説明

熱可塑性樹脂多層積層体

【課題】低温度熱接着が可能であると共に他部材に対する熱接着強度が適度で、然も帯電防止性に優れ、特に、その経時的持続性が改善された物品の収納包装用材料として好適な熱可塑性樹脂多層積層体を提供する。
【解決手段】外層フィルム層、中間層及び熱接着剤層を積層してなる積層体に於いて、前記中間層がエチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物からなることを特徴とする多層積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂多層積層体に関し、より詳細には、外層フィルム層、中間層、熱接着剤層が積層されてなり、前記中間層が特定の極性基を構成単位として含むエチレン系共重合体又はそれを含有する樹脂組成物からなることにより前記各層間にアンカーコート処理を施さずとも層間接着性に顕著に優れ、且つ、帯電防止性能、特に、その安定持続性に優れた物品の包装用材として好適な熱可塑性樹脂多層積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の包装用、収納袋用、容器用等の用途に供される熱可塑性樹脂フィルム等の成形材は程度の差はあれ帯電防止性が求められる場合が多く、例えば、厳密な静電シールド性が求められる半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材等に用いるフィルム等の成形材は勿論、粉末食品その他の食品包装、医薬品包装、繊維製品包装等の用途に用いる熱可塑性樹脂フィルム材等にもそれぞれ、その用途に応じた帯電防止性が求められる。
そして、上記のような用途に用いられる熱可塑性樹脂フィルム等の熱可塑性樹脂成形材は、帯電防止性以外に、それぞれの用途に応じて必要とされる諸特性、例えば、層間剥離強度、引張強度、伸び、曲げ剛性、耐衝撃性等の機械的諸特性の他、光学特性、印刷性、耐熱性、耐薬品性等の諸性能を満たすため多くは積層フィルム等の積層材の形で用いられる。
【0003】
従来から、このような要求に応ずる帯電防止性多層積層フィルム等の積層体の発明も既に多数提案され、例えば、特許文献1には、非金属支持体としてのポリエチレンテレフタレートフィルムとアクリル系又はポリカーボネート系の結合剤樹脂に電解銅粉等の導電性粉末を分散させた導電層(塗膜層)との間に塩化ビニリデン樹脂層を介在させてなり、帯電防止を目的とした粉末食品包装用、医薬品包装用、繊維製品包装用等の用途の他、静電シールドを目的としたIC部品の包装、保管、流通用等の用途にも用いることのできる導電性積層フィルムの発明が開示されている。
【0004】
又、特許文献2には、精密電子部品の包装収納用材として、外層フィルム層、補強フィルム層、接着強化層及び熱接着剤層からなり、該熱接着剤層がポリアクリレート系のベース樹脂に帯電防止剤としてテトラアルキルアンモニウムクロライドを練込み配合した樹脂組成物からなるポリスチレン製エンボスキャリアテープ用のカバーテープの発明が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明のように帯電防止塗布層に重金属粉末を配合した包装材は、塗膜層がやや脆く剥離しやすい欠点があり、重金属粉が医薬や食品等と直接接触した場合の触媒的作用による変質促進の危険性や太陽光暴露等の場合の光増感作用による内容物変質の危険性等の観点から、そのような影響を受けやすい医薬、食品と直接接する用途、或いは、重金属の存在を極端に嫌うICチップ等の精密電子部品と直接接する用途等への使用は決して好ましいものではく、この点から使用が制限される場合も生じる。
【0006】
又、上記特許文献2の積層体では、一般に外層フィルム層は、比較的高融点で、強度や剛性の強いポリエチレンテレフタレート(PET)等のフィルム材料を用いて構成される。
一方、キャリアテープ等の他包装部材と接着させるために設けられる熱接着剤層には柔軟で比較的低融点の、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱接着剤樹脂が用いられる。
このため両層を直接積層して強固に接合することは困難で、通常両層の間に介在し、外層フィルム層と熱接着剤層との物性の不連続的乖離を緩和する緩衝層としての役割を果たす中間層を配するのが一般的である。
【0007】
更に、各層間を強固に密着させ、その変形順応性を強化すると共にテープ開封の際の熱接着剤層のキャリアテープ面からの剥離を均質安定化させ、スムーズで良好な剥離性を担保するため、外層フィルム層と中間層との間或いは中間層と熱接着層との間に、更にアンカーコート剤のような接着剤層を配するのが一般的である。
因みに、前記特許文献2には外層フィルム層である二軸延伸ポリエステルフィルムと中間層である線状低密度ポリエチレン補強フィルム層との間に二液硬化型ウレタン系アンカーコート剤の塗布層を配したカバーテープ用積層フィルム材が実施例として記載されている。
【0008】
上記のような熱接着剤層(ヒートシール層)に帯電防止剤を混入又は塗布した従来の積層体は、その製作日時からそれほど時間が経過しない初期には充分な帯電防止性能を有する。
ところが、製造後に長期間放置したものを使用した場合や、製造後すぐに使用して包装体としたものでも、該包装体の状態で長期間貯蔵したものは、特に中間層にアンカーコート処理した場合においてはその帯電防止性能が徐々に低下し、それを使用した際、剥離により生じる静電気で塵埃等が付着する不都合を完全に阻止できない場合も生じ、このような帯電防止性能の経時的劣化が従来から問題となっていた。
特に、近年、IC、LSI等の高度集積化やその他の電子部品の細密化が進行するにつれてその改善が当業界で強く求められるようになって来ている。
【特許文献1】特開2000−353427号公報
【特許文献2】特許第3731092号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者等は、アンカーコート処理等を施さずとも充分な層間剥離強度を有し、且つ収納物品に影響の及ばない程度の可及的低温度での熱接着が可能であると共に帯電防止に脆い金属粉混入導電塗布層を用いることなく、然も、帯電防止性能の経時的劣化が無く、その安定持続性に優れる積層体を開発すべく鋭意研究を重ねた。
その結果、外層フィルム層と熱接着剤層の間に不飽和カルボン酸エステルを含有する特定エチレン系共重合体又はそれを含む樹脂組成物からなる中間層を接着強化層として配した層構成の積層体が上記諸課題を全て解決出来ることを見出しこの知見に基づき本発明を完成した。
【0010】
従って、本発明の目的は、アンカーコート処理等を施さずとも充分な層間剥離強度を有し、且つ低温度での熱接着が可能であると共に帯電防止性、特に、その経時的持続性が改善された物品包装材料用の積層体を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、外層フィルム層、中間層及び熱接着剤層を積層してなる積層体に於いて、前記中間層がエチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物からなることを特徴とする多層積層体が提供される。
【0012】
前記外層フィルム層はポリエステル樹脂からなることが好ましい。
【0013】
又、前記中間層を構成するエチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物は、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体又はエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体とエチレン・不飽和カルボン酸共重合体或いはエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体とのブレンド物であることが好ましい。
【0014】
特に、前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体であり、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である態様のものが好ましい。
【0015】
又、前記熱接着剤層は帯電防止剤を含有することが特に好ましい。
【0016】
更に、前記熱接着剤層は帯電防止剤を含有するエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂組成物からなることが好ましい。
【0017】
本発明の積層体はキャリアテープ用カバーテープ材として好適に用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の積層体は、ポリエステル樹脂フィルム等からなる外層フィルム層と不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物からなる中間層と帯電防止剤含有エチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂組成物等、好ましくは、非金属系帯電防止剤を含有する熱接着剤層とが積層されてなり、外層フィルム層と熱接着剤層とを繋ぐ中間層が極めて接着性に富む樹脂から成るため、外層フィルム層/中間層の層間等にアンカーコート剤塗布層を介在させなくとも充分な層間接着強度を保持する。
然も、該熱接着剤層は、包装収納対象物品の封入に際し、他部材と剥離自在に、然も、該包装収納対象物品に影響を与えない程度の低温度での熱接着が可能であると共にその他部材との接着強度は、例えば、剥離開封時にスムーズな剥離が達成できる程度の適度でバラツキの無い強度を有し、然も帯電防止性に優れ、特に、その(帯電防止性の)経時的な安定持続性に顕著に優れる。
従って、本発明の多層積層体は例えば、粉末食品その他の食品包装、医薬品包装、繊維製品包装等の広範な包装用途に好適に用いることができるだけでなく、厳密な静電シールド性が強く求められる半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材等、例えばICチップ等を収納するキャリアテープのカバーテープ材料としても好適である、
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の好適実施形態について、詳細且つ具体的に説明する。
既に述べたとおり、本発明の熱可塑性樹脂多層積層体は、外層フィルム層、中間層及び熱接着剤層を有し、中間層が、エチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物で構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に於いて、外層フィルム層の材質としては、公知の熱可塑性樹脂フィルムを使用でき、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂フィルム、ナイロン等のポリアミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム等を例示することができる。
これらの内ではポリエステル樹脂フィルムが好ましく、特に、強度、耐熱性に優れ、比較的剛性が高く容易に透明品が得られるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
これらフィルムは延伸、未延伸の何れも使用できるが、二軸延伸フィルムが好ましい。
【0021】
又、これらフィルムには帯電防止処理が施されることが好ましく、例えば、帯電防止剤が練り込まれたものや外表面を帯電防止コート処理したもの等が好適である。
【0022】
又、中間層との間の接着強度を一層強化安定させるために、接着強化層と接する面にサンドブラスト処理、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線処理等の表面処理を施しても良く、更に、必要に応じて層中に慣用の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、ブロッキング防止剤、軟化剤、防錆剤等を添加しても良い。
【0023】
前記外層フィルム層の厚さは、内容物、用途によって適宜設定されるが、通常5〜50μm、好ましくは9〜30μmである。
【0024】
本発明に於いて中間層は、外層フィルム層と熱接着剤層との間に介在し、外層あるいは熱接着剤層との間にアンカーコート処理をしない場合でも、この中間層を介して外層と熱接着剤層間の接着を強固にし、かつ安定化する機能を有する。
【0025】
本発明では、前記中間層の構成材として、エチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物を用いる。
上記共重合体又は樹脂組成物をアンカーコート剤を使用せずに接着強化層に配した本発明の積層体は、帯電防止性、特にその安定持続性に顕著に優れる。
【0026】
次に、本発明で中間層の構成材として用いる不飽和カルボン酸エステル成分を重合体成分として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物についてより具体的に述べる。
まず、不飽和カルボン酸エステルを重合体成分(重合体のモノマー単位)として含有するエチレン共重合体としては、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、即ち、エチレンと、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル類との共重合体やエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、即ち、エチレンと、上記のような不飽和カルボン酸エステル類と不飽和カルボン酸類、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸類等との多元共重合体を挙げることができる。
【0027】
又、樹脂組成物としては、上記共重合体のブレンド物の他、他種重合体とのブレンド物、例えば、上記共重合体とポリエチレン、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、そのアイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の他のエチレン系重合体とのブレンド物、上記共重合体とプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン等、炭素数4以上のオレフィンの重合体又は共重合体とのブレンド物、上記共重合体とエチレンと一酸化炭素と任意に不飽和カルボン酸エステルや酢酸ビニルとの共重合体等のエチレン・極性モノマー重合体又は共重合体とのブレンド物等を好適例として挙げることができる。
【0028】
これらの内では、不飽和カルボン酸単位含量が1〜12重量%、不飽和カルボン酸エステル単位含量が1〜25重量%、のエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体、特に、(メタ)アクリル酸単位含量が1〜12重量%、(メタ)アクリル酸エステル単位含量が1〜25重量%のエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、又は、上記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体と不飽和カルボン酸単位含量が1〜 20重量%のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体或いは不飽和カルボン酸エステル単位含量1〜25重量%のエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体とのブレンド物、特に、エチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体とエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体或いはエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体とのブレンド物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルとしては前述のアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸ー2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチル等を挙げることができる。
なお本発明において(メタ)アクリル酸とはアクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0029】
又、上記本発明の中間層を構成する樹脂は、不飽和カルボン酸エステル成分を重合体成分として含有するエチレン共重合体、またはこれらのエチレン共重合体を含む樹脂組成物何れの場合に於いても、不飽和カルボン酸エステル単位の含有量が樹脂重量当たり1〜25重量%、特に好ましくは2〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
不飽和カルボン酸エステルの含有量が上記下限より少ないものは外層フィルムとの接着強度が不十分となり、それを補うべくアンカーコート剤を使用すると本発明の目的である帯電防止性能の長期安定持続性が充分でなく、又、上記上限より多いものは、軟化温度が低く、ベタつきが生じたりして加工時の問題を引き起こす。
【0030】
又、本発明の中間層に用いる前記素材樹脂は、その加工性や層強度の点からそのメルトフローレート(MFR:JISK7210−1999に準拠、190℃、2160g荷重)は1〜50g/10分、より好ましくは3〜20g/10分程度のものが好ましい。
又、前記中間層の厚さは、内容物、用途によって適宜設定されるが、通常5〜50μm、好ましくは7〜20μmである。
【0031】
本発明の熱接着剤層には、ヒートシール性のベース樹脂に練込形帯電防止剤や必要に応じて粘着性付与樹脂等を配合した組成物が用いられることが好ましい。
好適に用いることのできるベース樹脂として、エチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体系樹脂、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステルポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂等、又はこれらの二種以上の混合物を例示することができる。
これらの内では、エチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂が好ましい。
更に、透明で低温ヒートシール性に優れたCMPS(商品名:三井・デュポンポリケミカル社製多目的シール樹脂)等の市販品シール樹脂を用いることもできる。
【0032】
又、上記ベース樹脂に通常配合される練込形の帯電防止剤としては、アルキルサルフェート、アルキルアリールサルフェート等のアニオン系界面活性剤、テトラアルキルアンモニウムクロライドに代表される第四級アンモニウム塩などのカチオン系界面活性剤、グリセリンモノステアレート等の非イオン系界面活性剤、ジメチルアルキルベタイン等の両性界面活性剤、三級アルキルアミン等が例示され、更に酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラックなども用途や使用目的によっては用いることができる。
これらの内で、押出ラミネート法による練込型の帯電防止剤としてはグリセリンモノステアレート等の非イオン系界面活性剤が好ましい。
その配合量は用いる帯電防止剤の種類、ベース樹脂種、用途等により適宜定められるが、通常ベース樹脂100重量部に対し0.1〜5重量部程度である。
【0033】
更に、前記熱接着剤層には、粘着性付与樹脂を配合しても良く、粘着性付与樹脂としては、所謂タッキファイヤーと呼ばれる比較的低分子量のポリエチレン類、キシレン樹脂、水添石油樹脂、エステルガム、クマロン樹脂等が例示出来、その配合量は適宜である。
前記熱接着剤層の厚さは内容物等によって適宜設定されるが、通常5〜50μm、好ましくは10〜30μmである。
【0034】
本発明の熱可塑性樹脂多層積層体は、上記各層を、それ自体公知の方法により積層して得られる。
その一例を挙げると、まず、外層フィルム層として予め外面に帯電防止コートを施した二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムを用意し、別に、中間層としてのエチレン・メタクリル酸・メタアクリル酸エステル共重合体(エステル含有共重合体樹脂)と熱接着剤層(ヒートシール層)としての帯電防止剤入りエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物(EVA樹脂組成物)とをそれぞれ用意し、これらを、例えば、押出ラミネーターにより積層する。
即ち、押出機から前記エステル含有共重合体樹脂を二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの帯電防止剤をコートした反対側面(未コート面)へ押出して、二軸延伸ポリエステル樹脂フィルムの未コート面へ積層させる。
【0035】
その際、前記ポリエステル樹脂フィルムには、その中間層を積層する面に通常コロナ処理を施したものを用いるが、接着強度の安定性からインラインコロナ処理が望ましい。
コロナ処理以外にもプラズマ処理、フレーム処理、紫外線処理等基材フィルム表面を活性化させる処理や、中間層溶融樹脂表面へのオゾン処理が基材フィルムとの接着強度を強固にする目的で有効的に使用できる。
そして、押出ラミネート装置のラミネーション部で前記ポリエステル樹脂フィルムの該コロナ処理等の表面活性化処理面と押出機からの前記エステル含有共重合体樹脂を積層し、更に前記エステル含有共重合体樹脂面へ熱接着層樹脂を順次積層して本発明の多層積層体を得ることができる。
本発明の多層積層体は帯電防止性及びその安定持続性に優れ、食品包装、医薬品包装、繊維製品包装等広範な物品の包装に好適に用いることができるが、特に、厳密な静電シールド性が求められる半導体素子等の精密電子部品の包装材料、袋材、容器材、とりわけ、ICチップ等を収納するキャリアテープのカバーテープ材料として有用である。
【実施例】
【0036】
本発明を次の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0037】
「積層体試料の作製」
外層フィルム材として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET:厚さ25μm)を用意し、別に、中間層用材として、エチレン・メタクリル酸・アクリル酸イソブチル共重合体(三元EMAAiBA:メタクリル酸含量4重量%、アクリル酸イソブチル含量7.5重量%、:密度930kg/m、MFR14g/10分)と熱接着剤層用材として、エチレン・酢酸ビニル共重合体100重量部に粘着付与剤(荒川化学工業株式会社 アルコンAM1)を12重量部及び帯電防止剤グリセリン脂肪酸エステル系帯電防止剤を0.5重量部混合してなるエチレン・酢酸ビニル共重合体系樹脂組成物(帯電防止剤含有EVA樹脂)を用い、これらを押出機(65mmφ、L/D=28)、スクリュー(3ステージ型、溝深さ比=4.78)、ダイ(900mm幅、インナーディケル型)を用いて、加工速度80m/分、樹脂温度(三元EMAAiBA:315℃、EVA系樹脂:220℃)、加工幅500mmの条件下で積層した。
【0038】
積層は、前記二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの内面側を放電処理強度4kwでコロナ放電処理し、コロナ処理面へ前記三元EMAAiBA樹脂(接着強化層側面)を積層し、更に三元EMAAiBA樹脂面に上記帯電防止剤含有EVA系樹脂とを順次、押出ラミネーターで貼合せ、下記三層構成の積層体試料を得た。
積層体試料の層構成:PET(25μm)/コロナ処理・三元EMAAiBA(15μm)/帯電防止剤入りEVA系イージーピール樹脂(15μm)
【0039】
「積層体材試料の耐電防止性能評価」
積層体試料を、23℃、相対湿度(RH)50%の条件下に保管し、その試料について、測定器(ハイレスターUP(三菱化学製))により、表面固有抵抗値の経時変化を測定した。
【0040】
[実施例1]
上記層構成(PET(25μm)/コロナ処理・三元EMAAiBA(15μm)/帯電防止剤入りEVA系イージーピール樹脂(15μm))に於ける23℃、RH50%での保管品試料についてその熱接着剤層面の表面固有抵抗値を経時的に測定した。
フィルム製作1日後から良好な表面固有抵抗値を示し、経時低下も見られなかった。
結果を表1に示す。
【0041】
[比較例1]
実施例1の層構成試料に於ける中間層樹脂である三元EMAAiBA(15μm)に替えて低密度ポリエチレン(PE:ミラソン16P:密度923kg/m、MFR3.7g/10分)(15μm)を用い、且つ、前記外層フィルム材(PET(25μm))の内面側コロナ処理に替えて該面にアンカーコート剤塗布処理(AC剤:大日精化製;セイカダイン2710A/C;2液反応型)を施し乾燥した以外は実施例1と同じに処理、保管した積層体試料について、その熱接着剤層面の表面固有抵抗値を測定した。
結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例品は比較例品と比べ常に表面固有抵抗値が1桁低く帯電防止性、特にその経時持続性に優れることが判る。
【0042】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層フィルム層、中間層及び熱接着剤層を積層してなる積層体に於いて、
前記中間層がエチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物からなることを特徴とする多層積層体。
【請求項2】
前記外層フィルム層がポリエステル樹脂からなる請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記中間層を構成するエチレンと不飽和カルボン酸エステルを構成単位として含有するエチレン共重合体又はそれを含む樹脂組成物が、エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体又はエチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体とエチレン・不飽和カルボン酸共重合体或いはエチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体とのブレンド物である請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記エチレン・不飽和カルボン酸・不飽和カルボン酸エステル共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸・(メタ)アクリル酸エステル共重合体であり、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸共重合体であり、且つ、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体がエチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体である請求項3記載の積層体。
【請求項5】
前記熱接着剤層が帯電防止剤を含有する請求項1〜4の何れかに記載の積層体。
【請求項6】
前記熱接着剤層が帯電防止剤を含有するエチレン・酢酸ビニル共重合体樹脂組成物からなる請求項1〜5の何れかに記載の積層体。
【請求項7】
キャリアテープ用カバーテープとして用いられる請求項1〜6の何れかに記載の積層体。

【公開番号】特開2009−18420(P2009−18420A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174301(P2007−174301)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】