熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法
【課題】 熱型光検出器における熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立すること。
【解決手段】 熱型光検出器は、基板に支持されている支持部材50を含み、支持部材50は、熱型光検出素子を搭載する搭載部51と、一端が搭載部に連結され、他端が基板に支持された少なくとも一本のアーム部52と、を有し、搭載部および少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム52a、の少なくとも一方は、基板側に設けられる、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材41と、熱型光検出素子側において第1部材に対向して設けられ、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第2部材45と、第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、その横幅が第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材43と、を有する。
【解決手段】 熱型光検出器は、基板に支持されている支持部材50を含み、支持部材50は、熱型光検出素子を搭載する搭載部51と、一端が搭載部に連結され、他端が基板に支持された少なくとも一本のアーム部52と、を有し、搭載部および少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム52a、の少なくとも一方は、基板側に設けられる、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材41と、熱型光検出素子側において第1部材に対向して設けられ、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第2部材45と、第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、その横幅が第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材43と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
熱型光検出器としては、熱電対型素子(サーモパイル)、焦電型素子あるいはボロメーター等がある。熱電対型素子(サーモパイル)は、光吸収に伴う光吸収膜の温度上昇を、熱伝対によって直接的に検出する。
【0003】
焦電型素子は、光吸収に伴う光吸収膜の温度上昇を、強磁性体の焦電効果(パイロ電子効果)を利用して検出する。例えば、強誘電体(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)やタンタル酸リチウム等の誘電率の大きな結晶体は、加熱したり冷却したりすると電気分極量の変化を生じる。すなわち、温度変化があると自発分極量に変化が生じて表面電荷量に変化が生じ、温度変化がないと表面電荷は中和する。分極状態が変化するのに伴い、強誘電体結晶の両端に接続される各電極間に表面電荷量の変化により生じた焦電流が流れる。焦電流(または分極量変化に伴う誘電率、分極量)を検出することによって、照射された光(赤外線等)の光量を検出することができる。
【0004】
また、ボロメーターは、光吸収に伴う温度上昇を、例えば感熱抵抗素子の抵抗値の変化として検出する。
【0005】
熱型光検出素子は冷却装置をもたない構造であるのが通常である。よって、素子を気密パッケージに収容する等して、素子を減圧環境下に置き、さらに基板や周辺膜と熱分離して、受光した光(赤外線等)によって生じる熱が周囲へ極力拡散しない構造とする必要がある。熱の基板への散逸を防いで熱型光検出素子の検出特性の低下を抑制するためには、例えば、基板と熱型光検出素子との間に、熱分離用の空洞部を設ける構造を採用することが有効である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1には、熱分離用の空洞部を有する熱型赤外線アレイセンサーが示され、特許文献2には、熱分離用の空洞部を有する焦電型赤外線検出素子が示されている。
【0006】
また、素子を支持する支持部材におけるアーム部の断面形状を、支持強度の向上のためにU字状等にする例は、例えば特許文献3および特許文献4に記載されている。特許文献3では、アームの断面形状は「U字,L字,T字」に限定されている。また、特許文献4では、アーム断面形状は「U字,L字」に限定されている。
【0007】
また、熱型光検出素子の一つである赤外線検出素子は、小規模素子分野では、例えば人感センサーに応用され、大規模アレイ分野では、例えば赤外線カメラ装置に応用されている。かつては軍事技術として開発されたが、近年は民生品へ応用が進みはじめており、今後赤外線検出による様々な応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−205944号公報
【特許文献2】特開2002−214038号公報
【特許文献3】特開2006−194894号公報
【特許文献4】特開平8−285680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
熱の基板への散逸を防いで熱型光検出素子の検出特性の低下を抑制するためには、素子を支持する支持部材におけるアーム部の熱容量を小さくすることが有効である。例えば、アーム部の断面積を小さくすると、支持部材の熱容量は小さくなる。しかし単に、アーム部の断面積を小さくすると(例えば、アーム部を構成する材料層の厚みを単に薄くすると)、アーム部の機械強度が確保できない。
【0010】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、熱型光検出器における支持部材の熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の熱型光検出器の一態様では、基板と、光吸収膜を含む熱型光検出素子と、前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持された少なくとも一本のアーム部と、を有し、前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、前記基板側に設けられる、横断面の形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、かつ横断面の形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、前記横断面の形状の横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材とを有する。
【0012】
支持部材を構成するアーム部および載置部(素子載置部)の少なくとも一方は、第1部材、第2部材および第3部材で構成されるが、第3部材の体積が削減されていることから、熱容量および熱コンダクタンスを小さくすることができる。すなわち、互いに対向する第1部材および第2部材と、第1部材と第2部材とを連結する第3部材とによって、支持部材の少なくとも一部が構成される。第3部材の横断面の形状の横幅(第2幅)は、第1部材および第2部材の横断面の形状の横幅(共に第1幅)よりも小さく設定される。第1幅と第2幅との差分に対応した空間の容積分だけ、第3部材の体積が減じられ、よって支持部材の熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0013】
(2)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記第1部材と、前記第2部材と、一つの前記第3部材とで構成される立体構造の横断面は、H型断面である。
【0014】
第1部材と、第2部材と、一つの第3部材とで構成される立体構造は、例えば、H型構造(第1部材と第2部材とを、両者に直交する第3部材で連結する構造)とすることができる。これによって、支持部材に要求される力学的強度を確保することができる。すなわち、建築材の組み立てに応用されるH型断面(あるいはH字型断面)をもつ立体構造を、支持部材の構造として採用することによって、支持部材の縦横方向の機械的強度を、十分にかつ無理なく確保することができる。
【0015】
(3)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記少なくとも一本のアーム部は、一端が前記搭載部の一端に連結され、他端が前記基板に支持される前記第1アームと、一端が前記搭載部の他端に連結され、他端が前記基板に支持され、延在方向が前記第1アームと同じ方向である第2アームと、を有しており、かつ、前記第1アーム、前記第2アームならびに前記搭載部の各々は、前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材によって構成されており、前記搭載部における前記第3部材は、前記第1アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第1アームの延在方向である第1方向に延出する第1部分と、前記第2アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第2アームの延在方向である前記第1方向に延出する第2部分と、前記第1部分および前記第2部分の各々に接続されると共に、前記第1方向と垂直な方向である第2方向に延出する第3部分と、を有する。
【0016】
載置部は熱型光検出素子を搭載する部材であることから、平面視の面積は、アーム部よりも広い。そこで、本態様では、搭載部における第3部材の平面視における形状を、十字形状を有する形状とする。この十字形状は、複数箇所、設けることができる。これによって、搭載部における幅広の第2部材(素子側の部材)を安定に支持することができる。
【0017】
つまり、搭載部における第3部材は、例えば平面視で、第1アームに連接し、かつ第1アームの延在方向である第1方向に延出する第1部分と、第2アームに連接し、かつ第2アームの延在方向である第1方向に延出する第2部分と、第1部分および第2部分に接続され、かつ第1方向と垂直な方向である第2方向に延出する第3部分と、を有している。第1部分と第2部分は、十字の形状の横棒の部分に相当し、第3部分は十字形状の縦棒の部分に相当する。
【0018】
これによって、体積が減じられた第3部材であっても、搭載部における幅広の第2部材を、安定に支持することができる。
【0019】
(4)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、前記少なくとも一本の補助支柱の突出全長は、前記基板と前記支持部材との間の最大距離よりも小さく設定されている。
【0020】
本態様では、上記の、支持部材自体の熱容量を低減する構造に加えて、製造工程における支持部材の撓み等を低減して、スティッキング等の問題を抑制するために、支持支柱を利用する。熱容量を低減するために支持部材の厚みを薄くすると、製造工程において、例えば、熱熱分離用の空洞の形成のためにウエットエッチングを使用した場合には、スティッキング(基板と支持部材との貼り付き(固着))が生じ易くなる。スティッキングは、例えば、ウエットエッチング後の乾燥工程において、液体の表面張力によって生じる。
【0021】
スティッキングを抑制するためには、補助支柱を設けて、製造工程において支持部材を安定に支えるのが好ましいが、単純に補助支柱を設けると、熱伝達の経路となることから、熱容量や熱コンダクタンスが増えてしまう。
【0022】
そこで、製造時には、補助支柱で支持部材を安定に支え、問題となる工程が終了すると、補助支柱を支持部材から切り離して、熱が逃げるのを防止するのが好ましい。例えば、補助支柱の全突出長をL0とし、基板と支持部材間の最大距離をL1(L1>L0)とし、L1とL0の差分に相当する部分には犠牲層を形成しておく。そして、問題となる製造工程が終了した後に、犠牲層を除去すれば、補助支柱と支持部材とを分離することができる。
【0023】
(5)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱型光検出素子は、赤外線検出素子である。
【0024】
本態様によれば、熱容量が小さく(つまり熱感応性が高く)、熱コンダクタンス小さい赤外線検出素子を得ることができる。また、歩留まりよく(つまり、製造工程において、スティッキング等による不良が生じにくい)赤外線検出器を製造することもできる。
【0025】
(6)本発明の熱型光検出装置の一態様では、上記いずれか記載の熱型光検出器が複数、2次元配置されている。
【0026】
これによって、複数の熱型光検出器(熱型光検出素子)が2次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
【0027】
(7)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかの熱型光検出器を含む。
【0028】
上記いずれかの熱型光検出器は、熱容量が小さいために熱に対する感応性が高く、かつ製造時の歩留まりが高いことから、製造コストの低減も可能である。この熱型光検出器を有する電子機器も、同様の効果を享受することができる。例えば、1セル分または複数セルの熱型光検出器をセンサーとして用いることで、物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することができる。
【0029】
(8)本発明の電子機器の一態様は、上記の熱型光検出装置を含む。
【0030】
上記の熱型光検出装置は、熱容量が小さいために熱に対する感応性が高く、かつ製造時の歩留まりが高いことから、製造コストの低減も可能である。この熱型光検出装置を有する電子機器も、同様の効果を享受することができる。電子機器の好適な例としては、例えば、光(温度)分布画像を出力するサーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラ等があげられる。
【0031】
(9)本発明の熱型光検出器の製造方法の一態様は、基板と、光吸収膜を含む熱型光検出素子と、前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持された少なくとも一本のアーム部と、を有し、前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、前記基板側に設けられる、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、横断面形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、その横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材と、を有する熱型光検出器の製造方法であって、第1犠牲層を、前記基板と前記支持部材との間の空洞部となるべき空間を埋めるように前記基板上に形成する工程と、前記第1犠牲層上に、前記第1部材と、前記第2部材と、前記第3部材と、前記第3部材に隣接する、前記第1幅と前記第2幅との差に対応する空間を埋めるように設けられる、前記第1犠牲層の構成材料とは異なる材料で構成される第2犠牲層と、を有する前記支持部材を形成する工程と、前記支持部材上に、前記熱型光検出素子を形成する工程と、前記第1犠牲層を除去する工程と、前記第2犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0032】
本態様では、基板と支持部材との間の空洞部の形成のために第1犠牲層を利用し、また、体積が減じられた第3部材(支持部材の構成要素の一つ)を形成するために第2犠牲層を使用する。第1犠牲層と第2犠牲層は、異なる材料で構成される。
【0033】
第1犠牲層は、空洞部となるべき空間を埋めるように基板上に形成される。第2犠牲層は、第3部材に隣接する、第1幅と第2幅との差に対応する空間を埋めるように設けられる。第1犠牲層を除去することによって、熱分離用の空洞部が形成される。また、第2犠牲層を除去することによって、体積が減じられた第3部材が得られる。
【0034】
(10)本発明の熱型光検出器の製造方法の他の態様では、前記熱型光検出器は、前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、前記少なくとも一本の補助支柱が第1補助支柱を含むとした場合に、前記第1補助支柱としての補助支柱層を形成する工程と、前記第1補助支柱層に連接し、前記補助支柱層および前記第1犠牲層の各々の構成材料とは異なる材料からなり、前記第2犠牲層と同じ材料からなり、かつ、前記第1補助支柱層の突出長と前記第1犠牲層の膜厚に相当する突出長とを合計した合計突出長が、前記基板と前記支持部材との間の前記最大距離となるように、前記膜厚が設定された第3犠牲層を形成する工程と、を含む。
【0035】
本態様は、補助支柱を形成する工程と、補助支柱を支持部材から切り離す工程と、をさらに含む。補助支柱と支持部材との間の空隙の形成のために第3犠牲層が設けられる。第3犠牲層の材料としては、第2犠牲層の材料と同じものを用いることができる。
【0036】
つまり、補助支柱に連接して第3犠牲層(第3犠牲層が柱状にパターニングされる場合には犠牲支柱あるいは犠牲スペーサーということができる)を形成しておく。第2犠牲層上に、支持部材を形成すれば、補助支柱および第3犠牲層(犠牲支柱)によって、支持部材を安定に支持することができ、これによって、実質的に、支持部材の機械的強度が向上したことになる。
【0037】
例えば、支持部材が形成された後(例えば、熱型光検出素子の少なくとも一部が形成された後)に、第1犠牲層を選択的に除去し、これによって、熱分離用の空洞部を形成する。このとき、支持部材は、補助支柱および犠牲層(犠牲支柱)によって、基板(センサー基部)上に支持されていることから、変位や変形が抑制され、ウエットエッチングによって第1犠牲層を除去した場合であっても、スティッキング(液体の表面張力によって支持部材の一部と基板とが固着する現象)の発生が抑制される。
【0038】
この後、第3犠牲層を除去すれば、補助支柱と支持部材との間に空隙が形成される。熱型光検出素子が、例えば気密封止パッケージの減圧環境におかれることによって、空隙による熱分離機能が高まる。空隙の形成によって、補助支柱を経由する放熱経路が遮断される。よって、補助支柱の存在は、支持部材の熱容量や熱コンダクタンスには影響を与えない。
【0039】
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、熱型光検出器における支持部材の熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(A)〜図1(C)は、熱型光検出器における支持部材(メンブレン)の平面形状および断面構造について説明するための図
【図2】図2(A)〜図2(C)は、熱型光検出器の製造方法の一例の概要を説明するための図
【図3】図3(A)〜図3(C)は、熱型光検出器の製造方法の他の例の概要を説明するための図
【図4】図4(A)〜図4(I)は、熱型光検出器の製造方法の具体例の一例を説明するための図
【図5】支持部材の横断面形状の変形例を示す図
【図6】図6(A)〜図6(E)は、補助支柱を有する熱型光検出器の一例(ここでは、焦電型赤外線検出器とする)の構成を説明するための図
【図7】図7(A)〜図7(C)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の一例を示す図
【図8】図8(A)〜図8(D)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図9】図9(A)〜図9(C)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図10】図10(A)および図10(B)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図11】図11(A)および図11(B)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図12】熱型光検出器の他の例(基板上にトランジスター等の回路素子が形成された例)を示す図
【図13】熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図
【図14】図14(A)および図14(B)は、補助支柱を有するボロメーターの例を示す図
【図15】熱型光検出器や熱型光検出装置を含む電子機器の構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0042】
(第1の実施形態)
まず、支持部材の平面形状ならびに横断面の立体構造について説明する。
【0043】
(支持部材の平面形状ならびに横断面の立体構造)
図1(A)〜図1(C)は、熱型光検出器における支持部材(メンブレン)の平面形状および断面構造について説明するための図である。図1(A)は、熱型光検出器における支持部材(メンブレン)の平面視における形状(一部、透視図)を示す図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A線に沿う断面図(第1アームの横断面図)であり、図1(C)は、図1(C)のB−B線に沿う断面図(搭載部の横断面図)である。
【0044】
支持部材(メンブレン)50は、例えば複数の薄膜を重ね合わせて形成され、横断面の形状は立体構造を有する。この支持部材50は、熱型光検出素子(図1では不図示)を、熱分離用の空洞部(図1では不図示)上で支持する。
【0045】
図1(A)に示すように、支持部材(メンブレン)50は、熱型光検出素子が搭載される搭載部51と、一端が搭載部51に連結され、他端が基板に支持された少なくとも一本のアーム部52(52a,52b)と、を有する。図1(A)では、アーム部52を支持する基板は不図示である。なお、基板はセンサーの土台となる基部であり、広義に解釈することができる。つまり、狭義の基板上に形成される各種の膜や層(層間絶縁膜、層間絶縁層、導体膜、導体層等)も、基板(広義の基板)の一部と考えることができる。
【0046】
少なくとも一本のアーム部52は、一端が搭載部51の一端に連結され、他端が基板の一方の側(図中、左側)に支持される第1アーム52aと、一端が搭載部51の他端に連結され、他端が基板の他方の側(図中、右側)に支持され、延在方向が第1アームと同じ方向である第2アーム52bと、を有している。
【0047】
図1(B)および図1(C)に示されるように、搭載部51、第1アーム52aおよび第2アーム52bの少なくとも一方(図1の例では、搭載部51、第1アーム52aおよび第2アーム52bの双方)は、その横断面の形状がH型(H型断面)である。つまり、第1アーム52aおよび第2アーム52bの少なくとも一方の、横断面の立体構造は、H型構造(H字型構造)である。
【0048】
このH型構造は、互いに対向して設けられる第1部材41および第2部材45と、第1部材と第2部材とを連結する第3部材43と、を有している。第1部材41は基板側(すなわち下側)に設けられ、第2部材45は熱型光検出素子側(すなわち上側)に設けられる。また、第3部材43は、第2部材45を支える部材とみることもできる。第3部材43は、第2部材45を中央で支えている。第3部材43の高さはHである。
【0049】
第1部材41、第2部材45および第3部材43の構成材料は特に問わないが、例えばいずれの部材もシリコン窒化膜(Si3N4膜)で構成することができる。
【0050】
第1部材41は、第1方向DR1に沿う軸(例えばX軸)と第2方向DR2に沿う軸(例えばY軸)によって規定されるXY平面に平行に設けられている。第2部材45も、XY平面に平行に存在するが、第1部材41と第2部材45とは距離Hだけ離間している。
【0051】
また、図1(B)に示すように、第1アーム52aの横断面の立体構造に関して、第1部材41の横断面の形状の横幅はW1であり、同じく、第2部材45の横断面の形状の横幅はW1である。一方、第3部材43の横断面の横幅はW2(W2<W1)である。第3部材43の両側には空隙Gが形成されており、その空隙Gの空間の容積の分だけ、第3部材43の体積が減じられている。第3部材43の両側に設けられた空隙Gの各々は、第1凹部900a,第2凹部900bとみることができる。W1を第1幅とし、W2を第2幅とすると、第1幅W1>第2幅W2が成立する。
【0052】
また、図1(C)に示されるように、搭載部51の横断面の立体構造に関して、第1部材41の横断面の形状の横幅はW3であり、同じく、第2部材45の横断面の形状の横幅はW3である。一方、一本の第3部材43の横断面の横幅はW2(W2<W3)である。
【0053】
第3部材43は、搭載部51においては、図1(A)において点線で示されるように、平面視で、魚の骨のような形状を有している。これに伴い、搭載部51の横断面の立体構造に関して、図1(C)に示されるように、複数の空隙Gが形成されている。その空隙Gの空間の容積の分だけ、第3部材43の体積が減じられている。W3を第1幅とし、W2を第2幅とすると、第1幅W3>第2幅W2が成立する。図1(C)においては、3カ所(点線で囲まれて示されるZ1〜Z3の各々)において、H型構造が採用されている。
【0054】
このように、第1幅(W1またはW3)と第2幅(W2)との差分に対応した空間(空隙G)の容積分だけ、第3部材43の体積が減じられ、よって支持部材50の全体の熱容量が低減され、また、断面積が低下して熱が逃げにくくなることから、熱コンダクタンスも低減される。
【0055】
一方、立体構造として、例えば、H型構造(第1部材41と第2部材45とを、両者に直交する第3部材43で連結する構造)を採用することによって、立体構造の、必要な力学的強度を確保することができる。すなわち、建築材の組み立てに応用されるH型構造(あるいはH字型構造)を採用することによって、支持部材50の縦横方向の機械的強度を、無理なく確保することができる。
【0056】
H型構造によれば、例えば、支持部材50に上(素子側)からの加重が加わった場合でも、第3部材43がその加重を受け止めることから、縦方向の機械的強度は高い。H型構造は、左右のバランスに優れていることから、支持部材50に、横方向(アーム部52の延在方向)の加重が加わった場合でも各部の変位が抑制され、横方向にも安定している。
【0057】
また、図1(A)に示されるように、搭載部51は、熱型光検出素子を搭載する部材であることから、平面視の面積は、アーム部よりも広い。搭載部51を安定的に支持するために、図1(A)の例では、搭載部51における第3部材43の平面視における形状を、十字形状を有する形状とし、この十字形状(十字形状は複数箇所、設けることができる)によって、搭載部51における幅広の第2部材45を安定に支持している。
【0058】
図1(A)に示されるように、搭載部51における第3部材43は、平面視で魚の骨のような形状を有し、3カ所において十字形状が用いられている。例えば、図1(A)において、第3部材43は、一点鎖線で囲んで示される第1部分43aおよび第2部分43bと、二点鎖線で囲まれて示される第3部分43dと、を有している。
【0059】
つまり、搭載部51における第3部材43は、平面視で、第1アーム52aに連接し、かつ第1アーム52aの延在方向である第1方向DR1に延出する第1部分43cと、第2アーム52bに連接し、かつ第2アーム52bの延在方向である第1方向DR1に延出する第2部分43dと、第1部分43cおよび第2部分43dに接続され、かつ第1方向DR1と垂直な方向である第2方向DR2に延出する第3部分43eと、を有している。第1部分43cと第2部分43dは、十字の形状の横棒の部分に相当し、第3部分43eは十字形状の縦棒の部分に相当する。
【0060】
これによって、体積が減じられた第3部材43(つまり、魚の骨のような形状の第3部材43)であっても、搭載部51における幅広の第2部材45を安定に支持することができる(図1(C)参照)。
【0061】
このように、図1(A)〜図1(C)に示される支持部材の立体構造を使用することによって、熱型光検出器における支持部材50の熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立させることができる。
【0062】
(熱型光検出器の製造方法の概要)
図2(A)〜図2(C)は、熱型光検出器の製造方法の一例の概要を説明するための図である。図2の例では、アーム部52においてのみ、第3部材43の体積を低減する加工を実施するものとする。
【0063】
図2(A)の工程では、シリコン基板(材質はシリコンに限定されるものではない)11上に、例えば、第1犠牲層(例えばSiO2層)70と、SiO2/Si3N4膜/TiN膜の重ね膜54とが、互いに隣接して形成される(具体的な膜構成の一例は、図12に示される)。TiN膜は、第1犠牲層70の除去の際のエッチングストッパー、ならびに支持部材50のパターニングの際のエッチングストッパーとして機能する。第1犠牲層(例えばSiO2層)70は、熱分離用の空洞部の形成のために使用される。
【0064】
ここで、「基板」という用語は、狭義にはシリコン基板11の意味で使用することができ、また、広義には(特に、製造工程の説明においては)、シリコン基板11上に形成されるSiO2/Si3N4膜/TiN膜55を含めた構造体(支持部材50を支える土台となる基部:センサー基部)を基板ということもできる。図2の例では、シリコン基板11上に形成されるSiO2/Si3N4膜/TiN膜を含めた構造体を基板BS(広義の基板)と呼んでいる。
【0065】
基板BS上には、支持部材50(メンブレン)が形成される。支持部材50は、例えばSi3N4膜で構成される第1部材41,第2部材45および第3部材43と、ポリシリコン(Poly−Si)で構成される第2犠牲層80と、を含んでいる。また、支持部材50は、上述のとおり、第1アーム52aと、第2アーム52bと、搭載部51とを含む。ポリシリコン(Poly−Si)で構成される第2犠牲層80は、第1アーム52aおよび第2アーム52bにおいてのみ設けられる。また、搭載部51上には、赤外線検出素子5が形成される(図2では、光吸収膜となる層は省略されている)。
【0066】
図2(B)の工程では、第1犠牲層(SiO2層)70を、例えば弗酸系のエッチング液を用いて除去する。これによって、支持部材50と基板BSとの間に空洞部10が形成される。空洞部10は、支持部材50を基板BSから熱的に分離する機能を有する。
【0067】
図2(C)の工程では、第2犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、第1アーム52aおよび第2アーム52bの立体構造において、空隙Gが形成され、体積が減じられた第3部材43が得られる。よって、アーム部52(第1アーム52aおよび第2アーム52b)の熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0068】
次に、図3(A)〜図3(C)を参照する。図3(A)〜図3(C)は、熱型光検出器の製造方法の他の例の概要を説明するための図である。図3の例では、図1(A)で示したように、アーム部52および搭載部51の双方において、第3部材43の体積を低減する加工を実施する。
【0069】
図3(A)の工程では、シリコン基板(材質はシリコンに限定されるものではない)11上に、例えば、第1犠牲層(例えばSiO2層)70と、SiO2/Si3N4膜/TiN膜の重ね膜54とが、互いに隣接して形成される。TiN膜は、第1犠牲層70の除去の際のエッチングストッパー、ならびに支持部材50のパターニングの際のエッチングストッパーとして機能する。第1犠牲層(例えばSiO2層)70は、空洞部(熱分離用の空洞部)の形成のために使用される。
【0070】
基板BS上には、支持部材50(メンブレン)が形成される。支持部材50は、例えばSi3N4膜で構成される第1部材41,第2部材45および第3部材43と、ポリシリコン(Poly−Si)で構成される第2犠牲層80と、を含んでいる。また、支持部材50は、上述のとおり、第1アーム52aと、第2アーム52bと、搭載部51とを含む。第2犠牲層80は、第1アーム52a、第2アーム52bおよび搭載部51の各々において設けられる。また、搭載部51上には、赤外線検出素子5が形成される(図3では、光吸収膜となる層は省略されている)。
【0071】
図3(B)の工程では、第1犠牲層(SiO2層)70を、例えば弗酸系のエッチング液を用いて除去する。これによって、支持部材50と基板BSとの間に空洞部10が形成される。空洞部10は、支持部材50を基板BSから熱的に分離する機能を有する。
【0072】
図3(C)の工程では、第2犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、第1アーム52a、第2アーム52bならびに搭載部51の各々の立体構造において空隙Gが形成され、これによって、体積が減じられた第3部材43が得られる。よって、支持部材50(第1アーム52a、第2アーム52bならびに搭載部51の各々)における熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0073】
(具体的な製造方法の一例)
図4(A)〜図4(I)は、熱型光検出器の製造方法の具体例の一例を説明するための図である。図4(A)の工程では、図2(A)の工程で説明したように、シリコン基板11上に、例えば、第1犠牲層(例えばSiO2層)70と、SiO2/Si3N4膜/TiN膜の重ね膜54とが、互いに隣接して形成される。なお、図4(A)では、第1犠牲層(例えばSiO2層)70は図示されていない。
【0074】
図4(B)の工程では、Si3N4層41および第2犠牲層(ポリシリコン層)80を形成する。Si3N4層41は、支持部材50の立体構造を形成する第1部材となる層である。
【0075】
図4(C)の工程では、第2犠牲層(ポリシリコン層)80に開口部OPを形成する。図4(D)の工程では、第2犠牲層(ポリシリコン層)80に形成された開口部OPに、Si3N4層43を埋め込む。Si3N4層43は、支持部材50の立体構造を形成する第3部材となる層である。図4(E)の工程では、Si3N4層45を形成する。Si3N4層45は、支持部材50の立体構造を形成する第2部材となる層である。図4(F)では、支持部材50をパターニングして、例えば、図2(A)に示されるような形状に加工する。
【0076】
図4(G)の工程では、熱型光検出素子(ここでは焦電型の赤外線検出素子とする)5を形成する。熱型光検出素子(焦電型の赤外線検出素子)5は、下部電極1と、今日誘電体層(PZT層)2と、上部電極3と、光(赤外線を含む)吸収層4と、を有する。
【0077】
この後、図2(B)に示したように、第1犠牲層(SiO2層)70を除去して、空洞部10を形成する(図4ではこの工程は図示されない)。次に、図4(H)(ならびに図2(C))に示すように、第2犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、第1アーム52aおよび第2アーム52bの立体構造において、空隙Gが形成され、体積が減じられた第3部材43が得られる。したがって、アーム部52(第1アーム52aおよび第2アーム52b)の熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0078】
図4(I)には、アーム部52(第1アーム52aおよび第2アーム52b)における横断面の形状の、好ましい寸法の一例が示される。アーム52は、縦寸法および横寸法が共に3μmである。第1部材41の厚みは0.5μmであり、第2部材45の厚みも0.5μmである。第3部材43の高さは2μmであり、横幅は1μmである。第3部材43は、第1部材41および第2部材45の中央部分に連接しており、上下左右にバランスのとれた立体構造となっている。よって、機械的強度が向上する。
【0079】
(第2実施形態)
図5は、支持部材の横断面形状の変形例を示す図である。図5の例では、支持部材50の横断面の立体形状において、第2犠牲層が完全に除去されずに残存している。図5では、この第2犠牲層の残存部には、参照符号80’を付している。第2犠牲層80’は、補強部材として機能する。第2犠牲層80’が残存することによって、例えば、第3部材45を支持する部分の面積が増大し、H型構造の機械的強度が向上する。
【0080】
(第3実施形態)
本実施形態では、上記の、支持部材50自体の熱容量を低減する構造に加えて、製造工程における支持部材50の撓み等を低減して、スティッキング等の問題を抑制するために、支持支柱を利用する。熱容量を低減するために支持部材50の厚みを薄くすると、製造工程において、例えば、熱熱分離用の空洞の形成のためにウエットエッチングを使用した場合には、スティッキング(基板と支持部材との貼り付き(固着))が生じ易くなる。スティッキングは、例えば、ウエットエッチング後の乾燥工程において、液体の表面張力によって生じる。
【0081】
スティッキングを抑制するためには、補助支柱を設けて、製造工程において支持部材を安定に支えるのが好ましいが、単純に補助支柱を設けると、熱伝達の経路となることから、熱容量や熱コンダクタンスが増えてしまう。
【0082】
そこで、製造時には、補助支柱で支持部材を安定に支え、問題となる工程が終了すると、補助支柱を支持部材から切り離して、熱が逃げるのを防止するのが好ましい。例えば、補助支柱の全突出長をL0とし、基板と支持部材間の最大距離をL1(L1>L0)とし、L1とL0の差分に相当する部分には第3犠牲層を形成しておく。そして、問題となる製造工程が終了した後に、犠牲層を除去すれば、補助支柱と支持部材50とを分離することができる。
【0083】
この第3犠牲層としては、例えば、支持部材50の熱容量を低減するために形成される第2犠牲層80の構成材料と同じ材料(ポリシリコン等)を用いることができる。この場合、第1犠牲層70を除去して空洞部10を形成した後、例えば、第2犠牲層および第3犠牲層を同一工程にて除去することによって、支持部材50の熱容量の低減と、補助支柱と基板(の底部)との熱分離とを同時に実現することができる。
【0084】
以下、図6(A)〜図6(E)を参照して説明する。図6(A)〜図6(E)は、補助支柱を有する熱型光検出器の一例(ここでは、焦電型赤外線検出器とする)の構成を説明するための図である。図6(A)は、熱型光検出器の要部の平面図であり、図6(B)は、図6(A)のA−A線に沿う断面図であり、図6(C)〜図6(E)の各々は、補助支柱の構成例を示す図である。図6(A)および図6(B)に示される熱型光検出器は、MEMS(微小電気機械システム)技術(半導体製造技術)を使用して基板上に形成される立体構造を有する、焦電型赤外線検出器(焦電型赤外線センサー)である。基板BSの表面には、エッチングストッパー膜ES(TiN膜)が設けられている。
【0085】
熱型光検出素子としての焦電型赤外線検出素子(焦電型光検出素子)5は、下部電極1と、焦電膜(強誘電体膜)2と、上部電極3と、光吸収膜としての赤外線吸収膜4と、を有する。下部電極(第1電極)1および上部電極(第2電極)3は、例えば、3層の金属膜を積層することによって形成される。例えば、焦電膜(強誘電体膜)2から遠い位置から順に、例えばスパッタリングにて形成されるイリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、焦電膜(強誘電体膜)2としては、例えばPZT(Pb(Zi,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。焦電膜(強誘電体膜)2は、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極(第1電極)1および上部電極(第2電極)3の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、焦電膜(強誘電体膜)2の膜厚は、例えば0.1μm程度である。
【0086】
図6(A)および図6(B)に示されるように、本実施形態では、メイン支柱(主支柱、主ポストあるいは主支持部)55a,55bに加えて、製造時における支持部材50の変位や変形を抑制するため(製造時における機械的強度の補強のため)に、補助支柱(補助ポストあるいは補助支持部)57a,57bが設けられる。
【0087】
図6(A)に示されるように、平面視で、支持部材50における第1アーム52aと重なる位置に、メイン支柱55aと補助支柱57aが設けられており、同様に、平面視で、第2アーム52bに重なる位置に、メイン支柱55bと補助支柱57bが設けられている。合計で4つの支柱(ポスト)が設けられており、赤外線検出素子5からより遠い位置にある2つの支柱55a,55bをメイン支柱と呼び、赤外線検出素子5からより近い位置にある2つの支柱57a,57bを補助支柱と呼んでいる。
【0088】
図6(B)に示されるように、メイン支柱55a,55bは、基板BSと、支持部材50の第1アーム52aまたは第2アーム52bとの間に設けられる。メイン支柱55a,55bの各上面は、第1アーム52aおよび第2アーム52bの各底面に接触し、支持部材50(つまり第1アーム52aおよび第2アーム52b)を支持して、支持部材50(特に、搭載部51)の基板方向への撓み等を抑制している。
【0089】
一方、補助支柱57a,57bは、製造工程中(の一期間)において、支持部材50を支持して撓み等の発生を抑制するために使用される。そして、問題となる製造工程(スティッキングの発生が生じやすい、空洞部10の形成のためのウエットエッチング工程等)が終了した後は、空隙Ga,Gbによって、支持部材50から切り離される(分断された状態となる)。つまり、補助支柱57a,57bの各々は、支持部材50から熱的に分離された状態となる。
【0090】
例えば、補助支柱57a,57bに連接して犠牲膜からなる犠牲層(犠牲層が柱状にパターニングされる場合には犠牲支柱(犠牲スペーサー)ということもできる)を形成しておけば、補助支柱(57a,57b)および犠牲層(犠牲支柱)によって支持部材50を支持することができる。これによって、実質的に、支持部材50の機械的強度が向上したことになる。よって、例えば、ウエットエッチング工程の乾燥処理時等におけるスティッキングの発生を抑制することができる。
【0091】
そして、問題となる工程が終了した後に、必要がなくなった犠牲層(犠牲支柱)を除去することによって、支持部材と補助支柱との間には空隙Ga,Gbが形成される。つまり、熱型光検出器が完成した状態において、支持部材50と基板BSとの間の最大距離をL1とし、補助支柱57a,57bの突出全長をL0としたとき、L1>L0が成立する。そして、L1とL0の差に相当する間隔をもつ空隙Ga,Gbが形成され、これによって、支持部材50と補助支柱57a,57bが熱的に分離される。よって、熱型光検出素子の製造が完了した後は、補助支柱の存在は、支持部材50を経由した熱の拡散には影響を与えない。したがって、熱型光検出素子を支持する支持部材についての熱容量の低減と、製造工程において必要となる機械的強度の確保と、を両立させることができる。
【0092】
なお、メイン支柱55a,55bは、必ず設けなくてはならないものではない。例えば、第1アーム52aおよび第2アーム52bの各々の距離が短い場合には、基板BS側の固定部Qa,Qbの各々で、第1アーム52aおよび第2アーム52bの各々を支持するだけでよい場合もあり得る。
【0093】
補助支柱の形成態様としては、図6(C)〜図6(E)に示され態様が考えられる。図6(C)の例では、補助支柱57が、基板BSから支持部材50に向けて突出しており、空隙(エアギャップ)Gは、支持部材50側に設けられている。図6(A)および図6(B)に示される構造では、この図6(C)の態様の補助支柱が使用されている。
【0094】
また、図6(D)の例では、補助支柱57が、支持部材50から基板BSに向けて突出しており、空隙Gは、基板BS側に設けられている。また、図6(E)の例では、一対の補助支柱57が設けられる。一対の補助支柱57の一方は、支持部材50から基板BSに向けて突出し、その突出長はLaであり、他方は、基板BSから支持部材50に向けて突出し、その突出長はLbである。空隙Gは、一対の補助支柱57の各々に挟まれた位置に形成されている。一対の補助支柱57の全突出長をL0(=La+Lb)とし、基板BSと支持部材50との間の最大距離をL1とすると、L1>L0が成立する。
【0095】
少なくとも一本の補助支柱(57a,57b等)は、断面図で視て、支持部材50の構成要素である搭載部51と基板BSとの間、および少なくとも一本のアーム部(第1アーム52a,第2アーム52b)と基板BSとの間の、少なくとも一方に設けることができる。すなわち、補助支柱(57a,57b等)は、平面視で、搭載部51と重なりを有する位置(つまり、重なりを有するよう)に設けることができ、また、少なくとも一本のアーム(第1アーム52a,第2アーム52b)と重なりを有する位置(つまり、重なりを有するよう)に設けることができる。
【0096】
(補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造と、その製造方法の一例について)
以下、図7(A)〜図7(C)を参照して説明する。図7(A)〜図7(C)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の一例を示す図である。図7(A)は平面図である。図7(B)は、図7(A)のA−A線に沿う断面図(一点鎖線で囲まれる部分よりも下に位置する部分の断面構造)と、B−B線に沿う断面図(一点鎖線で囲まれる部分の断面構造)とを組み合わせて示す図である。すなわち、補助支柱の構造と、熱容量を低減するための加工がなされた第3部材の構造の双方を、同じ切断線の断面図で示すことができないため、切断線を異ならせ、各断面図を合成して示すものである。また、図7(C)は、図7(A)のC―C線に沿う断面図である。
【0097】
図7(A)において、熱容量を小さくするための加工が施された、アーム部52における第3部材43の平面形状が、太い一点鎖線で示されている。
【0098】
また、図7(B)に示されるように、基板BSと支持部材50との間には熱分離用の空洞部10が形成されている。また、補助支柱57a,57bの各々は、空隙Gaおよび空隙Gbの各々によって、支持部材50から切り離されている。また、アーム部52(第1アーム52a,第2アーム52b)において、第3部材43の一部が除去され、第3部材の体積が減じられている。
【0099】
また、図7(C)に示されるように、アーム部52(第1アーム52a,第2アーム52b)の横断面の立体構造は、H型構造を有する。
【0100】
以下、図8(A)〜図8(D)、図9(A)〜図9(C)、図10(A)および図10(B)、図11(A)および図11(B)を参照して、製造方法について説明する。図8(A)〜図8(D)、図9(A)〜図9(C)、図10(A)および図10(B)、図11(A)および図11(B)の各々は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図である。
【0101】
工程1(図8(A))
図7(A)〜図7(C)に示される熱型光検出器を形成する場合には、まず、シリコン基板11の一部をエッチング加工して凹部を形成し、凹部表面をエッチングストッパー膜ES(TiN)で覆っておく。次に、図8(A)に示すように、空洞部10となるべき空間を埋める(充填する)ように、基板BS上に第1犠牲層(SiO2層)70を形成する。次に、第1犠牲層(SiO2層)70をパターニングして、メイン支柱および補助支柱を形成するべき位置に、開口部71を形成する。
【0102】
工程2(図8(B))
次に、図8(B)に示すように、開口部71に、メイン支柱層55a,55bおよび補助支柱層57a,57bとしてのシリコンナイトライド層(Si3N4層)を埋め込む。具体的には、例えば、全面にシリコンナイトライド層(Si3N4層)を形成した後、エッチバック処理によって第1犠牲層70上のシリコンナイトライド層(Si3N4層)を除去することで、開口部71に、メイン支柱層および補助支柱層としてのシリコンナイトライド層(Si3N4層)を埋め込むことができる。つまり、第1犠牲層70に選択的に設けられた開口部71に補助支柱層を埋め込むことによって補助支柱57a,57bを形成することができる。この方法によれば、半導体の製造方法(フォトリソグラフィー)を利用して、補助支柱57a,57bを無理なく形成することができる。
【0103】
工程3,工程4(図8(C),図8(D))
次に、図8(C)に示すように、第3犠牲層(Poly−Si層)79を形成する。次に、図8(D)に示すように、第3犠牲層(Poly−Si層)79をパターニングして、犠牲支柱(犠牲スペーサー)としての第3犠牲層(Poly−Si層)79a,79bを形成する。
【0104】
工程5(図9(A))
次に、図9(A)に示すように、支持部材50の構成膜の一つである、第1部材としてのシリコン窒化膜(Si3N4膜)41を形成する。
【0105】
工程6(図9(B))
次に、図9(B)に示すように、第2犠牲層としてのポリシリコン層(Poly−Si層)80を形成した後、パターニングして開口部を形成し、その開口部に、支持部材50の構成膜の一つである、第3部材としてのシリコン窒化膜(Si3N4膜)43を埋め込み形成する。
【0106】
工程7(図9(C))
次に、支持部材50の構成膜の一つである、第2部材としてのシリコン窒化膜(Si3N4膜)45を形成する。これらの積層膜によって、支持部材(メンブレン)50が構成される(但し、第2犠牲層としてのポリシリコン層(Poly−Si層)80は後に除去される)。
【0107】
工程8(図10(A))
次に、図10(A)に示すように、下部電極の構成材料層1’と、強誘電体層(PZT層)2’と、上部電極の構成材料層3’とを順次、積層形成する。下部電極構成材料層1’および上部電極構成材料層3’の各々は、例えば、強誘電体層2’から遠い位置から順に、イリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、強誘電体層2’としては、PZT(Pb(Zi,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。これらは、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極構成材料層1’および上部電極構成材料層3’の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、強誘電体層2’の膜厚は、例えば0.1μm程度である。
【0108】
工程9(図10(B))
次に、図10(B)に示すように、下部電極の構成材料層1’、強誘電体層(PZT層)2’ならびに上部電極の構成材料層3’の各々をパターニングして、下部電極1、強誘電体膜(PZT膜)2ならびに上部電極3を構成する(これによって、積層コンデンサーが形成される)。次に、積層コンデンサー上を電気的絶縁膜60で覆う。次に、光吸収膜(赤外線吸収膜)4と、引き出し電極層65と、を形成する。光吸収膜(赤外線吸収膜)4は、例えばSiO2膜である。
【0109】
工程10(図11(A))
次に、図11(A)に示すように、第1犠牲層70(SiO2層)を、例えば弗酸系のエッチング液を用いて除去する。これによって、基板BS支持部材50との間に空洞部10が形成される。この空洞部10は、支持部材50を、基板から熱的に分離する機能を有する。このとき、支持部材50は、メイン支柱55a,55bならびに補助支柱57a,57bによって安定的に支持されるため、変位や変形が抑制され、スティッキングが生じにくい。
【0110】
なお、第1犠牲層(SiO2層)70のエッチング除去の際、メイン支柱55a,55b、補助支柱57a,57bならびに第2犠牲層80は構成材料が異なることから、除去されずに残存する。また、シリコン基板11の表面にはエッチングストッパー膜ES(TiN膜)が形成されており、また、支持部材(メンブレン)50の表裏面はSi3N4膜であることから、これらもエッチングによって除去されずに残存する。
【0111】
工程11(図11(B))
次に、図11(B)に示すように、第2犠牲層(Poly−Siからなる犠牲支柱(犠牲スペーサー))79a,79b、ならびに、第3犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、補助支柱79a,79bを支持部材50から切り離すための空隙Ga,Gbが形成され、また、支持部材50の熱容量を小さくするための空隙Gx,Gyも同時に形成される。
【0112】
ポリシリコン層79,80のエッチングは、スティッキング防止のために、ドライエッチング(例えば、XeF2系のエッチングガスを用いたプラズマドライエッチング)によって除去するのが好ましい。なお、ウエットエッチングとドライエッチングを併用することも可能であるが、この場合、仕上げのエッチングにはドライエッチングを使用することが好ましい。この方法によれば、半導体の製造方法(フォトリソグラフィー)を利用して、熱分離用の空隙Ga,Gbならびに支持部材50の熱容量を減らすための空隙Gx,Gyを無理なく形成することができる。
【0113】
熱型光検出素子が、例えば気密封止パッケージの減圧環境におかれることによって、空隙Ga,Gbによる熱分離機能が高まる。空隙Ga,Gbの形成によって、補助支柱57a,57bを経由する放熱経路が遮断される。よって、補助支柱57a,57bの存在は、支持部材の熱容量や熱コンダクタンスには影響を与えない。このようにして、熱型光検出器(赤外線検出器等)が形成される。この熱型光検出器(赤外線検出器等)は、半導体製造技術を用いて製造されることから微細化(小型化)が可能であり、補助支柱(補助ポスト)は空隙によって支持部材から熱分離されていることから素子特性の低下を招かず、かつ、製造工程において、スティッキング等による不良が生じにくいことから、歩留まりよく製造することができる。
【0114】
また、空隙Gx,Gy(第2犠牲層としてのポリシリコン層80を除去することによって形成される空隙)の分だけ、支持部材50の構成膜である、第3部材43の体積を小さくすることができる。これによって、支持部材50の熱容量ならびに熱コンダクタンスを小さくすることができる。
【0115】
このように、本実施形態によれば、熱容量が小さく(つまり熱感応性が高く)、熱コンダクタンス小さい熱型光検出器(赤外線検出素子等)を得ることができる。また、歩留まりよく(つまり、製造工程において、スティッキング等による不良が生じにくい)熱型光検出器(赤外線検出器等)を製造することもできる。
【0116】
(第4実施形態)
図12は、熱型光検出器の他の例(基板上にトランジスター等の回路素子が形成された例)を示す図である。図12の上側に熱型光検出器(熱型赤外線検出器)の平面図が示され、下側に断面図が示される。図12において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付してある。
【0117】
図12において、P型のシリコン基板11の表面には、薄い酸化膜(ゲート酸化膜)15が形成されており、ゲート酸化膜15上には、MOSトランジスターのゲート(例えばシリコンゲート)9が形成されている。ゲート9およびN型拡散層7a,7bは、MOSトランジスターM1を構成する。このMOSトランジスターM1は、例えば、図13に記載される光検出セルCL1における、選択トランジスターM1として利用することができる。
【0118】
シリコン基板11上には層間絶縁膜13(SiO2層)が形成されている。層間絶縁膜13上に、先に説明した立体構造が形成されている。本実施形態では、シリコン基板11と層間絶縁膜13ならびにSi3N4膜Qa,Qbを含めた部分が、広義の基板BS(基部BS)となる。
【0119】
本実施形態では、3本の補助支柱(57a〜57c)が設けられている。各補助支柱(57a〜57c)と支持部材50との間には、空隙Ga〜Gcが形成されている。なお、本実施形態では、メイン支柱は使用されていない。また、図12の例では、3つのコンタクト部(CX1〜CX3)が設けられている。各コンタクト部(CX1〜CX3)は、1層目メタル31と、コンタクトプラグ32と、2層目メタル32と、コンタクトプラグ34と、3層目メタル35と、コンタクトプラグ36と、4層目メタル37と、によって構成される。
【0120】
また、支持部材(メンブレン)50のアーム部52には、支持部材50の熱容量を低減するための空隙Gx,Gyが設けられている。
【0121】
(第5実施形態)
図13は、熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図13の例では、複数の光検出セル(CL1〜CL4等)が、2次元的に配置されている。複数の光検出セル(CL1〜CL4等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
【0122】
光検出セルCL1は、熱形光検出素子5としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、PDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる(この電位反転によって、機械的なチョッパーを設ける必要がなくなる)。なお、光検出セルCL2も同様の構成である(他の光検出セルも構成は同じである)。
【0123】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
【0124】
本実施形態では、複数の熱型光検出器(熱型光検出素子)が2次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
【0125】
(第6実施形態)
図14(A)および図14(B)は、補助支柱を有するボロメーターの例を示す図である。図14(A)は平面図であり、図14(B)はA−A線に沿う断面図である。本実施形態のボロメーターは、例えば、感熱抵抗素子を用いたボロメーターである。
【0126】
図14(A),図14(B)に示すように、基板BSには、熱分離用の空洞部10が形成されている。支持部材50は、空洞部10を介して基板BSから離間して設けられている。支持部材50には、4つの搭載部51a〜51dが設けられている。搭載部51a〜51dの各々には、4つの感熱抵抗素子(SiC薄膜サーミスター等)5a’〜5d’の各々が搭載されている。各感熱抵抗素子5a’〜5d’は、例えば、ブリッジ回路を構成するように相互に接続される。
【0127】
また、支持部材50には、空隙Ge,Gf,Ggが設けられており、支持部材50の熱容量が低減されている。
【0128】
(第7の実施形態)
図15に本実施形態の熱型光検出器や熱型光検出装置を含む電子機器の構成例を示す。電子機器は、例えば赤外線カメラである。図示されるように、電子機器は、光学系400と、センサーデバイス(熱型光検出装置)410と、画像処理部420と、処理部430と、記憶部440と、操作部450と、表示部460とを含む。なお本実施形態の電子機器は図15の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0129】
光学系400は、例えば1または複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス(熱型光検出装置)410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0130】
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の光検出器を二次元配列させて構成され、複数の行線(走査線(あるいはワード線))と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された光検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して光検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各光検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0131】
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。処理部430は、電子機器の全体の制御や電子機器内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。
【0132】
表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0133】
このように、1セル分の熱型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の熱型光検出器を、例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス(熱型光検出装置)410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0134】
もちろん、1セル分または複数セルの熱型光検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
【0135】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。例えば、第1犠牲層、第2犠牲層および第3犠牲層の構成材料、それらの除去方法等に関しては種々、変形が可能である。
【0136】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、熱型光検出素子を支持する支持部材についての熱容量の低減と、製造工程において必要となる機械的強度の確保と、を両立させることができる。また、スティッキングの問題を抑制して、歩留まりよく熱型光検出器を製造することもできる。
【0137】
本発明は、種々の熱型光検出器(例えば、熱伝対型素子(サーモパイル)、焦電型素子、ボロメーター等)に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。
【符号の説明】
【0138】
5 熱型光検出素子(光検出素子)としての赤外線検出素子、10 空洞部、
11 シリコン基板、41 支持部材の構成層としての第1部材、
45 支持部材の構成層としての第2部材、43 支持部材の構成層としての第3部材、50 支持部材(メンブレン)、51 搭載部、G(Ga,Gb,Gx,Gy) 空隙、
52(52a,52b) アーム部(第1アーム、第2アーム)、
55a,55b メイン支柱、57a,57b 補助支柱、70 第1犠牲層、
80 第2犠牲層、79 第3犠牲層、BS 基板(センサー基部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱型光検出器、熱型光検出装置、電子機器および熱型光検出器の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
熱型光検出器としては、熱電対型素子(サーモパイル)、焦電型素子あるいはボロメーター等がある。熱電対型素子(サーモパイル)は、光吸収に伴う光吸収膜の温度上昇を、熱伝対によって直接的に検出する。
【0003】
焦電型素子は、光吸収に伴う光吸収膜の温度上昇を、強磁性体の焦電効果(パイロ電子効果)を利用して検出する。例えば、強誘電体(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)やタンタル酸リチウム等の誘電率の大きな結晶体は、加熱したり冷却したりすると電気分極量の変化を生じる。すなわち、温度変化があると自発分極量に変化が生じて表面電荷量に変化が生じ、温度変化がないと表面電荷は中和する。分極状態が変化するのに伴い、強誘電体結晶の両端に接続される各電極間に表面電荷量の変化により生じた焦電流が流れる。焦電流(または分極量変化に伴う誘電率、分極量)を検出することによって、照射された光(赤外線等)の光量を検出することができる。
【0004】
また、ボロメーターは、光吸収に伴う温度上昇を、例えば感熱抵抗素子の抵抗値の変化として検出する。
【0005】
熱型光検出素子は冷却装置をもたない構造であるのが通常である。よって、素子を気密パッケージに収容する等して、素子を減圧環境下に置き、さらに基板や周辺膜と熱分離して、受光した光(赤外線等)によって生じる熱が周囲へ極力拡散しない構造とする必要がある。熱の基板への散逸を防いで熱型光検出素子の検出特性の低下を抑制するためには、例えば、基板と熱型光検出素子との間に、熱分離用の空洞部を設ける構造を採用することが有効である(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。特許文献1には、熱分離用の空洞部を有する熱型赤外線アレイセンサーが示され、特許文献2には、熱分離用の空洞部を有する焦電型赤外線検出素子が示されている。
【0006】
また、素子を支持する支持部材におけるアーム部の断面形状を、支持強度の向上のためにU字状等にする例は、例えば特許文献3および特許文献4に記載されている。特許文献3では、アームの断面形状は「U字,L字,T字」に限定されている。また、特許文献4では、アーム断面形状は「U字,L字」に限定されている。
【0007】
また、熱型光検出素子の一つである赤外線検出素子は、小規模素子分野では、例えば人感センサーに応用され、大規模アレイ分野では、例えば赤外線カメラ装置に応用されている。かつては軍事技術として開発されたが、近年は民生品へ応用が進みはじめており、今後赤外線検出による様々な応用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−205944号公報
【特許文献2】特開2002−214038号公報
【特許文献3】特開2006−194894号公報
【特許文献4】特開平8−285680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
熱の基板への散逸を防いで熱型光検出素子の検出特性の低下を抑制するためには、素子を支持する支持部材におけるアーム部の熱容量を小さくすることが有効である。例えば、アーム部の断面積を小さくすると、支持部材の熱容量は小さくなる。しかし単に、アーム部の断面積を小さくすると(例えば、アーム部を構成する材料層の厚みを単に薄くすると)、アーム部の機械強度が確保できない。
【0010】
本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、熱型光検出器における支持部材の熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の熱型光検出器の一態様では、基板と、光吸収膜を含む熱型光検出素子と、前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持された少なくとも一本のアーム部と、を有し、前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、前記基板側に設けられる、横断面の形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、かつ横断面の形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、前記横断面の形状の横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材とを有する。
【0012】
支持部材を構成するアーム部および載置部(素子載置部)の少なくとも一方は、第1部材、第2部材および第3部材で構成されるが、第3部材の体積が削減されていることから、熱容量および熱コンダクタンスを小さくすることができる。すなわち、互いに対向する第1部材および第2部材と、第1部材と第2部材とを連結する第3部材とによって、支持部材の少なくとも一部が構成される。第3部材の横断面の形状の横幅(第2幅)は、第1部材および第2部材の横断面の形状の横幅(共に第1幅)よりも小さく設定される。第1幅と第2幅との差分に対応した空間の容積分だけ、第3部材の体積が減じられ、よって支持部材の熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0013】
(2)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記第1部材と、前記第2部材と、一つの前記第3部材とで構成される立体構造の横断面は、H型断面である。
【0014】
第1部材と、第2部材と、一つの第3部材とで構成される立体構造は、例えば、H型構造(第1部材と第2部材とを、両者に直交する第3部材で連結する構造)とすることができる。これによって、支持部材に要求される力学的強度を確保することができる。すなわち、建築材の組み立てに応用されるH型断面(あるいはH字型断面)をもつ立体構造を、支持部材の構造として採用することによって、支持部材の縦横方向の機械的強度を、十分にかつ無理なく確保することができる。
【0015】
(3)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記少なくとも一本のアーム部は、一端が前記搭載部の一端に連結され、他端が前記基板に支持される前記第1アームと、一端が前記搭載部の他端に連結され、他端が前記基板に支持され、延在方向が前記第1アームと同じ方向である第2アームと、を有しており、かつ、前記第1アーム、前記第2アームならびに前記搭載部の各々は、前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材によって構成されており、前記搭載部における前記第3部材は、前記第1アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第1アームの延在方向である第1方向に延出する第1部分と、前記第2アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第2アームの延在方向である前記第1方向に延出する第2部分と、前記第1部分および前記第2部分の各々に接続されると共に、前記第1方向と垂直な方向である第2方向に延出する第3部分と、を有する。
【0016】
載置部は熱型光検出素子を搭載する部材であることから、平面視の面積は、アーム部よりも広い。そこで、本態様では、搭載部における第3部材の平面視における形状を、十字形状を有する形状とする。この十字形状は、複数箇所、設けることができる。これによって、搭載部における幅広の第2部材(素子側の部材)を安定に支持することができる。
【0017】
つまり、搭載部における第3部材は、例えば平面視で、第1アームに連接し、かつ第1アームの延在方向である第1方向に延出する第1部分と、第2アームに連接し、かつ第2アームの延在方向である第1方向に延出する第2部分と、第1部分および第2部分に接続され、かつ第1方向と垂直な方向である第2方向に延出する第3部分と、を有している。第1部分と第2部分は、十字の形状の横棒の部分に相当し、第3部分は十字形状の縦棒の部分に相当する。
【0018】
これによって、体積が減じられた第3部材であっても、搭載部における幅広の第2部材を、安定に支持することができる。
【0019】
(4)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、前記少なくとも一本の補助支柱の突出全長は、前記基板と前記支持部材との間の最大距離よりも小さく設定されている。
【0020】
本態様では、上記の、支持部材自体の熱容量を低減する構造に加えて、製造工程における支持部材の撓み等を低減して、スティッキング等の問題を抑制するために、支持支柱を利用する。熱容量を低減するために支持部材の厚みを薄くすると、製造工程において、例えば、熱熱分離用の空洞の形成のためにウエットエッチングを使用した場合には、スティッキング(基板と支持部材との貼り付き(固着))が生じ易くなる。スティッキングは、例えば、ウエットエッチング後の乾燥工程において、液体の表面張力によって生じる。
【0021】
スティッキングを抑制するためには、補助支柱を設けて、製造工程において支持部材を安定に支えるのが好ましいが、単純に補助支柱を設けると、熱伝達の経路となることから、熱容量や熱コンダクタンスが増えてしまう。
【0022】
そこで、製造時には、補助支柱で支持部材を安定に支え、問題となる工程が終了すると、補助支柱を支持部材から切り離して、熱が逃げるのを防止するのが好ましい。例えば、補助支柱の全突出長をL0とし、基板と支持部材間の最大距離をL1(L1>L0)とし、L1とL0の差分に相当する部分には犠牲層を形成しておく。そして、問題となる製造工程が終了した後に、犠牲層を除去すれば、補助支柱と支持部材とを分離することができる。
【0023】
(5)本発明の熱型光検出器の他の態様では、前記熱型光検出素子は、赤外線検出素子である。
【0024】
本態様によれば、熱容量が小さく(つまり熱感応性が高く)、熱コンダクタンス小さい赤外線検出素子を得ることができる。また、歩留まりよく(つまり、製造工程において、スティッキング等による不良が生じにくい)赤外線検出器を製造することもできる。
【0025】
(6)本発明の熱型光検出装置の一態様では、上記いずれか記載の熱型光検出器が複数、2次元配置されている。
【0026】
これによって、複数の熱型光検出器(熱型光検出素子)が2次元に配置された(例えば、直交2軸の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
【0027】
(7)本発明の電子機器の一態様は、上記いずれかの熱型光検出器を含む。
【0028】
上記いずれかの熱型光検出器は、熱容量が小さいために熱に対する感応性が高く、かつ製造時の歩留まりが高いことから、製造コストの低減も可能である。この熱型光検出器を有する電子機器も、同様の効果を享受することができる。例えば、1セル分または複数セルの熱型光検出器をセンサーとして用いることで、物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することができる。
【0029】
(8)本発明の電子機器の一態様は、上記の熱型光検出装置を含む。
【0030】
上記の熱型光検出装置は、熱容量が小さいために熱に対する感応性が高く、かつ製造時の歩留まりが高いことから、製造コストの低減も可能である。この熱型光検出装置を有する電子機器も、同様の効果を享受することができる。電子機器の好適な例としては、例えば、光(温度)分布画像を出力するサーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラ等があげられる。
【0031】
(9)本発明の熱型光検出器の製造方法の一態様は、基板と、光吸収膜を含む熱型光検出素子と、前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持された少なくとも一本のアーム部と、を有し、前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、前記基板側に設けられる、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、横断面形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、その横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材と、を有する熱型光検出器の製造方法であって、第1犠牲層を、前記基板と前記支持部材との間の空洞部となるべき空間を埋めるように前記基板上に形成する工程と、前記第1犠牲層上に、前記第1部材と、前記第2部材と、前記第3部材と、前記第3部材に隣接する、前記第1幅と前記第2幅との差に対応する空間を埋めるように設けられる、前記第1犠牲層の構成材料とは異なる材料で構成される第2犠牲層と、を有する前記支持部材を形成する工程と、前記支持部材上に、前記熱型光検出素子を形成する工程と、前記第1犠牲層を除去する工程と、前記第2犠牲層を除去する工程と、を含む。
【0032】
本態様では、基板と支持部材との間の空洞部の形成のために第1犠牲層を利用し、また、体積が減じられた第3部材(支持部材の構成要素の一つ)を形成するために第2犠牲層を使用する。第1犠牲層と第2犠牲層は、異なる材料で構成される。
【0033】
第1犠牲層は、空洞部となるべき空間を埋めるように基板上に形成される。第2犠牲層は、第3部材に隣接する、第1幅と第2幅との差に対応する空間を埋めるように設けられる。第1犠牲層を除去することによって、熱分離用の空洞部が形成される。また、第2犠牲層を除去することによって、体積が減じられた第3部材が得られる。
【0034】
(10)本発明の熱型光検出器の製造方法の他の態様では、前記熱型光検出器は、前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、前記少なくとも一本の補助支柱が第1補助支柱を含むとした場合に、前記第1補助支柱としての補助支柱層を形成する工程と、前記第1補助支柱層に連接し、前記補助支柱層および前記第1犠牲層の各々の構成材料とは異なる材料からなり、前記第2犠牲層と同じ材料からなり、かつ、前記第1補助支柱層の突出長と前記第1犠牲層の膜厚に相当する突出長とを合計した合計突出長が、前記基板と前記支持部材との間の前記最大距離となるように、前記膜厚が設定された第3犠牲層を形成する工程と、を含む。
【0035】
本態様は、補助支柱を形成する工程と、補助支柱を支持部材から切り離す工程と、をさらに含む。補助支柱と支持部材との間の空隙の形成のために第3犠牲層が設けられる。第3犠牲層の材料としては、第2犠牲層の材料と同じものを用いることができる。
【0036】
つまり、補助支柱に連接して第3犠牲層(第3犠牲層が柱状にパターニングされる場合には犠牲支柱あるいは犠牲スペーサーということができる)を形成しておく。第2犠牲層上に、支持部材を形成すれば、補助支柱および第3犠牲層(犠牲支柱)によって、支持部材を安定に支持することができ、これによって、実質的に、支持部材の機械的強度が向上したことになる。
【0037】
例えば、支持部材が形成された後(例えば、熱型光検出素子の少なくとも一部が形成された後)に、第1犠牲層を選択的に除去し、これによって、熱分離用の空洞部を形成する。このとき、支持部材は、補助支柱および犠牲層(犠牲支柱)によって、基板(センサー基部)上に支持されていることから、変位や変形が抑制され、ウエットエッチングによって第1犠牲層を除去した場合であっても、スティッキング(液体の表面張力によって支持部材の一部と基板とが固着する現象)の発生が抑制される。
【0038】
この後、第3犠牲層を除去すれば、補助支柱と支持部材との間に空隙が形成される。熱型光検出素子が、例えば気密封止パッケージの減圧環境におかれることによって、空隙による熱分離機能が高まる。空隙の形成によって、補助支柱を経由する放熱経路が遮断される。よって、補助支柱の存在は、支持部材の熱容量や熱コンダクタンスには影響を与えない。
【0039】
このように、本発明の少なくとも一つの態様によれば、例えば、熱型光検出器における支持部材の熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1(A)〜図1(C)は、熱型光検出器における支持部材(メンブレン)の平面形状および断面構造について説明するための図
【図2】図2(A)〜図2(C)は、熱型光検出器の製造方法の一例の概要を説明するための図
【図3】図3(A)〜図3(C)は、熱型光検出器の製造方法の他の例の概要を説明するための図
【図4】図4(A)〜図4(I)は、熱型光検出器の製造方法の具体例の一例を説明するための図
【図5】支持部材の横断面形状の変形例を示す図
【図6】図6(A)〜図6(E)は、補助支柱を有する熱型光検出器の一例(ここでは、焦電型赤外線検出器とする)の構成を説明するための図
【図7】図7(A)〜図7(C)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の一例を示す図
【図8】図8(A)〜図8(D)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図9】図9(A)〜図9(C)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図10】図10(A)および図10(B)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図11】図11(A)および図11(B)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図
【図12】熱型光検出器の他の例(基板上にトランジスター等の回路素子が形成された例)を示す図
【図13】熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図
【図14】図14(A)および図14(B)は、補助支柱を有するボロメーターの例を示す図
【図15】熱型光検出器や熱型光検出装置を含む電子機器の構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
【0042】
(第1の実施形態)
まず、支持部材の平面形状ならびに横断面の立体構造について説明する。
【0043】
(支持部材の平面形状ならびに横断面の立体構造)
図1(A)〜図1(C)は、熱型光検出器における支持部材(メンブレン)の平面形状および断面構造について説明するための図である。図1(A)は、熱型光検出器における支持部材(メンブレン)の平面視における形状(一部、透視図)を示す図であり、図1(B)は、図1(A)のA−A線に沿う断面図(第1アームの横断面図)であり、図1(C)は、図1(C)のB−B線に沿う断面図(搭載部の横断面図)である。
【0044】
支持部材(メンブレン)50は、例えば複数の薄膜を重ね合わせて形成され、横断面の形状は立体構造を有する。この支持部材50は、熱型光検出素子(図1では不図示)を、熱分離用の空洞部(図1では不図示)上で支持する。
【0045】
図1(A)に示すように、支持部材(メンブレン)50は、熱型光検出素子が搭載される搭載部51と、一端が搭載部51に連結され、他端が基板に支持された少なくとも一本のアーム部52(52a,52b)と、を有する。図1(A)では、アーム部52を支持する基板は不図示である。なお、基板はセンサーの土台となる基部であり、広義に解釈することができる。つまり、狭義の基板上に形成される各種の膜や層(層間絶縁膜、層間絶縁層、導体膜、導体層等)も、基板(広義の基板)の一部と考えることができる。
【0046】
少なくとも一本のアーム部52は、一端が搭載部51の一端に連結され、他端が基板の一方の側(図中、左側)に支持される第1アーム52aと、一端が搭載部51の他端に連結され、他端が基板の他方の側(図中、右側)に支持され、延在方向が第1アームと同じ方向である第2アーム52bと、を有している。
【0047】
図1(B)および図1(C)に示されるように、搭載部51、第1アーム52aおよび第2アーム52bの少なくとも一方(図1の例では、搭載部51、第1アーム52aおよび第2アーム52bの双方)は、その横断面の形状がH型(H型断面)である。つまり、第1アーム52aおよび第2アーム52bの少なくとも一方の、横断面の立体構造は、H型構造(H字型構造)である。
【0048】
このH型構造は、互いに対向して設けられる第1部材41および第2部材45と、第1部材と第2部材とを連結する第3部材43と、を有している。第1部材41は基板側(すなわち下側)に設けられ、第2部材45は熱型光検出素子側(すなわち上側)に設けられる。また、第3部材43は、第2部材45を支える部材とみることもできる。第3部材43は、第2部材45を中央で支えている。第3部材43の高さはHである。
【0049】
第1部材41、第2部材45および第3部材43の構成材料は特に問わないが、例えばいずれの部材もシリコン窒化膜(Si3N4膜)で構成することができる。
【0050】
第1部材41は、第1方向DR1に沿う軸(例えばX軸)と第2方向DR2に沿う軸(例えばY軸)によって規定されるXY平面に平行に設けられている。第2部材45も、XY平面に平行に存在するが、第1部材41と第2部材45とは距離Hだけ離間している。
【0051】
また、図1(B)に示すように、第1アーム52aの横断面の立体構造に関して、第1部材41の横断面の形状の横幅はW1であり、同じく、第2部材45の横断面の形状の横幅はW1である。一方、第3部材43の横断面の横幅はW2(W2<W1)である。第3部材43の両側には空隙Gが形成されており、その空隙Gの空間の容積の分だけ、第3部材43の体積が減じられている。第3部材43の両側に設けられた空隙Gの各々は、第1凹部900a,第2凹部900bとみることができる。W1を第1幅とし、W2を第2幅とすると、第1幅W1>第2幅W2が成立する。
【0052】
また、図1(C)に示されるように、搭載部51の横断面の立体構造に関して、第1部材41の横断面の形状の横幅はW3であり、同じく、第2部材45の横断面の形状の横幅はW3である。一方、一本の第3部材43の横断面の横幅はW2(W2<W3)である。
【0053】
第3部材43は、搭載部51においては、図1(A)において点線で示されるように、平面視で、魚の骨のような形状を有している。これに伴い、搭載部51の横断面の立体構造に関して、図1(C)に示されるように、複数の空隙Gが形成されている。その空隙Gの空間の容積の分だけ、第3部材43の体積が減じられている。W3を第1幅とし、W2を第2幅とすると、第1幅W3>第2幅W2が成立する。図1(C)においては、3カ所(点線で囲まれて示されるZ1〜Z3の各々)において、H型構造が採用されている。
【0054】
このように、第1幅(W1またはW3)と第2幅(W2)との差分に対応した空間(空隙G)の容積分だけ、第3部材43の体積が減じられ、よって支持部材50の全体の熱容量が低減され、また、断面積が低下して熱が逃げにくくなることから、熱コンダクタンスも低減される。
【0055】
一方、立体構造として、例えば、H型構造(第1部材41と第2部材45とを、両者に直交する第3部材43で連結する構造)を採用することによって、立体構造の、必要な力学的強度を確保することができる。すなわち、建築材の組み立てに応用されるH型構造(あるいはH字型構造)を採用することによって、支持部材50の縦横方向の機械的強度を、無理なく確保することができる。
【0056】
H型構造によれば、例えば、支持部材50に上(素子側)からの加重が加わった場合でも、第3部材43がその加重を受け止めることから、縦方向の機械的強度は高い。H型構造は、左右のバランスに優れていることから、支持部材50に、横方向(アーム部52の延在方向)の加重が加わった場合でも各部の変位が抑制され、横方向にも安定している。
【0057】
また、図1(A)に示されるように、搭載部51は、熱型光検出素子を搭載する部材であることから、平面視の面積は、アーム部よりも広い。搭載部51を安定的に支持するために、図1(A)の例では、搭載部51における第3部材43の平面視における形状を、十字形状を有する形状とし、この十字形状(十字形状は複数箇所、設けることができる)によって、搭載部51における幅広の第2部材45を安定に支持している。
【0058】
図1(A)に示されるように、搭載部51における第3部材43は、平面視で魚の骨のような形状を有し、3カ所において十字形状が用いられている。例えば、図1(A)において、第3部材43は、一点鎖線で囲んで示される第1部分43aおよび第2部分43bと、二点鎖線で囲まれて示される第3部分43dと、を有している。
【0059】
つまり、搭載部51における第3部材43は、平面視で、第1アーム52aに連接し、かつ第1アーム52aの延在方向である第1方向DR1に延出する第1部分43cと、第2アーム52bに連接し、かつ第2アーム52bの延在方向である第1方向DR1に延出する第2部分43dと、第1部分43cおよび第2部分43dに接続され、かつ第1方向DR1と垂直な方向である第2方向DR2に延出する第3部分43eと、を有している。第1部分43cと第2部分43dは、十字の形状の横棒の部分に相当し、第3部分43eは十字形状の縦棒の部分に相当する。
【0060】
これによって、体積が減じられた第3部材43(つまり、魚の骨のような形状の第3部材43)であっても、搭載部51における幅広の第2部材45を安定に支持することができる(図1(C)参照)。
【0061】
このように、図1(A)〜図1(C)に示される支持部材の立体構造を使用することによって、熱型光検出器における支持部材50の熱容量の低減と、機械的強度の確保とを両立させることができる。
【0062】
(熱型光検出器の製造方法の概要)
図2(A)〜図2(C)は、熱型光検出器の製造方法の一例の概要を説明するための図である。図2の例では、アーム部52においてのみ、第3部材43の体積を低減する加工を実施するものとする。
【0063】
図2(A)の工程では、シリコン基板(材質はシリコンに限定されるものではない)11上に、例えば、第1犠牲層(例えばSiO2層)70と、SiO2/Si3N4膜/TiN膜の重ね膜54とが、互いに隣接して形成される(具体的な膜構成の一例は、図12に示される)。TiN膜は、第1犠牲層70の除去の際のエッチングストッパー、ならびに支持部材50のパターニングの際のエッチングストッパーとして機能する。第1犠牲層(例えばSiO2層)70は、熱分離用の空洞部の形成のために使用される。
【0064】
ここで、「基板」という用語は、狭義にはシリコン基板11の意味で使用することができ、また、広義には(特に、製造工程の説明においては)、シリコン基板11上に形成されるSiO2/Si3N4膜/TiN膜55を含めた構造体(支持部材50を支える土台となる基部:センサー基部)を基板ということもできる。図2の例では、シリコン基板11上に形成されるSiO2/Si3N4膜/TiN膜を含めた構造体を基板BS(広義の基板)と呼んでいる。
【0065】
基板BS上には、支持部材50(メンブレン)が形成される。支持部材50は、例えばSi3N4膜で構成される第1部材41,第2部材45および第3部材43と、ポリシリコン(Poly−Si)で構成される第2犠牲層80と、を含んでいる。また、支持部材50は、上述のとおり、第1アーム52aと、第2アーム52bと、搭載部51とを含む。ポリシリコン(Poly−Si)で構成される第2犠牲層80は、第1アーム52aおよび第2アーム52bにおいてのみ設けられる。また、搭載部51上には、赤外線検出素子5が形成される(図2では、光吸収膜となる層は省略されている)。
【0066】
図2(B)の工程では、第1犠牲層(SiO2層)70を、例えば弗酸系のエッチング液を用いて除去する。これによって、支持部材50と基板BSとの間に空洞部10が形成される。空洞部10は、支持部材50を基板BSから熱的に分離する機能を有する。
【0067】
図2(C)の工程では、第2犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、第1アーム52aおよび第2アーム52bの立体構造において、空隙Gが形成され、体積が減じられた第3部材43が得られる。よって、アーム部52(第1アーム52aおよび第2アーム52b)の熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0068】
次に、図3(A)〜図3(C)を参照する。図3(A)〜図3(C)は、熱型光検出器の製造方法の他の例の概要を説明するための図である。図3の例では、図1(A)で示したように、アーム部52および搭載部51の双方において、第3部材43の体積を低減する加工を実施する。
【0069】
図3(A)の工程では、シリコン基板(材質はシリコンに限定されるものではない)11上に、例えば、第1犠牲層(例えばSiO2層)70と、SiO2/Si3N4膜/TiN膜の重ね膜54とが、互いに隣接して形成される。TiN膜は、第1犠牲層70の除去の際のエッチングストッパー、ならびに支持部材50のパターニングの際のエッチングストッパーとして機能する。第1犠牲層(例えばSiO2層)70は、空洞部(熱分離用の空洞部)の形成のために使用される。
【0070】
基板BS上には、支持部材50(メンブレン)が形成される。支持部材50は、例えばSi3N4膜で構成される第1部材41,第2部材45および第3部材43と、ポリシリコン(Poly−Si)で構成される第2犠牲層80と、を含んでいる。また、支持部材50は、上述のとおり、第1アーム52aと、第2アーム52bと、搭載部51とを含む。第2犠牲層80は、第1アーム52a、第2アーム52bおよび搭載部51の各々において設けられる。また、搭載部51上には、赤外線検出素子5が形成される(図3では、光吸収膜となる層は省略されている)。
【0071】
図3(B)の工程では、第1犠牲層(SiO2層)70を、例えば弗酸系のエッチング液を用いて除去する。これによって、支持部材50と基板BSとの間に空洞部10が形成される。空洞部10は、支持部材50を基板BSから熱的に分離する機能を有する。
【0072】
図3(C)の工程では、第2犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、第1アーム52a、第2アーム52bならびに搭載部51の各々の立体構造において空隙Gが形成され、これによって、体積が減じられた第3部材43が得られる。よって、支持部材50(第1アーム52a、第2アーム52bならびに搭載部51の各々)における熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0073】
(具体的な製造方法の一例)
図4(A)〜図4(I)は、熱型光検出器の製造方法の具体例の一例を説明するための図である。図4(A)の工程では、図2(A)の工程で説明したように、シリコン基板11上に、例えば、第1犠牲層(例えばSiO2層)70と、SiO2/Si3N4膜/TiN膜の重ね膜54とが、互いに隣接して形成される。なお、図4(A)では、第1犠牲層(例えばSiO2層)70は図示されていない。
【0074】
図4(B)の工程では、Si3N4層41および第2犠牲層(ポリシリコン層)80を形成する。Si3N4層41は、支持部材50の立体構造を形成する第1部材となる層である。
【0075】
図4(C)の工程では、第2犠牲層(ポリシリコン層)80に開口部OPを形成する。図4(D)の工程では、第2犠牲層(ポリシリコン層)80に形成された開口部OPに、Si3N4層43を埋め込む。Si3N4層43は、支持部材50の立体構造を形成する第3部材となる層である。図4(E)の工程では、Si3N4層45を形成する。Si3N4層45は、支持部材50の立体構造を形成する第2部材となる層である。図4(F)では、支持部材50をパターニングして、例えば、図2(A)に示されるような形状に加工する。
【0076】
図4(G)の工程では、熱型光検出素子(ここでは焦電型の赤外線検出素子とする)5を形成する。熱型光検出素子(焦電型の赤外線検出素子)5は、下部電極1と、今日誘電体層(PZT層)2と、上部電極3と、光(赤外線を含む)吸収層4と、を有する。
【0077】
この後、図2(B)に示したように、第1犠牲層(SiO2層)70を除去して、空洞部10を形成する(図4ではこの工程は図示されない)。次に、図4(H)(ならびに図2(C))に示すように、第2犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、第1アーム52aおよび第2アーム52bの立体構造において、空隙Gが形成され、体積が減じられた第3部材43が得られる。したがって、アーム部52(第1アーム52aおよび第2アーム52b)の熱容量および熱コンダクタンスが低減される。
【0078】
図4(I)には、アーム部52(第1アーム52aおよび第2アーム52b)における横断面の形状の、好ましい寸法の一例が示される。アーム52は、縦寸法および横寸法が共に3μmである。第1部材41の厚みは0.5μmであり、第2部材45の厚みも0.5μmである。第3部材43の高さは2μmであり、横幅は1μmである。第3部材43は、第1部材41および第2部材45の中央部分に連接しており、上下左右にバランスのとれた立体構造となっている。よって、機械的強度が向上する。
【0079】
(第2実施形態)
図5は、支持部材の横断面形状の変形例を示す図である。図5の例では、支持部材50の横断面の立体形状において、第2犠牲層が完全に除去されずに残存している。図5では、この第2犠牲層の残存部には、参照符号80’を付している。第2犠牲層80’は、補強部材として機能する。第2犠牲層80’が残存することによって、例えば、第3部材45を支持する部分の面積が増大し、H型構造の機械的強度が向上する。
【0080】
(第3実施形態)
本実施形態では、上記の、支持部材50自体の熱容量を低減する構造に加えて、製造工程における支持部材50の撓み等を低減して、スティッキング等の問題を抑制するために、支持支柱を利用する。熱容量を低減するために支持部材50の厚みを薄くすると、製造工程において、例えば、熱熱分離用の空洞の形成のためにウエットエッチングを使用した場合には、スティッキング(基板と支持部材との貼り付き(固着))が生じ易くなる。スティッキングは、例えば、ウエットエッチング後の乾燥工程において、液体の表面張力によって生じる。
【0081】
スティッキングを抑制するためには、補助支柱を設けて、製造工程において支持部材を安定に支えるのが好ましいが、単純に補助支柱を設けると、熱伝達の経路となることから、熱容量や熱コンダクタンスが増えてしまう。
【0082】
そこで、製造時には、補助支柱で支持部材を安定に支え、問題となる工程が終了すると、補助支柱を支持部材から切り離して、熱が逃げるのを防止するのが好ましい。例えば、補助支柱の全突出長をL0とし、基板と支持部材間の最大距離をL1(L1>L0)とし、L1とL0の差分に相当する部分には第3犠牲層を形成しておく。そして、問題となる製造工程が終了した後に、犠牲層を除去すれば、補助支柱と支持部材50とを分離することができる。
【0083】
この第3犠牲層としては、例えば、支持部材50の熱容量を低減するために形成される第2犠牲層80の構成材料と同じ材料(ポリシリコン等)を用いることができる。この場合、第1犠牲層70を除去して空洞部10を形成した後、例えば、第2犠牲層および第3犠牲層を同一工程にて除去することによって、支持部材50の熱容量の低減と、補助支柱と基板(の底部)との熱分離とを同時に実現することができる。
【0084】
以下、図6(A)〜図6(E)を参照して説明する。図6(A)〜図6(E)は、補助支柱を有する熱型光検出器の一例(ここでは、焦電型赤外線検出器とする)の構成を説明するための図である。図6(A)は、熱型光検出器の要部の平面図であり、図6(B)は、図6(A)のA−A線に沿う断面図であり、図6(C)〜図6(E)の各々は、補助支柱の構成例を示す図である。図6(A)および図6(B)に示される熱型光検出器は、MEMS(微小電気機械システム)技術(半導体製造技術)を使用して基板上に形成される立体構造を有する、焦電型赤外線検出器(焦電型赤外線センサー)である。基板BSの表面には、エッチングストッパー膜ES(TiN膜)が設けられている。
【0085】
熱型光検出素子としての焦電型赤外線検出素子(焦電型光検出素子)5は、下部電極1と、焦電膜(強誘電体膜)2と、上部電極3と、光吸収膜としての赤外線吸収膜4と、を有する。下部電極(第1電極)1および上部電極(第2電極)3は、例えば、3層の金属膜を積層することによって形成される。例えば、焦電膜(強誘電体膜)2から遠い位置から順に、例えばスパッタリングにて形成されるイリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、焦電膜(強誘電体膜)2としては、例えばPZT(Pb(Zi,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。焦電膜(強誘電体膜)2は、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極(第1電極)1および上部電極(第2電極)3の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、焦電膜(強誘電体膜)2の膜厚は、例えば0.1μm程度である。
【0086】
図6(A)および図6(B)に示されるように、本実施形態では、メイン支柱(主支柱、主ポストあるいは主支持部)55a,55bに加えて、製造時における支持部材50の変位や変形を抑制するため(製造時における機械的強度の補強のため)に、補助支柱(補助ポストあるいは補助支持部)57a,57bが設けられる。
【0087】
図6(A)に示されるように、平面視で、支持部材50における第1アーム52aと重なる位置に、メイン支柱55aと補助支柱57aが設けられており、同様に、平面視で、第2アーム52bに重なる位置に、メイン支柱55bと補助支柱57bが設けられている。合計で4つの支柱(ポスト)が設けられており、赤外線検出素子5からより遠い位置にある2つの支柱55a,55bをメイン支柱と呼び、赤外線検出素子5からより近い位置にある2つの支柱57a,57bを補助支柱と呼んでいる。
【0088】
図6(B)に示されるように、メイン支柱55a,55bは、基板BSと、支持部材50の第1アーム52aまたは第2アーム52bとの間に設けられる。メイン支柱55a,55bの各上面は、第1アーム52aおよび第2アーム52bの各底面に接触し、支持部材50(つまり第1アーム52aおよび第2アーム52b)を支持して、支持部材50(特に、搭載部51)の基板方向への撓み等を抑制している。
【0089】
一方、補助支柱57a,57bは、製造工程中(の一期間)において、支持部材50を支持して撓み等の発生を抑制するために使用される。そして、問題となる製造工程(スティッキングの発生が生じやすい、空洞部10の形成のためのウエットエッチング工程等)が終了した後は、空隙Ga,Gbによって、支持部材50から切り離される(分断された状態となる)。つまり、補助支柱57a,57bの各々は、支持部材50から熱的に分離された状態となる。
【0090】
例えば、補助支柱57a,57bに連接して犠牲膜からなる犠牲層(犠牲層が柱状にパターニングされる場合には犠牲支柱(犠牲スペーサー)ということもできる)を形成しておけば、補助支柱(57a,57b)および犠牲層(犠牲支柱)によって支持部材50を支持することができる。これによって、実質的に、支持部材50の機械的強度が向上したことになる。よって、例えば、ウエットエッチング工程の乾燥処理時等におけるスティッキングの発生を抑制することができる。
【0091】
そして、問題となる工程が終了した後に、必要がなくなった犠牲層(犠牲支柱)を除去することによって、支持部材と補助支柱との間には空隙Ga,Gbが形成される。つまり、熱型光検出器が完成した状態において、支持部材50と基板BSとの間の最大距離をL1とし、補助支柱57a,57bの突出全長をL0としたとき、L1>L0が成立する。そして、L1とL0の差に相当する間隔をもつ空隙Ga,Gbが形成され、これによって、支持部材50と補助支柱57a,57bが熱的に分離される。よって、熱型光検出素子の製造が完了した後は、補助支柱の存在は、支持部材50を経由した熱の拡散には影響を与えない。したがって、熱型光検出素子を支持する支持部材についての熱容量の低減と、製造工程において必要となる機械的強度の確保と、を両立させることができる。
【0092】
なお、メイン支柱55a,55bは、必ず設けなくてはならないものではない。例えば、第1アーム52aおよび第2アーム52bの各々の距離が短い場合には、基板BS側の固定部Qa,Qbの各々で、第1アーム52aおよび第2アーム52bの各々を支持するだけでよい場合もあり得る。
【0093】
補助支柱の形成態様としては、図6(C)〜図6(E)に示され態様が考えられる。図6(C)の例では、補助支柱57が、基板BSから支持部材50に向けて突出しており、空隙(エアギャップ)Gは、支持部材50側に設けられている。図6(A)および図6(B)に示される構造では、この図6(C)の態様の補助支柱が使用されている。
【0094】
また、図6(D)の例では、補助支柱57が、支持部材50から基板BSに向けて突出しており、空隙Gは、基板BS側に設けられている。また、図6(E)の例では、一対の補助支柱57が設けられる。一対の補助支柱57の一方は、支持部材50から基板BSに向けて突出し、その突出長はLaであり、他方は、基板BSから支持部材50に向けて突出し、その突出長はLbである。空隙Gは、一対の補助支柱57の各々に挟まれた位置に形成されている。一対の補助支柱57の全突出長をL0(=La+Lb)とし、基板BSと支持部材50との間の最大距離をL1とすると、L1>L0が成立する。
【0095】
少なくとも一本の補助支柱(57a,57b等)は、断面図で視て、支持部材50の構成要素である搭載部51と基板BSとの間、および少なくとも一本のアーム部(第1アーム52a,第2アーム52b)と基板BSとの間の、少なくとも一方に設けることができる。すなわち、補助支柱(57a,57b等)は、平面視で、搭載部51と重なりを有する位置(つまり、重なりを有するよう)に設けることができ、また、少なくとも一本のアーム(第1アーム52a,第2アーム52b)と重なりを有する位置(つまり、重なりを有するよう)に設けることができる。
【0096】
(補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造と、その製造方法の一例について)
以下、図7(A)〜図7(C)を参照して説明する。図7(A)〜図7(C)は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の一例を示す図である。図7(A)は平面図である。図7(B)は、図7(A)のA−A線に沿う断面図(一点鎖線で囲まれる部分よりも下に位置する部分の断面構造)と、B−B線に沿う断面図(一点鎖線で囲まれる部分の断面構造)とを組み合わせて示す図である。すなわち、補助支柱の構造と、熱容量を低減するための加工がなされた第3部材の構造の双方を、同じ切断線の断面図で示すことができないため、切断線を異ならせ、各断面図を合成して示すものである。また、図7(C)は、図7(A)のC―C線に沿う断面図である。
【0097】
図7(A)において、熱容量を小さくするための加工が施された、アーム部52における第3部材43の平面形状が、太い一点鎖線で示されている。
【0098】
また、図7(B)に示されるように、基板BSと支持部材50との間には熱分離用の空洞部10が形成されている。また、補助支柱57a,57bの各々は、空隙Gaおよび空隙Gbの各々によって、支持部材50から切り離されている。また、アーム部52(第1アーム52a,第2アーム52b)において、第3部材43の一部が除去され、第3部材の体積が減じられている。
【0099】
また、図7(C)に示されるように、アーム部52(第1アーム52a,第2アーム52b)の横断面の立体構造は、H型構造を有する。
【0100】
以下、図8(A)〜図8(D)、図9(A)〜図9(C)、図10(A)および図10(B)、図11(A)および図11(B)を参照して、製造方法について説明する。図8(A)〜図8(D)、図9(A)〜図9(C)、図10(A)および図10(B)、図11(A)および図11(B)の各々は、補助支柱を有し、かつ、支持部材の熱容量が低減された熱型光検出器の立体構造の製造方法の一例を示す図である。
【0101】
工程1(図8(A))
図7(A)〜図7(C)に示される熱型光検出器を形成する場合には、まず、シリコン基板11の一部をエッチング加工して凹部を形成し、凹部表面をエッチングストッパー膜ES(TiN)で覆っておく。次に、図8(A)に示すように、空洞部10となるべき空間を埋める(充填する)ように、基板BS上に第1犠牲層(SiO2層)70を形成する。次に、第1犠牲層(SiO2層)70をパターニングして、メイン支柱および補助支柱を形成するべき位置に、開口部71を形成する。
【0102】
工程2(図8(B))
次に、図8(B)に示すように、開口部71に、メイン支柱層55a,55bおよび補助支柱層57a,57bとしてのシリコンナイトライド層(Si3N4層)を埋め込む。具体的には、例えば、全面にシリコンナイトライド層(Si3N4層)を形成した後、エッチバック処理によって第1犠牲層70上のシリコンナイトライド層(Si3N4層)を除去することで、開口部71に、メイン支柱層および補助支柱層としてのシリコンナイトライド層(Si3N4層)を埋め込むことができる。つまり、第1犠牲層70に選択的に設けられた開口部71に補助支柱層を埋め込むことによって補助支柱57a,57bを形成することができる。この方法によれば、半導体の製造方法(フォトリソグラフィー)を利用して、補助支柱57a,57bを無理なく形成することができる。
【0103】
工程3,工程4(図8(C),図8(D))
次に、図8(C)に示すように、第3犠牲層(Poly−Si層)79を形成する。次に、図8(D)に示すように、第3犠牲層(Poly−Si層)79をパターニングして、犠牲支柱(犠牲スペーサー)としての第3犠牲層(Poly−Si層)79a,79bを形成する。
【0104】
工程5(図9(A))
次に、図9(A)に示すように、支持部材50の構成膜の一つである、第1部材としてのシリコン窒化膜(Si3N4膜)41を形成する。
【0105】
工程6(図9(B))
次に、図9(B)に示すように、第2犠牲層としてのポリシリコン層(Poly−Si層)80を形成した後、パターニングして開口部を形成し、その開口部に、支持部材50の構成膜の一つである、第3部材としてのシリコン窒化膜(Si3N4膜)43を埋め込み形成する。
【0106】
工程7(図9(C))
次に、支持部材50の構成膜の一つである、第2部材としてのシリコン窒化膜(Si3N4膜)45を形成する。これらの積層膜によって、支持部材(メンブレン)50が構成される(但し、第2犠牲層としてのポリシリコン層(Poly−Si層)80は後に除去される)。
【0107】
工程8(図10(A))
次に、図10(A)に示すように、下部電極の構成材料層1’と、強誘電体層(PZT層)2’と、上部電極の構成材料層3’とを順次、積層形成する。下部電極構成材料層1’および上部電極構成材料層3’の各々は、例えば、強誘電体層2’から遠い位置から順に、イリジウム(Ir)、イリジウム酸化物(IrOx)及びプラチナ(Pt)の三層構造とすることができる。また、強誘電体層2’としては、PZT(Pb(Zi,Ti)O3:チタン酸ジルコン酸鉛)を用いることができる。これらは、例えば、スパッタリング法やMOCVD法等で成膜することができる。下部電極構成材料層1’および上部電極構成材料層3’の膜厚は、例えば0.4μm程度であり、強誘電体層2’の膜厚は、例えば0.1μm程度である。
【0108】
工程9(図10(B))
次に、図10(B)に示すように、下部電極の構成材料層1’、強誘電体層(PZT層)2’ならびに上部電極の構成材料層3’の各々をパターニングして、下部電極1、強誘電体膜(PZT膜)2ならびに上部電極3を構成する(これによって、積層コンデンサーが形成される)。次に、積層コンデンサー上を電気的絶縁膜60で覆う。次に、光吸収膜(赤外線吸収膜)4と、引き出し電極層65と、を形成する。光吸収膜(赤外線吸収膜)4は、例えばSiO2膜である。
【0109】
工程10(図11(A))
次に、図11(A)に示すように、第1犠牲層70(SiO2層)を、例えば弗酸系のエッチング液を用いて除去する。これによって、基板BS支持部材50との間に空洞部10が形成される。この空洞部10は、支持部材50を、基板から熱的に分離する機能を有する。このとき、支持部材50は、メイン支柱55a,55bならびに補助支柱57a,57bによって安定的に支持されるため、変位や変形が抑制され、スティッキングが生じにくい。
【0110】
なお、第1犠牲層(SiO2層)70のエッチング除去の際、メイン支柱55a,55b、補助支柱57a,57bならびに第2犠牲層80は構成材料が異なることから、除去されずに残存する。また、シリコン基板11の表面にはエッチングストッパー膜ES(TiN膜)が形成されており、また、支持部材(メンブレン)50の表裏面はSi3N4膜であることから、これらもエッチングによって除去されずに残存する。
【0111】
工程11(図11(B))
次に、図11(B)に示すように、第2犠牲層(Poly−Siからなる犠牲支柱(犠牲スペーサー))79a,79b、ならびに、第3犠牲層(Poly−Si層)80を、例えばドライエッチングによって除去する。これによって、補助支柱79a,79bを支持部材50から切り離すための空隙Ga,Gbが形成され、また、支持部材50の熱容量を小さくするための空隙Gx,Gyも同時に形成される。
【0112】
ポリシリコン層79,80のエッチングは、スティッキング防止のために、ドライエッチング(例えば、XeF2系のエッチングガスを用いたプラズマドライエッチング)によって除去するのが好ましい。なお、ウエットエッチングとドライエッチングを併用することも可能であるが、この場合、仕上げのエッチングにはドライエッチングを使用することが好ましい。この方法によれば、半導体の製造方法(フォトリソグラフィー)を利用して、熱分離用の空隙Ga,Gbならびに支持部材50の熱容量を減らすための空隙Gx,Gyを無理なく形成することができる。
【0113】
熱型光検出素子が、例えば気密封止パッケージの減圧環境におかれることによって、空隙Ga,Gbによる熱分離機能が高まる。空隙Ga,Gbの形成によって、補助支柱57a,57bを経由する放熱経路が遮断される。よって、補助支柱57a,57bの存在は、支持部材の熱容量や熱コンダクタンスには影響を与えない。このようにして、熱型光検出器(赤外線検出器等)が形成される。この熱型光検出器(赤外線検出器等)は、半導体製造技術を用いて製造されることから微細化(小型化)が可能であり、補助支柱(補助ポスト)は空隙によって支持部材から熱分離されていることから素子特性の低下を招かず、かつ、製造工程において、スティッキング等による不良が生じにくいことから、歩留まりよく製造することができる。
【0114】
また、空隙Gx,Gy(第2犠牲層としてのポリシリコン層80を除去することによって形成される空隙)の分だけ、支持部材50の構成膜である、第3部材43の体積を小さくすることができる。これによって、支持部材50の熱容量ならびに熱コンダクタンスを小さくすることができる。
【0115】
このように、本実施形態によれば、熱容量が小さく(つまり熱感応性が高く)、熱コンダクタンス小さい熱型光検出器(赤外線検出素子等)を得ることができる。また、歩留まりよく(つまり、製造工程において、スティッキング等による不良が生じにくい)熱型光検出器(赤外線検出器等)を製造することもできる。
【0116】
(第4実施形態)
図12は、熱型光検出器の他の例(基板上にトランジスター等の回路素子が形成された例)を示す図である。図12の上側に熱型光検出器(熱型赤外線検出器)の平面図が示され、下側に断面図が示される。図12において、前掲の図面と共通する部分には同じ参照符号を付してある。
【0117】
図12において、P型のシリコン基板11の表面には、薄い酸化膜(ゲート酸化膜)15が形成されており、ゲート酸化膜15上には、MOSトランジスターのゲート(例えばシリコンゲート)9が形成されている。ゲート9およびN型拡散層7a,7bは、MOSトランジスターM1を構成する。このMOSトランジスターM1は、例えば、図13に記載される光検出セルCL1における、選択トランジスターM1として利用することができる。
【0118】
シリコン基板11上には層間絶縁膜13(SiO2層)が形成されている。層間絶縁膜13上に、先に説明した立体構造が形成されている。本実施形態では、シリコン基板11と層間絶縁膜13ならびにSi3N4膜Qa,Qbを含めた部分が、広義の基板BS(基部BS)となる。
【0119】
本実施形態では、3本の補助支柱(57a〜57c)が設けられている。各補助支柱(57a〜57c)と支持部材50との間には、空隙Ga〜Gcが形成されている。なお、本実施形態では、メイン支柱は使用されていない。また、図12の例では、3つのコンタクト部(CX1〜CX3)が設けられている。各コンタクト部(CX1〜CX3)は、1層目メタル31と、コンタクトプラグ32と、2層目メタル32と、コンタクトプラグ34と、3層目メタル35と、コンタクトプラグ36と、4層目メタル37と、によって構成される。
【0120】
また、支持部材(メンブレン)50のアーム部52には、支持部材50の熱容量を低減するための空隙Gx,Gyが設けられている。
【0121】
(第5実施形態)
図13は、熱型光検出装置(熱型光検出アレイ)の回路構成の一例を示す回路図である。図13の例では、複数の光検出セル(CL1〜CL4等)が、2次元的に配置されている。複数の光検出セル(CL1〜CL4等)の中から一つの光検出セルを選択するために、走査線(W1a,W1b等)と、データ線(D1a,D1b等)が設けられている。
【0122】
光検出セルCL1は、熱形光検出素子5としての圧電コンデンサーZCと、素子選択トランジスターM1aと、を有する。圧電コンデンサーZCの両極の電位関係は、PDr1に印加する電位を切り換えることによって反転することができる(この電位反転によって、機械的なチョッパーを設ける必要がなくなる)。なお、光検出セルCL2も同様の構成である(他の光検出セルも構成は同じである)。
【0123】
データ線D1aの電位は、リセットトランジスターM2をオンすることによって初期化することができる。検出信号の読み出し時には、読み出しトランジスターM3がオンする。焦電効果によって生じる電流は、I/V変換回路510によって電圧に変換され、アンプ600によって増幅され、A/D変換器700によってデジタルデータに変換される。
【0124】
本実施形態では、複数の熱型光検出器(熱型光検出素子)が2次元的に配置された(例えば、直交2軸(X軸およびY軸)の各々に沿ってアレイ状に配置された)、熱型光検出装置(熱型光アレイセンサー)が実現される。
【0125】
(第6実施形態)
図14(A)および図14(B)は、補助支柱を有するボロメーターの例を示す図である。図14(A)は平面図であり、図14(B)はA−A線に沿う断面図である。本実施形態のボロメーターは、例えば、感熱抵抗素子を用いたボロメーターである。
【0126】
図14(A),図14(B)に示すように、基板BSには、熱分離用の空洞部10が形成されている。支持部材50は、空洞部10を介して基板BSから離間して設けられている。支持部材50には、4つの搭載部51a〜51dが設けられている。搭載部51a〜51dの各々には、4つの感熱抵抗素子(SiC薄膜サーミスター等)5a’〜5d’の各々が搭載されている。各感熱抵抗素子5a’〜5d’は、例えば、ブリッジ回路を構成するように相互に接続される。
【0127】
また、支持部材50には、空隙Ge,Gf,Ggが設けられており、支持部材50の熱容量が低減されている。
【0128】
(第7の実施形態)
図15に本実施形態の熱型光検出器や熱型光検出装置を含む電子機器の構成例を示す。電子機器は、例えば赤外線カメラである。図示されるように、電子機器は、光学系400と、センサーデバイス(熱型光検出装置)410と、画像処理部420と、処理部430と、記憶部440と、操作部450と、表示部460とを含む。なお本実施形態の電子機器は図15の構成に限定されず、その構成要素の一部(例えば光学系、操作部、表示部等)を省略したり、他の構成要素を追加したりする等の種々の変形実施が可能である。
【0129】
光学系400は、例えば1または複数のレンズや、これらのレンズを駆動する駆動部などを含む。そしてセンサーデバイス(熱型光検出装置)410への物体像の結像などを行う。また必要であればフォーカス調整なども行う。
【0130】
センサーデバイス410は、上述した本実施形態の光検出器を二次元配列させて構成され、複数の行線(走査線(あるいはワード線))と複数の列線(データ線)が設けられる。センサーデバイス410は、二次元配列された光検出器に加えて、行選択回路(行ドライバー)と、列線を介して光検出器からのデータを読み出す読み出し回路と、A/D変換部等を含むことができる。二次元配列された各光検出器からのデータを順次読み出すことで、物体像の撮像処理を行うことができる。
【0131】
画像処理部420は、センサーデバイス410からのデジタルの画像データ(画素データ)に基づいて、画像補正処理などの各種の画像処理を行う。処理部430は、電子機器の全体の制御や電子機器内の各ブロックの制御を行う。この処理部430は、例えばCPU等により実現される。記憶部440は、各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部430や画像処理部420のワーク領域として機能する。操作部450は、ユーザが電子機器を操作するためのインターフェースとなるものであり、例えば各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面などにより実現される。
【0132】
表示部460は、例えばセンサーデバイス410により取得された画像やGUI画面などを表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの各種のディスプレイにより実現される。
【0133】
このように、1セル分の熱型光検出器を赤外線センサー等のセンサーとして用いる他、1セル分の熱型光検出器を、例えば直交二軸方向に二次元配置することでセンサーデバイス(熱型光検出装置)410を構成することができ、こうすると熱(光)分布画像を提供することができる。このセンサーデバイス410を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラなどの電子機器を構成することができる。
【0134】
もちろん、1セル分または複数セルの熱型光検出器をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場などに設けられるFA(Factory Automation)機器などの各種の電子機器を構成することもできる。
【0135】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。例えば、第1犠牲層、第2犠牲層および第3犠牲層の構成材料、それらの除去方法等に関しては種々、変形が可能である。
【0136】
本発明の少なくとも一つの実施形態によれば、例えば、熱型光検出素子を支持する支持部材についての熱容量の低減と、製造工程において必要となる機械的強度の確保と、を両立させることができる。また、スティッキングの問題を抑制して、歩留まりよく熱型光検出器を製造することもできる。
【0137】
本発明は、種々の熱型光検出器(例えば、熱伝対型素子(サーモパイル)、焦電型素子、ボロメーター等)に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。
【符号の説明】
【0138】
5 熱型光検出素子(光検出素子)としての赤外線検出素子、10 空洞部、
11 シリコン基板、41 支持部材の構成層としての第1部材、
45 支持部材の構成層としての第2部材、43 支持部材の構成層としての第3部材、50 支持部材(メンブレン)、51 搭載部、G(Ga,Gb,Gx,Gy) 空隙、
52(52a,52b) アーム部(第1アーム、第2アーム)、
55a,55b メイン支柱、57a,57b 補助支柱、70 第1犠牲層、
80 第2犠牲層、79 第3犠牲層、BS 基板(センサー基部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
光吸収膜を含む熱型光検出素子と、
前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、
前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持される少なくとも一本のアーム部と、を有し、
前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、
前記基板側に設けられる、横断面の形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、
前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、横断面の形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、
前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、かつ前記横断面の形状の横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材と、
を有することを特徴とする熱型光検出器。
【請求項2】
請求項1記載の熱型光検出器であって、
前記第1部材と、前記第2部材と、一つの前記第3部材とで構成される立体構造の横断面は、H型断面であることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の熱型光検出器であって、
前記少なくとも一本のアーム部は、一端が前記搭載部の一端に連結され、他端が前記基板に支持される前記第1アームと、一端が前記搭載部の他端に連結され、他端が前記基板に支持され、延在方向が前記第1アームと同じ方向である第2アームと、を有しており、かつ、前記第1アーム、前記第2アームならびに前記搭載部の各々は、前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材によって構成されており、
前記搭載部における前記第3部材は、
前記第1アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第1アームの延在方向である第1方向に延出する第1部分と、
前記第2アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第2アームの延在方向である前記第1方向に延出する第2部分と、
前記第1部分および前記第2部分の各々に接続されると共に、前記第1方向と垂直な方向である第2方向に延出する第3部分と、
を有することを特徴とする熱型光検出器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱型光検出器であって、
前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、
前記少なくとも一本の補助支柱の突出全長は、前記基板と前記支持部材との間の最大距離よりも小さく設定されていることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱型光検出器であって、
前記熱型光検出素子は、赤外線検出素子であることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱型光検出器が複数、2次元配置されていることを特徴とする熱型光検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱型光検出器を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項6記載の熱型光検出装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
基板と、光吸収膜を含む熱型光検出素子と、前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持された少なくとも一本のアーム部と、を有し、前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、前記基板側に設けられる、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、横断面形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、その横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材と、を有する熱型光検出器の製造方法であって、
第1犠牲層を、前記基板と前記支持部材との間の空洞部となるべき空間を埋めるように前記基板上に形成する工程と、
前記第1犠牲層上に、前記第1部材と、前記第2部材と、前記第3部材と、前記第3部材に隣接する、前記第1幅と前記第2幅との差に対応する空間を埋めるように設けられる、前記第1犠牲層の構成材料とは異なる材料で構成される第2犠牲層と、を有する前記支持部材を形成する工程と、
前記支持部材上に、前記熱型光検出素子を形成する工程と、
前記第1犠牲層を除去する工程と、
前記第2犠牲層を除去する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の熱型光検出器の製造方法であって、
前記熱型光検出器は、前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、
前記少なくとも一本の補助支柱が第1補助支柱を含むとした場合に、前記第1補助支柱としての補助支柱層を形成する工程と、
前記第1補助支柱層に連接し、前記補助支柱層および前記第1犠牲層の各々の構成材料とは異なる材料からなり、前記第2犠牲層と同じ材料からなり、かつ、前記第1補助支柱層の突出長と前記第1犠牲層の膜厚に相当する突出長とを合計した合計突出長が、前記基板と前記支持部材との間の前記最大距離となるように、前記膜厚が設定された第3犠牲層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。
【請求項1】
基板と、
光吸収膜を含む熱型光検出素子と、
前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、
前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持される少なくとも一本のアーム部と、を有し、
前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、
前記基板側に設けられる、横断面の形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、
前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、横断面の形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、
前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、かつ前記横断面の形状の横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材と、
を有することを特徴とする熱型光検出器。
【請求項2】
請求項1記載の熱型光検出器であって、
前記第1部材と、前記第2部材と、一つの前記第3部材とで構成される立体構造の横断面は、H型断面であることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の熱型光検出器であって、
前記少なくとも一本のアーム部は、一端が前記搭載部の一端に連結され、他端が前記基板に支持される前記第1アームと、一端が前記搭載部の他端に連結され、他端が前記基板に支持され、延在方向が前記第1アームと同じ方向である第2アームと、を有しており、かつ、前記第1アーム、前記第2アームならびに前記搭載部の各々は、前記第1部材、前記第2部材および前記第3部材によって構成されており、
前記搭載部における前記第3部材は、
前記第1アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第1アームの延在方向である第1方向に延出する第1部分と、
前記第2アームにおける前記第3部材に連接すると共に、前記第2アームの延在方向である前記第1方向に延出する第2部分と、
前記第1部分および前記第2部分の各々に接続されると共に、前記第1方向と垂直な方向である第2方向に延出する第3部分と、
を有することを特徴とする熱型光検出器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱型光検出器であって、
前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、
前記少なくとも一本の補助支柱の突出全長は、前記基板と前記支持部材との間の最大距離よりも小さく設定されていることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱型光検出器であって、
前記熱型光検出素子は、赤外線検出素子であることを特徴とする熱型光検出器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱型光検出器が複数、2次元配置されていることを特徴とする熱型光検出装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の熱型光検出器を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項6記載の熱型光検出装置を含むことを特徴とする電子機器。
【請求項9】
基板と、光吸収膜を含む熱型光検出素子と、前記熱型光検出素子を支持すると共に、前記基板に支持されている支持部材と、を含み、前記支持部材は、前記熱型光検出素子を搭載する搭載部と、一端が前記搭載部に連結され、他端が前記基板に支持された少なくとも一本のアーム部と、を有し、前記搭載部および前記少なくとも一本のアーム部に含まれる第1アーム、の少なくとも一方は、前記基板側に設けられる、横断面形状の横幅が第1幅に設定されている第1部材と、前記熱型光検出素子側において前記第1部材に対向して設けられ、横断面形状の横幅が前記第1幅に設定されている第2部材と、前記第1部材と第2部材とを連結すると共に、少なくとも一つの横断面の形状の高さが所定高さに設定され、その横幅が前記第1幅よりも小さい第2幅に設定されている第3部材と、を有する熱型光検出器の製造方法であって、
第1犠牲層を、前記基板と前記支持部材との間の空洞部となるべき空間を埋めるように前記基板上に形成する工程と、
前記第1犠牲層上に、前記第1部材と、前記第2部材と、前記第3部材と、前記第3部材に隣接する、前記第1幅と前記第2幅との差に対応する空間を埋めるように設けられる、前記第1犠牲層の構成材料とは異なる材料で構成される第2犠牲層と、を有する前記支持部材を形成する工程と、
前記支持部材上に、前記熱型光検出素子を形成する工程と、
前記第1犠牲層を除去する工程と、
前記第2犠牲層を除去する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の熱型光検出器の製造方法であって、
前記熱型光検出器は、前記基板および前記支持部材の少なくとも一方から他方に向けて突出する少なくとも一本の補助支柱をさらに含み、
前記少なくとも一本の補助支柱が第1補助支柱を含むとした場合に、前記第1補助支柱としての補助支柱層を形成する工程と、
前記第1補助支柱層に連接し、前記補助支柱層および前記第1犠牲層の各々の構成材料とは異なる材料からなり、前記第2犠牲層と同じ材料からなり、かつ、前記第1補助支柱層の突出長と前記第1犠牲層の膜厚に相当する突出長とを合計した合計突出長が、前記基板と前記支持部材との間の前記最大距離となるように、前記膜厚が設定された第3犠牲層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする熱型光検出器の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−153845(P2011−153845A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14085(P2010−14085)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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