説明

熱媒ボイラ

【課題】 熱媒ボイラから排出される排ガスの熱を一層有効に利用し、バーナに送り込まれる燃焼用空気を効率良く予熱することができる熱媒ボイラを得る。
【解決手段】 熱媒ボイラから排出される排ガスと送風機7からバーナ1に送り込まれる燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータ10を備えた熱媒ボイラであって、高温気体が流通するダクト16の表面に沿って低温の燃焼用空気が流れるように吸引空気路Bを形成し、高温気体が流通するダクト16の外表面の熱を低温側である燃焼用空気側に伝達して低温の燃焼用空気を加熱するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒ボイラから排出される排ガスと送風機からバーナに送り込まれる燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
熱媒ボイラは、油等の熱媒油を高温(250℃〜300℃)に加熱し、この熱媒油を熱源として間接的に熱を使用するものとして広く利用されている。熱媒油の温度は、利用される温度が高いこともあり、加熱される熱媒油の温度は300℃近傍となるため、熱媒ボイラで加熱したあとの排ガス温度が350℃程度と高く、持ち去られるエネルギーが大きく、例えば、小型貫流型の蒸気ボイラ効率が92%程度であるのに対して、熱媒ボイラではボイラ効率が80%程度と熱効率が低い。熱媒ボイラの効率を上げるためには、ボイラ排ガスと燃焼用空気との熱交換による排ガス温度の低減方法が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
特許文献1では、燃焼用バーナが設置されているウインドボックス内に排ガスと燃焼用空気を熱交換して燃焼用空気を加熱する技術や、ウインドボックス内に輻射体を設けて、その内部に燃焼用空気を流入させて予熱した空気をバーナに供給する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、燃焼用バーナを含むウインドボックスの構造が複雑となり、また、より効率を向上させるために熱交換量を増加させようとするとウインドボックスが大型化してしまうといった問題がある。
【0004】
熱交換量を増加させながらウインドボックスの大型化を避けるため、排ガス煙道にレキュペレータと呼ばれる熱交換器を配置して、燃料用空気と熱交換する方法がある(特許文献2参照。)。レュペレータを出た燃料用空気は空気配管を十手バーナに送気されるが、この配管の中を通る高温の空気からの放熱を防止するため、この配管の外部には断熱材を用いた断熱構造を取るのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−243605号公報
【特許文献2】特開平8−312944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記熱媒ボイラでは、レキュペレータで予熱された燃焼用空気を断熱された空気配管に通して燃焼バーナに送気するだけであるので、断熱材表面から大気への放熱が避けられず、効率向上の障害となっていた。
本発明者は、排ガスの熱を一層有効に利用し、燃焼用空気を効率良く予熱することについて試験研究を続け、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の目的は、熱媒ボイラから排出される排ガスの熱を一層有効に利用し、バーナに送り込まれる燃焼用空気を効率良く予熱することができる熱媒ボイラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、熱媒ボイラから排出される排ガスと送風機からバーナに送り込まれる燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、高温気体が流通するダクトの表面に沿って低温の燃焼用空気が流れるように吸引空気路を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、高温気体が流通するダクトの表面に沿って低温の燃焼用空気が流れるように吸引空気路を形成したので、熱媒ボイラから排出される高温気体である排ガス、または熱媒ボイラから排出される排ガスと熱交換して高温気体となった燃焼用空気が流通するダクトの外表面の熱を低温側である燃焼用空気側に伝達して燃焼用空気を加熱し、ここで加熱され昇温した燃焼用空気がさらにレキュペレータに送り込まれて高温の排ガスと熱交換するので、熱交換された燃焼用空気は従来の熱媒ボイラにおけるレキュペレータで熱交換された燃焼用空気に比べ高温となるとともに、低温の燃焼用空気が高温気体が流通するダクトの表面に沿って流れるように構成したので、大気との温度差が小さくなり放熱をより小さくすることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記レキュペレータとバーナとの間に配置される燃焼用空気供給ダクトを二重構造とし、内側流路をバーナと接続される供給空気路とするとともに、外側流路を吸引空気路とし、前記外側流路の一端側に空気吸引口を開口し、他端側を前記送風機の吸い込み側と接続したことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記レキュペレータとバーナとの間に配置される燃焼用空気供給ダクトを二重構造とし、内側流路をバーナと接続される供給空気路とするとともに、外側流路を吸引空気路とし、前記外側流路の一端側に空気吸引口を開口し、他端側を前記送風機の吸い込み側と接続したので、前記空気吸引口から前記外側流路へ吸い込まれた低温の燃焼用空気は、前記内側流路の前記外側流路側表面から放出される内側流路を流通する高温気体となった燃焼用空気の熱を吸収し、さらに、ここで加熱され昇温した燃焼用空気が前記送風機に吸い込まれ、レキュペレータに送り込まれて高温の排ガスと熱交換するので、熱交換された燃焼用空気は従来の熱媒ボイラにおけるレキュペレータで熱交換された燃焼用空気より高温となってバーナに送り込まれる。
また、前記内側流路を流通する燃焼用空気は前記外側流路を流通する低温の燃焼用空気により断熱され、前記外側流路を流通する燃焼用空気は外部の大気との温度差が小さくなるため、放熱をより小さくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高温気体が流通するダクトの表面に沿って低温の燃焼用空気が流れるように吸引空気路を形成したので、高温気体が流通するダクトから放出される熱により吸引空気路を流れる低温の燃焼用空気を加熱することができ、ここで加熱され昇温した燃焼用空気がレキュペレータに送り込まれ、高温の排ガスと熱交換するので、熱交換された燃焼用空気は従来の熱媒ボイラにおけるレキュペレータで熱交換された燃焼用空気より高温となってバーナに送り込まれることから、燃焼効率が向上し燃料消費量の一層の低減を図ることができるとともに、大気への放熱量が減少するので熱損失を低減し、断熱材の密度も下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第1例を示す概略構成図である。
【図2】二重構造に構成した燃焼用空気供給ダクトの一例を示す概略構成図である。
【図3】二重構造に構成した燃焼用空気供給ダクトの他例を示す概略構成図である。
【図4】二重構造に構成した燃焼用空気供給ダクトの他例を示す概略構成図である。
【図5】二重構造に構成した燃焼用空気供給ダクトの他例を示す概略構成図である。
【図6】本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第2例を示す概略構成図である。
【図7】本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第3例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る熱媒ボイラを実施するための形態を、図面に示す実施例を参照して詳細に説明する。
図1乃至図5は本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第1例を示すものであり、図1は本例の熱媒ボイラを示す概略構成図、図2は二重構造に構成した燃焼用空気供給ダクトの一例を示す概略構成図、図3、図4、図5はそれぞれ二重構造に構成した燃焼用空気供給ダクトの他例を示す概略構成図である。
【0015】
本例の熱媒ボイラは、上部にバーナ1が配置され、熱媒油加熱管4をコイル状に形成した缶体5の内側に燃焼室2を形成している。バーナ1はウインドボックス9に取り付けられており、ウインドボックス9に燃焼用空気供給ダクト6を介して燃焼用空気を送り込む送風機7を備えている。燃焼室2で発生した排ガスは、コイル状の熱媒油加熱管4の隙間を通過して排ガスダクト8に集合するように流れ、大気へ放出される。熱媒油加熱管4は熱媒液の循環ライン3に接続されている。
【0016】
また、排ガスダクト8と燃焼用空気供給ダクト6とに接続し、排ガスダクト8を流通する排ガスと燃焼用空気供給ダクト6を流通する燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータ10を備えている。
本例では、レキュペレータ10とバーナ1に併設されたウインドボックス9との間に配置される燃焼用空気供給ダクト6における、レキュペレータ10の下流側に位置する下流側燃焼用空気供給ダクト6aを二重構造に構成しており、内側流路11をバーナ1と接続される供給空気路Aとするとともに、外側流路12を吸引空気路Bとし、外側流路12の一端側に空気吸引口13を開口し、他端側を吸引空気ダクト14を介して送風機7の吸い込み側と接続している。この吸引空気ダクト14にあっては、内側流路11と外側流路12を仕切る仕切壁15から放出される高温の燃焼用空気の熱で加熱された外側流路12を流れる燃焼用空気の放熱を防ぐため可能な限り短くすることが好ましい。
【0017】
下流側燃焼用空気供給ダクト6aにあっては、内部が仕切壁15によって仕切られ、内側流路11と外側流路12が形成されていればよい。図2に示す下流側燃焼用空気供給ダクト6aは、仕切壁15で構成される内側ダクト16と、内側ダクト16の外周に配置された外側ダクト17による二重筒状となっている。
図3に示す下流側燃焼用空気供給ダクト6aは、内側ダクト16の外周囲にパイプ18を螺旋状に密に巻き付けて外側ダクト17とし、パイプ18内を外側流路12としている。
図4に示す下流側燃焼用空気供給ダクト6aは、内側ダクト16の外周囲に断面コ字状の樋状体19を、開口側が内側ダクト16の外周囲でシールされるようにして螺旋状に密に巻き付けて外側ダクト17とし、樋状体19内を外側流路12としている。なお、樋状体19にあっては、断面コ字状に限られるものではなく、断面略半円形状であってもよい。
図5に示す下流側燃焼用空気供給ダクト6aは、パイプ18をコイル状にして筒状体を形成し、筒状体を外側ダクト17とし、パイプ18内を外側流路12としている。なお、図示したパイプ18は断面四角形となっているが、断面円形であってもよい。
また、図2乃至図5に示す下流側燃焼用空気供給ダクト6aは、いずれも四角筒となっているが、円筒であってもよい。
【0018】
また、排ガスダクト8にあっては、排ガスの熱をより有効に利用するために、ボイラ管体5とレキュペレータ10の間に配置される上流側排ガスダクト8aを断熱材等で断熱しておくことが好ましい。なお、図中20はバーナ1に燃料ガスを供給する燃料供給ラインである。
【0019】
このように構成した本例の熱媒ボイラによれば、レキュペレータ10で排ガスと熱交換して高温気体となった燃焼用空気が下流側燃焼用空気供給ダクト6aの内側流路11を流れ、内側流路11と外側流路12の仕切壁15、すなわち内側ダクト16の外表面の熱により空気吸引口13から外側流路12へ吸い込まれた低温の燃焼用空気側に伝達して低温の燃焼用空気が加熱される。そして、ここで加熱され昇温した燃焼用空気は、外側流路12の他端側から吸引空気ダクト14を介して送風機7の吸い込み側へと流れて送風機7に吸い込まれ、送風機7からレキュペレータ10の上流側に位置する上流側燃焼用空気供給ダクト6bに送り込まれ、上流側燃焼用空気供給ダクト6bからレキュペレータ10に送り込まれて排ガスと熱交換し、熱交換された燃焼用空気は従来の熱媒ボイラにおけるレキュペレータで熱交換された燃焼用空気より高温となってバーナ1に併設されているウインドボックス9に送り込まれる。
【0020】
図6は本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第2例を示す概略構成図である。
本例の熱媒ボイラについて、前記第1例と同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略し、第1例と異なる構成についてのみ説明する。
本例の熱媒ボイラは、排ガスダクト8における、ボイラ缶体5とレキュペレータ10との間に配置される上流側排ガスダクト8aを二重構造に構成しており、内側流路11を排ガス流路とするとともに、外側流路12を吸引空気流路とし、外側流路12の一端側に空気吸引口13を開口し、他端側を吸引空気ダクト14を介して送風機7の吸い込み側と接続している。二重構造に構成の上流側排ガスダクト8aにあっては、第1例で説明した図2乃至5に示す構成と同様の構成にすることができる。
その他の構成は前記第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、その説明を省略する。
【0021】
このように構成した本例の熱媒ボイラによれば、上流側排ガスダクト8aの内側流路11を流れる高温気体である排ガスの熱で、空気吸引口13から外側流路12へ吸い込まれ外側流路12を流れる低温の燃焼用空気が加熱される。
このようにして、外側流路12を流通する過程で加熱され昇温した燃焼用空気は、外側流路12の他端側から吸引空気ダクト14を介して送風機7の吸い込み側へと流れて送風機7に吸い込まれ、送風機7からレキュペレータ10の上流側に位置する上流側燃焼用空気供給ダクト6bに送り込まれ、上流側燃焼用空気供給ダクト6bからレキュペレータ10に送り込まれて排ガスと熱交換し、熱交換された燃焼用空気は従来の熱媒ボイラにおけるレキュペレータで熱交換された燃焼用空気より高温となってバーナ1に併設されているウインドボックス9に送り込まれる。
【0022】
図7は本発明に係る熱媒ボイラの実施の形態の第3例を示す概略構成図である。
本例の熱媒ボイラについて、前記第1例と同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略し、第1例と異なる構成についてのみ説明する。
本例の熱媒ボイラは、送風機7の吸い込み側に接続する吸引空気ダクト14と排ガスダクト8とにレキュペレータ10が接続している。そして、吸引空気ダクト14における、送風機7とレキュペレータ10との間に配置される下流側吸引空気ダクト14aを二重構造に構成しており、内側流路11を下流側吸引空気ダクト14aの流路とするとともに、外側流路12を吸引空気流路とし、外側流路12の一端側に空気吸引口13を開口し、他端側を上流側吸引空気ダクト14bと接続している。二重構造に構成の上流側排ガスダクト8aにあっては、第1例で説明した図2乃至5に示す構成と同様の構成にすることができる。
その他の構成は前記第1例と同様なので、第1例の説明を援用し、その説明を省略する。
【0023】
このように構成した本例の熱媒ボイラによれば、レキュペレータ10で排ガスと熱交換して高温気体となった燃焼用空気が下流側吸引空気ダクト14aの内側流路11を流れ、内側流路11を流れる高温気体となった燃焼用空気の熱で、空気吸引口13から外側流路12へ吸い込まれ外側流路12を流れる低温の燃焼用空気が加熱される。
このようにして、外側流路12を流通する過程で加熱され昇温した燃焼用空気は、外側流路12の他端側に接続している上流側吸引空気ダクト14bを通り、レキュペレータ10に送り込まれて排ガスと熱交換し、熱交換された燃焼用空気は従来の熱媒ボイラにおけるレキュペレータで熱交換された燃焼用空気より高温となる。この高温となった燃焼用空気は送風機7の吸い込み側へと流れて送風機7に吸い込まれ、送風機7から燃焼用空気供給ダクト6を通ってバーナ1に併設されているウインドボックス9に送り込まれる。
【符号の説明】
【0024】
1 バーナ
2 燃焼室
3 循環ライン
4 熱媒油加熱管
5 ボイラ缶体
6 燃焼用空気供給ダクト
6a 下流側燃焼用空気供給ダクト
6b 上流側燃焼用空気供給ダクト
7 送風機
8 排ガスダクト
8a 上流側排ガスダクト
8b 下流側排ガスダクト
9 ウインドボックス
10 レキュペレータ
11 内側流路
12 外側流路
13 空気吸引口
14 吸引空気ダクト
14a 下流側吸引空気ダクト
14b 上流側吸引空気ダクト
15 仕切壁
16 内側ダクト
17 外側ダクト
18 パイプ
19 樋状体
20 燃料供給ライン
A 供給空気路
B 吸引空気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒ボイラから排出される排ガスと送風機からバーナに送り込まれる燃焼用空気とを熱交換して燃焼用空気を予熱するレキュペレータを備えた熱媒ボイラであって、
高温気体が流通するダクトの表面に沿って低温の燃焼用空気が流れるように吸引空気路を形成したことを特徴とする熱媒ボイラ。
【請求項2】
前記レキュペレータとバーナとの間に配置される燃焼用空気供給ダクトを二重構造とし、内側流路をバーナと接続される供給空気路とするとともに、外側流路を前記吸引空気路とし、前記外側流路の一端側に空気吸引口を開口し、他端側を前記送風機の吸い込み側と接続したことを特徴とする請求項1に記載の熱媒ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76496(P2013−76496A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216030(P2011−216030)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】