重合体成分の定量には、一般に赤外分光光度計やプロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機が用いられる。赤外分光法では、グルタル酸無水物含有単位は、1,800cm−1および1,760cm−1の吸収が特徴的であり、不飽和カルボン酸単位や不飽和カルボン酸アルキルエステル単位から区別することができる。また、H−NMR法では、スペクトルの積分比から共重合体組成を決定することができる。例えば、グルタル酸無水物含有単位、メタクリル酸単位、およびメタクリル酸メチル単位からなる共重合体の場合、ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、上記に加えて、他の共重合成分としてスチレンを含有する共重合体の場合、6.5〜7.5ppmにスチレンの芳香族環の水素が見られ、同様にスペクトル比から共重合体組成を決定することができる。
【0031】
本発明における原重合体の加熱による共重合体の製造方法は、特に制限はないが、上記原重合体を200〜300℃に昇温したベントを有する押出機に通して加熱脱揮することにより、環化反応を行う方法を好ましく用いることができる。さらに共重合体中の反応性の高い不飽和カルボン酸系単位量を減少させる方法として、2つ以上のベントを有する押出機を用いることが好ましい。なお、上記の方法により加熱脱揮する時間は特に限定されず、適宜設定可能であるが、通常、1分間〜20分間程度が適当である。
【0032】
また、原重合体を押出機に通す際にグルタル酸無水物への環化反応を促進させる触媒として、原重合体100重量部に対し、酸、アルカリ、塩化合物の1種以上を0.01〜1重量部添加することが好ましい。これら酸、アルカリ、塩化合物については特に制限はなく、酸触媒としては、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸、亜リン酸、フェニルホスホン酸、リン酸メチル等が挙げられる。塩基性触媒としては、金属水酸化物、アミン類、イミン類、アルカリ金属誘導体、アルコキシド類、水酸化アンモニウム塩等が挙げられる。さらに、塩系触媒としては、酢酸金属塩、ステアリン酸金属塩、炭酸金属塩等が挙げられ、特に水和物である塩が好ましく用いられる。
【0033】
本発明におけるグルタル酸無水物単位を含有する共重合体のガラス転移温度(Tg)は、120℃以上であることが好ましく、特に130℃以上であることが、耐熱性の点で好ましい。共重合体のガラス転移温度を120℃以上にすることは、共重合体中におけるグルタル酸無水物単位(ii)の量を約10重量%以上に制御することにより達成できる。なお、ガラス転移点の上限は特に限定されないが、通常、170℃程度である。
【0034】
本発明における共重合体100重量%中に含まれるグルタル酸無水物単位(ii)は共重合体中に好ましくは10〜55重量%、最も好ましくは15〜50重量%である。グルタル酸無水物単位が10重量%以下の場合、耐熱性向上効果が小さくなる傾向がある。また、不飽和カルボン酸単位(iii)は0〜5重量%、より好ましくは0〜3重量%、最も好ましくは0〜1重量%である。不飽和カルボン酸単位5重量%以上の場合、非熱可逆性の結合が生成することがあるため、成形が困難になる可能性がある。
【0035】
また不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(i)は好ましくは30〜95重量%、より好ましくは30〜90重量%、最も好ましくは30〜85重量%である。
【0036】
(ただし、上記において各単位(i)(ii)(iii)の合計は100重量%である。)
本発明の共重合体成分としては、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒として用い、30℃で測定した極限粘度[η]が0.35〜0.85dl/gのものが好ましく、0.45〜0.7のものが特に好ましい。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、溶融製膜にて製膜することができる。溶融製膜としては、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、切削法などがあり、特にTダイ法を好ましく採用できる。
【0038】
溶融製膜には、単軸あるいは二軸の押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。そのスクリューのL/Dとしては、25〜120とすることが着色を防ぐために好ましい。溶融押出温度としては、好ましくは150〜350℃、より好ましくは200〜300℃である。溶融剪断速度としては、1,000s−1以上5,000s−1以下が好ましい。また、溶融押出装置を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し減圧下で、あるいは窒素気流下で溶融混練を行うことが好ましい。
【0039】
Tダイ法は、溶融した樹脂をギヤポンプで計量した後にTダイ口金から吐出させ、静電印加法、エアーチャンバー法、エアーナイフ法、プレスロール法などでドラムなどの冷却媒体上に密着させて冷却固化し、フィルムを得ることができる。特に厚みムラが少なく、透明なフィルムを得るには、プレスロール法が好ましい。
【0040】
本発明における熱可塑性樹脂フィルムを製造する方法としては、例えば、Tダイの上流に位置する配管内に、配管内を流れる熱可塑性樹脂の壁面近傍部分と中心部分とを分流せしめる分流手段を設けて、中心部分の熱可塑性樹脂をTダイから吐出する方法などを採用することができる。特に、分流手段をTダイに樹脂が流れ込む直前に設けることにより、得られた熱可塑性樹脂フィルムは壁面滞留した樹脂が極めて少ない、中心部の滞留の少ない樹脂によって成形された製品となり、本発明の目的の透明性に優れた熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
【0041】
分流した壁面近傍付近の樹脂(壁面滞留した樹脂)は、系外に排出するか、あるいはTダイ内で合流する場合にはフィルム両端に集め、巻き取り前の工程で両端部を切断除去するとよい。分流するための分流手段の形状は特に制限はなく、楕円形、円錐形、三角形などが挙げられる。また、管壁近傍を流れる壁面滞留した樹脂と中心部の滞留の少ない樹脂を明確に分流するため、二重管にすることがより好ましい。
【0042】
壁面滞留した樹脂と中心部の滞留の少ない樹脂の割合を示す分流量は、特に制限されるものでないが、高い透明性を得るために、かつ生産効率を考慮し、壁面滞留した樹脂/中心部の滞留の少ない樹脂の割合が10/90重量%〜30/70重量%であることが好ましく、より好ましくは15/85重量%〜25/75重量%である。壁面滞留した樹脂の割合が10重量%未満の場合、フィルムの透明性が低下したり、切断除去するフィルム幅が狭く破れが生じ易くなることに繋がる。壁面滞留した樹脂の割合が30重量%を超えると、生産効率が低下しコスト高となってしまう。各形状、各寸法は特に制限されるものでないが、樹脂の粘度によって上記分流割合が得られるように設計する。
【0043】
Tダイ法による溶融製膜においては、押出温度、引き取り時の引き取り速度およびリップ間隙などを調整することにより、所定のフィルム厚みを得ることができる。フィルム厚みとして5〜250μmの範囲内であることが好ましい。フィルム厚みは、フィルム特性、ハンドリング性、目標最終厚みなどによって適宜調整されるべきものであるが、フィルム厚みが5μm未満の場合には製膜時に破れが生じ易くなるなど歩留まりを悪化させることがあり、250μmを超える場合には透明性が低下したり、部材としての厚みが大きくなり過ぎる場合がある。熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、10〜150μmの範囲内がより好ましく、20〜100μmの範囲内がさらに好ましい。
【0044】
Tダイ法による溶融製膜時の押出温度と引き取り時の引き取り速度を調整する方法としては、押出温度を熱可塑性樹脂フィルムの構成成分である共重合体のガラス転移温度より100℃〜150℃高い温度とし、Tダイのリップ間隙とフィルム平均厚みの比すなわちTダイのリップ間隙(mm)/フィルム平均厚み(μm)×1,000で表される値を20以下にすることが好ましく、より好ましくは15以下となるように引き取ることが好ましい。Tダイから押し出し後、冷却ロールに接するまでの時間は0.05秒以上1秒以下、好ましくは0.15秒以上0.6秒以下であることが好ましい。また、冷却ロールの表面温度は熱可塑性樹脂フィルムを構成する共重合体のガラス転移温度、好ましくはガラス転移温度より40℃以上低い温度とすることが好ましいが、冷却ロールの温度を15℃以下にすると結露が発生しやすくなり、フィルムの欠点を生じやすくなる場合がある。このような条件で溶融押出することによって、本発明の目的の透明性に優れ、かつ、光学的な異方性の生じにくい熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
【0045】
上記押出温度、上記分流割合および押出滞留時間を調整することにより熱可塑性樹脂フィルムの色調b値を0.5以下にすることができる。押出滞留時間は120分以内が好ましく、より好ましくは90分以内である。
【0046】
上記押出温度、上記分流割合、上記押出滞留時間および上記Tダイのリップ間隙とフィルム平均厚みの比を調整することにより、熱可塑性樹脂フィルムのヘイズ値を1.0%以下にすることができる。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、波長400〜700nmの光線に対する位相差が5nm以下であることが好ましく、2nm以下であることがより好ましい。波長400〜700nmの光線に対する位相差が5nm以下であると、偏光板や光ディスクの保護フィルムなど光学等方性が要求される用途で好適に用いることができる。このような低位相差のアクリル樹脂フィルムを得るためには、位相差を発現する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることなどが有効である。
【0048】
本発明の熱可塑性樹脂フィルムは耐熱性、透明性、光学特性に優れるが、本発明の熱可塑性樹脂フィルムに弾性重合体等の衝撃改良剤を添加することで、衝撃強度を飛躍的に向上させることも可能である。衝撃改良剤として、本発明の共重合体との屈折率差が小さいものを選択することにより、透明性を保ったまま、耐衝撃性を高めることが可能である。このような衝撃改良剤を添加する場合、その含有量は各用途に照らして適宜選択でき、何ら限定されないが、通常、樹脂100重量部に対し合計で5重量部〜45重量部程度である。
【0049】
さらに、本発明の熱可塑性樹脂フィルムは、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系およびシアノアクリレート系の紫外線吸収剤および酸化防止剤、高級脂肪酸や酸エステル系および酸アミド系、さらに高級アルコールなどの滑剤および可塑剤、モンタン酸およびその塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステラアマイドおよびエチレンワックスなどの離型剤、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などの着色防止剤、ハロゲン系難燃剤、燐系やシリコーン系の非ハロゲン系難燃剤、核剤、アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系などの帯電防止剤、顔料などの着色剤などの添加剤を含有してもよい。これらの添加剤を添加する場合、その含有量は各用途に照らして有効量を適宜選択できる。
【0050】
本発明の熱可塑性フィルムは使用の目的によって表面にコーティングによって帯電防止層や易接着層を設けたり、紫外線硬化樹脂からなるハードコート層、三角プリズム層、マイクロレンズアレイ等を設けたり、金属や酸化金属の蒸着層や、スパッタによる透明導電層を設けたり、接着層を介して他の光学等方性フィルムや偏光子、位相差フィルム等の光学機能フィルム、ガラス基板などと積層した形で用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。各実施例の記述に先立ち、実施例で採用した各種物性の測定方法を記載する。
【0052】
(1)重量平均分子量(絶対分子量)
ジメチルホルムアミドを溶媒として、DAWN−DSP型多角度光散乱光度計(Wyatt Technology社製)を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフ(ポンプ:515型,Waters社製、カラム:TSK−gel−GMHXL,東ソー社製)を用いて測定した。検量線は標準ポリスチレンを用い、リテンションタイムを3次曲線でフィッティングし使用した。
【0053】
(2)H−NMRスペクトルによる共重合組成割合
日本電子(株)製400MHz核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、重ジメチルスルホキシド溶媒に溶解した各サンプルについてH−NMRスペクトルを測定し、これから共重合組成割合を求めた。
【0054】
(3)ガラス転移温度(Tg)
熱可塑性樹脂フィルムを約5mgとり、示差走査熱量計(セイコー電子工業社製RDC220型)を用いて、20℃/分の昇温速度で測定した。ガラス転移温度の求め方は、JIS−K−7121の9.3項の中間点ガラス転移温度の求め方に従い、測定チャートの各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線とガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度とした。
【0055】
(4)ヘイズ
JIS−K−7105(1981)に準拠し、スガ試験機(株)製ヘイズメーターを用いて、23℃におけるヘイズ値(%)を測定した。ヘーズメーター型式:HZ−1、方式:シングルビーム方式、測定光:C光、光源部:ピンホール方式、受光部:積分球方式。
【0056】
(5)位相差
王子計測(株)社製 自動複屈折計(KOBRA−21ADH)を用いて測定した。位相差の測定は、波長分散測定モードにおいて、波長480.4nmの光線に対する位相差、波長548.3nmの光線に対する位相差、波長628.2nmの光線に対する位相差、波長752.7nmの光線に対する位相差を測定し、各波長における位相差(R)および測定波長(λ)からコーシーの波長分散式(R(λ)=a+b/λ+c/λ+d/λ)の各a〜dの係数を求め、このコーシーの波長分散式に波長550nm(λ=550)を代入して代表値として求めた。
【0057】
(6)色調
JIS Z 8722(2000)に基づき、分光式色差計(日本電色工業製SE−2000、光源 ハロゲンランプ 12V4A、0°〜−45°後分光方式)を用いて、各フィルムの色調(b値)を透過法により測定した。測定は温度23℃、湿度65%の雰囲気中で行った。フィルムの任意の5ヶ所を選び出して測定を行い、その平均値を採用した。
【0058】
(7)フィルム欠点
製膜後の熱可塑性樹脂フィルムについて、直径約0.5mm以上の欠点が存在するか目視確認し、以下の基準で評価した。
【0059】
○:欠点が見られない
×:欠点が見られる
(実施例1〜5、比較例1〜3)
(1)グルタル酸無水物単位を含有する共重合体(A−1−1)、(A−1−2)の製造
(A−1)容量が20リットルで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、懸濁剤としてアクリル酸メチル/アクリルアミド共重合体(重量比20/80、特公昭45−24151号公報実施例1記載)0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、下記混合物質の反応系を攪拌しながら添加し、60℃に昇温し懸濁重合を開始した。
【0060】
メタクリル酸 50重量部
メタクリル酸メチル 50重量部
t−ドデシルメルカプタン(連鎖移動剤) 0.3重量部
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤) 0.4重量部
15分かけて反応温度を65℃まで昇温したのち、50分かけて100℃まで昇温した。以降、通常の方法に従い、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビーズ状のビニル系共重合体(原重合体(A−1−0))を得た。ガスクロマトグラフィーにより残存モノマー量を測定の結果、残存モノマーはメタクリル酸0.7重量部、メタクリル酸メチル0.8重量部であった。重量平均分子量は7万であった。
【0061】
このビーズ状ビニル系共重合体(A−1−0)を、スクリュウ径30mm、L/Dが25のベント付き同方向回転2軸押出機(池貝鉄工製 PCM−30)のホッパー口より供給して、樹脂温度250℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融押出し、ペレット状のグルタル酸無水物単位を含有する共重合体(A−1−1)を得た。得られた(A−1−1)について、DSCによるガラス転位温度(Tg)を測定した結果、173℃であった。H−NMRスペクトルを測定し、スペクトルの帰属を、0〜0.8ppmのピークがメタクリル酸、メタクリル酸メチルおよびグルタル酸無水物環化合物のα−メチル基の水素、0.8〜1.6ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水、3.0ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH)の水素、11.9ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素とした。スペクトルの積分比から各共重合単位の組成を計算した結果、下記のとおりであった。
【0062】
メタクリル酸単位:2.0重量%
メタクリル酸メチル単位:51.5重量%
グルタル酸無水物単位:46.5重量%
(A−1−2)(A−1−1)を再度、スクリュウ径30mm、L/Dが25のベント付き同方向回転2軸押出機(池貝鉄工製 PCM−30)のホッパー口より供給して、樹脂温度250℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融押出し、ペレット状のグルタル無水物単位を含有する共重合体(A−1−2)を得た。この(A−1−2)のTgは176℃であった。また、H−NMRスペクトルの積分比より算出した、各共重合単位の組成は下記のとおりであった。
【0063】
メタクリル酸単位:0.1重量%
メタクリル酸メチル単位:50.0重量%
グルタル酸無水物単位:49.9重量%
(2)グルタル無水物単位を含有する共重合体(A−2−1)および(A−2−2)の製造
(A−1−0)と同様の方法で、モノマー組成をメタクリル酸20重量部、メタクリル酸メチル80重量部に変更してビーズ状のビニル系重合体(A−2−0)を得た。ガスクロマトグラフィーにより残存モノマー量を測定の結果、残存モノマーはメタクリル酸0.2重量部、メタクリル酸メチル0.7重量部であった。重量平均分子量は13万であった。このビニル系共重合体を同様の方法で溶融混練し、ペレット状のグルタル酸無水物単位を含有する共重合体(A−2−1)を得た。この(A−2−1)のTgは141℃であった。また、H−NMRスペクトルの積分比より算出した、各共重合単位の組成は下記のとおりであった。
【0064】
メタクリル酸単位:1.3重量%
メタクリル酸メチル単位:81.0重量%
グルタル酸無水物単位:17.7重量%
(A−2−2)上記の(A−2−1)を再度、スクリュウ径30mm、L/Dが25のベント付き同方向回転2軸押出機(池貝鉄工製 PCM−30)のホッパー口より供給して、樹脂温度250℃、スクリュウ回転数100rpmで溶融押出し、ペレット状のグルタル無水物単位を含有する共重合体(A−2−2)を得た。この(A−2−2)のTgは145℃であった。また、H−NMRスペクトルの積分比より算出した、各共重合単位の組成は下記のとおりであった。
【0065】
メタクリル酸単位:0.1重量%
メタクリル酸メチル単位:79.8重量%
グルタル酸無水物単位:20.1重量%
(3)グルタル無水物単位を含有する共重合体(A−3−1)の製造
(A−1−0)と同様の方法で、モノマー組成をメタクリル酸30重量部、メタクリル酸メチル70重量部に変更してビーズ状のビニル系重合体(A−3−0)を得た。ガスクロマトグラフィーにより残存モノマー量を測定の結果、残存モノマーはメタクリル酸0.3重量部、メタクリル酸メチル0.7重量部であった。重量平均分子量は9万であった。このビニル系共重合体を同様の方法で溶融混練し、ペレット状のグルタル酸無水物単位を含有する共重合体(A−3−1)を得た。この(A−3−1)のTgは155℃であった。また、H−NMRスペクトルの積分比より算出した、各共重合単位の組成は下記のとおりであった。
【0066】
メタクリル酸単位:0.1重量%
メタクリル酸メチル単位:69.8重量%
グルタル酸無水物単位:30.1重量%
(4)製膜
(実施例1)
上記熱可塑性樹脂組成物(A−1−1)を80℃で8時間減圧乾燥後、ベント付φ65mm一軸押出機を使用して260℃で押し出し、ギヤポンプにより吐出量を一定とした後、25μmカットフィルターを用いて濾過し、Tダイ直前において分流器を設け、壁面滞留した樹脂と中心部の滞留の少ない樹脂の分流量の割合を15/85重量%とし、スリット間隙0.6mmのTダイ(設定温度260℃)を介して吐出させた。吐出後、表面仕上げ1Sのステンレス製冷却ロール(130℃)に両面を完全に接着させるようにして冷却して、壁面滞留した樹脂を含むエッジを切断し、厚み100μmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。Tダイから吐出するまでの滞留時間は80分であった。分流器は二重配管とし、内側配管と外壁の間を流れる壁面滞留した樹脂の中で、製品中央部表層に流れ込もうとする壁面滞留樹脂を両エッジ端に流れ込むように、三角形の隔壁(内側配管と外壁の間)を設けた構成とした。
【0067】
(実施例2〜5)
熱可塑性樹脂組成物、厚み、分流量の割合を変更した以外は実施例1と同様にして、表1、2に示す熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0068】
(比較例1)
上記熱可塑性樹脂組成物(A−1−1)を80℃で8時間減圧乾燥後、ベント付φ65mm一軸押出機を使用して260℃で押し出し、ギヤポンプにより吐出量を一定とした後、25μmカットフィルターを用いて濾過し、分流器を用いることなく、スリット間隙0.6mmのTダイ(設定温度260℃)から吐出させた。吐出後、表面仕上げ1Sのステンレス製冷却ロール(130℃)に両面を完全に接着させるようにして冷却して、厚み100μmの熱可塑性樹脂フィルムを得た。Tダイから吐出するまでの滞留時間は80分であった。
【0069】
(比較例2〜3)
熱可塑性樹脂組成物、厚みを変更した以外は比較例1と同様にして、表1、2に示す熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0070】
(比較例4)
上記熱可塑性樹脂組成物(A−2−2)を80℃で8時間減圧乾燥後、メチルエチルケトンに固形分濃度30重量%となるように溶解させ、2μmカットフィルターを用いて濾過を行った。この溶液をギヤポンプを用いてスリット間隙0.5mmのTダイを通じてPETフィルム上にキャストし、熱風オーブンにて60℃、110℃、170℃でそれぞれ30分間熱処理を行い、熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0071】
各熱可塑性樹脂フィルムの評価結果を表1、2に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
表1、2の実施例、比較例より以下のことが明らかである。本発明の高透明熱可塑性樹脂フィルムは分流を行わないものと比較して透明性および色調が向上している。比較例4では、透明性および色調は向上しているが、残存溶媒を揮発するときに発生する突沸欠点により、品質が損なわれている。また残存溶媒により、耐熱性を示すTgも下がっている。上記の通り、本発明の高透明熱可塑性樹脂フィルムは透明性、耐熱性に優れるので、光学ディスク、ディスプレイ部材、光学レンズ、および液晶バックライト用導光板用の材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融製膜法により得られる熱可塑性樹脂フィルムであって、(i)不飽和カルボン酸アルキルエステル単位、および(ii)下記一般式(1)で表されるグルタル酸無水物単位を有する共重合体を含み、厚みが5〜250μmであり、ヘイズ値が1.0%以下である熱可塑性樹脂フィルム。
【化1】

(上記式中、R、Rは、同一または相異なる水素原子または炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【請求項2】
前記共重合体がさらに(iii)不飽和カルボン酸単位を有している、請求項1に記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項3】
フィルムのガラス転移温度が120℃以上である、請求項1または2記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項4】
フィルムのb値が0.5以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項5】
波長400〜700nmの光線に対するフィルムの位相差が5nm以下である、請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項6】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(i)を30〜95重量%、グルタル酸無水物単位(ii)を5〜60重量%、不飽和カルボン酸単位(iii)を0〜5重量%含有する(ただし、各単位(i)(ii)(iii)の合計は100重量%)、請求項1〜5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項7】
不飽和カルボン酸単位(iii)の含有量が0〜1重量%である、請求項1〜6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【請求項8】
不飽和カルボン酸単位(iii)が、下記一般式(2)で表される構造を有する、請求項2〜7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【化2】

(ただし、Rは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【請求項9】
不飽和カルボン酸アルキルエステル単位(i)が、下記一般式(3)で表される構造を有する、請求項1〜8のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルム。
【化3】

(ただし、Rは水素又は炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式の炭化水素基又は1個以上炭素数以下の数の水酸基若しくはハロゲンで置換された炭素数1〜6の脂肪族若しくは脂環式の炭化水素基を示す。)
【請求項10】
反応させる単量体の全量を100重量%として、不飽和カルボン酸アルキルエステル30〜93重量%と、不飽和カルボン酸単量体7〜70重量%とを共重合させ、得られた共重合体を加熱することにより脱水及び/又は脱アルコール反応せしめることによりグルタル酸無水物単位を生成させる、請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
Tダイを用いて熱可塑性樹脂フィルムを製造するに際し、Tダイのリップ間隙とフィルム平均厚みとが下記式を満足するようにTダイのリップ間隙を調整する、請求項1〜9のいずれかに記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
(Tダイのリップ間隙(mm)/フィルム平均厚み(μm))×1,000≦20.0
【請求項12】
Tダイの上流に位置する配管内に、配管内を流れる熱可塑性樹脂の壁面近傍部分と中心部分とを分流せしめる分流手段を設けて、中心部分の熱可塑性樹脂をTダイから吐出する、請求項11に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2008−201981(P2008−201981A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42088(P2007−42088)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】