説明

熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法、押出成形物の製造方法

【課題】成形体にしたときに、成形体にシルバーストリークを発生することがない熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、かつ、押出機に備えられたベントポートから熱可塑性樹脂組成物の脱気を行ったときに、シリンダーからベントポートへ、またはベントポートの近辺へ、溶融した熱可塑性樹脂組成物が吸い込まれることを抑制することができる熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法を提供する。
【解決手段】押出機に備えられたシリンダー5内を移送される熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法であって、シリンダー5における、内壁面の温度を熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満の温度とした領域に、溶融した熱可塑性樹脂組成物を送り込む工程と、減圧することによって、上記領域に送り込んだ熱可塑性樹脂組成物の脱気を上記領域で行う工程と、を含む、方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法、押出成形物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂を成形して得られる成形体の外観などを改良する方法として、溶融状態の熱可塑性樹脂に含まれているガス及び揮発成分を脱気する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、成形品に発生するシルバーストリークやフクレの発生を少なくして、外観を改良することを目的として、バレルに注水孔とベントポートを有する二軸押出機で溶融樹脂を混練しつつ、ベントポートの前段に設けたサイドポートから無機充填剤を供給し、注水孔より水を供給し、ベントポートから脱気する操作を行う低アウトガス樹脂組成物の製造方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、押出機に備えられたベント装置の開口部への成形材料の付着を防止し、かつ、成形材料の「やけ」及び劣化を防止することを目的として、ベント装置の成形材料との接触部を冷却する脱気方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、溶媒を含む固体状の熱可塑性樹脂を溶融混練する方法において、生産性及び製品の外観・物性を改良することを目的として、シリンダーにフィード開口部から所定の距離だけ離れた位置にベントポートを設置し、フィード開口部からベントポートの間のシリンダー温度Tを(熱可塑性樹脂の融点Tm−50)〜(Tm+90)℃、または、(熱可塑性樹脂のガラス転移点温度Tg)〜(Tg+120)℃に設定し、ベントポートから溶媒を分離することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2006/104245号公報(2006年10月5日国際公開)
【特許文献2】特開平8−281776号公報(1996年10月29日出願公開)
【特許文献3】特開2001−47496号公報(2001年2月20日出願公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、熱可塑性樹脂を成形して得られる成形体に発生するシルバーストリークを防止するために、例えば、特許文献1、特許文献2または特許文献3に記載されている熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法を採用した場合には、押出機に備えられたベントポートから熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物の脱気を真空ポンプを用いて行ったときに、シリンダーからベントポートへ、またはベントポートの近辺へ、溶融した熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂組成物が吸い込まれることがあった。
【0008】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成形体にしたときに、成形体にシルバーストリークを実質的に発生することがない熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、かつ、押出機に備えられたベントポートから熱可塑性樹脂組成物の脱気を行ったときに、シリンダーからベントポートへ、またはベントポートの近辺へ、溶融した熱可塑性樹脂組成物が吸い込まれることを抑制することができる熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法、及び押出成形物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、押出機に備えられたシリンダー内を移送される熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法であって、シリンダーにおける、内壁面の温度を熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満の温度とした領域に、溶融した熱可塑性樹脂組成物を送り込む工程と、減圧することによって、上記領域に送り込んだ熱可塑性樹脂組成物の脱気を上記領域で行う工程と、を含むことを特徴としている。
【0010】
本発明に係る脱気を行う方法では、脱気を行う工程では、熱可塑性樹脂組成物の温度が、熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度を維持した状態を保ちつつ脱気を行うものであってもよい。
【0011】
本発明に係る脱気を行う方法では、上記シリンダーの内壁面の温度が、1℃以上で熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲内であってもよい。
【0012】
本発明に係る脱気を行う方法では、上記シリンダーの内壁面の温度が、1℃以上で(熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点(℃)−60℃)以下の温度範囲内であってもよい。
【0013】
本発明に係る脱気を行う方法では、上記領域に送り込む溶融した熱可塑性樹脂組成物は、無機フィラーが混練されていてもよい。
【0014】
本発明に係る脱気を行う方法では、無機フィラーがタルクであってもよい。
【0015】
本発明に係る脱気を行う方法では、上記領域に送り込む溶融した熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上で0.1重量部以下の範囲内で溶媒を含有していてもよい。
【0016】
本発明に係る脱気を行う方法では、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂成分として、プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体、及びプロピレンランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0017】
本発明にかかる脱気を行う方法では、減圧を、真空ポンプを用いて吸引圧力を−100kPa以上で−40kPa以下の範囲内で行うものでもよい。
【0018】
本発明に係る押出成形物の製造方法は、上記何れかの脱気を行う方法により得られた、脱気された熱可塑性樹脂組成物を押出成形する工程を含むものであってもよい。
【0019】
本発明に係る押出成形物の製造方法は、押出成形する上記工程において、1重量%以上で41重量%以下の範囲内で無機フィラーを含有する押出成形物を製造するものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形体にしたときに、成形体にシルバーストリークを実質的に発生することがない熱可塑性樹脂組成物を得ることができ、かつ、押出機に備えられたベントポートから熱可塑性樹脂組成物の脱気を行ったときに、シリンダーからベントポートへまたはベントポートの近辺へ、溶融した熱可塑性樹脂組成物が吸い込まれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に用いられる押出機の概略断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0023】
本発明は、押出機に備えられたシリンダー内を移送される熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法である。より具体的には、本発明は、1)シリンダーにおける、熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う領域(「脱気工程部シリンダー域」と称する)では、シリンダーの内壁面の温度を熱可塑性樹脂組成物の融点未満の温度として、脱気工程部シリンダー域内に溶融した熱可塑性樹脂組成物を送り込む第一の工程と、2)脱気工程部シリンダー域に送り込んだ熱可塑性樹脂組成物の脱気を減圧することによって行う第二の工程とを含む。本発明は、また、3)上記第一の工程と第二の工程とを行うことで脱気された熱可塑性樹脂組成物を押出成形する第三の工程を含む、押出成形物の製造方法である。
【0024】
(熱可塑性樹脂組成物)
本発明に用いられる熱可塑性樹脂組成物とは、少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む組成物を指し、2種以上の熱可塑性樹脂を含む組成物でもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ナイロン等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられる。熱可塑性樹脂は、単独重合体、又は共重合体の何れであってもよく、共重合体としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、等が挙げられる。熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合は、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体、及びプロピレンランダム共重合体、等が挙げられる。
【0025】
熱可塑性樹脂の溶融前のメルトフローレート(MFR)は、例えば、1g/10分以上で300g/10分以下の範囲内であり、好ましくは10g/10分以上で200g/10分以下の範囲内であり、より好ましくは50g/10分以上で150g/10分以下の範囲内である。なお、熱可塑性樹脂がポリプロピレンの場合は、ポリプロピレンのMFRは21.2N、230℃の条件で測定されたものであり、ポリエチレンの場合は、ポリエチレンのMFRは21.2N、190℃の条件で測定されたものである。
【0026】
なお、熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を50重量%以上含むことが好ましい。(ただし、熱可塑性樹脂組成物の重量を100重量%とする。)。
【0027】
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に加えて無機フィラーを含んでいてもよい。無機フィラーとしては、例えば、タルク、カオリン、アルミナ、シリカ、等が挙げられ、好ましくはタルクである。無機フィラーの含有量は、例えば、熱可塑性樹脂100重量部に対して1重量部以上で41重量部以下の範囲内であり、好ましくは10重量部以上で25重量部以下の範囲内である。無機フィラーを含ませる際に、熱可塑性樹脂組成物に雰囲気が混入する虞があるが、本発明の方法では比較的多量の無機フィラーを含ませた場合でも混入した雰囲気を効率的に取り除くことができる。
【0028】
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に加えて溶媒を含みうる。溶媒は、例えば、熱可塑性樹脂の原料となるモノマーを液相重合する場合における液相が含む溶媒である。熱可塑性樹脂組成物が不純物として溶媒を含む場合、溶媒の量はより少ないことが好ましく、例えば、脱気工程部シリンダー域に送り込まれる溶融した熱可塑性樹脂組成物では、溶媒の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上で0.1重量部以下の範囲内である。
【0029】
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂に混合される無機フィラー及び溶媒以外の成分、例えば、着色剤、紫外線吸収剤、滑剤、各種エラストマー等、熱可塑性樹脂に加えられる添加剤を含んでいてもよい。
【0030】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)とは、熱可塑性樹脂を示差熱走査型熱量計を用いて測定した結果得られるピークの頂点に相当する温度であり、ピークが複数ある場合には最も高いピークの頂点に相当する温度である。本発明の熱可塑性樹脂組成物が2種以上の熱可塑性樹脂を含む場合は、熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点のうち最も高い温度を、本発明の熱可塑性樹脂に含まれる熱可塑性樹脂の融点とする。
【0031】
(押出機)
本発明に用いられる押出機とは、筒型の容器たるシリンダーを備え、熱可塑性樹脂組成物を連続的、又は間歇的にシリンダー内で下記フィードポートから排出ポートへ溶融して移送する装置を指す。押出機は、シリンダーの一部に、熱可塑性樹脂組成物を受入れる開口(フィードポート)、熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う開口(ベントポート)、及び熱可塑性樹脂を排出する開口(排出ポート)を備える。
【0032】
押出機は、単軸式又は多軸式のスクリューを備えるものであってもよく、プランジャを備えるものであってもよいが、比較的大量の熱可塑性樹脂組成物を効率的に混練する観点からは、好ましくはスクリューを備えるものであり、より好ましくは多軸式のスクリューを備えるものである。
【0033】
本発明に用いられる押出機の概略断面構成の一例を図1に示す。
【0034】
図1に示す押出機10は、シリンダー5、シリンダー5内に格納されたスクリュー6、ダイ7、及び冷却ユニット4を備える。シリンダー5は、熱可塑性樹脂組成物の移送方向に沿って上流端にフィードポート1を、中央部にベントポート2を、下流端に排出ポート3を備える。フィードポートからシリンダー5内に供給された熱可塑性樹脂組成物は、スクリュー6の回転によって混練及び移送が行われる。スクリュー6は、例えば相互かみ合い型の二軸式のスクリューである。
【0035】
シリンダー5における、フィードポート1からベントポート2の直前までの領域R1では、熱可塑性樹脂組成物の溶融、混練、及び移送が行われる。領域R1では熱可塑性樹脂組成物の溶融混練を十分に行える温度に維持できればよい。
【0036】
図1に示すように、領域R1内のスクリュー溝のピッチは、熱可塑性樹脂に強いせん断をかけて分散混合を強化する、又は、熱可塑性樹脂を強く圧縮する、等の目的で部分的に異なっていてもよい。
【0037】
シリンダー5における、ベントポート2を備えた領域R2は、熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う脱気工程部シリンダー域に相当する。ベントポート2を備えた領域を除いて、領域R2を取り囲むように冷却ユニット4が備えられる。領域R2では、熱可塑性樹脂組成物の移送を行いながら、後述する第一の工程、及び第二の工程が行われる。そして、シリンダー5における領域R2より後段の領域では、熱可塑性樹脂組成物の溶融、混練、及び移送が行われ、排出ポート3より排出された熱可塑性樹脂組成物は、ダイ7に供されて後述する第三の工程が行われる。以下、図1に基づいて、第一の工程から第三の工程について詳細に説明する。
【0038】
(第一の工程:シリンダーの冷却、及び移送)
第一の工程では、シリンダー5における熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う領域R2のシリンダーの内壁面の温度を熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)未満の温度とし、領域R2内に溶融した熱可塑性樹脂組成物を送り込む。
【0039】
一方、領域R2におけるシリンダー5の内壁面の温度は、熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)未満の温度とし、好ましくは、1℃以上で熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm未満の温度範囲内とし、より好ましくは、1℃以上で(熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)−60℃)以下の温度範囲内とする。領域R2におけるシリンダー5の内壁面の温度は、例えば、冷却ユニット4を用いてシリンダー5を冷却することにより調節される。
【0040】
領域R2内に送り込まれた溶融した熱可塑性樹脂組成物は、シリンダー5に接触することで流動性が低下(粘度が増大)した状態で、第二の工程に供される。領域R2におけるシリンダー5の内壁面の温度が熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)未満であっても、熱可塑性樹脂組成物の温度が、熱可塑性樹脂の融点Tm(℃)以上の温度を維持した状態を保たれるため、混練及び移送の効率を低下させない。
【0041】
(第二の工程:熱可塑性樹脂組成物の脱気)
第二の工程では、減圧することによって、領域R2に送り込んだ熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う。減圧は、例えば、ベントポート2に接続された真空ポンプ(図示せず)を用いた吸引によって行われる。真空ポンプを用いる場合の吸引圧力は、例えば、−100kPa以上で−40kPa以下の範囲内であることが好ましい。熱可塑性樹脂組成物の流動性が低下しているため、比較的強い減圧を受けた場合でもシリンダーからベントポートへまたはベントポートの近辺へ、溶融した熱可塑性樹脂組成物が吸い込まれる虞が低くなる。従って、例えば、重合反応により熱可塑性樹脂組成物を製造する工程で混入した雰囲気、無機フィラー又は添加剤の少なくとも一方を熱可塑性樹脂組成物に混練する工程で混入した雰囲気、或いは、熱可塑性樹脂組成物が含む溶媒の気化物、等の気体成分を、比較的強い減圧環境を用いてより一層効率的に除去(脱気)することが出来る。
【0042】
(第三の工程:押出成形)
第三の工程では、第一の工程と第二の工程とを行うことで脱気された熱可塑性樹脂組成物を押出成形する。押出成形は、例えば、ダイ7を用いて熱可塑性樹脂組成物に所定の形状を付与し、得られた押出物を冷却固化することで得られる。製造される押出成形物の種類は特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂組成物のペレット、フィルム、シート、パイプ、プロフィル、等である。得られた押出成形物は、例えば、1重量%以上で41重量%以下の範囲内で無機フィラーを含有する。
【0043】
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットは気泡の含有が大幅に低減されているため、このペレットを用いて製造された樹脂成形加工物はシルバーストリークの発生が実質的になくなりうる。
【実施例】
【0044】
〔実施例1〕
図1に示す構造を持つ二軸式の押出機を用いて、ポリプロピレン(熱可塑性樹脂)にタルク(無機フィラー)を混練した熱可塑性樹脂組成物の脱気を行った後、ペレット(押出成形物)を製造した。次いで、得られたペレットを成形し、シルバーストリークの発生の有無を目視で確認した。
【0045】
ペレットを製造した際、シリンダー5における領域R2の内壁面の温度を90℃まで低下させてから熱可塑性樹脂組成物を送り込み、真空ポンプの吸引圧力を−50kPaとして、熱可塑性樹脂組成物の脱気を行った。ベントポート2の近辺では溶融した熱可塑性樹脂組成物の吸い込まれが発生しなかった。
【0046】
なお、領域R2の内壁面の温度を90℃としても、溶融した熱可塑性樹脂組成物の温度は200℃以上であった。実施例で用いたポリプロピレンの融点Tmは170℃であったため、シリンダー5での温度の変化は熱可塑性樹脂組成物の溶融状態にはほとんど影響がなかった。
【0047】
なお、ペレット中のタルクの含量は14.7重量%であった。
【0048】
得られたペレットを成形したところ、シルバーストリークは発生しなかった。
【0049】
〔比較例1〕
シリンダー5における領域R2の内壁面の温度を210℃とした以外は、上記実施例1と同様の条件で、熱可塑性樹脂組成物の脱気、ペレットの製造、及びシルバーストリークの発生有無の確認を行った。シルバーストリークの発生は無かったが、ベントポート2の近辺で溶融した熱可塑性樹脂組成物の吸い込まれが発生していた。なお、領域R2における、溶融した熱可塑性樹脂組成物の温度は210℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の脱気に利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 フィードポート
2 ベントポート
3 排出ポート
4 冷却ユニット
5 シリンダー
6 スクリュー
7 ダイ
10 押出機
R1 フィードポート1からベントポート2の直前までの領域
R2 ベントポート2を備えた領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機に備えられたシリンダー内を移送される熱可塑性樹脂組成物の脱気を行う方法であって、
シリンダーにおける、内壁面の温度を熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満の温度とした領域に、溶融した熱可塑性樹脂組成物を送り込む工程と、
減圧することによって、上記領域に送り込んだ熱可塑性樹脂組成物の脱気を上記領域で行う工程と、を含む、方法。
【請求項2】
脱気を行う工程では、熱可塑性樹脂組成物の温度が、熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上の温度を維持した状態を保ちつつ脱気を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記シリンダーの内壁面の温度が、1℃以上で熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満の温度範囲内である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
上記シリンダーの内壁面の温度が、1℃以上で(熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の融点(℃)−60℃)以下の温度範囲内である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記領域に送り込む溶融した熱可塑性樹脂組成物は、無機フィラーが混練されている、請求項1〜4の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
無機フィラーがタルクである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記領域に送り込む溶融した熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上で0.1重量部以下の範囲内で溶媒を含有している、請求項1〜6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂として、プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体、及びプロピレンランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
減圧を、真空ポンプを用いて吸引圧力を−100kPa以上で−40kPa以下の範囲内で行う、請求項1〜8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の方法により得られた、脱気された熱可塑性樹脂組成物を押出成形する工程を含む、押出成形物の製造方法。
【請求項11】
押出成形する上記工程において、1重量%以上で41重量%以下の範囲内で無機フィラーを含有する押出成形物を製造する、請求項10に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−218562(P2011−218562A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86441(P2010−86441)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】