説明

熱可塑性樹脂発泡材料からなる層を有するトレッドミルベルト

連続した動く歩道は、熱可塑性樹脂発泡材料からなる連続した第1発泡層11,12,13,14,15,16,17,18を上面25,26および下面34,35,36に備え、第1引き本体41,42,43,44,46,47,48が下面34,35,36に配置され、下面54,56,58に第1繊維製品層および引き本体を備える。連続した動く歩道には、連続した第1発泡層11,12,13,14,15,16,17,18と第1引き本体41,42,43,44,46,47,48との間に配置される層はなく、下面34,35,36と平行な第1引き本体41,42,43,44,46,47,48の局部的なずれを妨げるか又は前記引き本体を強化する層はない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動用トレッドミルベルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動用トレッドミルは、通常、フィットネスジムに設置されている。使用者は、それらにより、戸外のランニングトラックを必要とすることなくジョギングやランニングのトレーニングを行うことができる。運動用トレッドミルでは、使用者は、異なる速度で歩くこと、または、走ることを疑似体験するために、自由に選択できる速度で駆動されたモータによって延々と回転するベルトの上を歩くか、または、走る。
【0003】
US−A−5,951,441では、クッション層と織布層を含む基層との間で、基層の局部的なずれを回避し、かつ、基層を強化する安定化層を備える無端状のトレッドミルベルトについて述べられている。クッション層は、例えば、ネオプレン、PVC(ポリ塩化ビニル)発泡体、または、架橋ポリエチレンのような有機の圧縮性発泡材料を含有することができる。ベルトは、クッション層が塗布される前に、無端状に形成される。
【0004】
US−A−2006/0287147では、とりわけ、それぞれが織物材料または非織物材料から構成することができる上面層および下面層を備え、上面層と下面層との間で、発泡した可塑性樹脂から構成することができる高分子ゲルおよび基質を含有する無端状のトレッドミルベルトについて、さらに述べられている。ベルトは、(これらの層からなる材料が溶融可能であれば)融着によるか、付加的な接着剤によるか、または、縫うことのような機械的な結合によって、上面層と下面層の端部とを結合することにより無端状に形成される。
【0005】
上述したように、トレッドミルベルトは無端状である。ベルトは、その後、結合部に視覚的に見苦しい凹凸がないように、無端状に形成さればなければならない。
【0006】
トレッドミルベルトに対して既に使用され、ほんの僅かな凹凸を生じさせる終端結合部は、フィンガージョイントである(上で引用されたUS−A−5,951,441の図4参照)。
【0007】
無端状のコンベアベルトの分野では、別の形の終端結合部が知られており、“ステップジョイント”として言及されている。この結合部では、端部がステップの形に切断されている(端部を側方から見た場合、輪郭がステップの形状をしている)。ステップの形成は、ベルトの長手方向のステップの長さによるが、2つの端部の接触部である接着可能な領域を増加させ、その結果、完成した終端結合部の接着力を増加させる。しかし、ステップの形成なしでは、端部の端面しか(ベルトが薄いので小さすぎる)接着可能な領域として利用できないだろう。ステップジョイントを、端部の付加的なオーバーラップによって形成してもよい。そうすれば、さらに、接触部の接着可能な領域を増加させる。この場合には、層になったベルトの構造に関係なく、ステップの高さをベルトの厚さのちょうど半分にしなければならない。そうでなければ、端部を適切に結合することができない。端部を、付加的なオーバーラップによる方法で結合すると、コンベアベルトは、端部を結合した後、オーバーラップした点において、最初はベルトの厚さの1.5倍に増加した厚さを有している。同時に、付加的なオーバーラップによりこれらの端部を結合すると、最初は、隙間が、結合点においてベルトの内側に形成される。端部を結合する際、通常、熱と圧力の下で結合されるが、隙間は、端部が押圧されるにつれて再び見えなくなるように形成される。しかし、オーバーラップの2つの点において増加した厚さは、材料に延性があるならば、過剰な材料をコンベアベルトから側面に追い出すことによって部分的に正しく戻すことしかできない。それゆえに、結合後、材料の隆起した視覚的に見苦しい膨らみは、オーバーラップした2つの点において残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5951441号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0287147号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、従来技術のトレッドミルベルトよりも無端状にするのがより容易であり、かつ、その終端結合部が視覚的に満足する無端のトレッドミルベルトを提供する目的を有する。
【0010】
この目的は、本発明によれば、熱可塑性樹脂発泡体からなる無端状の第1発泡層を備え、上面層および下面層を有し、下面側に第1繊維製品層およびトラクション層下面を含む第1トラクション層が配置され、無端状の発泡した第1層と第1トラクション層との間で、下面に平行な第1トラクション層の局部的なずれを回避するか、または、第1トラクション層を強化する層がない無端状のトレッドミルベルトによって解決される。
【0011】
本発明の望ましい実施形態は、従属クレームから明らかであろう。特に、トレッドミルベルトが、第1発泡層の下面に1つ上面に1つの2つのトラクション層を備えるときが望ましい。
【0012】
驚くべきことに、材料の膨らみのない完全に平らな終端結合部を得るために、初めに述べた層になった構造を有するトレッドミルベルトの端部を、望ましいものとして上で示した2つのトラクション層を有するものであるが、前述した付加的なオーバーラップを有するステップジョイントを使用することにより、第1発泡層を直接融着することによって、かつ/または、ホットメルト接着剤として発泡した第1層の材料を使用することによって、接着できることが分かった。ステップになった端部を熱と圧力の下で結合するとき、熱可塑性樹脂発泡体からなる第1発泡層は、オーバーラップした2つの点において、このオーバーラップした点で最初に存在した増加した厚さが過剰な材料を側面に追い出す必要なく、トレッドミルベルトの厚さと同じになるまで圧縮されると考えられている。発泡した第1層の使用によっても、より低い圧力と温度が、要求された平坦面を有する終端結合部を製造するために必要とされる。
【0013】
1つのトラクション層のみを有する初めに述べたタイプのトレッドミルベルトは、オーバーラップのないフィンガージョイントを使用することによって端部で結合でき、前述した熱可塑性樹脂発泡体からなる第1発泡層の圧縮性にもかかわらず、終端結合部が同様に視覚的に完全に平坦となるように、終端結合部において窪みを生じさせないということがさらに分かった。
【0014】
本発明の全てのタイプのトレッドミルベルトに対しては、それらが、トレッドミルベルトの下面と平行な第1トラクション層の局部的なずれを回避するため、または、第1トラクション層を強化するために、第1発泡層と第1トラクション層との間にいかなる層をも必要とせず、トラクション層または本体そのものを無端状に形成する別の付加的な操作をもはや必要としないということがさらに分かった。本発明の全てのタイプのトレッドミルベルトに対しては、熱可塑性樹脂発泡体を、膨らみが生じないように、端部での結合に必要な加熱の過程で膨張させないということが同様に分かった。
【0015】
本発明のトレッドミルベルトは、無端状の発泡した第1層を備えている。この層を、例えば、直接融着することによって、または、結合用のホットメルト接着剤として発泡した層の材料を使用することによって、無端状に形成することができる。その場合には、例えば、付加的なホットメルト接着剤のような付加的な接着剤を任意に併用してもよい。望ましいのは、融着または付加的な接着剤を併用しない接着である。これら2つの望ましい場合には、2つの端部が無端状の発泡した層を結合するように形成された結合部は、熱可塑性樹脂発泡体のように同じ材料からなっている。
【0016】
熱可塑性樹脂発泡体を含む本発明にかかるトレッドミルベルトの全ての層に対して、特に、第1発泡層に対して、有用な熱可塑性樹脂は、例えば、PA(ポリアミド系)、例えば、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6T、ポリアミド6−3−T、ポリアミドMXD6、TPE−A(アミド系熱可塑性エラストマー)、例えばPEBA(ポリエーテルブロックアミド、特に、ポリ(ポリ(テトラメチレンエチレングリコール)―b―ポリ(ω−ラウロラクタム))、ポリ(ポリ(テトラメチレンエチレングリコール)―b―ポリ(ε−カプロラクタム))、ポリ(ポリエチレンオキシド―b―ポリ(ω−ラウロラクタム))およびポリ(ポリエチレンオキシド―b―ポリ(ε−カプロラクタム));PE(ポリエステル系)、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレート;TPE−E(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)、例えば、ポリ(ポリ(テトラデカキス[オキシテトラメチレン]オキシテレフタロイル)―b―ポリ(オキシテトラメチレンオキシテレフタロイル));柔らかい発泡した材料を製造するのに有用なTPU(熱可塑性ポリウレタン);並びにTPE−U(ポリウレタン系熱可塑性エラストマー)、特に、ポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールと、ジイソシアネートまたはポリカーボネートから得られるポリウレタン系熱可塑性エラストマーとの共重合体を含有する。ポリエステルジオールは、アジピン酸とブタンジオールから形成してもよい。ポリエーテルジオールは、例えば、エチレンオキシド、および/または、プロピレンオキシドの重付加物であってもよい。ジイソシアネートは、特に、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートであってもよい。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーも、ポリカーボネートから得られたポリウレタン系熱可塑性エラストマーであってもよい。熱可塑性樹脂のさらなる例は、TPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)、例えば、炭素原子数が3〜12(好ましくは8)のα−オレフィンから選択された追加のオレフィン単量体、ビニルアセテート、スチレン、炭素原子数が1〜4のアルキルアクリレートおよび炭素原子数が1〜4のアルキルメタクリレートを有するポリエチレンとエチレン共重合体、および、ポリ塩化ビニルである。列挙した熱可塑性樹脂を一緒にすること(すなわち混合)は、それらが、溶けた状態で化学的に相溶性があり混和できるならば、“熱可塑性樹脂”としても適合している。熱可塑性ポリウレタンおよびポリ塩化ビニルは、特に望ましい。
【0017】
本発明によって使用される熱可塑性樹脂は、非架橋であるか、または、部分架橋であってもよい。“部分架橋”という用語は、架橋度が熱可塑性樹脂に対してそれでもなお、溶融可能であり、発泡可能であり、かつ、分解することなく熱可塑性樹脂として処理可能であるほどに十分に低いということを意味するものとして理解されなければならない。望ましくは、熱可塑性樹脂は非架橋である。したがって、本発明に有用な熱可塑性樹脂は、エラストマー、または、熱硬化性樹脂ではない。熱可塑性樹脂は、それらに加える普通の可塑剤を付加的に有してもよい。
【0018】
発泡した層、特に発泡した第1層は、それぞれが、層を基準として、望ましくは、少なくとも50重量%、さらに望ましくは75重量%、もっとさらに望ましくは90重量%、まだもっとさらに望ましくは95重量%の、上で例示したような熱可塑性樹脂を有する熱可塑性樹脂発泡体を備えている。そして、残りの層は、発泡剤、ガス、および、付加的な別の添加物からなる未処理の分画である。添加物は、例えば、次に示すものである。
a)例えば、UVおよび熱の安定剤、難燃剤、着色剤、抗菌すなわちカビを殺滅する添加物のような完成した製造物の特性を改善する助剤
b)可塑性樹脂を節約し、それによってコストをより低くする、かつ/または、電気伝導性および寸法安定性を変更する、かつ/または、熱膨張を減らす増量剤としての充填剤
特に、細長い、または、ファイバー状の添加物は強度を向上させる。
【0019】
発泡した第1層に対しては、それが、約5〜60%、望ましくは約10〜40%の範囲の発泡度を有する熱可塑性樹脂発泡体からなっていることが望ましい。本発明の文脈においては、“発泡度”は、気泡が熱可塑性樹脂発泡体の全体の体積に寄与する体積分率を規定する。発泡度は、発泡状態と非発泡状態の密度を測定することによって決定するのが極めて容易である。
【数1】

【0020】
この公式において、rは発泡度(%)である。ρuは、例えば、染料のような全ての任意の添加物を有する均質な混合物のような未発泡の熱可塑性樹脂の密度である。ρgは、発泡した発泡体の形での同じ熱可塑性樹脂の混合物と等しい量の密度である。
【0021】
第1発泡層の厚さは、望ましくは、約0.1〜1.0mm、さらに望ましくは約0.2〜0.6mmの範囲である。
【0022】
本発明のトレッドミルベルトは、第1発泡層の下面に配置され、繊維製品布を含有するか、繊維製品布からなる第1トラクション層を備えている。この繊維製品布は、織布、または、編布(例えばループを描いた編布、または、ループを形成した編布)であってもよい。そして、それに代わる物として、例えば、ファイバー状の不織布または貼り込み済みのスクリムのような不織布であってもよい。望ましくは、第1トラクション層は、織布を含有するか、織布からなっている。織布の中では、平織り構造、または、綾織り構造を有するものが望ましい。織布の縦糸は、望ましくは、約200〜3300デシテックス、さらに望ましくは約500〜1200デシテックスのマルチフィラメントである。横糸は、1つの望ましい実施形態においては、同様に、縦糸に対して例示したようなマルチフィラメントであってもよい。別の望ましい実施形態においては、それらは、通常約0.15〜0.6mm、さらに望ましくは約0.25〜0.4mmの直径を有するモノフィラメントである。第1トラクション層で有用なより糸、編み糸、ファイバー、または、繊維製品布からなるロープの材料は、望ましくは、ポリエステル、ポリアミド、綿、またはポリエチレンナフタレートを含有するか、または、それらからなっている。そして、それは、綿/ポリアミド、または、綿/ポリエステル混合物、または、綿/ポリアミド/ポリエステルの3つからなる混合物であってもよい。第1トラクション層の繊維製品布は、可塑性樹脂(例えば、第1発泡層に対して上で例示したようなゴム、または、熱可塑性樹脂)の中に埋め込むか、または、包み込むことができる。
【0023】
第1トラクション層の厚さは、望ましくは、約0.2〜0.8mmである。
【0024】
通常、運動用トレッドミルのローラーおよびデッキと接触した面である第1トラクション層の下面は、摩擦を減少させるために、普通の潤滑剤を内部に含ませるか、または、普通の潤滑剤で表面を覆ってもよい。潤滑剤の例は、例えば、本願の出願時にダウコーニング(Dow Corning)で利用可能な“ダウコーニング200(登録商標)フルード(Dow Corning 200 Fluid)”のようなポリジメチルシロキサン重合体である。そのような潤滑剤を有する本発明の連続したトレッドミルベルトの中に第1トラクション層を含めることに対しては、US−B−7,140,485に対する例として言及されている。
【0025】
本発明のトレッドミルベルトは、付加的に、かつ、望ましくは、発泡した第1層の上面に配置された第2トラクション層を備える。第1トラクション層の構造に関する兆候は、第2トラクション層の繊維製品布が織布、または、編布、特にループで形成された編布のいずれかであることが望ましい点を除いては、変更すべきところは変更して第2トラクション層にも適用することができる。
【0026】
もし存在するならば、第2トラクション層の上面に、本発明に従って、熱可塑性樹脂材料からなり、かつ、上で説明したように発泡していない、または、発泡した上面層を、同様に配置してもよい。この上面層の厚さは、望ましくは約0.1〜1.0mmである。この上面層は発泡するとき、その発泡体は、第1発泡層の発泡体と別のものであってもよく、または、同一のものであってもよい。望ましくは、上面層も発泡する。
【0027】
本発明のトレッドミルベルトの最上層は、発泡していても発泡していなくてもよいが、通常、使用者が走る層である。その層は、上述した上面層であってもよい。また、その層は、上面層の上面に配置された付加的な被覆層であってもよい。この最上層は、使用者が滑るのを回避するために、トレッドミルベルトの技術の慣習としてその層の上面に凹凸(profile)を任意に設けることができる。これらの凹凸には、例えばエンボス加工にすることによって適用できる。最上層(上面層または被覆層)は、付加的に、帯電防止の特性を有してもよい。後者は、その分野の慣習として、粉末の、ファイバー状の、または、ファイバー状に形成された導電性材料(例えば、グラファイト、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、またはポリピロール)を最外層の材料に混ぜることによって実現できる。
【0028】
本発明のトレッドミルベルトの層は、それぞれの上面に配置されている。このことは、本発明の文脈において、層が、例えば、熱と圧力、または、接着剤の併用によって、直接いずれかと結合するということを意味する。接着剤を使用する際、架橋ポリウレタン、ゴム、ゴム混合物、および、フェノールホルムアルデヒド樹脂の中から選択することが望ましい。第2トラクション層が、織布を含有するか、または、織布からなっている場合、第2トラクション層は付加的な接着剤の補助によって第1発泡層に配置されていることが望ましい。しかしながら、第2トラクション層が、貼り込み済みのスクリム、または、編布、特にループで形成された編布を含有するか、それらからなっている場合、第2トラクション層は付加的な接着剤の併用なしに、すなわち、熱と圧力の働きのみによって第1発泡層に配置されることが望ましい。
【0029】
トレッドミルベルトの個々の層の厚さは、トレッドミルベルトそのもので、または、個々の層に分離した後(層の切開、引き延ばし、または、脱離)、のいずれかによって決定することができる。しかしながら、層の1つが幾何学的に十分にはっきりした形状を有していないかもしれない。この場合には、幾何学的な厚さのかわりに、厚さhを、層の単位面積当たりの重さG(kg/m)、および、層の全ての材料の質量を平均した密度ρ(kg/m)の商として決定することができる。
【数2】

【0030】
は、層のi番目の材料の部分質量であり、その和は、その層に存在するN個全ての材料にわたるものである。
【0031】
本発明のトレッドミルベルトの全ての発泡層、特に発泡した第1層を、熱可塑性樹脂材料を発泡することによって製造することができる。
【0032】
発泡は、熱可塑性樹脂材料に発泡剤を直接混ぜることによってまず第1に実行することができる。発泡剤は、物理発泡剤であってもよい。物理発泡剤の例は、例えば、フリゲン、カルトロン、フレオン、フリゲン、R11およびR12のようなクロロフルオロカーボン、例えばHFA134またはHFA227のようなハイドロフルオロアルカン、および、例えば炭素原子数が5のハイドロカーボン(例えばn−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン);炭素原子数が6のハイドロカーボン(例えばn−ヘキサン、イソヘキサン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン);炭素原子数が7のハイドロカーボン(例えばn−ヘプタン、イソヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン);および炭素原子数が8のハイドロカーボン(例えばオクタン、シクロオクタン、イソオクタン、1,2−,1,3−,または1,4−ジメチルシクロヘキサン)のような直鎖状の脂肪族の、枝分かれした、または、環状の、炭素原子数が4〜8のハイドロカーボンである。これらのハイドロカーボンは、純粋な形で、または、適切に区切られた沸点範囲のハイドロカーボンの留分として使用できる。その沸点範囲では、それぞれのハイドロカーボンは、多かれ少なかれ優位に生じる(石油エーテルの留分)。さらなる例は、室温、すなわち約25℃で気体である発泡剤、例えば、窒素、二酸化炭素、メタンまたはアルゴン;水;例えばジクロロメタン、パークロロエチレン、および、1,1,1−トリクロロエタンのようなハロゲン化したハイドロカーボン;および、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、および、タートブタノールのような低沸点(すわなち、沸点の範囲が約60〜100℃)のアルコールである。一方、発泡剤は、化学発泡剤であってもよい。化学発泡剤は、加熱によって、発泡ガス、特に窒素または二酸化炭素を放出するのみである。有用な化学発泡剤の例は、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなアゾ化合物、例えばベンゼンスルフォニルヒドラジンのヒドラジン誘導体、N−ニトロソ化合物、および、例えばβ−ケトカルボン酸のような容易に脱カルボキシル化できるカルボン酸である。本発明によれば、物理発泡剤が望ましい。発泡剤は、望ましくは、発泡する熱可塑性樹脂材料と極めて容易に混合するように選択する。このことは、無極性の熱可塑性樹脂材料、例えば、上述した気体の発泡剤の1つ、または、上述したハイドロカーボンまたはクロロフルオロカーボンの1つのような無極性の発泡剤を使用することを意味する。一方、水または上述したアルコールの1つは、さらに極性のある、すなわち、親水性の熱可塑性樹脂のための発泡剤として使用することができる。発泡剤の量は、主として所望の発泡度によって決定される。その量は、望ましくは、発泡する熱可塑性樹脂の全体量に基づいて約1〜10重量%の範囲にある。
【0033】
発泡は、第2に、熱可塑性樹脂材料に、いわゆる“膨張性マイクロスフェア(expandable microspheres)”を混合することによって実行してもよい。膨張性マイクロスフェアは、長い間、知られている。膨張性マイクロスフェアは、水のエマルジョンのポリマー化により、上で例示した、望ましくは物理発泡剤(特に、例えば上述したハイドロカーボン、ハイドロフルオロアルカン、または、クロロフルオロカーボンのような室温で液体である水に不溶な発泡剤)の1つを包囲することにより、例えば、アクリレート/メタリレートと塩化ビニルの共重合)からなる、ポリマーのケーシングを用いて形成される。そのプロセスでは、発泡剤は、前記マイクロスフェアを形成するために、ポリマーの膜の中でカプセル化する。
【0034】
発泡に対しては、いずれかの発泡剤が自由な形で熱可塑性樹脂に加えられ、発泡が押出被覆を使用して第1トラクション層に同時に起こる塗布によって実行することが一方では望ましい。押出機の中で独立して発泡を行うことが、他方では望ましい。その場合には、発泡剤は、上述した膨張性マイクロスフェアの形で加えられ、このようにして得られた発泡した第1層は、カレンダー加工(calendering)によって、第1トラクション層に対する第2操作の中で順番に塗布される。
【0035】
第1トラクション層のみを含む本発明のトレッドミルベルトを製造する(すなわち対応する中間体を製造する)代替プロセスでは、第1発泡層の発泡体は、主に、すなわち、少なくとも約50%まで、熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニルを含む。第1ステップは、可塑剤の中で熱可塑性樹脂を分散させるよう調合することである。この分散もまた、上述したようなタイプの発泡剤を、上述したような量だけ含有する。有用な可塑剤は、例えば、フタレート可塑剤(例えば、ジオクチルフタレート、ジイソヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ベンジルブチルフタレート、または炭素原子数が6〜11のアルカノールとのフタル酸ジエステル、そのアルカノールは、第一級、または、第二級のいずれであってもよい。)、リン酸エステル(例えば、トリ−2−エチルヘキシルホスフェイト、トリヘプチルホスフェイト、または、トリ−2−エチルペンチルホスフェイト)、または、炭素原子数が3〜9のジカルボン酸(例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸)と、炭素原子数が3〜8のアルカンジオール(例えば、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール)とから得られる低粘性(すなわち、望ましくは室温で1000ミリパスカル秒以下)のポリエステルを含んでいる。分散には、任意に、安定剤、顔料、または、増量剤のような追加の添加物を加えてもよい。そのような分散は、付加的に存在する発泡剤は別として、プラスチゾルとして、その技術分野において公知の分散と類似である。この予め調合した分散の場合には、可塑剤の量とタイプを、分散においてペースト状の堅さを有するように選択する。この分散は、例えば、ドクターブレード、または、コーティングロールによって、第1トラクション層の上面に均一に塗布し、塗布された層を、加熱によって所望の発泡度まで発泡する。
【0036】
第1発泡層と第1トラクション層とを結合した後、任意の追加層を、カレンダー加工、押出被覆、または、ラミネートによって同様に付けることができる。これらの方法は、それ自体、当業者に全て公知である。
【0037】
本発明のトレッドミルベルトは、無端状である。この無端トレッドミルベルトを得るために、もし必要ならば、全ての必要な層および(上述したような)トラクション層を既に含有する層になった複合材料を、最初に適当な長さに切断する。このようにして得られた端部は、原則として、コンベアベルトの分野で公知のいかなる終端結合部を使用しても端部結合できる。例えば、終端結合部は、フィンガージョイント(finger joint)、ウェッジジョイント(wedge joint)、オーバーラップジョイント(overlap joint)、ステップジョイント(step joint)である。
【0038】
しかしながら、第1発泡層の下面にトラクション層のみを有する本発明にかかるトレッドミルベルトに対しては、フィンガージョイントが望ましい。フィンガージョイントは、トレッドミルベルトの分野で既に公知である(上で引用したUS−A−5、951,441参照)。そのため、ここでは、さらなる議論の必要はない。
【0039】
しかしながら、第1発泡層の上面と下面の両方にトラクション層を有する本発明のトレッドミルベルトに対しては、一方では、最初に述べられ、コンベアベルトの分野で公知のステップジョイントが望ましい。端部の1つのステップの2つの端面が、他方に対してオフセットしている距離dは、もしゼロでなければ、通常、約5〜200mmの範囲であり、望ましくは、約30〜80mmである。さらには、端部が、層になった本体の長手方向において、(距離dに加えて)付加的なオーバーラップxによってオーバーラップすることができ、その上さらにギャップなく結合できるように、ステップの高さが、ベルトの厚さの半分と等しいことが望ましい(導入部参照)。この付加的な距離xは、もしゼロ以外であれば、通常、約2〜200mmの範囲である。望ましくは、約2〜10mmの範囲である。ステップジョイントに必要な4つの端面(一方の端面が他方の端面に対して階段状に前記距離dだけ奥まっている、端部当たり2つの端面)は、全て平面状であり、かつ、互いに平行であることが望ましい。これらの4つの平面状の端面の垂線は、層になった複合材料の長手方向に対して、傾斜角αで傾斜していることが望ましい。この傾斜角αは、発泡した第1層の下面に対する傾斜角である。この傾斜角αは、通常、約10〜50度の範囲であり、望ましくは、約20〜40度である。
【0040】
端部を切断するのに必要なナイフまたはカッター、および、融着/接着に必要なホットプレスは、その技術分野において普通のものであり、さらなる説明を必要としない。
【0041】
全ての種類の終端結合部と、端部は、2つの端部を持ってきた後、熱と圧力の働きによって結合される。発泡した第1層の熱可塑性樹脂発泡体を、ホットメルト接着剤として使用することができ、かつ/または、付加的な普通の接着剤を使用できる。端部は互いに接着され、かつ/または、融着される。望ましくは、熱可塑性樹脂発泡体は、ホットメルト接着剤として使用する。さらには、熱可塑性樹脂発泡体のみが単独で接着剤としての役目をするように、付加的な接着剤を使用しないことが望ましい。
【0042】
以下、本発明のトレッドミルベルトおよびその製造について、添付図面を参照して実施形態によってさらに詳細に述べる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかるトレッドミルベルトの、4種類のうちの1つを示す図。
【図2】本発明にかかるトレッドミルベルトの、4種類のうちの1つを示す図。
【図3】本発明にかかるトレッドミルベルトの、4種類のうちの1つを示す図。
【図4】本発明にかかるトレッドミルベルトの、4種類のうちの1つを示す図。
【図5】熱可塑性樹脂発泡体の製造に有用な押出機の模式図。
【図6】カレンダー加工による第1発泡層と第1トラクション層とからの本発明のトレッドミルベルトの製造、および、その後に続くカレンダー加工による第2トラクション層の付加を示す模式図。
【図7】押出被覆による第1発泡層と第1トラクション層とからの本発明のトレッドミルベルトの製造を示す模式図。
【図8】ステップジョイント用の端部とそれらの結合の詳細を示す図。
【図9】ステップジョイント用の端部とそれらの結合の詳細を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1のトレッドミルベルトは、発泡した第1層11の下面側に配置された第1トラクション層41と、発泡した第1層11の上面側に配置された第2トラクション層81とを備えている。第1トラクション層41は、縦糸と横糸の両方がマルチフィラメントである普通の織布からなっている。第1トラクション層41のファイバー材料は、ファイバーに適したポリアミドである。縦糸は、550デシテックスまたは1100デシテックスであってもよい。横糸は、1100デシテックスである。第1トラクション層41の厚さは、約0.6mmである。発泡した第1層11は、約20%の発泡度を有するPVC(ポリ塩化ビニル)の発泡体からなっている。その発泡は、膨張性マイクロスフェアによってもたらされている。第1発泡層11の厚さは、約0.4mmである。第1発泡層11と第1トラクション層41とは、例えば、カレンダー加工により熱硬化性接着剤(架橋ポリウレタン)61によって接着されている。第2トラクション層81は縦糸が編まれた編布からなっている。第2トラクション層81のファイバー材料は、ファイバーに適したポリアミドであり、約0.3mmの厚さを有している。第2トラクション層81と第1発泡層11とは、例えば、カレンダー加工によって、付加的な接着剤を使用することなく結合されている。第2トラクション層81は、発泡した熱可塑性樹脂の上面層101に接して配置されている。この上面層101は、第1発泡層11と同じ化学成分を有している。この上面層101は、その上面層上面側71にトレッドミルベルトのランニング面を構成している。この上面層101の厚さは、約0.4〜約0.8mmであり、その厚さは上面層上面側71に形成された(図に示された)スリップを減少させる凹凸の特性によって左右される。この上面層101は、例えば、カレンダー加工によって、付加的な接着剤を使用することなく、第2トラクション層81に固定されている。
【0045】
図2のトレッドミルベルトは、発泡した第1層12の下面に配置された第1トラクション層42のみを備えている。この第1トラクション層42は、綾織りを有する織布からなっている。この織布は、縦糸だけでなく横糸も、1100デシテックスのマルチフィラメントである。第1トラクション層42のファイバー材料は、ファイバーに適したポリエステルからなっている。第1トラクション層42の厚さは、約0.6mmである。発泡した第1層12は、“シングルサイト”触媒によって製造されたエチレン−1−オクテン共重合体の発泡体からなっている。その発泡度は、約20%である。その発泡は、物理発泡剤(フレオン)によってもたらされている。このベルト構造では、発泡した第1層12は、トレッドミルベルトの最上層である。その表面72は、この目的に適したスリップを減少させる凹凸(profile)を有している。第1発泡層12の厚さは約0.4〜約0.8mmであり、この凹凸の特性によって左右される。第1発泡層12と第1トラクション層42とは、例えば、押出被覆によって、熱硬化性接着剤(架橋ゴム混合物)62によって接着されている。
【0046】
図3のトレッドミルベルトは、発泡した第1層13の下面に配置された第1トラクション層43と、発泡した第1層13の上面に配置された第2トラクション層83とを備えている。第1トラクション層43は、綾織りを有する織布からなっている。この織布は、縦糸が1000デシテックスのマルチフィラメントであり、横糸が、直径0.25mmのモノフィラメントである。第1トラクション層43のファイバー材料は、綿からなっている。第1トラクション層43の厚さは、約0.6mmである。発泡した第1層13は、約20%の発泡度を有するTPU(熱可塑性ポリウレタン)発泡体からなっている。その発泡は、膨張性マイクロスフェアによってもたらされている。第1発泡層13の厚さは、約0.35mmである。第1発泡層13と第1トラクション層43とは、例えば、カレンダー加工によって、熱硬化性接着剤(架橋ポリウレタン)63によって接着されている。第2トラクション層83は、縦糸が1000デシテックスのマルチフィラメントであり、横糸が直径0.25mmのモノフィラメントである普通の織布からなっている。第2トラクション83のファイバー材料もまた、綿である。第2トラクション層83の厚さは、約0.6mmである。第2トラクション層83と第1発泡層13とは、例えば、カレンダー加工によって、熱硬化性接着剤(架橋ポリウレタン)113を使用して結合されている。第2トラクション層83は、上面に配置された発泡した熱可塑性樹脂上面層103を有している。熱可塑性樹脂上面層103は、図1の上面層と同一であり、例えば、カレンダー加工によって、熱硬化性接着剤(架橋ポリウレタン)93を使用して第2トラクション層83と再び結合されている。
【0047】
図4のトレッドミルベルトは、第1発泡層14の下面34が見えるように、下から示している。このトレッドミルベルトの構造は、(もうこれ以上形状を示さない)上面層104が、上面層104の上に、黒鉛粉末と混合された熱可塑性ポリウレタンの、付加的で薄い凹凸の、帯電防止の被覆層144を配置した点を除いては、図3のトレッドミルベルトの構造と同一である。
【0048】
図5ないし図7は、まだ無端となっていないトレッドミルベルトを形成する層になった複合材料の製造を図式的に示す。
【0049】
図5は、押出機121における発泡した第1層15そのものの製造を示す。粒状の、または、細かくした、まだ発泡していない熱可塑性樹脂122は、押出機121の中で、任意の別の添加剤123、例えば、染料、増量剤、火炎抑制剤と混合される。発泡剤を測るのが容易であるとき、例えば、それが固体であるとき、発泡剤を熱可塑性樹脂122および添加物123とともに加えてもよい。発泡剤が気体または液体であるとき、供給ライン124によって、直接または単独で押出機121の中へ導入することができる。この全ての構成物質からなる混合物は、発泡剤が既に溶けた混合物と混合するように、十分に加熱され、加圧される。いくつかの場合には、混合は、発泡剤が超臨界状態に変化するように行われる。その結果として生じた熱可塑性樹脂122と発泡剤との混合物は、押出機121の中で発泡し、押出機121から、例えば、丸ダイスによって、(図5の輪郭線で描いた矢印として示した)熱可塑性樹脂発泡体として、取り出される。スロットダイスを使用すると、発泡体を、上面25と下面35とを有する第1発泡層15として直接製造できる。
【0050】
図6は、第1発泡層16の下面36と上面26のそれぞれへの、2つのトラクション層46,86のカレンダー加工を図式的に示す。カレンダーロール機は、第1発泡層16の最終形状を決定するので、第1発泡層16またはその他の相対的に形状のない熱可塑性樹脂発泡体のいずれかを使用することができる。最初は、第1トラクション層46は、第1発泡層16の下面36に対してカレンダー加工される。付加的な接着剤66が第1発泡層16と第1トラクション層46とを結合するに必要とされるとき、トラクション層46が一対のロールに入る前に、接着剤を粉末樹脂の形で振りかけるか、溶媒の中に溶解した形で噴霧するか、または、ドクターブレード(doctor blade)によってトラクション層の上面に塗布できる。図は、第2トラクション層86が、第1発泡層16の上面26に、その後直ちに続くカレンダー加工をどのように行うかについても示す。ここでもまた、付加的な接着剤115を、任意に、第2トラクション層86の下面に振りかけるか、または、噴霧することができる。さらに、太い破線の矢印は、得られた層になった複合材料に、別の層を任意に被覆することができるということを示している。その場合には、既に存在している層になった複合材料を、第1トラクション層46のかわりに右側からカレンダーロール機に供給し、上述した別の層を、第2トラクション層86のかわりに左側から供給する。既に存在している層になった複合材料を、どのようにカレンダーロール機に供給するかという方向付けによって、この別の層が、第1トラクション層の下面か、または、第2トラクション層の上面に配置されるようになる。
【0051】
図7は、発泡した第1層17により被覆される第1トラクション層47の押出被覆を図式的に示す。最初は、図5に対して説明したのと同様に、化学発泡剤または物理発泡剤の望ましい使用によって、熱可塑性樹脂発泡体が押し出される。しかしながら、その際、スロットダイスは必要としない。
【0052】
図8および図9は、第1発泡層18および2つのトラクション層48,88を備え、終端結合部がステップジョイントである、完成した層になった複合材料(すなわち、まだ無端状に形成されていないトレッドミルベルトの複合材料)の無端状の形への結合を示している。さらに、別の層が、特に、第2トラクション層88の上面に存在してもよいが、これらは図8および図9に表されていない。
【0053】
上面図(図8)に示した層になった複合材料は、平面状の第1端面131が一端に形成され平面状の第2端面134が他端に形成されるように、最初に所望の長さに切断される。(短い点線の矢印で描かれた)それらの面の垂線が、(長い点線の矢印で描かれた)層になった複合材料の長手方向に対して約30度の角度αで傾斜し、第1発泡層18の下面と平行に(すなわち、紙面上に)なるように、これら2つの端面131,134は傾斜している。次に、層になった複合材料を、第1発泡層18が、第1分離面281および第2分離面282を形成するベルトの厚さの半分の位置で切断されるように、両端において、長手方向に距離dまで、例えばナイフによって切開される(図9)。次に、左側に示した端部には、第2トラクション層88(および、第2トラクション層の上に位置することができ、図8および図9に示していない、任意の、熱可塑性樹脂の発泡の、または、非発泡の層)および、第1発泡層18が、ステップの形成とともに、第1端面131と平行に延び、距離dだけ第1端面131から後方にオフセットしている第1セットバック(set-back)端面132を形成するように、端面131から距離dだけ後方にオフセットして垂直に切断される。他端においては、第1発泡層18、第1トラクション層48(および、第1トラクション層の下面に位置することができ、図8および図9に示していない、任意の層)が、ステップの形成とともに、第2端面134と平行に延び、距離dだけ第2端面134から後方にオフセットしている第2セットバック(set-back)端面133を形成するように、端面134から同じ距離dだけ後方にオフセットして垂直に切断される。図8では、第2セットバック端面133は、上面図の第2トラクション層88によって隠れているので、破線としてのみ示す。左側に示した端部は、第1セットバック端面132、第1分離面281、および、第1端面131によって形成されたステップを備えている。右側に示した端部は、第2端面134、第2分離面282、および、第2セットバック端面133によって形成されたステップを備えている。
【0054】
それから、2つの端部は、約5mmの付加的な距離xだけオーバーラップするように互いの上面に置かれる(図9)。第1セットバック端面132、第1分離面281、第2分離面282、および、第2セットバック端面133は、ベルトの内側に隙間を形成する。このようにして結合された端部は、ホットプレスによって、(すなわち、このケースでは、付加的な接着剤を使用することなく)融着される。第1分離面281における熱可塑性樹脂発泡体は、第2分離面282における熱可塑性樹脂発泡体とともに溶融する。さらに、第1分離面281の一部の熱可塑性樹脂発泡体は、図9で右側に示したトレッドミルベルト端部の下面とともに溶融する(第1トラクション層48の下面に配置された層はないので、この下面は、ここでは実際、トラクション層下面58である。)。さらに、第2分離面282の一部の熱可塑性樹脂発泡体は、図9で左側に示したトレッドミルベルトのランニング面とともに溶融する(第2トラクション層88の上に配置された層はないので、このランニング面は、ここでは実際、トラクション層上面98である。)。この溶融により、無端状の第1発泡層18が与えられる。
【0055】
本発明にかかるトレッドミルベルトは、従来の全ての運動用トレッドミルにおいて有用である。本発明にかかるトレッドミルベルトと同様のものからなる運動用トレッドミルもまた、本発明の目的である。
【符号の説明】
【0056】
11,12,13,14,15,16,17,18 第1発泡層
25,26,28 上面
34,35,36 下面
41,42,43,44,46,47,48 第1トラクション層
54,56,58 第1繊維製品層およびトラクション層下面
61,63,93,113 熱硬化性接着剤(架橋ポリウレタン)
62 熱硬化性接着剤(架橋ゴム混合物)
64,66 接着剤
71 上面層上面側
72,73 表面
81,83,84,86,88 第2トラクション層
96,98 第2繊維製品層およびトラクション層上面
101,103 熱可塑性樹脂上面層
104,144 上面層
114,115 接着剤
121 押出機
122 熱可塑性樹脂
123 添加剤
124 供給ライン
131 第1端面
132 第1セットバック端面
133 第2セットバック端面
134 第2端面
144 被覆層
281 第1分離面
282 第2分離面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面(25,26)および下面(34,35,36)を有し、熱可塑性樹脂発泡体からなる無端状の第1発泡層(11,12,13,14,15,16,17,18)を備え、
前記下面(34,35,36)に、第1繊維製品層およびトラクション層下面(54,56,58)を含む第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)が配置され、かつ、前記無端状の発泡した第1層(11,12,13,14,15,16,17,18)と前記第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)との間に、前記下面(34,35,36)と平行な前記第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)の局部的なずれを回避するか、または、前記第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)を強化する層がないことを特徴とする無端状トレッドミルベルト。
【請求項2】
前記第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)は無端状でないことを特徴とする請求項1に記載のトレッドミルベルト。
【請求項3】
前記第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)は、織布、ループを描いた編布、ループを形成した編布、または、不織布を含有するか、または、織布、ループを描いた編布、ループを形成した編布、または、不織布であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトレッドミルベルト。
【請求項4】
前記第1トラクション層(41,42,43,44,46,47,48)は織布を含有するか、または、織布であり、接着剤(61,62,63,64,66)によって前記下面(34,36)に接着されていることを特徴とする請求項3に記載のトレッドミルベルト。
【請求項5】
前記第1発泡層(12)は凹凸が形成された(profiled)ランニング面(72)を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項6】
前記上面(26)に、第2繊維製品層およびトラクション層上面(96,98)を有する第2トラクション層(81,83,84,86,88)を配置し、かつ、前記第1発泡層(11,13,14,16,18)と前記第2トラクション層(81,83,84,86,88)との間に、前記上面(26,28)と平行な前記第2トラクション層(81,83,84,86,88)の局部的なずれを回避するか、または、前記第2トラクション層(81,83,84,86,88)を強化する層がないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の無端トレッドミルベルト。
【請求項7】
前記第2トラクション層(81,83,84,86,88)は無端状でないことを特徴とする請求項6に記載のトレッドミルベルト。
【請求項8】
前記第2トラクション層(81,83,84,86,88)は、織布、ループを描いた編布、ループを形成した編布、または、不織布を含有するか、または、織布、ループを描いた編布、ループを形成した編布、または、不織布であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のトレッドミルベルト。
【請求項9】
前記第2トラクション層(81,86,88)は、ループを形成した編布を含有するか、または、ループを形成した編布であり、接着剤なしに前記上面(26)に接着されていることを特徴とする請求項8に記載のトレッドミルベルト。
【請求項10】
前記第2トラクション層(83,86)は織布を含有するか、または、織布であり、接着剤(113,114,115)によって前記上面(26)に接着されていることを特徴とする請求項8に記載のトレッドミルベルト。
【請求項11】
前記第2トラクション層(81,83)のトラクション層上面(96,98)に、凹凸が形成された(profiled)ランニング面(71,73)を有する熱可塑性樹脂上面層(101,103)が配置されていることを特徴とする請求項6ないし請求項10のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項12】
前記上面層(101,103)は発泡していることを特徴とする請求項11に記載のトレッドミルベルト。
【請求項13】
前記上面層(144)は帯電防止特性を備えることを特徴とする請求項9ないし請求項12のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項14】
前記上面層(101,103,104)は、前記上面層(101,103,104)に基づいて、少なくとも50重量%、望ましくは少なくとも75重量%、さらに望ましくは少なくとも90重量%、特に望ましくは少なくとも95重量%の熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項9ないし請求項13のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系、アミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系、および、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなるグループから選択されることを特徴とする請求項14に記載のトレッドミルベルト。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂は、熱可塑性ポリウレタン、または、ポリ塩化ビニルであることを特徴とする請求項14に記載のトレッドミルベルト。
【請求項17】
前記熱可塑性樹脂発泡体の前記無端状の発泡した第1層(11,12,13,14,15,16,17,18)は、前記発泡した第1層(11,12,13,14,15,16,17,18)に基づいて、少なくとも50重量%、望ましくは少なくとも75重量%、さらに望ましくは少なくとも90重量%、特に望ましくは95重量%の熱可塑性樹脂を含有することを特徴とする請求項1ないし請求項16のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項18】
前記熱可塑性樹脂は、ポリアミド系、アミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系、および、ポリエステル系熱可塑性エラストマーからなるグループから選択されることを特徴とする請求項17に記載のトレッドミルベルト。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂は、熱可塑性ポリウレタン、または、ポリ塩化ビニルであることを特徴とする請求項17に記載のトレッドミルベルト。
【請求項20】
前記熱可塑性樹脂発泡体の前記無端状の第1発泡層(11,12,13,14,15,16,17,18)は5〜60%、望ましくは10〜40%の範囲の発泡度を有することを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項21】
前記第1発泡層(11,12,13,14,15,16,17,18)を融着することにより、かつ/または、ホットメルト接着剤として前記熱可塑性樹脂発泡材の前記無端状の第1発泡層(11,12,13,14,15,16,17,18)を使用して接着することにより、無端状に形成されることを特徴とする請求項1ないし請求項20のいずれか1項に記載のトレッドミルベルト。
【請求項22】
トレッドミルベルトの製造方法であって、
i)熱可塑性樹脂(122)、付加的な添加物(123)、および、発泡剤を含む熱可塑性樹脂混合物を押出機(121)によって発泡することにより、上面(25,26)および下面(35,36)を有する発泡層(15,16,17,18)を製造する工程と、
ii)請求項1に規定した2つの端部を有する第1トラクション層(46,47,48)を供給する工程と、
iii)前記第1発泡層(15,16,17,18)の下面(35,36)を、2つの端部を有する層になった複合材料を得るために、熱および圧力によって、かつ、/または、接着剤(66)によって、前記第1トラクション層(46,47,48)に結合する工程と、
iv)熱および圧力によって、かつ、/または、接着剤(66)によって生じた層になった複合材料に、追加の層を付加的に配置する工程と、
v)一端の端面の少なくとも1つが、他端の端面の1つと隙間なく接するように、前記一端に少なくとも1つの端面(131,132)、および、前記他端に少なくとも1つの端面(133,134)を形成するために、前記層になった複合材料の2つの端部を切断する工程と、
vi)前記2つの端部を結合する工程と、
vii)前記層になった複合材料を無端状に形成する工程と
を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項21のいずれか1項に記載のトレッドミルベルトの製造方法。
【請求項23】
プロセスであって、
a)前記vi)の工程において、請求項6に規定したように、前記第2トラクション層(86,88)が、前記発泡層(16,18)の上面(25,26)に追加の層として配置される工程と、
b)前記v)の工程において、第1端面(131)が第2セットバック(set-back)端面(133)と隙間なく接し、第1セットバック(set-back)端面(132)が第2端面(134)と隙間なく接するように、前記第1端面(131)および前記第1セットバック端面(132)が一端で形成され、かつ、前記第2端面(134)および前記第2セットバック端面(133)が他端で形成される工程と
を備えることを特徴とする請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記v),vi)およびvii)の工程が、ステップジョイントを獲得して実行されることを特徴とする請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記第1発泡層(15,16,17,18)は、前記無端状のトレッドミルベルトを得るために、融着され、かつ/または、前記熱可塑性樹脂発泡体の前記無端状の第1発泡層(15,16,17,18)を使用して接着されることを特徴とする請求項22ないし請求項24のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記vii)の工程において付加的な接着剤を使用しないことを特徴とする請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
請求項1ないし請求項21のいずれか1項に記載の無端状のトレッドミルベルトを備えることを特徴とする運動用トレッドミル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−521251(P2010−521251A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553881(P2009−553881)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【国際出願番号】PCT/CH2008/000109
【国際公開番号】WO2008/113195
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(591270796)ハバシット アクチエンゲゼルシャフト (25)
【Fターム(参考)】