説明

熱可塑性複合材用の粉末コーティング組成物

本発明は、
i)官能性ポリエチレン、官能性ポリプロピレン、エチレン酸コポリマー、イオノマー樹脂、官能性エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび官能性エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーからなる群から選択される1つ以上の官能性ポリオレフィンを含む熱可塑性粉末コーティング組成物を提供する工程と、
ii)熱可塑性粉末コーティング組成物を熱可塑性複合材に適用し、熱可塑性複合材上で粉末コーティングを形成する工程と
を含む熱可塑性複合材をコーティングする方法を提供する。
本発明による方法によって、熱可塑性複合材上の熱可塑性粉末コーティングの強い接着力、高いひっかき傷および損傷耐性、ならびに高品質仕上げの表面外観および屋外性能が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリマーを含む粉末コーティング組成物でコーティングされ、車両のボディパネルおよび他の部品用に特に有用である熱可塑性複合材の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
パネルは、例えば、自動車、トラック、レクリエーション用、芝生用および園芸用の車両のボディパネルおよび部品、建物の外装材、広告活動での視覚的ディスプレーとしてなどの様々な用途で使用される。そのようなパネルは、構造的完全性と絶縁値を提供する一般に金属製の基層と、環境に直面する外層とを含む。外層が、損傷およびひっかき傷、ならびに摩耗に耐性があって、優れた光学的特性を有することが一般に望ましい。屋外用途で使用される場合、パネルは、さらに、例えば、雨、極端な温度、湿気、UVおよび他の種類の放射線への暴露などの種々の気候条件に対して永続的な耐性を示さなければならない。
【0003】
軽量化のため、機械的性能を維持しながら、そのようなパネルの金属部品を置き換える目的で、合板シート材料をベースとする構造が開発されてきた。合板は、一緒に接着されたか、または固められた木材のシートをベースとする構造材料からなる。しかし、そのような構造は非常に重いだけでなく、例えばホルムアルデヒドベースの生成物などの有機化合物を放出し、その溶液は毒性放出のため環境に悪い。
【0004】
環境的理由のため、低レベルの有機揮発性物質を放出する材料、好ましくは揮発性物質を全く放出しない材料を使用する傾向がある。この理由のため、美的な目的のため、そして、機械的保護などの実用的な目的のために熱硬化性ポリエステル液体ジェルでコーティングされた熱可塑性複合材をベースとする構造が開発されてきた。しかし、そのような構造は再利用不可能である。
【0005】
熱可塑性複合材は、適切なコーティング組成物でコーティングされなければならない。歴史的に、熱可塑性樹脂は粉末コーティング用途で評価されており、いくつかの特性の中でも、熱可塑性複合材へのコーティングの強い接着力、高い機械的強度と良好な表面硬度、高い耐衝撃性、高いひっかき傷耐性、高い耐摩耗性、ならびに高い美的表面品質が特に興味深い。
【0006】
米国特許出願公開第2007/0036969号明細書には、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー粉末がコーティングされた、熱可塑性繊維材料およびガラス繊維をベースとする熱可塑性複合材が開示されている。このコーティング組成物は優れた接着力を提供し、粗いガラス繊維の被覆を改善した。
【0007】
それにもかかわらず、コーティングされた熱可塑性複合材の物理的および機械的特性のバランスの改善を提供し、製造および複合材への適用が容易である複合材コーティングの必要性が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
i)官能性ポリエチレン、官能性ポリプロピレン、エチレン酸コポリマー、イオノマー樹脂、官能性エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび官能性エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーからなる群から選択される1つ以上の官能性ポリオレフィンを含む熱可塑性粉末コーティング組成物を提供する工程と、
ii)熱可塑性粉末コーティング組成物を熱可塑性複合材に適用し、熱可塑性複合材上で粉末コーティングを形成する工程と
を含む熱可塑性複合材をコーティングする方法を提供する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、官能性ポリエチレン、官能性ポリプロピレン、エチレン酸コポリマー、イオノマー樹脂、官能性エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび官能性エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーからなる群から選択される1つ以上の官能性ポリオレフィンを含む熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材を提供する。
【0010】
第3の態様において、本発明は、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材を含むか、またはそれから製造された物品を提供する。
【0011】
本発明による方法によって、熱可塑性複合材上の熱可塑性粉末コーティングの強い接着力、高いひっかき傷および損傷耐性、ならびに高品質仕上げの表面外観および屋外性能が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴および利点について、当業者は、以下の詳細な説明を読むことにより、より容易に理解するであろう。本発明のそれらのある種の特徴は、明確にするために、上記および下記の別々の実施形態の文脈中に記載されているが、1つの実施形態で組み合わせて提供されてもよいことは認識される。反対に、本発明の様々な特徴は、簡潔さのために、1つの実施形態の文脈中に記載されるが、別々に、またはいずれかの下位の組み合わせで提供されてもよい。加えて、文脈中に具体的に記載されない限り、単数での参照は複数を含んでもよい(例えば、「a」および「an」は1つまたは1つ以上を指してもよい)。
【0013】
本願で指定される様々な範囲の数値の使用は、明言されない限り、明示された範囲内の最小値および最大値のような近似値として明示される。このように、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成するために、明示された範囲の上下のわずかな変動が使用可能である。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の全ての値を含む連続的な範囲を意図する。
【0014】
本明細書で参照される全ての特許、特許出願および刊行物は、それらの全体で参照することによって組み込まれる。
【0015】
熱可塑性という用語は、熱硬化性とは異なり、加熱および冷却することによって、特性のいかなる重要な変化も伴うことなく、ポリマーを繰り返し溶解および凝固することができるという事象に関連する。
【0016】
本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物で使用される1つ以上のポリオレフィンは、1つ以上の官能性ポリオレフィンであり、それらは有機官能基でグラフト化および/または共重合したことを意味する。熱可塑性粉末コーティング組成物で使用される1つ以上の官能性ポリオレフィンは、酸、無水物および/またはエポキシド官能性で官能化されてもよい。
【0017】
ポリオレフィンを変性するために使用される酸および無水物の例は、モノカルボン酸であっても、ジカルボン酸であっても、またはポリカルボン酸であってもよく、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フルナリック酸(furnaric acid)、イタコン酸、クロトン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸および置換無水マレイン酸、例えば、ジメチル無水マレイン酸または無水シトロトン酸(citrotonic anhydride)、無水ナド酸、無水ナド酸メチル、および無水テトラヒドロフタル酸、ならびにそれらの2つ以上の組み合わせであり、無水マレイン酸が好ましい。
【0018】
ポリオレフィンを官能化するために使用されるエポキシドの例は、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルおよびグリシジルイタコネートなどの4個〜11個の炭素原子を含む不飽和エポキシドであり、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
1つ以上の酸官能性ポリオレフィンが使用される場合、それらは、好ましくは、官能性ポリオレフィンの全重量に基づく重量%で、0.05〜25重量%の酸を含有する。
【0020】
1つ以上の無水物官能性ポリオレフィンが使用される場合、それらは、好ましくは、官能性ポリオレフィンの全重量に基づく重量%で、0.05〜10重量%の無水物を含有する。
【0021】
1つ以上のエポキシド官能性ポリオレフィンが使用される場合、それらは、好ましくは、官能性ポリオレフィンの全重量に基づく重量%で、0.05〜15重量%のエポキシドを含有する。
【0022】
1つ以上の官能性ポリオレフィンは、官能性ポリエチレン、官能性ポリプロピレン、エチレン酸コポリマー、イオノマー樹脂、官能性エチレン酢酸ビニルコポリマー、官能性エチレンアルキル(メタ)アクリレートおよびそれらの混合物の中から選択される。
【0023】
(メタ)アクリレートという用語は、それぞれ、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味するように意味される。
【0024】
官能性ポリオレフィンを調製するために使用されるポリエチレンは、当業者に既知の超低密度(ultra low density)ポリエチレン(ULDPE)、超低密度(very low density)ポリエチレン(VLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線形低密度ポリエチレン(LLPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセンポリエチレン(mPE)、ならびに例えば、エチレンプロピレンコポリマー、およびエチレンと、プロピレンと、EPDMとをベースとするコポリマーなどのコポリマーから選択される一般に入手可能なポリエチレン樹脂である。EPDMは、エチレンと、少なくとも1つのアルファ−オレフィンと、ノルボルナジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの共重合性非共役ジエンとのターポリマーである。
【0025】
官能性ポリオレフィンを調製するために使用されるポリプロピレンとしては、当業者に既知のプロピレンのホモポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。プロピレンのコポリマーとしては、1−ブテン、2−ブテンおよび種々のペンテン異性体などの他のオレフィンとのプロピレンのコポリマーが挙げられる。エチレンアルファ−オレフィンコポリマーは、エチレンと、1つ以上のアルファ−オレフィンとを含む。アルファ−オレフィンの例としては、限定されないが、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン−1、4−メチル1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセンおよび1−ドデセンが挙げられる。
【0026】
エチレン酸コポリマーは、エチレンと、1つ以上の、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)またはマレイン酸モノエチルエステル(MAME)などの3個〜8個の炭素原子を含むα,β−エチレン系不飽和カルボン酸とのラジカル重合によって製造される。エチレン酸コポリマーは、軟化モノマーである第3のモノマーを含有していてもよい。軟化モノマーという用語は当業者に既知であり、ポリマー/コポリマーの軟化のために使用される。この軟化モノマーは、エチレン酸コポリマーの結晶化度を低下させることができる。適切な軟化モノマーは、例えば、アルキル基が1個〜8個の炭素原子を有するアルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートから選択される。
【0027】
したがって、エチレン酸コポリマーをE/X/Yコポリマーと記載することができる。Eはエチレンの共重合単位を表し、Xはα,β−エチレン系不飽和カルボン酸の共重合単位を表し、そしてYは軟化モノマーの共重合単位を表す。エチレン酸コポリマー中のXの量は、エチレン酸コポリマーの全重量に基づき、1〜30重量%、好ましくは9〜25重量%、より好ましくは12〜22重量%であり、そしてYの量は、0〜30重量%、好ましくは2〜15重量%、より好ましくは4〜12重量%である。コポリマーの残りは、エチレンの共重合単位を含むか、またはそれから本質的になる。
【0028】
あるいは、エチレン酸コポリマーに1つ以上のエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを添加することによって、エチレン酸コポリマーの軟化を実行することができる。
【0029】
好ましくは、Yが0%のコポリマーであるエチレン酸コポリマーである。したがって、エチレンと、3個〜8個の炭素原子を含むα,β−エチレン系不飽和カルボン酸との共重合残基を含むE/Xジポリマーが好ましい。これらの好ましいエチレン酸コポリマーの具体例としては、限定されないが、エチレンアクリル酸コポリマー(EAA)、エチレンメタクリル酸コポリマー(EMAA)、エチレンマレイン酸モノエチルエステルコポリマー(EMAME)またはそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
エチレン酸コポリマーを調製方法は、当業者に既知である。米国特許第5,028,674号明細書に記載の「共溶媒技術」の使用により、またはより低い酸によるコポリマーが調製される圧力よりもいくらか高い圧力を使用することによって、エチレン酸コポリマーを連続ポリマライザーで調製することができる。
【0031】
本発明による適切なイオノマー樹脂は、有機骨格鎖に加えて金属イオンを含有する上記のエチレン酸コポリマーである。そのようなイオノマー樹脂は、例えば、エチレンなどのオレフィンと、部分的に中和されたα,β−不飽和C3〜C8カルボン酸とのイオンコポリマーであり得る。
【0032】
好ましくは、酸コポリマーは、アクリル酸(AA)またはメタクリル酸(MAA)である。適切なイオノマー樹脂は、上記のエチレン酸コポリマーから調製可能である。エチレン酸コポリマーを中和するために適切な化合物としては、塩基性アニオンおよびアルカリ金属カチオン(例えば、リチウムもしくはナトリウムもしくはカリウムイオン)、遷移金属カチオン(例えば、亜鉛イオン)、またはアルカリ土類金属カチオン(例えば、マグネシウムもしくはカルシウムイオン)、ならびにそのようなカチオンの混合物または組み合わせを有するイオン化合物が挙げられる。エチレン酸コポリマーを中和するために使用されてもよいイオン化合物としては、アルカリ金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドが挙げられる。他の有用なイオン化合物としては、アルカリ土類金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドが挙げられる。遷移金属のギ酸塩、酢酸塩、硝酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物、水酸化物またはアルコキシドも使用されてよい。好ましくは、中和剤はナトリウムイオン、カリウムイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン、リチウムイオン、遷移金属イオン、アルカリ土類金属カチオンおよびその2つ以上の組み合わせの供給源の中から選択され、より好ましくは、亜鉛イオンおよび亜鉛イオンの組み合わせ、そしてなおより好ましくは、亜鉛イオンおよびナトリウムイオンまたは亜鉛イオンおよびリチウムイオンの組み合わせである。
【0033】
本発明に含まれるイオノマー樹脂の酸基は、10〜90%、好ましくは25〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%の範囲で中和される。イオノマー樹脂中の酸モノマーと中和された酸モノマーの全量は、イオノマー樹脂の全重量に基づく重量パーセントで、好ましくは12〜25重量%、より好ましくは14〜22重量%、より好ましくは15〜20重量%である。
【0034】
エチレン酸コポリマーと同様に、イオノマー樹脂をE/X/Yコポリマーと記載することができる。Eはエチレンなどのオレフィンであり、Xはα,β−不飽和C3−C8カルボン酸であり、Yは軟化モノマーであって、XはE/X/Yコポリマーの12〜25重量%、好ましくは14〜22重量%であり、YはE/X/Yコポリマーの約0〜30重量%の量で存在することができ、カルボン酸官能基は少なくとも部分的に中和される。
【0035】
あるいは、イオノマー樹脂に1つ以上のエチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを添加することによってイオノマー樹脂の軟化を実行することができる。
【0036】
イオノマー樹脂とそれらの製造方法については、例えば、米国特許第3,264,272号明細書に記載される。
【0037】
本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物中の官能性エチレン酢酸ビニルコポリマーは、好ましくは共重合された酢酸ビニル単位の相対量を、官能性ポリオレフィンの全重量に基づく重量パーセントで、5〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%、なおより好ましくは15〜25重量%含む。2つ以上の異なるエチレン酢酸ビニルコポリマーの混合物を官能性ポリオレフィンの成分として使用することができる。
【0038】
エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、エチレンコモノマーと少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートコモノマーとの共重合から誘導される熱可塑性エチレンコポリマーである。「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを指す。エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーのアルキル基は、1個〜10個の炭素原子、好ましくは1個〜4個の炭素原子を含有し、すなわち、好ましいコポリマーは、エチレンメチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレンエチル(メタ)アクリレートコポリマー、エチレンブチル(メタ)アクリレートコポリマーである。本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物の官能性エチレンアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、共重合されたアルキル(メタ)アクリレート単位の相対量を、官能性ポリオレフィンの全重量に基づく重量パーセントで、0.1〜45重量%、好ましくは5〜35重量%、なおより好ましくは8〜28重量%含む。
【0039】
熱可塑性粉末組成物で使用される1つ以上の官能性ポリオレフィンは、メルトフローインデックスおよび粒径の組み合わせを望ましく有する。メルトフローインデックスは、粉末が加熱の間、十分に溶融、流れ、および拡散するために十分に高くなければならないが、コーティングされた熱可塑性複合材の表面形態を有するために、なお十分に低くなければならない。粉末コーティング用途に関して、適切な官能性ポリオレフィンは、2160gの重量を使用して、190℃でASTM法第D1238号により測定された場合、300グラム/10分未満、好ましくは0.1〜200グラム/10分、なおより好ましくは2〜40グラム/分のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0040】
メルトフローインデックスは、溶融ポリマーの粘度の指標であり、また均一なコーティングを形成するその能力の指標である。これは、2160gの重量を使用して、190℃でASTM法第D1238号に準拠して測定可能である。
【0041】
熱可塑性粉末コーティング組成物は、当業者に既知の顔料および/または他の着色剤、粘着性付与剤、フィラー、増量剤、変性剤および/または他の添加剤などのさらなる成分を含んでもよい。これらの成分は、当該技術で周知の量および形態の組成物で存在してよい。
【0042】
顔料または他の着色剤は、透明、色付与性および/または特殊効果付与性顔料であり得る。適切な色付与性顔料は、有機または無機の天然のいずれかの従来のコーティング顔料である。無機または有機色付与性顔料の例としては、限定されないが、二酸化チタン、微粒状二酸化チタン、カーボンブラック、アゾ顔料およびフタロシアニン顔料が挙げられる。特殊効果付与性顔料の例は、例えばアルミニウム、銅または他の金属から製造された金属顔料、干渉顔料、例えば、金属酸化物コーティング金属顔料またはコーティング雲母である。顔料または他の着色剤は、熱可塑性粉末コーティング組成物の全重量に基づく重量パーセントで、20重量%まで、好ましくは1〜15重量%、より好ましくは1〜10重量%の量で組成物に存在してよい。したがって、発明の熱可塑性粉末コーティング組成物は着色可能である。
【0043】
粘着性付与剤(粘着性付与樹脂とも呼ばれる)は、当該技術で一般に既知のいずれかの適切な粘着性付与剤でもあってよい。例えば、粘着性付与剤としては、限定されないが、米国特許第3,484,405号明細書に記載される種類が挙げられる。そのような粘着性付与剤としては、ロージン材料、ならびに本発明のポリオレフィンと異なる様々な天然および合成樹脂が挙げられる。使用可能な粘着性付与剤樹脂は、液体、半固体〜固体、一般に明確な融点がなく、結晶する傾向がない有機化合物の混合物の形態である複合非晶質材料である。そのような樹脂は水中で不溶性であってもよく、植物由来または動物由来であり得るか、あるいは合成樹脂であり得る。本発明で使用可能な粘着性付与剤の包括的なリストは、Technical Association of the Pulp and Paper Industry,Atlanta,Georgiaの刊行物であるTAPPI CA Report No.55、1975年2月の第13〜20頁に示されており、200以上の商業的に入手可能な粘着性付与剤が記載されている。1つ以上の粘着性付与剤は、熱可塑性粉末コーティング組成物の全重量に基づく重量パーセントで、0.1〜20重量%、好ましくは5〜15重量%の量で組成物に存在してよい。
【0044】
フィラーおよび/または増量剤の例としては、限定されないが、二酸化ケイ素、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、それらの二重炭酸塩(double carbonates)が挙げられる。
【0045】
変性剤および他の添加剤としては、限定されないが、可塑剤、衝撃変性剤、粘度安定剤および加水分解安定剤を含む安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、くもり防止剤、帯電防止剤、難燃剤、ならびに例えば、抗ブロック剤、離型剤、フロー制御剤、艶消し剤および触媒などの粉末コーティング技術で既知の加工助剤が挙げられる。
【0046】
当該技術で既知のいずれかの溶融混合を使用することによって、組成物の成分を組み合わせることにより、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物を最初にペレットとして、および/または粒状体として調製することができる。例えば、組成物のポリマー成分および非ポリマー成分を、1工程の添加によって一度に、または段階的な様式で、例えば、一軸または二軸押出機、ブレンダー、一軸または二軸ニーダー、Haakeミキサー、Brabenderミキサー、Banburyミキサーまたはロールミキサーなどの溶融ミキサーに添加し、次いで溶融混合してよい。段階的な様式で組成物の成分を添加する場合、組成物の一部の成分を最初に添加し、溶融混合し、その後、組成物の残りの成分を添加し、十分に混合された組成物が得られるまでさらに溶融混合する。押出成形法は当業者に周知である。
【0047】
次いで、微粉化の技術で既知の方法を使用して、そのようにして得られた配合されたペレットおよび/または粒状体を微粉末の大きさにする。これは、押出成形された材料は粒状化され、次いで、室温または室温より低い温度で、所望の粒度に分類できる微粉末まで粉砕されることを意味する。例えば、配合されたペレットを、低温、好ましくは−120〜−200℃、より好ましくは−140〜−180℃で冷却する。好ましくは、冷却媒体として液体窒素を使用する低温粉砕を使用する。次いで、砕けやすく、特別に冷却された顆粒を、例えば、当業者に既知の衝撃または摩擦製粉プロセスを使用して顆粒から微粒子へと減少させるグラインダーに供給する。製粉される配合されたペレットの延性および目標とする最終的な粒径分布の機能において、製粉技術は当業者によって選択される。所望の大きさを得るために、大きい粒子と微細な大きさの粒子を除去するために、粉砕工程をふるい分け工程と関連される。好ましくは、本発明で使用される熱可塑性粉末コーティング組成物は、800μm以下、より好ましくは600μm以下、より好ましくは125〜400μmの粒径(D90値)を有する。D90値は、粒径分析がレーザー回折方法によって実行され、ISO3310−1で明かにされる基準を満たす場合、90重量%の粒子がその値未満となる粒径に相当する。測定をMalvern Mastersizer 2000で行なった。
【0048】
さらに、本発明による組成物の特定成分、例えば、添加剤、顔料、増量剤は、押出成形をおよび粉砕後、当業者に既知の「乾燥ブレンド」プロセスによって、仕上げ粉末コーティング粒子によって加工されてもよい。
【0049】
さらに、本発明による組成物の特定成分、例えば、添加剤、顔料、増量剤は、押出成形をおよび粉砕後、衝突融合を使用する「接着」プロセスによって、仕上げ粉末コーティング粒子によって加工されてもよい。この目的のために、特定成分を粉末コーティング粒子と混合してよい。ブレンドの間、成分がそれらに接着し、そして粉末コーティング粒子の表面と均一に結合するように、個々の粉末コーティング粒子はそれらの表面を軟化するように処理される。粉末粒子表面の軟化は、ある温度、例えば、50〜60℃の範囲の粉末コーティング組成物のガラス転移温度Tgまで粒子を熱処理することによって実行されてよい。混合物を冷却後、得られた粒子の所望の粒径をふるい分けプロセスによって加工する。
【0050】
熱可塑性複合材は、熱可塑性繊維材料から製造可能であるが、しかし、熱可塑性材料と強化用繊維またはフィラメントとの混合物からも製造可能である。強化用繊維またはフィラメントは、ガラス、金属、アラミド、炭素、グラファイト、ホウ素、樹脂、エポキシ、ポリアミド、ポリオレフィン、シリコーン、ポリウレタンおよびそれらの混合物の中から選択されてよく、ガラスが好ましい。熱可塑性材料は、例えば、ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミドおよびそれらの混合物などのポリオレフィンの中から選択されてよい。例えば、熱可塑性複合材は、60:40〜10:90の比率の熱可塑性材料と強化用繊維またはフィラメントとの混合物から製造可能である。
【0051】
好ましくは、本発明で使用される熱可塑性複合材は、混ぜ合わせられた熱可塑性繊維とガラス繊維とから形成されたフィラメントから製造された織物である。均質な混ぜ合わせられたガラス繊維と熱可塑性繊維とから製造された熱可塑性複合材は、連続的なガラス繊維強化材料の優れた機械的特性と熱可塑性材料の加工の容易さとを併せ持つ。より好ましくは、本発明で使用される熱可塑性複合材は、混ぜ合わせられたポリオレフィン繊維とガラス繊維とから形成されたフィラメントから製造された織物であり、なおより好ましくは、混ぜ合わせられたポリプロピレン繊維とガラス繊維とから形成されたフィラメントから製造される。好ましくは、使用されるガラス繊維はE−ガラス繊維である。好ましくは、熱可塑性複合材は、60:40〜10:90の範囲の比率の熱可塑性材料とガラス繊維との混合物から製造される。好ましくは、熱可塑性材料はポリプロピレンである。
【0052】
本発明で使用される熱可塑性複合材の適切な例は、Owens Corning−VetrotexからTwintex(登録商標)の商標で市販品として入手可能である。
【0053】
本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物は、散布、振りかけ、噴霧、溶射もしくはフレーム溶射、または流動床コーティング法によって熱可塑性複合材上へ適用されてよい。これらの全ては当業者に既知である。
【0054】
熱可塑性複合材上に本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物を適用した後、熱可塑性粉末コーティング組成物を溶解させ、熱可塑性複合材中を流させ、それによって、含浸させ、コーティングさせるように、系に熱と圧力を加える。熱可塑性複合材の種類次第で、80〜220℃の温度範囲の粉末コーティング組成物の融解範囲より高い温度で加熱を達成する。熱可塑性複合材上でコーティングを仕上げるため、そしてコーティングを硬化させる(固める、架橋する)ため、そしてコーティングの表面外観を改善するために、当該技術で知られているような気体もしくは空気加熱、および/またはIRもしくはNIRで加熱工程を実行してもよい。コーティングプロセスの例としては、限定されないが、真空成形(インモールド(in−mold)コーティングとも呼ばれる)、ラミネーション、熱形成スタンピング、またはダイヤフラム形成が挙げられる。インモールドコーティングおよびラミネーションプロセスが好ましい。ラミネーションの間、熱可塑性粉末コーティング組成物を熱可塑性複合材に適用した後、加熱ゾーンの対向している加圧ローラーに粉末状熱可塑性複合材を通過させることによって、熱および圧力を達成する。そのような技術は、フラットベッドラミネーションとしても知られている。インモールドコーティングの間、型表面を示す型を使用する。この型表面は、製造される最終物品の所望の構成を完全にする構成を確定する。熱可塑性粉末コーティング組成物を型表面上へ適用し、熱可塑性複合材を粉末上に置き、そして粉末状熱可塑性複合材を加熱し、そして真空によって型の形状に引き抜く(吸い上げる)。
【0055】
本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物は、上記の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材と、少なくとも1つのさらなる層とを含む多層構造の第1のコートとして、またはコーティング層として熱可塑性複合材に適用されてもよい。好ましくは、熱可塑性粉末コーティング組成物は、熱可塑性複合材のすぐ上の第1のコーティング層として適用される。熱可塑性複合材のすぐ上の第1のコーティング層として使用される場合、熱可塑性粉末コーティング組成物は、好ましくは1つ以上のイオノマー樹脂を含む。
【0056】
本発明のもう1つの実施形態に従って、情報を提供するため、またはコーティングされた熱可塑性複合材の満足な外観を提供するために、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材はプリントされていてもよい。プリント構造は、製品に関する情報を提供するため、そして/または構造の満足な外観を提供するために有用であり得る。「プリントされた」というのは、「記号、デザイン、字体またはパターン」が加えられたことを意味する。記号、デザイン、字体またはパターンは着色されていても、無色であってもよい。したがって、プリントとは、目にみえる模様、さらにはエンボス、処理なども含まれる。インクとプリントの選択は、経済的な要因、構造によるインクの相溶性、プリントされるデザインの詳細のレベルなどの確立した基準によって当業者によりなされ得る。
【0057】
屋外用途のために、熱可塑性複合材はさらに、例えば、温度、湿気、UVおよび他の種類の放射線への暴露などの種々の気候条件に耐性がなければならない。そのような条件で、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材と、少なくとも1つのさらなるコーティング層とを含む多層構造のコーティング層として、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物を熱可塑性複合材表面に適用することが好ましい。少なくとも1つのさらなるコーティング層に使用可能な材料の例としては、例えば、上記の官能性エチレンコポリマーおよび/またはイオノマー樹脂と同じであり得る1つ以上のエチレンコポリマーおよび/またはイオノマー樹脂が挙げられる。好ましくは、少なくとも1つのさらなるコーティング層は、1つ以上のイオノマー樹脂を含む層である。
【0058】
好ましくは、そして数年の外部暴露に対する十分な気候保護を提供する目的で、少なくとも1つのさらなるコーティング層は透明な被膜層である。しかしながら、透明な被膜層は、透明であるか、または1つ以上のイオノマーと同じ屈折率を有し、層が透明に見えるようにさせる顔料を含有してもよい。屈折率という用語は当業者に既知である。透明な被膜層は、限定されないが、UV吸収体および安定剤、酸化防止剤および熱安定剤、フィラー、抗スリップ剤、可塑剤、核形成剤などを含む変性剤および他の成分をさらに含んでもよい。これらの変性剤および他の成分は、少なくとも1つのさらなる層の全重量に基づく重量パーセントで、0.5〜3.0重量%、好ましくは1.0〜2.0重量%の量で存在してよい。
【0059】
少なくとも1つのさらなる透明な被膜層を含む、コーティングされた熱可塑性複合材は、上記の1つ以上の官能性ポリオレフィンを含む熱可塑性粉末コーティング組成物があらかじめコーティングされた熱可塑性複合材上へ少なくとも1つのさらなるコーティング層を粉末コーティング、ラミネーションまたは押出成形コーティングすることを含み得る単一プロセスによって製造可能である。
【0060】
好ましくは、少なくとも1つのさらなる層の厚さは100〜600μm、より好ましくは125〜350μmである。
【0061】
本発明のもう1つの実施形態に従って、少なくとも1つのさらなる層は、上記の1つ以上のイオノマーを含む透明な層である第1の層と、少なくとも1つの第2の層とを含む多層構造である。ここでは、第1の透明な層は環境に面し、そして少なくとも1つの第2の層は、コーティングされた熱可塑性複合材に隣接している。情報を提供するため、またはコーティングされた熱可塑性複合材の満足な外観を提供するために、少なくとも1つの第2の層は有色であってよく、そして/もしくは着色されていてもよく、またはプリントされてもよい。そのような少なくとも1つの第2の層は、ポリマー膜、紙、厚紙、織布、不織布およびそれらの組み合わせであり得る。好ましくは有色であり、そして/もしくは着色され、またはプリントされた少なくとも1つの第2の層は、1つ以上のイオノマーを含む膜である。
【0062】
もう1つの態様において、本発明は、上記の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材を含むか、またはそれから製造された物品と、物品の製造方法に関する。そのような物品は、当該技術で一般に知られているいずれかのプロセスによって、熱可塑性樹脂粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材を形成することによって製造されてよい。物品の例は、損傷、ひっかき傷および摩耗耐性、種々の気候条件に対する永続的な耐性および良好な表面外観が必要であるいずれかの用途のために使用されるいずれかの物品である。物品は、限定されないが、車両用途、構造物物品または広告物品に用いられる物品を含む様々な中間体および最終形態物品を形成するために使用されてもよい。車両用途の例としては、限定されないが、レクリエーション用車両(例えば、トレーラー、移動住宅自動車など)、トラック、芝生および園芸用車両および自動車、ならびに鉄道、船舶および航空/航空宇宙車両、貨物輸送機を含む車両用のモーターパネル、サイドウォールパネル、ならびにコンテナパネルおよび基板などが挙げられる。構造物物品の例としては、限定されないが、ビルディングパネルおよび視覚的ディスプレーが挙げられる。広告物品の例としては、限定されないが、旗竿が挙げられる。
【0063】
車両の用途のために、特にレクリエーション用車両を含む車両のためのサイドウォールパネルとして使用される場合、本発明によるコーティングされた熱可塑性複合材は、コア層をさらに含んでもよい。最終用途次第で、コア層は、例えば、機械的特性、振動および/または音の減少または断熱などの製品の性能を改善し得るいずれの材料でも製造可能である。材料の例としては、限定されないが、例えば、膨張ポリエチレン、膨張ポリプロピレンおよび膨張ポリスチレンなどの膨張熱可塑性材料、例えば、ポリウレタンフォームおよびポリイソシアヌレートフォーム膨張熱硬化性樹脂、または繊維材料が挙げられる。膨張熱可塑性材料が好ましく、膨張ポリスチレンが特に好ましい。上記の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた熱可塑性複合材と少なくとも1つのさらなる層とを含む多層構造のコーティング層として、熱可塑性粉末コーティング組成物が熱可塑性複合材表面に適用される場合、コア層は熱可塑性粉末がコーティングされた熱可塑性複合材に隣接し、そして少なくとも1つのさらなる層は環境に直面している。コア層と、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた少なくとも1つの熱可塑性複合材および/または少なくとも1つの多層構造との間の接着力が不十分である場合、従来の接着剤の層が最終構造の種々の部品間で適用されてもよい。
【0064】
コア層と、本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた少なくとも1つの熱可塑性複合材とを含む構造の例としては、限定されないが、
− コア層/熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第1の熱可塑性複合材、
−熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第1の熱可塑性複合材/コア層/熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第2の熱可塑性複合材、
− コア層/熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第1の熱可塑性複合材/少なくとも1つのさらなる層、
− 熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第1の熱可塑性複合材/コア層/熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第2の熱可塑性複合材/少なくとも1つのさらなる層、あるいは
−少なくとも1つのさらなる層/熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第1の熱可塑性複合材/コア層/熱可塑性粉末コーティング組成物でコーティングされた第2の熱可塑性複合材/少なくとも1つのさらなる層
が挙げられる。
【0065】
到達水準の熱硬化性物質でコーティングされた熱可塑性複合材と比較すると、本発明のコーティングされた熱可塑性複合材は、完全に、そして容易に再利用可能であり、したがって、それらの使用は、熱硬化性物質に基づくコーティングの使用に対して、環境にやさしい代替物を構成する。全構造の再利用可能性に加えて、熱可塑性粉末コーティング組成物は、容易な修理またはタッチアップのために容易に再溶解可能である。
【0066】
到達水準のコーティングされた熱可塑性複合材と比較すると、本発明による熱可塑性粉末状コーティング熱可塑性複合材は、粉末コーティング材料と熱可塑性複合材との間の共力な内部固着(inter−locking)と化学結合のため、優れた性能を示し、したがって、強力で永続的な接着力に関与する。それらの性能特性、有機揮発性物質の放出がないこと、それらの再利用可能性のため、本発明による熱可塑性粉末状コーティング熱可塑性複合材は、例えば、なめらかで光沢がある表面などの高い美的表面品質、高いひっかき傷および摩耗耐性ならびに耐候性が非常に望ましいいずれの用途に関して、素晴らしく環境にやさしい解決策である。
【0067】
本発明を以下の実施例でさらに定義する。これらの実施例が単に例証として記載されていることは理解されるべきである。
【実施例】
【0068】
実施例1
本発明の熱可塑性粉末コーティング組成物
【0069】
【表1】

【0070】
熱可塑性粉末コーティング組成物の成分を乾燥混合によって一緒に混合し、次いで140℃〜190℃の温度で押出機を使用して溶融混合することによって混合した。冷却後、配合されたペレットを微粉化によって粉砕し、そして、レーザー回折方法で測定した時に400μm未満のD90値を有し、そしてISO 3310−1(Malvern Mastersizer 2000)に示される標準を満たす粒子にふるい分けした。
【0071】
実施例2
熱可塑性粉末コーティングプロセス
Owens Corning−Vetrotex,Franceにより供給されるポリプロピレン繊維対ガラス繊維比が1:3のポリプロピレン繊維およびガラス繊維のフィラメントワインディングから製造された布からなる熱可塑性複合材上に、実施例1の熱可塑性粉末コーティング組成物を散布した。得られた粉末状熱可塑性複合材はフラットベッドラミネーション機に入り、そこで1対の圧力ローラーが180℃〜220℃の温度および2バール〜5バールの圧力で線圧を加え、熱可塑性複合材上に熱可塑性粉末コーティング組成物を包埋させた。
【0072】
実施例3:
機械的性能測定
【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)官能性ポリエチレン、官能性ポリプロピレン、エチレン酸コポリマー、イオノマー樹脂、官能性エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーおよび官能性エチレンアルキル(メタ)アクリレートコポリマーからなる群から選択される1つ以上の官能性ポリオレフィンを含む熱可塑性粉末コーティング組成物を提供する工程と、
ii)前記熱可塑性粉末コーティング組成物を熱可塑性複合材に適用し、前記熱可塑性複合材上で粉末コーティングを形成する工程と
を含む熱可塑性複合材をコーティングする方法。
【請求項2】
前記熱可塑性複合材が、60:40〜10:90の比率の熱可塑性材料とガラス繊維材料の混合物から製造される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱可塑性材料がポリプロピレンである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記熱可塑性粉末コーティング組成物の前記1つ以上の官能性ポリオレフィンが有色である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末コーティング組成物の前記官能性ポリオレフィンが、2160gの重量を使用する190℃でのASTM法第D1238号に従い、300グラム/10分未満のメルトフローインデックスを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末コーティング組成物が、Malvern Mastersizer 2000で実行されたISO3310−1に従い、800μm以下の粒径(D90値)を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記粉末コーティング組成物の前記官能性ポリオレフィンが1つ以上のイオノマー樹脂を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上のエチレンコポリマーおよび/またはイオノマー樹脂を含む少なくとも1つの追加のコーティング層を添加する工程をさらに含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのさらなるコーティング層が透明コート層である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によってコーティングされた熱可塑性複合材を含む物品。
【請求項11】
車両用途、構造物物品または広告物品に用いられる物品である請求項10に記載の物品。

【公表番号】特表2012−508089(P2012−508089A)
【公表日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521200(P2011−521200)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/051472
【国際公開番号】WO2010/014482
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】