説明

熱媒冷却装置及び熱媒冷却装置の運転方法

【課題】機械式の冷却設備の冷却能力を超える熱負荷がかかった場合や能力を超える設定温度に熱媒を冷却する必要がある場合に、コストの大幅な上昇を抑えつつ熱媒を所定の温度に冷却することが可能な熱媒冷却装置及び熱媒冷却装置の運転方法を提供する。
【解決手段】熱媒が循環する循環経路と、主循環ポンプ2と、循環経路の低温反応槽1の二次側に設けられ、冷媒と熱媒とを熱交換する熱交換器5と、熱交換器5の二次側と低温反応槽1の一次側との間の循環経路に設けられ、熱媒の凝固点よりも低い凝固点を有する中間熱媒と熱媒とを熱交換する熱交換器15と、中間熱媒が循環する循環経路L11と、中間熱媒と液化窒素とを熱交換する熱交換器14と、低温反応槽1に供給する熱媒の温度を所定の温度に制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする熱媒冷却装置100を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱媒冷却装置及び熱媒冷却装置の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機合成や晶析等の化学反応プロセスにおいては、精度の高い温度制御が要求される。その為、反応槽の外側に熱媒が流通可能な独立した槽(ジャケット)を設けた二重構造の容器が使用され、このジャケット部に温度制御された熱媒を循環し、反応槽内部の反応液を一定温度に調整している。反応槽ジャケット部に供給された熱媒は、熱媒循環ラインに配置された冷却設備により冷却され、反応槽ジャケット部へ循環供給される。
【0003】
反応槽等の熱負荷との間で循環する熱媒を冷却するための冷却設備としては、例えば機械式の冷却設備が開示されている(特許文献1を参照)。しかしながら、従来の機械式の冷却設備では、目標とする冷却温度によっては熱媒の冷却能力が充分ではない場合があり、熱媒を常温から所定の温度に冷却するまでに長時間掛かってしまうという問題があった。
【0004】
また、夏場などの一時的な熱負荷の上昇に伴い、機械式の冷却設備が備える冷媒の能力を超える熱負荷が発生する場合があり、冷却能力不足によって熱媒を所定の温度に維持することができない場合があった。
【0005】
これに対して、熱負荷のピークに合わせて機械式冷却設備の冷却能力を設計すると、一定温度における平均的な熱負荷に対してオーバースペックな装置となり、多大な契約電力が必要となってしまうため、コストが上昇するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−318647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、機械式の冷却設備の冷却能力を超える熱負荷がかかった場合や能力を超える設定温度に熱媒を冷却する必要がある場合に、コストの大幅な上昇を抑えつつ熱媒を所定の温度に冷却することが可能な熱媒冷却装置及び熱媒冷却装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、熱負荷装置に温度制御された熱媒を供給する熱媒冷却装置であって、
熱媒が循環する循環経路と、
前記循環経路に熱媒を循環させる主循環ポンプと、
前記循環経路の前記熱負荷装置の二次側に設けられ、冷媒と熱媒とを熱交換する第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の二次側と前記熱負荷装置の一次側との間の前記循環経路に設けられ、前記熱媒の凝固点よりも低い凝固点を有する中間熱媒と熱媒とを熱交換する第2の熱交換器と、
前記中間熱媒が循環する副循環経路と、
前記副循環経路に設けられ、前記中間熱媒と液化窒素とを熱交換する第3の熱交換器と、
前記熱負荷装置に供給する熱媒の温度を所定の温度に制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする熱媒冷却装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記第1の熱交換器の一次側と二次側とを結ぶように前記循環経路に設けられた第1のバイパス経路と、
前記第2の熱交換器の一次側と二次側とを結ぶように前記循環経路に設けられた第2のバイパス経路と、
熱媒経路の切り替え手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱媒冷却装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記循環経路の前記第2の熱交換器の一次側に副循環ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱媒冷却装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記第3の熱交換器から排出される窒素ガスを蓄圧するバッファタンクと、
前記バッファタンク内の圧力を制御する圧力制御弁と、を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱媒冷却装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、熱負荷装置に温度制御された熱媒を供給する熱媒冷却装置であって、
熱媒が循環する循環経路と、
前記循環経路に熱媒を循環させる主循環ポンプと、
前記循環経路の前記熱負荷装置の二次側に設けられ、第1の冷媒と熱媒とを熱交換する第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の二次側と前記熱負荷装置の一次側との間の前記循環経路に設けられ、前記第1の冷媒よりも冷却能力が高い第2の冷媒と熱媒とを熱交換する第2の熱交換器と、
前記熱負荷装置に供給する熱媒の温度を所定の温度に制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする熱媒冷却装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記第2の冷媒が、液化窒素であることを特徴とする請求項5に記載の熱媒冷却装置である。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1に記載の熱媒冷却装置の運転方法であって、
熱媒の最終目標温度となるまで冷却する際に、当該最終目標温度に応じて、前記第1及び第2の熱交換器のいずれか一方又は両方に熱媒を供給するように熱媒経路を選択することを特徴とする熱媒冷却装置の運転方法である。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記熱媒を前記第1の熱交換器のみに供給するように熱媒経路を切り替えるとともに、前記冷媒と当該熱媒とを互いに熱交換させて熱媒を第1目標温度となるまで冷却するステップと、
前記熱負荷装置の一次側の熱媒の温度と二次側の熱媒の温度との温度差を測定し、前記温度差が所定の値となった際に、前記第2の熱交換器に供給する中間熱媒の温度制御を開始するステップと、
前記熱媒が前記第1目標温度に到達した際に、前記熱媒が前記第2の熱交換器に供給するように熱媒経路を切り替えるとともに、前記中間熱媒と前記第1目標温度に冷却された熱媒とを互いに熱交換させて当該熱媒を最終目標温度となるまで冷却するステップと、を備えることを特徴とする請求項7に記載の熱媒冷却装置の運転方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第一形態の熱媒冷却装置によれば、熱媒の温度制御手段を備えた循環経路に、熱負荷装置の二次側から、冷媒と熱媒とを熱交換する第1の熱交換器、熱媒の凝固点よりも低い凝固点を有する中間熱媒と熱媒とを熱交換する第2の熱交換器の順に配置する構成となっているため、第1の熱交換器を備えた主冷却設備の能力を最大限に発揮させるとともに第2の熱交換器を備えた副冷却設備を補助的に使用することができる。第2の熱交換器を備えた副冷却設備として、必要設備電力が比較的に小さい液化窒素式の冷却設備及び中間熱媒を利用した冷却設備を選択するため、電力コストの大幅な上昇を抑えつつ、一時的な熱負荷の増加に対応することができる。したがって、第1の熱交換器を備えた主冷却設備の冷却能力を超える熱負荷が一時的にかかった場合や能力を超える設定温度に熱媒を冷却する必要がある場合に、電力コストを大幅に上昇させることなく熱媒を所定の温度に冷却することができる。また、第3の熱交換器において液化窒素との熱交換によって所定の温度に冷却された中間熱媒を第2の熱交換器に供給する構成を有しており、熱媒と液化窒素とを直接熱交換することがない。このため、凝固点が比較的高い熱媒でも利用することができる。
【0017】
また、本発明の第二形態の熱媒冷却装置によれば、熱媒の温度制御手段を備えた循環経路に、熱負荷装置の二次側から、第1の冷媒と熱媒とを熱交換する第1の熱交換器、第1の冷媒よりも冷却能力が高い第2の冷媒と熱媒とを熱交換する第2の熱交換器の順に配置する構成となっているため、第1の熱交換器を備えた主冷却設備の能力を最大限に発揮させるとともに第2の熱交換器を備えた副冷却設備を補助的に使用することができる。第2の熱交換器を備えた副冷却設備として、必要設備電力が比較的に小さいものを選択することができるため、電力コストの大幅な上昇を抑えつつ、一時的な熱負荷の増加に対応することができる。したがって、第1の熱交換器を備えた主冷却設備の冷却能力を超える熱負荷が一時的にかかった場合や能力を超える設定温度に熱媒を冷却する必要がある場合に、電力コストを大幅に上昇させることなく熱媒を所定の温度に冷却することができる。
【0018】
さらに、本発明の熱媒冷却装置及び熱媒冷却装置の運転方法によれば、循環経路に第1の熱交換器を迂回するように設けられた第1のバイパス経路と、第2の熱交換器を迂回するように設けられた第2のバイパス経路と、これらの熱媒経路の切り替え手段と、を備える場合には、熱媒の最終目標温度に応じて第1及び第2の熱交換器のいずれか一方又は両方に熱媒を供給するように熱媒経路を選択して、最適な循環経路を構成することができる。したがって、第1の熱交換器を備えた主冷却設備の冷却能力を超える熱負荷が一時的にかかった場合や能力を超える設定温度に熱媒を冷却する必要がある場合に、対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した第1の実施形態である熱媒冷却装置を示す系統図である。
【図2】本発明を適用した第1の実施形態である熱媒冷却装置の運転方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明を適用した第2の実施形態である熱媒冷却装置を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態である熱媒冷却装置について、図面を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0021】
<第1実施形態>
先ず、本発明を適用した第1実施形態に係る熱媒冷却装置100の構成について説明する。図1は、本発明の熱媒冷却装置における第1実施形態の系統図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る熱媒冷却装置100は、冷却対象物を冷却した後の熱媒を冷却設備で冷却して所定の温度に制御した後に、熱媒を循環して再び冷却対象物を冷却する装置である。本実施形態の熱媒冷却装置100は、熱媒が循環する循環経路と、冷却対象物を冷却する低温反応槽(熱負荷装置)1と、この循環経路に熱媒を循環させる主循環ポンプ2と、機械式冷凍機(機械式の冷却設備)3と、液化窒素式冷凍機(液化窒素式の冷却設備)4と、を備えており、循環経路に、低温反応槽1の二次側から、主循環ポンプ2、機械式冷凍機3及び液化窒素式冷凍機4の順となるように配置されていることを特徴とするものである。
【0023】
本実施形態の熱媒冷却装置100にかかる循環経路は、図1に示すように、その内部に熱媒を流通させる配管等からなる経路L1〜L9を用いて構成されており、接続点P〜Pにおいて経路L1〜L9がそれぞれ分岐あるいは合流されて全体として環状の経路となるように構成されている。
【0024】
また、分岐点となる接続点P〜Pの二次側の経路L2、L4、L7、L8及びL9には、開閉弁(熱媒経路の切り替え手段)V〜Vがそれぞれの経路を開閉自在に設けられている。これらの開閉弁V〜Vについて開放状態あるいは閉止状態を適宜選択することにより、低温反応槽1を経た熱媒を、機械式冷凍機3及び液化窒素式冷凍機4の少なくともいずれか一方又は両方で冷却することができるように、循環経路を自在に構成することができる。
【0025】
熱媒としては、例えば、アルコール水溶液、アルコール、エチレングリコール、シリコーンオイル、フッ素系熱媒を使用することができる。
【0026】
主循環ポンプ2は、低温反応槽1の二次側の経路L1に設けられている。すなわち、主循環ポンプ2は、循環経路において、低温反応槽1の二次側であって主冷却設備である機械式冷凍機3の前段に配置されている。これにより、熱媒を循環経路に循環させるとともに、熱媒の温度制御において主循環ポンプにおける熱負荷の影響を最小源にすることができる。
【0027】
機械式冷凍機(機械式の冷却設備)3は、循環経路において低温反応槽1の二次側(出口側)に設けられており、冷却対象物を冷却した後の熱媒を所定の設定温度に冷却するための主冷却設備である。この機械式冷凍機3は、循環経路の一部である経路L2と、所定の冷媒を循環させる循環経路L10と、経路L2と循環経路L10とに亘って設けられた熱交換器(第1の熱交換器)5と、から概略構成されている。
【0028】
経路L2は、循環経路の接続点Pにおいて経路L1から分岐した後、機械式冷凍機3の内部に引き込まれるとともに、接続点Pにおいて経路L7と合流する経路である。機械式冷凍機3内の経路L2には、熱交換器5、温度変化による熱媒の体積収縮・膨張を吸収するためのバッファタンク6、熱媒を加熱するためのヒーター7、機械式冷凍機3から出る直前の熱媒の温度を検出する温度検出器8がこの順に設けられている。また、温度検出器8には、この温度検出器8による熱媒の検出温度と所定の設定温度との差異に応じた制御信号を出力する温度調節器9が設けられている。
【0029】
循環経路L10は、熱交換器5に温度制御された所定の冷媒を供給する循環経路である。ここで、冷媒としては、例えばクロロフルオロカーボン、フルオロカーボン等の冷媒を使うことができる。この循環経路L10には、熱交換器5の二次側から、冷媒を圧縮する圧縮機10、冷媒を液化するためのファン11aを備えた熱交換器11、液化された冷媒を貯蔵するリザーブタンク12、液化された冷媒を気化させて寒冷を発生させるための膨張弁13がこの順に設けられている。
【0030】
熱交換器(第1の熱交換器)5は、経路L2と循環経路L10とに亘って設けられており、経路L2内の熱媒と循環経路L10内の冷媒とを互いに熱交換させるものである。ここで、熱交換器5内の循環経路L10内には、寒冷源となる気化された冷媒が供給されるため、経路L2内の熱媒を所定の設定温度となるまで冷却することができる。
【0031】
液化窒素式冷凍機(液化窒素式の冷却設備)4は、循環経路において機械式冷凍機3の二次側と低温反応槽1の一次側との間に設けられており、主冷却設備である機械式冷凍機3によって冷却された熱媒をさらに低い温度にまで冷却可能とする補助冷却設備である。この液化窒素式冷凍機4は、液化窒素と熱交換を行っても凍結しない中間熱媒が循環する循環経路(副循環経路)L11と、冷媒である液化窒素を供給する経路L12と、循環経路L11と経路L12とに亘って設けられた熱交換器(第3の熱交換器)14と、から概略構成されている。
【0032】
循環経路L11は、循環経路の接続点PとPとの間に配設される経路L5に設けられた熱交換器15と、液化窒素式冷凍機4が有する熱交換器14との間で、中間熱媒を循環させる経路である。中間熱媒としては、熱媒の凝固点よりも低い凝固点を有し、液化窒素と熱交換しても熱交換器14で凍結、閉塞しない流体、例えば、アルコール、混合アルコール、シリコーンオイル、フッ素系熱媒を使用する。
【0033】
この循環経路L11には、熱交換器15の二次側から、温度変化による中間熱媒の体積収縮・膨張の影響を吸収するためのリザーブタンク16、循環経路L11内に中間熱媒を循環させるための循環ポンプ17、熱交換器14、熱交換器14を経た後の中間熱媒の温度を検出する温度検出器18がこの順に設けられている。また、温度検出器18には、この温度検出器18による中間熱媒の検出温度と、熱媒の所定の設定目標温度との差異に応じた制御信号を出力する温度調節器19が設けられている。
【0034】
経路L12は、寒冷源となる液化窒素を熱交換器14に供給する経路である。液化窒素式冷凍機4内の経路L12には、液化窒素制御弁20、熱交換器14がこの順に設けられている。
【0035】
また、液化窒素式冷凍機4外の経路L12には、経路L12と経路L13とに亘って配設され、熱交換器14で中間熱媒と熱交換をした後の窒素ガス(液化窒素式冷凍機4から排出される窒素ガス)と他の冷熱利用元(図示せず)からの他の流体とを互いに熱交換させる熱交換器21と、上記熱交換器21から排出される窒素ガスを蓄圧するためのバッファタンク22とがこの順に設けられている。
【0036】
バッファタンク22には、タンク内の窒素ガスを他の利用先へと供給するための経路L14と、余剰ガスをタンク内から排出するための経路L15とが設けられている。また、経路L15には、バッファタンク22内の圧力を制御するための圧力制御弁23が設けられている。
【0037】
熱交換器(第3の熱交換器)14は、循環経路L11と経路L12とに亘って設けられており、循環経路L11内の中間熱媒と経路L12内の液化窒素とを互いに熱交換させるものである。ここで、熱交換器14を経た循環経路L11内の中間熱媒の温度は、機械式冷凍機3において設定される熱媒の所定の設定温度よりも低い温度となるように設定温度を選択することができる。なお、中間熱媒の設定温度は、後述する熱交換器15における熱媒との熱交換をした際に、熱媒が凍結しない温度とすることが好ましい。
【0038】
また、熱交換器14としては、応答性が良く、熱媒容量の少ない高効率な熱交換器を採用することが好ましい。具体的には、例えば、プレートフィン熱交換器、プレート式熱交換器、または二重管式熱交換器等が挙げられる。このように、熱交換器14として、高効率で熱媒容量の少ない熱交換器を採用する事により、循環経路L11内に循環させる中間熱媒の量を最小限とすることができるため、応答性が速くなり、ひいては中間熱媒と熱交換させる熱媒の温度制御の精度を向上させることができる。
【0039】
熱交換器15(第2の熱交換器)は、循環経路において機械式冷凍機3の二次側と低温反応槽1の一次側との間であって、経路L5と循環経路L11とに亘って設けられており、経路L5内の機械式冷凍機3によって冷却された熱媒と、循環経路L11内の液化窒素との熱交換により冷却された中間熱媒とを互いに熱交換させるものである。この熱交換器15としては、圧力損失が低く、且つ、熱媒及び中間熱媒の液容量が少ないものが応答性の点で好ましい。
【0040】
このように、循環経路に設けられた熱交換器15において熱媒と中間熱媒とを互いに熱交換することにより、熱媒と液化窒素式冷凍機4の液化窒素とを中間熱媒を介して間接的に熱交換することになる。これにより、液化窒素と直接熱交換を行うと凍結してしまう熱媒(例えば、エチレングリコール等)を用いる場合であっても、熱媒を凍結させることなく所定の設定温度に早く到達させることができる。また、機械式冷凍機よりも低い設定温度に熱媒を冷却することができる。
【0041】
また、本実施形態の熱媒冷却装置100には、低温反応槽1の一次側の経路L6に、低温反応槽1に供給する直前の熱媒の温度を検出する温度検出器24と、検出された熱媒の温度を制御信号として出力する温度調節器25とが設けられている。一方、低温反応槽1の二次側の経路L1に、低温反応槽1を経た直後の熱媒の温度を検出する温度検出器26と、検出された熱媒の温度を制御信号として出力する温度調節器27とが設けられている。
【0042】
さらに、本実施形態の熱媒冷却装置100を構成する循環経路に設けられた温度調節器(温度制御手段)9,19,25,27と、制御盤C内の温度制御部(図示略)とは、互いに電気的に接続されている。
【0043】
また、循環経路を構成する経路(第1のバイパス経路)L7は、機械式冷凍機3の一次側となる接続点Pと二次側となる接続点Pとを直結するように設けられており、機械式冷凍機3を迂回するバイパスラインとなっている。
【0044】
同様に、循環経路を構成する経路(第2のバイパス経路)L9は、液化窒素式冷凍機4の一次側となる接続点Pと二次側となる接続点Pとを直結するように設けられており、液化窒素式冷凍機4を迂回するバイパスラインとなっている。
【0045】
本実施形態の熱媒冷却装置100に係る経路L1の主循環ポンプ2には、流量が一定となるように周波数調整を行うためのインバーター31’が電気信号的に接続されており、流量検出器29で検出される流量を電気的な流量信号に変換する信号変換器28と流量信号を制御信号としてインバーター31’に出力する流量調節器29aにより、流量が調整される。さらに、液化窒素式冷凍機4の一次側の接続点P4で合流する一方の経路L8には、循環経路中の熱媒の流量を増幅する副循環ポンプ30が設けられている。
【0046】
また、副循環ポンプ30には、流量検出器29で検出される流量が一定となるように周波数調整を行うためのインバーター31が電気信号的に接続されている。さらに、インバーター31と、制御盤C内の流量制御部(図示略)とは、互いに電気的に接続されている。
【0047】
このような構成により、熱媒の低温利用時において熱媒の粘度上昇により圧力損失が増加した場合であっても、循環経路において熱媒の必要流量を確保することができ、且つ、熱媒の冷却制御において副循環ポンプ30に起因する入熱の影響を低減することができる。
【0048】
また、機械式冷凍機3内のバッファタンク6のみでは容量が不足する場合には、循環経路を構成する経路L3にリザーブタンク32を設けることが好ましい。さらに、循環経路を構成する経路L2において、接続点Pの上流側に開閉バルブを設けないことにより、機械式冷凍機3内のバッファタンク6を循環経路全体で使用することができる。
【0049】
さらに、制御盤C内に流路制御部(図示略)を設け、循環経路を構成する経路に設けられたそれぞれの開閉弁V〜Vと互いに電気的に接続するように構成してもよい。
【0050】
次に、上述のように構成された第1実施形態に係る熱媒冷却装置100の運転方法について説明する。
【0051】
(機械式冷凍機の単独運転)
本実施形態の熱媒冷却装置100において、機械式冷凍機3の単独運転を行う場合には、開閉弁V、Vを開放するとともに、開閉弁V〜Vを閉止する。これにより、低温反応槽1の二次側から経路L1,L2,L3,L9,L6を経た後に、再び低温反応槽1の一次側に接続される循環経路を形成する。この循環経路では、主循環ポンプ2によって循環される熱媒は、機械式冷凍機3において冷却され、その後、低温反応槽1に再び供給されることとなる。
【0052】
機械式冷凍機の単独運転をする場合、熱媒の温度は、制御盤C内の温度制御部(図示略)によって制御される。具体的には、先ず、低温反応槽1の一次側に設けられた温度調節器25の設定温度と、温度検出器24が検出する現在の熱媒温度との偏差を算出する。そして、算出された上記偏差に応じて機械式冷凍機3内の経路L2に設けられた温度調節器9に設定する冷却設定温度をカスケード制御で決定するとともに、温度検出器8で検出する熱媒の温度が追従するように機械式冷凍機3を運転する。
【0053】
(機械式冷凍機及び液化窒素式冷凍機のハイブリッド運転)
本実施形態の熱媒冷却装置100において、熱媒を常温から所定の温度まで冷却する際の冷却時間の短縮や、機械式冷凍機3の能力以上の負荷が発生した場合には、主冷却設備である機械式冷凍機3と補助冷却設備である液化窒素式冷凍機4とを用いたハイブリッド運転を行う。
【0054】
上記ハイブリッド運転を行う場合には、開閉弁V、Vを開放するとともに、開閉弁V〜Vを閉止する。これにより、低温反応槽1の二次側から経路L1〜L6を経た後に、再び低温反応槽1の一次側に接続される循環経路を形成する。この循環経路では、主循環ポンプ2によって循環される熱媒は、機械式冷凍機3において第1目標温度となるまで冷却され、さらに熱交換器15において中間熱媒と熱交換することによって最終目標温度となるまで冷却された後、低温反応槽1に再び供給されることとなる。
【0055】
ハイブリッド運転をする場合、熱媒の温度は、制御盤C内の温度制御部(図示略)によって制御される。具体的には、先ず、低温反応槽1の一次側に設けられた温度調節器25の設定温度と、温度検出器24が検出する現在の熱媒温度との偏差を算出する。そして、算出された上記偏差に応じて機械式冷凍機3内の経路L2に設けられた温度調節器9に設定する冷却設定温度(第1目標温度)をカスケード制御で決定する。ただし、上記冷却設定温度が機械式冷凍機3の設定下限温度を下回るときは、当該設定下限温度を設定値とする。
【0056】
次に、循環経路L11に設けられた温度調節器19に設定する冷却設定温度についても、上記偏差に応じてカスケード制御で決定するとともに、温度検出器18で検出する中間熱媒の温度が追従するように液化窒素式冷凍機4を運転する。
【0057】
ところで、機械式冷凍機3のみを備えた既存の熱媒冷却装置に、液化窒素式冷凍機4を増設して本実施形態の熱媒冷却装置100を構成する場合、循環経路を構成する経路L5への熱交換器15を設置することに起因して熱媒循環系統の圧力損失が増加し、循環経路内に所定の熱媒流量が確保できなくなる場合がある。そのような場合には、開閉弁Vを閉止するとともに開閉弁Vを開放することで循環流路の構成を変更する。これにより、熱媒は経路L8に流れることとなり、この経路L8に設けられた副循環ポンプ30によって循環経路内の熱媒の流量が増幅されることとなる。
【0058】
(液化窒素式冷凍機の単独運転)
本実施形態の熱媒冷却装置100において、機械式冷凍機3の使用可能温度以下で熱媒を循環する場合には、液化窒素式冷凍機4の単独運転を行う
【0059】
液化窒素式冷凍機4の単独運転を行う場合には、開閉弁V、Vを開放するとともに、開閉弁V、V及びVを閉止する。これにより、低温反応槽1の二次側から経路L1,L7,L4,L5,L6を経た後に、再び低温反応槽1の一次側に接続される循環経路を形成する。この循環経路では、主循環ポンプ2によって循環される熱媒は、機械式冷凍機3をバイパスした後に液化窒素式冷凍機4において冷却され、その後、低温反応槽1に再び供給されることとなる。
【0060】
ここで、一般的に熱媒温度が低くなると液体粘度が上昇して圧力損失が増加することから、熱交換器15の圧力損失が増加して、主循環ポンプ2のみでは所定の熱媒流量を確保できないおそれがある。したがって、経路L8を通る循環経路を構成し、副循環ポンプ30を運転して所定の流量を確保することが好ましい。
【0061】
また、液化窒素式冷凍機4の単独運転においては、液化窒素式冷凍機4内の熱交換器14において液化窒素と中間熱媒とを熱交換し、熱交換した後の中間熱媒を内蔵する循環ポンプ17を運転することによって熱交換器15へ循環する。また、中間熱媒の冷却温度は熱媒が熱交換器内で凍結しない温度設定とすることに留意する。
【0062】
なお、液化窒素式冷凍機4内の熱交換器14に、プレートフィン熱交換器、プレート式熱交換器、または二重管式熱交換器などの高効率で熱媒容量の少ない応答性が良い熱交換器を採用することにより、中間熱媒の温度を±1℃以内で制御することができる。
【0063】
ところで、液化窒素式冷凍機4内の熱交換器14から排気される窒素ガスは低温であるため、経路L12に熱交換器21を設置すると他の対象物に冷熱を与えることが可能である。また、窒素ガスは、熱交換器21の後段に設けたバッファタンク22で蓄圧することにより、他の窒素ガス利用先に例えば保安用の窒素ガスとして供給することができる。ここで、液化窒素式冷凍機4の冷却能力を確保するには、経路L15に設けた圧力制御弁23によって余剰な窒素ガスを排気して、一定の差圧を設け、経路L12に液化窒素が流れるようにする。これにより、液化窒素式冷凍機4内の熱交換器14の二次側の圧力が一定となるため、他の窒素ガス利用先の供給源として利用することができる。
【0064】
(熱媒冷却装置の運転方法)
本実施形態の熱媒冷却装置100では、機械式冷凍機3の単独運転によって熱媒温度が低下した状態(例えば−40℃)において熱負荷が上昇するなどしてハイブリッド運転(液化窒素式冷凍機4の運転)が必要になった場合、つぎのような問題が生じる場合がある。すなわち、中間熱媒が常温(例えば20℃)であると、液化窒素式冷凍機4の運転を開始し、かつ、液化窒素式冷凍機4へ熱媒を供給するようにラインを切り替えた際、第2の熱交換器15にて常温の中間熱媒と−40℃の熱媒が熱交換することになるため、熱媒温度が上昇してしまう。このため、ハイブリッド運転の前に中間熱媒が循環する副循環経路L11の予冷運転を行い、予め副循環経路L11の中間熱媒の温度を下げておくことが好ましい。
【0065】
以下に、上述した熱媒冷却装置100において、熱媒の流量を一定とし、運転開始からの時間tにおける低温反応槽1の二次側の熱媒の温度(温度検出器26の検出値)と一次側の熱媒の温度(温度検出器24の検出値)との温度差ΔTの許容値を5℃と設定した場合における、上述した機械式冷凍機の単独運転からハイブリッド運転へ切り替えるタイミングについて説明する。ここで、図2は、本発明を適用した第1の実施形態である熱媒冷却装置100の運転方法を示すフローチャートである。
【0066】
具体的には、先ず、図2中に示すステップS1において、低温反応槽1の一次側の温度調節器25の設定値と、機械式冷凍機3の温度調節器9の設定下限温度との比較を行う。ここで、低温反応槽1の一次側の温度調節器25の設定値が、機械式冷凍機3の温度調節器9の設定下限温度以上である場合には、ステップS2を行う。
【0067】
これに対して、温度調節器25の設定値が、温度調節器9の設定下限温度未満である場合には、ステップS7に示すように液化窒素式冷凍機4の準備として、開閉弁V、Vを開放するとともに、開閉弁V、V及びVを閉止する。そして、図2中に示すステップS8に示すように、上述した液化窒素式冷凍機4の単独運転を直ちに開始する。
【0068】
次に、図2中に示すステップS2では、低温反応槽1の一次側(入口側)の熱媒の温度の現在値(すなわち、温度検出器24の現在の検出値)と、低温反応槽1の一次側の温度調節器25の設定値に2℃を加えた温度との比較を行う。ここで、温度検出器24の検出値が温度調節器25の設定値+2℃以上の場合には、後述するステップS9において液化窒素式冷凍機4の予冷運転を開始する。これに対して、温度検出器24の検出値が温度調節器25の設定値+2℃未満の場合には、ステップS3を行う。
【0069】
次に、図2中に示すステップS3では、機械式冷凍機3の単独運転からハイブリッド運転へと切り替える前に、中間熱媒を副循環経路L11に循環させる予冷運転の開始時間tに到達しているか否かの確認を行う。
【0070】
ここで、予冷運転の開始時間tの算出方法は、以下の通りである。
まず、上述したように、時間tが経過した際の温度検出器26の値と温度検出器24の値との温度差ΔTとの勾配(ΔT/t)を一定の周期(例えば、1分間ごと)でモニタリングすることにより、上記勾配の変動傾向を把握することができるため、温度差ΔTが許容値であるΔT=5℃に到達する時間tを予測する。
【0071】
次に、温度差ΔTが許容値であるΔT=5℃に到達する時間tと、中間熱媒を副循環経路L11に循環させる予冷運転の開始時間tとを用いて、予冷運転における液化窒素式冷凍機4の立ち上げ時間を表記すると、予冷の必要な時間(立ち上げ時間)は(t−t)として示すことができる。ここで、予冷の必要な時間(t−t)は、予め温度制御部のプログラムに入力しておく。
【0072】
例えば、予冷の必要な時間(t−t)が5分(300sec)であり、時間t=60secが経過した際に温度差ΔT=0.3℃であり、許容値ΔT=5℃である場合には、許容温度到達時間tが17分後であり、予冷運転の開始時間tは、下式(1)から12分後(700sec)と算出することができる。したがって、この場合には、熱媒冷却装置100の運転開始から12分後に中間熱媒の予冷運転を開始する。
=t/ΔT×ΔT−(t−t) ・・・(1)
【0073】
したがって、ステップS3において、予冷運転の開始時間tに到達している場合には、ステップS9において液化窒素式冷凍機4の予冷運転を開始する。これに対して予冷運転の開始時間tに到達していない場合には、ステップS4を行う。
【0074】
次に、図2中に示すステップS4では、開閉弁V、Vを開放するとともに、開閉弁V〜Vを閉止する。そして、上述した機械式冷凍機3の単独運転を実施する。
【0075】
次に、図2中に示すステップS5では、上述したステップS3と同様に、中間熱媒を副循環経路L11に循環させる予冷運転の開始時間tに到達しているか否かの確認を行う。ここで、予冷運転の開始時間tに到達している場合には、ステップS9において液化窒素式冷凍機4の予冷運転を開始する。これに対して予冷運転の開始時間tに到達していない場合には、ステップS6を行う。
【0076】
次に、図2中に示すステップS6では、上述したステップS2と同様に、低温反応槽1の一次側(入口側)の熱媒の温度(温度検出器24の検出値)と、低温反応槽1の一次側の温度調節器25の設定値に2℃を加えた温度との比較を行う。ここで、温度検出器24の検出値が温度調節器25の設定値+2℃以上の場合には、後述するステップS9において液化窒素式冷凍機4の予冷運転を開始する。これに対して、温度検出器24の検出値が温度調節器25の設定値+2℃未満の場合には、上述したステップS4に示すように機械式冷凍機3の単独運転を継続する。
【0077】
次に、図2中に示すステップS10では、熱交換器14を経た後の中間熱媒の温度を検出する温度検出器18による中間熱媒の検出温度と、温度調節器19の中間熱媒の設定温度+1℃(任意に設定可能)との比較を行う。ここで、中間熱媒の検出温度が設定温度よりも1℃低くなった場合(予冷が完了した場合)には、ステップS11において、開閉弁V、Vを開放するとともに、開閉弁V〜Vを閉止して、上述したハイブリッド運転を開始する。
【0078】
次に、図2中に示すステップS12では、低温反応槽1の二次側(出口側)の熱媒の温度(すなわち、温度検出器26の検出値)と、低温反応槽1の一次側(入口側)の熱媒の温度(すなわち、温度検出器24の検出値)と、の温度差を算出する。低温反応槽1の二次側と一次側との温度差が5℃以上の場合には、ハイブリッド運転を継続する。一方、上記温度差が5℃未満の場合には、上記ステップS4に進み、ハイブリッド運転を停止して、機械式冷凍機3の単独運転を開始する。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の熱媒冷却装置100によれば、循環経路に、低温反応槽1の二次側から、主循環ポンプ2、冷媒と熱媒とを熱交換する機械式冷凍機3、熱媒の凝固点よりも低い凝固点を有する中間熱媒と熱媒とを熱交換する熱交換器15の順に配置する構成となっているため、第1の熱交換器5を備えた機械式冷凍機(主冷却設備)3の能力を最大限に発揮させるとともに、中間熱媒を循環させる経路L11、熱交換器15及び液化窒素式冷凍機4から構成される副冷却設備を補助的に使用することができる。そして、副冷却設備として、必要設備電力が比較的に小さい液化窒素式の冷却設備及び中間熱媒を利用した冷却設備を選択するため、電力コストの大幅な上昇を抑えつつ、一時的な熱負荷の増加に対応することができる。したがって、機械式冷凍機3の冷却能力を超える熱負荷が一時的にかかった場合や能力を超える設定温度に熱媒を冷却する必要がある場合に、電力コストを大幅に上昇させることなく熱媒を所定の温度に冷却することができる。
【0080】
また、本実施形態の熱媒冷却装置100によれば、液化窒素式冷凍機4と熱媒の循環経路との間に、液化窒素と熱交換可能な中間熱媒を循環させる副循環経路L11を設けるとともに、循環経路に熱媒と中間熱媒とを互いに熱交換させる熱交換器15を設ける構成となっている。これにより、熱媒と液化窒素とを直接熱交換することがないため、熱媒が凝固することがない。したがって、凝固点が比較的高い熱媒でも利用することができる。
【0081】
また、液化窒素式冷凍機4内の熱交換器14として、プレートフィン熱交換器、プレート式熱交換器、または二重管式熱交換器などの高効率で熱媒容量の少ない熱交換器が採用されているため、循環経路L11内に循環させる中間熱媒の量を最小限に抑えることができる。これにより、応答性が速くなり、熱媒の温度制御の精度を向上することができる。
【0082】
また、熱媒の循環経路において、液化窒素式冷凍機4の上流に副循環ポンプ30を設けることで、熱媒を低温にした際に粘度上昇によって圧力損失が増加した場合でも、熱媒の必要流量を確保することができる。
【0083】
また、機械式冷凍機3のバイパスラインとなる経路L7を設ける構成となっており、液化窒素式冷凍機4の単独運転によって機械式冷凍機3の使用可能温度以下とされた熱媒を循環運転する際に機械式冷凍機3を迂回する循環経路を構成することができるため、機械式冷凍機3の保護が可能となる。
【0084】
また、本実施形態の熱媒冷却装置100の運転方法によれば、機械式冷凍機3の単独運転からハイブリッド運転への切り替え時において、予め液化窒素式冷凍機4の立上げ時間を考慮して予冷運転の開始のタイミングを決定する構成となっている。したがって、熱媒の循環経路の切り替えに伴う熱媒の温度変化を低減することができる。
【0085】
<第2実施形態>
次に、本発明における第2実施形態を説明する。図3は、本発明の熱媒冷却装置における第2実施形態の系統図である。
図3に示すように、本発明の第2実施形態に係る熱媒冷却装置200は、上記第1実施形態に係る熱媒冷却装置100の構成と比較して、中間熱媒を利用しない構成である点で異なっており、その他の構成は同一であるため、説明を省略する。
【0086】
具体的には、熱媒冷却装置100を構成する、中間熱媒を循環させる循環経路L11と、この循環経路L11中の中間熱媒と経路L5中の熱媒とを互いに熱交換させる熱交換器15と、中間熱媒と液化窒素とを互いに熱交換させる熱交換器14を有する液化窒素式冷凍機4と、に変えて、本発明の第2実施形態に係る熱媒冷却装置200では、経路L5中の熱媒と経路L12中の第2の冷媒とを互いに熱交換させる熱交換器214を有する液化窒素式冷凍機204を備えて構成されている。
【0087】
なお、本実施形態では、上記第1実施形態における機械式冷凍機3で用いた冷媒を第1の冷媒とする。また、上記第2の冷媒としては、機械式冷凍機3で用いる第1の冷媒よりも冷却能力が高い冷媒を用いることができ、液化窒素を用いることが好ましい。これにより、中間熱媒を介することなく、冷却能力の高い液化窒素によって熱媒を冷却することが可能となる。
【0088】
また、経路L12の熱交換器214の一次側には、制御弁33を有する経路L16が設けられている。経路L12から分岐されるこの経路L16は、液化窒素式冷凍機204の予冷運転を行う際に液化窒素の呼び込みラインとして機能するものである。
【0089】
以上説明したように、本実施形態の熱媒冷却装置200によれば、中間熱媒を利用する構成を省略しているため、簡便な構成とすることができる。
【0090】
<各実施形態の変形例>
上述した第1及び第2実施形態に係る熱媒冷却装置100,200は、低温反応制御装置に適用した例である。低温反応制御装置は、熱負荷として反応液を貯留する低温反応槽と、低温反応槽周囲のジャケット又は低温反応槽内に設置された熱交換器と有し、ジャケット又は熱交換器に熱媒を供給する構成を有しており、予め温度調整された熱媒を供給することで伝熱面において反応液を凍結させることなく冷却することができる。その他に、以下の装置にも適用することができる。
【0091】
すなわち、熱負荷装置として、低温反応槽1に代えて、食品凍結や金属熱処理を行う冷却槽に適用でき、予め温度調整された熱媒を槽内に供給することで、攪拌ファンなどを必要とせず対象物を均一に冷却することができる。また、熱負荷装置として、低温反応槽1に代えて、コイル管又はその他の熱交換器を使用して蒸気を冷却、凝縮又は凝固させるコールドトラップに適用できる。コールドトラップに適用する場合、予め温度調整された熱媒を熱交換器内部に通すことにより精度よく均一な温度で凝縮及び凝固させることができる。
【0092】
また、本発明の熱媒の循環経路を構成する経路及び開閉弁の位置、数は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。例えば、循環経路中の熱媒の一時的な温度変動が許容される場合には、液化窒素式冷凍機を迂回するバイパスラインとして機能する経路L9及び開閉弁Vを省略することもできる。
【0093】
さらに、液化窒素式冷凍機4,204の単独運転を行う必要がない場合には、機械式冷凍機3を迂回するバイパスラインとして機能する経路L7、L8、開閉弁V、V、V、副循環ポンプ30、インバーター31及び流量調整手段29を省略することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の熱媒冷却装置は、有機合成や晶析等の化学反応プロセスにおける温度制御に利用できる。
【符号の説明】
【0095】
100,200・・・熱媒冷却装置
1・・・低温反応槽(熱負荷装置)
2・・・主循環ポンプ
3・・・機械式冷凍機(主冷却設備)
4,204・・・液化窒素式冷凍機(副冷却設備)
5・・・熱交換器(第1の熱交換器)
6,22・・・バッファタンク
7・・・ヒーター
8,18,24,26・・・温度検出器
9,19,25,27・・・温度調節器(温度制御手段)
10・・・圧縮機
11,21・・・熱交換器
12,16,32・・・リザーブタンク
13・・・膨張弁
14・・・熱交換器(第3の熱交換器)
15・・・熱交換器(第2の熱交換器)
17・・・循環ポンプ
20・・・液化窒素制御弁
23・・・圧力制御弁
28・・・信号変換器
29・・・流量検出器
29a・・・流量調節器
30・・・副循環ポンプ
31,31’・・・インバーター
33・・・制御弁
P1〜P5・・・接続点
L1〜L6・・・経路
L7・・・経路(第1のバイパス経路)
L8・・・経路
L9・・・経路(第2のバイパス経路)
L11・・・循環経路(副循環経路)
〜V・・・開閉弁(熱媒経路の切り替え手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱負荷装置に温度制御された熱媒を供給する熱媒冷却装置であって、
熱媒が循環する循環経路と、
前記循環経路に熱媒を循環させる主循環ポンプと、
前記循環経路の前記熱負荷装置の二次側に設けられ、冷媒と熱媒とを熱交換する第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の二次側と前記熱負荷装置の一次側との間の前記循環経路に設けられ、前記熱媒の凝固点よりも低い凝固点を有する中間熱媒と熱媒とを熱交換する第2の熱交換器と、
前記中間熱媒が循環する副循環経路と、
前記副循環経路に設けられ、前記中間熱媒と液化窒素とを熱交換する第3の熱交換器と、
前記熱負荷装置に供給する熱媒の温度を所定の温度に制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする熱媒冷却装置。
【請求項2】
前記第1の熱交換器の一次側と二次側とを結ぶように前記循環経路に設けられた第1のバイパス経路と、
前記第2の熱交換器の一次側と二次側とを結ぶように前記循環経路に設けられた第2のバイパス経路と、
熱媒経路の切り替え手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の熱媒冷却装置。
【請求項3】
前記循環経路の前記第2の熱交換器の一次側に副循環ポンプが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱媒冷却装置。
【請求項4】
前記第3の熱交換器から排出される窒素ガスを蓄圧するバッファタンクと、
前記バッファタンク内の圧力を制御する圧力制御弁と、を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱媒冷却装置。
【請求項5】
熱負荷装置に温度制御された熱媒を供給する熱媒冷却装置であって、
熱媒が循環する循環経路と、
前記循環経路に熱媒を循環させる主循環ポンプと、
前記循環経路の前記熱負荷装置の二次側に設けられ、第1の冷媒と熱媒とを熱交換する第1の熱交換器と、
前記第1の熱交換器の二次側と前記熱負荷装置の一次側との間の前記循環経路に設けられ、前記第1の冷媒よりも冷却能力が高い第2の冷媒と熱媒とを熱交換する第2の熱交換器と、
前記熱負荷装置に供給する熱媒の温度を所定の温度に制御する温度制御手段と、を備えることを特徴とする熱媒冷却装置。
【請求項6】
前記第2の冷媒が、液化窒素であることを特徴とする請求項5に記載の熱媒冷却装置。
【請求項7】
請求項1に記載の熱媒冷却装置の運転方法であって、
熱媒の最終目標温度となるまで冷却する際に、当該最終目標温度に応じて、前記第1及び第2の熱交換器のいずれか一方又は両方に熱媒を供給するように熱媒経路を選択することを特徴とする熱媒冷却装置の運転方法。
【請求項8】
前記熱媒を前記第1の熱交換器のみに供給するように熱媒経路を切り替えるとともに、前記冷媒と当該熱媒とを互いに熱交換させて熱媒を第1目標温度となるまで冷却するステップと、
前記熱負荷装置の一次側の熱媒の温度と二次側の熱媒の温度との温度差を測定し、前記温度差が所定の値となった際に、前記第2の熱交換器に供給する中間熱媒の温度制御を開始するステップと、
前記熱媒が前記第1目標温度に到達した際に、前記熱媒が前記第2の熱交換器に供給するように熱媒経路を切り替えるとともに、前記中間熱媒と前記第1目標温度に冷却された熱媒とを互いに熱交換させて当該熱媒を最終目標温度となるまで冷却するステップと、を備えることを特徴とする請求項7に記載の熱媒冷却装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−113509(P2013−113509A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260913(P2011−260913)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】